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[C560] なのはちゃんパネェっす

なのはちゃんもしかして縁の術式ラーニングしてるのか!?
まさか看視者の完成体とかになるのか!?

フェイト復活?
でもシグナムの慰め方で吹いてしまった

すずか行動開始
個人的に身体能力において縁に匹敵すると思うので是非とも参戦してほしいところ
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : ルファイト
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[C561] 裏切ったな!

例のごとくエロスがあるかと思いきや!
頑張れよすずか!!
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : ぽりん
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[C568] コメントありがとうございまー

○ルファイトさん
 なのは嬢は一歩化け物に近付きました。まぁ、原作でもなのは嬢の環境学習能力は抜きん出てましたし。
 ちなみに獄門島はストーリー上どうしても欠かすことの出来ない言葉が放送禁止用語として引っ掛かるので、どう頑張っても放送できないオチです。原作を読み終わったはやてが映画版を見ようと思っていたエピソードは挟んでませんが。
 すずかは一般人でござる。

○ぽりんさん
 裏切ってない裏切ってない。ここは健全だとあれほど何度も(ry
 むしろ何を頑張れと!?
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
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[C569] なんというチート主人公(原作)

これは・・・ペロッ・・・・寸止めエロ。(コナン風に)

もっと頑張れよすずか!!!!
  • 2009-12-18
  • 投稿者 : なまにく
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[C570] 初書き込みです

始めまして。通りすがりに失礼します。

渋いですね、シグナム。フェイトをどうにかしようとして思案した結果でしょうが、やはりというか正面からぶつかって叩きのめしてから諭す。不器用で、実直というか。どうにも気の利いた言葉が出てこず、体で覚えこませるというか…
それでもなまじ言葉で言うより効果が出るんですよね、そういうのって。ぶっきらぼうで思いついた単語をズバッと言う。それだけでなく真正面から体でぶつかる。ひとつところで立ち止まっていたフェイトの気付けには十分なったと思います。
忘れてしまいがちですが、シグナムもヴォルケンの一員であるからには、長い間存在しているわけであり、”今の世にいる昔の人”とも言えるのでやり方が昔の人のやり方であっても何ら不思議は無いと思うのです。そのやり方だからこそ気づくこともある、と言うこともあるのではないでしょうか。

フェイトをはじめ、なのは・すずか共に新たなスタートラインに立った様子。アリサ復活までの道のりが楽しみです。
  • 2009-12-18
  • 投稿者 : 北アイリス
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[C571] コメントありがとうございまー

○なまにくさん
 な、何を頑張れと!?
 もとより原作でも魔力的な意味でなのは嬢はチートだった訳ですが。

○北アイリスさん
 はじめましてー。
 個人的にやはりシグナムはベラベラ喋るよりも、不器用でも身体で行くタイプだと思うのです。というかクロガネの趣味的に。
 普通に生活で馴染んでますけど、ヴォルケンリッターは仰るとおり昔の人な訳です。現代っ子の考えはよく分からないのが実情のような気がする。
  • 2009-12-19
  • 投稿者 : クロガネ
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[C572] 管理局全滅!!看視者は縁だった!!

久々に来たら話が大分進んでた(汗)タイトル通り管理局はほぼ全滅、この分だとレジアスも死んでるだろうし、指揮系統も滅茶苦茶で連携なんて取りようがないでしょう。後は各残存部隊が勝手に行動していくだけ、なのは達には却って都合が良いのかもしれんが。

しかしここまでくるとほっておいても勝手に潰れますね。メトロン星人も言ってました

「地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう」

縁の場合暴力は振るってるが、ここでピタリと行動を止めたとしても、責任の擦り付けや覇権を取ろうとする輩が必ずでてきて内輪もめになるのは確実。まあ同情の余地はないが。

なのはの言葉に揺らぐ縁、こういう展開だと混乱した相手に殺されるのがセオリーですけど、縁は離脱で死なずには済みました。しかし、混乱に乗じて縁のデーター収集してるの見ると、物凄く薄っぺらなセリフに見えてしまいますね、結局力ずくで解決が目的のような。最初から説得出来ないと思ったからそういうことしてる様に見えるし、全部縁を動揺させる為の演出っぽく見える。

フェイトが自覚したことは今更ですよねえ・・・よく国を守りたいとか理由で軍隊にはいる人と同じ、結局やることは「暴力」と「破壊」です。「収入を得たいから」、「やってて楽しいから」等、勤労の意欲が『自分の為』な人と、フェイトの様に『不特定の誰かの為』な人、どちらが良いかはしらないけど難しい問題です。

すずかが好きになったのは「いつものアリサ」、でも元に戻ったらアリサの気持ちは縁に向かうわけで・・・…報われんなあ(涙)。もう力技にでるか、ハーレムルートに入るしかないか?
  • 2009-12-19
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C573] ガンザくんの一般兵っぷりマジ最高!!

今回、ガンザ君はただそこにいただけだった、うん、とりあえずレイハさんがかわいいからどうでもいいや。

そして縁とのお話しようのターンは過ぎてしまいました、全力全開のバトルへの道を余儀なくされました。
やはり言葉だけじゃ止まらなかったか。

※ちょっと感想から外れたこと書きます。
なのは嬢はA‘Sで 「悪魔でいいよ」 って宣言してますよね。
話し合いをしようとして、それが失敗したら、次の瞬間には全力で砲撃。でも特に嘘ついてるわけでも、話し合うことを諦めてるわけでもなく、それが本心なところが、マジで生まれつきの悪魔です。
普通だったら、ある程度好意があって、嫌いじゃない人に攻撃することためらったり、思わず手加減するだろうけど、なのは嬢はためらわないし手加減しない、本気で潰しにかかる。辞めさせることを迷わない。
ほんと惚れるしかあるまい。一生ついていきます!
言葉で止められないなら、身動きできなくなるくらいボロボロにする。これ、常識的な人間性ってのを考慮しないなら、正しいことです。だからなのは嬢は悪魔なのだと思います。そんな貴女が大好きです。
子供のように正義論振りかざしながら、大人みたいに暴力をふるう。これが魔法少女の醍醐味。すばらしい、魔法少女素晴らしい。
※駄文失礼。


さて、とうとう本編にも糖分が滲みだしてきたように感じます。そろそろクライマックスシーンへと足がかかったようですね。頑張れみんな。
  • 2009-12-20
  • 投稿者 : TFJ,
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[C574] アリサたん、はぁはぁ・・・

なすずかたんが正気に戻ったようです。
そうだよね、やっぱりアリサはツンデレじゃないとね!(違

しかし、ガンザ生き延びたか・・・実はその他戦闘員じゃないのか?
ぬぅ・・・
  • 2009-12-21
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C575] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 セブンとちゃぶ台囲んで危険な話題を論議していたメトロンですね、渋い線を。しかしメトロン星人は随分長い目で侵略考える。
 なのは嬢はわりと狡猾な人物ですから。フラッシュインパクトから容赦なく頭を叩き潰そうとしたりとか平気でする恐ろしい子ですし、真正面からファランクスを受けきるとか言ったけど、実際はスターライトブレイカーの威力底上げの為で、防御も耐雷防御だったりと抜かりない。
 フェイトはあれです、平和を護る為に怪人殺している仮面ライダーは平和の使者だよね、っていう矛盾をそのまま受け入れたような。純粋と言うか、頭が足りていないと言うか。

○TFJ,さん
 ガンザはクロガネの中では重要な役割なんですけどね、実際。いや、説明役みたいな感じで。
 そう、糖分が出てきたって事は、もう一度突き落と(ry
 なのは嬢は言葉に嘘がないと同時に容赦もないですしね。殴ってでも止めてみせる、を地で行く……魔法、少女?

