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[C118] 感想を・・・

シスコンの正体、縁の役回りなど、今までちらちら出ていた問題の解答編といったところですか。

しかし、それよりもすずかルートに転ぶアリサ、なのはルートのフラグが立ってる縁。これらがどうドロドロの修羅場につながるか期待ですね(違

追記>心臓と待ってたのに 心臓止まってたのにの誤りでは
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : オサフネ
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[C119] 更新万歳

更新おつかれさまです、ユーノいいこといっていますね~~~縁と司書の顔合わせ、そして、アイヌ語の看視者おもしろくなってきましたw。アイヌ語か~~~もうつかわれない言語、死語というやつですね~~ラテン語も確か使われない言語だけど研究者とかにみられてますね~~言語体系それ一個だけでも覚えるの大変ですのに人類はいくつ言葉をもつのでしょうかw。ある意味、浪漫のせかいですねw。そのうち、相関図なんてできそうな予感です。それでは、連載がんばってくださいw
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : 小雪
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[C120] コメントありがとうございますー

○オサフネさん
 第4章の時点で謎解き開始というのも気が早い気がしますが……しかし伏線はまだ大量に。
 修羅場になるかならないか、それは後々お楽しみで。むふふふふ。

>心臓と待ってた
 ぎゃーっす!! 完璧に誤字です!
 指摘ありがとうございました。


○小雪さん
 ユーの君は良い子です、単にクロガネの扱いが悪いだけで。
 言語体系が失われるというのは、やはり物悲しいものでして。むしろ、アイヌ語は日常会話として成立していない以上、資料はあるが絶滅した、と断定されてもいい状態です。ロマンかなぁ?
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : クロガネ
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[C121] ユーノがんばれ

今回はユーノががんばってますね。良いキャラなのに本編で出番が無いのが可愛そう。縁とのフラグが立ったかも? アリサ危うし!すずかと百合ってる場合じゃないぞ! 押し倒された時は「発情期か?」と思ったけど

遂に看視者サイドの正体が明らかに、ドールってあの狭い家の中で一体ずつ組み立ててるんですかね?  スカリエッティは巨大な研究所でガジェット作ってましたが、これが資金力の差か…
  • 2007-12-03
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C122] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 個人的にはユーノ君大好きなんですけどね。なんと言うか、素朴かつ純粋なところが。
 もしもすずかが発情期なら、文字通り目の色が変わってそうで怖いですな。いろんな意味でアリサが危ない!

 スカリエッティの資金って一体どこから来てたんだろう……あまりに莫大過ぎる。
  • 2007-12-03
  • 投稿者 : クロガネ
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[C123] 資金源

再レスになりますが、スカ博士の資金は、脳みそ評議会どもが「正義」という建前のもと、あちこちから横領して提供してるのではないかと。

プレシアとかも、研究結果の提供の見返りに資金を得てたらしいですから、国をあげて犯罪の資金提供してるってことです。ふざけてますねまったく。
  • 2007-12-06
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C124] ほへぇ……

 あの設備、ナンバーズ、揺り篭、その他諸々が横領だけで賄われているとしたら、考えただけでぞっとしますな。軽く見積もっても新デバイスとか協会のコネとか色々やってる機動六課の10倍は資金流れてますね。他に回せよ。

 ……いや、日本も大して変わらんのですけどね……
  • 2007-12-07
  • 投稿者 : クロガネ
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[C475] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2009-06-02
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魔法の使えない魔法使いの魔法 23

 酷い、なんて陳腐な一言じゃ言い表せないくらい、とても酷い、最低最悪な夢を見た。それがどんな夢だったのか詳しく聞かせて、何て言われても、さて、はたしてどんな夢だったのかと首を傾げるくらいあやふやな夢だが、とにかく跳び起きるくらいは嫌な夢だった。
 弾かれるように起き上がる。急に起き上がったものだから、貧血のようにふらりと来た。
 貧血が収まってから、慌てて周りを見て
「おはよう、アリサちゃん」
 おっとりとした声が、投げ掛けられた。
 聞き慣れた声。すずかの声。
「ぇ―――すずか? あれ?」
 右を見ると、いつものように微笑んでいるすずか。
 そこで気がつく。
 ああ、ここは自分の部屋だ。
 日はすっかり傾き、見慣れた自分の城は窓から刺しこむ夕日で赤く彩られている。
 その赤く染まった自分の部屋の、自分のベットに、何故かアリサは眠っていた。すずかに見守られながら。
 ――あれ? 何で私眠って――?
 ちょっと混乱した。
 確か……確か、そう、今日はフェイトが久しぶりに登校してきて、普通に授業が終わって、皆で帰ろうと――
「アリサちゃん、凄い汗だよ」
「え、あ、うん、ありがとう」
 起きる前までの行動を思い出そうと頭をフル回転させていると、ふいにすずかがベットの上に這い上がるようにしながら、可愛いハンカチでアリサの額にびっしり浮かんだ汗を拭いてきた。
 丁寧な手つきだ。
 ふわっと、目の前ですずかの長い髪が揺れる。
 いつもの、すずかの香り……と、若干潮と汗の匂い。
 あ、ちょっと落ちついてきた。
「……ねえ、すずか?」
「うん?」
「私、どうしてここにいるの?」
「―――どうしてだろうね」
 微笑みながら、質問は軽く流されてしまった。
 いや、どうしてだろうねって言われても。
 ゆっくりとした手つきで汗をすずかに拭かれながら、アリサはもう一度今日の行動を思い出す。
 皆で帰ろうとして……そうだ、縁のアホが爆弾発言して、帰りに下着買おうとして……えっと、それから――
 駆け出す縁
 ビルの屋上
 自殺しようとする人
 慌てて自分も屋上へ走り
 引っ張り上げようとして
 落ちかけて
 知らない女の人が強引に引っ張り上げて
 縁が殴られて
 
