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-件のコメント

[C134] デストローイ

悪人どもはひき肉になりましたとさ。

実際、刑務所にいれられても死刑になるまで何年もかかりますよね。オウム真理教のメンバーなんて、捕まったのは私が小学生ぐらいだったのに、死刑は最近なんて奴もいましたから10年も税金で食わせてたってことになります。被害者もそんなに経ったら呆れるでしょうに。

今日本でも死刑制度廃止の方向で進んでますが、私は反対ですね。被害者は納得しないでしょうし、廃止したらどんどん刑務所の部屋が埋まって収容するところも無くなりますよ。敵討ちを起こす人だって出てくるかもしれません。
  • 2008-01-02
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C135] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 ロードローラーだ! って、これはひき肉も残らないか。
 死刑制度廃止賛成か反対かと聞かれれば、どっちかと言えばクロガネも反対側ですね。だれもかれも死刑にしろとは言いませんが、重大な犯罪を起こしたのが “確定” してるなら、そういう人の衣食住を養うのは正直嫌です。
 むしろあれですよ、公開処刑して欲しい。
  • 2008-01-02
  • 投稿者 : クロガネ
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[C136] 電子レンジ頑張りすぎ

縁に捕らえろと言われてるのに、
さらに了承さえしているのに、
あっさり轟音とどろかせて、地味にアリサに精神ダメージ食らわして、
ドールまで持ち出して管理局に捕捉されてる恋慈。
熱くなると周りが見えなくなる子。
今回だけ見ると縁の方が常識人に見える。

それにしても縁、君はほんとに女の子か……

死刑制度に関しては
いまさら廃止にするのは下策でしょうね。
今でも日本の平和神話は崩れてきていますし。
これから先、犯罪件数は減ることが無いでしょうね。
死刑が少しでも抑止になってるのは誰も疑わないでしょう。
死刑制度の廃止よりも、犯罪そのものの抑止に力を注ぎなさい、と言いたい。
ってその結果がゆとり教育でしたっけ……
  • 2008-01-03
  • 投稿者 : TFJ
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[C137] スーパーレンジタイム

いや~大活躍の恋慈でしたが、その行動にいろんな意味でたまげました。

縁の決意は今後にどう作用するのか、などの疑問は次回以降ですね

死刑制度についてはまあ現状維持が妥当ではないでしょうかね。裁判員制度の導入でどんな反応が出るのか・・・
  • 2008-01-03
  • 投稿者 : オサフネ
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[C138] コメントありがとうございマウス

 鼠だからね、今年は!

○TFJさん
 可愛い妹のためなら殺人だって頑張るよってのは、確かに頑張りすぎです。むしろヤりすぎ。って電子レンジかい!?
 縁は女の子ですよー。それを言ったらA´s1話のフェイトなんてもう……
 ちなみにクロガネはゆとり制度は賛成でしたけどね。嫌いなことは頑張っても人並み程度、ってのが持論でしたので。3章の3で語ってしまいましたが。

○オサフネさん
 スーパークロノタイムとタメ張られた!? そう言えばストライカーズにはなかったからなぁ……
 縁の決断はまぁ……こいつは重大な事を軽率に言う奴ですから。
 裁判員制度は呼ばれない事を祈ります。てかクロガネの職業じゃ絶対行く暇ないですし、急患でたら最後ですよ。
 
  • 2008-01-04
  • 投稿者 : クロガネ
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[C139]

おひさしぶりです。


あれっ アリサがヒロインしてる。 おっかしぃなぁ w



死刑制度ですが俺はどちらでもかまいませんがね。俺は自分の手でケリつけるつもりですし・・・

昔から思ってたんですが、被害者遺族が死刑にしろ死刑にしろとピーピー囀るのは聞くに堪えませんね。そんなに囀るなら自分でやれと考えてます。

自分の手を 血で染め 自分の手で 命を奪い 奪った命をしっかりと背負うなら、自分はなんら文句をつけるつもりもないですから。


そもそも死刑にしろといいつつ自分でやらないのは卑怯者の卑劣漢だと思います。だってそうでしょう死刑を執行する人も人間ですよ。しかも自分に直接の害を与えてない人間を殺さなければいけないんですよ。 どれだけのプレッシャーなんでしょうかね 無関係の人間を仕事で殺すのは・・・


少なくとも自分は、自分が殺したいけど手を血で染めたくない 殺したくない 奪った命を背負いたくないから あなた変わりに殺してくださいなんて、 卑怯で卑劣なまねしたくないです。


でも、法治国家だからできないんですよね・・・・・くそったれ!!


いろいろ本音駄々漏れですが また 機会がありましたら感想送ります。
  • 2008-01-05
  • 投稿者 : おにがみ
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[C140] コメントありがとうございマウス

○おにがみ
 あ、おひさしぶりで――って相変わらず抉るように酷ぇ(笑
 アリサが主人公だよぅ……

Q・右の頬を打たれたら?
A・顔の形が分らなくなるまで相手を殴れ!

 って奴ですねぇ。
  • 2008-01-06
  • 投稿者 : クロガネ
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[C555]

・゚・(つД`)・゚・ ウェ―ン
縁ぶん殴った奴がバーナード・ワイズマンみたいにされちゃったよぅ

話の転換期っぽいですねー
ノンストップアクションみたいに止まりそうにありません
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
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[C563] コメントありがとうございまー

 しかしよくよく考えると、バーニィはビームサーベルでぶすっとヤられたのだから、こんがり、という可能性もあったりしますが。
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
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[C601]

今更だけど、なぜ縁を女の子にしたんだろう・・・。
普通に男の子で良かったと思う
はっ!?百合設定に何か秘密が!?
  • 2010-03-11
  • 投稿者 :
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[C602] ここから先危険地帯

○ さん
 百合設定に秘密あります、はい。
 男の子なら、それこそ普通に恋愛してしまうからです、ふふ、ふふふ。
  • 2010-03-12
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 26

