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魔法の使えない魔法使いの魔法  2

 起立、礼、おはようございまーす、着席。
 朝のホームルームの時間にて、そこまで行い着席してから、アリサはようやく目の前にあるはずの頭がないことに気がついた。前の席には件の縁が座っているはずなのだが、今日は休みなのだろうか。というよりも今頃いないのに気がつくとは、自分もなのはとはやてのことを笑えないのではないだろうか。
「おはようございます。えー、今日は海鳴さんが家の都合で休むとの連絡が入ってます」
 やはり休みだった。
 クラスの中でも海鳴って誰だっけという発言がちらほら聞こえる。やはり存在感のない奴だ。
「それで今日のプリントを―――バニングスさん」
「え? あ、はい」
 いきなり担任に呼ばれ、思わず間の抜けたような変な声をあげてから慌てて返事を返す。
「家が一番近いから、お願いできますか?」
「……へ?」
 再び間の抜けた声。
 プリントとかを家まで持って行けということだろうか。とはいってもアリサは縁の家など知らない。
「え、あの――」
「続いて明日なんですが」
 どうやら担任としては話は打ち切り、決定事項だったらしい。アリサの話を聞く耳持たず、次の連絡事項にシフトされていた。
 中途半端にあげかけた手を、意味がないなと悟ってアリサはおろす。
 まあ、丁度良いタイミングだなと思うことにして、出しそうになった溜息を飲み込むことにした。
 後からして思えば、運命の分かれ道だった。
 
 
 
 
 
「………ここ、よね?」
 誰に言うでもなくぽつりと漏れた一言は、実に自信のなさそうな声になった。
 担任から聞きだした住所を書いたメモに目を落とし、地図で調べて簡潔に行き道を調べたメモにも目を落とし、それからもう一度目の前のアパートを見上げる。
 築何十年だろうか。かなりボロ、ではなく、ビンテージものの古めかしいアパートだった。人が住んでいるのかどうかも怪しい。近いうちにとり壊すとか幽霊が住んでいるとか言われた方が納得できそうな様子である。
 幽霊、というフレーズを思い浮かべた途端に、アリサは無意識に身震いした。
 正直なところ、かなり怖い。一人で来てしまった自分は如何に無用心だったことか。
 すずかは習い事があり先に帰り、はやては時空管理局で仕事のため午後の授業を欠席している。なのはも同じく仕事があり、フェイトにがんばってとか気をつけてとか、子供が初仕事で出勤するときの母親の如く必要以上に心配されながら見送られ、授業が終わった早々に帰っている。そんなに心配ならば付いて行ったらどうだと聞いたらフェイトは石像のように固まっていた。親友の仕事ぶりを一度でいいから見てみたいものである。
 唯一時間のあるフェイトは一緒に行こうかと聞いてくれたが、アリサは家の近くだし大丈夫よとか言って分かれ道の交差点で手を振って分かれてしまった。自分の馬鹿め、一緒に来てもらえばよかった。
 溜息をはき、それからよしと気合を入れて再びアパートを見上げる。
 ぐたぐた考えても仕方がない、目的がある以上行かなくては意味がないのだ。そう自分に言い聞かせてから、アリサは足を進めた。
 入れた気合は、部屋のドアに到着した時点ですっかり霧散したが。
 アパートの玄関自体、油が切れていて非常に重く、金属をすり合せた時に発生するあの独特の音が鳴り響く。床はぎしぎし歩く度に嫌な音がし、二階に上がる階段には穴の空いているのがちらほら見えた。窓ガラスもすっかり汚れ、割れているのも見えた気がする。廊下を照らす電灯はすでに寿命がきて御臨終しているため太陽がまだ見えるのに薄暗く、風が吹くたび笑い声のような不気味な隙間風の合唱が響く。
 泣きそうである。
 むしろ半泣きである。
 もしも今、後ろから脅かされれば間違いなく泣き叫ぶだろう。
 ポストに突っ込んでそのまま帰ればよかったと後悔の念が渦巻く。
 かたかたとアリサ自身無意識で体を震わせながら目的地のドアを見上げる。201号室。間違いなくこの部屋だ。表札のところを見てみると 『うみなり えにし』 と明らかに手書きの汚い字が書かれた蒲鉾板がぶら下がっていた。
 なぜ平仮名?
 なぜ蒲鉾板?
 なぜフルネーム?
 つっこみ所満載である。
 ごくりと生唾を飲み込み、さっさとプリントを渡して帰ろうと思いながらインターフォンを押そうと腕をあげ――チャイムを鳴らすボタンなどどこにもないことに気がついた。
 まあ、考えてみればこんなボロアパートにある訳がないだろう。あったとしても壊れてるだろうし、壊れてなくてもきっと変な音がなるに決まっている。恐怖のせいか、アリサの思考が少々壊れ気味であった。
 では、ノックをして呼び出すしかあるまい。
 ぎしぎしと油の切れかかったロボットのようにぎこちない動きでノックしようと軽く握りこぶしを作り―――考えなくてもいいものを、ふとノックした後明らかに人間じゃないような声で返事されたら、などと怪奇現象的なことを想像してしまった。間の悪いことに先週巷で話題のホラー映画をじっくりと鑑賞していたせいか、その想像が嫌に生々しいものになってしまっていた。豊かな想像力万歳。トイレに行けばよかった。5年生にもなって漏らしたら世間に顔向けできない。むしろ恥ずかしくて死んでしまう。アリサ・バニングス、死因、羞恥死。嫌過ぎる。
 気がつけば額に汗がびっしりと浮かんでいた。いや、額どころではなく体中から明らかに健康的とは思われない汗がだらだらと流れている。
 ノックだ。とりあえずノックするんだアリサ・バニングス。このまま石像のようにこんな恐怖空間に立ち尽していても事態は好転しない。アリサは自分を叱咤してから再び気合を入れる。
 大丈夫だ、幽霊なんて非現実的なものなど存在しない。親友でもある魔法少女3人組を真っ向から否定しかねない言葉で心を落ち着ける。
 息を吸い、そして吐く。深呼吸、そして吐く。
 それからノックをして―――
 
