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[C489] 狂り狂りと廻るはメビウスの輪

縁ちゃん真・発狂
以下の能力が付加されました

殺意という名の威圧
明確な意志を持って排除し蹂躙し殺すという殺気を放ち威圧する
縁の縁者以外に全能力10%ダウン効果

信頼できぬ者への怒り
思い込みによる自己暗示に等しい強化
なのは、フェイト、はやてに対しての攻撃ダメージが15%上がる



この精神状態じゃなのは戦えないでしょうね

教授のそれ見て思ったのはあなたどこのホムンクルスですか?


追伸
以前のあれ公開しちゃって結構です
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : ルファイト
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[C490] バーサーカーだとっ!?

まさかちっさいお姉ちゃんのサーヴァントとは・・・
オジサンびっくりだよ。
しかしご神体か・・・SAN値直葬?

ヴィータ死亡。
しかしふと思った。
あれ?矢天の書オリジナル無いと再構成ってできなくね?
・・・・・・・・ま、きっとうまいこと抜け道を考えてくれるはず。
なんたって死亡フラグ全力で無視した八神家だかんな!

とりあえず、芋虫アリサちゃんの復活を期待しつつ・・・
きれいな蝶だって幼虫時代はあるもんね!
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C491]

更新お疲れ様です。

いやぁ……これは酷い。そしてすばらしい展開。マゾい脳汁が出てきます。

しかしアステマの星の御神体……まるでジュエルシードのよう。まさか? いやいやどうだか。

そして覚醒(堕)した縁。肝心な言葉一つなければ、どんな言葉も届かない。
そしてまあ、見た目がアレで引くってのは……う~む、しかたがないといえばない、んだが。さすがのなのはさんも無理なのか?

次も楽しみです。
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : 春都
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[C492] ( ゚ ρ ゚ ) < コメントありがとうございまー

○ルファイト さん
 その能力があまりにも強すぎる件。10%ダウンに加えてダメージ15%アップは恐ろしい。
 なのは嬢、精神的レイ○編。これで戦っても……

 時期を見て公開しますよー、うふふふふふ

○ぎるばと さん
 しかし実際はシスコンの方がサーヴァントの件。
 ヴィータの場合は一体どうなのやら。しかしSTS時代では既に回復機能はだいぶイカれてきているらしいですが。
 復活の前に一仕事。

○春都 さん
 そして書いているクロガネ自身が凄く鬱い件。
 御神体についてはまた今度……削るかもしれませんが。
 なのは嬢の場合、最初に精神的ダメージががっつり来てるもんだから、あれは引く。
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : クロガネ
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[C493] これこそ欝スパイラルネメシス……

遂に、遂に縁が最後の一線を越えてしまった!そういやなのは謝罪してなかったのね、あれだ小~中学生時代に他人の嫌がることを散々やってきたくせに、同窓会とかで馴れ馴れしくしてくる奴的な感じ。考えれば考えるほど、現実に居たらなのはって知り合いにはなりたくない部類の人間かも。てかほんとSTS見てると、小学校以来の友人関係しか築けてないんじゃねえの?って感じする。私の場合小学生時代から未だに交流あるのって、一人だけですよ。むしろ他の連中には二度と遭いたくねえ位。

アステマさんは限りなく不死に近いという存在。ハガレンの賢者の石(ホーエンハイム)と同じく、生きてる人の生命の結晶ですが規模が違いすぎる! 向こうは国一つ程度、こっちは星ひとつってどんだけすげえんだ。

この手の「命がたくさんある」存在を殺すには
①命のストックがなくなるまで殺しつくす(例・ハガレンのホムンクルス)
②元となった命(本体)を殺す(例・ヘルシングのアーカード等)
③一度に全ての命が死ぬ位の攻撃をする(Fateのバーサーカー)
④幾ら再生しようとも即座に死ぬ状況に持っていく
⑤殺せずとも動けないよう封印する
⑥異世界・次元の歪・マイクロブラックホール等に投棄する。

とかがメジャーですけど、アルテマの場合星ひとつ分の命、地球と同程度と仮定すると約68億人分はありますから、①②④はかなり難しいというか、リリなの世界の魔道師個人の力ではまず無理。それこそドラゴンボールの皆様の様に、一撃で地球をコナゴナにできる位の破壊力でもないと③も無理。できそうなのは⑤⑥位か…なんか更にパワーアップして復活するフラグに見えてならない(汗)

  • 2009-06-24
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C494] 天元突破の鬱さ加減

○ミヅキさん
 フェイトはエリオやキャロの保護者になって、はやてはカリムやらナカジマ氏やらと関係あるのに、なのは嬢は……あれ?
 しかし④は死が一回しか襲い掛からないと仮定すると普通はありえないんですよね。人間はナイフで刺されても核弾頭が直撃⇒爆破の状況でも死は等しく一回なのに……fateのバーサーカーが強すぎて設定が投げやりになっている件。
 ⑤・⑥は数百年後魔王復活のイベントへ持っていけますね、アスモ何とか的に。
  • 2009-06-25
  • 投稿者 : クロガネ
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[C557]

>無理を通して通りを殺した兵士供
>無理を通して「道理」を殺した兵士供
でしょうか?
一応誤字報告です
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
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[C565] 指摘ありがとうございます

 修正しましたー!
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
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[C652]

>資料では何度も見ていて、その度に不気味棚と
>資料では何度も見ていて、その度に不気味だなと
ですか?
目に付いたので確認お願いします
  • 2010-06-28
  • 投稿者 :
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魔法の使えない魔法使いの魔法 46

第8章――第4節
――彼女の決めた生き方――
 その人とは似ても似つかぬ奇妙な姿をした化け物は、確かに一度手放してしまったはずの意識をふいに突然取り戻した。
 草を細かくキツク編み込まれた、人1人が寝るくらいの大きさのマットを敷き詰めた床に寝かされていた。確かに見えた空は、いつの間にやら木で出来た奇妙な屋根に遮られている。
 見知らぬ場所であった。
 化け物はゆっくりと右上の腕を持ち上げて、その細長い不気味な指をゆっくりと曲げ、そしてまたゆっくりと開く。
 不思議な事に、意識を手放す前は今にも死にそうなほどの状態だったのに、いつの間にやらそれは消え、むしろ今では活力が湧く程に生き生きと身体の調子が良かった。
 それこそ、今までにないほどに。
 培養液から出されているのに、培養液にいる時よりも調子が良いというのも妙なものだ。
 化け物は草で編まれたマットに4本の手を突き、身体を起こそうとして、そこで左下の手に握っていた物に気がつく。
 それは小さな、赤く綺麗な宝石であった。
 中途半端に身体を起こした状態のまま、その左下の手に握っていた宝石へと視線を落して、はて、こんなのを持っていたかと化け物は考えていると、ふいに足音が聞こえてきた。
 足音の方へと顔を向ける。
 木の枠に紙が貼られた、ドアノブのない奇妙なドアがあった。
 そのドアの前まで足音は迫り、そしてすっと音もなくドアが横にスライドして開いた。
「む、起きたか」
 そこには、1人の女性が立っていた。
 淡い栗色の髪をした、全体的に線の細い、それも背筋に寒気を覚えるほどの美女だった。
「お前は1週か――7日も寝ていた。ここの1日は86400秒で、お前のいた世界よりも640秒弱周期が長い」
 その複眼に視線は分からぬものの、顔を向けている事から見られていると悟ったのか、女性は化け物に近付きながら言葉をかける。
 見知らぬ女性である。
 化け物からしてみれば、その女性が美女なのかどうなのかは分からなかったが、今まで化け物が見てきた人間の雌とは一風変わった感があった。
「畳の上ですまんな。本来ならば布団を敷くか掛けるかするべきだろうが、生憎と持っていないのだ」
 女性は化け物の真っ正面にどかっと腰を下ろし、まじまじと化け物の顔を見つめる。
「見れば見るほどに醜悪、生き抜くには丁度良い醜さだ。面の構えから身体の形まで、どれを取っても実に機能的な作りをしている。自然にはありえぬ気味の悪さがよく仕上がっている」
 顎に手を添え、女性は呟くように小声で漏らす。
 目は真剣なそれで、決して化け物を見下すような色をしていない。今まで同じように醜いと言ってきた魔導師と同じような評価な筈なのに、化け物もその真剣な評価に何故か居心地の悪さを覚える。
 女性の言葉に化け物は警戒するように僅かに身体を引くと、女性は片眉を上げて驚いたような顔をした。
「なんと、言葉が分かるのか? どれ、分かるのならば一度肯いてみろ」
 化け物のどの動作で言葉を理解できると分かったのか、興味津々といった様子で女性は化け物が身体を引いた倍の分だけ顔を近付ける。
 応えるように化け物は肯いた。
 言葉は、分かった。
 そのように頭の中に色々な知能を植え付けられたのだから。
「ほう、これは驚きだ。肯くという行為を知っているのか。他種族との意思疎通が可能とは、これは生命体としての完成度が非常に高いな」
 なるほどなるほど、と肯きながら女性は化け物の右下の腕を握るように手に取った。
 にっと、口端を上げるように女性は笑った。
「お前は生きたいか?」