 格好いい、なんて縁に対してらしからぬ感想を抱くのも束の間、男達を警戒するように縁は身体の向きを元に戻しつつ、それでもパイプ椅子に繋がされたアリサの両手に巻きついていた紐を探るようにして後手で引き千切る。毎回思うが、お前は一体どんな身体能力してんだ。
 細くあったが見るからに丈夫そうな縄から開放されて、無意識ながらも縛られていた所を手でさすり合わせる。痛かった。
 縁がぽいと捨てた、先程まで自分を縛っていた紐をちらりと見ると、縁が千切った切れ目の半分が鋭利な刃物で切られていた跡があった。なるほど、そうやって千切り易くしていたということか。トリックは分かったが、それでも十分引き千切るのは筋力がいるだろうし、そもそもいつ切りこみを入れたのかは分からない。
「アンス」
「あ、う、うん?」
 突如呼びかけられた言葉にアリサは慌てて顔を上げて縁を見上げる。
 ぁ――
 思わず、心内で息を漏らした。もしかしたら本当に息が漏れたかもしれない。
 縁の背中は、汗でびっしょりだった。
 6月も中旬に向けるというのに、未だに長袖の冬服だから、そりゃ汗もかくだろう。
 だろう、けど。
 まるでバケツに入った水を頭から被ったかのように、その制服は汗を吸って、そして吸いきれなくなって、こんな薄暗い所でも分かるくらいにびっしょりと濡れていた。
 こんな状況に、自分だって汗をかいた。大半が冷や汗や油汗で。背中だって濡れている。
 しかし、縁の汗は、それ以上に制服を濡らしていた。
 1000m持久走を3分切って、それでも息も切らさない化け物体力の塊が。
 自分を探し回って、汗をかいたのか?
 走り回って、汗をかいたのか?
 今は何時か分からない。何時間経ったかは分からない。
 自分が誘拐されて、眠っていた間にここまで移動した足は多分車だ。まさか徒歩やバイクはないだろう。
 それに対して運転免許なんて何一つない縁は、走り回るか、自転車か。自転車を持っているかは知らないが。
 どうやって捜し出したかは分からない。どうやって自分を見つけたかは分からない。
 でも、自分が誘拐されたと縁が知って、今までずっと、縁は走り回って捜し続けてくれたのか?
 汗だくになりながら。
 何処にいるかも分からないのに。
 そんな色など少しも出さず、それどころか安心させるために笑顔まで浮かべてくれて。
「走れそうか?」
 胸が絞めつけられるような想い、とはこの事を言うのか。
 胸が、苦しい。
 本当に、本当に、こいつは嘘やごまかしが、上手かった。もしも汗で濡れてなかったら、そして縁が自分で言わなかったら、気付かないままだっただろう。最初に感じたのとは、正反対だ。
「ぅ―――うん」
 なんとか返した言葉は、はたして本当に言葉になったかどうかの自信はない。
 しかし、それでも縁はよし、と振り向く事なく肯いた。
「ぃ――てててて……」
 離れた場所から、男の声がした。慌ててアリサが視線を向けると、そこには男が1人背中をさすりながら起きあがっている所であった。アリサは放心状態だったから覚えていないが、一番最初に縁が吹き飛ばした男である。
「君は……確かいつもアリサちゃんの周りをちょろちょろしてた子だね?」
「お前は朝見かけた奴だな」
 再び慌ててアリサは視線を戻すと、縁は起きあがる男を無視して青髪の男と会話していた。
 青髪の男は疑問系なのに対し、縁のそれは断定である。
 やはり、縁が今朝見ていたのは、こいつらだったか。
 パイプ椅子からゆっくり立ち上がり、縁のその小さな背中に隠れるようにしてアリサは身を寄せる。ぺたっと触った縁の背中は、絞れば水滴が出てくるくらいに濡れている。
「これは犯罪行為だ。それを分かっての行いか?」
 そして、まるでアリサを自らの背中にかばうようにして、縁は右手でそっとアリサを抱き寄せる。
 心臓が跳ねた。
 そういう場合じゃないと、分かっているのに。
「分かってるよ。でもお金になるからね」
「下劣だな」
「知ってるよ、誰より自分がね」
 青髪の男はにこやかに、そして不気味に笑いながら答えてきた。人として最悪な人種である。縁が明らかに侮蔑の篭った声を出すのも無理はあるまい。
「さ、その子を返してもらおうか」
「もちろんお嬢ちゃんも……逃がさねぇけどな」
「まあ、こんな所に居合せたんだ。どうなるかくらい、分かるだろ?」
 手を伸ばしながら、青髪の男は言う。返せと。
 ちょっと待ちやがれオイ、私はいつからあんたのモノになったよ、とアリサは即座に心の中でつっこみを入れる。調子が戻ってきたようだ。
 言葉を続けるように口々に男達はドスの効いた声で次々に言葉を並べた。なんというか、ドラマ的3流の悪者台詞そのままだ。
 ふぅ、と縁が深呼吸するように息を深く吐き、そしてゆっくりと空手のような構えをとる。
 両足を開き、上半身を沈ませ、アリサに回していた右手で拳を作りながら脇に固め、左手で手刀を作りながら前に構える。
 ああ、そうだった、こいつは護身術を習ってたんだっけ。
 今更ながらに思い出した。同時にその腕前も。
 なんと言うか、あの武道場での1件は禁句のような物なので、すっかり忘れていた。
「た、倒せるの?」
「無理だ」
 不安ながらも小声で聞くと、あんまり聞きたくなかった答えが返って来やがった。
 っておい、無理なのかよ。
「で、でも縁、確かフェイトとの時は……」
「アンス、1対1で強い者が、必ずしも1対多数に強い訳ではないぞ」
 余計に不安になってきたアリサに、縁は容赦なくすぱすぱ返してきた。情け容赦ない台詞は場所と場合を選ばずに相変わらずだ。
 いや、まあ確かに縁の言いたい事は分かる。
 1対1と言うのは、要は相手にだけ注意を払っていれば良い。もちろん足場や場所、周りなどにも注意しなければいけないが、それでも最も注意を払う相手は1人だ。
 しかし多数が相手ならば話が違う。相手が多数ならば常に周り全てに注意しなければいけない。背後を取られたら後にまで注意が必要である。それに1人に対して組み合っている最中に、後から1発、なんて事もある。
 それは分かる。
 分かる、が、そんな冷静に切り返す言葉ではないだろう。
「……ちっ、取り押さえても良いですかい?」
 返答を返さない、それどころか構えで返した縁に痺れを切らしたかのように、男の1人が青髪の男に対して聞いてきた。
 あの青髪、リーダー格か。そういや普通にリーダーとか言われてたっけ?
 男の問いに対して、青髪の男は縁から視線を外す事なく少しだけ考え、そして右手を軽く上げる。
「取り押さえろ。ただし油断はせず、全員武器を持て。目標は無傷で捉えろ」
 明らかに自分達に話しかける口調とは違い、事務的かつ命令的。爽やかそうな口調といい、雑な口調といい、今の口調といい、どれがこの男の本性か分からなくなってきそうだ。
 その言葉に男達はそれぞれに鉄パイプやら、やたらとゴツいナイフやらを手に持ちはじめる。
 ちょっと、ちょっと待て。
 体格で既にリーチが違うくせに、武器まで持ち出す気かこいつ等は。
 アリサの血の気が引いてくる。
 青髪の男は少しも視線をずらす事なく、軽く上げた右手を、まるで縁を指すように下ろした。

