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-件のコメント

[C357] 想定の範囲外

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(゜Д゜)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリサ(゜Д゜)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣けてきた。ちょ、早く助けてあげて!
すずかじゃなんくて、縁だなんて!傷口に塩を塗ってるもんですよ!

アリサぁぁぁ!!って感じですよ、今の心境。
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : りんご
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[C359] 刑法177条

アリサ・・・青春の情動(ムラムラともいう)が最悪の形で発動してしまいました。こりゃ反転した(病んだ)時が非常に怖いな。そしてすずかにバレた暁には・・・ガタガタブルブルil||li(つд-。)il||li
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C360] うほ

えっと、まぁ、なんだ、あれだ、要するに…「性欲をもてあます」だな。


そんなアリサに萌えた
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : ぽりん
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[C361] 縁ちゃんがつまみ食いされたようです。

アリサちゃん、暴走。確変入りました~♪
ん~、途中で止まればよかったのに、やっちゃいましたね~・・・
頑張れ、縁ちゃん!後は追いつけばフラグ成立だ!(えろげ的な

あと頑張った、無口なデバイスちゃん。
君の活躍に期待してます。
オールハイル、らぴゅーた!
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : ぎるばと?
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[C362] コメントありがとうございマウス

〇りんごさん
 仮にすずかにしたとしたら、ここまでショックは受けなかったかも。
 アリサァァァァァ

〇ミヅキさん
 すずかにバレた暁には……こう、こきゃっと。
 しかし、これが青春だったら今の若者皆死んでるなぁ。

〇ぽりんさん
 蛇アリサ、性欲を持て余す。
 これは……萌えるのか?

〇ぎるばと?さん
 うん、これで色々なフラグは立ったんですよ、一応。
 しかしこのデバイス本当に喋らない。
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : クロガネ
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[C363] 病ンデルルート突入

うはぁドロッ泥、胸焼けが凄まじい。
ドロドロを通り越してドゥルドゥル、ドゥルルルルルルルー。

カリフォルニア州が同性婚禁止しましたね。

そして、もはや誰も『健全』という単語に反応しなくなった。
もういいか認めましょう健全ですね、うん、健全健全。
捲喘。まくってあえぐ。

あと、はやて。
大丈夫、君はかなりテンションが高くて珍妙な子供ですよ。
シグ南無は、どうしてすぐばれることを隠そうとするかなぁ。
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : TFJ
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[C364] 健全?なにそれ、おいしいの?

抜けれない鬱のトンネル、随所に配置されたエロス、後やることはアリサが百八十度反転して縁の胸を育てることですね。百合?セクハラ女?「まとめてかかってこい」そんなノリですね。
  • 2008-11-13
  • 投稿者 : オサフネ
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[C365] アリサ大暴走

やっちまったな~

だがそれがいい!



もう鬱すぎる展開ですね
ですがそろそろ上がるかなと淡く期待……

もういっそ開き直って縁堕としちゃおうよアリサ


はっ!まさかこの後縁がアリサ追いかけて再びフラグ成立か!
  • 2008-11-13
  • 投稿者 : ルファイト
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[C367] コメントありがとうございマウス

〇 TFJ さん
 鬱健全純愛泥沼ストーリーですから。健全だよね、ね (ノ△・。)
 ホモフォビアの風当たりも凄く強くなってますね、今時期。まあ、この話はフィクショ(ry
 はやてはアレですね、この前にUPした小話を読む限りは確実に変な子ですね。

〇オサフネ さん
 (ノ△・。) ケンゼンダヨ
 しかし育てるも何も、クロガネの趣味で大平原にしてしまったソレは育てられるのか……!?

〇ルファイトさん
 やっちまった。
 堕とそうとしたら縁は抵抗もなく堕ちるだろうから、話としては面白味がないと言うか何と言うか。
 フラグはどうでしょう。ふふふふふ……
  • 2008-11-14
  • 投稿者 : クロガネ
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[C369]

素敵!
これはいい鬱展開。アリサ、あんまり溜めすぎちゃったもんだからあふれちゃったんだNE!

……うん、正直かなり興奮したんだぜ。


さて。

はやて、シグナムにいらない子扱いされる。の巻。
思うところあって、なのかうっかりなのか。どちらにせよ、はやて的にはショックでしょうね。役に立てないという自覚は前からあったんでしょうが。

ん、これからがますます楽しみですね。
  • 2008-11-14
  • 投稿者 : 春都
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[C371] コメントありがとうございマウス

〇春都さん
 いや、これを素敵と申されるのか!?
 クロガネにはエロを書く才能が余りありませんので、これから期待されても困りますが。
 シグナムの件は、うん、スルーで。
  • 2008-11-15
  • 投稿者 : クロガネ
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[C372]

折角少しはいい方向にむかいはじめたかな?と、少しでも思った自分が間違っておりました 男たちに誘拐された辺りからおかしくなってしまわれたアリサお嬢様(まあ、仕方ないですが・・・) いったいどこまで堕ちてしまわれるのでしょうか?(いっそ縁を・・・イエ、ナンデモアリマセン)
  • 2008-11-19
  • 投稿者 : ナルガ
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[C373]

書き上がってから気付いた ↓見づらい・・w
  • 2008-11-19
  • 投稿者 : ナルガ
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[C376] コメントありがとうございマウス

〇ナルガさん
 堕ちる堕ちる、良い方向に向かいかけても堕ちる堕ちる。
 と言うか、皆さん何でそんなにアリサに縁を調教させたいのかと小一時間
  • 2008-11-21
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 39