「友達だと言ってくれたバニングスさんは、結局友達じゃなかった。はしゃいでいたのは、私だけだったんだ」
 ガラス玉のような黒い瞳で、どこまでも平坦な声を、言葉を何も返せなかったなのは達に向かい投げかけた。
 口元を隠していた手を、ゆっくりと下ろす。
 笑うように歪んだ口はもう戻っていた。
 無表情に戻っていた。
「それにそのバニングスさんは、私の姿を見てはっきりと化け物だと罵った。それがきっと、正しい関係だ」
 下ろした手を胸元に当てる。
 涙を流しながらも、その目に悲しみの色は既にない。
 言葉を失ったなのはを横目でフェイトは一度見て、すぐに縁へと視線を戻す。
「アリサと、会ったんだ」
「ああ、怖がらせて、しまった」
 答える、その声は平坦過ぎて。
 先までの様に感情が溢れた叫びもなく、人間らしさなど欠片もなく、それは一種の不気味さを醸し出している。
 ぎゅ、と隣でなのはがレイジングハートを握り絞めている。フェイトも気を抜くと縁へバルディッシュを向けてしまいそうになる。
 本能が叫んでいる。
 あれは、人と相容れる存在ではないと。
 あれは、害を成す存在だと。
 あれは、敵だと。
 違う。それは違う。思いっきり顔を振り、本能からにじみ出てくるその意見を払い退ける。
 確かに自分は最初に大馬鹿な事をしてしまって縁に嫌われてしまったが、それでも縁は敵じゃない。敵なんかじゃない。
 そう思うのに、目の前にいるのは縁なのに、嫌な感覚が胸に貼りついて剥がれない。
「友達って何なんだ? 目を見て、名前を呼んで、友達だって言っても、結局友達にはなれなかった。やはり私が悪かったのか? 私が人間と友達になるなんて、最初から無理だったのか?」
「そ……そんな事ないよ! 私、友達だよ! 縁ちゃんの事、友達だって思ってる! それに――っ!」
 胸を押さえて、叫ぶようになのはが返した。
 確かにアリサは友達じゃないと言ったけど、それは違う。間違いだ。アリサが縁の事を嫌うはずがないと、なのはは断言できる。
 その想いを口に出そうとして、それを遮ったのは縁。

「いつ、私と高町さんが友達になったんだ?」

 え? と、間の抜けた声が出た。
 なのはの口から、出た。
 無表情で、平坦な声で、聞いた縁の言葉が分からなかった。
「私は、高町さんの事を “名前” を呼んでいない。目を見て、そして “友達” だと言っていない」
 なのはは知らない。
 縁が友達の意味を理解していなかった頃、アリサに苗字を呼ぶなと言われてから、目を見て “名前” を呼んで、と教えられた事を。
 フェイトは知らない。
 縁が本当にそれを額縁通りにしか受け取れず、アリサから教わったその友達の作り方以外の方法を一切知らなかった事を。
 だが、二人は知っている。
 縁は一貫して他人を苗字で呼び続けていた事を。
 二人は知っている。
 縁がその例外であったアステマと、恋慈と、そしてアリサに対して、どれ程の信と心を預けていたかを。
 二人は知っている。
 縁にとって、二人はその例外足りえなかった事を。
 二人は、知っている。
 当たり前過ぎて、本当に当たり前過ぎて、誰もが口に出さない事を、同じようにして2人とも縁に言った事がないという事を。
 そう、それは縁と友達だという、そんな当たり前の確認。
 その当たり前の確認をしたことがあるのは――

「それに今まで一度も、バニングスさん以外、私の事を友達だと言ってくれてないじゃないか」

 アリサ以外、誰一人として、いないという事。
 言葉を失うしかなかった。
 だって、だってそうだ。普通はそうだ。
 友達だと思っている人に面と向かって 「友達だよね?」 なんて普通は訊かないじゃないか。
「今更それを言われて、信じてと言われても――困る」
 感情の篭らない瞳を向けられて、なのはも、フェイトも、次の言葉が出てこない。
 悔やんでいるのか、悲しんでいるのか、怒っているのか、縁が今どのような感情を抱いているのかが、まるで分からない。
「――海鳴、さん」
 奥歯を噛みながら、フェイトが絞り出すようにして縁の名前を呼んだ。
 がちゃりと、バルディッシュを構えて。
 それを見て、ぎょっとなのはの目が大きく広がる。
「フェイ――っ!」
「海鳴 縁、時空管理局巡行艦、アースラまで同行して下さい」
 何をするのかとなのはが声を上げるよりも早く、フェイトははっきりとした口調で――嘱託魔導師としてきっぱりと縁に告げた。
 友達としてでは、ない。
 そもそもフェイトは自身が縁の友達足り得ていないのは、前から分かっていた。
 一番最初に縁に酷い事をした。大怪我をさせた。嫌われて当然のような仕打ちを縁に対してしてしまったのだ。そして謝ってものらりくらりと逃げられて、今まで謝罪をしっかりと受けてもらっていないのだ。
 それが突然話し掛けてもらえるようになって、笑ってくれるようになって、心の何処かで許されたのかもしれないとちょっと期待してしまっていた。油断していた。
 そのツケが、今ここで。
 なのはの様に、友達然として、縁の前には、立てない。
 縁に対しては、フェイトはもう、魔導師として立つしかなかった。
「今、任意同行に同意してくだされば、決して酷い扱いをしません。食事、睡眠、プライバシーの保護などを保証をし、監視下での通信ですが外部との連絡も保証されます」
「――」
「フェイトちゃん……」
 バルディッシュを向け、フェイトはしっかりと言葉を口にする。
 言葉は、そう、しっかりしていて。
 なのはが先とは変わり、心配そうな声で名前を呼んだ。
「もしも万が一、貴方が罪に問われる場合でも、全力を持って弁解にあたります。私が、弁護します」
 フェイトは、泣いていた。
 ぼろぼろと、その綺麗な目から、涙を流していた。
 それでも口調はしっかりと、管理局の魔導師として成り立っていて。
 悔しかった。
 シグナムに連戦連敗を喫していた頃に感じていたそれよりも、何倍も悔しかった。
 なのはの様に、友達としての言葉を投げ掛けられない自分が、惨めで、悔しい。
 話しかけてくれるから、許してもらえたのかもと淡い期待を抱いた自分は馬鹿だ。受け入れてもらえないような謝り方しか知らない自分は馬鹿だ。縁に大怪我を負わせてしまった自分は馬鹿だ。縁と対峙してしまった自分は馬鹿だ。
 なのはですら否定されたのに、これだけ縁に対して馬鹿な事をした自分が、友達面など出来ない。
 それが悔しい。
 口調を取り繕っても、涙が、出る。
「テスタロッサさん」
 ぼそっと、縁が呼んだ。
 苗字を呼んだ。
 それが胸に刺さる。フェイトもまた、縁の事を苗字で呼んでいるから、縁の言う友達とは程々遠い。
「私は1人、魔導師を殺してきた」
 ひゅ、と隣でなのはが息を飲んだ。
 ぎゅっとフェイトはきつく目を閉じる。余計に涙が溢れていく。
 予想はしていた。
 もう縁は、犯罪に手を染めているかもしれないと。
 でも。
「私はもう、戻れない事をしたんだ。もう、中途半端に――」
「投降し、て下さい」
 続けた言葉を、フェイトは目をつぶりながら遮った。
 言葉が変なところで途切れる。
 涙が、邪魔だ。
「投降して、罪を償おう……海鳴さん、お願い、投降して下さい!」
 強く口にしたそれは、一瞬管理局の立場がぐらついたものだった。
「罪を償って、戻ろう! 地球に、日本に、戻ろう! 今は友達が信じられなくて良い! だからもう一度、最初から始めよう! 友達をゆっくり作ろう! 私も協力する! みんな……アリサだってっ、きっとっ!」
 叫ぶかのように吠えた。
 バルディッシュを向けたまま。
 流れる涙をそのまま。
 吠えた。それが遠吠えにしかならないと頭の片隅では分かっていても、フェイトは吠えた。
 違う、違うと頭の片隅が警告し続ける。
 今更友達面でもする気かと。
「……もう、無理だ」
 ぽつっと、縁が返す。
 拒絶を返す。
「戻ってもまた、誰かを悲しませるだけだ。また高町さんを泣かせてしまうかもしれない。テスタロッサさんを苦しめてしまうかもしれない。私が普通の人間のように暮らしたいなんて、最初から無理だったんだ」
 平坦だった声に、諦めたような自虐のような、そんな色が込められた。
 言葉が届いていない。
 奥歯を強く噛み、フェイトは己の言葉の力のなさに嘆きを入れつつ、バルディッシュを強く握りしめる。
 言葉が届かないなら、言葉を届かせるしかない。
 本能が囁く、あれは敵だ、という声に背中を押されるように、フェイトは頭を切り替え
「無理じゃないよ!」
 まだ、諦めていない隣人に、心の何処かで安堵を覚えてしまう。
 ぎゅっとレイジングハートを手が白くなる程に握りしめ、なのはは言う。叫ぶ。
「私も沢山の人を苦しめてる! 友達も、泣かせちゃった事あるよ! 縁ちゃんと変わらない、みんなと一緒だよ!」
「違うんだ、高町さん」
 叫ぶ、そのなのはの言葉に、縁は静かに首を横に振る。
 ぐっと、なのはは一度歯を食い縛る。
 レイジングハートは向けない。
 もしも向けたら、それは話し合いの終わりを意味する。向けた後は、力を持ってぶつかるしかない。
 友達に、縁からは友達だと思われていなくても、友達だと思っている相手に、早々と争う事を選択したくない。ぎりぎりまで話し合いで解決したい。
 ふっ、と気合を入れるように短く息を吐き出し、腹に力を込める。
「それに、私があの時泣いたのは、私が悪かったの! 縁ちゃんは何にも悪くないっ、私を、助けてくれた!」
 縁がなのはを泣かせたのは、一度しかない。
 色々な事が重なって弱気になっていた頃、悩んで落ちこんでいた事柄を縁が容赦なくばっさりと切り捨てた、あの一度きり。
 あれは結局、なのはは全面的に自分が悪かったと思っている。
 縁は教えてくれて、励ましてくれて、決してなのはを馬鹿にする事なく、非難する事なく、悩みに応えてくれたのだ。泣いたのは、ただの自分の勝手だった。
 ゆらっと、縁の目に戸惑うよな色が浮かんだ。
 いけるか。
 人形のような瞳に浮かんだ色に、なのははようやく手応えを感じる。
「――私が、悪くない?」
 返ってきた反応に、なのはの表情が明るくなる。
「ぅ、うん! それに、フェイトちゃんの――っ!」

