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-件のコメント

[C499] 欝は終了なのか

それは朗報♪
おじちゃんは限界間近でしたよ。

しかし魔王の心臓?素敵ちーとですね♪
一家に一人縁ちゃん、鬼畜米兵瞬殺ですな。
オオ、アラタナオウノジダイノマクアケダ・・・

とりあえず、デレアリサ復活を夢見つつ・・・
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C500] 500get

縁、強すぎです。
アステマ、バカすぎです。
兄貴、空気です。

ユーノ、誰それ?

いや、もう清々しいまでの凶悪っぷり。それでも折れないなのはの心は鋼でできています。きっと。
やはりなのは様はいつ如何なる時でも主人公でいらっしゃるようで。

このSSのヒロインって縁ですよね?
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : 小山の少将
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[C501] お、500越え

○ぎるばとさん
 そもそも鬱展開を行うアリサと縁が(ry
 しかし読み返してみるとチート甚だしい。やりたい放題過ぎて後から吹きましたよ。
 アリサの復活は、待ってね♪

○小山の少将さん
 そういえば最近ユーノ君を登場させていないような気が……
 リリカルなのはにおいてなのは嬢は最後の砦的なイメージがあります。フェイトもはやてもスバルもヴィヴィオも最後は自分でケリをつけても、そこまで踏ん張らせるのはなのは嬢の役目じゃないかと。
 ヒロイン? 誰それ?
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : クロガネ
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[C502] 初めてのコメント!

思わず一言だけ。

欝展開→絶望展開

ですねわかります!
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : とおりすがり
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[C503] 滅展開?

鬱から滅展開ですね
分かります

今回のアリサ蘇生
命一つ分けたみたいですがその分けた命が魔導師の命でアリサがバーニング覚醒
決着後に某海賊ガンダムX3よろしく縁を頂いていくんですね(笑)


縁はどうやら魔法(能力?)の同時使用が不可能みたいな代わりに見た能力や受けた力を自己進化できるみたいですね

いっそなのはを喰らえばいいじゃないかとか思った私はどうしましょ?
  • 2009-07-24
  • 投稿者 : ルファイト
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[C504] 暗いの好きね

○とおりすがりさん
 いらっしゃいませー
 ……わかりません!

○ルファイトさん
 滅ぼし回る超展開。ないない。
 ならば海賊らしく、いただいていく! (アリサ) ……ないない。
 縁の魔法の真相は……うふふふふ
  • 2009-07-24
  • 投稿者 : クロガネ
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[C505]

更新お疲れ様です。

う~ん、アステマも縁も圧倒的な強さ。
しかしアステマ、昔は結構普通というかゆるいくらいの、今とは似ても似つかぬ振る舞い。それだけの変革をもたらしたんですねぇ……。

あ~、でもしかし。
今回はなのはが気持ち悪かった。

いえ、描写とかは上手いし真っ当なんですが。高町なのはという存在というか、思考。それの方がよっぽど化物じみてると思うんですがねぇ……。縁の姿もそうですが、なのはの言動にも怖気が走ったという怪現象。理解できないものを恐れたわけですね。

あの発言に鬱展開終了のお知らせ。
これはあれですか、例のお友達で仲良くなあの展開の始まりですか。
だとしたらもう……無理。私駄目なんですよね、あっち方向にスイッチは入ったなのは。

戦々恐々としつつ、次話お待ちしております。

[C506] コメントありがとうございまー

○春都さん
 誰しも昔は案外普通なのです。無印では可愛かったなのは嬢も、StSでは凄い事になってますし。

 気持ち悪い。流石なのは嬢気持ち悪い。
 初対面の挨拶に雷撃を撃ち込まれようと鉄球を撃ち込まれようと、笑って許す心の広さは正直外見が化け物である縁とは真逆で、人間離れした内面の化け物だと思うのです。そんな化け物を内面に飼っているからこそ、伊達や酔狂でもなくガチの戦闘を9歳から続けられるのでしょうか。
 ただ一つ言うならば、友達になろうと高町式 “おはなし” をしようにも、なのは嬢はどう頑張っても縁に勝てない件。
  • 2009-07-25
  • 投稿者 : クロガネ
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[C507] 更新に一週間も気がつかなかった自分にガックシ

う~む思った事は結構他の皆様が書き込んでしまってるなあ・・・

アステマの命は他の人にも完全に死んでなければ分けてあげられるみたいですね。これ最高評議会やスカ博士辺りが知ったら、何が何でも手に入れようとしそうだなあ。シグナムは瀕死&下半身マルダシしで放置、傍目にはレ○プされたようにも見えなくも無い。態々アリサにトドメさしてくれちゃう辺りサービス精神もあるんですね……された方はオシャカになるかもしれませんが(汗)

縁VSなのフェイはあれだ、ジャンプ漫画に例えるなら、ラオウに挑むヒューイ、黄金聖闘士に挑む下級冥闘士、スーパーサイヤ人2悟飯に挑むセル完全体、仙水に挑む桑原、聞仲に挑む崑崙十二仙、藍染に挑む日番谷。これらに共通する事、挑むほうはそれなりに強い(ハズの)キャラだが、相手が強すぎて『雑魚』扱いでやられるということ(笑)

しかし欝展開が終了とは残念、今まで読んできたとらいあんぐるハート系の二次作品では屈指の欝具合でしたのに……そうかっ!?一旦持ち上げてからさらに突き落とす罠ですな! だってまだ一人残ってるじゃないですか、最凶のヤンデレ吸血姫すずか様が! 壊れる寸前のアリサを美味しく頂いてしまうというタナボタ欝展開が。
  • 2009-07-30
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C508] クロガネには良くあること

○ミヅキさん
 ヴォルケンリッターの扱いが酷いと言われるクロガネです。サービス精神でこんな事されたら堪ったものじゃないと思うのですが。
 しかしジャンプも続くものだと……

 すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない。
  • 2009-07-31
  • 投稿者 : クロガネ
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[C558]

「雑魚だな」当たりの展開がドラゴンボールにしか見えない件について
相手の全力攻撃を受けきってから反撃とか…
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
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[C566] コメントありがとうございまー

 攻撃を受けてから反撃するというのはプロレス理論だったんですけどね(汗
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 47

第8章――第5節
――The heart which the King of the devil had――
「御神体の引き渡し――ですか?」
 集落から離れた屋敷に住まう女性は、久しぶり訪れた来客にお茶を出しながらも軽く首を傾げて返した。
 淡い栗色をした髪を腰まで伸ばした女性は、はぁ、そうなんですか、と微妙に気のない返事をしながら自分用に用意したお茶を一口飲む。お茶を煎れるのは彼女の数少ない趣味なので、なかなか美味しく出来たと自分では思っている。
「へぇ、時空……えー、時空なんだったかって所がンな事言ってるんです」
 一方、出されたお茶には手をつける事なく、その来客者である初老の男は頷きながら答えた。
 ちなみにこのお茶、何故か茶葉を濾しておらず、表面にその茶葉がぷかぷかと浮かんでいる。中々に不気味である。
 いくら彼女の趣味であり嗜好品であるからとは言え、初老の男にとって理解できる物ではない。というか集落の全員が全員理解できるものはいないし、このお茶を美味しいと言う奇特な者はいなかった。第一、お茶というのはこの集落においては貴重品なのだ。
 ことりと一口飲んだ湯飲みを女性は床に置く。
 この家にテーブルや椅子と呼ばれる物はなく、床の上にボロい藁を敷いてその上に座るくらいだ。
 女性と初老の男は共に胡坐をかき向かい合って座っている。
 家の中には余り私物といえる物はなく、二人だけでは妙に広く感じてしまう。
 一応この女性は集落の族長に当たる地位にいるので、族長の、そして御神体を護る神官として威厳が云々という理由でこの家にいるのだが、無駄に広いは集落からは遠いはで、女性からすれば不便極まりない。
 族長だ神官だという立場は彼女も弁えているのだが、あまりそちらに比重を置いておらず、集落に毎日出向いて子供達を世話して遊んで田畑を耕し、そして気が向いたら狩りに出るという、そういうライフスタイルがずっと性に合っていた。生粋の子供好きである彼女にとって、子供と遊ぶ時間は癒される時間であるし、田畑を耕して植物を育てて観察するのは趣味である。狩りはあまり好きではないが、どういう訳だか彼女は狩りの才能が抜群に高く、大物を獲った時に拍手喝采で迎えられるのは恥ずかしながらも嫌ではない。
 はっきり言って、彼女は神官には向いてなかった。
「まぁ、引き渡しても良いんですけど」
 だから、彼女は別に御神体に愛着はない。執着心もない。
 数秒、沈黙が降りた。
「……は?」
「御神体など、あまり使いもしない “切り札” 程度ですし、なくとも皆生きて行けます」
 どうにか聞き返した初老の男に、女性はにこりと笑って答えた。
 非常に整った顔立ちの彼女が微笑むと、初老とは言え男の方も感じるものがあるのだが、口にした言葉の内容の方が問題あった。
「それはいけないでしょう。あれは先祖代々より伝わる御神体、訳の分からぬ馬の骨にくれてやる物では……」
「想いが篭った大切な品ですが、それ以上に危険な品でもあります」
 初老の男の言葉を封じた。
 む、と初老の男が口を閉ざしたのを見てから、彼女はお茶を一度啜る。葉がじゃりじゃりとする。
「御神体の力は強大な反面、魔力さえ通せれば誰でも使えますから、保管は難しいですし、何より危険なんです」
「それを護るのが神官でしょう」
「その私が危険だって言うんです。保管してくれるなら、それで良いでしょう」
 お茶を飲みながら、彼女は気楽に続けた。
「それに、前に御神体に願いを通したのは2年も前ですし」
 それも育てている野菜を美味しくしてくれという、そんな他愛のない願い。
 雨を降らせるのも病を治すのも魔法で十分。しかも皆欲がないものだから、あまりこれという願いがない。しかも御神体に願いを通す前に自分達で何とかしてしまうのが大半だ。
 その程度しか使わないのに、危険だと分かりきっている物を置いておくのも割りに合わない。
 それならばいっそ、その時空なんとかという組織に保管を丸投げした方が憂いがないというのが彼女の考えであった。
 こと、っと彼女は床にお茶を置く。
 笑顔を初老の男に向けた。
「集落の人達を集めましょう。私が説得してみます」
 あれがなくとも、きっと皆なら大丈夫だと。
 そう彼女は思っていた。




