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[C525] まだ地球にいたのか

拠点が地球だと、アルカンシェルあたりで星ごと消し飛ばされそうな罠。

まあ、その辺はきっと巫女さんが何とかしてくれてる・・・はず?

とりあえず、すずか頑張れ~、と。
  • 2009-09-06
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C526] だれかアリサの×たま知らんかー

なりふり構わない管理局

なのはばお話゙するためなら平気で辞めそうな気がする
実は一番今の縁を人間に近い感覚で見てる気がする
良くも悪くも゙縁゙を見てるんですよねなのはは


フェイトは恐怖から管理局に追従しそうだがジュエルシード筆頭に本来使う事を禁ずるロストロギアを率先して使う局に疑問を抱くか?
抱かなかったら正義病確定


はやて
空気なので何も言えません(笑)


しゅずかーとアリシャー
絶賛理性と格闘中しゅずかー
崩壊し萌え量産機となったアリシャー
まさか縁に対する人質になるとかないよね……
  • 2009-09-06
  • 投稿者 : ルファイト
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[C527] コメントありがとうございまー

○ぎるばとさん
 むしろまだ地球にいたらマズい。とりあえず偽巫女は何も出来ないに1票。
 「すずか奮闘記」 じゃなくて 「すずかがんばる!」 辺りでも良かったんですが。

○ルファイトさん
 はやて空気、はやて空気! 生きているのやら死んでいるのやらと言うくらい空気! ユーノ君? 誰?
 なのフェイコンビは暫く仲違いと言うか意見の喰い違い。すれ違いの友情とか愛情とかって良いで(ry
 アリシャー……幼いアリシアあたりのような気がする……
  • 2009-09-07
  • 投稿者 : クロガネ
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[C528] 軍上層部やら革命家は何時もこう言う「戦い(革命)に犠牲はつきものだ!」と

もう人間として許されざる行為も平気でやろうとする管理局…って原作からそうだったな。縁が星一つ滅ぼせる戦力もってるからってなあ。というかミットチルダまだあるんですか? 諸悪の根源かつ管理局の大元なわけですから、私なら真っ先に最低でも政治やインフラが機能しない程度に破壊しますけどね。そんで救援に物資も人員も割かれて更に大変な状況に追い込むとかね。

今の管理局を見てるとウルトラセブンの「超兵器R1号」という話を思い出します。

「侵略者は、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」(ダン)
「我々は、それよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!」(フルハシ)
「…それは、血を吐きながら続ける…、悲しいマラソンですよ」(ダン)

ある意味こういうことバッカり繰り返してるから、次元世界は衰退する一方なんじゃ?アルハザードや古代ベルカは現在より進んだ文明もってたというのに。進歩→腐敗→滅亡→衰退→僅かに進歩…のサイクルを繰り返しているというか、過去の教訓が活かされてねえ!! 日本の50年どころか10年も平和が維持できないって、中東や旧ユーゴレベルじゃん。

すずかの理性は皮肉にも、自我が壊れた故に最も純粋となったアリサの行動によって阻止されている……「しゅずか~だいしゅき~♪」とでも言ったら最後まで逝きそうだがな!!(性的かつ猟奇的に)
  • 2009-09-08
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C529] そうよ! 使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ

○ミヅキさん
 これはまたクロガネのピンポイントをつい例えを。個人的にセブンの26話は名作だと思うのです。 セブンにおける 「ノンマルトの使者」 とか 「闇に光る目」 とかは個人的に非常に感銘を受けた話で(ry
 縁は基本的に管理局が嫌い、という訳ではなく、魔導師が嫌い、なので、別に管理局という組織は魔導師の勤めている会社程度にしか捉えてなかったり。しかし、実際ミッドチルダは既に――
「しゅずか~だいしゅき~♪」
 ……よし、クロガネの理性がヤバい。
  • 2009-09-08
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 49

第9章――第1節
――クロノとすずか――

 魔道師が憎い。
 魔導師は嫌いだ。
 死ねば良い。皆、死んでしまえば良い。
 己に言い聞かせるようにしても、縁は首を絞めるその手に力を篭められなかった。
 へし折るなど他愛ない。絞め殺すなど他愛ない。
 なのに、出来なかった。
「はぁ――は、ぁ」
 息があがる。
 腕が震えた。
 気を失い横たわる魔導師……高町なのはの首を、絞められない。殺せない。
 頭の中に、今更に記憶が蘇る。
 全然関係のない、そんな記憶。
 重箱のような弁当箱で、随分と大きいのにそれを当たり前のようにペろりと食べてしまう。
 足が遅くて、マラソンであっという間に周回差で追い抜かしてしまった。
 優しく笑って、とても明るくて。
 そんな人だ。
 高町なのはとは、そんな人だ。
 良い人なのだ。
 それを知っている。
 もしも泣かせてしまうという馬鹿な事をしなかったら、きっと高町なのはという人を縁は好きになっていた。
 でも、魔導師。
 嫌いな、魔導師。
 魔導師は殺す、殺してやる。
 だけど、なのはと一緒にいた記憶が、その決意に待ったをかける。
 おかしい。
 何を躊躇っている。
 アリサを襲ったあの魔導師は、簡単に殺せたのに。
 何で躊躇する。憎い魔導師だ。嫌いな魔導師だ。
「ぁ――はぁ、はぁ……くっ」
 汗が吹き出る。
 首を、絞められない。
 力を入れられない。
 魔導師なのに、殺せない。
 何故? 何故? 何故だ?
 殺せないのか?
 自分は、殺せないのか?
 魔導師を、人を、殺せないのか?
 そんな事も出来ないのか?
 化け物なのに。
 人じゃないのに。
 自分は化け物だ。醜く醜悪な化け物だ。誰もがそう見る。そんな目で見る。
 だから、化け物として生きてやる。
 そう、決めた、のに。
 目の前の魔道師一人、無抵抗の人間一人、殺せないのか。
 何故だ。何故だ。
 自問する。答えが出ない。
 首を絞めろ、首を絞めろっ。震えて動かない腕に必死に命令しても、これ以上動かない。

