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[C410] なのなの居ないの

待ってました~♪
サドっ子おじ様本領発揮、デバイスちゃんも喋れてご機嫌です。
そして空気ですらないなのはちゃんに愛を(笑)

次回はスーパー縁タイムを期待しつつ・・・
  • 2009-01-25
  • 投稿者 : ぎるばと?
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[C412] なのはAir

〇ぎるばと?さん
 おじさんなのにサドっ “子” とは如何に。
 空気言われるとフェイトもすずかも……うん、休憩中という事で。
 縁はアレです、主人公じゃないので。
  • 2009-01-26
  • 投稿者 : クロガネ
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[C413] ぽりん

え?エロい事しないの?
クロガネさんなら、やってくれると信じてたのに!
  • 2009-01-27
  • 投稿者 : あれ?
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[C414] とりあえずクロノは主語騎士たちに殴られるべき。グーで。

スオムスいらん子中隊はおもわずアウトォオオオオ!!って言いたくなりますよ。面白いです、はい。

とりあえずがんばれ縁。
そんなこと言いながら、更なる暗黒面を求めている自分が汚い。
あんこくで主人公一回死亡とかありそうでコワイデス。

あとクロ助、荒療治すぎる。小学生だぞオイ。

40話が二つになってますよ。
  • 2009-01-27
  • 投稿者 : TFJ
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[C415] コメントありがとうございますー

〇ぽりんさん
 し、しないよ!
 クロガネは健全な叔父さんだから、そんなエロなんて書かないというか今まで一度も書いたことないじゃないですかあははははははははは

〇TFJさん
 どこまで暗い話が好きなのかと。クロガネは明るくきゃははうふふな話が好きなのです、はい。嘘じゃないよ?
 クロノはあれです、年上の女性や芯の強い女性ばっかりが周りにいたので繊細な悩み相談が出来んのですよ。今思いついた。
 スオムスいらん子中隊面白い。話が進むにつれてハルカの壊れようが凄く好み。

>40話が二つ
 おうちっ、指摘サンクスですー。
  • 2009-01-28
  • 投稿者 : クロガネ
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[C416] 蘇れアリサ

フォンさんやりたい放題、あれですか快楽殺人者は、相手に怯える・命乞いする等のアクションが無いとつまんないとかいう奴? 自暴自棄でどーにもなれ状態のアリサは嬲っても面白くないのかな? 

仮にすずかに同じこと頼んだ場合、(ほぼ)理想的に性的且つ猟奇的に滅茶苦茶にされてるだろうから、一概にどっちがマシとも言えませんがね。

  • 2009-01-30
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C417] それも不死鳥の如く

〇ミヅキさん
 快楽殺人というのは2通りあって、殺すのが目的の快楽殺人者と、殺すまでの過程が目的の快楽殺人者があるのです。フォンの野郎は後者ですね。怯えたり抵抗したりしてくれるのが堪らなく好き、というドSもこの世にいるのですよ。クロガネのことじゃないよ?
 すずかに頼んだら――ほぼ、と言うか間違いなく理想的に “無茶苦茶” にされるでしょう。しかも喜んで。
  • 2009-01-31
  • 投稿者 : クロガネ
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[C419] デ、デバイスさぁーん

二回目のコメント。
ちょっと読み返してたらデバイスの言葉づかいがガガガッ、ガガッ、!!!
口が悪い。作ったのは縁なのか!?
いや、持ち主の危機にしても。最近のインテリジェントデバイスはコワイデスネ。
  • 2009-02-04
  • 投稿者 : TFJ,
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[C420] セカンドいらっしゃい

〇TFJさん
 分かる人には分かる、デバイスの毒というやつですね。さり気なく地獄に堕ちろとか言ってますし。
 作ったの?
 さて。
  • 2009-02-05
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 41

 気が付いたら、クロノの頬を平手で思いっきり叩いていた。
 そうはやて自身が理解した時には、脚をもつれさせ、受身もなく盛大な音と共に床に倒れていた。日々リハビリだと己に言い聞かせ、家族の見ていない管理局内では魔力神経を切っていたのが原因である。
 ひんやりとした床に顔を付け、次の瞬間、一気に頭に血が昇った。
 床を叩いて跳ねるように身体を起こす。
 叩かれた頬を手の甲で軽くさすりながらも、それでも椅子に座って見下ろしてくるクロノと目が合った。
 かっと、胸と腹が熱くなる。
 殴ってやりたい。
 100発や200発とは言わない。せめて5発か10発か、シュベルトクロイツで顔の形が変わる程度で構わないから殴りたい。
 そんな衝動に駆られ、はやては立ち上がろうと脚に力を込めてみるが……膝が震えるだけで上手くいかない。
 当然と言えば当然である。座った状態から立ち上がるというのは、かなり難しいのだ。杖を使って階段を昇るのが精一杯の今のはやてでは、とてもじゃないが身体が追いついて来ない。怒りだけしか先行しない。
 無表情、と言うよりも何処か見下したような冷たい印象さえ感じるクロノを睨み上げながら、はやては奥歯をぎりっと噛む。噛んでから、自分のハラワタが煮えているのにようやく気がついた。ここまで怒りを覚えた事など、短いとは言え今までの人生で何度あっただろうか。
「も……う1回、言うてみぃ」
「君のような役立たずを護るために死んだ闇の書の意思は犬死にだ、と言ったんだ」
 迷いなく答えたクロノのそれに、まるで頭を真横からハンマーで殴りつけられたような衝撃を覚えた。
 そんな言葉をクロノが口にするなど、思った事すらなかったような言葉を、聞いた。
「闇――っ」
 頭が理解するよりもずっと早く、はやての身体は反応していた。
 座るクロノの膝を両手で掴み、それを支えにするようにして己の身体を持ち上げるようにして立ち上がろうとする。魔力神経を通そうという頭がない。立ちあがる事しか頭になかった。
 膝が震える。上手く立ち上がれない。
 もどかしい。
 情けない。
 悔しい。
 惨めだ。
 でも、立つ。
 それ以上の怒りが、はやての胸にあった。
「闇の書、や――ないっ」
 クロノの膝を掴み、一生懸命に立ち上がろうとしながらも、はやてはクロノを睨み上げる。
 まっすぐ、クロノは視線を返す。
「ロストロギア、闇の書だ」
「ぁ――」
 ぱし、っとクロノは軽くはやての片手を払った。たったそれだけで、はやての姿勢は崩れてしまう。
 体勢を崩し、それでもなお、はやてはクロノの脚を掴んで立ち上がろうとした。
「それもアレだね、君が役立たずならば、君に使える守護騎士はそれ以上の役立たずでしかない訳だ」
「なん、や、て?」
「聞こえなかったのかい? 君の大好きな家族とやらは、君以上の役立たずばっかりの脳なしだと言ったんだ」
 まっすぐ目を合わせたまま、それでも読めぬ表情のまま、言い放ったクロノの言葉に、はやてはクロノの膝を押し潰すかの如く勢いで押さえつけ、その反動で身体を一気に持ち上げる。
 立てた、という実感はまるでない。リハビリでもここまで上手くいった試しなどないのに、達成感はまるでない。
 立ち上がり、今度ははやてがクロノを見下ろしてから、思いっきりキツイ握り拳を振り上げた。
 遠慮?
 生ゴミに出した。
「ふっ」
「――――っ」
 はやての強烈な右ストレートが、クロノの顔面にめり込んだ。
 だけだった。
 倒れもしない、悲鳴も上げない、手応えしか返ってこない。殴ってなお、不動。
「あの子らは関係あらへんっ、サイテーやわクロノ君!」
「……関係? 君の下僕だろ?」
 今度は、左のフックがクロノの右頬に直撃した。
 しかし、硬い。
 少しだけクロノの顔が左にぶれただけで、殴ったその衝撃を全て吸収されてしまっていた。目線が少しも外されない。
「家族や! そんなん引き合いに出さんといてっ!」
「だが君は “闇の書” の主で、守護騎士は “闇の書” の主に仕える者だ」
 反射的に手を振り上げ、今度は抑えた。殴らずに、抑えて、でも振り上げたその手を下ろす先が見つけられなくて。
 真っ赤な顔で、込み上げる怒りで肩を震わせて、一度奥歯を噛み締める。
「闇の書やない!」
「今の君がこんなんじゃ、彼女はただの闇の書だ!!」
「っ!」
 きっぱりと強い口調で言い返してきたクロノのその言葉に、反射的に返す言葉が見つからない。
 違う、違う。
 違う、のに。
 彼女は、あの子は、闇の書じゃない。そう言い返したいのに、言葉が出ない。
 今の自分に何が言える、そんな感情が胸にべったりと付いてくる。纏わり付いてくる。
 でも、何かを、何かを言い返さないと。
「彼女の、彼女達の犯した罪を少しでも償うんじゃないのか! 遺された者の責務だと、そう言ったのは何処の誰だ!!」
「それ――はっ」
「それを、自分は役に立たないと言って逃げるのか!?」
「だって、せやかて、しょうがないやん! 私は――っ!」
「足が動かない障害者だからか? じゃあ、やっぱり闇の書の意思は無駄死にだ、犬死にじゃないか!!」
 無駄死に。犬死に。そこを強調してくる。
 流石にカチンときた。
 しかし、はやてが口を開くよりも早く、そのはやてへ強い視線を向けたままクロノが先に言葉を紡いだ。
「彼女は、再び君の体を蝕まない為に逝ったんだぞ!!」