 赤い血
 
 返事をしない縁
 
 聞こえない、胸の鼓動
 
「――――――――うっ」
 思い出そうとしなくても、勝手に記憶が湧き出てくる。
 吐き気がした。
 せっかく拭かれていたのに、再び汗がぶわりと吹き出してきた。血の気も一気に引く。
 そうだ。
 そうだ、そうだった。
 何で忘れていた、現実逃避か馬鹿野郎。
 そこからの記憶がないと言うのは、つまりそこで自分はそこで気を失って――いや待てっ!
「すっ、すずか!」
「うん?」
 おっとりした口調で返された。
「縁は!?」
「縁ちゃん? 最後までアリサちゃんの事心配してたよ」
 一度ハンカチを離して、折り直しながらすずかは答える。
 ……心配してた? え? 心臓止まってたのに?
「心配って――」
「本当に大丈夫なのかー、って。縁ちゃんの方が大怪我してるのにね」
「大怪我って……頭の?」
「うん。血が沢山、ね。止まってたから良かったけど、心臓に悪いよね、本当」
 何でもないように、当たり前のようにすずかは困った困ったと言葉を続けた。
 ――生きて、た?
 もしも、仮に、万が一に億が一、縁が死んでいたとしたら、すずかと言えどこんな態度のはずがない。
 ――生きてた。
 ―――死んで、なかった。
 肩が、安心したようにゆっくりと落ちた。ベットの上に座っているから分からないけど、腰が抜けたかもしれない。
「そ、そっか…………あ、え、縁はどうしたの?」
「縁ちゃんのお兄さんがね、抱っこして帰ったよ。何かね、怪我は教授さんが診るからって」
「お兄さんって」
 ああ、恋慈さんの事か。
 ――……抱っこ、ね。
 ちょっとだけ、むかっときた。
「なるほどね……そっかそっか、何だ、良かった」
 そのイラつきは押さえながら、アリサはゆっくりと息を吐く。
 良かった。
 生きていて。
 本心だった。
 心臓が止まっていると思ったのは勘違いだったんだろうか。だとしたら、それで気を失ったのはとんでもなく恥ずかしいが。もしくは心肺蘇生に成功したのか。
 ともかく、良かった。
 汗を拭き取り終わったのか、すずかがすっと身を引く。
 
「良くないよ」
 
 冷たく、平淡な、すずかの声とは思えぬ程の声色。
 一瞬誰の声だと思った。
 視線を向けると、真剣な目をしたすずか。
「全然、よくない」
 続いて、視界がぐるっと回った。
 ぼすっと後頭部に軽い衝撃。何故かいきなり天井が見えた。
「―――ぇ?」
 胸の上に軽い重み。
 柔らかい感触。
 すずかの、香り。
「す……すずか?」
 すずかに押し倒されたのだというの事を気付くのに、かなりタイムラグがあった。
 アリサの胸に顔を埋めるように、むぎゅっとすずかが抱きついている。抱きしめている力が強いのか、ちょっと痛い。

「心配、したもん」

 呟き声が、漏れた。
「すっごく、すっごく、心配したんだもん」
 泣き出しそうな、声だった。
 もしかしたら泣いているのかもしれない。しがみつき、顔を押し当てているから見えないだけで。
「―――すずか……」
「全然、起きなくて……途中うなされてたんだよ……」
「――うん」
 呟き続けるすずかの肩を、そっとアリサは寄せるように抱きしめ返した。
 大丈夫。
 安心して。
 そう言葉ではなく態度で語るように。
 抱きしめた時、すずかの制服の袖が破かれていた事が気になったが、とても聞ける雰囲気ではない。
「このまま起きないんじゃないかって……ずっと眠ったままじゃないかって……私、本当に―――」
「――うん、ありがとう」
「―――――――――――っ」
「心配してくれて、ありがとう、すずか」
 怖い思いさせて、ごめんね。
 私は、ここにいるよ。
 なるべく、安心させるようになるべく優しい声色にしながら、すずかにそっと囁いた。
 効果はあったのか、一度すずかは口を閉ざして―――少しずつ、肩がふるふると震えてきた。
 ――泣かせちゃったか……
 よっぽど心配したんだろう。困った反面、そこまで心配してくれたのが嬉しいと思うのは、不謹慎だろうか。
「―――ぅ――ぅぅ―――」
 すずかの口から漏れる嗚咽は、空耳ということにしよう。
 ぽん、ぽん、とすずかの背中をあやすように軽く叩く。
 まさか自分がすずかをあやすとは。
 いつもはすずかが誰かをあやす側なので、アリサにとってちょっと新鮮だった。
「ァリサ……ちゃん……」
「うん?」
 蚊の鳴くような小声で、呼ばれる。
 未だにすずかはアリサの胸に顔を埋めたままである。泣き止むまで、意地でも離さないだろう。
「もう、これから……あんな―――――」
 それだけ言って、すずかは口を閉ざした。
 あんな……
 何が言いたいか、アリサには何となく分かった。
 あんな、危ない事、しないで。
 そう言いたかったんだろう。
 言いたかったんだろう、が、言えなかったんだろう。
「――すずか」
 名前を呼ぶも、アリサの表情は困惑気味だった。
 実際のところ、自分が気絶した原因は自殺しようとしていた人とは全くの無関係である。勝手な勘違いで勝手に気絶したのだ。なーにが心臓止まってるだ、生きてるじゃないかもう。
 しかし、それをすずかは知らない。
 だからすずかの頭の中では自殺しようとした彼を止める時に、アリサに何かあったのだと思っているらしい。
 ……思ってるとしたら、確かに口を閉ざすだろう。
 その 『危ない事』 をしなかったら、どうなっているか、すずかならば分かるはずだから。
 アスファルトの上に、見たくもない物が四方八方に飛び散っていただろう。
 その件に関してはアリサ自身、自分の取った行動が間違っていたとは思わない。人の命というチップが1枚賭かっていたからだ。
 しかし、正しかった、とは胸を張って言えない。
 すずかが泣いているのだ。優しい少女を泣かせてまで取った行動が、果たして正しいのか、それは分からない。
「――ごめん」
 右手を肩から離し、すずかの後頭にそっと当てて、それから自分の胸にすずかの顔を埋めるように更に強く、むぎゅっと抱いてみた。
 心配をかけてしまった。
 本当にごめん。
 怒らせてしまった。
 本当にごめん。
 泣かせてしまった。
 本当にごめん。
 でも、また同じ現場を見てしまったとしたら、きっと今日と同じく駆け出しているだろう。
 心配させると分かっていても。
 怒らせると分かっていても。
 泣かせると分かっていても。
 今日のように自分の力だけじゃ助けられないかもしれないけど、それでも見捨てるなんて事、できない。
 すずかに押し倒されたまま、漏れる嗚咽と気の早いひぐらしの鳴き声を聞きながら、アリサは静かに目を閉じる。