 アースラのブリッジは戦場だった。
 オペレーター席には何故か新人であるガンザまで詰めているし、管理局のベースへ停泊中だというのに第2次戦闘待機並にブリッジに人がいるし、ブリッジに入るための扉は開いたり閉まったりを引っ切り無しに繰り返しながら人の入れ替えを行い、艦長であるクロノの周りには大小様々なウィンドウが四方八方360度で張り巡らされていた。
 登校前に軽い用事でアースラに寄ったのは、不正解だったのかもしれない。ブリッジに入ったのは良いのだが、ついこの間まで 「暇だねぇ」 と姉代わりのオペレーターがお茶を飲んでいたくらいに平和な光景が一変していた事に呆気を取られ、ブリッジに入ったフェイトは一瞬状況が分らずに固まる。固まるが、フェイトが入って閉まりかけていた扉が再び開いて駆け足で入ってきた……制服から見て管理局本部内の情報管理部の人間だろうか、見覚えのない人が入ってくるので、フェイトは慌てて退いて場所を作る。
 よく見てみれば、ブリッジにはアースラスタッフではない人々の姿がちらほら見える。何だろう、この状況。
「3番の資料上がりました―!」
「議事録回ってきました! 1時間内に目通して下さいってことです!」
「5番までの資料上がってませんかー!?」
「船武装の申請通過です! 3次解除です!」
「3番回してー!」
「情報管理から資料来ましたー!」
 以前、無限書庫の整理で一番忙しい時期に空気も読まず自分の調べ物をしたいという理由だけで訪れた時、確かこんな状況で、自分独りが随分と場違いなのを感じてそそくさと撤退した記憶がある。そんな事を思い出しながら、フェイトは走る人を避けながらクロノの席へと近寄る。
 もはやウィンドだらけで別空間が出来ている艦長席。いったい幾つのウィンドウを開いているのやら。それでも、その大量に表示されているのを全て読んで処理しているその手際は、流石としか言えない。
 その手際で仕事をこなしているクロノを見て、ちょっとフェイトは気が引ける。
 これは話し掛け辛い。
 取り合えず状況が知りたいので周りを見て……エイミィと目が合った。
 何故か驚いた表情を向けられる。しかも合ったその目の下には、とても濃い隈が。
「あれ? フェイトちゃん、今日は早いねぇ~」
 顔は疲労が丸分かりな状態なのに、喋ったその声のテンションは最高潮である。ちょっと怖かった。
「あの、エイミィ、もう7時近くだよ」
「ああ、何だ もうそんな時間なんだ。参ったねこりゃ、晩ご板食べてる時間ないや」
「……あの、朝、なんだけど」
「あはははは、ヤだなもう、フェイトちゃん冗談上手いなぁ」
「時計、見てみる?」
 あははははは、と若干壊れ口調のエイミィの笑い声。不気味というそれを通り越して、不憫である。
「………何だ、結局ハードワークな徹夜かぁ……………」
 しかし一転、口から魂が抜けたようにエイミィがぼそりと怪談話でも始めそうな低音の呟き声を漏らした。ちょっと引いた。
 とは言えクロノには話し掛け辛いので、エイミィの席に近寄りながらフェイトはストレートに質問する。
「エイミィ、何があったの?」
「……聞きたい?」
「あ、忙しいなら良いよ。仕事し――」
「休ませて、じゃない、是非説明させて!」
 本音が漏れている。
 とは言え、ここまで来るとフェイトも何となく忙しくなった理由というのは見当がつく。
 アースラチームは、看視者及びドールタイプの事件を担当しているのだ。忙しくなるとしたら、事件について何か進展があったか……新たな被害者が出たかのどちらかしかない。
「昨日の昼ね、以前看視者に奪われたロストロギアが戻ってきたの」
 一息つくように背凭れに体重を預けながら言うエイミィの台詞に、フェイトはほっと安心するように溜息を吐く。良かった、被害者が出た訳じゃないんだ。
「看視者に奪われたロストロギアって言えば、あれだよね、ヴィータが回収してた蒼天の書」
「いや、うん、まあ、一応ヴィータちゃんの名前は公式には伏せられてるんだけどねぇ」
 伏せられているのだが、その名前は広く知れ渡っている。
 夜天の守護騎士、そして今は絶えていると言っても過言ではない古代ベルカ式の騎士という飛び抜けて特殊な前歴を持つ存在のせいもあるのだが、看視者の事件やドールタイプの襲撃事件において今現在最も重症を負った管理局員がヴィータであるからだ。片腕を消失、全身あらゆる所に裂傷斬傷打ち身等々、更に体重の5%を軽く超える出血に片目を潰され、内臓機能も一部停止している程に内側もやられていた。人間であれば即死である。
 それに重なってロストロギアを奪われたのだ。ヴィータの名前は大変不名誉な方向で広まるに決まっていた。
「でも、それが戻って来たって、どうやって? また看視者が現れたの?」
「ううん、大胆にも手渡しで」
 返されたエイミィの言葉に、フェイトは一度黙った。
 看視者が現れたのかと訊いたのに、手渡しで、と答えられても反応に困る。看視者が手渡しに来たのかとも思えるが、最初にはっきり否定している。
 看視者じゃない、他の誰かが手渡しで返してきたのか。
 と、なると。
「恋慈さんか、教授さんだね?」
「ん? 教授さん?」
「アステマって言う人。恋慈さんと、恋慈さんの妹がそう呼んでるの」
「ああ、そうなんだ。そう、そのアステマって人が渡してきたの」
「恋慈さんは?」
「一緒に。報告だと小型の銃火器を持って、アステマを護衛しているようだったって」
 小型の銃火器。
 いつぞやの屋上で見た、あのオモチャみたいな小さい銃だろうか。人差し指を銃身の側面に当て、中指を引き金に添えて構える、あの変な銃。
「銃火器を持って、っていう報告があるなら、その銃を確認したんだよね。向けられたの?」
「うん。身柄を確保しようとしたらしいんだけどね、その時に2丁突き付けられたって」
 ふぅん、とフェイトは歯の奥に物が詰ったような微妙な返事を返す。
 違和感がある。
 アステマが蒼天の書を持ってきた。しかも手渡しで。
 身柄の確保が出来ていないのなら、多分地球でだろう。地球の日本にいる限り、日本国籍を所持しているアステマと恋慈の身柄はそう簡単に確保できるものではない。
 地球でアステマから手渡しで受け取れる管理局の魔導師と言えば、なのはやはやて、そして自分達。
 昨日の昼と言われると、登校していた なのはとはやては除外。クロノは相変わらず仕事中毒で帰ってないし、リンディはフェイトより早く出勤している。残るとしたらはやての家族、ヴォルケンリッター達か。
 では、アステマはヴォルケンリッターの誰かに手渡しで蒼天の書を渡したと。
 何故手渡し?
 蒼天の書を持っているというのは、看視者と関わり合いがあるという証拠になりかねない。もちろん拾ったとかもあるだろうが、異世界で落したのを地球で拾えるとは思えない。
 はっきり否定していないとはいえ、看視者との関わり合いを認めるような事を、何故今更したのだろうか。輸送とか、ポストに突っ込むとか、そういう事だってできたはずなのに
 ……いや、違う。
 そうじゃない。
 それは違和感じゃない。ただの疑問だ。
 違和感は、もっと違う点にある。