 ごんっ!
 
「うひゃっ!」
 思いの他力が入り、強いノックになってしまった。
 自分でたたいたノックの音に驚き一瞬動きを止め、数秒固まった後にけほんけほんと堰払いをしてから再びノックをする。
 こんこん。
 普通の音だ。ノックした途端にばきっとドアが壊れるなどと3流コントのようなことは起こらなかった。
「はい」
 ドアの向こうから聞き覚えのない返事がきた。縁の声だろうかとアリサは思ったが、縁の声など全く覚えていないので判断しかねた。
 ぎしぎしと耳につく足音が近づいてきて、ドアノブがひねられた。鬼が出るか蛇が出るか。
 
「どうしたんだ今日は、教授がノックなんて珍――し、い?」
 
 手堅く現実的に、少女が出てきた。
 切り揃えていると言うよりも乱雑に切られた黒髪は短く、病的なほどに肌が白い。身長はアリサよりも拳2つ分くらい低く、怖いくらいに無表情に猫のような釣り目が嫌に印象的である。
 誰か違う人物―――教授という人か―――だと思ったのだろう、警戒心0で出てきて、アリサの顔を確認した途端に言葉が切れた。
 一方アリサもノックした手を下ろすことなく相手を見下ろした。考えているのは1つで、縁という奴はこんな奴だったかということである。正直なところ記憶に自信がない。
 互いに言葉が出ず、数秒間の沈黙が降りる。
 縁がじっとアリサを見上げ、アリサがじっと縁を見下ろす。
 その沈黙を破ったのは縁であった。
「確かバニングスさん、だったか。同じクラスの」
「え、ええ……そうよ」
 予想外に綺麗な声に驚き、さらに自分の名前を知っていたことにも驚いた。どもりながらも答えたアリサの言葉に、縁はそうかと無表情なまま肯く。
「そうか、合ってて良かった。だけどどうしたんだ? こんなアパートに」
 合っていて良かったと言う割には継続して無表情である。
 言葉と表情の不一致にアリサは軽く眉を顰める。いや、不一致というよりも、まるで表情の動くことがない人形が喋っているように感じた。あと、言葉使いがやや男っぽいのも引っ掛かる。
「そ、その、プリントを……」
「プリント? 回覧掲示は目を通したが?」
 首を傾げる縁。天然なのだろうか。
「じゃなくって、学校の……ほら、あなた今日休んだじゃない」
 言葉が詰まりそうになりながらもアリサは説明する。
 縁はその説明に首を傾げたまま数秒考え、ようやく納得がいったのかぱんと手を鳴らした。
「ああ、なるほど。学校の配布物だな」
 鈍い、というよりも頭悪いんじゃないだろうかとアリサはかなり失礼な印象を縁に抱く。年度初めのテストの順位は仲良しグループのメンバーが何位かというところしか見てなかったので縁の成績は知らないが、少なくとも国語がかなり気の毒な成績のフェイトよりも点数が低いだろう。そもそもクラスメイトがプリントを持って来たといって、学校のプリント以外の何を想像するのだ。
 はいこれ、と握りしめたせいだろうか、皺が出来てしまったプリントを縁に渡す。渡された3枚のプリントのタイトルだけを見るようにぺらぺらぺらと軽く目を通した後、縁は顔を上げてアリサと目線を合わせる。
 これだけのやり取りで、アリサはひとつだけ確実に分かったことがある。
 縁という少女は、相手の目を見て話す人間である、という事だ。
 無理やり合わせている訳でもなく、極々自然に目線が相手の目を追うような感じである。行儀が良い、しつけが良い、と言うのだろうか、実践するにはなかなか出来ないことである。
 猫のような縁の目に見つめられ、ついその瞳を見入ったところで縁が口を開いた。