「今更取って付けられたように言われて、それを信じろと?」

「事だ――って、え?」
 戸惑ったような目の色が、違う色に変わった。
 言いかける言葉が止まる。
 はっきり浮かんだ目の色は、今にも泣き出しそうなくらいにはっきりとした、悲しみの色だった。
「謝っても、受け入れてくれなくて――なのに今更、それを信じろと、高町さんは言うのか?」
 え? と再びなのはは呟くように漏らした。
 謝って、受け入れてない?
 そんな筈はない。
 次の日に、土下座までされた。
 覚えている。
 あの時自分は、それを受け入れて、それで私もごめんなさいと謝って。
「そんなっ、私、あの時、ごめんなさいって謝って――!」
 謝って。
 ごめんなさいと、謝って。
 なのはの言葉が止まる。
 ふいに止まるなのはの言葉に、フェイトが目を向ける。
 真っ青な顔になっていた。
 なのはの血の気が、完全に、引いている。
 そう、あの時、縁は土下座までして。
 そして自分は、それを受け入れて、ごめんなさいと謝って――

 など、いない。

 謝ってない。
 縁に、なのはは、謝っていない。
 そして、縁を赦したと、言って、ない。
 そうだ、そうだ、そうだ。
 あの時、謝ろうとした言葉をフェイトに遮られ、アリサに連れて行かれ。
 そうだ。
 そうなのだ。









 高町なのはは、謝って、いない。

 海鳴 縁を、赦すと、言って、いない。













「――なっ!?」
 その驚きの声を上げたのは、アステマではなくシグナムの方であった。
 確かにレヴァンティンはアステマの腹に突き刺さった。それは間違いない。鮮やかな青の巫女装束を破り、皮膚を貫き、肉を抉り、その切っ先は確かに内臓まで達した、はずだ。
 だが、アステマは苦悶の声を少しも上げる事なく、冷静にシグナムを見下ろし。

 一歩、前に出る。

 その腹にズブリズブリと剣が食い込んでいく。
 鮮やかな青が、血に染まり淀んだ黒に変わっていく。
 それでもアステマは前に出た。
「では宣言だ。“動くこと雷霆の如し”」
 腹に剣が突き刺さったまま、顔色一つ変える事なくアステマは平然と、声高らかに “宣言” した。
 その “宣言” の直後、アステマの身体が目の前から消失する。
 消失だ。
 まるで映画のフィルムのコマ落ちを見ているようなくらいに、綺麗に消えた。
 レヴァンティンに張り付いた、その鮮血を残し。
 そして。
「“侵し掠めるは火の如く”」

 後から囁かれた声と同時に、シグナムの左腕が捻じ曲がる。

「ぐぁ――っ、ぐっ!?」
 文字通りに捻じ曲がった。
 突如真後ろか左手首を掴まれ、そのまま強引に肘関節を曲がる筈のない逆方向に捻じ曲げ、更には手首と肩の関節まで破壊するかのように捻り上げられた。
 肉が。
 関節が。
 骨が。
 砕ける音が肉体を通じてシグナムの頭の中に木霊する。
 騎士甲冑の防御効果など完全無視。単純な力技のみにより、シグナムの左腕は軽く潰された。
「がっ」
 強引に捻じ曲げられ、それに耐える事が出来ず騎士甲冑が破損し、更にはその破損箇所から鮮血が吹き上がった。
 人間の関節は絶対に曲がらない方向にまで曲げられ、そして骨が関節周りの筋肉を切断し突き破っている。鮮血さえ吹き上がらなければ、きっと騎士甲冑の隙間から骨が見えただろう。
 そして、シグナムの右肩に、とん、と人の顎が乗る。
 アステマだ。
 恐ろしいまでに整ったその顔を、シグナムの右肩に寄り掛かるようにして顎を乗せてきていた。
 脂汗を浮かべながら、シグナムは右を見る。
 目が合った。
 にこりと、微笑まれた。
「私が産まれた星ではな、戦争なぞ起きた事がないのだ。人間同士の喧嘩程度はあったが、自然の中で魔法を用いてのんびりと生きる方が気楽だという楽天的な……欲のない馬鹿な奴等ばかりの星だった」
 シグナムの腕を後から捻り上げ、アステマはその綺麗な声で語った。
 耳元で。
 嫌に艶っぽい声に、シグナムの背中に鳥肌が浮き出る。
「だから人がある程度固まって暮らす集落以上に文明が発達せず、魔法だって戦闘用の魔法は一切発達しなかった」
 ふぅ、と、アステマがシグナムの耳に軽く息を吹き掛ける。

 同時に、シグナムの左手首を、その異常な握力で “握り潰した”。

「ぐ……ああああああああああああっ!!」
「ん? どうした? カラクリが分かったのだろ? ほら、早く抜け出してみろ、木偶人形」
 堪らず叫ぶシグナムに向け、にこりと微笑んだままアステマは艶やかな声のまま馬鹿にするように囁く。
「それともカラクリが分かってもどうにもならないか? ん? 惨めだな馬鹿侍。痛いならもっと泣き喚け」
 馬鹿にするように嬲り、哂う。
 悲鳴を上げながら、そんな馬鹿なと、月並みの言葉がシグナムの脳裏に浮かんだ。