「あのチビは殺せ」

 ジュース買って来い、くらい軽く、とんでもなく怖い命令を、下してきた。
「あいよ」
「了解です」
「待ってましたぁ」
 一斉に男達の顔色が変わった。
 嬉々と。
 待て。
 待て待て待て。
 何を言っている。こいつ等は、何を言っている?
「え、えええにえに、縁!?」
「大丈夫だ。どんな最悪な場合でも、アンスの身の安全は保証された」
 されてねぇよ。
 つーか自分の心配しろ。
 震えて縁の制服を引っ張ると、返ってきたなんとも見当外れの言葉に反射的に内心でつっこみを入れていた。
 不気味に笑いながら、男達がゆっくり詰め寄ってきた。思わずアリサは後に下がろうとするが、縁が1歩も下がらなかった。
 沈めていた上体を、ゆっくりと更に沈めていく。
「アンス、全力で逃げろ。時間くらいは稼ぐ」
 言い終わるが早いか、縁は即座に床を蹴っていた。
 前に出た。
「え、ええ!?」
「うわっ!」
 突然の行動に驚くアリサの声と、誰かが上げた男の声が見事に重なる。
 床を蹴って前に出た縁に驚いたのか……それにしては不自然なくらいに男が1人、反射的のような動作で顔面を守るように防御を固めた。
 防御するのがあまりにも早い。
 突然の仲間の声や行動に驚いたのか、他の男達もその男へと視線を向け――

 どすっ!

 1歩分の時間をずらし、超速で深く踏み込んだと同時に繰り出された縁の拳が、その男の股間にめり込んでいた。これは痛い。
 その衝撃に、いやいろんな意味を含んだ衝撃に、男の身体がくの字に曲がった。
 明らかに早すぎた男の防御。
 確かフェイトと試合だか稽古だかでの時に、一番最初に縁が踏みこんだ際、今と同じようにフェイトがあまりにも早すぎる反応を示していたのを思い出す。何かトリックがあるのか?
 ――じゃ、なくって!!
「縁!?」
「逃げろ! すぐに追う!」
 倒せないと断言したくせに立ち向かった縁の名を叫ぶと、即座に返された。
 拳を即座に引き抜き、更にその男の背後に回り込むかのように縁は右前に踏み込み、突然の衝撃に緩んだのだろう、同時に男の手からナイフを奪うかのように引き抜く。
 そして即座に首を下げるように前屈姿勢を取る。
 びゅん、と縁の頭上すれすれに鉄パイプが高速で通過した。外れた鉄パイプは痛みに悶絶しかかっていた男に対して追い討ちのように決まる。
 髪一重だった。
 奪ったナイフを縁は投げ捨て、同時に真右に跳び、鉄パイプを振るった男の背後をすれすれで抜ける。
 逃げろ。
 縁の言葉が頭を通過する。
 逃げる?
 縁を見捨てて?
 でも、今ここに居ても、自分は縁の役にはたたない。むしろ足手まといでしかない。
 だけど、向こうは縁を殺す気でいる。
 縁だって勝てないと断言していた。
 しかも向こうは全員武器持ち。縁は何故か奪ったナイフを捨てた。
 縁の一撃は確かに痛いだろうが、それは決定打には程遠い。しかし、向こうは縁に一撃入れれば、それだけで決定打。分が悪すぎる。
 そんな状況で、どれだけ時間が稼げるというのか。
 そして、その貴重な時間が、自分が迷っている間にも消費されてしまう。
 逃げる……以外に選択肢はなかった。
「―――っ!」
 身を翻した。
 血が出るんじゃないかというくらい、唇を噛みしめる。
 悔しい。
 不甲斐ない。
 惨めだ。
 泣きそうだ。
 床を蹴る。倉庫の出口は、縁が入ってきた時に開けたのか元々開いていたのか、人1人分くらい開いていた。あそこから逃げるのだ。
 逃げる。
 縁を置き去りにして。
 仕方ないじゃないか。
 頭の片隅で誰かが囁いた。きっと悪魔に違いない。
 だって、自分がここにいたって意味がない。縁のようには戦えない。早く逃げないと2人ともヤバいんだ。だから縁を置いて先に逃げる行動に、間違いなんてない。
 分かってる。ああ、その通りだ。
 だが、だがしかし、分かっていても悔しいのだ。
 役に立たない自分が。
 足手まといでしかない自分が。
 すずかのように大人顔負けの身体能力なんてない。縁のように格闘技が秀でている訳じゃない。
 ましてやなのは達のように、魔法が使える訳なんて、ない。
 自分に出来るのは逃げる事だけ。
 惨めだ。
 惨め過ぎる。
 それでも走って、出口に辿り着き――

 ドズッ!