 路地裏、と言うべき所なのだろうか。
 本路地より外れた狭い道を行き、3方をコンクリート塀に囲まれて行き止まりの、絵に描いたような袋小路の路地裏である。無計画に民家を建てた名残なのだろうか。土地権利の問題で崩せないのだろうか。
 そろそろ酷い雨、と形容して良いくらいに雨脚は強くなっているのに、3方の壁向こうの内左右2方に聳える大木の葉に護られ、この辺りにはまるで雨水が落ちては来ない。ただ、ずっと上から葉を叩く音が響くくらいだ。
 自然の屋根に護られる代わりに、日の光も届かない。今日は元より雨だから太陽は出ていないのだが、その為に余計に暗く感じる。
 左右2方は大木、いっそ大樹と言って良い巨大なそれ。そして残る来た道とは反対の壁向こうにはおそらく民家……なのだが、平屋建てなのだろうか、壁の方が高いのかアリサの立ち位置からでは見えない。もしかしたら新地という可能性もある。
 要するに、壁はある上に人目はまずない。
 ヤるには、絶好と言うべきか。
 薄暗い笑みが思わず浮かんでしまった。
「よく知ってますね、こんな所」
「まあ、よく使わせていただくので」
「……変態」
 自分のナリからホテルは無理だとは思っていたが、まさか初めてが野外とは。お似合いか。
「よく言われます」
 薄い灰色のシャツの一番上にある、本来ならネクタイに隠れる部分のボタンを1つだけ外しながら、フォンは笑って答えてきた。上のスーツは置き去りにしたままである。
 野外をよく使うって、どれだけ鬼畜か。にこやかな面の割に、黒い奴である。それを考えれば着ていたスーツの色はよく似合っていた。
 すっと、フォンが隣に立ちアリサの肩へ手を伸ばした。
 ぽん、と振れる。
 腰から首筋までかけて、一気に鳥肌が走り抜けた。
 怖いと、助けてほしいと、そんな未練がましい思いが心の何処かにあるということか。笑ってしまう。
「子供相手は、初めてですか?」
「ええ。屈まないと腰に手を回せない女性のお相手をするのは、初めてですね」
 気を紛らわせるように質問したアリサの腰へ、こんな風に、とフォンは少し屈んで手を回してくる。
 手つきが、なんだかヤらしい。屈んだせいで顔が近い。
 身体を這いずるような視線を間近で感じた。ドキドキはしない。むしろ、ぞわりとする。
 その視線はアリサの顔ではなく、その下へ向けられている。鎖骨から胸にかけてだろうか。鎖骨、鎖骨か、とんだフェチ野郎だ。
「ときに、アリサ・バニングスさん?」
 耳元でぼそっと、息を吹きかけるようにフォンの声がする。
 男の声というのを、アリサは生まれて初めてこんな至近距離で聞いた気がする。ヘッドフォンからの声とは違う生の声だ。吹きかけられる息がまた、なんとも気持ち悪い。
「今更ですけど、見ず知らずの男にほいほいついて来るのは、どうかと思うのですよ」
「狼だそうで」
「ええ、狼だそうで」
 すっと、フォンの人差し指が、アリサの首筋に触れる。
「ん……っ」
 ぴくん、とアリサの肩が震えるように跳ねた。
 怖い。
 そう思う部分は、確かにある。
 でも、それ以上に失望感が、アリサの胸にはあった。
 なんの失望感か?
 自分への、だ。
「食べられますよ」
 耳元で囁かれる声は、妙に艶がある。気持ち悪い。
 首筋をフォンの指が舐めるように這う。
 徐々に頭の中が白くなっていく。
 これで良い。
 これで良いんだ。
 自分は、汚れてしまうのが一番相応しい。汚れて、汚れて、死んでしまおう。誰も同情なんかしないくらいに汚れて死んでやる。
 かちゃ、っとフォンの指がネックレスのチェーンに引っ掛かる。
「…………」
 そのチェーンを指で掬い、ゆっくりと持ち上げる。
 アリサの胸から、赤い宝石がゆっくりと持ち上がっていく感触。
 そんな時に、ふと縁の顔が思い浮かんでしまう。
 何故だろう。涙が出そうなくらいに、悲しい。
 きっと自分が縁を汚そうとしたから、汚してしまったから、だから悲しいんだろう。そう自分に無理矢理言い聞かせてしまう。違うのだ、違うのだと、そう叫ぶ誰かの声を強引に捻じ曲げて。
 制服からチェーンを伝い引き上げられたネックレスのその宝石を、フォンは軽く手に掴んだ。
(( Don't touch with a dirty hand. Go somewhere, a feces fool. ))
「……ミッド式じゃない?」
(( Die by the roadside; sleep, and fall into the hell, and be cursed. ))
 赤い宝石は数回光ながら、機械的な声を出していた。
 幻聴だ。
 そう思いたい。
 それくらい、この宝石から聞こえる声は、アリサの心を刺していた。

 だって、宝石から聞こえる声は、縁と同じ声がするのだ。

 女の子としては少し低い、だけど通りだけは凄く良い、その声。喋る言語が違っても、絶対に間違えない。
 幻聴だ。
 幻聴なのだ。
 宝石が喋るなど、なのはの持つレイジングなんとかじゃあるまいし。
「ふむ」
 小さく、アリサの耳元でフォンが喉を鳴らした。
 瞬間、今までの比じゃない程の鳥肌が、足から頭まで突き抜けるかのような勢いで立ちまくった。たった一瞬で頭が冷える、そんな感覚。