「ほら、お前の予想通りだぞ? 持って生まれた才能と言い訳をしたくは無いが――その通り、私は自己強化を含めて2種以上の魔法を同時に行使できない」

 そう、それはシグナムも予想が出来た。
 アステマが結界内の何かを操作する魔法を使った直後、御幣を抜けてアステマに叩き込んだ鞘は確かにダメージが通ったのだ。
 そしてその後、風林火山の一説、山を口にした途端に、レヴァンティンの刃が通らない。
 これでもしやと思った。
 そもそも、アステマがシグナムの前で最初に山の一説を口にしてから、アステマはフィルムのコマ落ちのような知覚不可能の高速移動を行っていなかった。
 知覚不可能なまでの高速移動と、騎士甲冑を貫通するダメージを腕力のみで与えられる力技を組み合わせれば、単純だが最も効率がよく回避も防御も不可能な攻撃を行えたはずである。
 それを行わない。
 むしろ、行えないのか。
 そう考えるとシグナムの予想――アステマが2種以上の魔法を同時行使できないのではないかというのは、賭けてみるには分の悪いモノではなくなっていた。
 だが。
 だが可笑しい。
 魔法の同時行使が出来ないのならば。

 何故、アステマはレヴァンティンを喰らい、平然としている。

 火の一説以降、アステマは魔法を行使していない。
 “火” は単純な力の強化と考えると――痛覚の麻痺、いや、致命傷を喰らっても活動できる生命力強化の類の魔法は、使えないはず。
 馬鹿な、と2回目の台詞が脳裏に浮かぶ。
 それを見透かすかのように、アステマの表情が真顔に戻る。
「なに、私は少々呪われていてな、死に難い体質なのだ」
「ごふっ、ぐっ!」
 右手のレヴァンティンを確かめるようにきつく握り、そのまま容赦なく右肩に顎を乗せるアステマの顔面を突き刺すかのように振り上げる。
 ほぼ悪足掻きの行為。
 そしてその悪足掻きの剣先は

 ズッ

 アステマの額に突き刺さった。
「なにっ!?」
 剣先はアステマの額を骨ごと抉り、その脳を潰すかのように引き裂き、鮮血を撒き散らすかのように後頭部まで突き抜け。
 鮮血が踊る。
 鮮血が吹き出る。
 元より防がれるか避けられると踏んでいた一撃は、止まる事なくアステマの額から上をぱっくりと割ってしまった。
 それなのに。
「いや、一応は死んでいるのだ、これでも」
 平然とアステマは返し、シグナムの右肩から顎を外して後に引き。
 ぐっ、と握り潰されたシグナムの左手首を無理矢理上に引っ張り上げ、同時に左足が鞭のように跳ね上がり。

 蹴りの一撃で左肩を粉砕し――切断した。

 皮膚が、骨が、筋肉が、その蹴りで引き千切られ、シグナムの左腕があったはずの所から勢いよく鮮血が吹き出る。
「――っ!!」
 悲鳴のような叫びが口から漏れかかるが、それを噛み殺し、シグナムは好機とばかりに地面を蹴り前転をするかのように前に跳ぶ。
 愛剣を握る右手で地を叩き、強引に身体を捻り後を向く――調度、死んだように横たわるアリサを背に庇う形に。
 アリサの肌は、最早青白、いや、土気色。
 時折ぴく、ぴく、と痙攣し、その目がたまに光を映すことから、死んではいないと判断できるが、それも “今はまだ” としか言えない。
 鮮血の吹き出る左肩の傷口を右手で強引に塞き止め止血し、シグナムは顔を上げ
「そして生き返る」
 顔を上げ、平然と佇むアステマを見て愕然とする。
 抉り取り切り裂いたはずの頭部は、何事もなかったかの如く修復され、そして撒き散らしたはずの血液もまた消えている。
「……化け物だな」
 歯を強く噛み、激痛を耐えながらシグナムは負け惜しみのように哂った。
 それを見下ろし、そしてアステマも唇を片方だけ軽く上げながら哂った。
「プログラム風情が良くぞほざいた」
 馬鹿にする言葉。
 だが、その言葉にはシグナムを見下す色はなく、軽口のように聞こえる。
 左肩に魔力を流し、守護騎士プログラムの一つである自己修復をかけながら、シグナムは軽く舌を打つ。
 死んでも即座に蘇生する。
 自分達も人の事は言えないのだが、ここまで異常な蘇生速度を目の当たりにすると、正に化け物としか言い表せない。
 勝てない。
 冷静に、そう判断した。
 そもそもベルカ式の戦闘魔法技術は、ミッドチルダ式のそれのように殺さず倒す、よりも、殺して倒す、に向いている。非殺傷にできる魔力弾や魔力刃ではなく、殺傷力に優れた物理的な攻撃を好むところからそれは表れている。
 の、だが。
 なるほど、“殺せない” 相手には、ベルカ式のアドバンテージはなくなる。
 シグナムは唾を一度呑み込む。
 守護騎士として生を受け今まで長い事生きてきたが、異常速度で蘇生するというレアスキルを持つ者を相手にした事はない。
 不死性の高い生き物に剣を向けたことはあるが、これは違う。
 勝てない。
 悔しくない訳ではないが、勝てない。
 それは冷静な判断であった。
「だが」
 睨み上げるシグナムの視線に返しながら、アステマは呟いた。
 反射的にレヴァンティンを握る。
「プログラム風情とは言え馬鹿侍、お前は確かに私を2回程殺した。これには礼を言おう」
 ごそりと、アステマは右手に持っていた御幣を左の袖口から袂へと突っ込む。
 警戒をしながらも、シグナムは眉を顰めた。
 礼を? 何を言っている。
「ありがとう。これで私は2回分、命を消費できた」
 袖口から右手を抜き、手ぶらにした両手を軽く叩き、そしてアステマは笑った。
 唇端だけ上げるような、嫌な笑いだ。
 即座にシグナムはレヴァンティンを向ける。
 左肩の止血は、まだ終わっていない。この場を離脱する方法もまだ、分かっていない。
「そうか、生命のストックか」
「リセットボタンを押せる回数と言った方が正しいか」
 呟くようなシグナムの言葉に、アステマは右手で顎を摩りながら答える。
 おや、とシグナムは目を細めた。
「……アステマ、お前は先、自分の生まれた星と言っていたが、何処の生まれだ?」
「ん? ヴァルヴェールという、今や管理局に滅ぼされて久しい星に生を受けた」
 試しに訊いてみた質問に、アステマは当然の如く答えた。思わずシグナムは微妙な顔をしてしまう。
 そう言えば、空間に何かを施した術式も嫌に素直に答えていたし、問う言葉には全て素直に返している。何と言うか、素直過ぎる。秘密を感じられない。
 シグナムは一度レヴァンティを下ろす。
 もしかしたら時間は稼げるかもしれない。
 だが、あまり時間を稼いでも、アリサの容態が気になる。
「……聞いた事のない星だな」
「言っただろう、発達した星ではないと。長所がなければ目立たんさ」
「管理局が滅ぼしたと言ったな」
「ああ、正しく。御神体には下手な魔力を通すなと、忠告はしてやったのだが……馬鹿な事をしてくれた」
 本当に素直に答える。逆に不気味だ。
「管理局……御神体……ロストロギア捕獲での介入か。局員がヘマをしたんだな」
「ご名答。奴等は知らん顔を決め込んだがな」
「その御神体とは?」
「願いを叶える石の塊だ」
 顎に手を当てながらすらりすらりとアステマは答え続ける。
 何でも答えるその姿勢は、逆にいつでも殺せるという自信が見え隠れしているように感じる。冥土の土産のつもりか。
 レヴァンティンを握りしめ、向ける事はないがいつでも反応できるようにシグナムは左足をゆっくり下げる。
「願いを叶えるか。よく聞く話しだが、それはどの程度だったのだ?」
「さてな。星の奴等は皆気楽な馬鹿ばかりでな、大した事には使わず……ふむ、雨を降らせるか……ん、無病息災程度、くらいだったか」
 何故か首を捻るアステマに、シグナムは眉をしかめる。
 答えたくないと言うよりも、忘れかけているのを思い出しながら答えているようだった。 
「曖昧だな」
「だいぶ昔の事でな、正直あまり覚えておらんのだ。まぁ、星1つ沈めてくれたのだから、それなりに強力だったとは思うのだが」
「ボケたか」
「貴様等とは違って人間の頭は100年幾らかしか記憶できんのだ。それくらいは忘れる」
 さて、とアステマが肩を慣らすように軽く回す。それは話の切り上げを意味している。
 出血はどうにか止められたが、ほとんど応急処置のような状態で完全には治っていない。だからと言って時間をかけるとアリサの容態が悪化するだろう。
 深呼吸をするようにシグナムは深く息を吸い、そして短く息を吐くと同時にアステマに対して改めて愛剣を構えて向ける。
「最後に1つ聞かせろ。お前のその生命力は、何だ?」
 睨み上げながら、シグナムは問う。
「呪いだ……もしくは願いだな。管理局の言う、そのロストロギアたる御神体の」
 見下ろし、そして右肩をこきりこきりと鳴らしながら、アステマは平然と答える。
 滅んだ星の、呪いで、願い。
 その続きは聞かなくとも予想がついた。
 なるほど、アステマのその蘇生力は