 鈍い音。
 誰かの細い悲鳴。
 ああ、今の声は……縁だ。
 思わず足が止まった。
 ――良いのか?
 ――本当にこれで良いのか?
 良い訳が、ない。誰かを見捨てて助かるなんて、良いはずがない。
「シン! イヅカ! 目標を捕まえろ!」
「あいよ!」
「へい!」
 青髪の男の命令のような声に続いて、2人の返事が威勢よく返ってきた。走るような足音が耳に響く。
「ひ――っ」
 床を、蹴っていた。
 反射的だった。
 振り向きもしなかった。縁の無事を確認もしなかった。
 アリサ・バニングスは、逃げ出していた。
 畜生。
 畜生。
 ちくしょう。
 ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。
 出口を跳び出し、既に闇が落ちかけていた空が広がる外に踊り出ながら、アリサはひたすら自分を詰り続ける。
 怖かった。
 あの男の声が、怖かった。
 暴行されかけた、数分前の記憶がフラッシュバックされる。
 捕まったら、ああなる。
 また、あんな目にあう。
 いや、あれ以上の恐怖を味あわなくちゃいけなくなる。
 そんな考えが、足を進めていた。
 結果として、縁を見捨てて。
 最低だ。
 きっと自分は今、最低な事をしている。
 
 
 
 
  
 
 
 
  
 
 

 
「ぐぅっ!」
 背中からの前に突き抜ける衝撃に、縁は前へ自ら転がるように跳んでダメージを緩和する。鉄パイプによる打撃、ナイフとか刃物ではないだけ僥倖か。舌打ちしながら前転をして転がり――
 即座に手を跳ね伸ばして無理矢理右へと進路を変える。
 キッ!
 コンクリートの床が悲鳴を上げる。鉄パイプによる追撃が、跳ね伸ばした手首を掠めながら床を叩いていた。鉄パイプも何処かがささくれていて引っ掛かったのか、手首に傷が走る。
「シン! イヅカ! 目標を捕まえろ!」
「あいよ!」
「へい!」
 男の……リーダー格だった青髪の男の指示に対して、名前を呼ばれた者だろう、返事が2名上がる。
 横に転がる勢いそのまま足を立て、跳ね上がるように跳び起き、縁は一瞬だけ視線をアリサの方へと向けた。
 倉庫の出口より走り出て行く後姿が見えた。
「よし……っ」
 その調子だ。そのまま走れ。
 心の中でエールを送りつつ、縁は即座に視線を戻し、同時に頭を庇う様に右拳を振り上げる。
 ギシッ、と嫌な音と共に今まさに縁の頭に振り下ろされようとしていたナイフが弾かれた。
 弾くと同時に左足を勢い良く踏み込み、相手の足を踏みつける。
「ぃてぶぐっ!」
 踏み込みの勢いを利用しながら下腹部に打ち込まれた左の拳に、男が奇妙な声を上げ身体をくの字に折り曲がる。
 それを確認するより早く、男の両足の間に右足を踏み込む。踏み込む瞬間膝が急所を掠めていた。更に踏み込む勢いそのままに、至近距離も至近距離、零距離ともいえるくらいの密着状態にも関わらず男の胸板に右の拳をそのまま打ち込む。
 左足で未だに踏んでいるため、そのまま右腕を振り抜くような形で男を思いっきりひっくり返して、そしてすぐに後に跳び退く。
 追撃は、ない。
 男達とは距離を離して、再びちらっと出口の方へと視線をやると、そこから走り出していく姿が2名。両方無骨なナイフを握っている。縁は小さく舌打ちをした。
 縁のいる位置から見て出口は男達とは向かって正反対、とまではいかずとも逆方向。背中を向けて走れば逃げられるかもしれないが、当然の如く残っている男達5名は追ってくるだろう。追って来ても振りきる自信はあるし、振りきれないにしても巻く事はなんとでも出来る。
 問題はアリサの方だ。
 男が2名、アリサを追った。もしも今縁が倉庫から走って逃げてアリサと合流したとする。
 そうすると、アリサの追っ手は自然と7人に膨れ上がる。
 そもそも男達の目的はアリサの誘拐。次に縁の殺害。最低限アリサを捕らえるのが男達の役割である。
 ここで縁が倉庫から逃げれば当然男達が追い、振りきったら今度は手分けして捜すだろう。その捜している時にアリサを見つければ、縁の殺害を後回しにしてアリサを捕らえるのを優先するはずである。つまり、外に逃げたアリサを捜す目が増えてしまう。
 そして、仮にアリサも縁も逃げきれたとして……次の問題が発生する。
 自分達の顔を見られたのを、男達が黙って見逃すとは思えない。
 1度誘拐なんて事をしてしまえば、2度も3度も同じ事。再び捕らえ、口を封じる可能性は極めて高い。しかも執拗に狙うのならば、1ヶ月でも1年でも狙い続けるだろう。
 状況は、極めて悪い。
「1つ聞かせてくれ」
 ゆっくり姿勢を正しながら、青髪の男の目を見つつ縁は口を開いた。
 男達は誰もし掛けて来ない。アリサへの追っ手を出している以上、急いで縁を始末する必要がないからだろう。逃げようと時間を稼ごうと、どっちにしても縁にとって得はないのだ。
「このまま見逃して、手を引いてはくれないか?」
「それは無理だね」
 にこやかに即答された。よく出来た羊の皮だ。
 仕事だからなぁ、と別の男が呟いたのはしっかり耳に届いている。依頼者は誰か、など聞いても答えてはくれないだろう。
「警察が知れば確実に刑務所だぞ」
「余罪を調べられたら追加で電気椅子が待ってるよ」
「今まで何をしてきたか気になるところだな」
「その前に自分の身体でも心配するべきじゃないかな?」
「私を殺すというのか?」
「そうだよ」
 決して殺気たつ事もなく、威嚇する事もなく、さらりと返される。
 一度青髪の男の手元へと視線を移す。握られているのは長い鉄のパイプ。
 強度もリーチも申し分ない。その気になれば、人を殴り殺せる道具である。
「―――武器、か」
 ぽつっと、縁は漏らすように呟いた。
 呟いてから、再び視線を上げる。
「本質としての扱いは正しいが……テスタロッサさんの爪の垢でも煎じて飲ませた方が良さそう、だっ」
 言い終わるのが早いか、縁は素早く踵を返し、即座に床を蹴った。
 向かう先は倉庫の出口。
 振り向く際、青髪の男がにやりと笑みを変えたのが見えた。縁が外に出ればアリサを見つけて捕らえられる確率が増えるというのを、あれは分かっているようだ、おそらく始めから。
 青髪の男が合図する必要もなく、男達もそれぞれ一斉に駆け出し―――