 きっと、縁も何かを助けようとする時は、こんな気持ちなのかもしれない。



















「こらっ、縁!」
「うわっ」
 急に後から投げかけられた言葉に、縁は思わずびくりと肩をすくめる。
 慌てて振り向くと、肩で息を切らせながら駆け寄ってくる恋慈の姿。しまったな、とでも言うように縁の口が横一文字になった。
 少し暗い部屋。
 几帳面なくらいに汚れのない白い壁。
 訳の分からない大量な機械機材。
 そして場所に似合わなく部屋に充満した、むしろ鼻の曲がりそうなくらいの紅茶の香り。
 機材の中に埋もれるようにして、床に座りながら作業していた縁の姿はそう簡単には見つからないはずなのに、どうやら恋慈には通用しなかったらしい。
「馬鹿かお前は! 怪我治ったばっかりでふらふらするな!」
「いや、もう平気だ。ピンピンしてるぞ」
 縁の隣までたどり着いた恋慈は、強い語調で縁を叱るが、言われた方はけろっと返してきた。恋慈の頬が一度引きつる。
 ヤンキー座りで座り込み、恋慈は予告も容赦もなく縁に強烈なデコピンを1発入れた。
「~~~っ! っ!! ~~っ!!」
 したたかに打ち込まれた額を押さえながら、縁はイモ虫のように床を転がりながら声もなく痛みにもだえる。
 当然だ、数時間前までそこから大量出血していた場所なのだから。
「やせ我慢ばっかり得意になりやがって……ほれ、今日はもう寝ろ。実験もないんだから」
 溜息を吐きつつ、それでも痛みに跳ねる縁に助けの手を伸ばす事もなく恋慈は語りかけるが、言われている当の本人は聞いている余裕がない様子である。よほど痛いらしい。
 暫くして痛みが引いたのか、縁は若干涙目でむくりと起きあがる。
「ぃ――痛くない」
 再びデコピン。
 転がる縁。
「ちょ――ちょっとだけ痛いが、問題な」
 3度のデコピン。
 痙攣する縁。
「帰れ。休め。寝ろ」
「い、今、丁度良いところなんだ……これだけでもやらせてくれないか?」
 3拍子で言いつける恋慈に、泣きそうな顔で縁は起きあがる。やせ我慢以外の何ものでもない。
 頭には真っ白な包帯。
 血は止まっていたから簡単な処置だけでも済んではいるものの、本来ならば安静にしていなければならない状態だ。それでもふらふらと歩き回るとは……
 強情な、と恋慈は呟きながら、縁の隣にある物へと視線を向ける。
 
 ごっついフルプレートの甲冑。

 豪邸のアンティークになりそうな鎧。
 
 見る人が見れば、“それ” をこう呼ぶだろう。

 『ドール』 と。

「自立プログラムがもう少しで出来そうなんだ。そうすれば集団行動での味方の誤射も格段に少なくなる。それだけじゃない、今度のプログラムは凄いぞ、なんと自己判断が出来るようになるのだ。パターン選択で決まったモーションしか出来なかったのが臨機応変変幻自在に対応できる。この間のX2-2を下地にしているからバランスが良いし、今度からはフォーメーションも可能だ」
 恋慈の興味がドールへと移った事がチャンスだと思ったのか、縁はまくしたてるように一気に聞いてもいないセールスポイントの説明を始めた。
 物を言わないドールは、本当に置物のようにたたずむのみ。
「完全自立型のタイプRからプログラムを転用しているからハード面でも十分に対応できる。それに―――」
「あのな縁」
 説明を続ける縁に、再び溜息を吐きながら恋慈は言葉を遮った。
「そんなの後にしろ。今休む時だ」
 ぽん、と縁の肩に手を置いて、諭すような声色で言葉を投げかける。
 何で言う事聞かないかねぇ、と言外に含ませながら。
 しかし、縁は普通に渋い顔を返すだけだった。
「駄目だ。やれる内にやる」
 今度は恋慈が渋い顔を返した。
「何でだ?」
 にらめっこのように互いが互いの顔を見る。
 両者共に渋い顔――は、少しの間だけだった。
「これの性能が良くなれば良くなるだけ、恋慈は楽が出来るのだろ?」
 困ったように、縁の眉がハの字に落ちる。
「恋慈の方こそ無理をしている。最近は怪我もたくさんしている。恋慈こそ休むべきだ、こいつの調整は私独りで全部できる」



















 翌日、ユーノ・スクライアは再び街に立っていた。
 今度は時間を間違えず、昼のちょっと前に繰り出している。今日は別に休みではなく、無限書庫の仕事の合間、というか休憩時間をつかっている。
 目的は無論、先日ぶつかって生徒手帳を落とした少女に、その生徒手帳を届けるためである。
 届けると言っても、その少女に直接ではない。
 幸いにもその少女はなのは達と同じ制服を着ていたので、どの学校の子かは分かっている。それに名前も顔写真もあるのだ。日本にしては珍しい横文字かつ無駄に長い名前と、能面のように無表情な顔写真。その少女はきっと目立っている事だろう。
 生徒手帳は学校に預ければ一番確実であろう。
 本当ならば昨日のうちに預けに行けばよかったのだが――色々あったのだ、色々と。
 街へ繰り出した目的も無事に果たし、さてこの拾った生徒手帳を届に行こうと思ったところで、休日を潰す悪魔の緊急コールが鳴ったのだ、脳内に。
 内容なんて実にシンプル。
 すぐ戻れ。
 嫌な予感はバリバリしていた。
 戻ってみれば、その予感は的中していた。
 
 看視者の正体。それに繋がる有力情報。

 本当に上へ下への大騒動であった。
 当然のように巻き込まれた。
 ……いや、思い出すのは止めよう。なにせ実のところ未だに巻き込まれている最中なのだ。休憩時間が終われば現実が待っている。いや、休憩時間を待たずに、目を回しながら死にそうになっている部下が素敵な現実を引き連れてくるだろう。
 少しげんなりしながらユーノは頭を振る。
「アイヌ語かぁ……」
 呟きながら、視界に入ってきた本屋を横目で見る。
 看視者の使用していた言語は、偶然か必然か地球で使用されているマイナーな言語であった。いや、もはや使用されていた、と言っても過言ではないかもしれない。絶滅と絶滅寸前の狭間にある、そんな言語だ。
 後でちょっと本屋によって調べてみようか。
 そう思いながらユーノはなのはの通う学校まで足を運ぶ。
 