「星が滅ぶ時、どいつもこいつも私に死んでいく者の分まで生きてくれと、そう祈った、そう願った。馬鹿な奴らだ、自分達の事などいつも二の次の、馬鹿ばかりの星だったよ」

 星1個分の生命を背負い込んだが故の、代償か。

「おかげで星1つ分の命を使い切らんと死ねない、そんな身体になってしまった。まったく、神官など性に合わない役を押しつけられた代償にしては、随分と高い」












 まるでそれが合図であったかのように、樹林全体から甲高くも重厚な、金属独特な音が鳴り響いた。
 その音に話し合いの時間はもう終わりなのかと、随分とボロボロにされてしまったグラーフアイゼンを握りしめながらもヴィータは軽く舌打ちをした。本音を言わせてもらうなら、もう少し時間を稼いで回復に専念したいところである。
 さっとヴィータはガンザに向けて目で合図を送る。
 下がれ。
 その合図にガンザは静かに肯いて返す。
「……人間の使い魔ったぁ笑い草だな。頭が発達し過ぎた動物はな、使い魔にゃぁ適さねぇんだよ」
「無理を通して道理を殺した、それが俺って事だ」
「口が減らねぇな」
「生まれた時から口は1つでね」
 会話はまだ続く。その間にガンザが転移魔法の準備にかかる。
 魔法陣が高速で展開される。これを阻止されないよう、ヴィータは防がねばならない。どこから射撃が来ても良いように、ヴィータは片腕ながらゆっくりと構えをとった。
 射撃は、来ない。
「―――」
「―――」
 沈黙の間が下りる。
 四方八方からの殺気は感じるが、攻撃が飛んでくる予兆はまるで感じられない。
 1秒、2秒、と過ぎる。
『――ヴィータさん、転移魔法の準備整ったっす』
 静かにかかるガンザの念話に、魔法を起動しようとしているのに行動を起こさない恋慈を不気味に思いつつもヴィータは軽く頷いて返した。不気味に思うのはガンザも同じで、額にあまり健康的ではない類の汗を滲ませながらも頷く。
 と、そこに笑うような声が飛んできた。
「後からと言わずお嬢ちゃんも逃げたらどうだ? 追わないぜ?」
 一瞬ヴィータがきょとんとする。
 同じくきょとんとしかけたガンザは、すぐにそれに気がついた。
 ああ、そうだ、これは以前にもあった。
「そうだ、念話の盗聴!」
「場慣れしてないな少年。掴んだ相手の特徴ってのは、どんな些細な事でも忘れると命取りだぜ」
 気付いたそれに、恋慈は笑って返す。
 そうだった、恋慈は以前にも念話の盗聴を行っていたじゃないか。油断したつもりはないのだが、それでも失念していた。
「盗聴ったぁ趣味悪いな」
「人の目の前で内緒話は行儀が悪いぜお嬢さん。それよりほら、はよ尻尾巻いて逃げな」
 低く唸るヴィータにも恋慈は笑って返した。
 何処にいるのかが分からない、頭にも響き渡る声が余計にムカつく。
 舌を軽く打ちながら、ヴィータはガンザに視線を送る。それに対してガンザは心得たように肯いて、準備した転移魔法に魔力を通して起動させた。
 確かに、ここでは引くべきなのかもしれない。
 右腕は使い物にならず、騎士甲冑は欠け恋慈の目の前で無防備に再起動をかける訳にもいかない。頑丈が売りであるグラーフアイゼンだって軽くはないダメージを負っているし、当初の目的である看視者、縁は既に逃げている。更には恋慈がわざわざこの状況から見逃すと言っている。恐らくではあるが、恋慈ならばヴィータが転移するところに奇襲をかける事なく、本当に見逃しそうである。
 縁の家族で、その言葉を鵜呑みにするならば縁の使い魔である恋慈の確保というのは無視できないくらいに重要ではあるが、それでも生き延びて少しでも有益な情報を伝達する方が大事である。

 普通の人間ならば。

 奥歯をぐいっと噛み締める。
「悪いけど、もうちと頑張らせてもらうぜ」
 構えを解かずにヴィータは辺りを見渡す。
 残念だがこの身体はリンカーコアを破損でもしない限りは、そう易々と死ねる身体でない事はヴィータ自身よく知っている。
 そう、“生き延びて” 帰るだけならば、はやてさえ生きていれば至極簡単な事だ。
 分離した守護騎士プログラムは正常に稼動している。本体たるリインフォースが既にいないため、分離したとは言えこの無茶がどこまで通用するかは分からないものの、それでも今回は大丈夫だ。
 更には、管理局はそれを望んでいるのをヴィータは察していた。
 忠誠を見せろという事だ。
 ロストロギア、そして次元犯罪者たるヴォルケンリッターの。
 リインフォースとヴォルケンリッターに恨みを持つものは多く、過激な意見ではヴォルケンリッターの処理と主であるはやての死刑を求める声まである。
 そういう者達からして見れば、今退却を選んだら、例えどのような状況であろうと犯罪者に背を向けたその一点を取り上げて槍玉に挙げてくるだろう。最悪、犯罪者だから犯罪者を庇ったと言われる。
 そして危険な目に遭うのは誰か。はやてだ。
 ヴィータは知っている。
 ヴォルケンリッターは知っている。
 退却の2文字は、はやての危険の2文字であると。
 それを座視など、出来ない。
 奥歯を噛み締めたまま、ヴィータはゆっくりと息を吐く。
「そうかい」
 今度は笑わずに返された。
 ガンザの足元に展開された赤い魔法陣が、ゆっくりと輝きを強める。
「ヴィータさん」
「おう」
「……無事で」
「ああ、任せろ」
 心配気とは言わないが、不安そうなガンザの言葉にヴィータは短く、だが素早く返す。
 その言葉を聞き届けたのを確認するように、ガンザの身体がゆっくりと光に包まれて
 ――跳んだ。

「兵士供全起動! 砲撃開始!!」

「アイゼン! 装甲障壁!!」
(( Panzerhindernis! ))

 唐突と言えば隙もなく唐突。当然と言えば全くの当然。
 素直に退却を飲んだガンザが跳んだ直後、退却を拒んだヴィータに容赦する必要などカケラにもないのだと言わんばかりの銃弾の雨が降り注ぐ。
 バードショットの銃弾、ライフル弾と思われる型から対戦車に使用される破砕弾、正しく鉛玉という表現が一番ぴったりな3inは超える巨大弾が降り注ぎ、更にそれに混じって魔力弾による砲撃まで加わる飽和弾幕。地球で行えば確実に環境保護団体から苦情どころか裁判まで起こされるであろう程に、圧倒的な弾丸の質量がヴィータの周りの樹も草も土も何もかもを蹂躙する。
 それを寸ででパンツァーヒンダネスで阻むも、2秒も持たずに全面に亀裂が高速で走り抜けてゆく。この弾幕を受け止めるのは流石に無理がある。
 が、2秒も持てばヴィータとしては十々二分であった。
「借りるぜなのは!!」
(( Hindernis platzte! ))
 そのヴィータとグラーフアイゼンの咆哮と共に、展開していた皹だらけのパンツァーヒンダネスが一瞬にて爆発四散する。そしてその強力な爆風が、魔力で出来た盾よりも確実に銃弾を防ぎ、同時にヴィータの姿を眩ませる。
 ずっと前、なのはが見せた 『バリアバースト』 をベルカ式に組み立て直した魔法である。それを応用した。
 そして、爆発して真紅の光が舞う中に、きらりきらりと光を反射する物が4つ。
「あ、やべ」
 どこからか恋慈の声が漏れる。
 その言葉は、響かなかった。
 その次の瞬間、その “何か” に銃弾が直撃。
 それは弾丸。
 銃弾ではなく、ただの弾丸。
 カードリッジと呼ばれるそれは、純粋な魔力の圧縮倉庫で。