 管理局が失敗する、その時までは。












 太く短いその足が砂漠の砂を捉え踏み込む。
 ぼすんっ、と音を立てて縁のその身体が勢い良く跳んだ。一足で、なのはとフェイトの頭上へと舞い上がる。
 それをなのはは呆然と見上げていた。
 縁が怒った。
 その根源は、自分。
 そんな考えが頭の中をぐるぐると回って動けない。
 影が落ちた。
 攻撃。回避、回避、回避。
 頭の中で本能にまで叩き込まれた指示が駆け巡っても、なのははその場を動けなかった。
 だから
「――っ、なのはっ!」
 横殴りの衝撃に弾き跳ばされ、なのはは受身も取れず砂漠の上を不格好に転がる。
 それがフェイトに押し跳ばされたと気付いたのは、自分のバリアジャケットをぎりぎりで縁の爪が掠めてからだった。縁の腕が砂を叩き、悲鳴のような爆音が響いて正気に戻る。
 反射的に顔を上げると、目の前に化け物。
 それが縁だと思うよりも先に化け物だと判断してしまった自分に吐き気がした。
 縁の顔はなのはの方を向いておらず、その顔の前半分は埋めているだろう複眼レンズを上に向けていた。
 雷鳴にも勝る速度で、漆黒の一撃が舞い降りる。
「縁ちゃんっ!」
 その漆黒が誰かと分かっているはずなのに、なのははその名を呼ばずにはいられなかった。
 縁の身体がブレるようにして左にずれ、今正にその顔面を叩き潰さんとしていたバルディッシュの一閃は空を斬り、砂の大地を強かに打ちつけるに留まった。
「くっ」
『その動きは』
 漆黒は、フェイトは、その一閃が最初から当たるとは思っていなかったかの様に、体勢を立て直すよりも先に己の眼前に小型の魔法陣を展開する。
 先に準備していたのか、魔法陣の展開と同時に雷撃のスフィアが出現。
 それを即座に
『銃弾に』
 即座に、縁が右下の手で払い落した。
 素手。
 素手のはずなのに。
 スフィアが幻の様に消え失せた。
『劣るっ!』
 顔面を握り潰さんと伸ばされた右上の手に、フェイトがバルディッシュを振り上げ反応出来たのは奇跡に近かった。
 ねちゃりとした手応えと、縁の手首に当てた硬い手応え。
 生身でいけば骨にヒビは確実な速度。
 当たった。
 はずなのに。
『弱い!』
 顔面にぬちゅりとした感触。
 ぎちりと片手でしっかりと顔がホールドされた。
 右上の腕にダメージなどないかのように。
「ぅが、ああっ!」
『弱いっ、弱いっ、弱いっ!』
 その長い指が、フェイトの側顔に食い込む。
 バリアジャケットの防御フィールドが打ち消される感覚。魔力的な破壊でも、力技での破壊でもなく、縁の手が触れた箇所の防御フィールドが消滅している。
 握力のみで顔面が握り潰されそうになる。
「い――っ、ぐ、ア――ルカス」
 痛い。そう漏れそうになる言葉を押して殺し、フェイトはバルディッシュを両腕に握り左後ろへ構える。
 フェイトの身体が片腕で持ち上げられる。
 首が、抜けそう。
「クル――タ、ス」
 みちっ、と何か嫌な音がフェイトの頭に響く。
 潰される。
 潰されそうになる。
 痛いという悲鳴を殺し、フェイトはバルディッシュのカードリッジを1発ロードする。
「ェィギ――ァ」
 そして振り抜く。
 バルディッシュの刃が、縁の右脇腹に打ち込まれる。粘着液と、硬い何かの手応え。ダメージは通っていない。
 が。

 バチッ、という静電気を思わせるような音と共に、縁の身体が左へとよろけた。

「ヌッ」
「っ、ファランクスシフト!」
 右の脇腹へと打ち込んだバルディッシュの刃先に、強烈な光を持つ雷撃のスフィア。
 今度は打ち消されない。いや、そのはずだ。以前それが縁だとは知らずにと対峙した時、縁は確かにバルディッシュの魔力刃でかすり傷とはいえ傷を与えられたのだから、魔力を問答無用でかき消す力はないはず。ならば魔力をかき消す力は、一種の防御魔法と考える事も出来る。
 ならば、防御を張れないように、気付かれず零距離からならば縁に十分にダメージが通せる。
 フェイトの右足、ブーツの側面に金色の翼が生成される。
 ソニックセイル。本来ならばソニックフォームの時に生成されるべき高速機動の補助魔法。
(( Blitz Rush ))
 バルディッシュの掛け声と共に、その右足が超高速で縁の右上の腕に突き刺さる。金属体で編まれたブーツだ。速度的にバルディッシュを打ちつけるよりも、強い。
 握り潰そうとしていた縁の腕が一瞬怯んだ。
 打ち込んだ右足の反動を利用して、その拘束からフェイトは離れ、背中から砂漠の砂に着地する。
 右足がかなり痛い。本来ならば身体全体に掛ける高速移動の魔法を、右足だけに掛けて蹴りをしたのだ。足の筋肉が断裂してないだけマシなのだ。
 その痛みを堪えながら、フェイトはしっかりと縁を見ながら号令を下す。
「ファイア!」
 雷撃のスフィアが、輝いた。
 プラズマランサーがマシンガンの如く超至近距離で撃ち込まれる。
 秒間約10連射。基数を1個に絞った代わりに、設置速度と起動速度を上げて射撃間隔を狭めた一品。至近距離で直撃すればかなりのダメージになる。
 なる、が。
 それを平然と、縁は喰らう前に無効化してきた。
 予想はしていたが、魔法を打ち消す能力の発動が速い。それと肉眼では発動しているか否かの区別は出来ない。
 それを即座に判断し、フェイトは転がるようにして縁から2歩分離れ、即座にバルディッシュを構えて立ち上がる。立ち上がった頃には既に、縁は払い落すかのようにしてスフィアを無効化していた。
 縁の身体の接触により魔法が打ち消されるという事は、フィールド系、しかも極至近距離。それに付属されている雷の力も平然と無効化している。これは単に縁の身体が頑丈だという可能性もあるし、雷への対性が非常に高いという可能性もある。
 ガチャっとバルディッシュの刃の部分が開き上がる。
 縁の顔が向く。
 複眼。エイリアンみたいな顔。
 人間じゃない。シグナム達のような身体を持っている訳じゃない。人に恐れ怯えられる者が、人として生きる場合、それはどんなに苦痛なのだろう。どんな劣等感に苛まれるのだろう。
 頭の中を考えがチラつく。
 縁の左両腕がフェイトに向いた。
 ふわっと、魔法陣が浮かび上がる。
 丸、丸、三角、五角。様々な模様の描かれた灰色の光をした暗い魔法陣。
 ミッドでもない、ベルカでもない。見た事もない独特な魔法陣である。
 冷や汗が吹き出た。
(( Blitz Rush ))
 その魔法陣から、フェイトの身体を飲み尽くさんばかりに放たれた灰色の砲撃を、フェイトは寸でで発動したブリッツラッシュで縁の後ろまで回り込んで回避する。
 かなり太い砲撃線。
 間近だからか、気持ちが悪くなる程にビリビリと高密度の魔力を感じる。
 ドス黒い、殺意が篭められた一撃。
 これが看視者の、縁の砲撃魔法。
 発射速度が速過ぎる。そのくせ親友のディバインバスターを連想させる魔力濃度。反応が遅ければ、完全に巻き込まれていた。
 だが。
「――くっ!」
「―――」
 だが、そう、これで分かる。
 縁は、高速機動の戦闘に、付いて来られない――!
(( Haken Form ))
 バルディッシュの呼び声と共に、その黒き斧刃の下から雷の刃が現れる。
(( Haken Slash ))
 そして即座にその魔力刃を強化。
 縁が振り返る、それよりも速くフェイトは鎌となる相棒で縁を斬りつけ

 すっと、縁の身体が半歩下がる。

 ぶんっ、と盛大に空振りした。
「なっ!?」
 タイミングは完璧だった。人間相手ならば完全に死角からの強襲だった。
 それが、容易く――!?
 振り向き、縁の右下の人差し指が真っ直ぐに向けられた。
 魔法陣が既に浮かび上がっている。
 避けられない。
 空振りして体勢を崩してしまったフェイトの脳裏に、嫌になるほどに冷静な自分の一言が漏れる。
 防ぎきれるか。
 得意分野ではないそれを、やれる自信が、な

 縁のその腕を、桜色の弾丸が弾き飛ばした。

(( Blitz Rush ))
 その隙を縫うように、ほとんど本能的にフェイトは高速移動で後退――なのはの真横に立ち並ぶ。背中には冷や汗びっしりだ。
 縁の顔が、なのはに向けられた。
 真っ青な顔のまま、震える手でレイジングハートを縁に向ける、なのは。
『――やはり高町さんは』
 びくっと、なのはの肩が跳ね上がる。
 レイジングハートが零れそうになる。
 震えて、震えて、頭の中がぐちゃぐちゃなのに。
 それなのに、咄嗟に縁に向けてアクセルシューターを撃ち込んでいた。
『そっち、なんだな』
 泣きそうな縁の念話に、なのはは思う。

 私はどこまで取り返しの付かないことをすれば良いのだろう、と。













 ぱんっぱんっ、とアステマは払うようにして手を叩き、その時の感触で思い出したかのように、自分の両手を目の前に持ってきてじっと眺める。
 べったりと血で汚れていた。
 流石にちょっと汚い。
 それからきょろりきょろりと周りを見渡すが、当然ながらこの場に水場たる所はない。かといって自分の服で拭うのも嫌だなぁ、と思いつつ、アステマはふと自分の足元に転がっている物へと視線を下ろす。
 シグナムが転がっている。
 両腕は引き千切られて。
 顔面を握り潰されて。
 腹部に穴を開けられて。
 シグナムが転がっていた。
「……まぁ、貴様の血だ」
 呟くようにぼそりとアステマは言い訳を口にし、それからしゃがみ込んで比較的汚れていない下半身の騎士甲冑で手に付いた血を拭いとる。
 べたりと染まり、なかなか取れない。水が欲しいところだが、残念ながら空より降り注ぐはずの雨は木々と結界に遮られ、この場に恵みをもたらす事はない。残念だ。
 ふぅ、と溜息を1つ。
 改めて両手を見ると、さっきよりも赤く染まっている範囲が広い。拭うというよりも、単に血を伸ばしているだけのような気がした。
 すんすんとちょっと匂いを嗅いでみる。
 鉄臭い。
 はぁ、と更に溜息。
「役に立たんな」
 八つ当りでシグナムの騎士甲冑を素手でばりばりと破壊し、下半身だけ丸裸にしておいた。
 それからアステマは膝に手を付き、よっこらしょとババ臭い事を口にしながら立ち上がる。袴の膝部分に血の手型が付いた。イラッときたのでシグナムの左足首を踏み潰す。
 手があまりに汚いので、転がっていたレヴァンティンを拾い上げる。
 その剣で、己の手首から先をすっぱり切り落とす。
 血が吹き出て、そして再生する。
 今度は再生した手にレヴァンティンを握り、反対側の手首から先をすっぱりと切り落とし、同じく血が吹き出た後に再生。
「――ふむ」
 血が一滴も付いてない再生した綺麗な手に、満足したようにアステマは肯く。馬鹿である。
 念の為にと、切り落とした手首二つは踏み潰して原型の分からないミンチにしておいた。魔法の強化はしてない。素の力である。
 さて、と呟きながら、アステマは袂に入れた御幣を取り出す。がさりと紙が鳴る。
「命1つ分、分けてやろう。起きろ、アリサ・バニングス」