○ぎるばとさん
 ツンデレじゃないアリサなんてただの少女じゃないか! (酷
 今ガンザが退場すると、一般人視点の人が誰一人としていなくなってしまう罠が……
  • 2009-12-21
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 53

第9章――第5節
――Can'tStop――


 ゆっくりと降りてくる縁の姿を見て、ガンザは素直にグロいと感じた。ぬめぬめした身体が気持ち悪い。
 更地と化したそのクレーターにぬちゃりと降り立つと、船酔いのような気持ち悪さを別に感じる。以前に会った時よりも一層に魔力が強くなっているのか、そのゴキブリに似た身体から漏れているだけの魔力で気持ち悪くなる。
 魔力酔いなんて、普通はしないはずなのに。
 油断する事なくガンザは2本のデバイスをしっかり構え、一度だけなのはの顔を窺う。
 青い顔は、ゆっくりと血が上がってきている。
「久しぶりだね、縁ちゃん」
 レイジングハートを降ろし、無防備な格好のままなのはは縁へ言葉を投げかけた。
 その無防備さは逆にガンザがぎょっとしてしまう。
 看視者である海鳴 縁はなのはと同じ学校の生徒であった、それは知ってはいるが、まさかこうまで無防備に話し掛けるとは思ってなかった。相手は大量虐殺者であり、大量破壊兵器そのものだ。
 1歩なのはが前に出る。縁は動かない。
 即座にガンザが縁へ狙いを定めるが、なのはがガンザの前に手をやって止めるように指示をする。それどころか、前にやった手の平を下にして、デバイスを降ろせとまで指示がきた。
 何を考えているのかまるで分からない。冗談ではなさそうだが、縁を前にしてとてもデバイスは降ろせない。
「いっぱい、人が死んだよ」
 デバイスを降ろすかどうか躊躇するガンザを横目にし、すぐに縁へ視線を戻してから語るその口調は、ゆっくりと子供に聞かせるような優しい声だった。
 いっぱい人が死んだ。今更だ。
 今、自分達が立つこの場所に、どれだけの人がいたと言うのか。
 施設ごと、多くの命が丸ごと消滅してしまったのだ。
 肉の一片もない。
 血の一滴もない。
 何もない。
 何も残らない。
 最悪な虐殺。
『――私が殺した』
 頭に声が響く。念話に篭められている魔力が強すぎて、頭がずきりと痛み、ガンザは眉をしかめた。
 それなのに、なのははいたって普通の顔色をしている。先まで青い顔をしていたというのに。
『魔法に関わる者を沢山殺した、良い気分だ』
 淡々とした声。狂気の声。
 まるで笑うかのように縁の口が少しだけぬちゃりと開き、その鋭い牙が見える。グロい。
 その様子を前にしても、なのははポーカーフェイスのまま。
『私を作った者が、捨てた者が、苦しめてきた者が、ゴミのように死ぬ。実に脆い』
「縁ちゃんを捨てた人は、もういないよ」
 投げかけたその言葉に、縁の肩がぴくりと跳ねたようにガンザには見えた。
「人造兵器開発計画に携わった人はね――もういないんだよ、縁ちゃん」
 繰り返して、更に言葉を重ねる。
 顔色を変えず、表情を変えず、縁に言葉を投げかける。
 悲しそうな、その表情のまま。
「縁ちゃんが復讐したい人は、もう、いないよ?」
 諭すように。
 哀れむように。
 人造兵器開発計画に携わった者は、全員死んでいる。それはすぐに確認できた。
 皆、死んだ。
 縁が暴れるそれより前に、死んでいた。いや、殺されていた。
 全員が殺害されている。この2年以内の話だ。
 誰がやったのか、その手口でなのはは犯人に目星がつく。
 全員が、銃弾による狙撃。
 誰が殺したか、それは分かる。理由もきっと、想像したので当たりだろう。
『それがどうしたと言うんだ?』
 返されるその声は、やはり淡々として、どこか気を違えたような、そんな気持ちの悪い声。
 人間臭いのに、化け物の姿に良く似合った、気味の悪い声。
『私は殺す、魔法に関わったものを殺す。理由はそうだな……気持ち良いからだ。楽しいからだ』
 縁の肩が、まるで笑うかのように軽く震える。
 快楽殺人とでも言うのだろうか、最低だ。やはり未だに降ろせなかったデバイスを、ガンザは迷う事なくまっすぐ縁に構えながら心の中で吐き捨てた。
 頭の中にガンガンと響く強大な魔力に乗せられた念話を聞きながら、ガンザは再びなのはの顔色を窺う。
 まっすぐ、まっすぐ。
 醜悪な化け物をただただまっすぐ、なのはのその目は捉えていた。
「魔導師が、憎い? 魔法に関わる人が、憎い?」
『ああ――当然だ。私をつくり、体中を弄り回し、用が済めば捨ててしまう、そんな奴等が大嫌いだ。私は魔導師が、大嫌いだ』

「それに、アリサちゃんを襲った人が、魔導師だからだよね」

 ぐちゅっ、と、なのはのそれに縁は口を閉じて黙した。
 沈黙が降りた。
 アリサちゃん? 誰?
 どこかで聞いた事があるようなないような、その名前にガンザは眉を一度顰めてから縁へと目を向けた。気持ち悪いその姿は変わらない。
「芝居下手だよ、縁ちゃ――」
『黙れ、魔導師』
 続く言葉を遮るように、縁が軽く左上の手を振るって

 ドッ、となのはの左頬を “何か” が掠めた。

「――は?」
 目の前に敵が居るというのにも関わらず、ガンザは思わず超高速で通り過ぎて行った何かへと振り向いて
 轟音。
 鼓膜を突き破るかのような爆発音。
 身体がビリビリとその音の振動で震える。
 振り向いた先の地面が、盛大に爆発し、抉れていた。
 弾丸……魔力弾? 魔法陣の展開も弾丸の形成も何もなかった筈なのに。
 ごくりと生唾を飲んだ。
 たったあれだけの動作で、この破壊力。拳銃を目の前に突き付けられているよりもずっとたちが悪い。生態 “兵器” の名に恥じない、正に兵器そのもの。
「アリサちゃん、閉じ篭ってるよ」
 その兵器を前にしようが、前にその兵器に殺されかけていようが、ガンザの恩師はまるで怯む事なく、デバイスを構える事もなく、堂々と対峙していた。
 ぴくりと、再び縁が反応する。
「怖い思いをして、沢山泣いて……アリサちゃん、自分の中に閉じ篭ってる」
 アリサちゃん、アリサ。聞いた事がある気がするのだが、どうにもガンザは思い出せない。
 しかし、その名前に縁は明らかに反応していた。
『……帰れ、魔導師』
「アリサちゃんに、会って」
 忠告のような、言外に見逃してやると言っている縁のその念話がまるで聞こえていないかのように、なのはは一歩前に出る。
 じゃり、と足が下がった。
 縁の足が、下がった。
『帰れ、魔導師』
 気圧されるかのように足を下げながら、もう一度忠告がきた。
 何の話なのかは分からない。口を挟む余地が何処にもないガンザは、不安そうになのはを窺うしか出来ない。
「友達だったら――アリサちゃんの友達だったら、アリ」
『友達ではない!!』
 そして、がんっ、と叩きつけられるような強烈な念話に、頭がくらりと来た。念話が攻撃になり得るとは想像した事もなかった。
 なのはも似たような感じなのだろうか。それでも、脳が焼き切れそうな量の魔力で送られた念話に、なのはは眉を少し顰めるだけで体勢を一切崩さずに対峙している。
 目を全く逸らさない。
 まるで迷いのないその目を、まっすぐ化け物に向けたまま。
「それでも、アリサちゃんの “一番” は縁ちゃんだったよ」
 下がらず、退かず、返す。言葉を返す。
「私は友達になれなかった。慢心してたし、凄い馬鹿だった。もしかしたらアリサちゃんも、縁ちゃんとちゃんと友達になれてなかったのかもしれない。でも」
 それでも、だがそれでも。
 なのはは知っている。
 見ていたから。間近で見ていたから。

「それでも、アリサちゃんは、縁ちゃんを一番大切にしてたよ」

 アリサがとても縁を気に掛けていた事を知っている。縁の話題でアリサがとても綺麗な笑みを浮かべる事を知っている。
 作った笑顔じゃない。
 アリサのお得意である、愛想笑いではない。
 本当に歳相応の、とても綺麗な笑顔を向けるのだ。
 ぐっと、なのはは一度奥歯を強く噛み締める。
 アリサですら、縁にとっては友達になれなかったのかもしれない。
 それでも。
「一番、大切にしてたよ」
 これは間違いじゃない。間違いのはずが、ない。
 あの笑顔が、嘘のはずが、ない。
 自信を持って言えるその言葉を、なのはは重ねる。
 縁の口が、まるで何かを言いかけたかのように一度開く。粘液が砂の上に落ちた。ぬとり、と。
 それでも縁はその口をすぐに閉じてしまう。
『……たい、せつ』
 細く、弱く、掠れるようなほどに微弱な念話。漏れた心の声と言うべきか、呟きと言うべきなのか。
 会話の内容にまるでついて行くことが出来ないガンザは、せわしなく縁となのはを交互にきょろきょろする事しか出来なかった。
 縁の呟くような念話のそれに、なのはは少しだけ眉を寄せてからレイジングハートを縁に見せ付けるかのように真上に翳す。
 交戦する気だろうか。そうガンザ思ったものの