 門が閉まっていた。
 
 グラウンドには生徒が見えるが、門はぴっちりと閉まっていた。
 え、何これ?
 ユーノはぽかんと門越しに学校を見上げる。
 確か前来た時は門は開きっぱなしだった気がする。と言うか開きっぱなしだった。なのに閉まっている。最近は危ない人が増えているというから、防犯のためだろうか。
 ユーノは一度時間を確かめる。
 今は……まだ授業中の時間である。現に体育らしき事をグラウンドでやっている。
 さて、この門はどうやって通ればいいのか。
 ユーノは一度悩む。流石に授業中のなのは達に念話を開いて聞く訳にはいかない。まして、門をよじ上ればお縄頂戴である。
 腕を組んでユーノはうーんと唸り
「どうかしたのか?」
 突然後から声をかけられた。
 少女の、落ちついた声である。
 あ、まずい、もしかして不審者とか思われた?
 別に疾しい事は何もないのだが、校門前で立ち往生していただけにユーノは慌てて振り返る。
「あ」
「――む」
 振り返り、その声の主を確認した途端に、ユーノは一度固まった。
 なのはよりも小さい身体に、乱雑に切られた短い黒髪。びっくりする程の無表情に、吊り目の猫目が印象的である。
 
 昨日ぶつかった少女、その本人だった。

 固まったユーノを不審に思ったのか、少女も一度眉間に眉を寄せる。
「「――昨日の」」
 ユーノは少女を、少女はユーノを指差しながら、同時に声を出していた。しかも同じ言葉を。
 再び2人は口を閉じる。
 ああ、この子も僕の事覚えてるんだ。
 今の少女が口にしかけていた言葉に、ユーノはそれだけ悟った。
「昨日の朝、私がぶつかった人だな」
「あ、う、うん。覚えてたんだ」
 話をさくさく切り出したのは少女の方だった。
 少女特有、よりも若干低い声色。そして似合わぬ男弁。そして確認の台詞。間違いなく昨日の子だった。
 不思議な事に少女は制服姿ではなく、普段着なのだろうか、淡い緑色の薄手ながらタートルネックの長袖に、真っ青なジャケットとジーンズという格好をしている。ジャケットに毛筆書体でデカデカとプリントされた 『新鮮組』 という文字が嫌に印象的である。誤字なのかウケ狙いなのか判断に迷う。
 明らかに学校に通う姿ではない。少女が手に持っているのは鞄ではなく、少し大きめの紙袋である。
「うん、覚えている。昨日はすまなかった、私の前方不注意だ」
「ううん、僕こそ急に立ち止まってごめんね」
 ぺこりと素直に頭を下げる少女に、ユーノは微笑みながら頭を下げ返す。それからユーノは少し膝を曲げ、屈むようにしながら少女と目の高さを合わせるように腰を落とした。
 頭を上げた少女の目が、ばっちりとユーノの目に合う。
「ところで、こんな所でどうしたんだ?」
 首を傾げながら聞いてきた。
 合わさった目線に動じる事も逸らす事もなく、しっかりと見返している。
 直感だが、この子は良い子だな、とユーノは悟った。
 投げかけられた問いに対して、ユーノは苦笑してポケットから件の生徒手帳を取り出す。
「はい」
 と、少女に差し出すと、少女は生徒手帳へ目線を移し、不思議そうに反対方向に首を傾げてから生徒手帳を受け取る。
 なんだろう、と少女はその生徒手帳をぱらりと捲り。
「あっ!」
 驚いた。
 それはそうだろう。開いた1ページ目には自分の顔写真と名前が載っているのだ。これが誰の生徒手帳なのかなんて、1発で分かる。
「昨日ぶつかった時に落としていったんだよ。昨日の内に届ければ良かったんだけどね、色々あって」
「あ、ああ、なるほど。そうか、休日なのにわざわざ届に来てくれたのか。ありがとう、感謝しきれないくらいだ」
 驚く少女にユーノは笑顔で説明して、それに納得したのか少女は再びぺこりと頭を下げた。
 大事な物が入っていたのだろうか、どこかホッとしたような表情であった。
「――って、休日?」
「うん?」
「あ、ああ、ううん、何でもない」
 そうか、だから門が閉まってたんだ。だからこの子は私服なんだ。
 今更ながらユーノは気がついた。
 昨日といい今日といい、どうも無限書庫に篭っていると曜日感覚も時間感覚もなくなってくるようである。しっかりしているのは日付感覚だけだろうか、仕事の期限という悲しい性で。
「でも、本当にありがとう。とても助かった」
 ちょっと遠い目をしたユーノに気付く事なく、少女は重ねて礼を言う。
「うん、そっか。でも丁度ミドリに会えて良かったよ」
「そう―――ミドリ?」
 頭を上げ、少女――ミドリは首を傾げる。
 その反応にユーノも首を傾げた。名前を呼んだのに何故疑問を持たれるのだろうか。
「……あ、ああ! 手帳見た時に名前だけ確認したんだよ。それ以外は全然見てないから」
 少し間を挟んでからユーノはまだ互いに自己紹介をしていなかった事に気がつく。確かに名乗ってもいないのに名前を知っているのは不思議だろう。
 慌てて説明をするユーノの本心を確かめるように、ミドリはじっとユーノの目を見ていたが、突然ぽんと手を打ち鳴らす。
「ああ、なるほど」
 ……説明がようやく飲め込めたのだろうか。もしかして少し頭が弱いのだろうか。少しだけ失礼な感想をユーノは抱いた。
「しかしミド――」
 ユーノの抱いた感想など気付くわけもなく、ミドリは続けて口を開き、そしてすぐに閉じた。
 ふっとユーノの斜め上、虚空へと視線を逸らし、顎に指を当ててうーんと一度唸る。
「ミドリ、ミドリか……うー」
「どうしたの?」
「いや、うん……んん、いや、何でもない。そうだな、私のことはミドリとでも呼んでくれていい」
 なにやら思案していたミドリへユーノは声をかけると、それに釣られる様にしてミドリは首を振ってから再び目線を合わせて胸に手を添えながら名前を名乗る。
 まるで、自分の名前はミドリではないと言うかのような自己紹介の仕方だった。
「そっか、じゃあミドリで……長い名前だよね」
「うん? ファミリーネームか?」
「そうそう。コロンゾン、えっと……」
「コロンゾン・リ・ヴァルヴェールローランド。私の保護者のファミリーネームなんだ」
 噛みそうな長いファミリーネームをすらすらと口にしながら、ミドリは大切そうに生徒手帳をジャケットの裏にあるポケットへと閉まった。その時にジャケットに隠れて見えなかった上着の胸部分が見える。ゴシック体で 『疾風怒濤! 空前絶後! 一撃必殺!』 と小さな文字でプリントされていた。つっこむべきなのだろうか。
「本当にありがとう、落としていたことにまるで気がつかなかった」
「ううん。僕も届けるの遅くなってごめんね――あ、そうだ、僕はユーノ。ユーノ・スクライア」
 丁寧に重ねてぺこりと頭を下げながら礼を言うミドリに、ユーノもごめんなさいと頭を下げ、そういえば自分が名乗っていなかったと思い出して自己紹介を付け加えた。
「そうか、スクラ―――ああ」
 頭を上げ、確認するようにファミリーネームの方を口にしようとして、何か思い出したかのように手を鳴らした。
「もしかしてスクライアさんは、高町さんの知り合いではないか?」