 強烈な緑の閃光が、辺り一面を一掃する。

 火薬の満載された箱に向かって銃弾を叩き込むようなその行為により、当然のようにカードリッジが暴発し、銃弾も魔力弾頭も一気に消滅させる。
 当然、周りの樹々も範囲内の全てを一掃し。
「のああああああああっ!!!??」
 目当ての馬鹿が、中途半端に残った樹の上部分と共に落ちてきた。ついでに大量のドールタイプも地面に叩きつけられて盛大な音を鳴り響かせる。
 どうにか不恰好ながらも恋慈は受身を取り、即座にシュマイザーと呼ばれるMP40を真左に向けて投げ捨てる。
 そのMP40を、グラーフアイゼンでぶん殴りヴィータは弾く。
 砕け暴発するも、構う事なくヴィータは跳んで前進。
 目標は恋慈。
 その頭を、グラーフアイゼンにてぶん殴る――!
「ンな糞!」
 恋慈は間違いなく致命傷になるその一撃を、頭を下げてギリギリで避ける。本当にギリギリだった。真横に一閃されたグラーフアイゼンの一撃は、間違いなく恋慈の頭の髪を焦がして通り抜ける。
 これで避けれたと、素直に喜べない。
 それはもう、眼前も眼前目の前で展開されるその光景を見れば。
「ラケーテン!!」
(( Hammer!! ))
「死ぬって!!」
 グラーフアイゼンが火を噴く。
 そう、鉄の伯爵はその姿をラケーテンフォルムに変えていた。
 そして火を噴くのはロケット推進の証。
 恋慈を食い殺さんと牙を向けるのはその巨大なスパイク。
 縦方向ならば避けれなかったかもしれないのに、真横にグラーフアイゼンを振るった理由はとても単純。
 避けても当たるまで打ち込む。
 それだけ。
 左足が地面に食い込むほどに踏み込む。
 その左足が軸となり、振り抜いた勢いとロケットの推進力を上乗せされた次の一撃が恋慈に襲い掛かる。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「うどわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 続いて下げた首を切断するつもりで放った一撃は、転がるようにして恋慈が避ける。
 防御スキルが壊滅的だと言っている以上、避けるしかないのだろう。
 しかしロケット噴射は止まる事なく襲い掛かる。
 そこに2体のドールタイプが間に割って入るように転がり込んで
「邪魔だっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 唯の一撃で粉砕。
 粉砕したその影で、恋慈がポケットからカードを一枚取り出したのが確認できた。
 だが、遅い。
 銃は銃口を向けて引き金を引かねばならない以上、もはや遅い。
 そして転がるようにして避けた恋慈の今の体勢では、胴体を狙えば回避不能。
 ドールタイプを割って入れて防ぐにも、一番近いドールタイプが跳び寄るのは既に遅い。
 遅い。
 遅過ぎる。
 一撃を、ヴィータは無慈悲なほどに冷静に叩き込






 ヴィータの額に、西洋剣が、突き刺さった。






「ぁ―――?」
 何が起きたか、分からなかった。
 ただ、グラーフアイゼンが、ロケットの推進力をそのままに、手から離れていったのは、確認できて。
「――銃を使うってのは正解だけど、銃 “しか” 使わないってのは間違いだぜ、お嬢ちゃん」
 剣を握るは、恋慈。
 その剣は、正確に額を貫いて、脳を貫通し、後頭部まで破壊して。
 あ。
 あ、あ、あ、あ。
 剣が、引き抜かれる。
 視界が染まった。
 赤く染まった。
 血が噴き出して、止まらない。
 死。
「んじゃ、約束通り使わせてもらうぜ、必殺技」
 剣が、振り上げ、られた。
 そして、振り、下ろさ

「俺の必殺技、恋慈満月斬り」












 話し合うだけでは、言葉だけでは、何も変わらないかもしれない。
 だけど、話さなければ、言葉にしなければ伝わらない事だってある。
 だから、伝える為には言葉にしなくてはいけない。話さなければいけない。
 話さないで、言葉にしないで、伝わると想うそれは、独り善がりでしかない。
 ごめんなさいと言わなくて、言葉にしなくて、伝わったと思っていて。私が悪かったと、あなたは悪くないのだと、しっかり話し合わずとも、伝わったと思っていて。
 話さなければ、言葉にしなければ伝わらないなら、話さず言葉にしなかったら、それは。
「――のは! なのは! なのは、しっかりして!」
 肩を強引に揺さぶられ、なのはは我に返った。
 視界には砂一面。
 4つんばいになるように、自分が崩れているのだと気がつくのに数秒かかった。
 いつ崩れたのか、何でこんな状態なのか、頭がそれを理解できていない。むしろ、頭が鐘の如く槌で殴られているような感覚が連続して襲い掛かってくるので、考えが全然纏まらない。
「……あ、あ」
 とにかく、しゃがみ込んで必死に肩を揺さぶり声をかけるフェイトに、大丈夫だよ、と言おうとしたのに、口がまるで動かない。
「なのはっ!? なのはっ!?」
 今にも泣きそうなほどの友人の声。
 顔を上げられない。だから、フェイトがどんな顔をしているのかが分からない。
 想像できない。頭が回らない。
「……高町さん」
「っ、くっ!」
 声がかかる。
 女の子にしては低く、そしてとても通る綺麗な声が。
 それに弾かれるようにして、フェイトがその声の方向に向けてバルディッシュを構えるのが分かった。
 首筋が冷たくなるようなくらいの気迫が、フェイトから感じられる。怒っているというか、完全な敵対者に対して向けるような感じ。
「……私は、馬鹿なんだ。人として生きるには、本当に駄目な奴で」
 ぼそりと呟く。
 非常に通りの良いその声は、はっきりと聞こえた。
「そんな私を馬鹿だときっちり叱ってくれたのは、バニングスさんだけなんだ。こんな馬鹿でも友達だって言ってくれたのも、バニングスさんだけなんだ。撫でてくれたのも、抱き締めてくれたのも、可愛いって言ってくれたのも、接吻だって――」
 身体が震える。止めようと思っても、その震えがまるで止まらない。
 寒い。確か、確か砂漠のはずなのに、寒い。体中から血が抜け落ちているような気分。
 頭の中がごちゃごちゃする。
 ごちゃごちゃする。
 だけど、その頭でも分かる。
「でも嘘だった。バニングスさんは私の事が嫌いだった。そしてもっと嫌いにさせて、泣かせて。信じられないんだ高町さん」
 縁は、歪んでいた。
 人として相対するならば、縁は物の見事に歪んでいた。
 それは前から知っていた。物は知らないし、空気は読めないし、常識斜め上なんて最初の頃はよく目立っていた。
 だけど、今の縁は決定的に歪んでいる。
 歪ませてしまったその決定打は誰なのかと問われれば、それは至極明白で。
「バニングスさんでさえ嘘だったのに、友達だと一言も言わない人はもっと信じられないんだ」
 友達だと、一回も言っていない。
 ごめんなさいと、一回も謝っていない。
 いいや、それよりも、子供染みた感情論で泣き出してしまった、自分が何より悪い。
 高町なのはが、海鳴 縁の友好関係を一番最初に叩いて歪ませた訳で。
 この状況、この歪み。
 最初の原因は。
 私?
「あ、あ、ああ、あ」
 震えが酷くなった。
 何か、何か取り返しの付かない事を、してしまった。
 震えて、震えまくって。
 それでも顔を、上げる。
「私は、皆のように凄くないんだ。頭が悪いんだ。馬鹿なんだ。言ってくれないと、分からないんだ、本当に」
 能面のような面で、ガラス玉のような無機質な目を、まっすぐ向けてくる。
 歪んだ、縁。
 こんな目にさせたのは、間違いなく――
「ぁ」
 友達だという、たった一言。
 ごめんなさいという、たった一言。
 それが縁にとってはこの世界の何にも勝る救いであったのに。
 そのたった一言を言わなかった。
 慢心して、言わなかった。
 だから、なのはは悟った。

 自分では、縁を、救えない、と。

「海鳴さん!」
 ざくっと砂の地面を踏み込むように、そしてなのはを護るかのように、フェイトが立ち上がりなのはと縁の間に割って入った。
 バルディッシュをまっすぐ縁に向けながら。
 重い機械音を響かせて、バルディッシュが1発だけカードリッジを使用する。冗談ではなく、本気で。
 カードリッジの圧縮された魔力により、手首と足首の辺りから小さな雷の翼が発生する。
「……結局、テスタロッサさんは奴らと同じ魔導師だという事か」
 それを見て縁が呟き。

 赤く丸い、宝石を見せた。

 デバイスか、とフェイトが警戒するより早く、縁は囁いた。
「いくぞ、オプティマイザ。リミッターを全解除」
(( I am not concerned even if I appeal for a complaint later. ))
 明らかに乗る気でない声を上げるオプティマイザと呼ばれた宝石は、見事なほどに投げやりな台詞と共に赤く、そして強く輝く。
 それはデバイスの起動に似ていた。
 だが決定的に違う。

