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[C326] やっとしゃべった♪

すとのはやてちゃんも真っ青の活躍の無さ、謎のデバイスさんがやっと・・・・
もうちょっと喋れるようになるといいわね~
お兄さん、応援しちゃう♪

・・・・赤いすずかちゃんの活躍に期待です。(百合的に
  • 2008-10-18
  • 投稿者 : ぎるばと?
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[C327] 空も飛べるはず

う~んやはり本編はドロドロだな。すずかが燃えている(ヤバイ方向に)、後に安西先生の幻が・・・って煽ってどうする。

「嘘だTシャツ」多分ティアナも持ってるでしょうね(笑)
  • 2008-10-19
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C329] コメントありがとうございマウス

〇ぎるばと?さん
 活躍性が果てしなくゼロの謎な声は、うん、もうクロガネ自身が忘れそうなくらいに喋ってないからねぇ。
 すずかのそういう方面は応援しないでください(汗

〇ミヅキさん
 やはり番外編がライトノリで書いていると落差ががががが
 「嘘だTシャツ」……まあ、中の人のあのTシャツは実在してますしね。
  • 2008-10-20
  • 投稿者 : クロガネ
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[C352]

とりあえず、今読める最後まで到着
次に思い出してくるときには最後までいけるといいな

今後もがんばって
  • 2008-11-02
  • 投稿者 : A
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[C353] コメントありがとうございマウス

〇Aさん
 誤字指摘ありがとうございましたー、ここで一括返信になりますが、だいたい修正終了しました。
 次に思い出したときにまたいらしてください、終ってるかどうかは別として(汗)
  • 2008-11-02
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 38

 夜勤明けで午前中には帰れるはずが、気が付けば昼食に丁度良いくらいの時間になってようやくシグナムは見慣れた我が家に辿りつく事が出来た。我が家。良い響きである。シグナムはこの響きが何となく気に入っている。
 まずは少し仮眠をとらせてもらおうかと思いながらシグナムは門を閉め、そこでふと、誰かの話し声に気が付いた。
 恐ろしく澄んだ、女性の声。
 閑静な住宅街とはいえ、その声はよく通る。
 つい振り返ると、1組の男女が目に止まった。
 両方とも背が高く、男の方は絵に書いたようなアウトドア派の肌が焼けた筋肉質、女の方は逆に絵に書いたようなインドア派の白い肌をした細身である。両者揃ってTシャツにジーンズというラフな格好ではあるが、その赴きは正反対を向いていた。
 男のTシャツは青地に黒の筆文字にて 『嘘だぁっ!!』 とでかでか書かれており、ジーンズと言ってもそれは住宅街では何の意味も成さない森林迷彩カラーのミリタリージーンズ。上下の取り合わせが最悪である。一方女の方は真っ白なTシャツと深い青のジーンズという、安さのみを追求したような質素な物に留まっている。
 20くらいだろうか、男女共にまだ若く、顔は整っている。なるほど、美男美女だ。服装はどちらもアレだが。
 男の方は地図を見ながらうんうん唸っていて、女の方は――