「なのはっ!」

「――っ!?」
 まるで動かなかった身体が、次の瞬間弾かれるようにして動く。
 砂の地面を叩き、跳ねるようになのはの傍から離れる。離れてしまった。
 心の何処かでほっとする自分がいる。
 そんな片隅の自分など無視して、縁は即座に声のした方向へと顔を向ける。
 目が合い、そして見開かれる。
「っ、そうか、君が」
 一瞬だけ驚いたような声を上げるも、すぐに冷静さを取り戻し、現れたその青年は杖を向けてきた。
 クロノ・ハラオウン。
 前に一度、会った事がある。言葉はあまり交さなかったが。
 確か、フェイトの義理の兄だから……魔導師のはず。いや、この場にいて杖を向けている時点で、魔導師だ。
 殺せるだろうか。
 そんな不安が縁の中に浮かぶ。
 なのはを殺すのを躊躇ってしまった自分が、本当に魔導師を殺せるのだろうか。そんな、変な不安。
「投降しろ、海鳴 えに――」

「妹は嫁にやらんわぁっ!」

 杖を向け勧告を口にした瞬間、頭上から刺すような殺気。
 顔を向けるよりも早く、反射的にクロノは砂を蹴って真横に跳んだ。
 ばすっ、ばすっ、と間の抜けた音を立て、クロノが先までいた位置の砂が弾ける。魔力弾、ではない。実弾だ。
「すばしっこい!」
「避けれて当然だよ!」
 足で砂を捉えて着地と同時に、杖を振るい構築し終わった術式を開放する。
 その杖、S2Uが淡く光る。
(( Stinger Snipe ))
 流れる女性の声と共に、青の弾丸が打ち出された。
 非殺傷設定。
 牽制のための一撃であるし、逮捕の前に殺す訳にもならないのでクロノとしては当然の選択であるが、その非殺傷設定の魔法というのは恋慈にとって苦手なものであった。
「ぬあっ!?」
 銃弾にも勝るとも劣らないそれを、恋慈は持ち前の動体視力と反射神経で砂漠の上を転がり回避する。
 Tシャツの肩の部分を掠める。かなりギリギリだった。
「熱っ! 砂がっ、砂が!」
「スナイプショット!」
 よく熱された砂がTシャツの中に入ったのか、思わずもだえる恋慈の様子に同情を微塵に思う事もなく、クロノは外した弾丸を加速させながら弾道をねじ曲げる。
 背後から襲いかかる青い弾丸がちらりと見え、反射的に恋慈が反対側に跳び退く。
「この鬼畜少年!」
 悪態なのか何なのか、恋慈の言葉にクロノは表情を少しも動かさないで、スティンガースナイプを更に加速させ恋慈に向かわせる。
 ごろん、と砂漠の上を恋慈が転がり――

 銃口。

 ずんぐりとした本体の割には飛び出す銃身が嫌に短く、サブマシンガンやアサルトライフルの形状とはかけ離れた変な銃。分類上はPDW、個人防衛火器。
 ファブリックナショナルの、P90である。
「SS190弾だ」
 寝そべった伏せの姿勢のまま、随分と前の方にあるP90の引き金を絞り込む。
 断続する発砲音、牙をむく銃弾にクロノは回避するよりも早くラウンドシールドを展開してそれを防ぐ。拳銃の弾丸とは違い先が尖ったような変な銃弾が、容赦なくラウンドシールドを叩く。
 ビキッ、と嫌な音。
 ラウンドシールドが持たない。
 嘘だろ、と思わずそんな感想を抱いてしまう。地球技術の現行兵器なら、バレットライフルの直撃だって耐えうるだけの強度はあるはずだ。
 しかし現実は目の前。割れかける防御壁。
「幸せトリガァァァ!」
 しかも目の前の男は変な事を口走っている。意味が分からない。
 軽く舌を打ち鳴らす。P90の外見こそは普通だが、中は相当改造されているのか、もしくは魔法技術の処理を行なっているのか。何れにせよ厄介な銃である。
 ラウンドシールドが悲鳴をあげ、それが断末魔となる。
 砕け散る防御壁。1秒ちょっと持ったか。なのはには及ばないが、護る事を重視しているのでシールドの硬さには自信があっただけに軽くショックである。
(( Flash ))
 そんなショックを、超高速で流れる景色の中、他人事の様に感じる。
 艦長に、命を預からねばならない立場に求められるのは、何時だって人間離れした客観的思考と判断である。
(( Move ))
 杖を恋慈の背後から突き付ける。
 ラウンドシールドが砕けると同時に、フラッシュムーブによる高速移動によって背後を取った。防御を行なった直後に相手の後ろを取ると、だいたいは反応できないはずである。
 はずである、のだが。
 何時の間にか左手に握られていた拳銃、ガバメントの銃口がクロノの額をしっかりと捉えていた。高速戦闘にもしっかり対応している。どんな超感覚なのかと。
 容赦も躊躇もなく引き金を絞られ、クロノの頭を撃ち抜かんと銃弾が牙を向く。
 が、慌てる事もなく冷静に、クロノは首を傾げるようにしてひょいと避ける。髪の毛を数本持っていかれる。
「避けんなよ!」
「危ないじゃないか」
 返すと共に、クロノは即座に魔法を発動させる。
(( Ring Bind ))
 恋慈の周りに光の輪が広がる。
 それと全くの同時、まるで光の輪が広がる場所を最初から知っていたかのように、恋慈がガバメントの銃口を出現した光の輪に向けた。
 ドンッ、と銃声。
 それと共に出現し恋慈を拘束しようとしていた光の輪が、銃弾により千切られてしまう。
「むっ」
「物理的な干渉が出来んなら、物理的に壊せるってな!」
 予想外のバインド破壊に眉を顰めるクロノに、恋慈は吼えるように叫ぶと共に地を叩いて身体を砂漠上で反転、反対の手に持っていたP90をクロノに向ける。
 向けられると同じタイミングで、先を青く光らせたS2Uを恋慈の首に突き付ける。
「動くと撃つ!」
「その前に撃つぞ」
 お互いに武器を向け合う。
 銃と魔法。既に射撃魔法を準備しているため、一概にどちらが速いとは言えない。
 気を抜いた瞬間に撃たれる。相打ち覚悟ならば、今すぐ撃っても良い。そんな分かり易い膠着状態。
 では、ない。
「恋、慈」
 砂を掻き、クロノを警戒する小さな影が一つ。
 この場には、縁がいる。恋慈一人と膠着状態になっても、それは真の意味として膠着している訳ではない。
 位置取りとして、クロノの視界の隅に縁の姿がある。しっかりと注意していれば対応できない訳ではないが、不利である事は否めない。
 S2Uを片手に、恋慈から視線を逸らす事なくクロノは片手にも射撃魔法を準備する。
「警告する。これは威嚇じゃない」
 そして静かに、クロノは口にした。
 それは暗に、殺傷設定の使用を告げている。
 む、と恋慈が口をへの字に曲げた。
 非殺傷設定の攻撃ならば、こちらは魔力ダメージだけで済み向こうに弾丸を存分にプレゼントできたのだが、どうやらこの少年は甘くないようだ。これで相打ち覚悟に脱出が難しくなる。それに縁からすれば恋慈自身が人質に取られたようなものである。
「卑怯臭ぇな」
「誇りや正々堂々で犯罪者が捕まえられるなら、そうしてる」
 毒を吐くように呟く恋慈の言葉に、クロノはしれっと返す。正論だった。
 無傷の逮捕が望ましいが、その前に犯人を逃さない事が第一である。無傷の逮捕を優先して犯人を逃したら、犯罪を拡大させ市民の不安を煽る事になる。個人の誇りや正々堂々さなど、二の次三の次でしかない。
 ちっ、と恋慈が舌を鳴らす。
 と、視界の片隅で縁がクロノから視線を逸らしたのが見えた。