「音、風――成す、衝波」












 夜天の書。
 本来であれば己を護るために、そして主を護るためにあるはずだった防御プログラムは、幾度も書き換えられ、改竄され、その存在を捻じ曲げられていた。そして、その存在を捻じ曲げられてしまった防御プログラムは、凶悪な牙であった。
 一度はそれを砕くも、夜天の書が存在する限り、その強靭な再生機能によっていつか元に戻ってしまう。
 そも、夜天の書の根本となる改竄され過ぎた基本プログラムをどうにかしない限り、防御プログラムの存在ははやての体を蝕む。何もしなければ、遠くはない未来にそうなるのは火を見るよりも明らかなことであった。
 だから、彼女は “どうにかした” のだ。
 完全消滅。
 その形をとって。
「――――」
 クロノのその一言に、はやては次の言葉を出せなかった。
 卑怯だ。
 その言葉を、言うなんて。
 言葉を失うはやてを真っ直ぐ見ながらも、クロノは決して追言を緩めはしなかった。
「何度でも言ってやる、役立たずの主に仕える守護騎士は、所詮役立たずだ」
「だ、だから、あの子らは関係――」
「だったら、役立たずだった君の為に、シグナム達は何をした?」
 言葉に勢いがなくなったはやてよりも早く、上塗りするようにしてクロノが言葉を潰した。
 シグナム達が、何を。
 ふと、頭の中に嫌な光景が過ぎった。
 自分の家族が、何をして、そして、どうなったか。
 屋上の、あの光景。
「魔導師を襲い、リンカーコアを奪う、そんな犯罪行為に打って出た。なのはのリンカーコアだって無理矢理引き抜いた、フェイトのだってシグナム達が馬鹿な事をしなければリンカーコアを蒐集される事だってなかった。それだけじゃない、もっと沢山、もっと大勢の魔導師を、幻種生物を、シグナム達は襲った。馬鹿な行為だよ、ただの犯罪者だ」
 そう。
 そうだ。
 人に迷惑をかけない、そう約束したのに、シグナムは、ヴィータは、ザフィーラは、シャマルは、それを破り捨てて、魔導書の完成を目指して襲撃事件を起こした。
 それは全て――
「はやて、君の為だ」
「あ……ぅ……」
「全部、役に立たない君の為に、それでも君の身体を心底案じて、役に立たない守護騎士が起こした、ただの迷惑行為だ。本当に君以上に役にも立たない事をした」
 役に立たない。
 違う。
 役に立たなかったのは、自分だけ。
 シグナム達は、違う。
 知らなかったから。あれの完成が何を意味するか、知らなかったから。
 だけど、あの魔導書以外にはやての足を、身体を、命を、救う術を知らなかったから。
 知らなかった、から?
 ――違う。
 違う、違う。
 違う、違う、違う、違う、それは違う。
 だって、そうだ、あの時は確かにシグナム達は知らなかった。
 でも違う。

 あの時、シグナム達が隠れて “何か” している事を、自分は知っていたじゃないか。

「なのはやフェイトに、言ったそうだな。もっと早く収集のことに気付いてやれればって――もっと自分が “しっかり” していればって!」
 クロノの言葉が胸を刺す。
 そうだ。
 そうだった。
 何故だろう。忘れていた。
 一番自分が忘れてはいけないものを、忘れていた。
 なのはやフェイトのように、大事なことを忘れていた。

「君はもう気付いていたんだよ。君が駄目なら、シグナム達だって駄目だって!」

 痛い。
 痛い、痛い。
 言葉が痛い。針のように心を刺してくる。
「ぁ……ぁ」
 足ががくがくした。
 何故だろう、酸欠のように、頭がふらふらする。
 クロノが口を開いた。
 耳を塞ぎたくなる。
 聞きたくない。
 聞きたくないのに、クロノが言葉を紡ぐ方がずっと早い。
「分かっていて繰り返す! こんな愚行を繰り返す! 君が自分を役立たずと思い、そこで何もしなければ、君の家族はそれ以上の役立たずになってしまうと知りながら!」
 違う。
 心の中で叫んだ。反射的に。
 シグナムは役立たずなんかじゃない。
 ヴィータは役立たずなんかじゃない。
 ザフィーラは役立たずなんかじゃない。
 シャマルは役立たずなんかじゃない。
 皆々、自分なんか目じゃないくらいに立派で、しっかりしていて、自分の意思をはっきり持っていて、強いじゃないか。
 だから違う。
 役立たずなのは自分独り。独りだけ。
 そう思っても、否定する言葉が口から出てこない。
 心の何処かで、クロノの言葉に納得してしまっているのかもしれない。
 でも、悔しい。
 そう思った。
 家族が馬鹿にされている。自分のせいで馬鹿にされている。主だからとか、上に立つからとか、そんな理由で馬鹿にされている。
 大事な家族が。
 自分が情けない、その為に。
「私の事は――」
 クロノの目を、睨むようにして見返した。
 不思議な事に、家族の事を思えば、クロノの視線なんて怖くも何ともなかった。
「私の事は、いくら馬鹿にされたって構わへん。役立たず言われても、怒れへん」
 口を開く。
 言葉は震えない。
 気のせいか、クロノの口端が笑うように少しだけ緩んだように見えた。
 まるで、安心した、とでも言うかのように。
 しかし、頭に血の昇っていたはやては、そのクロノの表情には気がつかなかった。
「せやけど、せやけどなっ、あの子らを、シグナムを、ヴィータを、シャマルを、ザフィーラを――リインフォースを馬鹿にするんは、クロノ君でも許さへん!」
「許さない? どう許さない? 役立たずの君がどう許さないって?」
「ぐっ――」
 返すクロノの言葉は非常にシビア。
 確かに自分はただの役立たずだ。それは認める。
 だが、これは退けない、譲れない。
 はやてにとって、例え今まで八神の家の弁護をはかってくれたクロノが相手でも、いや、そんなクロノ相手だからこそ、これは絶対に曲げられなかった。
「あの子らは、皆頑張ってる!」
「だが、上に立つ君が台無しにしている」
「あの子らは、やる事決めて、それを一生懸命にやっとる!」
「だが、主である君が成すべき事を成さないで立ち止まっている」
「あの子らは!」
「リインフォースは!」
 クロノが、はやての言葉を潰した。
 その名前に、思わずはやては言葉を止めてしまう。
 闇の書の意思じゃない。
 リインフォースと、クロノが呼んだ。
「シグナム達じゃなくて、他の誰でもなくて、最期は君を想った。君を護れると、そう想って、笑って、逝けると」
 死にたくないと喚かなかった。やりたい事も、やり残した事も、やらなかった事も、沢山あった。
 ずっとずっと苦しんで、苦しむだけ苦しんで、最後にほんの少しだけのシアワセを持って、この先に幸せになる権利全てを捨てて。
 君の為に、逝った。
 最後は口にしなかった。する必要は、もうないと思った。
 ぽかんと口を開けているはやての目を見上げ、クロノは声を落ち着けて、静かにそう口にした。
「どうでもいい役立たずを生かす為にリインフォースが逝ったなら、犬死になんだよ」
 開けていた口が、ゆっくりと閉じた。
 近いとは言えクロノの耳にも聞こえる、奥歯を噛んだその音が。
「馬鹿にすな……」
「いくらでもしてやる」
「馬鹿に――」
 はやての手が伸び、クロノの胸倉を掴んだ。
 絞め殺すかのような勢いで力をかけている。とは言え、所詮ははやての腕力、クロノを締め落とすには足りない。
「リインフォースの死を、侮辱するんなら……クロノ君かて、許さ…………」
 震える声で。
 震える腕で。
 それでも、目はしっかりとクロノの目と合わせて。
 クロノは口を横一文字に閉じる。