 ぽい、となのはは大切なその相棒を真横に投げ捨てた。

「いぃっ!?」
(( I do not indeed feel pleasure in this handling ))
 思わず投げ捨てられ、更地となってしまった地面に転がるレイジングハートを目で追ってしまう。
 流石に自分が投げ捨てられるとは思っていなかったのか、若干レイジングハートが冗談混じりながらも寂しそうな声を上げる。
 突然何をしているのかと、ガンザが慌ててなのはの方を振り向くと、デバイスなしの完全無防備なその格好のままなのはが縁へと足を踏み出しているところだった。
「もう、こんな事は止めて、縁ちゃん」
 しっかりと縁を見据え、はっきりと声を出す。
 自分は無害だと主張するかのように、両手を軽く広げながら再びもう一歩。
 醜い。そうとしか表現できない、正直なところ男であるガンザですら視界に入れたくない巨大ゴキブリのような姿の縁から、少しも目を逸らさない。その姿に恐怖も嫌悪感も抱いていないかのようにその声はまるで震えていない。
 青い顔に脂汗を浮かばせていたのはついさっきのはずなのに、決意を決めたようなその顔の色は、むしろ健康的なほどである。
 何をやっているのだろう。
 目の前の少女は、何をやっているのだろう。
 縁が動揺を示したからとはいえ、無防備すぎる格好で縁に近付こうとするなのはの行動が、ガンザにはまるで理解できなかった。
 AAAという途方もない才能を秘め、10にも満たない頃に実践の中に放り込まれ生き抜いた、そんな生粋の天才の考えは理解できない。
 胸をしっかりと張り、堂々とした足取りで、更になのはは一歩近付く。
 ああ、もしくは。
 目の前の天才を止めることもせず、縁へ向けてデバイスを向けることもせず、なのはを唖然と見送りながら、ガンザは心の中で呟いた。
 あの少女は、壊れてしまったのか。
「こんな事は止めて、アリサちゃんと会って」
 力強いその一言。
 縁の足が、再び下がった。
 下がったその倍、なのはは足を進める。
 臆さず、怯まず、退かず。
 ざっ、と砂の上でようやくなのはは足を止めた。

 目の前には、縁。

「もう縁ちゃんの罪は償えないかもしれない。皆の言う通り、縁ちゃんの言う通り、手遅れなのかもしれない。けど、これ以上、罪を重ねないで」
 手を伸ばせば届く、そんな距離でなのはは縁を見上げる。
 頭1つかそれくらい高いところから、縁はその巨大な複眼レンズを向けるかのように下を向いてなのはを見下ろす。
 海鳴 縁は、人と話をするときは身体を向けてその人の目を見て話をする。簡単そうでなかなか出来ない、そんな事を当たり前のように行う縁が、なのはは好きなのだ。
 そしてそのなのはが好きな縁は、目の前の縁で間違いはない。どんな姿であろうとも、人の目に目を向けることの出来る、そんな所が変わっていない。
『…………帰れ、高町さん』
 威嚇するような、硬い声色の念話。
 だが残念。その演技は大変残念だ。
 じっと、なのはは縁を見上げる。
 腐った紅茶のような臭いがする。それが縁の身体を守るかのように覆っている粘液の臭いなのだと、近付いてみてようやく分かる。
 なのはは、縁の事を何も分かってはいなかった。
 縁の抱えている問題にも気付けなかったし、縁が悩んでいる事を知りもしなかった。結局、アリサとの仲の事だって何の手助けも出来ていなかったのが事実である。
 だが、それでも分かってきた。理解できてきた。
 撃墜されてから、だんだんと。
 こうして話してみて、だんだんと。
 縁はまだ悩んでいる。まだ苦しんでいる。それがだんだん分かってきた。
 そして、縁の根本は変わってないのだと、分かってきた。

 アリサが好きで、友達が好きで、そんな根本がまだ生きているのだと、分かってきた。

 だってほら、確かに今、高町さん、と呼んだのだ。

「もう、こんな事、やめて」
 はっきりとしたその声は、思いの他大きくなっていた。
 確かに縁は手遅れだ。罪を重ね過ぎた。
 だからといって、それが更に罪を重ねて良い理由になるはずがない。
 その罪が縁を蝕むのなら尚の事。
 罪を重ねるのは、やめてくれ。
 心の底の気持ちを訴える、自分の考えを訴える。きっと、フェイトに訴えたときの縁の気持ちは、こうだったはずだ。
 ふるふると、その縁は首を振って返す。
 否定の意を、はっきり返す。
『止められない。止まらないんだ、私は、もう――っ』

「なら、私が止める」

 とん、となのはは自分を示すように張った胸に手を置いた。
 ぴくりと縁の肩が跳ねる。
「私が止める。力づくでも止めて、首に縄をつけてだってアリサちゃんの所に連れて行く」
 ずいっと唯でさえ近い縁との距離を、更に詰めた。
 反射的なのだろうか、縁の足が下がりかけるが、思い止まったかのようにその足がぴたりと止まる。
「私が止める。止めてから、いっぱいお話したい。謝りたい事がいっぱいあるの」
 真正面、縁の頭は真上。
 更に近付く。すり寄る。足を進める。
 ぐちゃりと、体がぶつかる。
 ア、と縁の声が漏れる。漏れるその時に縁の口が少し開き、その顎から粘液がぬとりとなのはの頬に落ちた。
 それでもなのはは嫌な顔1つ浮かべる事なく、縁を見上げながら両手を横に開いて

 ぬちゅっ、と音をたてて縁の身体を抱き締めた。

 臭いと言えば確かに臭い。このドロドロした粘液とて気持ちの良いものではない。
 ないが、それでもなのはは抱き締めた。
 やや弾力性のある粘液の向こうにある縁の身体は、鋼の如く硬い。閉ざす心の如く硬い。
 まっすぐ、まっすぐに縁を見上げる。
 人間ならばキスが出来るくらいに、近い。
 ゆっくりと息を吸い込み、なのはは口を開く。
「それに縁ちゃんと、今度こそ、きちんと友達になりたい」
 結局のところ、高町なのはを突き動かしている最大の理由は、こんな小さな事だった。
 小さいが、大切な事で。
 その大切な事が上手く噛み合わなかったから、こんな事になってしまって。
 取り返しはつかなくても、また始める事は出来る。それが破滅の前の一時だとしても、全てを破壊し尽くしてしまっては間に合わない。
 ぐちゅ、と縁は口を閉じる。口を閉じても牙が見えた。粘液が垂れる。頬に垂れる。
 抱き締めるなのはの腕を、まるで繊細なガラスでも触るかのような手つきでゆっくりと、その4本の手で掴む。
 軽く掴んだだけなのに、なのはの腕は鋭い痛みを訴えていた。握力が人間の比ではなく、例えバリアジャケットで身を守っていようとも物理的に中身を握りつぶせる縁の手では、これ以上の加減は出来ない。
 それでもなのはは表情を歪めず、そして変わらずに縁を見上げる。
 そっと、だけど力づくで、縁は抱き締めてくるなのはの腕を解く。
『……友達には、なれない。なれなかったんだ』
 まるで諭すような声。
 それになのはは首を振る。
「1回2回嫌われたくらいで諦めるなんて、できないよ」
 後ろでガンザがえ? と軽く声を上げたのが聞こえる。
 ガンザにとって、それは聞き覚えのある台詞だった。いや、言った覚えのある台詞か。なのはに対して、前にそんな台詞を言った気がする。
『…………っ』
 すると突如、縁がなのはをどんっ、と突き飛ばした。
 突き飛ばされたなのはは、まるで車にでも轢かれたかの勢いで吹き飛ばされ、後ろに控えていたガンザと衝突。そしてそのままガンザを巻き込み地面に叩きつけられ、一度バウンドしてから空中を数回回り、再び地面に落ちる。
 ぶっ、と短いガンザの悲鳴。下敷きにされていた。
「ア――」
 その光景に、自分が力加減を誤った事を悟ったのか、縁が一瞬だけ心配そうな声を上げる。
 上げるが、それでもすぐに首を振って返す。
 仰向けに倒れている自分の身体を起こすかのように、なのはは空に手を掲げ、それから思いっきり地面を叩いて上半身だけを跳ね起こす。右手がガンザの顔面に命中していた。
「っ、アリサちゃんとだって!」
 身体を起こした時にずきりと肩が痛んだが、それでも言葉は口から勢い良く飛び出していく。
「嫌いになったまんまじゃ、悲しすぎるよ」
 びくっ、と縁の肩が跳ねる。
 睨むこともなく、ただまっすぐ見つめるなのはの目に、縁はそのまま沈黙で返す。
 沈黙の降りる中、未だになのはの右手で顔を押さえ付けられているガンザは、ようやくアリサという名前が誰を指しているのかを思い出した。確かに居たなぁ、被害者の中にそんな名前の一般人が。
 10秒、20秒。
 先に顔を背けたのは、縁の方だった。
 ぶん、とその場で左上の腕を振る。