「戻るぞ、縁、恋慈」

 鳥肌が立った。
 その声が、クロノの真後ろから聞こえたのだ。
 近付いてくる足音も気配も、転移してくる反応も何もなかった。突然だった。
 突然、後ろに誰か立っていた。
 クロノに何かを突き付ける訳でもなく、恋慈を助ける訳でもなく、ただクロノの後ろに立っていた。
 気付かなかった。何時の間に。
「縁はこれを着ろ。恋慈、砂の上で寝るな馬鹿者」
 投げられたのだろう、視界の片隅の縁がぼふっと何か見覚えのある白い布を受け取った。ぽかんとした表情をクロノの後ろにいる誰かに向ける。
 目の前の恋慈が口をへの字に曲げたまま、まるで興醒めだと言わんばかりの白い目を同じくクロノの後ろに向けていた。
「お前、もう少しマシな登場の仕方しろよ……」
「颯爽と駆け付けて膠着した阿呆に言われたくはないな――ああ、それと」
 後ろから聞こえるのは、女の声。
 知っている。アステマだ。
 完全に背後を取られている。
 背や後頭部に何か武器を突きつけられていないが、その方が余計に何かあるのではと疑ってしまう。
 嫌な汗が流れた。
 そこで、ぽん、とアステマから肩を叩かれた。
「武器を捨て、土下座して尻をお上げ……で、良かったか」
 耳元で、囁く。
 綺麗な声だけに、寒気しかしない。
 このままアステマに対して射撃魔法を使うか。いや、却下だ。目の前の恋慈はアステマに白い目を向けてはいるものの、その銃口はまるでブレていない。撃たれて終わりだ。
 では横に避けて防御魔法を、いや駄目だ。横に避けようにも、今クロノはアステマに肩を掴まれている。仮に跳び避けたとしても、恋慈の銃撃を真っ正面から耐え、アステマの行動に備えられるとは思えない。
 ではフラッシュムーブを使っ、無理だ。やはりアステマに肩を掴まれている以上は、高速移動をしたとしてもアステマが付属して付いて来る。それに恋慈は高速戦闘に対応できているのは先程で知っている。
 手詰まりだ。
 アステマの能力が未知数というのも大きく、何より縁の存在が無視できない。
 数瞬迷った後、クロノは表情を崩さずS2Uを真横に投げ捨てる。大切な相棒を投げ捨てるのは嫌な気分だが、背に腹は返られない。
「よし、そのまま土下座を――」
「いや違うだろ。両手を頭の後ろに当てさせるんだよ」
「そしてズボンを下ろせ」
「セクハラか!」
 何かアステマが言っているが、それを無視してクロノは両手を頭の後ろに当てて無抵抗を示す。
 ゆっくりと恋慈が立ち上がり、Tシャツについた砂をポンポンと払ってから、手にしたガバメントとP90に魔力を流し、カード状の待機形態に移した。
 なるほど、デバイス技術を盛り込んであるのか。いや、デバイス技術で地球性の兵器を再現していると見るべきか。
 ラウンドシールドに対する破壊力や、ラフな格好なのに瞬時に取り出したガバメント等の不可思議に納得が出来た。魔法技術が根本にある質量兵器というのも、かなり厄介な兵器だ。
 目ざとく観察したクロノの目に気が付いたのか、恋慈が軽く笑った。
「凄いだろ、携帯性抜群かつ威力も純地球性の銃器を遥かに凌駕した逸品だぜ」
「ああ……デバイスとしての機能はあるのか?」
 ほとんど悪足掻きのような質問だった。真面目に返されるとは期待していない。
 が。
「ない。どうも縁の魔法はデバイスの回路と相性が悪過ぎんだよ」
「――他の魔法は使えないのか?」
「縁の魔法しか知らねぇよ。それに魔法はどうも苦手でな」
 この状況下で問うとは、随分と良い神経してるな、と恋慈は苦笑を漏らす。
 何だこいつは。
 思わずそんな感想を心の中で漏らしてしまう。
 ほとんど敵意というのが感じられない。遊ばれている、という訳ではないが、向けられる敵意という点ではゴミでも見るかのような目で睨む縁や、肩をしっかり掴んでいるアステマの方が強く感じる。
「とにかく、動くなよ」
 笑って、恋慈はアステマに掴まれているのとは反対側の肩をぽんと叩いて
「変な動きしたら、金髪のお嬢ちゃんの頭が弾けるぜ」
 脅し文句が、随分と陳腐だ。
 軽く奥歯を噛む。死に体で横たわるフェイトやなのはを狙われたら、防ぐ術はない。
 余裕という事か。
 もう一度、動くなよと一言添えてから、今度はクロノの背を軽く叩いて恋慈は縁の方へと足を進めた。
「んじゃ、戻るぜ縁」
 実に気軽に縁へと投げかける恋慈の言葉。見送るしかなかった。
 縁の方がぴくんと跳ねるのが、視界の片隅で見えた。