「看視者は、好戦的じゃないのに……」

 その違和感を口に出してしまえば、それは一層濃く影を落とした。












 小雨が降り続け、分厚く重苦しい曇天が空向こうにまで広がる空を、アリサは傘から覗きながら重く溜息を吐く。学校に行きたくない。そんな弱音が口から出そうになってしまう。
 ついこの間まで、学校に行くのをとても楽しみにしていたのに。
 今日もまた、休み時間になるたびに逃げなければいけない日になるのだろうか。
 いや、いつまでも逃げられる訳はない。いつかは説明しなければならない。
 それが、嫌だ。
 この気持ちを口にしなければいけないのか。すずかに対して言ったように、あんな気持ちになりながら再び口にしなければならないのだろうか。
 この泥みたいに汚い想いを、見せねばいけないのか。
 それで縁を傷つけているのを正当化できる訳でもないのに。
 あのまま友達面を続けて、そして我慢しきれなくなった醜い想いで縁を汚して傷つけるよりもマシなんだと、そう自分に言い聞かせたって、今の縁が傷ついているのは間違いないのに。
 どう転んでも、“好き” という呪いのような想いは、縁を悲しませるのに。
 分かっている。
 最初から自分が悪いのだと分かっている。
 それで全然関係のない縁が傷ついているのだと分かっている。
 分かっているが、どうしようもなかった。

 昨日の夜、また夢を見たのだ。

 自己嫌悪しか後味を感じない、一時の甘い甘い淫夢を。
 一度体験すれば、二度目は比較的冷静に対処できた。結局夢の中では流されて、思い出すのは縁に対して大変失礼極まりない幻想を魅せられ、残ったその身体の火照りに対する、その対処が。
 “好き” という気持ちは、もっと綺麗なものだと思っていた。
 “好き” という想いは、もっと純粋なものだと思っていた。
 思っていたのだ。
 こんな自分が嫌いになるくらいに醜い “好き” が胸に湧くまでは。
 相手が男なら良かった。
 自分が男なら良かった。
 いや、自分に立場なんてなければ、女同士でも良かったんだ。
 対処が終わって、泣きながらそんな逃げの考えがアリサの頭をぐるぐると回り続けた。
 逃げと言うより、自己弁護かもしれない。誰がどう見たってアリサ・バニングスは悪人でしかないのに、必死で言い訳しようとしている。最低だ。
 溜息を吐く。溜息で幸せが逃げるなら、きっと今の自分は幸せの大放出中に違いない。
 そこでふと、小雨がアスファルトを叩く音に混じって、どこかから猫がにゃーにゃーと悲鳴のようにあげる鳴き声がした。すずかのせいだろうか、その猫の鳴き声は助けを求める時の声なのだと、家に犬しか飼っていないアリサでも何となく分かった。
 自然に足が向いた。

(( Search ))

 猫の鳴き声を頼りに歩き、その鳴き声の主は自分でも驚くくらい簡単に見つかった。
 雨水を流す道の側溝。その溝を塞ぐコンクリートレンガの穴に足を取られて身動きが出来なくなっている、黒い毛並みの小さな子猫。雨に濡れながら、必死に鳴いていた。
 その子猫の傍らにアリサは座り、穴にすっぽり捕まっている子猫の足を見る。
「………これはまた」
 どうやって足を突っ込めばここまで固定されるのだろうかと言うくらいに、その足はがっちりとホールドされていた。無理に引き抜けば大怪我は間違いないだろう。
 しかし、見つけてしまった以上は無視できない。
 コンクリートレンガが動かないだろうかとアリサは手をかける。
 ぬちゃっとした感覚。
 あまり気にならなかった。
 わざわざ雨の日に何やってるんだろうとか、これはかなり汚いんじゃないだろうかとか、そんな考えは少しも出てこなかった。
 困っている。
 だから助ける。
 間に入る理由は少しもなかったし、それに伴う嫌な事なんて少しも苦に思えない。
 きっと、縁もこんな感じで助け回ってたんだろうか。
 ちょっとだけ苦笑する。自分なら流石に車に轢かれる状態なら考えるだろうなぁ、と。
 これは縁に毒されているのかもしれない。まあ、自分は馬鹿なことに縁のそういう所も含めて惚れてしまったので、嫌だとは思えない。惚れてしまった自分は嫌な奴だと思うだけで。
 コンクリートレンガに軽く力をかける。
 びくともしない。
 無理かな、と思いつつ今度は思いっきり力をいれた。

(( The Power ))

 ごりっと、思いの他簡単に動いてしまった。
「うわっと」
 反動で転びそうになるのをバランスを取りながら堪える。どこか引っ掛かっていただけなんだろうか、コンクリートレンガその物は結構軽い物だった。
 こういう物なのかな? と思いつつ、アリサは急に足が自由になって戸惑っているような子猫を抱え上げる。
 濡れた毛玉を抱くような物で、制服が濡れる。だが、やはりそんなに気にならない。
「はい、今度は足元も気をつけなさいよ」
 頭を撫でると、子猫はにゃー、と小さく鳴く。やっぱり猫も可愛いなぁ、と思ってしまう。
 随分と人慣れしている猫だ。首輪はないが。
 しばらく頭を撫でてから、そろそろ離そうとアリサはゆっくりと腰を下ろして―――突然、子猫の毛がぶわりと逆立った。
 濡れていても分かるくらいに。
 ぱしゃっと、濡れたアスファルトを踏む小さな足音。
 警戒心丸出しで、子猫が鋭く威嚇の声を上げる。