「私、かて……許さ………へん――」

 はやてが。
 泣いていた。












 アリサの名前を呟き、そしてじりじりとした嫌な焦燥感を覚えたときには既に、縁は教室の窓を走り高跳びでもするかの勢いで飛び越えていた。地上3階、良い高さである。
 夏でよかった。冬ならば閉めた窓を蹴り破っているところである。
 クラスメートや先生の悲鳴を後ろから受けながら、縁は着地するべき下ではなく、商店街の方へと大きく見開いた目を向けていた。
「いない……」
 呟く頃には縁の足はグラウンドの砂を捉えていた。
 爪先から踵、そして足首と膝を経由して股関節から腰まで、まるで猫のようにしなやかに着地の衝撃を逃す。怪我は1つもない。
 綺麗な着地。
 そして、縁の動きはそこで止まった。
 ――行ってどうする?
 ――行ってどうなる?
 頭の中に浮かんだたった二言が、縁の動きを止めていた。
 胸騒ぎがする。根拠はないが、きっと、良くない事がある。
 アリサの下へ、行かないと。
 そう思う、その反面。
 アリサはもう、自分を必要にしていない。
 その考えが、確かにあった。
 誓いを守る前提が、もうないのだ。
 だから、もう――
 ぶんぶんと縁は勢いよく首を振る。
「バニングスさんに痛い思いや怖い思いをさせる奴がいたら、必ず私が懲らしめる。必ず私が救う」
 まるで自分を納得させるかのように、縁は口の中で言葉を転がした。
 あの日、アリサが襲われた時、アリサを安心させるために誓った言葉。きっとアリサは覚えていないだろう。でも、縁にとってはとても大切な言葉で。
 グラウンドの砂を蹴った。
 雨でぬかるんでいる。しかも上履きのままだ。
 それでも、アスリート真っ青の加速力は、縁の身体を前に押し出す。
 校門まで一直線。後ろから誰かの叫ぶような声が聞こえるがきっと気のせいだ。
 門を掴み、その掴んだ手を支点にして走ってきた勢いそのままに強引に曲がる。
 曲がり、向かうは商店街の方角。朝アリサが走り去った方角だ。だが、それ以上、アリサの位置を特定できない。
 ぼすっと、縁はスカートのポケットに手を突っ込み、放り投げるようにして銀色のケースを取り出した。
 そのケースを片手で開け、中に入っていた無針タイプの注入器とアンプルの1本を取り出す。アンプルの中には毒のように鮮やかな青色をした液体が入っている。
 注入器とアンプルを慣れた手付きで組み合わせ、そこで縁は走っていた脚を一度止める。あまりに急な止まり方だったためか、上履きの底から悲鳴が上がった。
 少し前屈みになり、縁は自分のソックスを下ろして膝を露出させる。
 そして、ためらう事なく、打つ。
「っ――」
 ちくっとした、痛いとまでは言わないが変な感覚。
 かなりの勢いで、アンプルの中にあった液体が身体へ注入されていく。

 青い光の線が、打った膝を始点にして一気に広がった。

 まるで血管が青く発光したような、幻想的とも歪とも言える光景。
 光の線は走り抜ける僅かな間だけ発光し、すぐに消える。時間が短いので道行く人も車も誰も気には止めなかった。雨が振り、学校の目の前、この時間、という条件が揃い、元より人気があまりないという理由もある。
 発光する自分の身体を気にする事なく、縁は素早くソックスを太股まで引き上げ、注入器からアンプルを取り外して両方ケースに仕舞う。
「――よし」
 顔を上げた。

 瞳が、青い。














 まず感じたのは、空を飛ぶような浮遊感。
 次に感じたのは、背中からの熱いまでの衝撃。
 浮遊感は混乱のままに過ぎ、続いた衝撃には視界が真っ白に染まり、痛いという感覚を伴ったのはその後であった。
「あ――ぅずっ!?」
 激痛と言っていい、背中からのその痛みに悲鳴がアリサの口から逃げようとするのと全く同時、続いて腹部に何かめり込んでいた。
 何が起きたのかまるで分からず、前から後ろから襲ってくる痛みを必死に押し殺しながら、アリサは痛みのために閉じてしまっていた目をゆっくりと開く。
 目の前には、フォンが相変わらずの営業スマイルを浮かべたまま立っていた。見下ろされている。
 そしてアリサは、壁に凭れ掛かるように、もしくは崩れ落ちるように座っている。
 更に、フォンの脚が、アリサの腹へ蹴り込むように伸びていた。
 ああ、そうだ、自分は何か変な力で弾き飛ばされて……
(( My companion !? ))
 宝石が、大丈夫かと聞いてきた。
 縁と同じ、その声で。
「ぐ、ぅ……喋―――ぐっ」
 喋るな。そう言おうとした瞬間、フォンが脚に力を込めてアリサの腹部を圧迫してきた。
 潰される。そう思ってしまう程に、痛い。
 悲鳴を漏らすアリサを見、フォンはおや? という顔をした。
「ああ、失礼。子供だとこれは流石に痛いですか」
 すぐに営業スマイルに戻し、フォンは慇懃無礼に口だけで謝る。
 ぐり、ぐり、と脚に回転をかけ、アリサの腹部へ脚を捻込ませながら。
「ぎっ――あ――ぐぅ――」
 捻られる度、悲鳴が口から逃げていく。
 痛い。
 痛い。
 腹の中が全て出て行きそうなくらいに、痛い。
「ふむ」
 顎に手を当て、フォンが鼻を鳴らした。
「やはり、子供相手では楽しくないですね」
 少々興味なさそうに呟いた後、フォンは押しつけていた脚を離し――その脚でアリサを蹴り飛ばした。
 左肩に鋭い痛み。
 続いてアスファルトに右肩と右側頭部を打ちつけた痛みが襲ってきた。
「いっ」
 漏れる悲鳴を、堪えた。
 何だろう。
 フォンは何をしているのだろう。
 何故暴力を振るわれているのだろう。
 色々な疑問が頭の中を飛び交うが、その疑問全てにアリサは考える気にならなかった。
 罰だ。
 理性ではない。感情的に、そう思った。
 これは、罰だ。
 そう思ってしまえば、何故フォンが突然暴力など振るったか、まるで気にもならなかった。
 顎に手を当てたまま、フォンが横たわったまま起きないアリサを見下ろして、再び鼻を鳴らす。
「今の貴女は、私の最も嫌いな人間ですよ」
 奇遇だ。自分も、今の自分は大嫌いだ。
 心の中だけで、アリサはフォンの言葉に返した。
「全てを諦めて、死すら望む。人として、その人生スタンスはどうかと思うのですよ」
 げしっと、フォンがアリサの左肩を蹴り、今までアスファルトへと向けられていたアリサの顔を、強制的に上へと向かせる。
 フォンと、視線があった。
 何故だろう。無性に笑えた。
 自然と引きつるような、投げやりな笑みを口元に浮かべると、フォンはいかにも残念だと言うように肩を落す。
「……やはり、最初にあった時に殺すべきでしたね。今の貴女じゃ、殺しても楽しくない」
 深い溜息と共に吐いた言葉に、アリサは僅かに口を開く。
「――――――殺、して」
「………はぁ」
「殺して、よ……」
 かすれたような声で呟いたアリサの言葉に、フォンは落胆の色を隠さなかった。
 彼なら、自分を殺してくれる。
 考えていた順番が違うが、この際どうでも良かった。自殺と他殺という違いもあったが、これもこの際どうでも良かった。
 今、自分を殺してくれる人がいる。それが凄く救いのような気がして。
 アリサの目に込められたその期待の色に、フォンは困ったように頭を掻いた。
「正直、興が削がれた感じですけど……ま、貰う物は貰いましょう」
 すとっと、アリサの横に膝を付いてフォンがしゃがむ。
 近付くフォンを感情なくアリサは見ていたが……フォンがネックレスの宝石を摘まんだ瞬間に、その瞳が揺れた。
 それは、縁の――
「っ!」
 気がつけば、フォンのその手を払い除けていた。