「ありがとう、バニングスさん。助かった」
 その一言に、アリサははっと我に帰る。
 特に何の気負いもない、素直な感謝の一言だった。無表情のままだが。
「い、良いわよ別にっ、先生から言われて持って来ただけ――」
「でも持って来てくれたのは変わらない。本当に感謝してる」
 言葉を塗りつぶすように付け加えられた縁の台詞に、アリサはぐっと押し黙ってしまう。たかだか帰りついでにプリント持って来ただけである、勇気は必要だったが。頬が熱くなるのをアリサ自身自覚出来てしまった。
「いや、ホントお礼言われることじゃないから―――そう言えばあなた、もしかして一人暮らししてるの?」
 恥ずかしいのを隠すようにして、アリサは別の話題を振る。
「ああ、一人暮らしだ。よく分かったな」
「フルネーム書かれちゃね」
 蒲鉾板のネームプレートに。
 しかも平仮名で。
「なるほど、流石バニングスさんだ。頭が良い」
 アリサの内心のつっこみなど知るはずもなく、ほぉ、と感心したように縁がもらした。素直な奴である。
「でも、一人暮らしって大変じゃないの? ご飯とか掃除とか、すぐ部屋散らかりそうだし」
「そうでもない。それに私は掃除が得意だからな………見てみるか? お茶ぐらい御馳走するぞ?」
「え? あ、いや―――」
 部屋に上げようとする縁の言葉に反射的に断ろうとして、途中でアリサは言葉を切った。
 確かに部屋の中がどうなっているのか気にならない訳ではない。特にアリサは富豪の家の子であり、生まれた頃から豪邸に住んでいるので、同年代で一人暮らしをしている人の部屋は余計に気になる。
 ただしアパートの様子が様子である。中まで老朽化が進みリアルなお化け屋敷になっていたら堪ったものではない。
 だが、そうではない。アリサが言葉を切ったのは、やはり部屋の様子が気になるからという好奇心ではなく、なぜ自分が縁にプリントを持ってくる役目を話の流れとはいえ拒否せずに受けたかを思い出したからだった。
 そうだ、話す切欠になるんじゃないかと思って来たのだ。
 良くも悪くもアリサは友人関係を作るという行為についてはいつも受身である。付き合いの一番古いなのはとすずかの時も、フェイトの時も、はやての時もだ。嫌でも目立つ容姿をしているためか、基本的にアリサは他者から話しかけられる側なのだ。そんなアリサが珍しく自分から話し相手くらいにでもなろうかと思った。それなのにここで帰って良いのか。
 少し考え、答えはすぐに出た。
「―――そうね、ちょっと上がっても良い?」
「ああ、いらっしゃい。狭いとこだが休んでくれ」
 縁の目を見て言ったアリサの言葉に、縁は無表情のまま受け取り、ドアを開きながらアリサを招きいれる。
 ……なんだ、わりと話し易い奴じゃん。
 少しだけほっとしたような、そんな印象だった。
 





――――――――――――――――――
 オリキャラ登場。自分で考えたキャラだけに扱い易いだろうと思ってたのに……非常に扱いづらかった。でも変な口調はデフォ。
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Appendix

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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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