「………おはよう、バニングスさん」

 かけられる声。
 続いてアリサの毛が逆立つ。
 心臓を素手で握られるような、そんな気分。確実に心臓は1回分の鼓動をボイコットしている。
 シャーッ、と子猫が鳴く。
「何か猫の鳴き声がしたと思ったんだが、バニングスさんが助けてくれたんだな。よかった、随分と切羽詰ったような鳴き声だったから、何事かと思ってしまった」
 少女の声にしてはやや低い、そして恐ろしいくらいに透き通る、綺麗な声。
 顔が上げられない。
 一度サボった心臓が、そのサボった鼓動分を取り戻そうとしているかのように一気に動き出す。駄目だ、顔が赤くなりそうになる。
 傘を下げ、顔を下げ、自分の顔が彼女から見えないようにする。
「バニングスさんは今から登校なのか? よかったら一緒に―――」
「何の用よ」
 切り返したその声は、硬く、汚い声になっていた。
 ひゅっ、と息を呑むような呼吸の音と、子猫の威嚇する鳴き声が重なった。
 こんな時でも、そしてあれだけ酷い事をしても、その声を聞く事が出来て嬉しいと思える自分が嫌だ。まだ話し掛けてもらえると喜んでいる自分が嫌だ。
「あ……うん、バニングスさんに会ったから、挨拶をしなくてはと」
「オハヨウゴザイマス」
 これで良いんでしょ、と言わんばかりに突き放した挨拶。
 沈黙。
 さぁぁ、と雨の音が嫌に耳につく。先程まで全然気にならなかったのに。
「…………うん、おはよう」
 遅れて、返された。
 元気は、ない。
 その声に胸が痛んだ。
「バニングスさん、良ければ一緒に行かないか?」
 その元気のない声で誘われる。
 顔を上げたくない。見たくない。悲しいそうにしているであるその顔を、目に入れたくはない。
 ぱしゃっと、足音。
 1歩近付く音。
「――いっ!?」
 突然鋭い痛みがアリサの左親指に走る。まるで濡れたアスファルトを踏むその音に反応したかのような痛みだった。
 予想もしていなかった痛みに反射的に子猫を抱く腕を緩めてしまうと、しゃーっ、と威嚇するような鳴き声と共にアリサの腕の中からその子猫がするりと逃げる。
 着地と共にアスファルトを蹴り、素晴らしい瞬発力にて脱兎の如く逃げ出す子猫をアリサは追う事なく見送り、ふんっと負け惜しみのように鼻を鳴らしてから立ち上がる。
「相変わらず、動物には好かれてない――」
「だ、大丈夫かアン、バニングスさん!?」
 皮肉を言い終わる前に、慌てたようなその声に潰された。
 へ? とアリサは素で顔を上げる。
 その顔を確認するよりも、しまったと己の迂闊さを呪うよりも何よりも早く、アリサの左手が取られた。
 縁に、掴まれた。
 呼ばれかけたニックネームに、ドキっとする。
 真っ正面から合わせられたその瞳に、ドキっとする。
 吊り目で猫目で三白眼で、美容院なんて存在すら知らなさそうな短く乱雑に切られた漆黒の髪で、低い身長と合わさって更に幼く見えるその顔に、小雨とは言え雨なのにうっすら香る煎茶の匂い。
 凄く久しぶりに、“縁” を目の前に感じる。
「噛まれている。痛くはないか?」
「あ、う、うん」
「なら、手当てを……ああ、ちょっと待ってくれ」
 つい、普通に返事をしてしまった。
 間近な縁の存在が、握られた左手が、香るその匂いが、ごっそりとアリサの思考能力を奪っていた。
 いけない。
 そう思い直したのは肯いた後で、縁が掴んだアリサの左手に目線を落した時で―――

「ぁ――む」

 子猫に噛まれた親指を、縁がその口に含む直前だった。
「―――――――――っ!!」
 ワンテンポ遅れて、アリサの肩が見事にびくんと跳ねる。
 縁のその行為はアリサの脳内を漂白するには十分な行いだった。
 かぷ、と親指を甘噛みされ、ぺろぺろと優しく傷口に舌が這う。ちゅぷ、と一度だけ艶めかしい音が確かに聞こえた。
「ん……ちゅ、ん、んん……」
「あ、な、な、ななななななっ!?」
 指を舐められていると、そう分かった途端に顔へと一気に血が昇ってきた。
 なにを、なにを、なにをしている。ああいや、ゆびをナメナメしてくださっているのはわかるのだけれどもとつぜんというかこころのじゅんびができていなかったというかうれしいというか、ちくしょうはなぢがでそうだしんぞうがうるさいこんなじょうきょうでよろこんでしまうなんてヘンタイじゃないのかとうるさいうるさいうるさいしんぞうがドキドキドキドキとすこしはしずかにしてくれとまってくれたってかまわないいやとまるとシんでしまうじゃないか、とりあえずえにしにやめさせないとやめさせないとやめさせないとああでももうすこししていてほしいってちがうそうじゃないなによろこんでんのよヘンタイ、えにしとはともだちじゃないんだからこんなにシてもらうぎりはないわけでここはこのてをふりはらうべきであってああえにしのくちがあったかくてきもちいいしなめかたがなんかすごくすごくすごくああああああああああああああああああああああああああああああ
 血が昇りすぎて逆に貧血を起こしたように頭がくらりとする。まるで考えがまとまらない。
 ああ、これは夢なのだろうか。もしかしたら今朝の夢の続きを見ているのかもしれない。
 そんなアホな考えすら、アリサの頭の中に浮かんではパニックを起こした感情に流される。
 あ、とか、な、とか日本語として成立していない言葉を壊れかけのラジオのように漏らしているだけのアリサの顔を、ちらっと縁は上目遣いで見上げる。
 かなりキた。
 上目遣いはアリサの理性に対してダメージが絶大であった。
 ぱっと、縁がアリサの手を離す。それでも甘噛みする口を離さないので、ぷらんとアリサの左手が縁の小さい口からぶら下がっている状態になる。
「ん……んむ、にゅ」
 手を離すと、縁は傘を持ちながらも器用に背負っていた鞄を手に取り、傘を首に掛けるようにして鞄の中を漁りはじめる。
 教科書とノート、それから見慣れた筆記用具の入った小さい鉛筆入れに混じって、鞄の中にあった銀色の頑丈そうなペンケースのような箱を取り出す。傷口を舐め回しているままで。
 鞄を再び背負いなおしてから、縁はその銀色の箱を開ける。
 見るからに毒っぽい蛍光色の液体が入ったアンプルのような物が3本と、それからよく分からない器具。そこに一緒に入っていた小さな小瓶とバンソウコウを縁は取り出し、そして箱は閉じて強引にスカートのポケットの中へとねじ込んだ。
 あの液体は何だろうかとか、あの小瓶は何だろうかとか、いつもだったらそれくらいの疑問はアリサの頭に浮かぶのに、今はそんな余裕がまるでない。それくらいに混乱していた。
「ちゅ、ん……よし、後は拭いて」
 小瓶とバンソウコウを片手で持ち、アリサの手を取って縁は口を離した。濡れたその指が、かなり艶めかしく思える。
 自分のその唾液で濡れた指を見て、アリサの目が一気に広がる。下腹部に、きゅんときた。もう自分は駄目かもしれない。
 その指を縁は制服の袖でふきふきと丁寧に唾液を拭き取る。万年冬服だから出来る行為である。今時期、縁以外に冬服を着ている馬鹿は見ない。
 拭いてから、縁は持っている小瓶を開けて数滴傷口に垂らした。
 軽く痛みが走る。消毒液だろうか。
 それから縁はすぐに準備していたバンソウコウをぺたりと貼り――20秒以内の出来事だった。かなり手馴れていらっしゃる。
「はい、終わりだ。これですぐに治る、はずだ」
 にこーっと縁が笑顔を向けてきた。
 花の咲いたような、あの極上の笑みではない。
 だけど、縁に酷い事を言ったあの日から、まだ3日も経っていないのに凄く久しぶりに思える、無理のない笑顔だった。