 たったそれだけの動作で、しかも構築時間がほぼ0で、縁の足元に訳の分からない魔法陣が一瞬で形成される。

 丸、三角、四角、五角、六角、ごちゃごちゃと混ざり合った上に、解読不能の言語による特殊な数式。縁特有の、理解及ばぬ原理で組み立てられた魔法陣だ。
「くっ、教官!」
 攻撃がくる。
 反射的にそう判断したガンザは、顔に圧し掛かるなのはの手を払い除けると同時に、右手でなのはの襟首を引っ掴み、更には右足をなのはの足に絡ませるようにしてから転がるようにして一気に体勢をひっくり返す。体格差もあり油断しているせいもあり、なのははいとも簡単に逆に地面に押し倒される。
 例えデバイスを手放していたとしても、なのはのバリアジャケットがいかに頑丈であるかというのは身を持って知ってはいるが、それでもなのはを庇うように身体が動いてしまったのはほとんど反射に近いものだった。
「うぐっ、ま、って――」
 体勢を入れ替えられ、ガンザにうつ伏せの状態に押し倒されてなお、なのはは縁へと顔を向けた。
 違う、あれは転送だ。
 ガンザとは違い、なのはは確信を持って縁が構築した魔法を “理解” していた。
 しかもあれはただの転送なんかじゃない。いや、そもそもミッドチルダ式にせよベルカ式にせよ、魔力構築による空間の相互交換などというまどろっこしい事を一切せず、純粋に空間を “跳ぶ” 魔法だ。それこそ、ぴょんと跳んで身体を宙に浮かせるかのごとく簡単に。
 攻撃じゃない。
 そんなもの、“魔法陣を見ただけで理解できた”。
 待って。その言葉をかける時にはもう、縁の身体は光に包まれていて。
「――縁ちゃん!!」
 ごちゃごちゃした感情を込めて、万感の想いを乗せて。
 名前を、呼んで。

 それが届くより前に、縁はこの場より去っていた。












 顔からひりひりと訴える痛みと、安心できるような暖かな感触に揺すられて、フェイトの意識はようやく浮かび上がってきた。
「起きたか」
 ぼんやりと目が覚める、そんな些細な変化すら見逃す事無くシグナムの声がした。
 目の前で。
 間近で。
 聞き慣れた、ちょっとだけ低く落ちついた声が。
「ん……むぅ……?」
「――やれやれ」
 ぼんやりとしながらも取り合えず、目の前にあった暖かな何かに顔を埋めた。良い香り、ちょっと汗の匂いがする。
 記憶の奥底に、これとよく似た思い出があった。
 昔、母の背に背負われて。
 それはフェイトの記憶ではない。フェイトは一度たりとも、母であるプレシアに背負われた事はないし、まさかリンディに背負ってもらう年齢でもない。
 だが、それは記憶の奥底にあった。
 フェイトの記憶じゃない。
 姉の記憶だ。
 姉である、アリシアの記憶。借り物の思い出。
「泣いているのか?」
 顔を埋めたままで押し黙ったフェイトに、シグナムは泣いているのかと思った。
 気絶したフェイトを背負い帰る道、ようやく起きたフェイトはシグナムの首筋に顔を埋め、その細い肩を震わせていた。負けて悔しいのか。流石に竹刀で殴り過ぎたかとも思ったが、それについてシグナムは特に謝る気はない。
「シグナムは……強いですね」
 声はしっかりしていた。ただ、シグナムの首筋に顔を埋めたその体勢は崩さない。
 む、とシグナムは一度口をへの字にした。
 別に背負っているのが重い訳でもうっとうしい訳でもない。短純に宣言した通り、人を慰めるというのがシグナムは苦手であった。
「私も、あのアステマとかいう者には手も足も出なかったさ」
 何と返すべきかと少し迷ってから、シグナムはそう口にした。
 自分は強い。ベルカの騎士として、八神はやてを守護するヴォルケンリッターの剣として、強くあろうとしている。
 人ではない身で尚、努力も鍛錬も欠かさず、場数も踏んでいる。
 自分は強い。それは自信ではなく、結果として強い。
 だがアステマには手も足も出なかった。
 攻撃が通らない。いや、通ってはいても再生する。蘇生する。
 力量と技術ならばシグナムの方が圧倒的に上なのは確かであった。と言うよりも、アステマはそのスペック任せだけで、明かに戦闘技術は幼稚なものであった。
 それでも負けた。完敗である。
 それが事実。
「私も、シグナムに手も足も出ませんでした」
「なに、ただの真似事をしただけだ」
 笑って返した。
 確かにフェイトの竹刀を一度も受けていなかったと、今更ながらに思い出す。
「誰のですか?」
 顔を埋めたその体勢を崩さず、その体勢は崩れない。
「看視者のな」
 フェイトを背負い、まっすぐ前を向きながら、そうはっきりと口にした。
 その名を出して何か反応するかと思ったが、フェイトは背負われたまま沈黙を返してきた。縁に対し、気持ちの整理がついたのだろうか。
 月明かりの淡い夜に、遠くで聞こえる海の波。フェイトが黙り、シグナムも自然と沈黙してしまう。ぬるいその風を切るように、シグナムは大股で歩く。
 看視者が海鳴 縁という少女とは知らなかった時、シグナムはヴィータを助けに縁と対峙した事がある。
 結果的に勝ったも負けたもなく、ただ追い払っただけなのだが、その時は逆にシグナムの剣はまるで縁に届かなかった。剣筋どころかシグナム自身の動きを予測されている、そんな立ち回りを目の前で披露されたのだ。
 後から思えば、あの立ち回りは素晴らしいものだと、純粋にそう思えた。
 闘い慣れたフェイトを相手にし、魔法を使わないというフェイトにとって不利でしかない条件が揃い、ようやくシグナムはそれが真似できた。それを縁は初めて顔を合わせたシグナム相手に魔法戦闘で行なっていたのだ。どんな技量かと。
 その時の事を思い出しながら1人苦笑を浮かべていると、フェイトがシグナムの首筋に顔をこすり付けるようにしてもぞりと動く。長い髪がくすぐったい。
「私、あの道場で海鳴さんと試合をしました」
 ぽつっと、フェイトが漏らす。
 どこか懐かしむような、そんな声色。
「ああ、聞いている」
「シグナムに無理を言って模擬戦をした、あの日です」
「ああ」
「超高速の一点突撃、あの戦法考えてくれたの、海鳴さんなんです」
「――彼女はとても強く、とても聡明だと、そう聞いた」
「はい……私なんか足元にも及ばないくらい強くて、凄く頭が回って……」
 耳元をくすぐるようなその呟きは、まるで憑きものでも落ちたかのようにリラックスしていた。
 そうか、とシグナムは返す。口元の笑みが、先のものとは違っていた。
 もぞりと、フェイトが再び少しだけ身体をよじる。
「とても、優しくて……」
 シグナムの首筋から、顔を上げた。
 上げて、星空を見上げるように顔を上げて。

 泣いていた。

 思い出して、ようやく思い出す事が出来て、フェイトは涙が溢れていた。
 シグナムの足が、ぴたりと止まる。
「あの道場で海鳴さんに試合をふっかけた時、海鳴さんはもう、私が魔導師だって知っていたんです」
 そう、知っていたのだ。
 当たり前である。だってフェイトはその2日前に会っているのだ。
 魔導師として、看視者と、フェイトは会っている。縁と会っている。太陽の沈まぬ不毛の大地で。
 だから縁は知っていたのだ。あの日、学校の屋上で握手をするその時にはもう、フェイトが縁にとって大嫌いな魔道師であるという事を。
 縁がフェイトに対して含んだ言動が多かったのは、短純にその為だったのだと今更ながらに思い知る。
 荒事が似合わないと言ったのは、フェイトが実際に大鎌のようなデバイスを振り回しているのを目の前で見ているからだ。
 最初の頃にフェイトの事を避けていたのは、自分を実験動物の如く虐待していた管理局の魔導師だと知っていたからだ。
「知っていたのに……ちゃんと、向き合って……くれ、て」
 星空が歪んで見えない。涙が止まらない。
 何か声をかけようかとシグナムをは口を開きかけるが、慰めの言葉が何一つ頭に浮かばず、そのまま口を閉じてしまう。
「試合の時だって、いっぱ――いっぱい、アドバイスをくれ、て……いっぱい、注意して、くれて」
 魔導師だと知っていたはずなのに。
 縁にとって大嫌いな相手だと分かっていたはずなのに。
 それでも、縁は向き合ってくれた。大嫌いな魔導師と向き合ってくれた。
 力は凶器だと、武器は凶器だと、そう言葉を投げかけた。
 きっと、“力” というのは魔法が含まれるのだろう。
 きっと、“武器” というのはバルディッシュが含まれるのだろう。
 それらは使い方1つで人を傷つけてしまう、誰かを殺めてしまう、そんな怖いものと髪一重なんだと何度も言葉を投げかけてきた。
 それを使う覚悟はあるのか。そんな力を振るう覚悟があるのか。
 間違えれば何かを壊してしまう、そんな覚悟はあるのか。
 強くなって何をするのか。
 その力で何をするのか。
 悲しんでいる誰かのためじゃない。理不尽な暴力に泣く人のためじゃない。聞こえの良い言葉じゃなく、曖昧な言葉じゃなく、はっきりと言え。
 そう投げかけた縁の言葉を、今頃になって理解した。
 本当に、今頃になって、縁があの時に何を訴えていたのか、ようやく分かった。
 縁があの時、フェイトに伝えたかった事はただ短純に――