「い……嫌だ」

 とてもよく通る、少し低い声。戸惑ったような、そんな色が見え隠れする声だった。
 へ? と恋慈は間の抜けた声と共に足が止まった。
 縁のその目が、しっかりとクロノの事を捉えていた。睨んでいると言っていい。
「だって、まだ……まだ、殺してない!」
 体勢を低くし、今にもクロノに向かって跳び掛かりそうにしながら吠えた。憎しみと怒りと、そんな色がごちゃ混ぜになった目を向けて。
 耳のすぐ横でアステマが小さく 「ほぉ」 と感心したかのような息を漏らす。耳に掛かってくすぐったい。
 歯を剥き出すようにして縁が威嚇してくる。犬のようだ。
「魔道師がいる! まだ殺してない! 生きている! 殺していない!」
 一言強く口にした言の葉が堰を切ったのか、吠えたその語気を更に強くした。
 投げ渡された白い布を投げ捨て、縁が砂を蹴るのと、恋慈が砂を蹴るのはほとんど同時だった。
 一直線にクロノ目掛け足を踏み出した縁を、恋慈が即座に真っ正面から受け止めて抑える。肩が良い感じに入ったように見えた。
 思わずクロノは縁の方へと顔を向けてしまう。
 殺してやる。
 その気迫が一気に襲いかかってきていた、縁から。
 まるで綺麗な刃物を首筋に押し当てるかのような、冷たい殺気だった。反射的に身構えてしまう。
 それを止める気がないのか、アステマはクロノの肩からぱっと手を離した。
「いいんだよ、縁。こいつらはまた今度、また今度殺そう」
「今だ、今殺す! 殺せる! 私はもう一人殺してる! 十分殺せる、戦える!」
 諭すように、先までの若干ちゃらけた口調とは一転して真面目な口調で恋慈が止めるも、そんな言葉なぞ耳に入っていないかの如く縁はクロノに殺気を向けて吠える。
 目が、血走る。
 恋慈に抑えられ、それでもクロノへ向かおうとする。暴れる。恋慈の足が何度も踏まれて、腹を殴られる。
 それでも恋慈は離さない。
「高町さんだって、テスタロッサさんだって、止めに来なければ殺せていた! 殺せていたんだ!」
 吠える、その物騒な内容が、まるで自分に言い聞かせるかのように叫んでいた。
「あの程度なら数秒で殺せる! 魔道師がいるんだ、そこにいるんだ! 死んでないんだ! 殺さなきゃ!!」
「縁、こいつら程度なら何時でも殺せる。だから取りあえず退くぞ、な?」
 更に腹を殴られながらも、それでも縁を抑えつつ、ゆっくりと喋りかける。
 諭すように言う、その内容が、まるで縁の耳に入っていない。
 三白眼を更に吊り上げて、今にも食って掛かるかのように、いや、恋慈に抑えられているだけで食って掛かりたいのだろう、その気迫と殺気にクロノは場を忘れて驚いてしまう。
「うるさい、うるさい、離せ! 戦える! 殺せる! 私は――っ!」
 暴れて、奴当りの様に恋慈を叩いて、駄々をこねる子供の様に叫ぶ。
 クロノは知っている。
 感情だけが暴走した人を、クロノは何人も見てきた。
「落ちつけ、落ちつけ縁」
「殺せる! 化け物だから、殺せる! その為に、生まれたんだ! 殺せるんだ、私は!」
 喚き散らし暴れる縁に気圧されていると、ぽんぽん、とアステマが肩を叩く。
 思わず振り向き見上げると、真っ直ぐに縁の方を見るアステマ。一瞬だけだが、その目が悲しそうな色を宿しているように見えた。
「見逃してやる」
「……え?」
「あの子供2人を連れて泣きながら帰れという事だ。貸しも借りもこれで手打ちだ」
 その綺麗な声は、クロノの方を一度も見る事なく告げられた。
 貸し? 借り? 何の事だ?
 顔を顰めて疑問を感じてしまうが、今はそれを考えている場合ではない事に気がつく。
「命が惜しくばこのまま管理局を退職して魔法を捨てろ。地球は良い星だ、あそこで暮らせば殺しには行かない」
 一方的に告げると、アステマはクロノのもとを離れ、走るような速さの大股で暴れ続ける縁の元へと足を進めた。
 真っ青に染め上げられた巫女服、と言えば良いのだろうか、恋慈以上に奇抜な服装に見える。
 縁へと向かうアステマを警戒しながらも見送り、クロノは即座になのはの方へと振り返り