 どん、と、気がつけばアリサは縁の肩を掴んで、近くの壁に押しつけていた。

「ふっ――う、ば、バニングスさん?」
 壁に押しつけられた一瞬、息に詰ったのか苦しそうな表情が見え、それからすぐにきょとんとした表情で見上げてくる。
 傘が落ちる。
 雨に濡れる。
 止められなかった。

 縁のその唇を、アリサは己の唇で強引に塞いで、いた。

「んんっ!?」
 くぐもった、縁の驚きの声。唇を通してそれが伝わってくる。
 ロマンもなにもない、あまりに強引で、あまりに無理矢理で、それなのに胸の底が焦げるくらいに切なくて、頭がオカシクなりそうなくらいに興奮するキスだった。
 そう、キスだ。
 縁と、キスをしている。
 それを頭が認識してしまうと――――ぞわっと身体が溶けるんじゃないかというくらいに、甘い歓喜が駆け廻る。
 その歓喜が、理性を一撃で粉砕した。
「ふ、ぷあっ――あ、はぁ、は、バニングスさんむぅっ!」
 唇を一度離し、そして混乱している縁の顔を視界に入れた途端に、その唇を奪ってやりたいという欲求に逆らえなかった。
 我慢など出来ない。
 無理矢理キスをする。
 今度はもっと、唇同士が密着するように、深く深く、キスをする。
 甘い。 
 縁のその唇が、甘い。
 ずっと味わっていたいと思う。もしかしたら麻薬かもしれない。離れられない。それくらいに甘い。
 縁の吐息がかかる。
 縁の匂いがゼロ距離にある。
 縁のぬくもりが感じられる。
 縁の存在を確かめられる。
 奪いたい。
 もっと近付きたい。
 唇だけじゃ物足りない。
 もっともっと味わいたい。
 甘い、甘い、甘い、甘い、その縁の唇を――いや縁の口の中を!!
 そうだ、舌を
 舌をねじ込めば
 縁の中にねじこめば!

「ふっ!? にゅひゅっ、や、んんんっ!!!??」

 劣情を狩り立てるだけの、縁の素敵な低恩の声が直接頭に響く。
 縁の口の中に、アリサの舌があっさり入った。抵抗らしい抵抗はなかった。もしかしたら抵抗のし方など知らないのかもしれない。今のアリサにとって、それはどうでも良いことだ。
 縁の唾液で濡れたあたたかい口の中を、その舌で感じ取った瞬間、アリサの身体が痙攣したようびくりと震える。
 イった。
 だがまるで止まらない。
 今度は縁の口の中に舌を這わせる。
 びくっと、継ぎは縁が震える番だった。
 可愛い。愛しい。犯したい。
 どろっとした欲望にまるで逆らえない。身体が燃えるように熱い。胸の底が焦げつくように切ない。だけどまるで気にならない。縁の甘いその蜜さえ味わえるのならば、ヘドロのような欲望に心が染まろうと身体が燃えようと胸が焼けようと、どうでも良い。縁の蜜が味わえることが重要なのだ。
「ひゅふっ、ちゅ、んんんっ、ふぁっ!?」
 口内の上を、舌を、頬の内側を、右を、左を、歯の裏を、舌の下を、いや舌を、舌を、舌を絡めて。まるで縁を犯しているようなその気分、それだけでも達してしまうと言うのに、縁の甘い甘いイヤらしい蜜を味わえるのだから、昇り詰めた感覚がまるで降りて来ない。頂上に達しているはずのその快楽が更に上へ上へと昇り詰めて、達したまま更に上の快楽に達して脳を破壊する。
 舌を這わせるたびに、びくりと震える縁の小さなその身体が、発情させるだけの漏れ出る声が、堪らなかった。

 抱きしめる。

 その小さくて愛らしい身体を、力いっぱいに抱きしめる。

「っ!? ―――っ!!!!?????」
 びくんっ、と縁の身体がひときわ大きく跳ねて、続いて身体ががくがくと痙攣したように震え出す。
 反射的なのだろうか、縁の小さなその両手がぎゅっとアリサの制服の両脇を掴む。ぽすっと、遅れて縁の傘が落ちる音がした。
 こんな時まで遠慮がちに握る縁の行為が、堪らなく可愛い。
 唇を離した。
 アリサの唇から縁の唇にかけて、いやらしい橋がかかる。
 
 縁の顔は、羞恥に染まったように真っ赤だった。

 発情した。
 いつもなら絶対見せないのに、自分から抱きついたって指を舐めたって絶対に見せなかったのに、初めて見せる恥じらいを超えて羞恥に染まるその表情に、アリサは発情した。
 生娘を犯しているような倒錯した感覚。
 頬を擦り合わせるようにして、更に抱きしめる。縁の頬が熱い。息が荒い。
 あの縁が。
 興奮する。
 堪らない。
「ぅあ、あ、ああっ、ま、まま、待ってく――ふ、ぁ、あ、あ、あ、あっ!」
 がくがくと痙攣を起こす縁が、まるで熱に浮かされたように何かを訴えかけるが、それは日本語になっていない。
 頬擦りをする。
 ぷにっとしている。
 手は硬いのに、頬は柔らかい。
「ああ、縁、縁、縁っ、あ、えにし、えにし、あああ、えにしぃ」
 アリサもまた、言葉にならない。
 本能だけで、縁の名を呼んでいた。
 ぎゅっと抱きしめる。
 縁を感じる。
 更に縁を強く強く抱きしめた。
 縁の足の間に、アリサの太股が入り込んだ。