「駄目やん私……結局、結局一番の馬鹿が…………私やん……」
 首を締め上げるようにクロノの襟を両手で鷲掴み、ぽと、ぽと、とはやてはクロノの頬へと涙を落としていた。傍から見ればはやてがクロノに喧嘩を売っているようなのに、その言葉には自虐的なものである。
 真上から見下ろされ、涙を落とされて、そこでクロノはようやく顔を顰める。
「何で、こない大事な事……忘れ……」
 涙が、落ちる。
 落ちる。
 その涙を頬に受けるクロノは、すっと両手を上げた。
「陳腐な言い方かもしれないが、はやて」
 そっと、クロノは上げたその両手をはやての頬に優しく当てた。
 暖かくて、柔らかくて、涙で濡れていて。はやてとの付き合いはもう1年をとうに超えていたが、その頬に触れたのは初めてであった。
「君の生き方は、君の命は、君だけの物じゃないんだ」
 ぎゅっと、はやては目を強く閉じる。
 ぼろぼろ、ぼろぼろ、と、落ちる涙の量が増えた。
 そうだ。
 そうだった。
 何故だろう。何故、忘れていたのだろう。
 とても大切な事なのに。
 しっかりしていない自分だからこそ、“しっかりしよう” と決めたのに。役立たずだからこそ、頑張って誰かの役に立とうと。
 それを、何で、忘れた。これじゃあ、ただの馬鹿じゃないか。
「死んでいったリインフォースの命も、今生きている守護騎士達の信頼も、君は背負ってる。それを裏切るな」
 はやての頬に手を添えながら、涙が溢れているその目をまっすぐ見て、クロノは言葉を続ける。
 ぎゅぅ、とはやてはきつく目をつぶった。涙が押し出されるような形で、クロノの頬へと次々に落ちていく。
 悔しい。
 そう思った。
 クロノに言われた事にじゃない。自分自身が悔しい。
 本当に、本当に駄目なマスターだ。
 自分が駄目な奴なんて今に知った事じゃないのに、今更それに落ち込んで、それでシグナム達が馬鹿にされて、リインフォースのあの今際まで侮辱されて。
 自分が、こんなのだから。
 それが悔しい。
 それが不甲斐ない。
「ぅ――ぅぅ―――」
 漏れそうになる嗚咽を、歯をくいしばって耐える。
 涙がぼとぼとと落ちてゆく。クロノの頬に落ちてゆく。はやての涙で、まるでクロノ自身が泣いているかのような跡がつく。
 頬に触れていたクロノの手の、その親指が一度だけはやての頬を流れる涙をさっと拭う。
「……辛いか?」
「ぅ、っ――ぅ―――ん――」
「悲しいか?」
「――、ぅ、ん」
 静かに、そして優しく、そんな声色で聞いてくるクロノの言葉に、はやては涙ながらに肯いて答える。
 涙が飛んで、一粒クロノの左目に入った。
 でも、クロノは目を閉じない。
 その視線は、まっすぐはやてに向いて。
「君に仕えるシグナム達が、嫌か?」
「―――っ」
 思いっきり、首を横に振る。
 そんな事はない。
 あるはずがない。
 首を横に振った時、クロノの手が離れて……ぽん、とはやての頭にクロノの右手が置かれた。
 撫でない。
 置いただけ。
「シグナムは好きか?」
 肯く。
 髪を軽く撫でられる。
 背筋も生き方もまっすぐな、そんな彼女が嫌いなはずがあるものか。
「ヴィータは好きか?」
 肯く。
 髪を軽く撫でられる。
 こんな自分になついてくれる、そんな彼女が嫌いなはずがあるものか。
「シャマルは好きか?」
 肯く。
 髪を軽く撫でられる。
 優しく抱きしめ笑いかけてくれる、そんな彼女が嫌いなはずがあるものか。
「ザフィーラは好きか?」
 肯く。
 髪を軽く撫でられる。
 ザフィーラはあの時、多分クロノと同じような事を言いたかったんだろう。そう思う。ただ、シグナム達と自分が同じ立場であるので、クロノのような鋭い切り口の話が出来なかっただけで。
「リインフォースは、好きか?」
 肯くのが、一瞬遅れる。
 ぺち、と軽く頭を叩かれた。
 好きだ。
 大好きだ。
 触れ合ったのは少しだけ、交わした言葉も少しだけ、胸に宿り共に駆けたのも一度きり。冗談を言って笑いあった事もなく、風呂へ一緒に入った事もなく、買物に行って共に服を選んだ事もない。
 でも好きだ。
 家族だから。
 どんなに共にいた時間が短くても、どんなに交わした言葉が少なくても、彼女が自分に注いでくれた愛情は、確かに家族のだった。
 涙の流れる量が、さらに増えた。
 止められない。
 止める事が出来ない。
 それでも、はやては目を開けた。
 大事な家族だった。リインフォースは家族だった。
 でも、道を分け、袂を分け、リインフォースは逝ったのだ。はやてを護るため、他の守護騎士を護るため。
 それなのに、自分は。
 シグナム達を護れたか? 世間の目から、批判する者から、護れたか?
 リインフォースの、そしてリインフォースへの償いを、出来たか?
 どれも、出来てないじゃないか。
「上に立つって、そうなんだよ。上の者の失態は、下の者の失態だ。上の者が失態を犯せば、組織全体の失態になる」
 頭に乗せていた手を離し、もう一度はやての涙を拭いながらも、クロノは言い聞かせるように静かに口を開く。
 だけど、まっすぐはやての目を見ているクロノのそれは、厳しい。
「君はリインフォースの主だろ? シグナム達の主だろ? 君は上に立って、彼女達は下に立ってるんだ。君の失態は、彼女達の失態だ。君が駄目なら、彼女達も駄目だ。君が役立たずなら、彼女達も役立たずだ」
 叱る言葉が、一々厳しい。
 それでもはやては、涙の流れるその目を開いて、しっかりとクロノの言葉を聞いていた。
「彼女達を馬鹿にされたくないなら、リインフォースの死を侮辱されたくないなら、上に立つ君がしっかりしろ。上に立つ君が一番しっかりして、一番役に立って、一番一人前になれ」
 無茶苦茶な事を言いやがる。
 だけど胸に来る。
 それはきっと、はやての胸にあった答えに一番 “近い” から。
「上の者が一番頑張らないで、下の者の評価が上がるもんか。上に立つって、それだけの覚悟がいるんだよ」
 大事な家族に胸を張れるくらいになれ。
 自分を役立たずなんて嘆くな。
 そんな暇、ないんだぞ。
 決して言葉にはしなかったが、クロノの言葉の裏にはそんな色が見え隠れしていた。
 崩れ落ちるようにはやてがクロノの胸に顔を落すと、それを当たり前の様にクロノは受けとめて抱きしめてくれた。予想していたのかもしれない。
 はやての視線が外れたのを確認して、クロノは悲しそうな残念そうな、そんな複雑な表情になる。
 声を漏らさないように堪えながら、しくしく、しくしく、と泣いて肩を震わせるはやての背中を軽く撫でながら、クロノは決して外には漏らさないように心の中だけで溜息を吐き出していた。












 米を10kg買い、はたして10kgで何日凌げるだろうか、そんな事を考えながら海鳴 恋慈は幽霊屋敷と表現しても良い無駄にデカイ屋敷の門をくぐる。
 両手には山のような野菜と、旬には随分と早い秋刀魚が乱雑に詰められた買物袋。そして両肩には器用に10kgの米が両方乗っている。どう見ても買物帰りの主夫である。
 熱い日差しの中、えっちらおっちらと重い荷物を運んでは来たが、恋慈のその顔には汗一つと浮かんでいない。ただ、カートを引いて来れば良かったと、後悔の色は浮かんでいたが。
 ちなみに野菜と魚は1日分、米は20kgあって10日分である。その大半はアステマの胃袋へと吸収されていた。
 これでも随分と減ったのだ。常人からすれば、それでもまだ多いが。
 太るぞ、と言っても、太ると思っているのか? と鼻で笑われたのは記憶に新しい。それでも女かよという言葉が喉元まで出かかったのだが、それを言ってしまうと とでもない目に遭うのは火を見るよりも明かなので、確かその言葉は味噌汁と一緒に飲み込んだ。
 軽い溜息と共に恋慈は足で玄関の戸を開けて――