 まっすぐ、シグナムを見ていた。

 目と目が、合う。
 距離まだ遠い。
 だが間違いなく、その女はシグナムを見ていた。
「ん、あれ? ここ1丁目なんだろ? さっきのガソスタから右で――あ、もしかして逆だったか?」
「恋慈、相変わらずだが素晴らしい方向感覚を持っているな。もうそろそろどう誉めて良いのか分からなくなる位だ」
「う、うるせぇな。言いたい事があるならはっきり言いやがれ」
「この方向音痴が、地図を描いた者達に謝りに行って来い」
「ぐぶはぁっ」
 まっすぐシグナムの目を見ながらも、男の言葉には迷う事なく返していく。なかなかに酷い発言があるが、それは逆にその男女が親しい証拠でもあった。
 目線はぶれない。
 シグナムから外れない。
 誰だ?
 頭の中に浮かぶのは、当然の疑問。
 しかし、シグナムはその女の顔に見覚えはなかった。
 男ならば街ですれ違っても確実に振り向く人形のように整ったその顔は、見たらまず忘れられないだろうに。
「恋慈」
「なんだよ」
「見つけた」
 女はゆっくりと指をさした。
 まっすぐ、シグナムを。
「八神邸だ」
 やはりこの家に用事だったか。
 見覚えはどうしてもない女の言葉に、男も地図から顔を上げる。
 目が合った。
「……ああ?」
 ガン飛ばされた。
 いっそ清々しい位にはっきりと、嫌悪の感情を前面に出して睨まれた。
 そして、背筋の毛が逆立つような、冷たく鋭い殺気を感じる。シグナムに向けて放たれているその殺気は、以前感じた事があるものだった。
 なるほど。
 直感的に、と言うよりも本能的に悟った。
 あの男、恋慈という男、間違いない、フェイトが以前に言っていた海鳴 恋慈に違いない。
 その独特な殺気がよく似ている。
 あの、化け物と。
 看視者と。
 足を進めて近寄ってくる2人に、シグナムは気を張りつめて姿勢を正す。
「烈火の将、シグナムだな」
 門を挟み足を止め、女が口を開き名前を呼んだ。
 この世界で生まれ育った人間ならば、まず呼ばないだろうその名前で。
 隠す気はないらしい。
 自然と威嚇するようにシグナムの目に力が入った。
 それに反応するように、恋慈は持っていた地図を閉じて脇に抱えるように持つ。睨むその視線は更に鋭くなった。
「ああ、そうだ」
「そうか。私はアステマ・コロンゾン・リ・ヴァルヴェールローランドという」
 よろしくとでも言うかのように女、アステマは右手を差し出した。握手という事か。
 警戒しながら、それでも礼儀を弁えたようなアステマのその手を無碍にするのはシグナムの琴線が許さず、門を挟んでシグナムも右手をさし出して握手をした。これが左手ならば問答無用で振り払っているところなのに。
 ぎゅっと少し強めの握手。欧米か。
「すまないが、紅の鉄騎はいるだろうか」
 握った手を離しながら、それでも目線は逸らさずにシグナムに訊ねた。
 紅の鉄騎。
 我が家の切り込み特攻隊長、ヴィータの事だ。
 ちらっと、シグナムは一瞬だけ恋慈の方へと目を向ける。
「―――」
 たったその一瞬で、軽く腰を沈め、まるで応戦でもするかのように構えられた。
 頭の中を過るのは、あの日、片腕すら吹き飛ばされてボロボロになったヴィータの姿。そして看視者。
 何のようだ。
 一度シグナムは奥歯を噛み絞めながらも、冷静を装いながらアステマへと視線を戻す。
「すまないが、今は所用で出ている」
 つい、声が硬くなった。
 それに対してアステマはふむ、と軽く鼻を鳴らす。
「そうか、残念だ」
「伝言ならば預かるが」
 本当に残念なのかは変わらぬアステマの表情では分からない。
 それに対してシグナムが返したのは、言外にさっさと帰れという言葉。
 看視者と思われる人物が目の前にいる。
 そしてその看視者と関係があると思われる人物が目の前にいる。
 だが、この状況で手出しは出来なかった。
 警戒心を露にしながら返したシグナムの言葉に、アステマはそうだな、と一言だけ呟いてから、背負っていた安物のリュックの口を開ける。
「ならば一つお願いしたい。これを紅の鉄騎に渡して、奪うつもりは毛頭になかったと伝えて欲しい」
 取り出して、そしてシグナムに差し出したのは