 オプティマイザと呼ばれた宝石が、縁の胸に “めり込んだ”。

 そこを基点に血管を伝うようにして青白い光が一斉に走り抜ける。
「――」
「―――」
 言葉が出なかった。出せなかった。
 腕が割れ、血を噴き出し、伸びる。関節が1つ、2つ、3つ。肘と呼ぶべき関節が2つあり、手首の関節も合わせその関節から皮膚を突き破り、角のような鋭突の物が生える。割れた皮膚から、角で突き破られた皮膚から、一気に肌の色が変わり硬質化してゆく。
 その元の倍はある程に細長く不気味な色をした腕が、脇の下を突き破り鮮血と共に現れる。突き破った際の血に混じり、ぬめりとしたローションのような粘液が飛び散る。
 めり込んだオプティマイザを中心として、身体が左右に裂ける。血が飛び散る。粘液も飛び散る。そして皮膚の色が一気に変色し、今度はオプティマイザから上下に裂けて伸びる。更には風船に空気を入れるように膨らみ大きくなる。
 脚が膨らむ。その脚は縦にはあまり伸びず、ずんぐりとした脚になる。べちゃ、べちゃ、と膨らんだ際に裂けた部分から、血と粘液が砂の上に落ちてゆく。
 肩が割れた。その割れた所から、虫の羽のような粘液に塗れて綺麗とはとてもではないが言えない翼が飛び出す。生える。
 ガラス玉のような目に、縦横無尽に亀裂が走り、それは一瞬で無数のレンズの集合体である複眼に姿を変え、一気に肥大化する。頬を、額を、押し退け骨を砕き膨らみ、元の目の何十倍も膨れ上がり、顔の大半が複眼のそれに埋め尽くされる。
 後頭部から別の後頭部が生えた。いや、伸びたと言うべきか。元からなかったと言わんばかりに髪が一瞬で消える。その伸びた後頭部の色と同じになるべく顔の色が一気に変色。
 そして、口が裂ける。真横に裂ける。
 牙が迫り出した。
 顎が、伸びる。
 言葉が出せなかった。出せるはずが、なかった。
 醜い身体。
 ジェルに塗れた巨大な人型のゴキブリ。
 それが、いた。
 縁が。
 なった。
「――うっ」
 反射的になのはは口元を手で押さえる。
 気持ち悪い。
 資料では何度も見ていて、その度に不気味だなとは思っていたが、実物を目の前にするとその気持ち悪さがまるで違う。
 匂いが、見た目が、存在が、生理的な拒絶反応を促してくる。
 醜い。
 酷い。
 そして、怖い。
 あれが、縁だと言うのか。目の前で縁がその姿に成ったのに、まるで現実味がない。
「……っ」
 以前にも一度だけその姿と直接対峙した事のあるフェイトも、一瞬だけ腰が引ける。後になのはを庇っていなければ、足が下がっていただろう。
 膝が一度震えた。
 やはり、見ていて愉快になるような姿ではない。
 気持ち悪いと、その一言に尽きる。
 その感覚は変わらない。
 それが縁なのだと分かっても、気持ち悪いという感覚が胸の底から湧き出してくる。

『その目だ』

 頭の中に、縁の声が響く。念話だ。
 何で、どうして。
 疑問が頭の中を全力疾走で駆け抜ける。
 だってそうだ、縁は念話を行えなかったはずだ。それは前に確かめた。間違いはないはずなのに。
 縁は人の姿よりも身長の伸びた化け物の姿で、静かに立っていた。
 トンボのような複眼は何の感情も読み取れず、醜く変わってしまったその顔を見たって感情を推測できない。
『気持ち悪いだろう』
 気持ち悪い。無条件にそう思った。
『怖いだろう』
 怖い。生物として既に、他者を圧倒するような威圧感がひしひしと感じられる。
『醜いだろう』
 醜い。まさに悪魔ともとれないその醜悪な姿を、美しいとはとても思えない。
『皆、その目で私を見る。みんな、みんな』
 ぼそっ、ぼそっ、と伝える念話の声が、僅かに震えた。
 知っている。
 看視者は、その醜い姿から遭遇した魔導師から友好的な態度を一度たりとて取られた事がない。
 ある者は杖を向けた。
 ある者は問答無用で攻撃に出た。
 ある者は醜悪な化け物を泣いて叫んで拒絶した。
 ある者は気まで失った。
 それを、その反応を、縁はずっと見てきた。
『結局私は化け物だ。化け物らしい生き方しか、きっと出来ない……』
 震える声で、まるで嘆くかのように――そして嘲笑うかのように呟く。
 言葉が出ない。
 言葉が出せない。
 圧倒されている。目の前の存在に圧倒されて、言葉が見つからない。
 違う。
 そんな事はない。
 化け物らしい生き方しか出来ないなんて、そんな。
 言葉にしなければ伝わらない、その大切な言葉が出ない。出せない。
 なのはも、フェイトも、青い顔で縁を見ることしか出来なくて。
 そこに、縁が右足で一歩だけ踏み込んだ。
 なのはが怯えたように肩を震わせた。フェイトですら、ついに一歩後に引いてしまった。
 もう、言い訳が出来ない。
 決定的な、拒絶の反応。
『化け物だ、化け物だ、人じゃないんだ、私は……はっ、ははっ』
 しまったと、そう思ったときには既に遅い。拒絶の反応を示してからでは既に遅い。
 かぱぁ、と、縁のその横に避けた不気味な口が開く。
 ねちゃりとする唾液なのか粘液なのか分からないジェルを滴らせ。
『は、ははは、はは、は』
 笑った。
 笑った。
 そして


「ハハハハハハハ、ハハ、ハハハハアアアアアハハハハアアアアア、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!」


 狂った。
 吼えるように笑った。
 全部を全部諦めて、どうにでもなれという自嘲の笑いを張り上げる。
 空気がびりびりと振動した。
 鼓膜が、破れるかと。
『はっ、あははははっ、そうだっ、その目だ! ほら高町さん! ほらテスタロッサさん! 結局その目で私を見る! バニングスさんだって、ああ、ああ! 友達!? 今更都合良く言って信じろとはよく吐けたな! 酷い扱いをしない!? その酷い扱いとやらをされた結果が私だよ!』
 笑って。
 笑いながら。
 大音量の念話が頭の中に叩きつけられる。
 それは空気を振動する音じゃないと分かっているのに、なのはもフェイトも反射的に耳を塞いでしまうくらいの大音量。念話の声が大き過ぎて、頭が割れそうだ。
『怖いだろ!? 怖いだろ!? 近寄りたくないだろ!? ほらみろ! あはははははっ、私はとんだ大馬鹿者だ! それともピエロか!? 笑った方が可愛いなどと! ほら! はははははっ! ほらほら、嘘じゃないか! 嘘じゃないか! みんな嘘だ! 全部嘘だ!』
 上体を少し前に倒し、猫背のようになり、縁は顔を前に出す。
 昆虫染みたと言うべきか、エイリアンと言うべきか、醜悪極まりない上に笑って口を開けているその顔は、まるで捕食者のような面構えでもある。
『嬉しかったよ! 楽しかったよ! それが全部嘘か! 高町さんもテスタロッサさんも八神さんも魔導師で! そうかそうかそうかそうかそうか、私を監視してたのか!? また! また! 管理局に連れ戻すと!? またあの地獄に遭えと!? そうか! はははははははははははははははははははっ、そうか! だから私に優しくしてくれたのか! なるほど納得だ! 友達は嘘だ! バニングスさんだって嘘だった! 私を懐柔して連れ戻して浸けて裂いて埋め込んで引き抜いて切って刻んで植えつけて実験実験実験実験! は! ははははははは!! そうだな! そうじゃなきゃ、私なんかが優しくされるはずがないものな!!』
 大音量で叩きつけられる念話は、恨みも憎しみも何もない純粋な自嘲の笑いで。
 壊れた。
 縁が、壊れた。
「う、ぅ――海鳴さん!」
 震えて声の出ないなのはより先に、フェイトが縁を呼んだ。
 呼んだ。だけど。
『これが人間か! いいや私は最初から人間扱いなぞされてなかったのか! 結局私は教授のように立派な人間にはなれないか! 月村さんのように溶け込めないか!』
 聞こえていない。
 言葉が届いていない。
 妄執のような自嘲の声に掻き消された。
 青い顔で、フェイトも次の言葉を言えない。
 笑う。
 笑う。
 嘲笑う。
 哂って。