 右手で丁寧に閉めた。

 閉めたその姿勢で数秒硬直し、そして地面へ買物袋を置いてから軽く目をこする。それから肩の米も地面へ下ろしてから背伸びをした。
 最近疲れているのかもしれない。
 とは言え、特にこれと言うハードな運動をした覚えはない。それどころか、最近はこの世界から “出る” 回数が何故かがくっと減っている。
 もしかしたら憑かれてるのかもしれない。
 これは当たりかもしれない。慕ってくれる人の数より、恨んでくる人の数の方が多いのだと言い切れる自信が、恋慈にはある。
 深呼吸をしてから、恋慈は再びゆっくりと玄関の戸を開く。

 玄関を開けたら異世界だった。

「どこでもドアってやつか――」
「早く入らないか戯け者」
「ごはっ」
 ぼそりとこぼすその言葉が終わるよりも早く、恋慈はげしっと真後ろから蹴り飛ばされた。
 文字通りである。
 背中から蹴られ、その威力を物語るかのように、180はある恋慈のその身体が空中で1回転半の曲芸の如き前宙を無理矢理行わされ、華麗に顔面からの着地を決める。そして玄関先から蹴り飛ばされた飛距離は凡そ2m。常人ならば死んでいる。
 唯一の救いなのは、着地したところが硬い床ではなく、“草の茂る地面” であったという所か。ないよりはマシ、程度に衝撃を吸収してくれる。
 顔面着地から身体を海老反り状態で一度止まり、恋慈の身体が仰向けの状態で改めて倒れる。
「む、むきゅぅ」
「気色悪いぞ変態」
「ぐふっ、どむっ、痛い、痛い、痛いっ」
 追撃の様に股間を踏まれる。
 流石に先のような威力ではないが、これは洒落にならないほどに痛い。むしろ、先のような威力なら悲惨な潰れ方をしているだろう。
 地面を叩き肩を上げ、勢い良く恋慈は横にごろんと転がってその足から逃れ、本当に痛かったのだろう、股間部を押さえながらうつ伏せのまま数秒痙攣をした後、勢い良く立ち上がる。
「こ、この馬鹿尼! 子供が産めねぇ身体になったらどーすんだ!!」
「安心しろ、お前の身体じゃ元から産めない」
 意味の分からないキレ方をする恋慈に、しれっとした顔でアステマは正論で返した。
 何時から後ろにいたのか、何時の間に後ろにいたのか、などという疑問はない。アステマは当然の様に、そこにいた。

 袴姿と言うべきか、巫女装束と言うべきか、全て真っ青で統一された和服姿で。

 そのアステマの格好を見て、目が点になった。
 怒鳴るその状態から再び固まり、視線だけがアステマの姿を上から下まで舐めるように移る。
 いつものような、ラフな姿じゃない。
「教授、その姿って――」
「時が来てしまった。選べ恋慈」
 問いかけようとする恋慈のそれを潰すように、アステマが冷たい目を向けながら言い放つ。
 思わず問う言葉が引っ込んだ。
「私を離れ、正義と成すか」
 続くアステマの言葉に反応するかのように、恋慈の背後でがしゃん、がしゃん、と金属の重低音の足音が響いた。
 振り向けば、鎧軍団。
 ドールタイプと呼ばれる、魔法のみで構成された兵士達。
 恋慈の喉仏が上下した。
 再び教授へと目を向ける。
「私と共に、悪へ堕ちるか」
 真っ青な、巫女装束。
 それはアステマの戦闘服だと、恋慈は知っている。
 そして、それに袖を通す意味も、知っている。
 ふっと、恋慈は鼻で笑うように返す。
「教授と共になんぞ、冗談じゃねぇ。俺は何時でも “縁の為に” だ」
「よろしい」
 表情を変えずに恋慈に返し、アステマは一度溜息を吐く。
 がしゃん、がしゃん、とドールタイプが2体3体と次々に集まってくる。
 がしゃん、がしゃん。
 広大な草原。辺り一面藍色をした不思議な草葉の草原。
 青空の下、鋼の足音が響く、響く。
 アステマのすぐ後ろ、玄関を挟んですぐ後ろからは、雨の音が響くのに。
「地球にもう用はない、出るぞ恋慈。行くぞ兵士供」
 通りの良いその声で、静かな号令が下った。
 玄関の戸が閉まる。
 地球への戸が閉まる。
「時空管理局の監視ポットを全て破壊。その後広域結界で惑星を隔離。まずはこの惑星から頂くぞ」



 とある観察対象の惑星が、突如としてロストするという、そんな事件が起こる10分前の会話だった。












 フォンの伸ばした腕を弾いた、それを頭で理解するよりも早く、身体が動く。
 立ち上がる。そして、それよりも早く地面を蹴る。前に倒れそうな、不格好な走り出しである。
 あれ、私は何をして――
 そんな疑問が頭を過る時には、既に身体がフォンから逃げていた。倒れそうになりながら、転びそうになりながら、地面を蹴っている。
 何で逃げているのだろう。
 何で拒絶しているのだろう。
 せっかく、自分を殺してくれる人が現れたのに、何で逃げなくてはいけないのだろう。
 疑問が頭の中をぐるぐると踊っているのに、足は自然に動く。3方壁に囲まれて、逃げる道は1つ。身体はそちらへ逃げていく。
 止まれ。止まれ。逃げるな。
 せっかく殺してくれるのに。
 なのに。
 何で。
 ふう、と後ろから男の溜息。フォンの溜息。
「鎖、戒――成す、拘束」
 呟くようなフォンの声に、アリサの背筋がぞくりと冷える。
 声そのものは、聞き取れなかったのに。
 キィンッ、とまるで金属同士を打ち合わせたかのような甲高い音が響くと同時に、アリサの左足が何かに絡め取られたかのように引っ掛かる。
(( Magic crusher))
 続いてアリサの胸の、そう、その胸にある宝石から声が流れた。縁の声が。
 その声に応呼するかのように、ガラスを砕くような音がして、左足に感じた何かの感触が一気に掻き消える。
 が、最初に絡め取られた時に姿勢を崩してしまい、その感触が消えた時には既に身体が前に滑るように飛んでいた。
「ひゃうっ」
(( My companion――Float protection! ))
 転ぶと覚悟して、次に来るべき痛みに備えると、襲ってきた痛みは非常に軽いものになっていた。スプリングの良く効いたベッドへと倒れた感じ、と言えば良いのか、地面がヤケに柔らかいものに感じる。
 ぱちりとアリサは目を開ける。
 地面には、炎のような真っ赤な光で、円を中心とした幾何学模様の魔法陣。
 吐き気がした。
 これが何か、もはや頭が理解してしまっている。
 胃の辺りからくる不快感を、歯を強く噛んで堪え、アリサ自身を中心にして展開されているその赤い魔法陣を目に入れないようにしながら急いで立ち上がる。
「なるほど、良いデバイスです」
 声が、真後ろからかけられた。
 誰の声。
 フォンの声。
 逃げなきゃ。
 逃げるな。
 頭の中で二律背反の言葉がぶつかる。身体の動きが、立ち上がった姿勢のままびくりと固まり――その瞬間にアリサの後頭部ががちりとフォンの片手で掴まれた。潰される、そう思うくらいの力で。
「蛇、鎖、戒、縛――成す、拘束連塵」
 呟くようなその声に、再び金属同士を打ち合わせたかのような音が、今度は連続で数回聞こえたかと思うと、アリサの身体が雁字搦めに、何本もの文字通り光の縄で幾重にも拘束される。
 バインド。
 魔法を知る者ならば、そう呼ぶ者もいただろう。
 かはっ、と締めつけてくる光の縄のその力で、アリサの口から絞られるような悲鳴が漏れる。
(( Magic crus―― ))
「ふむ」
 宝石とフォンの声が、綺麗に重なった。
 後ろ頭を片手で掴み、そしてもう片方の手が宝石が喋るよりも、そしてフォンが鼻を鳴らすよりも早くアリサの胸元に手が伸びて。