「力を振るうのを――人のせいにするな、って――」

 泣いている誰かの為と理由をつけて、誰かに武器を向けるのか。
 理不尽な暴力に泣く誰かの為と理由をつけて、誰かに暴力を振るうのか。
 それがどれだけ矛盾した事なのか、どれだけ恐ろしい事なのか、縁はそれを必死に訴えていたのだ。
 それを今更になって知る。
 あの時、縁はきっと、それが伝わったのだと思ったのだろう。
 伝わったと思ったから、対シグナムの戦略を一緒に考えようと言ってくれたのだろう。
 馬鹿だ。
 間違いなく自分は馬鹿だ。
 結局、縁の伝えたかった事を自分は何一つとして理解していなかった。
 誰かを護りたい、誰かを救いたい、その気持ちに揺るぎはない。揺るぎはないが、だからといってそれが他の誰かに力を振るう免罪符にして良い訳がない。ある訳がない。
 そんなもの、ただの暴力。
 暴力だ。
 ああ、なるほど。あの時に縁の言っていた言葉は間違いなくその通りだ。
 力を振るわれる側にしてみれば、フェイトの力は法と正義の名を借りた暴力に他ならない。
 星空を見上げ、嗚咽をあげる事なく涙を流すフェイトを背負い、シグナムは一度困ったように軽く溜息をつく。
 それから一度口を一文字にし、首を捻った後、ゆっくりと開いた。

「…………獄門島は、放送禁止だそうだ」

 あまりに唐突な一言だった。
 というか、実にどうでもいい一言だった。
 突然切り替わった話に、フェイトはきょとんとして思わず顔をシグナムに向けた。
「…………」
「…………」
「…………」
「……………いや、すまん」
 その髪から覗く耳が、かなり赤くなっているのが月明かりの下でもはっきりと分かった。
 視線を若干地面に落しているシグナムのその目は、フェイトの位置からでは見えないが何かを探しているかの如く忙しなく動いている。おもいっきり動揺している反応であった。
 こほん、とシグナムはわざとらしい咳払いをしてから再び口を開く。
「あー、知ってるか? オシドリ夫婦というのはな、仲が良いのは実は――」
「巣を作るまでですよね」
「………あー」
 いつだったかCMで見た知識であった。正に豆知識。
 あー、だの、むー、だの唸ってから、シグナムはすっと顔を上げて前を向く。
 前を向いて、胸を張って。フェイトにとってシグナムの姿勢とは、そんなイメージがある。
「その、なんだ……あまり気にするな」
 口にする言葉は何か、選んで喋っている感が抜けないが。
「悪い事をした者は叱り、反省せねばバシッと叩く。そんなものだ」
 話題が随分とマイクロな方面に傾いている。それは子供の躾だろう。
 きょとんとした顔のまま、フェイトはえ? と聞き返す。
「自分の言う事を聞かぬから叩いて聞かせる、という解釈も出来るが……あー、いや………まぁ、誰だって、叱ってくれる者がいる内が華だからな。誰かが叱ってやらねばならぬから叱ってやる、くらいの気持ちで良いと、思うぞ?」
 疑問系だった。
 何を言いたいのかがさっぱり分からず、フェイトにとっては言葉の返しようがない。
 次の言葉が思いつかないのか、シグナムは口を一文字に結んでからてくてくと再び歩き始める。
「あー………………なんだ、テスタロッサは気負い過ぎなのだ、何事も」
 随分と考えてから漏らした一言は、なんだか周りか結構言われている言葉でもあった。
 なんと返事をしたものやら。フェイトは困り顔を浮かべてから、まぁ、はい、と妙にばつの悪い返事をした。
 話の腰が、真っ二つにへし折れている。
 しばらくシグナムは無言で歩くと、観念したかのように溜息を軽く吐く。
「――――すまん、やはり私は人を慰めるには向いていない」
 凹んでいた。
 口が上手い訳ではないと重々自身でも承知はしていたが、まさか戦友の悩み1つ相談に乗れないというのは落ち込んでしまう。こういうのはやはりはやてかシャマルかの出番だと思っている。
 再びフェイトはきょとんとした表情を向けてから、ぷ、と軽く笑った。
 軽く笑い、こてん、とまたシグナムの首元に顔を摺り寄せるようにして抱きつく。
 不思議と涙は止まっていた。
「シグナムは」
「――ん?」
「凄いです」
 素直な感想だった。
 言葉こそは下手だが、元気付けようとしてくれているのははっきりと分かる。

 シグナムの方が、大怪我で死に掛けたというのに。

 それでも身体を “直し” たら即座に前線に出る。恐怖など感じてないかのように、レヴァンティンを握り戦いへと踊り出る。胸を張り、堂々と。
 とてもとてもフェイトには真似が出来ない。今、正に出来ていない。
 その上にフェイトを鼓舞しようとしているのだ。もう、凄いとしか表現が出来ない。
 褒め言葉のはずのフェイトのそれに、何故かシグナムは苦笑いで返した。
「凄くないさ」
 謙遜、という感じではなかった。
「凄いですよ」
「いいや、凄くないさ」
 更に言葉を重ねるシグナムに、フェイトは軽く首を傾げる。その長い髪がシグナムの首をくすぐった。
 ほぅ、と溜息を吐くように、シグナムは夜空を見上げる。
「戦友を奮い立たせる方法が何一つ思いつかん、そんな馬鹿が凄い訳があるか」
 どーせ剣を振り回すくらいしか能のない騎士だしな、と笑う。自虐の色がまるでない、そんな苦笑い。
 フェイトの息が、軽くつまる。
「外の空気を吸わせ、身体を動かさせ、殴ってしっかり眠らせる……気分転換しか、思いつかなかった。情けないな、私は」
 もう一度ふぅ、と息を吐いてから、シグナムは再び前を向く。胸を張り、前を向く。
 シグナムの口から自分を哂うような言葉が出てくるとは、思ってもいなかった。
 と、言うか。
「それじゃあ、シグナムが私を連れ出したのって……」
「言ったろう。私は剣でしか語れないと」
 シグナムに出来たのは、たったのそれだけ。
 部屋に篭ってうじうじしていても、気分は滅入る他ない。フェイトのようなタイプが、身体を動かさないでストレスが発散されるとは思えない。そして何より、悩んでばかりでまるで寝ていない。
 そんなのでは、気持ちの整理など出来る訳がない。
 だから連れ出した。
 だから闘った。
 だから、殴った。
 器用じゃない騎士に出来るのは、たったそれだけ。
「気分を変えれば、答えが出るやもと思ってな」
 随分強引な気分の変え方だ。
 フェイトは小さく笑った。
 シグナムらしいと言えば、シグナムらしい。
「ありがとうございます」
「いや、礼を言うことは……」
 バツが悪そうなシグナムに、フェイトは首を横に振る。
「すっきりしました」
「……そ、そうか」
 少しほっとしたようなシグナム。人を励ますのが本当に得意じゃないのだろう。
 得意じゃなくて、自信がなくて。それでもシグナムは胸を張る。
 自信があるから胸を張るんじゃなくて、胸を張るから自信がつく。
 フェイトが一息つく。
 すっきりした。本当だ。頭の中が驚くくらいにクリアになった。
 単純な話なのかもしれない。
 悩んでいた時、頭がごちゃごちゃし過ぎていただけなのだ。
「あれで、分かった事があるんです」
 剣道場での試合の事。
 シグナムとの試合で、縁との試合を思い出した。縁の言葉を思い出した。
 胸につく、その違和感として、縁の言葉を思い出した。
 怖くなかった。
 吐き気もしなかった。
 縁の事を、素直に思い出せた。
 その顔を、その姿を、その声を、その言葉を、その仕草を。
 看視者としてのあの形相じゃない。首筋に氷の刃を押し当てられたかのような殺気じゃない。こちらの防御を紙切れのように粉砕した雷撃の豪雨じゃない。
 忘れた訳じゃない。思い出そうと思えば、あの恐怖と絶望に彩られたような光景を鮮明に思い出せる。
 だけど、今は人として向かい合ってくれた、海鳴 縁として思い出せる。
 思い出して、思った。いや気付いた。