「――縁っ!」

 気合の入ったアステマの怒声に再び振り向いてしまう。
 調度、恋慈が弧を描いて殴り飛ばされる場面だった。
 砂漠の砂をアステマが更に強く踏み込む。
 ほとんど同時に縁が腕を十字に立てて防御の構えを取り――次の瞬間、その防御ごと縁は殴り飛ばされていた。
「ぅぐっ」
 恋慈のように弧を描くほどではないが、それでも小柄な子供の身体と言えど優に3mは宙を浮いてから縁の身体は砂漠の上を転がった。デジャヴュを感じる。
 遅れて恋慈が顔面から砂漠に突っ込んで悲鳴を上げるが、誰も気にしていない。
 無造作に振り抜いたその拳を収めながら、アステマは大股で再び縁へと近付き、そして立ったまま見下ろした。
「……落ち着いたか?」
 静かに訊ねるその声は、離れていてもクロノの耳にしっかりと届いた。通る声なのだ。
 倒れ伏せた縁は答えず、そして身動きもしない。デジャヴュだ。
 沈黙が降りる。
 その沈黙を破るのは、縁で。
「――――殺せるんだ」
 砂漠に転がり、動く事なく呟いた。縁もまたよく通る声で、クロノの耳までしっかり通る。
 落ちついたのか、先のヒステリックな声ではなく、前に聞いた事のある女の子としては少し低めな声。
 悲しそうに、悔しそうに、その声は震えていた。
「躊躇ってなんか、ない。高町さんの首だって、絞めて――」
 まるで自分に言い訳をするように呟く。
 クロノは目を逸らして、裸のまま横たわるなのはへと視線を落す。
 首に痣はない。強く絞めてはいないらしい。なのはの意識はないので抵抗はする事ない以上、弱い力でも十分に絞め殺す事は出来るが、はたして本当に殺意があったのかは分からない。
 殺意が。
 クロノは目を細めた。別になのはの裸を凝視するためではない、縁の矛盾が1つ頭を過った。
「殺し、殺――わたし、は」
 震える声で独白と続けた縁へ、再びクロノは視線を向ける。
 本当に殺すつもりなら、別に首を絞める必要はない。
 なのはも、フェイトも、バリアジャケットを完全に破壊されて撃墜されている。最初から殺すつもりなら、2人とも今頃肉片のはずなのに。
 そうか、とクロノは心の中で一言漏らした。
 自分を化け物と言い、魔導師に怒りを向け、それでもなのはとフェイトを殺さなかった理由が、なんとなくだが分かった。
 ぐっ、とクロノは奥歯を噛む。
 なるほど、それなら、納得できる。
「だって、魔導師で――私をつくって、捨てた、魔導師で――敵じゃないか、嫌いなんだ、殺したい――のに」
 腕をまっすぐ空へ伸ばし、そして力尽きたかのようにその手をぺちんと顔に当てる。
 目を隠すように、顔に当てた。
 その光景からクロノは目を逸らす。
 なのはのすぐ横に膝を折り、その膨らみかけの胸に手を当てる。
 心臓の鼓動が、弱い。しかも鼓動そのものが不規則。
 死にかけていた。
 舌を打ちクロノはなのはを担ぎ上げる。羽根のように軽い、訳はないのだが、クロノは女の子一人持ち上げられないような柔な男ではない。
「躊躇ってない、躊躇ってない、本当にわたしは、殺す、つもりで――」
 その独白を耳にする。
 声の震えの色が、変わった。
 クロノの苦手にする、声の震え方であった。
 なのはを担ぎ、S2Uを拾い上げ、そしてフェイトの傍へと駆け寄る。視界の片隅でフェイトを睨むような恋慈が見えたが、そう言えば妙にフェイトを毛嫌いしていた事を思い出し、そのまま恋慈の視線はスルーする。
 クレーターの中心で気絶しているフェイトの傍にクロノは膝を折る。
「だって、化け物だって――気持ち悪いって――」
 ああ、泣くな。
 頭の片隅で、そんな事を思ってしまう。
 化け物だと、気持ち悪いと、縁は言われて喜ぶ奇特な性癖はない。だけど言われ続けた。
 看視者として相対した魔導師に、言われて、怯えられて、拒絶されて。だから余計に魔導師が嫌いになったのかもしれない。縁自身を勝手に産み出して、勝手に捨てた魔道師が、余計に嫌いになったのかもしれない。
 それはすぐに予想できた。
 縁の心情が、すぐに分かった。
 フェイトの容態を軽く診ながら、クロノは苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。
 そんなに嫌いなのに、殺せない。
 殺せなかった。
 自分は化け物だと、自分に言い聞かせて尚。

「アンスだって、言って――言ってたじゃないかぁぁ」

 嘆くその独白は、ついに泣き声になってしまった。
 確か、アンスはアリサの事だ。
 そうか、友達に、化け物だと。
 相手に同情してやり辛くなるような、嫌な話を聞いてしまった。そう感じながらもS2Uを立て、クロノは転送の準備を開始する。
「わたし、わたしは、何で……どうしたら……」
 泣き出したその声に、誰も答えなかった。
 アステマも。
 恋慈も。
 もちろん、クロノも。
「ぅあ、あ、ぅ」
 そして声にならない嗚咽を漏らす。
 なるほど、とクロノは心の中で一言漏らす。
 魔法陣が展開され、術式が完成する。迷う事なくクロノはそこに魔力を流し、転送魔法を起動させる。
「あああああああああ―――」
 耳に残る泣き声を聞きながら、クロノは撤退した。
 敗走である。