 ブチッ、と、ネックレスの細いチェーンを、千切った。

「ぁ――――」
 何故か急に、身体の力が抜ける。
 光の縄で雁字搦めに拘束されているはずなのに、千切れたそのネックレスは、宝石の付いたそのネックレスは、簡単にフォンの手に落ちて。

 奪われ、た。

「意外と手間がかかりますね……」
 頭が、冷える。
 理由は分からない。
 ただ、ネックレスを奪われた事のみが、頭の中を占めた。
「あ、が」
 握り潰されそうな頭が痛い。
 引き千切られそうな身体が痛い。
 ああ、そうじゃなくても、吹き飛ばされて打った全身が、杭を打ち込んでくるかのように痛いのに。
「か――か――」
「……ん?」
「かえ――か――かえ、せ――」
 何をしているのだろう。
 何をしているのだろう。
 自分は一体、何をしているのだろう。
 身体を締め付けられて、頭を掴まれて、それでもフォンの方を向こうとしている。
 手が動かなくても良い。口でも良い、足でも良い。
 千切られ、盗られたネックレスを、奪い返そうと、している。
「か、えせ――返せ――返、せ――」
 もう良いじゃないか。
 ネックレス1つが何だと言うんだ。
 どうせ死ぬんだろうに。
 何を失くしたって、もう構わないじゃないか。
 無駄な抵抗なんかしなくていい。
 このまま彼は、自分を殺してくれるんだぞ。
 心が、ぎしぎしと錆び付いているアリサの心が、身体に命令する。もういい、ネックレスなんか奪い返さなくてもいい。
「返せ――わ、私の――」
 でも、何故だろう、何故だろう。
 身体が。
 諦めない。
 心に反論してくる。
 違うだろうと。
 何を失くそうと、それはもう構わない。
 構わない。
 が。

 縁への想いまで、失くす必要はない、と。

 その想いがあるからお前は死ねるのだろう、と。

 身体が訴える。
 心に訴える。
 錆びたアリサに、訴える。
「返せ、返せ、返せ、返して、私の、縁の、返して、返せ、それは」
 それは。
 そのネックレスは。
 縁から貰った、唯一の。
 縁を思い出せる、唯一の。
 宝物。
「良いですね」
 ぽつっと、フォンが漏らした。
 その言葉と共に、後ろ頭を掴んでいた腕で、アリサの身体を回転させるように横に弾く。独樂を回す要領か。
 ぐるんと180度身体を回され、足元を崩して尻もちをつき、回されたその勢いのままに身体が横に倒れる。
「う――ぅ、ぐ――」
 倒れて、でも、アリサの目はフォンを睨み上げていた。
 相変わらずの営業スマイル。嘘臭いと言うか胡散臭いと言うか、縁のにこーっとした作り笑いの方が何千倍も綺麗だ。
「死のうとしている人を殺すのは、趣味じゃないので……ええ、その目は良い目です」
 張りつけた営業スマイルで口にしたフォンの言葉に、アリサは心の何処かで安堵する。
 殺してくれる。
 それを望んでいた。だから、これで良い。
 そう思うのに、そう思うのが当然なのに、心の何処かで死ぬのは嫌だと駄々をこねる声がする。
 そして身体は、その安堵を全部否定してくる。
 死んで堪るか。
 死んで堪るものか。
 そう叫ぶ。
 もう良いのに。自分なんか死んで良いのに。
 それが縁の為なのに。
 縁が好きだから、好きで好きでどうしようもない位に好きだから。だから死ぬのに。それで良いのに。
 それを、拒む。
 身体が拒む。
「それでは――」
「返して!!」
 フォンの言葉を無視して、叫ぶその声は軽く出た。
 身体が痛い。それなのに、腹に力が入った良い声が出た。
「それは、私のだ!!」
 口が開く。
 勝手に開いて、勝手に叫ぶ。
 返せ、返せ。そのネックレスを返せ。
 デバイスだとか、魔法の品だとか、そんなのは関係ない。
 縁から貰った、それを返せ。
 にこりと変わらず営業スマイルを浮かべ、それでも肝が冷えるような目で見下ろし、フォンはげしりとアリサの腹を遠慮なく蹴り飛ばす。
 ごふっ、と息が逃げる。
 だが、アリサの目は、フォンを睨み上げたままだった。
「そうです、その目です。生き生きしている、人形じゃないその目です」
「変態!」
「よく言われます」
 靴底が、顔面を襲った。
 硬い。安全靴か何かだろうか。硬いゴムじゃない、鉄の感触。
 唇を切って、口の中まで切って、思いっきり後ろ頭を打ちつけて、鼻血が出た。痛いという感覚はない。ぶつけた場所、切った場所、襲うのは熱いという感覚だけ。
 蹴られたと言うよりも、踏みつけられたという状態だ。
 頭を踏みつけられて、それでも立ち上がろうと、身体がもがく。一生懸命になって、無駄な努力を続ける。
 真っ白だった制服が、雨を吸ってゴミを吸って、すっかり汚れてしまっている。破けている箇所もある。
 でも、もがく。
 縁から貰った、その宝物を返せともがく。
 何で自分の身体がこんなに動くのか、何でこんなに懸命なのか、頭ではまるで理解できないが、身体が動く。
 何で。
 何で。
 ああ、何で、何で今、こんな状況だというのに。

 とても小さくて、それでいて世界で一番大きい、縁の背中を思い出すのだろう。

 能面のような、あの面じゃない。
 にこーっとした、あの仮面じゃない。
 花の咲いたような、あの笑顔じゃない。
 ご飯を食べている時の姿じゃない。授業を受けている時の姿じゃない。買物をしている姿じゃない。運動をしてる時の姿じゃない。帰り道を一緒に歩く時の姿じゃない。
 思い出すのはただ、うっすらとした煎茶の香りと、汗で湿った感触と、暖かなその体温と。