「待てよクソ供」

 その男達の後から、低い声が響いてきた。
「っ!!」
 一斉に振り向いた。
 その声が、自分達の仲間の声ではないと、聞いただけでも分かったからだ。
 出口とは反対側。
 別の男が1人、ズボンのポケットに手を突っ込み、立っていた。
 緑色のジーンズに黄色がまぶしいアロハシャツという愉快な格好をしている、体格の良い男だ。やや長身で日焼けしているのが、妙にアロハシャツに似合っている。
 海鳴 恋慈であった。
 そこには先まで誰もいなかったのに、いつ入ってきたか、いつからいたのか、恋慈は当然のようにそこに立っている。
「捕らえてくれ!」
「あいよぅ」
 振り向く事なく縁は叫ぶように言葉を飛ばすと、恋慈が低い声のまま答えた。
 咄嗟に青髪の男は振り向くと、縁は既に出口から飛び出していた。予想よりも足が速い。青髪の男が舌を鳴らす。
「追えっ!!」
「追わせるな」
 声が響くのはほぼ同時。
 男達が反応するよりももっと速く、まるで壊れた自動ドアの如く誰も触っていないはずの出口の扉が凄まじい勢いで勝手に閉まった。ガシャァァァンッ! と金属同士がぶつかり合った音が鳴り響く。
 縁を追うための道を、塞がれた。
 絶句した。
 それもそうだ、ひとりでに閉まるはずのない扉が閉まったのだ。
「それにしても捕らえろとは、簡単に言ってくれるというか甘いというか」
 笑うように言う恋慈の言葉に、再び男達の視線が恋慈に集まった。
 誰だこいつは。
 いつの間にいたんだ。
 視線は口以上に語っていた。
「はぁ……おい、そこの気色悪いブルーの頭」
 見送るように扉の方へと焦点を合わせていたのを、ようやく男達の方に合わせながら恋慈はやや投げやり気味に青髪の男へ言葉をかける。
 青髪の男は一瞬きょとんとした様だったが、一度手に握った鉄パイプを確かめるように握り直すと、にやりと笑いを浮かべた。
「ああ、なんだよアロハシャツ」
 尊大に言い放つ。
 こちらは5人、しかも全員武器もちである。例え相手が武術の心得があろうが武器を隠し持ってようが、有利なのは明らかにこちらである。
 自分達の立場を再確認してからの発言だった。
 しかし、恋慈は別にその物言いを気にする事はなかった。
「余罪調べたら、電気椅子が待ってるんだっけ?」
 ごそごそとズボンのポケットから一枚のトランプカードを取り出しながら恋慈は尋ねる。トランプカードはスペードの4、裏は模様もなく墨を落としたかのように真っ黒であった。
 さて、この男はいつからいたんだ? と改めて考えながら、青髪の男は態度を変える事なく口を開いた。
「ああ、そうだな。結構悪者みたいだからねぇ、俺らは―――」


「じゃあ今すぐ死ね」


 ズドガァァァン! と鼓膜が破れるのではないかという程の轟音が、言葉を遮るように短く放たれた恋慈の台詞に続くように響き渡る。
 何の音か、など男たちが考えるよりももっと速く。
 鼓膜を守るために耳を塞ぐよりもずっと速く。
 むしろ音が響くと同時ぐらいに

 青髪の男の頭が、スイカ割り以上に木っ端微塵に砕け、その身体が赤い霧を放出しながら吹き飛んでいた。

 悲鳴もなかった。
 当然だ、悲鳴を上げる口を含むところがバラバラに砕けたんだから。
「―――っ! リーダーッ!?」
 隣にいた男の悲鳴のような声に皆が振り向くと、どちゃっ、と嫌に生々しい音を立てながらその身体は床に落ちた。
 首のない、不格好な肉の人形が。
 何が起きた。
 これは何だ。
 皆、絶句した。
「どうせ警察に突き出されて牢屋にブチ込まれても、電気椅子に座るまで税金で飯食ってくんだろ? 個人的にそういうの大嫌いでね……俺が払ってる税金なんて消費税くらいだけどさ」
 投げやり口調のまま……いや、若干笑いが篭った声で口にした恋慈の言葉に、全員の肩が跳ね上がる。
 ゆっくり、恋慈の方へと視線を戻した。
「それに人に危ない物を平気で向けるんだ、向けられたって文句ないだろ?」
 バレットM82。
 見ただけでその名前が出てくるのは、はたして何人いるだろうか。少なくとも男達は、そんな名前は頭の片隅にも出てこなかった。
 スナイパーライフルに分類されるその凶器の顎を、恋慈は平然と男達に向けていた。むすっとした顔で。
 何処から出したのか、誰も分からなかった。そもそもあんなデカいのを、恋慈は持ってもいなかった。
 そのライフルのグリップを握る手には、先程まで変哲もないトランプカードが握られているだけだったのに。
「お、おい……冗談、だろ?」
「ん、ああ、お前は確か縁ぶん殴ったよな。特別に豚の餌になるくらいにミンチにしてやる」
 男の振るえる声に対して、恋慈は問いに答える事なく死刑執行の言葉を漏らす。
 爆音の、嵐。
 その男の身体が、ボロ雑巾のように跳ねた。
 最初に頭が吹き飛び、右肩が弾け腕が宙を舞い、左膝が砕け足が落ち。そして人の形として構成されている部分が次々と千切れ奪われて―――床に落ちる頃には、それはただ “平べったい” 肉塊になっていた。
 1人、腰を抜かしたようにしゃがみ込んだ。
 2人は、呆然としたまま現実を受けいれられなかった。
 肉塊になった “それ” から銃口をゆっくり上げながら、恋慈は溜息を1つ。
 もしも客観的に見れたなら、恋慈の構えるそのスナイパーライフルが現実離れした代物であるのが分かるだろう。
 第一に、恋慈はそのライフルを片手で扱っていた。右足を半歩前に出し、右腕をまっすぐ伸ばしながら、それこそ小型の拳銃でも構えるかのようにその銃口を向けていた。重量があり、長物であるスナイパーライフルを構える格好では、ない。
 そもそもバレットM82という代物は、装甲車のボディすら撃ち抜く破壊力がある。当然ながらその分反動は大きく、立ち姿勢ではなく伏せながら機関銃でも扱うかのように構えるのが普通である。立って撃つどころか片手で撃つなど問題外だ。
 それに、恋慈はライフルを取り出してから一度も銃弾を装填していない。弾が外に連なっている訳でもなく、あんなに装填数がある物じゃない。
 つっこみ所が多い、不思議なライフルだ。
「こちらと毎日毎日、隠れろとか出るなとか戦うなって命令されてる身なんでね……結構ストレス溜まるんだよ」
 がちゃっと肩で担ぐようにスナイパーライフルの銃口をあげきり、愚痴でも漏らすかのように恋慈は呟く。
「ま、それは魔道師相手の話しだし――」
 続けて呟くその愚痴に応呼するかの如く、倉庫の出口の方から鈍い金属音がした。
 ガシャン、ガシャン、と。
 顔を青くしながらゆっくりと、腰を抜かした男が振り向く。
「―――――」
 なんだこれ、なんて言葉も出なかった。
 出口は開いた形跡もないのに、そんな音もなかったのに、そこには当然のように人の形をした影が2つ。
「それにお前らを生かして返せば、縁が危ない」
 もう誰も、恋慈の言葉など聞いてはいなかった。そもそも聞かせる気もないのか、それでも恋慈は口を開いていた。
 ガシャン、と音を立てながら、影が一歩動いた。
 その手には、2m近い巨大な剣。
 その手には、2mを超える戦斧。
 その影は、巨大な “鎧” だった。
「全部こっちの理由だけど……悪いな」
 “鎧” が近付く。
 恋慈が再びライフルを片手で構えた。