 そう、蒼天の書。

 刃たる相棒を一瞬で展開し、シグナムはその鈍い光を迷う事なくアステマの首に当てる。
 そしてそれと全く同時、恋慈がジーンズのポケットから小型の拳銃、デリンジャーを両手で抜いて、右でシグナムの額を、左で腹部を狙い構えた。
 アステマは、平然と蒼天の書を差し出しながら立っている。レヴァンティンがその首筋に当っているのも構わずに。
 ばさりと、恋慈の脇に抱えていた地図がアスファルトの上に落ちた。
「貴様……何のつもりだ?」
「落し物の返却だ。メロンを売りに来ているようにでも見えたか?」
「これは、証拠になるんだぞ!」
 強く言葉を放ったシグナムに、デリンジャーを構える恋慈のその引き金に当てられた中指に力が入った。
 撃つか。
 だが、それより速く動ける自信がシグナムにはある。引きはしなかった。
「八神はやては今頃昼食の時間だろうか」
 ふいに、アステマは話を切り出す。
 刃を首に当てられて、蒼天の魔道書を差し出しながら。
「―――どういう意味だ?」
「いや、私の娘が八神はやてと同じクラスだったなと、急に思い出しただけだ」
 さらりと言うその台詞に、シグナムの全身の毛が逆立った。

 ――脅迫のつもりか……っ!

 奥歯を噛む。
「この取引はフェアじゃないか? それでは、拾ってしまったこの魔道書、何故今まで返さなかったのかという質問も天秤にかければ、この物騒な物を引くには十分か」
 手が震えた。
 間違えてアステマの首の皮を切るくらいに。
 返すつもりならば、もっと早くに返す事だって出来たはずである。それを今まで返さなかったという事は、ロストロギアに手を加えた可能性がある、という事だ。
 以前、このロストロギアの事を教えてくれたレティの言葉を思い出す。
 下手を打てば、少なくともこの世界は虚数空間に落せる。それだけの代物なのだ。
「……くっ」
「それに、この剣を人目に晒すのは得策ではないと思うが?」














「バニングスさん、移動教室だ。理科室で風船を――」
「算数で宿題があったんだが、バニングスさんはもう終わって――」
「昨日教授の家に行ったんだが――」
「この前 東海道中膝栗毛を読んだんだがなかなか面白かった。今度バニングスさんも――」
「バニングスさんは兄弟か姉妹はいるのか? この間お邪魔した時には見なか――」
「バニングスさんのその髪型も、もう随分馴染んでき――」
「午後の国語と技術家庭は入れ替えだそうだ。技術家庭は確か技術室に移動で――」
「そう言えばバニングスさんの家には犬が多かっ――」
「曇りの日は暑さが和らいで良いが、そろそろ晴れてほし――」
「先週に恋慈から貰った物があるんだが、バニングスさんも見――」
 全て、席を立って中断させた。
 休みという休み、全て縁が話し掛けてきた。
 一生懸命。
 一生懸命に。
 小さい事でも、些細な事でも、何でも良いから縁は話しを切り出してきた。
 だが、不思議と席を立って離れると、縁は追いかけては来なかった。悲しそうに、悔しそうに、下唇を噛むだけで。
 それでも縁はめげなかった。
 それでも縁は話し掛けてきた。
 他の誰でもない。
 アリサに。
 バニングスさん、と呼んで。
 胸がえぐられる。
 胃に穴が空きそうだ。
 嫌いになって。
 お願いだからもう、嫌いになって。
 こんな可愛くない事をする酷い私など見限って、他の子と仲良くして。
 そう祈りながら、アリサは次の授業が始まるのを祈って、授業が終わるのが長引くのを祈った。
 チャイムが鳴る。
 昼を知らせる。
 昼食の時間だと、明るく湧く教室を、誰よりも早くアリサは抜け出す。
 縁が小さい袋から、以前見た栄養剤を取り出すのを横目にして。