「なのはっ、援護お願い! バルディッシュ!」
(( Yes sir ))
 縁が反応するよりも速く、フェイトは砂漠を蹴って上に跳ぶ。いや飛ぶ。
 未だに真っ青な顔のままのなのは。縁と戦わせるのは酷かもしれないが、それでも縁に敵だと思われた以上は戦わねば逆になのはが危ない。そうフェイトは考えた。
 ひゅ、と一度息を飲み、なのはは意を決したように歯を食い縛り、レイジングハートを構え直した。
 複眼レンズじゃ、縁が何を思っているのかが分からない。
(( Are you calm? ))
「……うん、大丈夫」
 青い顔のまま、それでもなのははレイジングハートに肯いて答える。
 本当は大丈夫じゃない。冷静かなんて訊かれても、困る。
 縁と対峙したくない。原因が自分ならなおさらに。
 それに縁はきちんと話し合いに応じていた。だから、今から戦うのは、話し合うための戦いじゃ、ない。
「いくよ、レイジングハート……アクセルシュータ―、スタンバイ!」
(( All right ))
 それでも、なのはは己が得意の誘導弾を準備する。
 カードリッジを2本消費、レイジングハートのスライドカバーが開いて薬莢が排出される。術式を構築し、魔法陣を展開。カードリッジでドーピングされた魔力を無理矢理流し、なのはは自分の周りに誘導弾を出現させる。その弾数は25発。
 上空5m位置で静止したフェイトは、それを合図に体勢を変え、まるで空気を蹴るようにして一直線に縁へと突撃する。
 すっと、縁の顔が上がり、その複眼がフェイトを捉える。
「α、β、γ、シュート!」
(( All right. Accel Shooterα,β,γ,shot ))
 縁が行動を起こすよりも速く、なのはは準備した内の誘導弾を3発射出。
 2発は縁までの最短距離を走るように一直線。そしてもう1発はまるで関係ない、なのはから見て左側へと射出される。
「――――」
 とん、と縁は砂漠を蹴り、ステップを踏むように少しだけ後ろへと下がる。それから左右上の2本の手でなのはの誘導弾を消去、無力化する。
 続いてその2本の腕で、フェイトを迎撃。
 縁の首を刈ろうと振るわれたその鎌の魔力刃を、両手の甲で防ぐように抑え、同時に無効化。バチッ、と手の甲から粘液が蒸発したかのように水蒸気が上がる。
 魔力刃が消され振るったバルディッシュは空振りしたが、それを最初から予想していたのかフェイトは地面すれすれを滑るかのように、空振りしたその反動を生かしながら右へ直角に曲がる。足の先が砂を削り、フェイトの軌道を後追いするかのように砂煙を吹き上げる。
 当てて逃げる。基本に忠実なフェイトの動きを眺めるように、縁はフェイトの後をその複眼で追いかける。
 ばしっ、ばしっ、と追撃を掛けてきた桜色の弾丸を、縁は片手間の如く左下の手で無効化する。
 今度はなのはの方へと縁が顔を向ける。
 桜色の弾丸残り20発が一斉に襲いかかってきた。
 誘導弾じゃなく、ただの弾丸である。操作していない。
 並の魔導師ならば10人以上でもまとめて意識を刈り取る凶器が迫り来る。それを縁は左下の手を向けて無効化の準備をし
(( Sonic Move ))
「はぁっ!」
 着弾よりも速く、超高速でフェイトが縁の背後に接近、すれ違いざまにバルディッシュによる斬撃。ハーケンフォームではなく、魔力刃に頼らず物理的にブン殴れるアサルトフォームに移行している。
 当てる。今度はそのつもりで縁の首を狙った。
 が。
 直撃するはずだった箇所を守るように小型の魔法陣が展開した。
 バチンッ、と軽く甲高い音と共にバルディッシュが弾き返される。
 硬い。
 シールドか。完璧に不意をついたはずなのに、一瞬で展開された防御壁の完成度に驚きで舌を打ちつつソニックムーブの加速が終わる前に離脱。
 その瞬間、20にも及ぶアクセルシューターが縁に直撃する。
 盛大な爆発が起きた。
「……?」
 踵で砂漠の砂を削り、砂煙で視界を遮りつつも全速後退しながら、フェイトの脳裏に疑問が走り抜ける。
 爆発?
 無効化されてない?
 もしや、と疑問を脳裏から蹴り落とす予想が出てきたのはすぐだった。
 その爆発で巻き上げられた砂煙を確認してから、フェイトは地を蹴り空に上がる。なるべく高度を高く。
『なのは、飛んで! 空中戦でいくよ!』
『え――あ、うん!』
 念話で指示を飛ばすと、若干遅れてからなのはもアクセルフィンの構築と共に空に上がった。
 なのはの反応が鈍い。ショックが抜け落ちていない証拠か。
 ゆっくりと砂煙が晴れる。
 縁は、健在。
 己の眼前に魔法陣を展開させ、そのシールドを挟んでフェイトを見上げていた。シールドをフェイトに向けていたと言っていい。爆発が起きた後に空に上がったのに見上げているという事は、砂煙や爆煙程度では縁の視界は遮れないという事か。
 すっと、フェイトは目を細める。
『なのは、下には絶対降りないで高度を保って』
『――え?』
『どうにかして海鳴さんを上に行かせよう。なのははシューターで縁の逃げ道削って』
 あ、うん、と慌てて返すなのはの念話を聞きながら、フェイトは再び空を蹴り縁へ向かって加速する。一直線ではなく、左側に回り込むかのように緩やかな曲線を描いて。
 ガシャン、と音を立ててなのはが再びカードリッジを使用する。
(( Accel Shooter ))
 少し遅れて25発のアクセルシューターをスフィアの状態でスタンバイさせる。
 それを確認してからフェイトは緩やかな曲線を描く軌道から一転、右へ左へと揺さぶりを掛けるようにフェイントを交えながら一気に縁へと距離を詰めた。
 縁は迫り来るフェイトを見て、一瞬だけなのはの方へと顔を向けた。
 うっ、となのはが怯む。
 斜め上を掠めるようにフェイトが迫る。
 そちらへと顔を向ける事なく左足を1歩後ろに下げ、首を右に少し傾けると、縁の顔のすぐ傍をバルディッシュの刃が風を切り裂く唸り声と共に通過した。空振りである。
 空振りの勢いを殺さず、そしてバルディッシュを縁に捕えられないように、フェイトは一度高速を保ったまま退く。
 なのはから視線を外すように、フェイトの方へと縁は顔を向け
「――ヌッ」
 右上の手で、真後ろから襲いかかった桜色の弾丸を裏拳を叩き込むようにして無効化。炸裂する事なくそれは霧散した。
 再び縁はなのはを見上げる。スタンバイされている弾丸は変わらず25発。
 前に3発射出した時、1発だけ見当違いの方へとアクセルシューターを撃ち出していたのを思い出す。それを温存していたのか。汚い。
 続いて縁は左上の手を頭上に上げる。
 手の平を使い、何時の間にか迫り来ていたバルディッシュの刃腹を叩いて逸らす。
 恐ろしい程に高速展開するあのシールドを展開する時間は十分にあったはずなのに、それを使わなかった。
 なるほど、とフェイトは確信した。
 確かに縁の魔法を無効化する能力や、強度や展開速度が異常なレベルで高いシールドは、一見すると鉄壁の守りに思えるが――これは十分に攻略可能だ。あとは縁自身の身体の強度がどれ程かが知りたい所である。人間の身体機能は確実に凌駕しているだろう。
 頭の中を高速で思考を回転させながら、フェイトは叩き逸らされたバルディッシュの反動を使い身体をぐるりと1回転。
 縁の左胸に向け、右足の蹴りを繰り出す。
 ガッ、と、瞬時に展開された魔法陣がその蹴りを遮った。
 これはシールドで防いで逸らした。バルディッシュの斬撃も蹴りも、同じ物理的攻撃で、しかもバルディッシュの斬撃の方がずっと鋭いのに。
 だいたい1秒だ。
 なのはのアクセルシューターを無効化させてから、最短でシールドを展開させるまでの時間が、1秒ちょっとあった。
 なるほど、と再び同じ台詞が頭の中で漏れた。
 更に蹴りから半回転、バルディッシュに思いっきり遠心力をつけ、縁の腹を目掛けてブン殴る。
 ガキンッ、と再びシールドで防がれたが、バルディッシュの刃は逸らされる事なくしっかりとシールドに喰い込む。
(( Barrier Break ))
 黒き戦斧の宝玉が輝くと同時に、縁の展開したシールドから放電が始まった。
 バリアブレイク。シールドも結局は根本としてバリアと同じプログラムによって起動・展開している。ならばそこに割り込みを掛けられれば、シールドは無効化できる、はずだ。
 はずなのだ、が。
 バチン、バチン、と放電が強くなる。
 硬い。
 と言うよりも、プログラムが複雑過ぎた。
 割り込み辛い。丁寧に時間を掛ければ十分に割り込めるだろうが、当然ながらクロスレンジ戦闘にそんな余裕はない。
 縁がシールド越しに構えるのが見える。
 まさか自身のシールドを貫通して攻撃が来るとは思えないが、嫌な予感が首筋から湧いて走り咄嗟にフェイトはバリアブレイクによる割り込みを中止し、即座に空へと逃げた。