 あの時の縁の言葉と、後からフェイト達に聞いた話を掛け合わせて考えると、今回の事件の全容がようやく分かってきた。
 全容が分かれば、対策も自ずと決まる。
 アースラのブリッジに入りながらも、クロノの中ではこの件の対応についてほぼ埋まっていた。
「あ、おかえりクロノ君。なのはちゃん目が覚めたって!」
 そのクロノに気がつき、エイミィがぱっと顔を上げる。目の下にはクマが出来ていた。
 10日前のあの日から、睡眠を削っても追いつかぬ量の仕事を抱えているのだ。よく耐えている。
 幸いにも、アースラクルーは縁達の襲撃による被害を受けた者はいないが、家族の方で被害を受けたものは数名いる。妻が死んだ、と涙ながらに呟いた整備士をクロノは知っている。
 艦長席に座りながら、この椅子にもようやく慣れたものだと思いながらもエイミィに返す。
「ああ、フェイトを呼ぶ時に会ったよ」
「なぁんだ。どうだった? 後遺症とかは?」
「分からないな。ただ、意識はしっかりしてたし、記憶もしっかりしてた」
「そかそか、良かった良かった。これでフェイトちゃんもお仕事復帰かな」
 仕事減るわぁ、と嬉しそうに漏らすエイミィに、クロノは心の中だけでそれはどうだろうな、と苦笑する。
 フェイトにとって今回の撃墜は確実にトラウマになっている。バルディッシュに保存されていた戦闘記録を見て、その凄惨さは分かっているだけにほぼ確実だ。なまじ魔力適正がズバ抜けて高く、しっかり訓練を積んでいただけに、殺意を篭められた圧倒的な力で叩き潰されるという経験がフェイトにはないのだ。
 果たして、そのトラウマの元凶となった縁についての仕事をどこまで出来るかは不安が残る。
 デスクワークも、実戦も。
 AAA+という高レベルの魔導師を遊ばせる余裕は、既にないのだ。
「あれ? クロノ君、おでこどうしたの?」
 そこでふと、エイミィが不思議そうにクロノの顔を、むしろ額に視線を向ける。
「ん、ああ、ちょっと兄妹喧嘩かな」
「フェイトちゃんに何したの」
「……いや、ちょっとなのはに管理局の現状を伝えて」
「起きたばっかりに鬼ですか」
 白い目にクロノは口をへの字に曲げる。
 隠すより良いと、クロノは思うのだが。最終的にはなのはも知らねばならないのだから。
 ぽりぽりと赤くなった額を掻いてから、こほっ、とワザとらしく咳払いをする。
「さてエイミィ、看視者は?」
「暴れまくってる。それに中継点もバンバン破壊してるから、そろそろ追跡できなくなるかもねー」
 空間モニタに向かいクロノに背を向けながら答えるエイミィは、気楽に言うものの声がかなり硬かった。
 たしか、エイミィの家族の誰かもまた、重症を負ったと聞く。
 看視者に対して良い感情は、ないだろう。
「――他に制圧された惑星はあるか?」
「ないよ。あらかた破壊し尽くしたら後は興味ないみたい……この前も星ごと破壊したしね」
「無茶苦茶だな」
「無茶苦茶だね」
 返し方も慣れたものである。
 なるほどね、とクロノは呟きながら頭を捻った。
「という事は、やはりあの子の拠点はあそこだけなのか――」
 そのクロノの漏らした言葉に答えるかのように、ふぅ、とエイミィは一息吐いてから、もう一度クロノの方を向いた。
 真顔であった。
「それから、悪い話が1つ」
「前振りをされると聞きたくなくなるな。ランディが性転換手術でも受けるのか?」
「ただの悪夢じゃん。局がとうとう手段を選ばなくなったって話」
 軽口を流された事から、かなり悪い話なのだろう。
 下でランディがテーブルにつっ伏したのが見えたが、それを軽く無視しながらエイミィの話を促す。
「管理世界で伝達できる所全てにね、協力者を求めるって連絡が一斉に出たの。魔力適正があってもなくても、誰でも良いって」
「協力者って、討伐隊のか?」
「うん、そうみたい」
 縁討伐の部隊も、ついに民間人頼みか。今の管理局の状態では、仕方がないのかもしれない。
「形振り構わなくなったな……魔力適正がなくても、って事は、もしかして質量兵器を使う気か?」
「だったらまだマシだよ」
 その一言に、クロノは口端が盛大に引きつった。
 魔力適正がなくて、質量兵器じゃない?
 むしろ質量兵器の方がマシ?
 嫌な予感しかしない。だってそうだろう、そうじゃなければ残る手段は神風特攻しかないのだ。
 しかも縁を葬り去る事の出来る、質量兵器以上の兵器。

「ジュエルシード、って覚えてる?」

 また懐かしい名前を。
 引きつった頬を手でほぐしながら、クロノは嫌な予感が大正解だった事に冷や汗が吹き出てしまう。
「覚えてなかったら認知症だ」
 返す言葉に、そうだね、とエイミィが肯く。
 プレシア・テスタロッサ事件。大きい事件だった。そして一生物の記憶に残る、そんな事件だった。
 なのはとユーノ、フェイトとアルフ、その馴れ初めであるそれを忘れられるはずがない。
「ジュエルシードを使った次元震と虚数空間による侵食崩壊、実証されてるからね、プレシアで。その他にもロストロギアがかなり放出されるみたいだよ……兵器としてね」
 ロストロギアを暴走させるのは、魔力がなくても可能である。
 だから、暴走させる為ならば魔力適正は関係ない。
 暴走させたロストロギアを持って縁に特攻する。短純な作戦だが、縁を確実に殺せるであろう作戦だ。次元震による被害と、使用者の死亡という犠牲さえ払えば。
「……それを民間人にさせるのか」
「例え自爆で自分が死んでも看視者を殺したいって人は、今じゃ溢れる位いるからね」
 友達や恋人や家族や、殺された人がいっぱいだから。そう付け加えるエイミィ。
 恨みと憎しみは連鎖するんだな、と、何故か頭の中でドミノ倒しの光景が浮かんでくる。
「確かに、悪い話だな」
 思わずそう口にしてしまう。
「被害が大き過ぎるからね……良い話なんてないよ」
 エイミィにしてはネガティブな返しである。
 ゆっくりと溜息を吐き、クロノは目の前に空間モニタを展開する。
「と、いう事は最悪、この書類の出番だな」
「遺書? 退職願?」
「それは個人の自由だよ」
 疲れたような目でそのモニタを見ながら、随分なネガティブ発言なエイミィに軽口で投げ返す。
 そのモニタを裏から読み、エイミィが更に疲れたように 「あー」 と声を漏らした。
「そうきますか」
「ああ、これで多少は無茶は出来るぞ」