「いぁ、あ、あああああああああああああああああああっ」



 跳ねた。
 痙攣したように震えていた縁の身体が、強く跳ねた。
 びくんっ、びくんっ、と。
 跳ね、た。

 何でこんな時に、我に返るのだろう。

 明かに達したような声をあげる縁の身体を抱きしめながら、アリサの身体が、冷えた。












「いやー、こらまた……エゲツない仕事の量やなぁ……」
 出勤してから仕事を確認して、一番最初に漏らしたはやての感想はこんな感じであった。
 確かに今のはやてが所属している部署と言うのは平常時でもそこそこ仕事がある部署ではあるが、流石にここまで仕事が山積みされるレベルのは初めて見た。もしもこの仕事を紙で処理していたら、文字通りに仕事の山である。
 これはもう、今日は残業確定だ。それぐらい量がある。
「おっはよう、はやてちゃん♪」
「いらっしゃいませ~、うぇ~い、お助けマン来たよ~」
「おはよぅごじゃいます はやてちゃ~ん♪」
 挨拶してくれる先輩方が、皆無駄にテンション高い。
 ああ、なんか怖いなぁ、と思いつつ苦笑に近い笑顔ではやても挨拶を返す。
「おはようございます。おお、マーシャさん随分疲れてはりますね」
「うぇ~い、はやてっちゃーん、その胸をお姉さんが揉んで大きく育ててあげるよ~。そうすればはやてちゃんの胸も大きくなって私も癒されて一石二鳥の――」
「はいはい、この前彼氏はんに買ぅてもろうたキューちゃん枕好きなだけ揉んで下さい。セクハラするとその内保安部の獄中パーティーに招待されますよ。あ、イリスさん、おはようございます」
「おはよー。はやてちゃん今日も可愛いから特別に私の仕事を半分プレゼントして――」
「その理論やったら世界で一番可愛いと自慢なイリスさんの妹さんは、今頃地獄の仕事量で忙殺されとると思いますけど。クワルさんは仕事終わりそうですね」
「あはははははははは、見ろ、人が、人が、人がゴミのように――」
「あかん、ゴミのような人や」
 悲しいかな、これでもまだ普段通りな挨拶である。今日は2割増でテンションが高いが、いつもテンションの高いメンバーなのだ。ちょっぴり変わった人も多いし。
 もしかして自分もテンションが高くて変わった子だと思われているんじゃなかろうかと、一通り挨拶を済ませて自分の席に座りながらはやては溜息を一つ吐く。そう思われていたら心外である。
 深呼吸を一度して、気持ちを切り替えてからはやては自分に割り振られている仕事を再び確認する。当然ながら減っていない。
「看視者―――なんや、また活動再開したんか……」
 仕事のその一覧を見てから、思わず漏らした声は随分と苦いものになっていた。
 ざっと見た仕事の一覧で目を引いてしまうくらいに多いのが、思い出したくもないのを思い出させてしまうワードであった。未だにあのヌメヌメした感触やあのグロテスクな姿を夢に見てうなされているのに。
 そのはやての呟き声を耳にしたのか、隣の席に座っていた同僚が振り向く。
「あれ、シグナムさんからは聞いてないの?」
「ん? 何をですか?」
「何って、昨日の事」
 突然出された家族の名前に、はやてはきょとんとした表情を向けた。
 昨日と言えば、シグナムは夜勤明けなのに自分が学校から帰ってくるよりもずっと遅くに帰宅して、疲れているのか若干顔色の悪いまま夕食を共にして……思い当たる節がまるでない。ヴィータとシャマルは管理局で、はやて自身は気にしてないが以前の一件から今まで以上に会話の少なくなってしまったザフィーラと、そしてシグナムという非常に静かで落ちついた食事になったくらいしか印象はなかった。
 きょとんとしたその表情に、同僚は一度首を傾げた。
「ほら、前にヴィータさんがロストロギア奪われちゃった事があったじゃない」
「ああ、はい。その節はウチのヴィータがご迷惑をお掛けして……シグナムがご飯抜きとか凄いスパルタで報告書の書き方指導したんで、多分次からは報告書も形になっとると思います」
「……凄い個性炸裂した報告書だったもんね」
「お恥ずかしい限りです」
 その個性が炸裂した報告書をチェックしていたのがこの部署であったので、身内の恥ずかしい話は筒抜けであった。3回目くらい以降からはやても報告書をちらりと読ませてもらったのだが、心の汗が目から流れるような報告書だったのでフォローも出来ない。
 そんな恥ずかしい報告書を思い出す一方で、重症を負ったと聞いてヴィータが担ぎ込まれたという病室に転がり込んだ日の事も頭に浮かんでいた。
 蒼天の書。
 奪われたロストロギア。
 そう言えば、ヴィータはかなり消耗した状態でなお、ドールタイプや看視者を相手にしていたと聞く。そして、あの強いヴィータがボロボロになっても決して膝を着かなかったと聞く。
 自分には、出来ない。
 思わず自嘲的な笑みを浮かべそうになるのを、同僚の手前堪えた。
 一瞬変な表情を見せかけたはやてに同僚は一瞬だけ目を細めてから、気にしていない風に話を続ける。
「でね、そのロストロギアが戻ってきたらしいのよ」
「戻って……て事は、看視者から奪い返したんですか?」
 それはないな、と思いつつも聞いてみたはやての言葉に、同僚は首を横に振る。
 当然か。
 持ち歩いていない物を奪い返すのなら、本拠地を捜すしか手がないのだから。
「何かね、シグナムさんが……えっと、名前何だっけ……えーっと、なんとかって人から直接受け取ったらしいんだけど、本当に聞いてないの?」
 続ける同僚の言葉に、はやての表情が一瞬だけ無表情に近くなる。