「私、海鳴さんに逢いたいです」














 たっぷりと10秒以上は硬く目をつぶってから、何も起こらない事を不思議に思いそろりと後ろを振り向くと、そこには誰もおらず、巨大なクレーターが広がっているのみだった。
「あ、え――? 退い、た?」
 何時の間にかいなくなった縁に、撤退したのかとガンザは安堵の溜息を吐いて――がばりとなのはに覆い被さっていた上体を起こし、素早く周りを見渡す。
 見えなくなったからといって本当に退いたとは限らない。気を抜きかけた自分を叱りながら、本当に縁がいなくなったのかをじっくりと確認する。
 うん、いない。
 慎重に1分少々時間をかけて周りを注意するが、縁が出てくる気配も仕掛けて来る感じもない事にガンザは再び安堵の息を吐く。
 助かった、というのが正直な感想か。
 攻防を繰り広げた訳ではないし、縁が見せた攻撃など奇襲のたった一撃だが、それでもアレには勝てる気が全くしない。漏れる魔力量だけで酔いそうであったし、あの雷撃の滝が直撃したら確実にミンチだ。というか、クレーターが出来あがっている時点であれは対物破壊の殺傷可能状態だったのだろう。
 何故この場で縁が退いたのかはよく分からなかったが、なのはの言葉で何かが効いたのだろう。
 最初の奇襲の時に自分達を直接狙わなかった事の説明は出来ないが、とりあえずそう思う事にした。
 と、そこでガンザの下でごそりと何かが動く。
「あの……ガンザ君?」
「へ?」
 真下から聞こえた元・上官の戸惑ったような声に、ガンザは視線を降ろす。
 うつ伏せに組み敷かれるようにして押し倒されていたなのはが、困ったように見上げている横目目線のそれにがっちり噛み合った。
 1秒、2秒、3秒。
 何とも妙な沈黙が降りる。
「……その、ちょっと重い、かな」
 ようやく漏らしたなのはの次の言葉に、そこでガンザはやっと自分の体勢に気がついた。
 何と言うか、押し倒しているその体勢は、なのはとかなり身体が密着している。特に下半身。
 見ようによっては、やらしい。
「うわっ、とっ!? すんません! すぐ退くっすっ!!」
 理解する同時に、即座にガンザは跳ね上がるように身体を起こし右に避けるが、勢い余ってそのまま地面の上をごろんごろんと転がってしまう。どこのコントかと。
 それでもガンザはすぐに身体を起こして立ち上がる。敬礼つきで。
「も、申し訳ありませんっしたっ!」
「あ、あー、うん、いいよいいよ。助けてもらった訳だし」
 堅苦しく謝るガンザに、困り顔のままぱたぱたと手を振りながらなのはももそもそと立ち上がる。なんともバツが悪い。というか、敬礼の使い方間違っている。
 咄嗟にガンザが自分を庇ってくれた事は分かっているし、そこに疾しい考えがないであろうのも今までの付き合いで知っている。庇い方にやや問題があっただけでガンザには非はない。それは分かる。
 ぱんぱんと、バリアジャケットについた土を払いながら、なのははなるべく笑顔を浮かべてカンザと向かい合う。
「いやー、ガンザ君って結構身体大きいんだね」
 妙な顔をされた。
 ガンザとしては素で返答に困っていた。
 そんな顔をしないでもらいたい。なのはも異性に押し倒されるなど生まれて初めてなのだ。フォローの仕方が分からない。
 何だか気まずい空気が流れた後、ガンザはぼりぼりと困ったように頭を掻く。
「あー……看視者、撤退したみたいっすね」
「縁ちゃんね」
 即座に訂正を喰らう。
 看視者で呼び慣れていたものだから、どうにも直らないのだ。
「まあ、何となく予想はしてたんだけどね。当りみたい」
 対峙したら死ぬレベルの危機が去ったというのに、なのはは別段安堵を浮かべる事なくしれっと言ってのけた。
 予想?
 自分達に攻撃を仕掛けてこない事をだろうか。
 縁と向き合っている時もそうだ。どこか攻撃してこない事を確信しているように、実に平然としていた。 
「予想って……あのアリサさん、したっけ? その子に何とかって言ってたやつっすか?」
「うん、そうだね」
 明言を避けながら返すなのはの言葉に、何の事だろうとガンザは首を傾げる。
 特に言葉を続ける事なく、なのはは辺りをきょろきょろと見渡し、転がっているレイジングハートを見つけるとそちらへと足を進める。その後ろを遅れてガンザが付く。
「……地上本部、壊滅っすね」
「…………そう、だね」
 ぽつ、とこぼしたガンザの一言に、なのはも小さな声で返した。
 互いに複雑な色が篭った言葉だった。
 人が、死んだ。
 沢山だ。
 知っている人もいる。
 たぶん、みんな、死んだ。
 縁が暴れだして、そういう事は増えてきた。
 知り合いが死ぬ。仲の良かった人が死ぬ。
 これは慣れない。慣れたら終わりだろう。
 これに縁に対して暗い感情が芽生えない、そんな訳はない。
 きゅっと、なのはは唇を強く閉じる。
 聖人君子じゃない。罪を憎んで人を憎まず、というのが正しいのが分かるが、割り切れるほどまだ人は出来ないない。
 憎い。それが本音。
 だが。
 いや、だから。
 だからこそ、縁を止めたい。救いたい。
 消滅した地上本部。
 こんな事を、縁にさせ続けては、駄目だ。皆悲しい思いしかしない。
 レイジングハートの傍で足を止め、なのはは膝を曲げてしゃがみ、レイジングハートを拾い上げる。
(( My master is a cruel person ))
「うっ……ごめんね、レイジングハート」
 相棒は見事にいじけていた。
 苦笑いで謝るなのはに、レイジングハートは数回点滅を返すだけ。ブー垂れているのか。
 その後ろでガンザはクレーターを見渡しながら、ボリボリと頭を掻く。
 こんなクレーターにされた場所に、あんな巨大な地上本部の施設があったと誰が信じるだろう。瓦礫の山になっている場面を見てなければ、ガンザとて信じられないかもしれない。
 その瓦礫の山も、縁の一撃で完全消滅だ。瓦礫に埋もれた人もまとめて、例え生きていようと構わず問答無用に消滅した。死体さえ残らない。
 残酷な事をする。
 なのはは説得していたが、ガンザからすれば縁はただの化け物にしか思えなかった。
 クレーターを見渡してから、本当に一片も残さず塵へ還されている事にガンザはイラただし気に溜息を1つ。
「本当に、やる事無茶苦茶っすね」
 行き場のない怒りが、その一言には篭められていた。
 そうだね、となのはは返しながら、ガンザに背を向けるようにしてゆっくりと立ち上がる。
「自分らは助かったっすけど……無茶苦茶過ぎるっすよ、地上本部まで墜とすなんて。底が知れないっつーか――」
「知れたよ」
 遮るようなその一言に、え、とガンザは間抜けな声を漏らした。
 知れたって。
「今ので、かなり分かったよ、縁ちゃんの事」
 レイジングハートを待機状態に移しながら、なのははさも当然の如く口にした。
 奇襲の一撃と、それからあの会話で何が分かったというのか。思わずガンザは首を傾げてしまう。とりあえず、真っ向から立ち向かったら瞬殺されるだろうのは分かったが。
 赤い宝玉に姿を変えたレイジングハートを首に下げるなのはに、ガンザは悩んだ挙句に質問を口にした。
「……どんな事っすか?」
「んー、縁ちゃんの魔導師に復讐したいって気持ちは、実はあまり大きくないとか」
 軽く、実に軽く返された。
 あれだけ魔導師が魔導師がと言っているのにだろうか。何だか腑に落ちないガンザは再び首を傾げる。
 そうっすか? と呟くガンザを背に、なのははパチンと自分の胸の前で指を鳴らす。
 鳴らした右の手の平に、小さな魔法陣が桃色の光を放ちながらくるりくるりと展開される。