 逃げた。
 縁からも。
 なのはからも。
 フェイトからも。
 すずかからも。
 はやてからも。
 アリサは逃げた。














 そして、授業を全て終わったと告げるチャイムの音が響いた。













「バニングスさん、今日一緒に帰――」
「ごめん、さよなら」
 振り向いて喋りかけた縁のその言葉を、小さくとも突き放すような囁き声でアリサは封殺した。
 もう既に片付け終わっている机に手を付いて、椅子を跳ね飛ばすかのような勢いでアリサは立ち上がり、同じく既に教科書も全部仕舞い終わっている鞄を手に取る。
 一緒に帰りたい。
 寄り道もしたい。
 もっといっぱい、縁とお話がしたい。
 縁の傍にいたい。
 心の奥底で湧く、その感情も欲求も全てネジ曲げて、アリサは縁に背を向ける。
 悲しそうに揺れる縁の目が、脳裏に焼き付く。多分これは夢に出てくるだろうと、本能的にアリサは悟った。
「さ、さようなら。また明日、バニングスさん」
 それでも縁は返した。
 一生懸命、言葉を選んで。
 一生懸命、言葉にして。
 バニングスさんと。
 アンスじゃない。
 そうだよ。
 そうだよ、バニングスさんだよ。
 それで良いんだ。
 そう、自分に強く言い聞かせる。
 間違ってないんだから。他人行儀で良いんだから。自分は縁に嫌われなくちゃいけないんだから。自分は縁から離れなきゃいけないんだから。
 そう、強く強く、自分に言い聞かせる。

「声が聞けて……返事をしてくれて嬉しかった。ありがとう」

 それでも、縁を愛しいと思ってしまう自分は、弱い人間だ。













 結局今日は、皆から逃げ回った一日になった。
 なのはとも、すずかとも、話しをしていない。フェイトも、そして同じクラスのはやてですら。
 こんなに喋らないなんて、生まれて初めてだった。
 苦痛だ。
 それしかアリサは感じられなかった。
 だけど、なのは達に向き合って説明するのが怖い。フったすずかに向き合うのが怖い。縁の傍にいるのが怖い。
 醜くて、汚くて、弱くて、とてもちっぽけな自分を再確認させられるのが、怖い。
 その恐怖に比べれば、喋らない苦痛の方が、よほどマシに思えた。
 こつこつと履き替えた靴の爪先を地面で軽く叩いてから、深い溜息と共にアリサは歩き出す。
 習慣や慣れと言うのは恐ろしく、例え落ち込んでいたとしてもアリサは自然と背筋を伸ばし、胸を張って、そしてまっすぐ歩く。幼い頃から人前で無様を晒さぬよう、そう教わって、自分の身体がそう慣れていたからだ。
 よく自分は縁に対して心の中で、痛い時は痛そうな顔をしろとか、疲れた時は疲れた顔をしろとか、そう思っていたが、それは違ったのかもしれない。
 慣れなんだ。
 ずっとずっと、あの幽霊アパートなのに綺麗にされた部屋で過ごして、話す相手と言えば違う家に暮らすアステマと恋慈くらいで、表情に出す必要なんかなかった。痛くても、辛くても、伝える相手が傍にいなかった。だから縁は無表情が慣れていた。
 自分はもしかして、縁の事を何も見てなかったんじゃないかと感じたが――――もう、関係のない事なんだと、自分に言い聞かせる。
「アリサちゃん!!」
 ふいに、上から呼び声が降り注いだ。
 なのはの声。
 反射的に顔を上げると、窓から上体を乗り出してこちらを呼びかけるなのはの姿。隣にはフェイトと、すずか。
 見つかった。
「――っ」
 蹴る。
 地面を蹴る。
 逃げ出した。
 ――何やってるんだろう。
 ぼそっと頭の片隅で投げやりな自分の声がした。