『……もういい』

 止まった。
 そして呟く。
 ぞっとするほど、綺麗な声で。
『魔導師がどんな奴等なのか、もう興味ない。人間もいい。私は化け物だ』
 綺麗な声に、殺意が乗せられた。
 綺麗な声に、敵意が乗せられた。
 綺麗な声に、恨みが乗せられた。
 綺麗な声に、憎しみが乗せられた。
 綺麗な声に、絶望が乗せられた。
 綺麗な声に、怒りが乗せられた。
『もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういい』
 呟き、呟き、まるで壊れたように呟いて。
 いいや、違う。
 壊れているのだ。
『魔導師は、殺してやる』
 静かな宣言に、なのはとフェイトは震えた。
 怯えたと言っていい。
『私を捨てた奴等は殺してやる。魔導師は殺してやる。殺してやる。殺して』
 宣言と共に、縁から強烈な殺気が漏れる。
 冷たい、まるで刃を首筋に押し当てるかのような、気絶しそうなほどに強烈な殺気。
 汗が吹き出る。
 身体が震え上がる。
 怖い。
 純粋に怖い。
 その2人を眼前にし、縁は言葉を口にした。
 念話ではなく、口にした。

「コロス、コロシテヤル」

 明確な殺意を、口にした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ( ゚ ρ ゚ ) < ……鬱い。救いがない。
 ( ゚ ρ ゚ ) < こんにちは、こんばんは、読む時間によってはおはようございます。
 ( ゚ ρ ゚ ) < この話を書いている最中、ずっとこんな顔だったクロガネです。


 チート巫女。馬鹿正直を通り越して真性の馬鹿。じつはおばあちゃん。
 シスコン。VitとIntには一切ポイントを割り振らず、StrとAgiにのみ全力でポイントを捧げた馬鹿。


 フェイトと違い、なのは嬢は自分のした事をきっちり縁に謝罪してないのです。
 いつぞやユーノに愚痴った際の心情や、なのは嬢に対して含む態度があった理由は間違いなくこれ。
 縁から見たなのは嬢というのは

 泣かせた ⇒ 土下座する ⇒ 許してもらえなかった ⇒ でも優しくしてくれる ⇒ 自分がアリサの友達だから優しくしてくれるのか ⇒ 友達にはなれなさそう

 という感じ。なので今更友達とか言われても……
 一方フェイトに対しては学校で話すようになるより前に魔導師だと分かっているので余計に複雑で

 魔導師だ ⇒ 試合で半分キれる ⇒ 謝ってきた ⇒ もしかして良い魔導師? ⇒ でも魔導師嫌い ⇒ でも人間的には好き ⇒ とりあえず距離を置こう

 という感じ。最初の頃にフェイトが思いっきり避けられていたのは、別にボコられたからじゃなくフェイトが魔導師だからという理由。
 もっとも、仲良くしてたのに途中で魔導師だと知れたはやてに対してはもっと複雑な訳ですが。



 新型インフルが驚異的な件。
 外来が凄い事に……凄い事に。
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9件のコメント

[C489] 狂り狂りと廻るはメビウスの輪

縁ちゃん真・発狂
以下の能力が付加されました

殺意という名の威圧
明確な意志を持って排除し蹂躙し殺すという殺気を放ち威圧する
縁の縁者以外に全能力10%ダウン効果

信頼できぬ者への怒り
思い込みによる自己暗示に等しい強化
なのは、フェイト、はやてに対しての攻撃ダメージが15%上がる



この精神状態じゃなのは戦えないでしょうね

教授のそれ見て思ったのはあなたどこのホムンクルスですか?


追伸
以前のあれ公開しちゃって結構です
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : ルファイト
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  • 編集

[C490] バーサーカーだとっ!?

まさかちっさいお姉ちゃんのサーヴァントとは・・・
オジサンびっくりだよ。
しかしご神体か・・・SAN値直葬?

ヴィータ死亡。
しかしふと思った。
あれ?矢天の書オリジナル無いと再構成ってできなくね?
・・・・・・・・ま、きっとうまいこと抜け道を考えてくれるはず。
なんたって死亡フラグ全力で無視した八神家だかんな!

とりあえず、芋虫アリサちゃんの復活を期待しつつ・・・
きれいな蝶だって幼虫時代はあるもんね!
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : ぎるばと
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  • 編集

[C491]

更新お疲れ様です。

いやぁ……これは酷い。そしてすばらしい展開。マゾい脳汁が出てきます。

しかしアステマの星の御神体……まるでジュエルシードのよう。まさか? いやいやどうだか。

そして覚醒(堕)した縁。肝心な言葉一つなければ、どんな言葉も届かない。
そしてまあ、見た目がアレで引くってのは……う~む、しかたがないといえばない、んだが。さすがのなのはさんも無理なのか?

次も楽しみです。
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : 春都
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  • 編集

[C492] ( ゚ ρ ゚ ) < コメントありがとうございまー

○ルファイト さん
 その能力があまりにも強すぎる件。10%ダウンに加えてダメージ15%アップは恐ろしい。
 なのは嬢、精神的レイ○編。これで戦っても……

 時期を見て公開しますよー、うふふふふふ

○ぎるばと さん
 しかし実際はシスコンの方がサーヴァントの件。
 ヴィータの場合は一体どうなのやら。しかしSTS時代では既に回復機能はだいぶイカれてきているらしいですが。
 復活の前に一仕事。

○春都 さん
 そして書いているクロガネ自身が凄く鬱い件。
 御神体についてはまた今度……削るかもしれませんが。
 なのは嬢の場合、最初に精神的ダメージががっつり来てるもんだから、あれは引く。
  • 2009-06-23
  • 投稿者 : クロガネ
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[C493] これこそ欝スパイラルネメシス……

遂に、遂に縁が最後の一線を越えてしまった!そういやなのは謝罪してなかったのね、あれだ小~中学生時代に他人の嫌がることを散々やってきたくせに、同窓会とかで馴れ馴れしくしてくる奴的な感じ。考えれば考えるほど、現実に居たらなのはって知り合いにはなりたくない部類の人間かも。てかほんとSTS見てると、小学校以来の友人関係しか築けてないんじゃねえの?って感じする。私の場合小学生時代から未だに交流あるのって、一人だけですよ。むしろ他の連中には二度と遭いたくねえ位。

アステマさんは限りなく不死に近いという存在。ハガレンの賢者の石(ホーエンハイム)と同じく、生きてる人の生命の結晶ですが規模が違いすぎる! 向こうは国一つ程度、こっちは星ひとつってどんだけすげえんだ。

この手の「命がたくさんある」存在を殺すには
①命のストックがなくなるまで殺しつくす(例・ハガレンのホムンクルス)
②元となった命(本体)を殺す(例・ヘルシングのアーカード等)
③一度に全ての命が死ぬ位の攻撃をする(Fateのバーサーカー)
④幾ら再生しようとも即座に死ぬ状況に持っていく
⑤殺せずとも動けないよう封印する
⑥異世界・次元の歪・マイクロブラックホール等に投棄する。

とかがメジャーですけど、アルテマの場合星ひとつ分の命、地球と同程度と仮定すると約68億人分はありますから、①②④はかなり難しいというか、リリなの世界の魔道師個人の力ではまず無理。それこそドラゴンボールの皆様の様に、一撃で地球をコナゴナにできる位の破壊力でもないと③も無理。できそうなのは⑤⑥位か…なんか更にパワーアップして復活するフラグに見えてならない(汗)

  • 2009-06-24
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C494] 天元突破の鬱さ加減

○ミヅキさん
 フェイトはエリオやキャロの保護者になって、はやてはカリムやらナカジマ氏やらと関係あるのに、なのは嬢は……あれ?
 しかし④は死が一回しか襲い掛からないと仮定すると普通はありえないんですよね。人間はナイフで刺されても核弾頭が直撃⇒爆破の状況でも死は等しく一回なのに……fateのバーサーカーが強すぎて設定が投げやりになっている件。
 ⑤・⑥は数百年後魔王復活のイベントへ持っていけますね、アスモ何とか的に。
  • 2009-06-25
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C557]

>無理を通して通りを殺した兵士供
>無理を通して「道理」を殺した兵士供
でしょうか?
一応誤字報告です
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

[C565] 指摘ありがとうございます

 修正しましたー!
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C652]

>資料では何度も見ていて、その度に不気味棚と
>資料では何度も見ていて、その度に不気味だなと
ですか?
目に付いたので確認お願いします
  • 2010-06-28
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

最近の記事

プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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