 次の瞬間、フェイトがいたその位置から突如として爆発が起きた。

「うあっ!」
 その衝撃にフェイトの身体が軽く吹き飛ばされる。
 ――うそっ、空間爆破っ!?
 シールドを挟んでの魔法陣を展開しない突然の攻撃に、フェイトは目を白黒させる。
 魔力を砲撃のように放ったり、スフィアにして射出したりしなかった。構えこそはあったが、それ以外全くのノーモーションでのピンポイント爆破である。咄嗟に上に逃げなければ、今の爆破はフェイトの身体の中で起こっていたはずだ。
 想像してちょっと青くなった。
 射撃や砲撃魔法とはまるで次元の違う攻撃方法である。無茶苦茶過ぎる。
 無茶苦茶過ぎるが、シールド越しのそのピンポイント爆破に、フェイトは再び確信を抱いた。
 いける、と。
「――よしっ!」
 爆破の衝撃で軽く上に飛ばされながらも、フェイトは飛行魔法を制御してくるりと反転、即座に攻勢に打って出る。
 それ援護するように、縁の左右からアクセルシューターが1発づつ襲い掛かってきた。
 とん、と縁は砂漠の砂を蹴って後ろに跳ぶ。
 もちろん、それで避けられるようならば誘導弾ではない。上空から操るなのはのコントロールに従い、即座に両スフィアは軌道を変える。
 それを縁は左下の手で振り払うようにし、アクセルシューターを無効化。
 同時にフェイトが真上から斬りかかる。
 右脚を軸にするように縁はくるりと四半分回り、そのバルディッシュの刃を避ける。
 シールドは使わない。
 バルディッシュが砂漠の砂を捉えると同時に、フェイトはバルディッシュを軸にして縁の顔面を蹴り飛ばすように蹴りを放つ。
 ばしりと縁が右上の手でそれを受け止め、そしてフェイトのその足をがっちりと掴む。
 やはりシールドは使わない。
 フェイトの足を掴む縁の右上の手を目掛け、即座になのはがアクセルシューターを5発、他方向から叩き込んで来た。下手をすればフェイト自身に被弾する可能性があるのに、その弾丸に迷いはない。そしてフェイトもまた、なのはのコントロールを信じていた。
 アクセルシューターを縁は残り3本の手で無効化する。
 そのタイミングを狙い、フェイトは砂漠に突き刺したバルディッシュを引き抜くと同時に、足を掴まれたまま縁の足首を狙って斬撃を仕掛ける。
 縁はバルディッシュの刃を膝を曲げながら ぴょんと跳んで避ける。ビンゴだ。
『なのはっ!』
『分かってる! いくよフェイトちゃん!』
 フェイトの合図よりも速く、なのはが縁の足元を狙ってアクセルシューターを4発4方向から撃ち込んできた。縁の足はまだ地に戻っていない。
 砂漠の砂に桜色の弾丸が着弾し、砂を巻き込んで盛大に炸裂した。その爆風から逃れるように、縁は掴んだフェイトの足を手放して空中に上がった。
 飛行魔法。
 ようやく飛んだ縁に追撃を掛けるようフェイトは地に転がりながらもバルディッシュを振るうが、縁は素早く高度を上げる。空中戦での機動も随分と素早い。
 空振りしたバルディッシュをそのまま地面に叩きつけ、その反動でフェイトは跳ね上がるように体勢を立て直す。
『なのはっ! ファランクスを準備するから、シューターで時間を稼いで!』
『え、でも、アクセルシューターじゃさっきみたいに打ち消されちゃうんじゃ――』
 牽制程度は出来ても、魔法を無効化してくるその技能の前では、アクセルシューターでどこまで時間を稼げるかは分からない。効果のありそうな接近戦は、あまりなのはの得意分野ではない。
 不安を覚えるなのはに、フェイトは自信満々に返す。

『大丈夫、今の海鳴さんは魔法消去の技能は使えない』

 え、何故に?
 そう聞き返すよりも早く、フェイトは足元に巨大な魔法陣を展開し、残り全てのカードリッジを一斉に使用する。
 そのフェイトの様子に縁が空中でくるりと向きを変えて警戒するのが見える。問答している暇はないと申すか。
 ぐっとなのはは奥歯を喰い絞め、残りのアクセルシューターを全弾縁の周囲に配置する。
 ぐるりと縁の周りを取り囲み、フェイトの方へ向かわないようにふわりふわりと桜色のスフィアが漂う。それでも縁はフェイトの方へと顔を向けたままであった。
 大丈夫かな。
 そうなのはは心の中で呟きながら、縁の後ろ側に配置したアクセルシューターを1つ操り、その足をめがけて撃ち出した。
 例え打ち消されても別のを操作する。そう順々に頭の中で作戦を立てて

 ひょい、と縁はその弾丸を振り向く事なく避けた。

「――あれ?」
 本当に打ち消さなかった。
 そちらの方が早いだろうに、縁はアクセルシューターを打ち消す事なく避けてしまった。
 打ち消す程でもないと言いたいのだろうか。
 更に続けて空振りしたアクセルシューターを退き返し、その間にも2発の弾丸を操って縁に追撃を掛ける。左肩と、後頭部をめがけ。
 ひょい、ひょい、と器用に避けた。
 続けて下腹部へと撃ち込む。
 ひょい。
 左足。
 ひょい。
 右下腕。
 そこを狙ったアクセルシューターを、避け切れなかったのか縁が右上の腕で庇うように構えた。
 バチッと音を立て、桜色の弾丸が逸らされた。突如として現れた灰色の魔法陣に阻まれる。
 シールドか。展開が早過ぎる。
 と言うか、本当に打ち消してこない。
『なのはっ、行くよ!』
 不思議に思うと同時にフェイトからの念話が響いた。
 いけない、何故か雑念が混じってしまう。集中せねば。縁へと杖を向け、ずきりと痛む胸を堪えながらなのはは首を振って目を閉じる。
『ぅ、うんっ!』
 目を開く。
 まっすぐ、縁がこちらを見ていた。
 無意識ながら身体が震えてしまった。
 何で戦わなきゃいけないんだろう。
 例え縁を打ち倒したとしても、悪いのが自分である以上、縁と何を話し合えるのだろう。
 そんな、戦っている時に一番考えてはいけない類の疑問が、頭の中に浮かんでしまう。思考が鈍れば身体が鈍る。いつもなのは自身が生徒へ真っ先に叩き込む事だ。
 思わず怯んでしまった。
 そんななのはを庇うように、縁の周りに雷色の魔法陣が次々に高速展開されていく。
 その光景になのはは はっと正気に戻る。
 ぎちゅ、ぎちぃ、と軽快とは口が裂けても言えはしない嫌な音を響かせながら、縁の“ 六肢” がフェイトのライトニングバインドで素早く拘束される。
 ヌ、とそこで呟くように縁が漏らした。
 ぬ、とか、む、とか、そんな一言漏らすような反応が変わらない。なのはが知る、海鳴 縁と変わらない。
「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ――」
 詠唱に入るフェイトの姿に、なのはは再び歯を喰い絞める。
「コントロール!」
(( All right ))
 その一声に答えるかのように、アクセルシューター残り14発、その全てのスフィアが一斉に操作される。
 頭が痛い。アクセルシューター14発の同時コントロールと言うのは、やはり実戦で使うにはまだ訓練が足りないようである。13発でも実戦レベルギリギリなのだ。
 縁の周りに漂っていたアクセルシューターが一斉に動きを変える。
「アンド、アクセル!」
(( Accel ))
 14発の内6発、アクセルシューターの弾速を加速させる。頭痛が酷くなる。
 ぐるんぐるんと桜色の軌跡を描きながら、アクセルシューターが縁の周りを回る。六肢を全てライトニングバインドで縛られながらも、縁は真っ直ぐになのはを見ていた。
 そうだ。縁はいつだって、人の目を真っ直ぐに見据える。
 あれは、縁だ。
 それなのに、化け物だなんて思ってしまう自分に吐き気がする。
 縁の足元に向け、アクセルシューターを3発撃ち込む。
 死角からの強襲である。
 それを、縁は分かっていたかのようにシールドで弾く。
 硬い。どれだけ撃ち込めば破れるか、その底が分からない。
 だけど魔法を打ち消してこない。打ち消せるのならば、ライトニングバインドだってもう破っているはずだ。
「バルエル・ザルエル・ブラウゼル――」
 フェイトの声が耳に届く。
 奥歯を喰い絞めたまま、なのはは縁のいたる所に向けてアクセルシューターを撃ち込み続ける。
 乱撃、乱射。
 その全てを縁はシールドで弾く。なのはをじっと見ながら、弾く。
 撃ち込む、撃ち込む。
 叩く、叩く、叩く。
 友達だと思っていた相手に力を向けるのは、こんなに嫌な気分なのかと胸の奥でじりじり感じながらも、撃つ。撃ち込む。
 何をしているんだろう。
 何でこんな事になったんだろう。
 頭の中をちらちらと疑問が飛び回って集中できない。5回に1回は見当違いな方に外れる。20%は本来致命的である。
 なのはのその様子に眉を顰めながらも、フェイトは用意できた術式へ一気に魔力を流す。
 ばちばち、と音を立てながら、フェイトの周りにプラズマランサーのスフィアが形成される。その数、実に40基。
 カードリッジシステムを使用し、フォトンランサーからプラズマランサーに変更して単発火力を向上。スフィアの制御も2基増加し、単位時間での火力も向上。そしてそこから秒間7連射の集中砲火を4秒間、1120発のプラズマランサーを浴びせる。
 間違いなく、フェイトの持つ最大単純火力。
『なのはっ、シューターの撤退を!』
『あ、ぇ、うん……あ、後ろからシールドを削って――』
『撤退!』
『――うん』
 フェイトの強い言葉に、なのははようやくディバインシューターを散らせる。
 確かに後ろからシールドを削ってもらえるならば、それはありがたい。だが、なのはの今の命中率では、外したディバインシューターがプラズマランサーを相殺する可能性が高すぎる。
 縁がなのはからフェイトの方へと顔を向けた。まっすぐに。
 フェイトの顔に、怯みはしなかった。
「プラズマランサー・ファランクスシフト」
 宣言と共にスフィアがより一層輝く。魔力をごっそりと持っていかれる感覚がする。
 その様子を見ながらも、縁は何も言わなかった。
 ライトニングバインドに抵抗する事もなく、シールド以外何をするでなく、フェイトを見ている。