「死んでくれ」


















『クロノ君!!』
 何の前触れもなく頭に響いたエイミィの声に、クロノは反射的に読んでいた本から顔を上げる。
 手にして目を通していた本は 『悪魔の心臓』 とタイトルがある。看視者が保持しているロストロギアの詳細が記載された、童話とデーターが混在されてどこまで信用していいのか分らない物である。ゴタゴタがあって未だにこの本はクロノの手元にあった。
『どうした、動きがあったか?』
『うん! 海鳴市海岸の地域からドールタイプの反応! 数は2!』
 慣れた手つきで栞を即座に挟みながら本を閉じ、腰をかけていた椅子から立ち上がりながら返す言葉に、間髪入れずに返ってきた。
 懲りない奴らだな、と頭の片隅で考えながら、そこでふとクロノの動きが一度止まる。
 今、明らかに聞き覚えのある地名が出てきた。
『――海鳴?』
『そう、海鳴! 地球の、日本の!』
『あ、あー……そうか、分った』
 看視者の言語が知れてから、大体予想はついてはいたが、こうも早く探知網に引っ掛かって来るとは思わなかった。しかも自分の家がある街に。
 念話が切れたことを確認してから、クロノは呟くように一言漏らした。
「呪われてるかもしれないな、あの街は」













 日は既に、とっぷりと暮れていた。
 月明かりに照らされ、ゆらゆらと綺麗にその光が揺れる、そんな海。そこを目の前にした貨物置きは、倉庫が立ち並びコンテナが大量に積まれている。夜だと滅法怖い。
 そんな場所で、アリサはコンテナの影に隠れるようにして蹲っていた。
 早く逃げないといけない。
 それは分かっている。縁が稼いでいる時間だし、自分が逃げねば縁だって危険だ。分かっている。
 どれだけ縁が頑張ろうと、自分が捕まればそれで全て終わりなのだ。
 分かっているが、アリサは蹲っていた。
 頭の中で釣鐘が打ち鳴らされている気分だ。走らないといけないのに、身体が上手く言う事を聞いてくれない。もしかしたら薬が抜けきっていないのかもしれないし、残っていたのが走った事で身体に回ってきたのかもしれない。
 それ以上に、自分が感じていたよりも身体にダメージがきていた。
 殴られたり打ちつけたりしていた頭や縛られていた腕が、無茶苦茶に痛い。そしてパイプ椅子ごと倒れた時か……暴行されかけた時かに、足を捻っていたみたいだ。走った事で更に悪化している。
 暴行されかけて。
 毛が逆立った。
 ちくしょう、思い出しちゃったじゃないか。
 胸を隠すようにして、破かれてしまった制服を左右から引き寄せる。
 ちくしょう。
 頭の中に浮かぶ感想はそればかりだ。
 キスされた。
 悔しかった。
 別に初めて、と言う訳じゃない。キスくらい家族では挨拶のようなものだ。ただ、挨拶ではないキスというのは、初めてだった。
 涙が出そうになって思わず堪えようとするが、それは堪えられるものではなく、すぐに溢れ出す。
 何で自分がこんな目に。
 そう思っていない、と胸を張って言えるほど、アリサは成人君子ではないし大人でもない。そんな愚痴を思っても自体は好転しないと分かっていても、思わずにはいられなかった。
 体操座りで身体を丸めるようにして、アリサは縮こまり―――その時だった。

 ガシャァァァァァァァンッ!!!

 爆発音のような破壊音が響いた。
「っ!!」
 反射的に背筋がぴんっと伸びる。
 音がしたのは遠かった、がロクな音ではない。驚きすぎて心臓が止まりそうだ。
 追って来たのっ!?
 嫌な想像が高速で頭の中を通過して