 ミッドチルダ式ではない、魔法陣が。

 三角、四角、五角、六角。丸に読めない変な文字。
 その魔法陣をほぼ無表情に見下ろしながら、ゆっくりと握り潰すようにしてその複雑怪奇な魔法陣を霧散させる。
 顔をゆっくり上げ、ガンザへと振り返る。
 少しだけ、笑みを浮かべて。
「後は攻撃面かな」
 展開した魔法陣の事を悟られないように、なのはは言葉を続けた。
 知れたのは、縁の一撃。
 転送して最初に跳んできた時、地上本部は残骸瓦礫の山と化していたものの、確かに “存在” していた。
 そして次の一撃で “消し飛んだ”。
 魔力値300万のAAAランクが2人で対物破壊魔法を駆使して戦えば、街を1つ潰せるならば。

「縁ちゃんの攻撃面での限界、知れたよ」













「それじゃあ、アリサちゃん、そろそろ寝ようね」
 そうすずかが告げたのは、闇が空を深く染める、真夜中と呼んで良い時間であった。
 明日は休日という事もあり、すずかは持って来ていたお泊りセットの入ったショルダーバッグを、アリサと共に座っていたからベッドへと引き寄せる。そしてそのバッグからパジャマを2着取り出す。
 すずかの分と、アリサの分である。
「う?」
 はい、と手渡されたパジャマをアリサはまじまじと見入る。
 濃いピンク色をした、羞恥心を捨てなければ着れないような程にフリルが満載のパジャマである。普段のアリサであれば、絶対に拒絶反応を示すであろう物だ。
「あう、あー♪」
 そのパジャマをアリサは天井へと思いっきり放り投げる。ばさっ、とピンクのパジャマが舞う。
 そして反転。
 大きなそのベッドへダイブするように跳んだ。
「きゃ、わ♪」
 ばいんっ、とスプリングのよく効いたそのベッドに跳ね返されるように、アリサの身体が一度跳ね、そして頭の上に投げたパジャマがばさりと掛かる。
 どうやらパジャマを着るものと理解していない様子だ。
 ばいん、ばいん、とベッドの上を数回跳ね、ばっさばっさとフリルいっぱいのパジャマに猫の如くじゃれつく。
 普段のアリサならば、絶対に拒否するだろう、パジャマを。
 もう、とすずかは苦笑してから、ベッドの上にあがる。
 大きなベッドだ。すずかもキングサイズのベッドを持っているが、それより大きい。
 鳴りもしない静かなベッドのスプリングを沈ませ、すずかはゆっくりとアリサに近寄り

 そして、アリサを背後から抱きしめて、そのまま押し倒す。

「ぁう、しゅずかー?」
 良い香りがする。甘い花のような。
 不思議そうに名前を呼ばれた気がしたが、すずかはあまり気にならなかった。
 はぁ、と息を吐く。
 熱い息を。
「……着替えよっか」
 もぞ、とベッドへ押し倒したまま、すずかは手を滑らせる。
 ベッドとアリサの間に手をさし込んだまま、お腹から、胸へ。胸から、首元へ。
 ボタンを外す。
 手を降ろし、外す。
 更に降ろし、外す。
 柔らかな膨らみに手が触れた。
 ふにりと、そんな感触。
 その両の膨らみを、すずかは無遠慮に揉みしだいた。
 柔ら、かい。
「ひゅ、わ……ん♪」
 身体は反応してくれているのか、それとも短純にくすぐったいだけなのか、アリサは身体を丸めてすずかの拘束から逃れようとするが、すずかの腕はびくともしない。
 もぞもぞと抵抗するように動くアリサの首元に、すずかはゆっくりと舌を這わせた。
「にゃ?」
 ぴくっ、とアリサの身体が一瞬だけ固まる。
 ゆっくり、ゆっくり、舐める。
 汗の味。
 それがアリサのだと思うと、抵抗感がまるでない。
 舌を這わせる。上から下に。
 ぺちゃ、と微かにそんな音がした。
 おいしい。
 脳の奥がしびれるような味がする。
 舌を離す。きらきらとした、透明の橋がかかる。
 あ、とすずかは口を開く。
「は――ぁ」
「ん……しゅず――」
「あ、む――」

 かぷ、と、噛んだ。

 甘噛み。
 歯型が残らないくらいの甘噛み。
 ぴくんっ、とアリサの身体が僅かに跳ねる。
 跳ねた身体をすずかは上から強引に押し止め、噛んだ首筋を更に舐める。
 ぺちゃ、ぴちゃ、と音がなる。
 いやらしく、唾液をたっぷり塗り込むように。
 噛んだ歯を軽く離し、少しずつ唇を閉じる。
 ちゅ、ちゅ、と首筋にキスをする。
「あ……あ……ぅぅ、しゅずか、あ……」
 キスを降らせるその度に、アリサがくすぐったそうに声を上げる。
 名前を呼ばれる時は、わざと強く首筋を吸って跡をつける。
 キスをして。
 キスをして。

 深い青のその瞳で、すずかは他人事の様にキスを降らせていた。

 ぴたりと、そのじゃれ合いは止まる。
 すずかが止まる。
 瞳は赤く染まる事なく、牙などはえる事は勿論なく、理性は、しっかりしていた。
「……駄目だね」
 ゆっくりとすずかはアリサの身体を離す。
 苦笑しか、浮かべられなかった。
「気分が、出ないよ……」
 泣きそうに震える声になっていた。
 うー、うー、と不満の様にアリサは漏らしながら身体をよじり、ころんと転がってすずかを見上げ――きょとんとした顔になる。
「しゅずかー?」
 心配してくれているのか、アリサはすずかの頬を包み込むように手を当てる。すずかの目に、じわりと熱いものがにじむ。
 違う。
 好きなアリサは、違う。違うのだ。
 赤子のようなアリサも確かにアリサだ。だけど、好きになったアリサは違うアリサである。
 ああ、そうだ。違う。
 くに、くに、とすずかの頬が揉まれた。
「うー、しゅずかー」
 困ったような、逆に泣き出しそうな、そんな表情のアリサ。
 そのアリサの顔に、ぽたり、ぽたり、と涙が落ちる。
 泣けてきた。
 うー、とアリサも悲しそうに顔を歪ませる。
「なー、なー」
 ぺちぺちとアリサはすずかの頬を叩く。
 このアリサは、違う。
 違う、けど。
「なく、なー……なく、なー、しゅずかー」
 優しい所が変わっていない。
 人の涙に涙を流せる、そんな所が変わってない。
 きゅっと、すずかは優しくアリサを抱きしめる。
 この匂いも、変わらない。
「きゅ、ぅ」
 ちょっと苦しそうにアリサがうめく。
 このままじゃ、駄目だ。そんな事を今更ながらに強く感じた。
 アリサの身に何が遭ったのか、すずかは知らない。知らないが、記憶を閉じなくてはいけないくらい、きっと辛い事があったんだろうとは予想できた。
 きっと何かあった。
 たぶん、たぶんだが、なのはやフェイトやはやてや――きっと縁も関わっているのだろう。
 アリサの好きな人が、関わっているんだろう。
 だから、このままで良いとは、とても思えなかった。半月近くもかけて、ようやくそう思えるようになった。
 辛い思いをしたならば、忘れたままでも良いじゃないかという意見もあるが、それではきっと駄目だ。
 そう思い。
「な……くなー」
 ぎゅっと強く一度目を閉じる。
 嫌な事や辛い事があって、それから逃げるのは別に構わない。全部捨てて逃げるなら、文句なんて誰も言わない。
 だけど、このアリサは、優しい。
 全部捨ててなんか、いない。
「アリサちゃん」
 抱きしめた身体を離し、ゆっくりと顔を合わせる。
「う?」
「明日、出掛けよう」
 開放された事に首を傾げたアリサに、すずかはゆっくりと、だけどしっかりとした声を口にする。
 このままじゃ、駄目だ。
 駄目だから。
「アリサちゃんの、一番大切な人の家に、行こう」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 99を救うために切り捨てた1は、本当にいらないものなのか。
 そんな事を縁がフェイトにした “武器” の講釈に加えながら、シグナムがフェイトを諭すようなシーンを書きたかった訳ですが……やっぱりベラベラ喋るシグナムは、何か違うなー。全部カット。
 こんにちはこんばんは、読んでいる時間によってはおはようございます、お前の歳を数えろ、クロガネです。サイクロン! ジョーカー! あの喋り方が最高。

 今のフェイトが幸せだからって、笑って暮らせているからって、切り捨てたアリシアの存在は本当にいらなかったのか。ジュエルシードによる次元震から世界を守るために切り捨てたプレシアは本当にいらなかったのか。
 今のはやてが幸せだからって、笑って暮らせているからって、切り捨てたリインフォースの存在は本当にいらなかったのか。闇の書の闇は、いならかったのか。
 魔導師から切り捨てられた縁は、いらない子。
 そんな縁からすると、実は剣道場での一件でフェイトが語っていた “私は絶対に人を殺さない” という発言は到底許容できる発言じゃなかった訳です。ストレートに言うならば、鼻持ちならない。
 それにフェイトの “ただ漠然と弱者を護る為に力を振るう” という理念は、護る為に切り捨てられた側の縁にとっては滅茶苦茶なまでに不愉快な理念でもあったのです。
 ――理由は追々に。


 なのは嬢、人外魔境の仲間入り。でも押し倒される。


 健全。
 健全です。
 健全ですよー。
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10件のコメント

[C560] なのはちゃんパネェっす

なのはちゃんもしかして縁の術式ラーニングしてるのか!?
まさか看視者の完成体とかになるのか!?