「――ファイア!」

 その瞬間、雷の刃が縁に向かって牙を向いた。
 1秒間当り280発のプラズマランサー。
 その全てが縁を捉えた。
 一瞬だけシールドが展開されたように見えたのだが、すぐに雷の爆炎が轟音を轟かせその姿を隠してしまう。
 1000発を超える弾丸を4秒間で叩き込む。その光景は正に狂ったかの勢い。
 かつてなのはが真っ正面から受けてたった時よりも数段グレードアップしているそれを、なのは自身今の自分で耐え切れる自信がない。と言うか、傍から見るとこんな光景なのかと今更ながらに思い知る。
 1秒過ぎる。
 縁の周囲は既に爆煙まみれ。
 撃ち込んでいるフェイトもまた、ライトニングバインドで施されている魔力的なマーカーを頼りに撃ち込んでいる状況。
 2秒過ぎる。
 魔力がごっそり減ってくるが、カードリッジを使用している分だけ若干ながら余裕がある。
 コントロールに集中しすぎて頭が痛くなってくるも、それは歯を喰い縛って耐える。
 3秒過ぎる。
 何となく、そこでフェイトは悟った。
 集中を切らす事なく、即座にマントの裏に隠したそれをフェイトは左手で取り出す。
 4秒過ぎる。
 1120発のプラズマランサーは、全弾縁へと叩き込んだ。
 もうもうと上がる爆煙。
 その爆煙に遮られ、縁の様子はまるで確認できない。
「はぁ、は――っ」
 魔力よりも体力と精神力が削れている。自分の身体の状況を認識しながら、フェイトは即座にバルディッシュのリヴォルバーカバーをスライドして開く。
 リヴォルバーカバーの動きに連動するかのように、リヴォルバー本体が倒れて使用済みのカードリッジが一斉に吐き出され、マントの裏から取り出したスピードローダーを差し込んでシリンダー内にカードリッジを装填。スピードローダーを無造作に投げ捨て、リヴォルバー本体を戻してカバーをスライド・固定する。
 そして固定して直にカードリッジを2発ロードする。少なくなった魔力が急激に回復するのが感覚で分かる。魔力の急激な回復は、正直な所あまり気持ちの良いものではないのだ。
『なのはっ、スターライトブレイカーの準備を!』
『ぇ? へ? え、だって縁ちゃん――』
 そしてすぐになのはに念話を繋げて指示を出す。
 戸惑うようななのはの声。
 やはり、なのははかなり精神的に弱っている。
 返されたなのはの声には、もう勝負はついてるんじゃないのかと、そんな色が見え隠れしている。そこから更に駄目押しは気が退けるのだろうか。
 だけど、なのはが通常の精神状態ならば、ちゃんと気付いたはずである。

 縁が、健在だと。

 縁は墜ちてない。フェイトからすれば、それは断言できた。
 手応えならばあった。確かにあった。
 だけど、撃墜できてない。
 だって感じるのだ。

 煙の向こうから、その殺気が。

『早く! シューターをリリース! プラズマランサーの魔力が残ってる内に掻き集めて!』
『え、え? え?』
『早く!』
『ぁ、あ、うん!』
 ようやくレイジングハートを構え直したなのはを見て、フェイトは更にカードリッジ残り4発全てをロードする。
 砂漠の砂を蹴り、最高速で縁がいる場所へと飛んで行く。
 遠目でなのはがレイジングハートをエクセリオンモードへと移行し、マガジンを交換しているのが見える。
 それで良い。
 
 ぐっとバルディッシュを握り絞め、フェイトはゆっくりと晴れるその爆煙へと突っ込んだ。

 縁が、まっすぐ見下ろしていた。

 迷う事なく縁に向かってバルディッシュを叩き込む。
 シールドで防がれた。硬い。あれだけの火力を当てても堪えていないのか。
 弾き逸らされかかるが、フェイトは力ずくで無理矢理バルディッシュの刃をシールドに喰い込ませた。
 腕が震える。ファランクスシフトでだいぶ体力が削り落されているのが実感できてしまう。それでもふんばる。
「バリア――」
刃を喰い込ませたそこを始点に術式に通した魔力を流しこむ。
 まさかこの魔法にカードリッジによる強化を施すなんて考えた事もなかった。そんな魔法にカードリッジ4発の大盤振る舞い。普段使わない魔法もしっかり鍛えろというクロノの教えは正しかった。
 バルディッシュのコアが輝く。
 これがカードリッジ4発分の。
(( Break ))
 バリアブレイク。
 フェイトの特性である魔力から変換された雷撃が、バルディッシュの刃を喰い込ませた箇所を支点として一斉に放出される。
 さっきバリアブレイクで割り込みを掛けたので初期解析できている。更にカードリッジで大幅にブーストされているので、術式への割り込みがかなり素早い。
 大丈夫。いくら硬くても、魔法である以上は削れる。
 自分に言い聞かせるようにフェイトが心で呟くと、ほとんど同時に爆煙が晴れる。いや、吸い込まれる。
 魔力残滓が吸い寄せられる影響で煙まで引き寄せているのだ。バリアブレイクの余波である雷撃まで引っ張られる感覚がする。
 縁はゆっくりと空を仰ぎ見る。
 星すら壊すその光が、桜色の輝きを放っていた。
「――縁ちゃん」
 ただ、その光の主は、覇気の無いその瞳で縁を見下ろす。
『――ああ』
 重く。
 低く。
 背筋に寒気を覚える位に平坦に、縁が返す。
「……いくよ」
『ああ、全力で来い、たかま――』
 バリアブレイクを防ぎながら、縁は頷く。
 むしろ、シールドは確実に削れているはずなのに、抵抗する事もなくフェイトとも対峙している。
 逃げる事なく。
 退くも事なく。

『――全力で来い、魔導師』

 敵として、対峙している。
「――――スターライト!」
 敵として。
(( Starlight ))
 友達だと、そう思っていた。
「ブレイカァァァァァァァァァァァッ!!」
 友達だと、そう思っていたそれが何よりも、彼女を苦しめていた。
(( Breaker ))
 それなのに自分は、更に決裂の一撃を放つのか。












 ずきり、と頭が悲鳴を上げた。
「ぃ――」
 いったぁ、と無意識ながら呟こうとして、自分の喉があまり上手く動いていない事に気がつく。
 そもそも痛いのは頭だけじゃなかった。身体中が痛い。目を開けようと思っても左目が糊のようなのでくっついて開けられない。左腕などは既に感覚が死んでいるほどであった。
 自身の身に何が起こっているのか、起き抜けの頭では流石に理解が追いつかなかった。
 かなり痛むがどうにか動く右腕で身体を起こしながらも、未だぼんやりとする頭を振って記憶を掘り起こそうと首を振り
「起きたか、アリサ・バニングス」
 掘り起こすよりも早く、背筋に鳥肌が立つほどに綺麗な声が降ってきた。真上から。
 反射的にその声の主を見ようと振り返り、バランスが崩れてアリサは盛大に転がった。元々体が痛かったせいか、身体を打ってもあまり痛いとは感じない。
 ごろんと地面に転がるように仰向けになり、そこで見えた。
 人形のように整った顔をした、栗色の髪の女。
「なかなかに悲惨だったな。死に掛けていたぞ」
 腰に手を当て、無表情と言うべきか真顔と言うべきか分からないその表情で続けた言葉に、アリサの頭が再びずきりと痛む。
 何故アステマがいるのか、そんな事は思わなかった。
 と言うより、思い出してしまった。
 生きたいと思ってしまった馬鹿な自分と。
 にやけ面をした、フォンという男と。
 その彼を殺した、縁。
 縁。
 あの、姿。
 血の気が引いた。
「その顔は、ふむ、ちゃんと覚えているようだな」
「――ぁ」
 そのアリサの顔を見てから、アステマは顎に手を当てて感心したように軽く唸った。
 ああ、そうだ。覚えてる。
 あの縁の姿を、覚えてる。
 正に化け物としか言いようがないあの姿を。
 身体が震えた。
 思い出しただけで、怖かった。