「あ、ちょ、アリサちゃん待って!」
「わ、わ、なのはっ、落ちちゃうよ!」
 思いっきり身を乗り出してアリサを呼び止めようとするなのはの身体を、フェイトは慌てて支えた。幾ら何でも乗り出し過ぎである。
 しかし、そこまでしたって走って逃げ出したアリサを止められる筈もなく、その後ろ姿を見送るだけになってしまった。遅かった。こちらも帰りのホームルームが終わってからすぐに来たのに、アリサはそれより早く帰っている。もしかしてホームルームをサボってる訳じゃなかろうか。
 ちぃっ、と素ですずかが強烈な舌打ちをした。
「アリサちゃ――もうっ!」
 今の舌打ちは幻聴だろうかとフェイトはすずかの方を向くと、呼び止めるのももどかしいと、隣の窓枠に足を掛けて飛び降りようとしているすずかの姿。
「ちょ、ちょっと待ってすずか、ここ3階だから……なのはも!」
 慌てて止めるフェイト。更には続くように同じく窓枠に足を掛けるなのはも抱きついて止める。
 ヤバい、本気過ぎる。
 というか、例え着地出来るとしてもスカートで飛び降りないでほしい。なのはのは見たいが、流石に他の人に見せる気はない。
「なんや2人、やけにハイテンションやなぁ」
「あ、はやて」
 投げ掛けられた声にフェイトが振り向くと、そこでは呆れたように2人を見るはやての姿。まるで飛び降り自殺でも諮ろうかとしているように見える美少女2人、かなり目立っていた。
 慣れた手付きで車椅子の操縦レバーを操作して、器用に窓際に車椅子を付けてからはやては窓の下を見るようにして窓枠に手を掛けて身体を少し浮かす。なのは達が見ていた者が気になったらしい。
 しかし、アリサの姿は既に見えない。
 すずかや縁のように超小学生レベルじゃないにしても、俊足の部類に入るアリサの足である。はやてが声を掛けていた頃には既に門を曲がっていた。
「あー、アリサちゃんもう おらへんなぁ」
「そうだよ、もう。引き止められなかった?」
「あはははは……」
 半分八つ当りのようにぷくーっと頬を膨らませてブーたれるなのはに、はやては苦笑を漏らす。

「無理やよ、私には」

 完全に諦めた、乾いた声だった。
 むぎゅっと、なのはとフェイトは口を横一文字に閉じる。
 自分自身に自信を持てない、そんな一言。かける言葉が見つからない。
 と言うより、むすっと機嫌の悪くなったすずかから感じる悪寒のせいで閉口したとも言える。
「……海鳴さんは?」
 聞いたのはフェイト。
 んー、とはやては唸る。
「クラスの子らが慰めとるんやけど、大丈夫、って」
「海鳴さんが?」
「うん。まあ、見るからに無理しとるけどな」
 それを見るからに空元気な人間に指摘されても反応に困るところである。
 窓枠から手を離し、ぽすっと車椅子へと尻餅をつくかのように座り、はやては溜息を一つ。
「無力やなぁ、私」
 アリサを叱れず。
 縁を慰められず。
 何と言葉を投げかければ良いのかが分からない自分が無力。
 そんな濁った色の言葉を、はやてはぼそっと呟いた。
 開きかけた口をフェイトは閉じる。アリサと縁の雰囲気に引きずられたのか、はやてまで暗くなっている。
 ちらっと、フェイトはなのはへと視線を向ける。なのはも同じく横一文字に口を閉じている。
「……そんな事ないよ、はやては――」

「無力じゃない人って、何処にいるの?」

 視線を戻して苦笑いのような表情で口を開いたフェイトの言葉を上塗りするかのように、すずかの言葉ははっきりとした物だった。
 走り去ったアリサを見るようにして窓の外へと視線を向けながら、それでもすずかの言葉ははやてに向けられた言葉であった。
「誰だって最初は無力だもん。やる気があるか、やる気がないか、それだけだよ」
 一度もはやての方へと向ける事なく、感情の読み取れない非常に平坦な声で窓の向こうへと言葉を投げ出してから、そこでようやく すずかははやての方へと顔を向けた。
 むすっとした、すずかにしては珍しい不機嫌な表情。
 一瞬だけ、もしかしたら目の錯覚じゃないかと思えるくらいに一瞬だけ、すずかの目の色が赤く見えた。光の加減だろうか。
「諦めたら、無力だよ」
 合わせた視線は一瞬だけ。
 その深い色の瞳に魅られ、はやての背中が冷えるようにぞくりとする。
 今、目の前にいる彼女は、本当に月村すずかだろうか。そんな馬鹿げた疑問が頭の中を全力疾走で通過した。
 真夏だと言うのに半袖から覗く腕の毛が一斉に逆立ち、ぽすりと自然と背凭れへ背中が倒れる。
 それからすずかは視線をふいっと逸らす。
「ちょっと、アリサちゃん追いかけてみる」
「あ、うん、お願い。すずかちゃんじゃないと追いつけないかも」
「うん、行ってくるね」
 それじゃあ、また明日。
 そう手を振りながら、先程の不機嫌面が嘘かのように笑顔を浮かべてすずかは走り出し、はやての横を通りすぎる時に ぽんっ とその細い肩を1回だけ力強く叩いた。
 地味に痛い。
 肩と胸が。
 また明日ー、となのはも手を振る。
 廊下は走らない方がー、とフェイトも手を振る。
 眉間に皺を寄せて、はやては黙ったままだった。
「何を諦めるな言うんよ………」