フェイト復活?
でもシグナムの慰め方で吹いてしまった

すずか行動開始
個人的に身体能力において縁に匹敵すると思うので是非とも参戦してほしいところ
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : ルファイト
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[C561] 裏切ったな!

例のごとくエロスがあるかと思いきや!
頑張れよすずか!!
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : ぽりん
  • URL
  • 編集

[C568] コメントありがとうございまー

○ルファイトさん
 なのは嬢は一歩化け物に近付きました。まぁ、原作でもなのは嬢の環境学習能力は抜きん出てましたし。
 ちなみに獄門島はストーリー上どうしても欠かすことの出来ない言葉が放送禁止用語として引っ掛かるので、どう頑張っても放送できないオチです。原作を読み終わったはやてが映画版を見ようと思っていたエピソードは挟んでませんが。
 すずかは一般人でござる。

○ぽりんさん
 裏切ってない裏切ってない。ここは健全だとあれほど何度も(ry
 むしろ何を頑張れと!?
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
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[C569] なんというチート主人公(原作)

これは・・・ペロッ・・・・寸止めエロ。(コナン風に)

もっと頑張れよすずか!!!!
  • 2009-12-18
  • 投稿者 : なまにく
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[C570] 初書き込みです

始めまして。通りすがりに失礼します。

渋いですね、シグナム。フェイトをどうにかしようとして思案した結果でしょうが、やはりというか正面からぶつかって叩きのめしてから諭す。不器用で、実直というか。どうにも気の利いた言葉が出てこず、体で覚えこませるというか…
それでもなまじ言葉で言うより効果が出るんですよね、そういうのって。ぶっきらぼうで思いついた単語をズバッと言う。それだけでなく真正面から体でぶつかる。ひとつところで立ち止まっていたフェイトの気付けには十分なったと思います。
忘れてしまいがちですが、シグナムもヴォルケンの一員であるからには、長い間存在しているわけであり、”今の世にいる昔の人”とも言えるのでやり方が昔の人のやり方であっても何ら不思議は無いと思うのです。そのやり方だからこそ気づくこともある、と言うこともあるのではないでしょうか。

フェイトをはじめ、なのは・すずか共に新たなスタートラインに立った様子。アリサ復活までの道のりが楽しみです。
  • 2009-12-18
  • 投稿者 : 北アイリス
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[C571] コメントありがとうございまー

○なまにくさん
 な、何を頑張れと!?
 もとより原作でも魔力的な意味でなのは嬢はチートだった訳ですが。

○北アイリスさん
 はじめましてー。
 個人的にやはりシグナムはベラベラ喋るよりも、不器用でも身体で行くタイプだと思うのです。というかクロガネの趣味的に。
 普通に生活で馴染んでますけど、ヴォルケンリッターは仰るとおり昔の人な訳です。現代っ子の考えはよく分からないのが実情のような気がする。
  • 2009-12-19
  • 投稿者 : クロガネ
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[C572] 管理局全滅!!看視者は縁だった!!

久々に来たら話が大分進んでた(汗)タイトル通り管理局はほぼ全滅、この分だとレジアスも死んでるだろうし、指揮系統も滅茶苦茶で連携なんて取りようがないでしょう。後は各残存部隊が勝手に行動していくだけ、なのは達には却って都合が良いのかもしれんが。

しかしここまでくるとほっておいても勝手に潰れますね。メトロン星人も言ってました

「地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう」

縁の場合暴力は振るってるが、ここでピタリと行動を止めたとしても、責任の擦り付けや覇権を取ろうとする輩が必ずでてきて内輪もめになるのは確実。まあ同情の余地はないが。

なのはの言葉に揺らぐ縁、こういう展開だと混乱した相手に殺されるのがセオリーですけど、縁は離脱で死なずには済みました。しかし、混乱に乗じて縁のデーター収集してるの見ると、物凄く薄っぺらなセリフに見えてしまいますね、結局力ずくで解決が目的のような。最初から説得出来ないと思ったからそういうことしてる様に見えるし、全部縁を動揺させる為の演出っぽく見える。

フェイトが自覚したことは今更ですよねえ・・・よく国を守りたいとか理由で軍隊にはいる人と同じ、結局やることは「暴力」と「破壊」です。「収入を得たいから」、「やってて楽しいから」等、勤労の意欲が『自分の為』な人と、フェイトの様に『不特定の誰かの為』な人、どちらが良いかはしらないけど難しい問題です。

すずかが好きになったのは「いつものアリサ」、でも元に戻ったらアリサの気持ちは縁に向かうわけで・・・…報われんなあ(涙)。もう力技にでるか、ハーレムルートに入るしかないか?
  • 2009-12-19
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C573] ガンザくんの一般兵っぷりマジ最高!!

今回、ガンザ君はただそこにいただけだった、うん、とりあえずレイハさんがかわいいからどうでもいいや。

そして縁とのお話しようのターンは過ぎてしまいました、全力全開のバトルへの道を余儀なくされました。
やはり言葉だけじゃ止まらなかったか。

※ちょっと感想から外れたこと書きます。
なのは嬢はA‘Sで 「悪魔でいいよ」 って宣言してますよね。
話し合いをしようとして、それが失敗したら、次の瞬間には全力で砲撃。でも特に嘘ついてるわけでも、話し合うことを諦めてるわけでもなく、それが本心なところが、マジで生まれつきの悪魔です。
普通だったら、ある程度好意があって、嫌いじゃない人に攻撃することためらったり、思わず手加減するだろうけど、なのは嬢はためらわないし手加減しない、本気で潰しにかかる。辞めさせることを迷わない。
ほんと惚れるしかあるまい。一生ついていきます!
言葉で止められないなら、身動きできなくなるくらいボロボロにする。これ、常識的な人間性ってのを考慮しないなら、正しいことです。だからなのは嬢は悪魔なのだと思います。そんな貴女が大好きです。
子供のように正義論振りかざしながら、大人みたいに暴力をふるう。これが魔法少女の醍醐味。すばらしい、魔法少女素晴らしい。
※駄文失礼。


さて、とうとう本編にも糖分が滲みだしてきたように感じます。そろそろクライマックスシーンへと足がかかったようですね。頑張れみんな。
  • 2009-12-20
  • 投稿者 : TFJ,
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[C574] アリサたん、はぁはぁ・・・

なすずかたんが正気に戻ったようです。
そうだよね、やっぱりアリサはツンデレじゃないとね!(違

しかし、ガンザ生き延びたか・・・実はその他戦闘員じゃないのか?
ぬぅ・・・
  • 2009-12-21
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C575] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 セブンとちゃぶ台囲んで危険な話題を論議していたメトロンですね、渋い線を。しかしメトロン星人は随分長い目で侵略考える。
 なのは嬢はわりと狡猾な人物ですから。フラッシュインパクトから容赦なく頭を叩き潰そうとしたりとか平気でする恐ろしい子ですし、真正面からファランクスを受けきるとか言ったけど、実際はスターライトブレイカーの威力底上げの為で、防御も耐雷防御だったりと抜かりない。
 フェイトはあれです、平和を護る為に怪人殺している仮面ライダーは平和の使者だよね、っていう矛盾をそのまま受け入れたような。純粋と言うか、頭が足りていないと言うか。

○TFJ,さん
 ガンザはクロガネの中では重要な役割なんですけどね、実際。いや、説明役みたいな感じで。
 そう、糖分が出てきたって事は、もう一度突き落と(ry
 なのは嬢は言葉に嘘がないと同時に容赦もないですしね。殴ってでも止めてみせる、を地で行く……魔法、少女?

○ぎるばとさん
 ツンデレじゃないアリサなんてただの少女じゃないか! (酷
 今ガンザが退場すると、一般人視点の人が誰一人としていなくなってしまう罠が……
  • 2009-12-21
  • 投稿者 : クロガネ
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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