 縁が目の前で人を殺した、その事実が何よりも怖かった。

 化け物になったあの姿で、縁は人を殺したのだ。
 確かに最低な奴だった。それ以上に自分は最悪だったが、そんな自分を守るために縁は人を殺した。
 ああ、ああ、そうだった。海鳴 縁はアリサ・バニングスを護るために、人を殺めたのだ。
「ぁ、ぇ、縁――」
 痛みを訴える首を無視して周りを見渡す。アステマの表情が一瞬驚いたように見えたが、それはまるで気にならない。
 肉塊が見えた。
 スーツ姿の肉塊。
 フォンだ。フォンという男、だった。
 縁が殺した。
 殺させてしまった。アリサ・バニングスが不甲斐ないばかりに、馬鹿だったばかりに、縁に殺させてしまった。
 青い顔が白くなる。
 更に視線をずらし――更に死体。
 ボロボロの服を着た、見覚えのある人。頭が潰されているが……そうだ、自分が気を失う前に来ていた人がいる。
「――シグナ、ムさ」
 本当ならば立ち上がって駆け寄りたかった。
 だけど身体がいう事を聞かない。
 知り合いが、親友の家族が、死んでいる。間違いなく、あれは死んでいる。
 鳥肌が全身に立つ。
 恐ろしい事を考えてしまった。
 あれを、シグナムを、殺したのはもしかして。
「まぁ、安心しろ」
 ふと、上から声が降る。
 顔を向ける余裕はなかった。
「人間だったらあれは死んでるが、現状の奴ならば十分に蘇生できる」
 言い訳じみたその声は、若干苦笑の色が含まれていた。
 蘇生できるのか。それは良かった。そんな感想がまるで浮かんでこない。
 ただ、気になるのは1つで。
「シグナムさん――え、縁が――?」
 ただ気になった。
 もしかして、縁がシグナムをあんな状態にしてしまったのか、と。
 もしかして自分は、更に縁の手を汚させるような真似をしてしまったのか、と。
 それだが気になる。
 ほう、とアステマが呟きを漏らす。
「いいや、あの馬鹿侍は私がやった。私が半殺しにした」
 苦笑のようなその言葉に、アリサの肩が落ちる。
 良かった。
 いや、シグナムが死にかけている以上まるで良くないのだが、それでも良かったと思ってしまった。不謹慎だ。
「さて、アリサ・バニングス。次は貴様の事なんだが」
 一転、真面目な声色に変わった。ぞくりとした。
 ゆっくりとアステマに視線を戻す。冷静なその瞳が、しっかりとアリサを見下ろしていた。
「貴様には、縁が世話になった」
 見下ろすその瞳が本当に冷静で。
 冷たくて、静かで。
 頭が冷えた。
「人として、私が教えもしなかった事を教えてやった。縁の友達になってやった。そこはやはり感謝する」
 ありがとう。その声が非常に無色。感情のカケラも感じられない声だった。
 アリサの頭の中で、縁にした仕打ちの数々がふつりふつりと湧いて来る。
「だが、貴様は縁を悲しませた。最悪な事をしてくれた」
 悲しませた所の話じゃない。最悪な事所の話じゃない。
 縁を泣かせたのだ。
 突き放して。ひたすらに突き放して。
 拒絶した。
「決定的かもしれん。立ち直れないやもしれん。人としての海鳴 縁は、恐らく終わった」
 アステマの目が、冷たい。
 かち、かち、とアリサの奥歯が勝手に鳴った。
「きっと縁は人間としての生き方を投げ出す。そして代わりに、これからは大嫌いな魔導師を殺して回るだろう」
 殺して。
 その一言に、身体が冷えた。
 縁が魔導師を、人を殺す。フォンを有無を言わせる事なく殺す場面を目の前で見てしまったので、それが嫌に明確に思い浮かんでしまう。
 そして更に思い出す。
 腕を砕かれ、目を潰され、くり貫かれ、そして血溜まりに沈んだ縁の姿。
 縁が、死んだ姿。
 縁が死んで、そして殺して、その姿。
「1人殺せばもう、あとは100人だろうと1000人だろうと変わりはしない。縁は魔導師を殺戮する化け物と成り下がってしまった」
 化け物だ。人を狩る人外だ。
 それが、あの姿の、縁。
 あの醜悪な姿の、縁。
 ああ、そうだ、そうなのだ。
 海鳴 縁は、人間じゃないのだ。
 人間として生きてきたのに、人間じゃないのだ。
 がちがちと、歯が鳴る。身体の震えが止まらない。
 怖いと思った。
 縁を怖いと、そう感じた。
 致命傷が致命傷にならず、幾ら血を吹いても死なず、頭を吹き飛ばされても平然として、そして圧倒的な力で人を殺した、あのグロテスクな生き物が縁だと思うと、それは恐怖でしかなかった。
 震え出すアリサを見下ろして、アステマは一度溜息の様にゆっくりと長く息を吐き出す。
「私達はこの世界を隠れ蓑のようにしていた訳だが、管理局は今回の件で私達を捕まえようとするのは間違いない」
 捕まる。
 その一言にアリサの右肩が跳ねた。
 捕まる。何故。人を殺したからだ。
 考えなくても分かる。分かっている。人はいつだてそうやって生きてきたのだ。
 人を殺す化け物を、駆逐して生きる。だから捕まえる。
 ああ、でも、違うのだ。縁は自身を守るために、そしてアリサ・バニングスなんて馬鹿な奴を助けるために、人を殺したんだ。
 正当防衛だ。正当防衛だ。頭の中がガンガンする。
「私は管理局が少々嫌いでな、もちろん逃げる。捕まってやる訳にもいかんので、この世界にはもう来ないやも知れん」
 そして、悪寒がした。
 見下ろすアステマの目は何処までも冷たい。
「だから、次元界を超える術を持たない小娘一人殺したところで何の特にもならんし、一時とはいえ縁に “人として” 親密に接した者を殺すのは後味が悪い」
「――ぁ」
 間の抜けた酷い声が漏れる。
 聞きたくない、聞きたくない。
 その先を、聞きたくない。
 本能のようなそれがガンガンと痛む頭に訴えても、身体がまるで動かない。
 耳を塞いでしまいたい。この場から走って逃げてしまいたい。でも、動かない。
「だが、娘を傷つけられた以上、これだけは言わせろ」
「ゃ、やだ――やだ」
 それを聞きたくない。
 次を聞きたくない。
 見下ろすアステマの目が、次の言葉を正確に語っている。
 次の言葉が、嫌でも分かる。
 アステマは言う。
 きっと、こう言う。
 口を開いて、こう言うのだ。


「二度と縁に近付くな、この屑」


 心臓が、鷲掴みされた気分。
「魔法と関わりのないこの世界ならば、きっと縁は作られた姿を隠して、人として生きてゆけると――」
 近付くなって。
 近付くなって。
 元々、そのつもり、だった、のに。
 そういう、覚悟、してたのに。
 言葉にされると。
 はっきり言われると。
 そんな冷たい目を、そんなゴミを見る目を、そんな明確な怒りが篭った目を、向けて言われると。
 頭が、白くなる。
「――いや、これは私の勝手な妄言か」
 独り言のように呟くと、アステマはパチンと指を鳴らす。
 綺麗な魔法陣が流れるようにして空とアステマの足元に描かれる。
 それをアリサは、呆然と見上げていた。
「まあ、いい。あとは家に帰るなり身を投げるなり、好きにしろ」
 興味がないと、そんな吐き捨てるような一言と共に、アステマの姿が光に包まれ、消えた。
 何も言えなかった。
 二度と近付くな。
 いや、もう、二度と、近付けない。
 良かったな、と頭の片隅で悪魔が囁く。
 良かったな、良かったな、一番最初にお前が目指した通り、アリサ・バニングスは海鳴 縁から離れる事が出来たじゃないか。
 良かったな、良かったな、良かったな、しかも違う世界に行くそうだ。絶対会う事がないじゃないか。
 良かったじゃないか。
 悪魔が囁く。
「あ、ああ――」
 がちがちと歯鳴りが酷い。酷い。
 アリサ・バニングスは、海鳴 縁と絶交したのだ。
 これはもう、完璧に。
 でも。
 でも。
 ああ、でも、違う。
 違う、違う、違うのだ。
 自分が目指した絶交は、自分が目指した縁との距離のとり方は、これじゃない。
「あああああ、ああ、あああああああああ」
 涙が出る。
 泣いていた。
 それしかできない。
 自分が縁から離れようとしたのは、縁から嫌われようとしたのは、もっと、違う。
 違う。
 自分の恋心が縁を傷つけないように。
 自分の恋心が縁を汚さないように。
 だから、だから、そうなる前に嫌われようとしたのに。
「やだ、や、縁――やだ……」
 自分のせいで、縁が殺人を犯してしまった。
 浅はかな自分のせいで、縁が血にまみれてしまった。
 ああ、ああ、ああ、自分のせいで。

 縁が、汚れて、しまった。












 桜色のそれは、いっそ滝のようだった。
 轟音。
 爆音。
 あらゆる物を飲み込むその桜色の濁流を、縁は避ける事もなく真っ正面から受け止めて――飲み込まれた。
 ずさん、ずさん、と弾き飛ばされるようにしてフェイトが砂漠の上をバウンドしながら転がり落ちる。スターライトブレイカーの直撃よりも速く離脱は出来たが、受身をとる余裕はなかった。バリアジャケットがなければ酷い事になっていただろう。
 そして見上げて、ちょっと青くなる。
 スターライトブレイカーを受けた事は2回ある。最大火力で同時に放った事も1回ある。客観的に見るのは初めてなのだ。
 ファランクスシフト分の魔力を流用したとは言え、この威力、この迫力。
 魔法の無効化は出来なく、シールドで弾き逸らすしかないならば、結界貫通も兼ね備えたこの一撃は耐えられないだろう。素直にそう思えた。
 桜色の本流は縁を飲み込んで、飲み尽くし、そしてそのまま本流は砂漠の砂を蹂躙する。
 1秒過ぎ、2秒過ぎ、余波でフェイトが吹き飛ばされそうになりながら3秒過ぎて、桜色の滝が止み

 ボッ

「ひゃっ!」
 スターライトブレイカーが止むと同時に、なのはの上半身部のバリアジャケットが弾け飛んだ。
 ジャケットパージをする余裕などない。突如として爆破された。
「え? へ? ――きゃああっ!」

 再び炸裂音が響き、なのはの手首の下からいきなり爆発が起こる。

 グローブ部分が丸ごと弾け飛び、その衝撃でレイジングハートが手を離れて宙を舞う。
「っ、レイジング――!」
「なのはっ、避けて!!」
 反射的に弾け飛んだレイジングハートに目を向けてしまい、フェイトの焦った声と共に3度目の炸裂音。
 頭の真後ろで、予告も何もなく爆発が起こる。
「かはっ」
 視界が一瞬白く染まる。
 飛行魔法の術式がその瞬間に消えかけて。
 ドンッ、という爆発音。
 背中の後ろから強烈な衝撃。飛行術式は完全に壊され、その衝撃に吹き飛ばされるようにして なのはの身体が地面に叩き落された。
「なのはっ!」
 フェイトは駆け寄ろうとめようとするが、距離が遠過ぎる。
 ぐるんぐるんと回転しながら、なのはは一直線に砂漠に突っ込んだ。
 背中から行った。バリアジャケットはギリギリで生きていたから、たぶん大丈夫だ。
 奥歯を噛みながら、フェイトはすぐに上空に目を向ける。

 縁がまっすぐ、砂漠へと落ちたなのはへと右上の人差し指を向けていた。

 無傷。
 防ぎ切ったというのか、バリアブレイクで削った、あのシールドで。
 愕然とした。
 嘘だ。
 ぱっと頭に浮かんだのは、そんな陳腐な一言。
 あのスターライトブレイカーを耐え抜ける訳がない、のに。
『もしもだが、これが全力だというのなら、これははっきりと言える』
 頭の中に縁の声が響く。
 冷静に、平坦な声で。
『雑魚だな』
 呟いた。
 それと同時に、向けた指が一瞬光り、魔法陣が出現。そして即座に握り拳程の弾丸が1発だけ生成される。
 嫌な予感が一斉にフェイトの中で起立する。
「や、やめ――!」
『沈め』
 止めてと、そんな制止の言葉が口から出るよりも早く、その弾丸が射出された。
 超高速で撃ち出されたその弾丸は、フェイトの口から 「て」 という音が漏れるよりも先になのはが倒れ伏せた真横に着弾して