 今、それを初めて聞いた。

 昨日、夕飯を一緒に食べてなお、初めて聞いた。

 ああ、ついにシグナムにすら役立たずと思われてしまったのだろうか。言ったところで意味などないと思われてしまったのだろうか。厄介者だと思われてしまったのだろうか。
 嫌な考えが、頭の中を横切る。
 暗くなってしまう表情を隠すようにはやては顔を伏せ、なるべくいつもの口調で返す。
「へ―――ぇ、何や、シグナム言い忘れてたんかな…………何も、言っとらん、かったです」
 硬くなった。
 奥歯を思いっきり噛み絞める。
 役に立たないのも厄介なのも今更だ。今までだって何度もそんな陰口を聞いてきた。
 言って意味などないのも当然だ。前線にも出れない、何も出来ない、そんな自分に説明したって無駄である。
 分かっている。
 自分がどれだけ低層の人間かくらい。
 自覚だってしている。
 なのに、胸が痛い。
 シグナムにそう思われていると考えると、苦しいくらいに痛い。
 今までにもシグナムには沢山負担をかけている。沢山苦労させている。沢山迷惑をかけている。
 嫌われる要因ならば数えきれないくらいにある。
 呆れられる要因ならば数えきれないくらいにある。
 見放される要因ならば数えきれないくらいにある。
 それでもなお、嫌われたくも、呆れられたくも、見放されたくもないと思ってしまう自分は、どれだけ甘えているというのか。
「あ、ああっ! シグナムさん書類とか質疑とかで凄かったからね、疲れてたんだね!」
 無駄に明るく、同僚はシグナムをフォローするような言葉をかけてきてくれた。励ましているつもりだろうか。
 そうですか、と、はやては短く返し。顔を逸らして席に向かう。同僚がどんな表情をしたのかは見れなかった。













 血の気が引くとは、こんな感じか。引き過ぎて貧血を起こしたかのように目の前が暗くなる。
 いつの間に傘を落としたんだろうか。記憶になかった。火照った体を纏わり付くようにべたりとする、小雨で湿った制服が気持ち悪い。
「ぁ……ぅ…………」
 耳まで赤くしながら、未だに熱い吐息を切れ切れに漏らしつつ、ぎゅっとアリサの制服を握りながらも縁の身体が小刻みにかくかくと震えている。
 この震えが、何を意味するかくらい、知っている。
 縁の顔は、たぶん見た事が無いくらいに真っ赤だろう。
 自分の顔は、たぶん見た事が無いくらいに真っ青だろう。
 遅れて、アリサの身体もかくかくと小刻みに震えだした。この震えは、縁のそれとはまるで違う意味を含んでいた。
「は……ぁ……バ、ニン……」
「――――――」
 熱い、熱い、溶けるような吐息。
 ゆっくりと、アリサは震えながら縁を抱きしめていた両腕から力を抜き始める。いや、抜き始めると言うよりも、抜け始めてきた。
「ぁ……」
 ずるっと、縁の身体が落ちる。
 落ちる瞬間に漏れて耳にかかった吐息に、アリサの背中から一気に嫌な汗が噴出した。
 そして、落ちた縁の身体は、それを受け止めるように入れられていたアリサの太股に乗り

 ぐちゅ

「ひぅっ!?」
 濡れた何かの感触が伝わると同時に、縁の身体が再び跳ねる。
 咄嗟にアリサは視線を下げてた。
 自分の右足は、何故か縁の股にねじ込むように挟まっていて。

「ひっ――! やだっ!」

 気がつけば、アリサは縁を突き飛ばすようにしてその体を離していた。
「がっ、ぐ」
 突き飛ばされたその反動で縁は強かに後頭部を壁にぶつけ、そして脚に力が入らないのか壁に伝うようにしてずるずるとゆっくり尻餅をつく。座り込んでなお、その身体はぴくん、ぴくん、と小さく震えていた。
 身体を離したアリサは、1歩、2歩と後ろに下がり、そこでようやく脚を止める。
 嘘だ。
 違う。
 だって。
 そんな。
 頭が一気に回り始めた。
 自分は何をした。縁に何をした。
 そんなの聞かれなくとも分るだろう。縁の唇を無理矢理奪い、犯したんだ。1分前は熱烈にしてたじゃないか、忘れるのはまだ早すぎる。
 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。
 何が嘘だ、白々しい。間違いなくこのアリサ・バニングスが痴態を繰り広げたじゃないか。
 違う。間違いだ。これは何かの間違いだ。
 間違いなものか。現に縁を見てみろ、明らかに無理矢理された後って感じじゃないか。
「ぃ……っ、ぁ、はぁ……」
 潤んだ目。赤い顔。乱れる吐息。
 そして何より、その雰囲気が、もう。
 ぱしっと、アリサは両手を自分の顔に当てる。手の平は恐ろしく熱いのに、血の気の引いた顔は恐ろしく冷たい。
 頭がぐわんぐわんと鳴るような感じ。
 熱いはずなのに、身体が震える。
 キスをした。
 縁とキスをした。
 無理矢理、した。

 それは、あの男達と、一体何が違うというのか。

 ぞわっと、全身の毛が逆立つ。
「やだ……違う、違うの」
 なにが違う。
 どう違う。
 自分もレイプされかけた時、同じようにしてあの男達に無理矢理キスされたじゃないか。今度は自分がそれを縁にしたのだ。
 あの、男達から必死になって助けてくれた、縁に対して。
 あの男達と同じ行いを。
 自分が、した。
 あの時の恐怖感が、あの時の嫌悪感が、じわりと胸から蘇ってきた。
 吐きそうなくらいに、気持ち悪い。
「ぅ、うぅ……はぁ、バニングス、さん?」
 呼びかけられる声。
 唇が動いた。
 縁の。
 それを自分は、あの男達と同じ方法で。

 この、あの男達に汚された自分の唇で。

 縁を。

 汚した。

 穢した。

 綺麗でいてほしかったのに。

 汚い自分で汚したくなかったのに。

 縁を。

 縁を。

 犯し









「うわ、わ、うわああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」









 叫んで、踵を返して、アスファルトを蹴った。
 逃げる。
 逃げなきゃ。
 何から?
 何かから。
 この恐怖から。
 みっともなくて、無様で、醜い走り方で、途中転びそうになりながらも、アリサは意味を成さぬ悲鳴を上げて逃げる。
「あ、バニングスさん!」
 呼ぶ声が聞こえる。
 聞きたくない。
 聞く資格なんかない。
 馬鹿だ自分は。
 大馬鹿者だ。
 死んだ方が良い。
 生きている事こそ間違いだった。
 一番しちゃいけない事をしてしまった自分は

 最低の、クズだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 鬱健全純愛泥沼ストーリー、こんにちは健全な文章が売りのクロガネです。
 うん、鬱いな。書いているこっちまで鬱くなりますよ。
 世間ではリリマジなるものが開催されていたようで……クロガネは夜勤だったよ! 畜生、妬ましいわ!