 走って、走って。
 息が切れた頃には学校は既に見えないくらいに遠くにあって、ぜぃ、ぜぃ、と肩で息をしながら、もしかしたら長距離走の最高タイムを記録してるんじゃないかと、そんな変な感想がアリサの頭に浮かんだ。
 と言うよりも、それ以外の感想は浮かべたくなかった。
 これは明日、もしもなのはと面をはち合わせたら、もう1発鋭いのを頂くかもしれない。
 友達を捨てているかの行為。
 以前なのはに対して使った一言が思い浮かぶ。今の自分にぴったりな事だった。
 はぁ、と息を整える最後の深呼吸をしてから、アリサは顔を上げる。
 目の前にスーツ。
 ぼふっ
「きゅわっ」
 避ける暇もなく激突した。
 変な声を吐いてから、アリサはそのままの勢いでアスファルトの上に尻餅をついた。かなり痛い。
「ぅっ……」
 更に上げそうになった変な声を堪える。強かに打ちつけた尻がずきずきする。
 痛むところに手を当てながら、そこで漸く自分が誰かにぶつかった事に気がつく。
「~~~っ、すみません、よそ見していて……」
 立ち上がるよりも先に反射的に顔を上げ、謝罪の言葉を口にしようとして、その言葉はふと止まった。
 どこかで見覚えのある顔。
 きょとんとした表情。
 葬式に行ってもまるで問題ないくらいに真っ黒なスーツをきっちり着こなし、ノーネクタイが変に様になっている、若干イタリア系の顔立ちをした30歳くらいでも中年と言うには憚られる中々の好青年。
「……ああ、バニングスさんの」
「―――深山興サービスサポートの」
 お互い同時に言葉が漏れた。
 どうやら向こうも覚えていたらしい。とは言え父の威光あって覚えられている感じがするが。
 最も、こちらも咄嗟に口に出たのが会社名である、つい癖で。
「申し訳ありません、少々考え事をしておりまして――大丈夫ですか?」
 以前の通り、少々アリサの気に食わない方向ではあるものの紳士な対応で、膝を折って腰を下ろし、アリサへと手を差し伸べる。キザたらしい。腹に何か抱えていると言うか含みのあるその態度、あまりアリサは好きではない。
 とは言え、ここで差し伸べられたその手を振り払う気にはなれない。
 むしろ、気に食わないその態度でも、今の心が荒れているアリサにとってはどこか嬉しいと思うところがあった。
「ありがとうございます。大丈夫です」
 礼を口にしつつ差し伸べられる手を握り返すと、夏だと言うのにその手は驚く程に冷たいものだった。手が冷たい人は心が暖かいと聞いた事があるが、ここまで冷たいのはいかがなものだろうか。
 引っ張り上げるように引き寄せて立ち上がらされる。線が細そうに見えるのに、なかなかどうして力強い。
「すみませんでした、よそ見をしていて」
「いえ、運命的な再会が出来たと喜ぶ事にします」
「凄いプラス思考なんですね、ブローレットさんは」
「それくらいしか取り得がありませんので。名前を覚えてくださってたんですね、光栄です」
 にこりと、胡散臭い笑顔を浮かべながら落した鞄を拾い上げ、はい、とアリサへと鞄を渡す。
 フォン・ブローレット。
 確か以前、家の前で道を訊ねて来た男だ。
 出会った人の顔と名前を覚えてしまうというのは、アリサの数多い特技の中の一つである。だがアリサ自身、顔と名前を覚えるのは当然の事だと思っているので、誉められても返答に困る。
「怪我はしていませんか?」
 返事に困ったのが分かったのか、気遣う風に話題を替える。
 それに対してアリサはにこっと笑顔を作って返し、尻餅をついた時に打ちつけた所に軽く片手を当てて答える。
「ええ、ちょっと打っただけで怪我は――」