 ミサイルを落とされたかのような爆発が起きた。

 力の入っていないなのはの身体が、まるで糸の切れた人形の如く不自然な格好で空中に吹き飛ばされる。
 なのはの身体と共に、大量の砂が吹き飛ぶように舞い上がる。更にはその弾丸の威力を物語るかのように、爆発して拡散した魔力粒子がはっきりと目に見え、離れた場所にいるフェイトですら酔いそうなほどの魔力濃度を感じる。
 大量の舞い上げられた砂と、ギラギラ輝く魔力の残滓に隠れながらも、なのはの姿は見える。完全に意識が無いのか、かなり不気味な宙の舞い方をしている。
「な、なのはっ!!」
 フェイトのそれは半ば悲鳴であった。
 くるん、くるん、と無茶苦茶に回りながらもなのはの身体は宙を舞い、そして再び砂の大地に叩きつけられる。頭から落ちた。ごしゃ、という不気味な音が聞こえた気がする。
 遅れて巻き上げられた砂が一斉に降り注ぐようにして落ちてくる。
 砂の雨に晒されながら、なのはの身体はぴくりとも動かない。
「なの――っ!」
 慌てて砂を蹴りなのはに駆け寄ろうとし、突如として足元が爆発。
 衝撃で前のめりのまま砂漠の上を転がった。
 転がってから即座にフェイトは体勢を立て直し、そして縁を仰ぎ見る。
『これがディバインシューター……力加減が難しいところか。ほとんどランチャーだな』
 右上の指をなのはに向けた状態のまま、左下の腕の人差し指をフェイトに向けている。顔は、なのはを見たままだ。
 ディバインシューターの真似をしたというのか。威力が違いすぎる。
 右上の腕を腰に当てながらも、今度は唖然とするフェイトへ縁は顔を向けた。
 左下の手の人差し指は、まっすぐフェイトを向いている。
『次はプラズマランサー・ファランクスシフト――バルカン・ファランクスか、所詮は近接防御火器システム』
 頭の中に声が響く。酷く平坦なその声が。
 嫌な予感しかしない。
『ならば違いを知れ、雑魚』
 その念話が終わるよりも前に、フェイトに向けたその指を中心として魔法陣が展開され

 大量のスフィアが一斉に生成される。

「ぁ――なっ!?」
 開いた口が塞がらない。
 目の前の光景があまりにも馬鹿げていた。
 いっそ、冗談だ。

 スフィア、その数――400以上。

 縁の回りにスフィア、という状況ではない。
 空一面が、スフィアで埋め尽くされている。
 なんだ、これ。
 人間が一気に作り出せる数じゃ、ない。まさに化け物じみている。
 ああ、なるほど、人間じゃ、ない。
『プラズマランサー』
 バチッ、と音を立ててスフィアが一斉に放電を始める。
 プラズマスフィアだ。
 魔力変換のコードまで丁寧に真似されている。
 ファランクスシフトは2回見せた。たったそれだけでコードを真似するとか、ありえない。
 スフィアの数もありえない。
 空を埋め尽くす “ありえない” 光景に唖然としながら、フェイトの脳裏に一つの言葉が浮かぶ。
『メタルストームシフト、ファイア』

 化け物め。












 なのはが朦朧としながらも意識を取り戻した時には、それは終わっていた。
 身体の節々から激痛が走る。バリアジャケットはぼろぼろになっている。レイジングハートは落とした。
 魔力残量が完全に0だ。リンカーコアが悲鳴を上げているのが分かる。今構築しているボロ布のようになってしまったバリアジャケットも、あと少ししたら自己崩壊するだろう。
 確かにスターライトブレイカーは魔力消費の激しい大技だが、魔力残渣が0になるのはありえない。これは魔力ダメージで削られたからだろうか。
 砂を掴みながら、なのははまるで力の入らない身体に鞭を打って顔を上げる。
 立ち籠める砂。
 陽炎のようにあがる魔力残渣。
 それらに帯電しているかのように放電が続く。
 そして砂漠に巨大なクレーター。何が起こったのかが分からなかった。
『455基から秒間66連射、それを5秒――15万と150発か。基数をあと3倍、連射速度を100越え程度には改良できそうだな』
 上空から独り言のような念話が響いた。
 見上げると、縁。
「え、にし、ちゃ――」
 自分の声の弱々しさに、逆になのは自身が驚いた。
 漏らしたその呼び声に、縁の肩がぴくりと震える。
 黙って、縁は顔を向けた。
 見下ろす。
 見上げる。
 ああ、そうだ、自分は縁に撃墜されたのだと、そこでようやく思い出した。
「フェイ、ト、ちゃん――」
 更に顔を動かし、自分の相方でもあるフェイトを探す。何故か無性に心配になった。
 縁は平然と空にいる。
 そしてフェイトがいない。
 それはつまり、フェイトもまた。

 クレーターの真ん中で、死に掛けていた。

 バリアジャケットは完全に吹き飛ばされていて、裸の状態だった。
 バルディッシュは持ち手を壊され、コアの部分も破損したのか余剰魔力が漏電のように漏れている。
 フェイト自身はもう、白目を剥き、びくっ、びくっ、と痙攣を繰り返すのみ。
 かなり危険な状況だと、一目で分かった。
「――っ、フェイト、ちゃん――っ!」
 大きな声が出ない。
 フェイトまで声を届かせられない。
 立ち上がって駆け寄ろうにも、身体が言う事を聞いてくれない。
『もう、テスタ……あの魔導師は戦えない』
「っ!?」
 縁の声になのはの肩が思わず跳ね上がる。肩が痛い。
 再び見上げると、やはり平然と見下ろす縁。
 やはり、縁がしたのか。
『帰れ、魔導師。もう二度と魔法を使うな』
 静かに告げる縁の念話は、随分と見下した言葉であった。
 確かに、縁が攻勢に出た途端にこの様である。どう考えても勝敗は決してしまったし、実力差だって明らかである。帰れというのは、情けと言うべきか、最後の警告と言うべきか。
 どちらにせよ、縁のその言葉になのはが返せたのは小さな笑いで。
「は、はは――やっぱり甘いね、やっぱり優しいよ、縁ちゃん」
『ぬ?』
 安心したと、そんな笑みが浮かんでしまった。
 ああ、良かった。
 なのはにとって、胸につかえていた物の1つが綺麗に落ちた、そんな気分だ。
 そんな笑みに対して、縁は小さく疑問の声を上げた。人間としての姿ならば、きっと怪訝そうな顔をしているのだろう。それが鮮明に想像できるだけ、余計に笑みが深まってしまう。
『気が触れたか』
「酷いな、違うよ――殺す気だったら、今頃私もフェイトちゃんも跡形もないな、って」
 そう、今生きている、それが何よりの証拠であった。
 殺す気ならば、最初にバリアジャケットを爆破された時点で死んでいる。
 胸を爆破、右腕を爆破、後頭部を爆破、背中を爆破。それも全部直接ではなく至近距離からの爆破である。
 魔力を撃ち込んで爆破する訳じゃなく、何もない所をピンポイントでいきなり爆破するその攻撃ならば、防御もバリアジャケットも抜いて身体の中を直接爆破できたはずだ。
 それに右腕を狙った時、レイジングハートを叩き落すためならばレイジングハートを直接爆破して破壊すれば手っ取り早いはずである。
 そして意識が朦朧としていた所にトドメで撃ち込まれた弾丸もまた、直撃していない。
 気絶していたからフェイトに対してどんな攻撃を行ったのかは分からない。それでも、危険な状態であってもフェイトは五体満足のまま。
 破れたのは魔力で構成されたバリアジャケット。それとバルディッシュも破壊されているが、コアは生きている状態だ。両方死んではいないのだ。
 余波も衝撃もとんでもない威力であったが、全部魔力ダメージの状態、非殺傷の状態である。
 殺すと、憎いと、言っても不殺。
 そこが甘い。
 そこが、優しい。
「やっぱり……縁ちゃんだ」
 縁を見て、化け物だなんて思った自分は阿呆だ。大馬鹿だ。
 安心した。
「どんな姿でも、縁ちゃんだよ」
『……違う』
 ぽつっと縁が返す。それに対してなのはは首を横に振る。
 違わない。
 違うはずがない。
 縁だ。
 あれは自分の知っている海鳴 縁だ。訳の分からない化け物などでは、ない。
「こんなこと、しちゃだめだよ、縁ちゃん。殺すとか、言っちゃ駄目だよ」
 途切れながら言うなのはの言葉に、む、と一言だけ縁が漏らした。それがまた縁らしい。
 砂を掴み、握りしめながらもなのはは腕を震わせて身体を起こそうと試みる。
「何があったのか、私には分からないよ。でもね」
 縁に何があったかは分からない。
 魔導師をどうして憎むのか、それも分からない。
 それでも、間違っている事は間違っているのだと、辛辣な事を真顔で教えてくれた人がいた。
「殺人は犯罪だよ。間違ってる。しちゃ駄目だよ。それを止めるのは、非常に正しくて、理に適ってる、でしょ?」
『高町さん……』
 なのはの言い回しに思い当たる節があったのか、縁はぽつっと呟いた。
 魔導師じゃない、高町さんと。
 それが嬉しい。そして、なのは、と呼んでくれなかったのが悲しい。
 上体を起こし、足を立てる。みっともない位に足が震えている。それでも頑張って立ち上がる。
 立ち上がるのが非常に重労働だ。倒れそう。
 砂漠の上というのが余計に立ち難い。
 それでも立つ。立ち上がる。
 杖はない。頼れるのは震えた二本の足のみ。
「ね、縁ちゃん」
 顔を上げ、縁を仰ぎ見る。
 縁だ。
 今ではもう、化け物だとは感じられなかった。
「自分が世界で一番不幸だって思うのはいいけど、それで人に迷惑かけちゃ、駄目だよ」
『――覚えて……』
 これはなかなか酷い台詞だと、今でも思う。
 でも、なのはにとって忘れられない台詞でもある。
「忘れられないよ……救われたもん、私……謝ってないのが、本当に馬鹿みたい」
 忘れられるはずもない。
 人がうじうじと悩んでいた事を、何が悩みなのかとあっけらかんと言い放った人の言葉を、忘れるはずがない。
 人がうじうじと悩んでいた事を、ずっぱずっぱと斬り捨てた人の言葉を、忘れるはずがない。
 縁の方も覚えているのが、嬉しかった。
 今更ながら、本当に思う。
 謝ってない自分は、とんでもない大馬鹿野郎だ。
 笑みを向けるなのはに、一度縁は首を横に振る。
『……うるさい』
 低く呟き、縁はまっすぐ左上の腕の人差し指をなのはに向ける。
 3角、4角、5角に6角。不思議な魔法陣。灰色の光をした魔法陣。
 白でもない、黒でもない。きっとこれから、白にも黒にも出来る。根拠もなくそう思えた。
『星の程度で調子に乗った魔導師如きが』
「アリサちゃんに、教わったよね……」
 怒りと、焦りと、悲しみと、色々な色の混ざった縁の言葉に、なのははまっすぐ見返しながら呟く。
 びくっ、と縁の身体が震えた。
 きっとまだ、縁にとってアリサという人物は大きい存在なんだろう。頭の片隅でそんな感想を抱く。
「人を、指さしちゃ、いけません……って」
『……サン・ライト』
 ぎりっと、縁は左下の手を握り拳にした。
 素直だ。
 それが嬉しかった。
 縁の展開した魔法陣の前に、急速に魔力が集まり、そして巨大なスフィアが生成される。
 10秒かけてなのはが集める魔力より、多い。カードリッジを使用してもきっと追いつけない。
 ああ、なるほど、スターライトブレイカーの真似なのか。非殺傷でも死んでしまうかもしれないなと、どこか他人事の様に思う。
『ブレイカー』
 迫り来る灰色の濁流を眼前にしながら、なのはが心に浮かぶ言葉は1つだけ。
 きっと助ける、と。
 そんな一言。