「答えろっ! アンスは何処だっ!?」

 同じく遠くから響いてきたその怒声に、一瞬で肩の力が抜けた。もしかしたら腰も抜けたのかもしれない。
 縁だ。
 縁の声だ。
 その声だけで、たったそれだけで、何故だか安心できた。
 暫くしてから殴りつけたような派手な音がして、男の悲鳴が聞こえた。
「な……なにが勝てないよ……」
 圧倒的っぽいじゃない。
 ぽつっと、溜息混じり安堵混じりの言葉が漏れた。
 いや、もしかしたらボロボロなのに無理しているのかもしれない。大怪我しているのかもしれない。縁だったらそれでも平気で動く。
「――ぃ、行かなきゃ」
 彼女の所に。
 縁の所に。
 何故だか分からない、理由なんて何もない。けれど自分は、彼女の所に行かなければならない。自分を捜して必死になっている縁を、安心させなくちゃいけない。
 それ以上に。
 縁に、逢いたかった。
 足に力を入れて立ち上がろうとする。ガクガクと膝が大爆笑、太股が生まれたての仔鹿の足の如くなっている。足首が千切れそうなくらい痛い。
 前のめりに転んだ。
 危うく顔面から激突するところだった。
 反射的に受身は取れたが、今度は右の手首が痛んだ。
 ちくしょう、自分は1人で立つ事も出来んのか。
 自分自信に毒づきながら、それでもなおアリサは四ン這いになるようにして身体を起こす。立てる、自分は立てる、むしろ毎日立ってるじゃないか、だから立てるはずなんだ、と自己暗示の如く何度も頭の中で繰り返す。
 ゆっくり、振るえる右足で肩膝を立て、立ちあがろうと力を込める。
「ぁ……」
 くらっときた。
 頭が振れる。
 薬が抜けきってないのか、とどこか冷静な自分が呟くのを頭の片隅で感じながら、世界がぐるんと回り――

「アンス!」

 聞きたい声が、聞こえた。
 その声とほとんど同時に、肩から優しいと言うか柔らかいと言うか、衝撃とも言えないような感触が走る。ふわっと、日本茶の――煎茶の香りが鼻をくすぐった。
 世界が回転を止めていた。
「っ! 大丈夫かアンス!?」
 すぐ耳元、少女の声としては若干低めの声色。
 間違いない。
 間違えるはずがない。
「ぇ……にし?」
「ああ……ああ、良かった、無事で何よりだ……」
 確かめるように呼びかけた細い声に、安堵の色を込めながら縁は答える。
 横に倒れそうだった所を、抱き止められたようだ。まるで縁の胸に顔を埋めている……と言えるほど縁のそれは豊かじゃないが、そんな格好である。
 制服が、冷たい。
 水浴びから上がったかのように汗で濡れていた制服は、すっかり冷えきっていた。それが逆に、氷枕のように今は気持ち良い。
 本能的に縁の胸に顔をすりつけるかのようにして――ぎゅっと、縁が抱きしめてきた。
「――ぁ―――」
「良かった……本当に……捕まっていたらどうしようと……」
 泣きそうな声。
 縁の声。
 腰に回された手と、後頭に回された手に力が入って、ちょっと痛い。
 だけど不思議とその力強い抱擁は、安心できて。
「大丈夫だ……もう大丈夫だ……もう、安全だ……」
 涙が、大量に溢れてきた。
 悔しいとか、そんな涙じゃない。
 嬉しかった。
「えに、し」
「うん」
「えにし、えにし、えにしぃ」
「うん……うん……うん」
 律儀に返事してきた。
 もうそれが、限界だった。



「うあ、ああぁあぁぁ、あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」




 怖かった。
 悔しかった。
 でも助けてくれた。
 良かった。
 嬉しかった。
 来なかったらどうしようかと思った。
 無事でよかった。
 色々な感情が駆け巡る。
 我ながら思う。
 凄い泣き声だ。
「……うん」
 それでも縁は、静かに返してくれた。
 それがもう嬉しくて、安心できて、涙が余計に止まらない。
 ぽん、ぽん、と腰に回した手で優しくあやす様に叩く。
「悪い奴らは、もう懲らしめた。もうアンスに怖い思いをさせる奴はいない。もしもまた……」
 涙をぼろぼろ流して、大声で泣いているアリサの耳元で、今まで聞いたことのないくらいに優しく、そして貰い泣きしかけてるような声で縁が呟く。その呟きは決して泣き声にかき消される事なく、まるでアリサの脳内へ直接刷り込むかのように聞こえてきていた。
 一拍置いた。
 言葉に詰まったとか、次の言葉を考えてなかったとか、そんな詰まり方じゃない。
 まるで、迷うかのような、一拍の置き方だった。
「もしもまた……アンスに痛い思いや怖い思いをさせる奴がいたら、必ず私が懲らしめる。必ず私がアンスを救う」
 一拍は、たった一拍だけで、すぐに縁の口から流れるように言葉が続く。
「安心するんだ。アンスが私を必要とする限り、私はずっと、アンスを守る。だから、安心するんだ、アンス」
 ぽん、ぽん、と背中を叩くそれが。
 囁く言葉が。
 力強い抱擁が。
 問答無用で、縁の言葉に説得力を持たせていた。
 たぶん、こいつなら本当に守ってくれる。本当に救ってくれる。理由もなくそう思えた。
「あぁああぁぁぁあ、ひくっ、えにしっ、えにしぃぃぃっ、うあ、あぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ああもう、ちくしょう。
 認めるよ。
 認めますよ。
 今まで目を背けていた感情を。
 そんなはずはないと思い続けていた感情を。
 認めるしかないじゃないか。
 こんなピンチに颯爽と駆けつけて、こんな殺し文句耳元で囁かれて。
 認める以外じゃないか。むしろ、いままでそんな感情なくっても、コロっといくよ。
 アリサは。
 アリサ・バニングスは。
 海鳴 縁が、好きになってしまっていた。
 縁に抱きつき、抱きしめられ、見っとも無く大声で泣き喚きながら……今更ながらにアリサは、その感情を認めるに至った。


 
 
 
 
 
  
 
 
 



 だから、気付かなかった。
 気付ける状況じゃ、なかった。
 縁は聡い……と言うには明らかに下地となる基礎知識が足りないが、それでも頭の回転は人一倍だ。
 だから、言葉に迷ったそのたったの一拍に、どれだけの考えがあったか。その続けた言葉に、どれだけの決意があったか。
 気付けなかった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 まあ、あえてヒントを出すなら、フェイトに語った言葉の一部と自ら対立した事でしょうか。新年1月1日に無理矢理更新セーフセーフ。あけましておめでとうございます、クロガネです。
 はい、もう正直ウチのオリキャラ代表格の縁が正式登場した時点で分りきっている事を、よーやくアリサが自覚するという回でして……痛い痛い、画面に石投げないでモニターが壊れる。
 サブタイトルの 『恋ですか?』 ってか、むしろこれ恋以外の何物でもないだろうって感じです。
 アリサっぽさが全然出せなかったのが残念ですね。でも、あの場合逃げるのが正解だと思うのですよ、クロガネは。
 とりあえずこの回に対してクロガネがつっこみするなら……バレットライフル立ち姿勢って、ちょ、おま……