(( Healing Rush work ))

 痛みが、一気に消えた。
「…………あれ?」
 思わず視線を落すが、スカート越しな上に後ろじゃ見えるはずもない。それに、何か変な声も聞こえた気がしたが、それらしい人影もない。気のせいだろうか。
 変な感覚である。
 確か、フォンに最初に出会った時にも、似たような事があった気がするのだが……
「――――――ほぅ」
 声が降りてくる。
 太く、低い、男の声。
 反射的に顔を上げる。
 当然ながら、そこにはスーツ姿のフォン。
 ただ、その目は底冷えするような、例えるならば肉食獣のような、荒々しい色が確かに見えた。
「怪我はないようですね、安心しました。女性を傷つけたらどうし様かと思いました」
 しかし、すぐににこっと胡散臭い笑顔を浮かべてその目の色をかき消された。
 ヤバい。
 こいつとは関わるな。
 本能が突然として半鐘の鐘を鳴らす。
 あの目の色が、アリサの中で思い出さぬように閉じていた、トラウマのようなあの出来事を刺激する。あの、とても、とても、怖い目を見た、そして汚らわしい、あのトラウマ。
 全身の毛が一斉に逆立つ。
「おや? どうしましたか? 顔色が優れないようですが」
「い、いえ……大丈夫ですから」
 胡散臭いその笑顔で、1歩近付かれた。
 思わず1歩、下がった。
「すみません、今日は、用事があり、ますので……」
 視線を下げ、口に出た言葉はフォンの笑顔よりも胡散臭い台詞。
 その台詞と共に、もう1歩、アリサの足が下がる。
「そうですか。引き止めてしまって申し訳ありませんでした」
 と、笑顔で返すフォンのその言葉を、アリサは最後まで聞かなかった。
 弾かれるように、足が地面を蹴っていた。












 息が切れる。
 それでも走った。
 嫌な記憶から逃げるように走った。
 胸で揺れる赤い宝石を必死に掴み、考えちゃいけない彼女の名前を何度も心の中で唱えながら、走った。
 何度も、何度も、唱えて。
 あれだけ彼女を傷つけながら、未だに彼女に助けを求めようとしている弱い自分が、嫌で嫌で。
 泣きながら、逃げた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 鬱いです (挨拶)。
 全編に渡り情緒不安定かつマイナス思考まっしぐらなアリサを書いていると、こっちまで毒されそうなクロガネです。と言うか、皆が皆すれ違いまくっていて、噛み合っているのがなのは嬢とフェイト位じゃなかろうかと言うこの状況。クロガネは、昼ドラを書く気はないのに。
 だが我慢、我慢だクロガネ。
 鬱い展開はもうちょっとだけだから……!

 次回からは今まで放置プレイだった はやての問題と胡散臭い30代の問題にシフトしていきます。
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[C326] やっとしゃべった♪

すとのはやてちゃんも真っ青の活躍の無さ、謎のデバイスさんがやっと・・・・
もうちょっと喋れるようになるといいわね~
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・・・・赤いすずかちゃんの活躍に期待です。(百合的に
  • 2008-10-18
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う~んやはり本編はドロドロだな。すずかが燃えている(ヤバイ方向に)、後に安西先生の幻が・・・って煽ってどうする。

「嘘だTシャツ」多分ティアナも持ってるでしょうね(笑)
  • 2008-10-19
  • 投稿者 : ミヅキ
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〇ぎるばと?さん
 活躍性が果てしなくゼロの謎な声は、うん、もうクロガネ自身が忘れそうなくらいに喋ってないからねぇ。
 すずかのそういう方面は応援しないでください(汗

〇ミヅキさん
 やはり番外編がライトノリで書いていると落差ががががが
 「嘘だTシャツ」……まあ、中の人のあのTシャツは実在してますしね。
  • 2008-10-20
  • 投稿者 : クロガネ
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  • 2008-11-02
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〇Aさん
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Appendix

うぇぶ拍手

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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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