 すとっ、と縁は砂漠に降り立った。
 海鳴 縁という、人間の姿で。
 首から下げるのは、細かな文字を彫り込まれた赤い宝石。友人だと、そう思っていた人にお守り代わりでプレゼントしたはずの宝石。
 服はない。友人だと、そう思っていた人の目の前で変身した時に、着ていた制服は全部破れた。
 縁の目の前には栗色の髪をした少女。高町なのは。
 少し離れた場所には金髪の少女。フェイト・T・ハラオウン。
 2人とも、バリアジャケットを全て破壊され、気絶している。目立った外傷はないが、内部的にはなのはの方が危険な状態である。このまま捨て置けば、死ぬかもしれない。
 なのはの傍らに縁はしゃがみ込み、つん、つん、と2回程、おっかなびっくりにつついた。
 反応はない。生きているような、死んでいるような。
 もう一度つつく。
 同じく反応はない。
「……なんだ、魔導師はこんなに弱いのか」
 ぼそ、と呟く。
 嫌に平坦な声になっていた。
「簡単だったな……何で躊躇っていたのだろう」
 魔導師は、憎い。嫌いだ。
 でも、今まで殺してこなかった。
 アステマに良い顔をされなかったのもあり、人を殺したことが今まで無かったので躊躇いもあった。
 今まで何度も何度も魔導師と遭遇してきて、殺してやりたいという感情が芽生えたのも1度や2度の話ではない。それでも今まで躊躇っていた。
 だけど、いざ殺してみれば、呆気ないものである。
 いざ対峙してみれば、拍子抜けもいい所である。
 魔導師は、殺せる。
 それだけの力が、自分にはある。
「――当然か」

 自分は、その為に作られた、化け物なのだ。

 縁は傷だらけのその小さい手で、なのはの頬をゆっくりと撫でる。
 友達になれたら、きっと素敵だろう。何度もそう思ったことがある。優しくて、可愛くて、そして芯が強くて真っ直ぐで。
 でも、魔導師。
 でも、良い人だと知っている。
 でも、魔導師。
 でも、素晴らしいところを知っている。
 でも、魔導師。
 憎い。
 はぁ、と縁は一度息を吐く。息が、少し上がっていた。
「高町さん……」
 頬を撫で。
 顎へ移し。
 喉に指を置いて。
「……私は、優しく、ない」
 首を。
 絞める。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 主人公はアリサです。
 縁は敵です。
 ああ、でも大前提としてこれ、魔法少女リリカル “なのは” の二次作なのですよー。
 こんにちはこんばんは、読む時間によってはおはようございます。白い病室血に染めろ! クロガネです。

  N & F、瞬殺の巻。
 チート甚だしい馬鹿を書いている自分が一番恥ずかしい。書いてて思うのですよ、腕4本はありえんと。
 ただ、これで縁の戦闘面での弱点がかなり露呈されてしまったかなと。もう少し上手く書きたかったんですが。
 とりあえずシスコン空気。

:一言メモ:
・メタルストーム・ 地上最強と名高い機関砲。ただし十分な弾数を揃えられる資金があれば、という前提。重力装甲じゃない。
・アステマ・ モロバレすると、初期の縁と同じくらいの馬鹿。正確にはアステマが常識を持ち合わせてないから縁があんな馬鹿な子になった。
・HENTAI・ この作中にンな属性の人はいません、はい。
・ヤンデレ・ この作中にンな属性の人はいません、はい。
・ヤンデル・ この作中に……病んでないよぅ。






 ここまでお読みになってくださった皆様に、大変残念なお知らせとお詫びがございます。
 大変申し訳ございませんが、“魔法の使えない魔法使いの魔法” はこの回を持ちまして

 鬱展開終了とな(ry

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12件のコメント

[C499] 欝は終了なのか

それは朗報♪
おじちゃんは限界間近でしたよ。

しかし魔王の心臓?素敵ちーとですね♪
一家に一人縁ちゃん、鬼畜米兵瞬殺ですな。
オオ、アラタナオウノジダイノマクアケダ・・・

とりあえず、デレアリサ復活を夢見つつ・・・
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : ぎるばと
  • URL
  • 編集

[C500] 500get

縁、強すぎです。
アステマ、バカすぎです。
兄貴、空気です。

ユーノ、誰それ?

いや、もう清々しいまでの凶悪っぷり。それでも折れないなのはの心は鋼でできています。きっと。
やはりなのは様はいつ如何なる時でも主人公でいらっしゃるようで。

このSSのヒロインって縁ですよね?
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : 小山の少将
  • URL
  • 編集

[C501] お、500越え

○ぎるばとさん
 そもそも鬱展開を行うアリサと縁が(ry
 しかし読み返してみるとチート甚だしい。やりたい放題過ぎて後から吹きましたよ。
 アリサの復活は、待ってね♪

○小山の少将さん
 そういえば最近ユーノ君を登場させていないような気が……
 リリカルなのはにおいてなのは嬢は最後の砦的なイメージがあります。フェイトもはやてもスバルもヴィヴィオも最後は自分でケリをつけても、そこまで踏ん張らせるのはなのは嬢の役目じゃないかと。
 ヒロイン? 誰それ?
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C502] 初めてのコメント!

思わず一言だけ。

欝展開→絶望展開

ですねわかります!
  • 2009-07-23
  • 投稿者 : とおりすがり
  • URL
  • 編集

[C503] 滅展開?

鬱から滅展開ですね
分かります

今回のアリサ蘇生
命一つ分けたみたいですがその分けた命が魔導師の命でアリサがバーニング覚醒
決着後に某海賊ガンダムX3よろしく縁を頂いていくんですね(笑)


縁はどうやら魔法(能力?)の同時使用が不可能みたいな代わりに見た能力や受けた力を自己進化できるみたいですね

いっそなのはを喰らえばいいじゃないかとか思った私はどうしましょ?
  • 2009-07-24
  • 投稿者 : ルファイト
  • URL
  • 編集

[C504] 暗いの好きね

○とおりすがりさん
 いらっしゃいませー
 ……わかりません!

○ルファイトさん
 滅ぼし回る超展開。ないない。
 ならば海賊らしく、いただいていく! (アリサ) ……ないない。
 縁の魔法の真相は……うふふふふ
  • 2009-07-24
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C505]

更新お疲れ様です。

う~ん、アステマも縁も圧倒的な強さ。
しかしアステマ、昔は結構普通というかゆるいくらいの、今とは似ても似つかぬ振る舞い。それだけの変革をもたらしたんですねぇ……。

あ~、でもしかし。
今回はなのはが気持ち悪かった。

いえ、描写とかは上手いし真っ当なんですが。高町なのはという存在というか、思考。それの方がよっぽど化物じみてると思うんですがねぇ……。縁の姿もそうですが、なのはの言動にも怖気が走ったという怪現象。理解できないものを恐れたわけですね。

あの発言に鬱展開終了のお知らせ。
これはあれですか、例のお友達で仲良くなあの展開の始まりですか。
だとしたらもう……無理。私駄目なんですよね、あっち方向にスイッチは入ったなのは。

戦々恐々としつつ、次話お待ちしております。

[C506] コメントありがとうございまー

○春都さん
 誰しも昔は案外普通なのです。無印では可愛かったなのは嬢も、StSでは凄い事になってますし。

 気持ち悪い。流石なのは嬢気持ち悪い。
 初対面の挨拶に雷撃を撃ち込まれようと鉄球を撃ち込まれようと、笑って許す心の広さは正直外見が化け物である縁とは真逆で、人間離れした内面の化け物だと思うのです。そんな化け物を内面に飼っているからこそ、伊達や酔狂でもなくガチの戦闘を9歳から続けられるのでしょうか。
 ただ一つ言うならば、友達になろうと高町式 “おはなし” をしようにも、なのは嬢はどう頑張っても縁に勝てない件。
  • 2009-07-25
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C507] 更新に一週間も気がつかなかった自分にガックシ

う~む思った事は結構他の皆様が書き込んでしまってるなあ・・・

アステマの命は他の人にも完全に死んでなければ分けてあげられるみたいですね。これ最高評議会やスカ博士辺りが知ったら、何が何でも手に入れようとしそうだなあ。シグナムは瀕死&下半身マルダシしで放置、傍目にはレ○プされたようにも見えなくも無い。態々アリサにトドメさしてくれちゃう辺りサービス精神もあるんですね……された方はオシャカになるかもしれませんが(汗)

縁VSなのフェイはあれだ、ジャンプ漫画に例えるなら、ラオウに挑むヒューイ、黄金聖闘士に挑む下級冥闘士、スーパーサイヤ人2悟飯に挑むセル完全体、仙水に挑む桑原、聞仲に挑む崑崙十二仙、藍染に挑む日番谷。これらに共通する事、挑むほうはそれなりに強い(ハズの)キャラだが、相手が強すぎて『雑魚』扱いでやられるということ(笑)

しかし欝展開が終了とは残念、今まで読んできたとらいあんぐるハート系の二次作品では屈指の欝具合でしたのに……そうかっ!?一旦持ち上げてからさらに突き落とす罠ですな! だってまだ一人残ってるじゃないですか、最凶のヤンデレ吸血姫すずか様が! 壊れる寸前のアリサを美味しく頂いてしまうというタナボタ欝展開が。
  • 2009-07-30
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C508] クロガネには良くあること

○ミヅキさん
 ヴォルケンリッターの扱いが酷いと言われるクロガネです。サービス精神でこんな事されたら堪ったものじゃないと思うのですが。
 しかしジャンプも続くものだと……

 すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない……すずかはヤンデレじゃない。
  • 2009-07-31
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C558]

「雑魚だな」当たりの展開がドラゴンボールにしか見えない件について
相手の全力攻撃を受けきってから反撃とか…
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

[C566] コメントありがとうございまー

 攻撃を受けてから反撃するというのはプロレス理論だったんですけどね(汗
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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Appendix

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拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

最近の記事

プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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