「アイヌ語……確か北海道の……?」
「北海道のアイヌ民族が使ってた言葉やね。日本が侵略して日本語無理矢理使わせたせいで、今やと数名話せる位やよ」
 首を捻ったなのはに、はやてが説明するように言葉を付け足した。
 その言葉に、フェイトはうんと一度肯く。
 八神家の居間。一般家庭と比べても十分広いといえるその場に、なのはとフェイト、そしてはやてが円を組むように向かい合って座っていた。フェイトがなのはの横にべったりなのは既に誰もつっこみをいれない。
 はやての隣には可愛いのかどうなのか良く分からない、しかし本人は可愛いのだと思っているウサギのぬいぐるみを抱えながら、ヴィータがちょこんと腰を下ろしていた。
「となると、話せるその数名が看視者と?」
 ヴィータとははやてをはさんで反対側、その場にきっちりと正座をして腰を下ろしているシグナムがフェイトへと聞きなおした。
 会話のお題は、看視者の事。
 昨日、看視者について分かった事実がある。看視者が使用していた言語についてだ。
 その言語が地球のアイヌ語であると、そう分かったのだ。
 それを発見したのがエイミィである。
 看視者の所持しているロストロギアも発見したのに、更に言語まで調べたと、上層の方々からエイミィの評価はうなぎ上りである。良く調べられたなと皆が尊敬の眼差しを向けるのに、何故かエイミィ本人は微妙に嬉しくなさそうな顔をしていた。
「それは分からないけど……でも、少なくても看視者は日本――北海道の何かに由縁があるはず」
 確かに、と質問に返答するフェイトの言葉にそれぞれに肯く。
 そこで 「私は訳が分かりません」 という顔をしているのが1人。
 な、なぁはやて、ホッカイドーってなに?
 隣の主の裾を引っ張って小声で質問するが、この場にいるメンバー全員耳が良いので丸聞こえである。その質問をしたのは一体誰か、というのは本人の名誉の為に名前は伏せておく。
「ヴィータちゃん、北海道はね――」
「ちょ、ばっ、てめぇには聞いてねぇよ!」
「日本列島の北にある島だ」
「し、シグナムてめぇ! 何聞き耳立ててんだよ!」
「アイヌ民族はそこの先住民で」
「てめぇにも聞いてねぇ! ほ、ホッカイドーくらい知ってるよ! 馬鹿にすんな! って、何ニヤニヤしてんだよ!!」
 ……誰かは言わない。
 その誰かを一同は微笑ましい目線を送ってから、それからもう一度目線を戻して話を切り直す。
「で、フェイトちゃん。何でその話しをしたんや?」
 気を取り直し、はやてはフェイトに視線を向けて訊ねる。
 フェイトのしている話は、本来ならば管理局で聞く話である。
 確かに、なのはもはやて一家も連休をもらってスパンは開くが、それでも今この場でフェイトから聞くのは筋が違っている。これがフェイトではなくクロノが言っているのならば、まだ納得は出来る。
 更に言うならば、看視者やドールの事件はアースラチームが指揮を取る。シグナムやヴィータならばまだ良いが、実践不足でディスクワーク中心のはやて、色々と許可がなければ正式に出動できないなのはには早く報せる必要はない。第一、今日は休みなのだから。
 はやての言葉には、そんな意味が含まれているのをこの場の全員が理解していた。
 こくんと、その言葉にフェイトは一度肯く。