 OG外伝……クリアァァァァァァァァァァ!!!
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11件のコメント

[C134] デストローイ

悪人どもはひき肉になりましたとさ。

実際、刑務所にいれられても死刑になるまで何年もかかりますよね。オウム真理教のメンバーなんて、捕まったのは私が小学生ぐらいだったのに、死刑は最近なんて奴もいましたから10年も税金で食わせてたってことになります。被害者もそんなに経ったら呆れるでしょうに。

今日本でも死刑制度廃止の方向で進んでますが、私は反対ですね。被害者は納得しないでしょうし、廃止したらどんどん刑務所の部屋が埋まって収容するところも無くなりますよ。敵討ちを起こす人だって出てくるかもしれません。
  • 2008-01-02
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C135] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 ロードローラーだ! って、これはひき肉も残らないか。
 死刑制度廃止賛成か反対かと聞かれれば、どっちかと言えばクロガネも反対側ですね。だれもかれも死刑にしろとは言いませんが、重大な犯罪を起こしたのが “確定” してるなら、そういう人の衣食住を養うのは正直嫌です。
 むしろあれですよ、公開処刑して欲しい。
  • 2008-01-02
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C136] 電子レンジ頑張りすぎ

縁に捕らえろと言われてるのに、
さらに了承さえしているのに、
あっさり轟音とどろかせて、地味にアリサに精神ダメージ食らわして、
ドールまで持ち出して管理局に捕捉されてる恋慈。
熱くなると周りが見えなくなる子。
今回だけ見ると縁の方が常識人に見える。

それにしても縁、君はほんとに女の子か……

死刑制度に関しては
いまさら廃止にするのは下策でしょうね。
今でも日本の平和神話は崩れてきていますし。
これから先、犯罪件数は減ることが無いでしょうね。
死刑が少しでも抑止になってるのは誰も疑わないでしょう。
死刑制度の廃止よりも、犯罪そのものの抑止に力を注ぎなさい、と言いたい。
ってその結果がゆとり教育でしたっけ……
  • 2008-01-03
  • 投稿者 : TFJ
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[C137] スーパーレンジタイム

いや~大活躍の恋慈でしたが、その行動にいろんな意味でたまげました。

縁の決意は今後にどう作用するのか、などの疑問は次回以降ですね

死刑制度についてはまあ現状維持が妥当ではないでしょうかね。裁判員制度の導入でどんな反応が出るのか・・・
  • 2008-01-03
  • 投稿者 : オサフネ
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[C138] コメントありがとうございマウス

 鼠だからね、今年は!

○TFJさん
 可愛い妹のためなら殺人だって頑張るよってのは、確かに頑張りすぎです。むしろヤりすぎ。って電子レンジかい!?
 縁は女の子ですよー。それを言ったらA´s1話のフェイトなんてもう……
 ちなみにクロガネはゆとり制度は賛成でしたけどね。嫌いなことは頑張っても人並み程度、ってのが持論でしたので。3章の3で語ってしまいましたが。

○オサフネさん
 スーパークロノタイムとタメ張られた!? そう言えばストライカーズにはなかったからなぁ……
 縁の決断はまぁ……こいつは重大な事を軽率に言う奴ですから。
 裁判員制度は呼ばれない事を祈ります。てかクロガネの職業じゃ絶対行く暇ないですし、急患でたら最後ですよ。
 
  • 2008-01-04
  • 投稿者 : クロガネ
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[C139]

おひさしぶりです。


あれっ アリサがヒロインしてる。 おっかしぃなぁ w



死刑制度ですが俺はどちらでもかまいませんがね。俺は自分の手でケリつけるつもりですし・・・

昔から思ってたんですが、被害者遺族が死刑にしろ死刑にしろとピーピー囀るのは聞くに堪えませんね。そんなに囀るなら自分でやれと考えてます。

自分の手を 血で染め 自分の手で 命を奪い 奪った命をしっかりと背負うなら、自分はなんら文句をつけるつもりもないですから。


そもそも死刑にしろといいつつ自分でやらないのは卑怯者の卑劣漢だと思います。だってそうでしょう死刑を執行する人も人間ですよ。しかも自分に直接の害を与えてない人間を殺さなければいけないんですよ。 どれだけのプレッシャーなんでしょうかね 無関係の人間を仕事で殺すのは・・・


少なくとも自分は、自分が殺したいけど手を血で染めたくない 殺したくない 奪った命を背負いたくないから あなた変わりに殺してくださいなんて、 卑怯で卑劣なまねしたくないです。


でも、法治国家だからできないんですよね・・・・・くそったれ!!


いろいろ本音駄々漏れですが また 機会がありましたら感想送ります。
  • 2008-01-05
  • 投稿者 : おにがみ
  • URL
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[C140] コメントありがとうございマウス

○おにがみ
 あ、おひさしぶりで――って相変わらず抉るように酷ぇ(笑
 アリサが主人公だよぅ……

Q・右の頬を打たれたら?
A・顔の形が分らなくなるまで相手を殴れ!

 って奴ですねぇ。
  • 2008-01-06
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C555]

・゚・(つД`)・゚・ ウェ―ン
縁ぶん殴った奴がバーナード・ワイズマンみたいにされちゃったよぅ

話の転換期っぽいですねー
ノンストップアクションみたいに止まりそうにありません
  • 2009-12-14
  • 投稿者 :
  • URL
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[C563] コメントありがとうございまー

 しかしよくよく考えると、バーニィはビームサーベルでぶすっとヤられたのだから、こんがり、という可能性もあったりしますが。
  • 2009-12-17
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C601]

今更だけど、なぜ縁を女の子にしたんだろう・・・。
普通に男の子で良かったと思う
はっ!?百合設定に何か秘密が!?
  • 2010-03-11
  • 投稿者 :
  • URL
  • 編集

[C602] ここから先危険地帯

○ さん
 百合設定に秘密あります、はい。
 男の子なら、それこそ普通に恋愛してしまうからです、ふふ、ふふふ。
  • 2010-03-12
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

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Appendix

うぇぶ拍手

拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

最近の記事

プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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