 アリサに関して書くこと?
 暴行されかけてますからねぇ。
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14件のコメント

[C357] 想定の範囲外

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(゜Д゜)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリサ(゜Д゜)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣けてきた。ちょ、早く助けてあげて!
すずかじゃなんくて、縁だなんて!傷口に塩を塗ってるもんですよ!

アリサぁぁぁ!!って感じですよ、今の心境。
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : りんご
  • URL
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[C359] 刑法177条

アリサ・・・青春の情動(ムラムラともいう)が最悪の形で発動してしまいました。こりゃ反転した(病んだ)時が非常に怖いな。そしてすずかにバレた暁には・・・ガタガタブルブルil||li(つд-。)il||li
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C360] うほ

えっと、まぁ、なんだ、あれだ、要するに…「性欲をもてあます」だな。


そんなアリサに萌えた
  • 2008-11-11
  • 投稿者 : ぽりん
  • URL
  • 編集

[C361] 縁ちゃんがつまみ食いされたようです。

アリサちゃん、暴走。確変入りました~♪
ん~、途中で止まればよかったのに、やっちゃいましたね~・・・
頑張れ、縁ちゃん!後は追いつけばフラグ成立だ!(えろげ的な

あと頑張った、無口なデバイスちゃん。
君の活躍に期待してます。
オールハイル、らぴゅーた!
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : ぎるばと?
  • URL
  • 編集

[C362] コメントありがとうございマウス

〇りんごさん
 仮にすずかにしたとしたら、ここまでショックは受けなかったかも。
 アリサァァァァァ

〇ミヅキさん
 すずかにバレた暁には……こう、こきゃっと。
 しかし、これが青春だったら今の若者皆死んでるなぁ。

〇ぽりんさん
 蛇アリサ、性欲を持て余す。
 これは……萌えるのか?

〇ぎるばと?さん
 うん、これで色々なフラグは立ったんですよ、一応。
 しかしこのデバイス本当に喋らない。
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : クロガネ
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[C363] 病ンデルルート突入

うはぁドロッ泥、胸焼けが凄まじい。
ドロドロを通り越してドゥルドゥル、ドゥルルルルルルルー。

カリフォルニア州が同性婚禁止しましたね。

そして、もはや誰も『健全』という単語に反応しなくなった。
もういいか認めましょう健全ですね、うん、健全健全。
捲喘。まくってあえぐ。

あと、はやて。
大丈夫、君はかなりテンションが高くて珍妙な子供ですよ。
シグ南無は、どうしてすぐばれることを隠そうとするかなぁ。
  • 2008-11-12
  • 投稿者 : TFJ
  • URL
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[C364] 健全?なにそれ、おいしいの?

抜けれない鬱のトンネル、随所に配置されたエロス、後やることはアリサが百八十度反転して縁の胸を育てることですね。百合?セクハラ女?「まとめてかかってこい」そんなノリですね。
  • 2008-11-13
  • 投稿者 : オサフネ
  • URL
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[C365] アリサ大暴走

やっちまったな~

だがそれがいい!



もう鬱すぎる展開ですね
ですがそろそろ上がるかなと淡く期待……

もういっそ開き直って縁堕としちゃおうよアリサ


はっ!まさかこの後縁がアリサ追いかけて再びフラグ成立か!
  • 2008-11-13
  • 投稿者 : ルファイト
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[C367] コメントありがとうございマウス

〇 TFJ さん
 鬱健全純愛泥沼ストーリーですから。健全だよね、ね (ノ△・。)
 ホモフォビアの風当たりも凄く強くなってますね、今時期。まあ、この話はフィクショ(ry
 はやてはアレですね、この前にUPした小話を読む限りは確実に変な子ですね。

〇オサフネ さん
 (ノ△・。) ケンゼンダヨ
 しかし育てるも何も、クロガネの趣味で大平原にしてしまったソレは育てられるのか……!?

〇ルファイトさん
 やっちまった。
 堕とそうとしたら縁は抵抗もなく堕ちるだろうから、話としては面白味がないと言うか何と言うか。
 フラグはどうでしょう。ふふふふふ……
  • 2008-11-14
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C369]

素敵!
これはいい鬱展開。アリサ、あんまり溜めすぎちゃったもんだからあふれちゃったんだNE!

……うん、正直かなり興奮したんだぜ。


さて。

はやて、シグナムにいらない子扱いされる。の巻。
思うところあって、なのかうっかりなのか。どちらにせよ、はやて的にはショックでしょうね。役に立てないという自覚は前からあったんでしょうが。

ん、これからがますます楽しみですね。
  • 2008-11-14
  • 投稿者 : 春都
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[C371] コメントありがとうございマウス

〇春都さん
 いや、これを素敵と申されるのか!?
 クロガネにはエロを書く才能が余りありませんので、これから期待されても困りますが。
 シグナムの件は、うん、スルーで。
  • 2008-11-15
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C372]

折角少しはいい方向にむかいはじめたかな?と、少しでも思った自分が間違っておりました 男たちに誘拐された辺りからおかしくなってしまわれたアリサお嬢様(まあ、仕方ないですが・・・) いったいどこまで堕ちてしまわれるのでしょうか?(いっそ縁を・・・イエ、ナンデモアリマセン)
  • 2008-11-19
  • 投稿者 : ナルガ
  • URL
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[C373]

書き上がってから気付いた ↓見づらい・・w
  • 2008-11-19
  • 投稿者 : ナルガ
  • URL
  • 編集

[C376] コメントありがとうございマウス

〇ナルガさん
 堕ちる堕ちる、良い方向に向かいかけても堕ちる堕ちる。
 と言うか、皆さん何でそんなにアリサに縁を調教させたいのかと小一時間
  • 2008-11-21
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
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