「なのは、それからはやて――昨日、恋慈さんと会ってどう思った?」

 いきなり話が変わった。
 誰だろう、とはやてを挟んでヴィータとシグナムは顔を見合わせ、なのはとはやては眉をしかめた。
「恋慈さんって……昨日縁ちゃん背負ってた人やよね? なんや紅茶くっさい」
 最初に返したのははやてだった。その言葉には微妙に刺があるように感じる。
 別にはやてとしては刺を含ませるつもりはなかったのだが、恋慈という人物に対しては微妙に疑り深くなってしまう。仕事柄、というのだろうか。
 恋慈が魔導師であるというのは、屋上にいなかったはやても既に理解している。なにせ念話が漏れてきていたのだから。ビルから縁を背負って出てきた時には、こいつか、と思わず半眼で品定めをするように頭から足の先まで舐めるように見てしまった。
 地球には自分達を除いて他に魔道師はいない、と断言はしないが、いる可能性は限りなく低い。少なくとも、管理局が把握している魔道師は地球にいないはずである。
 となると、モグリかハグレであるのは間違いないだろうが……恋慈と、それから教授と呼ばれていたアステマという女性は管理局の存在を知っている。更にアステマの方は内情に詳しい。第一、彼女の名前は明らかに日本人の名前じゃない。
 そんな状態から、はやては無意識で恋慈、それからアステマに対して疑う体勢を取っていた。
「あれ? 恋慈さんが縁ちゃん背負ってたの?」
「そうや。もう縁ちゃんもぎゅぅって抱きついて……なんや兄妹仲睦まじいんね、ちょっとうらやましいわ」
 首を捻ったなのはにはやては溜息をつきながら答える。
 兄がいる、というのがうらやましいの半分、縁に抱きつかれたい、というのも半分。まあ、抱きつきたいなら抱きつきたい放題のヴィータがいるので何も言わないが。変な意味はない。ヴィータは背筋がちょっと冷えた気がした。
 途中で教授さんと代わったのかな、となのはは内心で結論付けてから口を開く。
「私も、縁ちゃんと仲のいいお兄ちゃんかなって……持ってるのはあれだったけど」
「あれって?」
「えっと、あの………拳銃?」
「拳銃!?」
「あ、で、でもすっごく小さくてね、たぶんおもちゃかな?」
 その台詞にはやては安心したように溜息をはく。
 小さくても本物に見えたのは伏せておこう。
 実際本物である。
「で、フェイトちゃん、その人と看視者と関係があるの?」
 そうフェイトに聞いてきたのは、トレーにのせてお茶やらお菓子やらを持ってきたシャマルだった。
 かちゃかちゃとテーブルの上にそれぞれのお茶を並べ、それからお菓子を並べていく。クッキーだ。ちょっと変な形の。
「―――――なぁシャマル」
「どうしたの?」
「これ、シャマルが作ったのか?」
 並べられたそのクッキーへ視線を注ぎながら、ヴィータは口をへの字にしながら尋ねてきた。
 それに対してシャマルは笑顔を一度向け
「ええ、もう頑張っちゃったんだから」
 と胸を張った。その笑顔はやり遂げたと言わんばかりに輝いている。
 一同視線が一斉に泳ぐ。
 だ、大丈夫なのかよ……
 あー、でもシャマルも最近腕上げとるしな……
 じゃあはやて、先に食べてみる?
 まてフェイト、それは我が主に毒味をしろと言うことか?
「で、話の続きは?」
「へ? え、ああ、うん。その事なんだけど……」
 もう一度フェイトに顔を向けながら、シャマルはヴィータの横に腰を下ろした。その言葉にフェイトは慌てて顔を上げる。さりげなく出されたお茶を手前に引き寄せていた。
 皆フェイトの方へと視線を向けた。クッキーは放置しながら。
 向けられる視線に全て返してから、フェイトは口を開いた。

「恋慈さんが、看視者だと思う」

 なのはとはやてが眉をしかめた。残りの面々は、そもそもその恋慈という人物を知らないので何とも言えない。
「え、えーっと? 恋慈さんが……あの看視者?」
「姿なんて幾らでも変えられるし、第一あんな姿じゃどこで住んでても目立つ。それでも管理局の捜査網からこれだけ長く逃げられているっていうは、どう考えても違う姿の擬態があると思うんだ」
 戸惑ったなのはに、その疑問に答えるように先にフェイトが言葉を挟む。
 その発言に、はやてとシャマルは部屋の隅で子型犬の姿のまま横になって休んでいるザフィーラに視線を向けた。ああ、なるほど、姿を変えると言うならば実証例が目の前にいる。なのはは別に頭の中にフェレット姿のユーノの事が思い浮かんだ。確かに擬態だ。
 それに、アイヌ語と言うのは結局のところ 『人間が使用する』 言語である。ならば、それを使用する看視者が別の姿に化けて社会に溶け込むとしたら、人間である事は想像に易い。
「もしくは……看視者の姿が擬態である可能性はあるな」
 続いてシグナムが納得しながら続くように口を開いた。
 看視者は姿が酷く醜悪である。生理的に嫌悪感を抱いてしまう、そんな姿だ。言葉を変えれば威圧感がある。
 その姿は、人間と対峙する時には有利に働く。あまりお近づきになりたくない、という牽制になるのだ。
 確かになぁ、とそれぞれに納得を示した。
「しかしフェイト、看視者か人間の姿かのどちらかは分からんが、看視者は人間になる事が出来るであろう、というのは分かった。しかし、なぜその恋慈という者が看視者だと?」
 最もな意見である。
 そんなに親しい訳でもない、というか昨日初めて会ったばかりの青年である。それなのに、恋慈が看視者なのかもしれない、と疑うのはそれなりに理由が必要だろう。
「勘―――かな?」
「勘って……」
「恋慈さんの殺気がね、看視者のと凄く似てたんだ。とても綺麗な刃物だけが、首筋にあてられてるような……」


 とっても、冷たい感じ。














「そうか、やはり高町さんが言っていた人なんだな」
「は、はぁ……」
 納得したというように陽々と言うミドリに、ユーノは曖昧な返事しか返せなかった。というより、あまりはっきり返答できないのだ。
 曰く、高町さんが自警団に入ろうと決意する切欠を与えた人。
 曰く、国籍不明だがとても善い人。
 ――なのはが自警団? 管理局に入ってる事の御魔化しようなのかな?
 尊敬の眼差しを向けながらミドリが簡単に説明してくれた内容から、その眼差しに頬を引き攣らせながらユーノは軽く推測する。あまり変に答えると、なのはが用意している御魔化しの言い訳に矛盾が生じてしまうために迂闊に言葉を漏らせない。
「え、ええっと、ミドリはこれから何処か行くの?」
「うん。月村さんの家とアンスの家に」
「………」
 なんともまた聞き覚えのある名前が。
 話を逸らす為に振った話題に、思わぬ人物の名前が上がった。いやいや、月村さんとはいってもすずかとは限らない。同じ苗字の違う人かもしれない。ほら、すずかのお姉さんとか。
 むしろアンスって誰?
「月村さんの家って……猫がいっぱいいる屋敷?」
「そうなのか? 私は行った事がないから分からない」
「分からないって……初めてなんだ。用事があるの?」
「うん、月村さんに弁償しなければいけない物があるのだ。それを届に行く」
 言いながらミドリはがさりと持っていた紙袋を見せるように持ち上げる。何が入っているかは分からないが、少なくともミドリの言っている弁償する物なのだろう。
「アンスって言う人は、友達?」
「ああ、そうだ。アリサ・バニングスという。とても美人で、とても頭が良くて、とても優しい、私なんかにはもったいないくらいの凄い人なんだ」
 質問に対して鼻高々とベタ褒めの自慢で返された。
 ああ、アリサね、アリサ・バニングス。自分は人間だったと正体を告白した時、半殺しにあったのは思い出にするほど古い記憶ではない。
 となると月村さんというのもすずかで間違いないだろう。
 世間は狭い。
「……もしかして、なのは達とはクラスメートなの?」
「ん? いや、高町さんとはクラスは違う。同じクラスなのはアンスだ」
「あ、そ、そうなんだ。ううん、気にしないで、ちょっと聞いただけだから」
 それがどうかしたのか? とでも言うように首を傾げたミドリにユーノは慌てて首を振って話を取り消す。
 正直なのは達より年下だと思っていたのは内緒にしておこう。そして自分もミドリに対して年下を扱うようにしてしまったのも自重しよう。
 それにしても、そうか、なのはの友達か。
 時空管理局の仕事をしながら、こちらの世界でも学業を続けているなのは達。それは多忙の日々である。管理局の仕事が大変ならば、自然とこちらの世界との接点が少なくなってしまう。その事で、なのは達から友達が離れていかないかと内心心配していたが……大丈夫のようだ。
「そっか、なのはの友達か……」
 言うつもりはなかった言葉が、つい呟くように口から漏れた。若干安堵の色が篭ってしまった。
 その言葉をしっかり耳にしたのだろう、ミドリが反応を示す。
 眉を、寄せて。
 ……まて、ちょっと待て、なんだその反応は。
 今度は遅れてユーノが眉を寄せた。
 今のミドリの反応は、まるで自分はなのはの友達ではない、といった感じである。アリサの時にはあんなに素早く即答した上に聞いてもいない褒め言葉を付けていたのに、なのはに対しては随分と反応が鈍い。
 何かあるのかと懸念の意を読み取ったのだろう、ミドリは即座に表情を戻した。
「あ、ああ、私は高町さんと友達―――」
 最初の言葉をつっかえながらミドリは慌てて言葉を返し
 一瞬だけ。
 本当に一瞬だけ。
 気のせいじゃなかったのかと誰かに言われれば納得できそうなくらいに一瞬だけ。
 ミドリの目が、泣きそうになった。