「しゅ、ずかー」
「あー、うん、口の回り拭こうね」
 口の周りにべったりとカスタードクリームをつけたまま、にこーと笑顔を向けるアリサに、すずかは苦笑いを返しながらティッシュ箱を探した。
 シュークリームはこのアリサにも大好評のようだ。
 それはそうだろう、と、すずかは自身に対してつっこみを入れてしまう。翠屋のシュークリームは、前々から変わらぬアリサのお気に入りなのだから。それこそ、カロリー管理を徹底しているアリサが食べ過ぎるくらいには。
 ティッシュを数枚抜いてから振り向くと、口の周りのカスタードクリームなど気にしていないかの如く、もっしゃもっしゃとシュークリームを食べるアリサの姿。
 まるで赤子だ。
 微笑ましいという感情よりも先に、悲しいという感情が先に湧いてくる。
 思わず涙が出そうになるが、それを堪えながらアリサの口元をティッシュで拭う。
「んぷ、んんー」
「はい……はい、綺麗になったよ」
「あー♪」
 綺麗になったが、更に残りのシュークリームを食べ始め、またカスタードクリームが口端につく。
 堂々巡りか。
 苦笑しながら、ふと思いついたかのようにすずかは辺りをきょろきょろと見回す。
「うー♪」
 と、アリサがにこやかな声を上げる。
 振り向くと、ん、とシュークリームを食べ終わったアリサがすずかに向けて両手を伸ばしている。カスタードクリームでべったべただ。
 もっとくれと言いたいのか。
 すずかは翠屋の箱の中をアリサに見せた。
 空箱だ。
「うー……」
「ほら、また今度、ね」
 悲しげな声を上げるアリサに、何となく罪悪感を覚えながらすずかは箱を畳み、持って来た鞄から携帯用のウェットティッシュを取り出してアリサの手を綺麗に拭く。
 くすぐったいのか きゃっきゃと騒ぐアリサをぼんやり眺め、その口端についたカスタードクリームに目が止まる。
 手が拭き終わり、ウェットテッシュがぽとっと床に落ちる。ゴミ箱に捨てなきゃ、と頭の片隅で思いながらも、アリサの口端についたクリームに目を奪われたまま。
 それは駄目だ。
 そう理性が声を上げるのと、すずかの両手がアリサの後ろ頭に回されるのはほぼ同時の事だった。
「う?」
 アリサの声が何故か遠い。
 ゆっくりと、顔を近付ける。
 それは駄目だ。寝込みを襲っているようなものだ。
 理性がそれを訴え、必死に止めようとする。するのだが。
 顔が近付く。
 ふ、とアリサの吐息が掛かる。シュークリームの、その匂い。
 ざざっと理性に砂嵐が走る。
「ぁう、きゃぅ」
 気がつくと口端のカスタードクリームを舐めとっていた。
 甘い。
 きゃっきゃと騒ぐアリサの声を耳元で堪能しながら、アリサの口端を舐めとる。頬を舐めとる。
 甘いものはもうなかった。
 でも止まらなかった。
「はぁ、んっ――ん、ぁ」
 アリサの頬を舐め、舐め、舐めて、興奮している自分をすずかはどこか他人事の様に頭の片隅で捉えていた。
 舐める。
 カスタードクリームはとっくに落ちている。
 でも舐める。
 それが美味しいと感じるのは、アリサの頬だからなのか。
 美味しい。
 そう、美味しい。
「ぁむ――は、ん――ぷぁ、ぁ」
 口を離す。
 もう一度舐めてから、アリサの唇が目に映る。
「――」
 息が詰った。
 その唇が、とてもとても艶めかしく誘っているように見えて。
 理性が叩き潰された。
 我慢が出来ず、すずかはその唇を奪い取るように舐

 ぺち、と、アリサがすずかの頬に触れてきた。

「おー」
 ぺち、ぺち。
 叩いている訳ではない。両手で、すずかの両頬を軽く叩き、そして撫で回す。
 ひんやりとした。
 濡れている感触。
 先程のウェットティッシュの水分が乾いてないのだろうか。
 そう思う程度の理性が戻ってくると同時に、すずかはその場から勢いよく跳ね退いた。
「お、しゅずかー?」
 きょとんとしたアリサの目。
 自分は “また”、アリサを襲おうとしていた。
 だんだんと理性的な判断が出来なくなってきているような気がする。自分が自分でなく、他の得体の知れない何かになるような、そんな曖昧な恐怖がじわりと胸に湧いてきた。
 違う。
 訳の分からない、漠然とした何かの否定。
 アリサを襲おうなんて、そんな気は、なかった。
 なかった、けど、襲ってしまいそうな自分がいる。
 これが本能だと言うのか。
 すずかはぺちんと、自分の頬に手を当てる。

 そこでようやく、流れている涙に気がついた。

「あ……え?」
 思わず唖然としてしまう。
 泣いていたのか? 何で?
 顔を上げてアリサを見る。
 しゅずかー? と呼びながら、よてよてと擦り寄って来る。
 う、とすずかの顔が歪む。耐えられなかった。
「あ、ああ、うぁぁぁぁ………」
 耐え切れなくて。
 両手で押さえて、すずかは泣くしか出来なかった。





 すずかは何も知らない。
 一体どうしてアリサが壊れてしまったのか、それを知らない。
 壊れかけていたのは知っている。苦しんでいたのは知っている。こうなってしまった事に、十中八九縁が関わっているだろうというのは想像できたが、肝心なその内容が分からない。
 教えてくれる者は、誰もいない。
 アリサが無断欠席をした日、そのアリサが病院に担ぎ込まれたのを知ったのは夜の事だった。
 急いで病院まで駆けつけ、その時点でアリサは壊れていた。
 壊れてしまっていた。
 赤子に戻り、今まで築き上げてきた “アリサ・バニングス” は壊れてしまっていた。
 愕然として、その日はその後どうしたのか、実の所記憶が曖昧で覚えていない。気がつけばファリンに抱えられるようにして、屋敷に戻っていた。
 事情を知っていそうな者は、誰もいなかった。
 同じ日に緊迫した表情で同時に早退したなのはとフェイトは、その日からずっと学校を休んでいる。はやてもずっと休んでいる。
 次の日の朝、いつもの集合場所には誰も来なかった。すずか独り、約束していた時間を過ぎても、誰も来なかった。
 教室になのはとフェイトはいない。アリサのクラスにも、はやてはいなかった。
 縁も、いない。
 学校が、急に広くなったように感じた。
 まるで頭に入らない授業を受け終わった後、その足でそのままフェイトのマンションへと直行した。リンディでも、クロノでも、アルフでも良い。何が起こったのかを聞きたかった。
 だが、誰もいなかった。
 インターフォンに誰も出ない。鍵も掛かっている。
 次に早足ではやての家に向かう。はやての家族もまた、管理局に勤めている。話を聞けるかも、と淡い期待があって。
 誰もいない。
 インターフォンも、鍵も。裏庭にお邪魔してリビングを覗いても、本当に誰もいない。
 そして誰もいなくなった。
 昔読んだ本のタイトルが、確かそんな感じだった気がする。
 ぽつん、と取り残されたような気分になった。
 その感覚を塗り潰そうとするように、すずかは退院したアリサの見舞いに通い詰めた。習い事など全てキャンセルだ。アリサとの時間を全てにおいて優先した結果である。
 だが、壊れてしまったアリサと接する度、取り残された感覚はどんどんと強くなっていた。
 何があったのかが分からない。
 相談できる人もいない。
 いるのはただ、困惑する家族と、壊れてしまった、好きな人。
 誰もいない、見ている人がいない、止める人がいない。
 更にはアリサが無邪気に擦り寄ってくる。好きな人のその身体を、無防備に晒してくる。
 掘削機でがりがりと理性が破壊されていくようだ。
「ぅ――うぅ――っ」
「しゅずかー、しゅずかー?」
 どうにか落ち着いてきて、漏れる嗚咽を抑えられそうくらいになると、アリサが不思議そうに身体を揺すっている事に気がついた。
 不思議そうに、だ。心配そうにではない。
 涙を拭いて、それからすずかは顔を上げる。
「――うん……大丈夫だよ」
「あー♪」
 とす、と胸にアリサが飛び込んできた。
 遊んで遊んでと、そんな感じだ。
 心臓が跳ねる。
 そんな自分を感じながらも、すずかは一つ決意した。
 自分がアリサに牙を向ける前に、アリサを元に戻さなければ、と。
 そう心に決めながら、笑ってしまう。
「あの時のアリサちゃんも、こんな気持ちだったのかな」
 呟きに反応するように、アリサが首を傾げた。
 よしよし、と頭を撫でながら、かつてアリサが屋上で話してくれた事を思い出してしまう。まさか自分がアリサを “汚すかもしれない” 立場になろうとは。