 背負ってくれた、小さな背中。

「――た、たず――け」
 踏まれても、口が開く。声が出る。
 酷い声だ。
 でも止まらない。
 もう止めろと、そう止めていたはずの心の声が、既にない。
「穿、雷」
「え――に、」
「成す、召雷」
 靴底が離れた。
 そう感じた次の瞬間、頭まで突き抜けるかのような衝撃にアリサの身体がびくりと跳ねる。
 心臓が麻痺しそうな衝撃。まるで電気ショックをいきなり押し当てられたかのような感じであった。
「――ぁっ」
「剣、跳――成す、一閃」
 止まりかけた心臓が思い出したかのように動き始め、続いて吐き出し忘れた息が口から出た途端に、腰を殴られたような熱さと共にアリサの身体が宙を舞う。
 くるくる、くるくる、と。
 痛くない。
 熱いだけ。
「鎖、抑――成す、縄鎖」
 続いて縄のような、鎖のような、そんな紐状の何かに首を絞められる。
 勢いをつけて吹き飛ばされていたところへ紐が掛かり、当然の様に首が絞まる。蛙が潰れるような嫌な声がアリサの口から漏れ、一瞬意識が跳び――
 コンクリートの壁に背中を叩きつけられて、目が覚める。
「ぐ、ぷ――」
「音、撃――成す、衝撃」
 壁に叩きつけられて、地面へと落ちるよりも早く、再び横殴りの熱さ。
 再び身体が壁へと叩きつけられる。
「――成す、衝撃」
 また熱さ。
 そして叩きつけられる。
 地面じゃない。壁に。
「――成す、衝撃」
 視界が赤く染まった。
 自分が今、右か左、上か下、どちらを向いているのかが分からない。
「――成す、衝撃」
 今度は顔面から行った。背中じゃない。
 血を吐いたのは分かった。
「――成す、衝撃」
 左肩から、ありえない音が骨と筋肉を伝わって直接脳に響く。
 あまりの事に再び意識が跳びかけて、コンクリートの壁じゃない何かに右肩が叩きつけられた衝撃に覚醒する。
 壁じゃない。今度こそ地面だった。
 視界の左半分が赤く、今の自分がどういう状況かも把握できないが――アリサの足は、自分の身体を立たせようとしていた。
 まだ動く。まだ動く。この身体は、まだ動く。
「ず、げ――だ、た――」
「良いですね、耐えて下さい」
 若干嬉しそうな、そんな狂った声がしたが、それは理解できなかった。
 そもそも誰の声かも分からなかった。
 分かるのは、赤い宝石のついた、大事なネックレスの事。
 そして、縁の背中。
 それだけ分かれば、この身体は、動く。
「解除」
 ふっと、身体を絞めつけていた何かの感触がなくなる。
 光の、何だったかのような気がする。
 気がするが、気にならない。
 身体を絞めるのがなくなったのだ。立たねば。
 そう言うかの様に、自由になった右腕を地面に立て、悲鳴を上げている身体を起こそうとす
「鎖、抑――成す、縄鎖」
 起こそうとしたその右手が、何かに絡め取られる。
 紐のような、またしても紐のような。
 鋭く深い熱さを感じた瞬間、右肩が引き抜けるかのような勢いで右腕が吊り上げられ、そのままもの凄い力で一気にアリサの身体そのものが空中に吊るされる。
 木に吊るされている訳ではない。本当に何もない所に、吊るされている。
 右腕の、紐のようなもので絞めつけられるその手首に、アリサの全体重がかかる。千切れそうだ。
「え、えに――えにし――」
 男がいる。
 誰かが思い出せない。
 でも、アリサの右目はその男を睨んだ。
「えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――」
「雷」
 男が左手をアリサに見せつけるようにして向ける。
 ばちっ、とその手に電流のようなのが走る。
「えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――」
「破」
 続いて白く光り、更にばちり、ばちり、と電気が走る。
「えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――」
「滅」
 その左手をゆっくりと、男は背中に隠すように下げる。
「えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――えにし――」
「――成す」
 とん、と軽く1歩だけ男は踏み込み。
「助け、て」
「光穿」
 声が重なった。
 かすれたアリサの声と、呟くような男の声。
 自分はきっと、都合の良い事を口にしている。
 あれだけ酷い事をして、あれだけ酷い事を言って。
 それでも、縁があの約束を果たしてくれるのを何処かで期待している。
 そんな資格はもうない。
 分かっている。
 でも、口は勝手に名前を呼ぶ。
 あの宝石の。
 あのネックレスの。
 本当の、持ち主。
 好きな人。
「え、に――」












「あい………分かった!!」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 あけましておめでとうございました。うん、遅いですね。
 某所への小説投稿を終えて一息のクロガネです。まあ落ちるでしょうが。
 ネタその物はクロガネは気に入ってるのですが、出来上がった小説はイマイチなのですよ。

 ま、それは置いておいて。

 第7章はもう1回だけ続きます。分割ミスったんです。仕様です。
 クロノ君、地味にはやての悩みの根本については一言も触れていないといません。仕様です。
 フォンの野郎は本性でもですます口調なのはデフォです。仕様です。
 20Kgの米を10日で食べるには1日2Kg食べる必要があって、当然ながら炊いた時の水の分量を考えると絶望的な数字になります。仕様です。
 クロガネは来年度から昇進することになりました。鬱です。
 餅を食べるなとは言わないけれど餅を喉に詰まらせるのは止めてくれと思う新年でした。ご愁傷です。
 適当に買ってみたスオムスいらん子中隊が意外と面白いです。罠です。
 クロガネが白衣の天使様1年生だった頃と比べると癌が増えた気がします。生活習慣には心がけるべきです。
 病院全面禁煙に未だブーたれる阿呆の口に禁煙ガムを突っ込んでやりたくなります。マジです。
 民事訴訟裁判告知の嘘メールを先日晒して笑いものにしたところ、エロサイトからの書き込みがぱったりと消えました。謎です。

 “魔法の使えない魔法使いの魔法” における主人公はアリサです。
 仕様じゃなくて本当だよー!!
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9件のコメント

[C410] なのなの居ないの

待ってました~♪
サドっ子おじ様本領発揮、デバイスちゃんも喋れてご機嫌です。
そして空気ですらないなのはちゃんに愛を(笑)

次回はスーパー縁タイムを期待しつつ・・・
  • 2009-01-25
  • 投稿者 : ぎるばと?
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[C412] なのはAir

〇ぎるばと?さん
 おじさんなのにサドっ “子” とは如何に。
 空気言われるとフェイトもすずかも……うん、休憩中という事で。
 縁はアレです、主人公じゃないので。
  • 2009-01-26
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C413] ぽりん

え?エロい事しないの?
クロガネさんなら、やってくれると信じてたのに!
  • 2009-01-27
  • 投稿者 : あれ?
  • URL
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[C414] とりあえずクロノは主語騎士たちに殴られるべき。グーで。

スオムスいらん子中隊はおもわずアウトォオオオオ!!って言いたくなりますよ。面白いです、はい。

とりあえずがんばれ縁。
そんなこと言いながら、更なる暗黒面を求めている自分が汚い。
あんこくで主人公一回死亡とかありそうでコワイデス。

あとクロ助、荒療治すぎる。小学生だぞオイ。

40話が二つになってますよ。
  • 2009-01-27
  • 投稿者 : TFJ
  • URL
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[C415] コメントありがとうございますー

〇ぽりんさん
 し、しないよ!
 クロガネは健全な叔父さんだから、そんなエロなんて書かないというか今まで一度も書いたことないじゃないですかあははははははははは

〇TFJさん
 どこまで暗い話が好きなのかと。クロガネは明るくきゃははうふふな話が好きなのです、はい。嘘じゃないよ?
 クロノはあれです、年上の女性や芯の強い女性ばっかりが周りにいたので繊細な悩み相談が出来んのですよ。今思いついた。
 スオムスいらん子中隊面白い。話が進むにつれてハルカの壊れようが凄く好み。

>40話が二つ
 おうちっ、指摘サンクスですー。
  • 2009-01-28
  • 投稿者 : クロガネ
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[C416] 蘇れアリサ

フォンさんやりたい放題、あれですか快楽殺人者は、相手に怯える・命乞いする等のアクションが無いとつまんないとかいう奴? 自暴自棄でどーにもなれ状態のアリサは嬲っても面白くないのかな? 

仮にすずかに同じこと頼んだ場合、(ほぼ)理想的に性的且つ猟奇的に滅茶苦茶にされてるだろうから、一概にどっちがマシとも言えませんがね。

  • 2009-01-30
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C417] それも不死鳥の如く

〇ミヅキさん
 快楽殺人というのは2通りあって、殺すのが目的の快楽殺人者と、殺すまでの過程が目的の快楽殺人者があるのです。フォンの野郎は後者ですね。怯えたり抵抗したりしてくれるのが堪らなく好き、というドSもこの世にいるのですよ。クロガネのことじゃないよ?
 すずかに頼んだら――ほぼ、と言うか間違いなく理想的に “無茶苦茶” にされるでしょう。しかも喜んで。
  • 2009-01-31
  • 投稿者 : クロガネ
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[C419] デ、デバイスさぁーん

二回目のコメント。
ちょっと読み返してたらデバイスの言葉づかいがガガガッ、ガガッ、!!!
口が悪い。作ったのは縁なのか!?
いや、持ち主の危機にしても。最近のインテリジェントデバイスはコワイデスネ。
  • 2009-02-04
  • 投稿者 : TFJ,
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[C420] セカンドいらっしゃい

〇TFJさん
 分かる人には分かる、デバイスの毒というやつですね。さり気なく地獄に堕ちろとか言ってますし。
 作ったの?
 さて。
  • 2009-02-05
  • 投稿者 : クロガネ
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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