「友達、ではない、な……きっと」

 それでもすぐにミドリは表情を戻して、困ったな、とでも言うように苦笑しながら、随分と曖昧な否定の答えを返した。
 知っている。
 ユーノは、その苦笑を知っている。
 別に好きで苦笑している訳じゃない。本当は笑顔でご魔化したかったんだ。
 本当に困っているのに、本当に泣きそうなのに、本当に悲しいのに、それでも無理に笑おうとして、失敗した時の中途半端な形だけの笑み。とても不完全な、笑顔。
「友達じゃあ、ない?」
「いや……高町さんは私にとても良くしてくれる。私が困っていると、そっと手を貸してくれる。とても、とても優しい人だというのは知っている」
 確認するように聞いたユーノの言葉に、ミドリは慌てて補足した。
 した、が、否定はしない。
「だが、それはきっと、私がアンスの友達だからというだけで……私と高町さんが友達という訳では……」
 徐々に力なく項垂れながら、ミドリは続ける。
 これはまた……随分と後向きの考え方をする子だ。もしくは自分に自信がないのか、それとも人との関わり方を知らないのか。
 ミドリが項垂れているのは少しの間だけで、すぐに取り繕うように先程よりも更に中途半端の出来損ないな笑顔を浮かべながら顔を上げる。無理をしていると丸分かりの笑顔というのは正直、見ていてあまり気分の良いものではない。
「そんな事はないと思うけど。なのははきっと――」
「いや、いいんだ。高町さんと友達ではないのは、完全に私に非がある」
 君と友達になりたいと思っているから、と続ける前に、その言葉は打ち消された。
「私から友達になろうと、歩み寄る訳じゃない。助けてもらった事は幾度もあるのに、私が高町さんを助けた事など一度もない。それどころか、酷い事を言って、高町さんを傷つけた事がある。本当に、嫌悪されて当然で、それでも優しくしてくれるのは高町さんの心が広いからで……」
 中途半端な。
 本当に中途半端な。
 そんな笑みを見せながら、ミドリは自虐した。
「難しいな、友達をつくるというのは……目を見ても、名前すら呼べやしない……本当に……」
 そこで、ミドリは言葉を切った。
 高町さん。
 ああ、確かに、ミドリは一度たりともなのはの事を “名前” で呼んでいない。
「……いや、スクライアさんに愚痴を零しても仕方ない。すまない、会ったばかりの人に言う話ではなかったな、忘れ―――」
「ミドリは」
 首を横の振ってから、中途半端ではなくにこーっとした笑顔を向けながら話を終わらせようとしたミドリの言葉を遮って、ユーノは一言だけ挟んだ。
 へ? と、ミドリが一瞬固まる。
「なのはの事、嫌い?」
「そ――そんな事はない! 高町さんは凄い人だ。自警団に自ら進んで入団するくらい正義感が強くて――」
「そうじゃなくって、好きなの? 嫌いなの?」
 続けたユーノの質問に慌ててミドリは否定の意味を返し、その言葉が終わる前にユーノが肩を竦めながら再び遮った。とても意地の悪い質問で。
 慰めようか、とも一瞬思った。
 元気づけようか、とも一瞬思った。
 少なくともあのなのはが、この少女を嫌っているとは思えない。酷い事を言った、とは何をどれだけ言ったのか見当もつかないが、酷い事を言ったのだと自覚して落ち込んでいるのなら、なのはだってミドリの事を赦せるはずである。そういう子なのだ、なのはは。
 弱気なこの少女の背中を押す事くらいなら、きっと出来るだろう。
 しかし、ユーノは自然とこの言葉を選んでいた。まるで焚きつけるかのように。
 その言葉にミドリは眉を顰めた。
「好きだ」
 何ともストレートだった。
 照れる事もなく、胸を張りながらさも当然と言いきった。
「じゃあさ」
 悩む事もなく即答で返したミドリの言葉に少々呆気に取られながら、それでもユーノは言葉を続ける。