 そこでふと、1枚の紙切れが目に入る。

 アリサのベッド。すずかが来るまでアリサが子犬と遊んでいたベッドだ。
 ノートの切れ端のようなそれを見て、ゴミかな? と思いながらすずかは何の気なしにそれを取る。
「……?」
 地図、のようだった。
 学校から、すずかの知らない目的地までの道程を簡単に描いたような、そんな地図。書き込まれている文字はアリサの文字体である。
 どこだろう?
 そう思いながら、すずかは大事なものかもしれないな、とそのままその地図を折り畳んでポケットに入れる。
「さ、アリサちゃん。何して遊ぼうか?」
 後でアリサの机に戻しておこう。そう思いながら。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 もしも第9章に違うタイトルをつけるなら 「すずか奮闘記」。
 こんにちはこんばんは、見ている人によってはおはようございます、人に注射をするのは構わないけど自分にされるのは苦手なクロガです。
 インフルエンザワクチン、注射したくないよー。大の男が嫌がって駄々こねてもキモいだけですが。

 クロノが2人を救出できたのは、実は見逃してもらったからというオチ。
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5件のコメント

[C525] まだ地球にいたのか

拠点が地球だと、アルカンシェルあたりで星ごと消し飛ばされそうな罠。

まあ、その辺はきっと巫女さんが何とかしてくれてる・・・はず?

とりあえず、すずか頑張れ~、と。
  • 2009-09-06
  • 投稿者 : ぎるばと
  • URL
  • 編集

[C526] だれかアリサの×たま知らんかー

なりふり構わない管理局

なのはばお話゙するためなら平気で辞めそうな気がする
実は一番今の縁を人間に近い感覚で見てる気がする
良くも悪くも゙縁゙を見てるんですよねなのはは


フェイトは恐怖から管理局に追従しそうだがジュエルシード筆頭に本来使う事を禁ずるロストロギアを率先して使う局に疑問を抱くか?
抱かなかったら正義病確定


はやて
空気なので何も言えません(笑)


しゅずかーとアリシャー
絶賛理性と格闘中しゅずかー
崩壊し萌え量産機となったアリシャー
まさか縁に対する人質になるとかないよね……
  • 2009-09-06
  • 投稿者 : ルファイト
  • URL
  • 編集

[C527] コメントありがとうございまー

○ぎるばとさん
 むしろまだ地球にいたらマズい。とりあえず偽巫女は何も出来ないに1票。
 「すずか奮闘記」 じゃなくて 「すずかがんばる!」 辺りでも良かったんですが。

○ルファイトさん
 はやて空気、はやて空気! 生きているのやら死んでいるのやらと言うくらい空気! ユーノ君? 誰?
 なのフェイコンビは暫く仲違いと言うか意見の喰い違い。すれ違いの友情とか愛情とかって良いで(ry
 アリシャー……幼いアリシアあたりのような気がする……
  • 2009-09-07
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C528] 軍上層部やら革命家は何時もこう言う「戦い(革命)に犠牲はつきものだ!」と

もう人間として許されざる行為も平気でやろうとする管理局…って原作からそうだったな。縁が星一つ滅ぼせる戦力もってるからってなあ。というかミットチルダまだあるんですか? 諸悪の根源かつ管理局の大元なわけですから、私なら真っ先に最低でも政治やインフラが機能しない程度に破壊しますけどね。そんで救援に物資も人員も割かれて更に大変な状況に追い込むとかね。

今の管理局を見てるとウルトラセブンの「超兵器R1号」という話を思い出します。

「侵略者は、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」(ダン)
「我々は、それよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!」(フルハシ)
「…それは、血を吐きながら続ける…、悲しいマラソンですよ」(ダン)

ある意味こういうことバッカり繰り返してるから、次元世界は衰退する一方なんじゃ?アルハザードや古代ベルカは現在より進んだ文明もってたというのに。進歩→腐敗→滅亡→衰退→僅かに進歩…のサイクルを繰り返しているというか、過去の教訓が活かされてねえ!! 日本の50年どころか10年も平和が維持できないって、中東や旧ユーゴレベルじゃん。

すずかの理性は皮肉にも、自我が壊れた故に最も純粋となったアリサの行動によって阻止されている……「しゅずか~だいしゅき~♪」とでも言ったら最後まで逝きそうだがな!!(性的かつ猟奇的に)
  • 2009-09-08
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C529] そうよ! 使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわ

○ミヅキさん
 これはまたクロガネのピンポイントをつい例えを。個人的にセブンの26話は名作だと思うのです。 セブンにおける 「ノンマルトの使者」 とか 「闇に光る目」 とかは個人的に非常に感銘を受けた話で(ry
 縁は基本的に管理局が嫌い、という訳ではなく、魔導師が嫌い、なので、別に管理局という組織は魔導師の勤めている会社程度にしか捉えてなかったり。しかし、実際ミッドチルダは既に――
「しゅずか~だいしゅき~♪」
 ……よし、クロガネの理性がヤバい。
  • 2009-09-08
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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