「それ、ちゃんとなのはに伝えた?」

 ぴくっと、ミドリの肩が震えた。
 図星か。
「言葉にしても伝わらない事はいっぱいあるよ。でも、言葉にしなきゃ伝わらない事もいっぱいあるんだ」
 ぽん、とユーノは震えたミドリの肩を軽く叩いた。
 目線の高さを合わせるように、屈みながら。
「大事な事は、ちゃんと言葉にしないと駄目だよ」
「……大事な、こと」
「言わないと分からないからね、残念ながら」
 もう一度肩を竦めながらユーノが口を開く。
 大事な事。
 はたして、それを自分は出来ているのだろうかとユーノは内心で失笑する。なのはに対して一番大事な事を口に出来ていない自分が、よくもしゃあしゃあと言えたものである。
 言えたものではある、が、それでもミドリはその一言に何かを感じ取ったのか、顎に指を当てながら考え込むかのように目を閉じる。
 大事な事は、言葉にしなければ、伝わらない。
 しかし、それはなかなか覚悟が必要な事である。
 伝えるべき事が大事であれば大事であるだけ、伝えた後にどうなるかが分からないから。
 そう思う。
 もしもユーノがなのはに好きだと伝えたら、友達ではいられなくなるかもしれない。仮に友達に戻れたとしても、今のように何でも話せる間柄にはなれないだろう。
 ユーノの頭の中でシミュレートしたのが、フられるという結果ばかりなのも問題だが、そうなる可能性がない訳ではない。もちろん、上手くいく可能性だってある。どちらに転ぶか、それは誰にも分からない。
 関係が進むかもしれない、壊れるかもしれない、良くなるかもしれない、悪くなるかもしれない。大事な事を伝えると言うのは、進むか退くかの進退届けを叩きつけるようなものだ。
 しかし、伝えなければ、何も変わらない。
 少なくとも、嫌われるという最悪の結果は回避できる。
 今の状況に満足しているならば、わざわざその状況を壊す必要はなく、言わないでいるのも1つの手だ。
 満足している、ならば。
「―――もしもさ」
 ぽつっと、ユーノは言葉を漏らす。
 ふっと、ミドリが目を開いた。
「もしも、伝えて、なのはもミドリが好きだって言ったら、友達だよ」
「……きっと、嫌いだと言われる」
 真っ直ぐ目を見つめ返しながら、ミドリは言い切る。
 その根拠は何かは分らない。
 分らない、が、それはきっと勘違いか何かだとユーノは思う。そもそもあのなのはが、こういうタイプの子を嫌うとは到底思えない。
「嫌いだって言われたら」
 思った。だから、言い返す。

「好きになってもらえるように、頑張れ」










――――――――――――――――――――――――――――――――

 だからザフィーラお前さぁ……
 ノロだかインフルエンザだかに加えて事故事件自殺と商売大繁盛している白衣の天使・クロガネです。え? どこが天使かって? クロガネほどに天使のような心を持った純白な人間などそうはいな(ry
 詰め込みに詰め込んだ状態の今回、如何でしたでしょう。
 そうです、屋上が長かった皺寄せです(おいおい)。
 とりあえず一言言うとしたらこれですね。
 
 アリサは優しい子です!!
 
 という本音は置いといて。
 ここまで来ると、もうこの話がどういう話かを理解されているかと。
 ここから推理物と心理戦物を足してそのまま放置して腐ったような話が続きます。



 ところで、既に途中の段階から大半の人が気付いていると思いますが、この時点で各キャラクターが海鳴 縁に抱いているイメージがはっきりと違っています。
 仕様です。
 ディスクに傷がつくのは仕様なんです。
 1人称臭い3人称で書いているので、時によって縁のキャラがころころ変わるのはこのせいかと……クロガネの力量が一番の問題なんだけどさ!
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8件のコメント

[C118] 感想を・・・

シスコンの正体、縁の役回りなど、今までちらちら出ていた問題の解答編といったところですか。

しかし、それよりもすずかルートに転ぶアリサ、なのはルートのフラグが立ってる縁。これらがどうドロドロの修羅場につながるか期待ですね(違

追記>心臓と待ってたのに 心臓止まってたのにの誤りでは
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : オサフネ
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[C119] 更新万歳

更新おつかれさまです、ユーノいいこといっていますね~~~縁と司書の顔合わせ、そして、アイヌ語の看視者おもしろくなってきましたw。アイヌ語か~~~もうつかわれない言語、死語というやつですね~~ラテン語も確か使われない言語だけど研究者とかにみられてますね~~言語体系それ一個だけでも覚えるの大変ですのに人類はいくつ言葉をもつのでしょうかw。ある意味、浪漫のせかいですねw。そのうち、相関図なんてできそうな予感です。それでは、連載がんばってくださいw
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : 小雪
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[C120] コメントありがとうございますー

○オサフネさん
 第4章の時点で謎解き開始というのも気が早い気がしますが……しかし伏線はまだ大量に。
 修羅場になるかならないか、それは後々お楽しみで。むふふふふ。

>心臓と待ってた
 ぎゃーっす!! 完璧に誤字です!
 指摘ありがとうございました。


○小雪さん
 ユーの君は良い子です、単にクロガネの扱いが悪いだけで。
 言語体系が失われるというのは、やはり物悲しいものでして。むしろ、アイヌ語は日常会話として成立していない以上、資料はあるが絶滅した、と断定されてもいい状態です。ロマンかなぁ?
  • 2007-11-27
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C121] ユーノがんばれ

今回はユーノががんばってますね。良いキャラなのに本編で出番が無いのが可愛そう。縁とのフラグが立ったかも? アリサ危うし!すずかと百合ってる場合じゃないぞ! 押し倒された時は「発情期か?」と思ったけど

遂に看視者サイドの正体が明らかに、ドールってあの狭い家の中で一体ずつ組み立ててるんですかね?  スカリエッティは巨大な研究所でガジェット作ってましたが、これが資金力の差か…
  • 2007-12-03
  • 投稿者 : ミヅキ
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  • 編集

[C122] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 個人的にはユーノ君大好きなんですけどね。なんと言うか、素朴かつ純粋なところが。
 もしもすずかが発情期なら、文字通り目の色が変わってそうで怖いですな。いろんな意味でアリサが危ない!

 スカリエッティの資金って一体どこから来てたんだろう……あまりに莫大過ぎる。
  • 2007-12-03
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C123] 資金源

再レスになりますが、スカ博士の資金は、脳みそ評議会どもが「正義」という建前のもと、あちこちから横領して提供してるのではないかと。

プレシアとかも、研究結果の提供の見返りに資金を得てたらしいですから、国をあげて犯罪の資金提供してるってことです。ふざけてますねまったく。
  • 2007-12-06
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C124] ほへぇ……

 あの設備、ナンバーズ、揺り篭、その他諸々が横領だけで賄われているとしたら、考えただけでぞっとしますな。軽く見積もっても新デバイスとか協会のコネとか色々やってる機動六課の10倍は資金流れてますね。他に回せよ。

 ……いや、日本も大して変わらんのですけどね……
  • 2007-12-07
  • 投稿者 : クロガネ
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[C475] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2009-06-02
  • 投稿者 :
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Appendix

うぇぶ拍手

拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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