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[C100] クロノ君大ピンチ

まさに混沌ネロ・カオス。最後の状況ぱっと見て理解できるやつはいないでしょう。恋慈はシスコンだったんですね、クロノや恭也や真雪といい関係を築けそうだ(笑)

クロノの運命や如何に。予想①恋慈にバーニィ(ミンチ)される。 予想②フェイト・はやて・なのはに、炭にされる。 予想③教授にオラオラされる。 予想④炎髪灼眼に目覚めたアリサに討滅される。

さあどれだ!?
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C101] クロノ死亡フラグ?

最新話読ませていただきましたが、前半の重要そうな伏線とシリアスさを、後半ですべてぶち壊してくれました。(笑)

次回はクロノの言い訳に期待ですね
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : オサフネ
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[C104] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 みんな死んでるやん!?
 そしてクロガネが書く姉・兄キャラは大抵シスコンorブラコンとなっています(既にクロノが)。
 
○オサフネさん
 だからと言って、その伏線を軽く見ると痛い目を見るのがミステリ小説の基本ですが。ミステリじゃないけどさ!
 さて、言い訳は……悪足掻きは品格を下げるぞクロノ。
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : クロガネ
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[C105]

いや笑った 笑った。
この混沌ぶりは最高だ そしてショットガンだらけとはよくわかっていらっしゃる。 そして何よりも奥歯のスイッチで加速装置 ON しか認めないとは・・・ ブラボー オー ブラボー 。


だが、しかし一言物申す。 混沌ぷりが激しすぎてお話がほとんど進んでないのはいかがなものか?
あとがきで銃の性能紹介するならば、本文中でのデリンジャーの説明部分をもう少し短くできたのではなかろうか。恋慈の能力を説明するのに必要だったのはたしかですが。

今回の感想はこんなところで、次の更新を涎たらしながら待ちます。
  • 2007-09-10
  • 投稿者 : おにがみ
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[C106]

気づいたことがありますので、また書き込みますが 

注意事項は本来ブログのトップになければいけないはずですが、いつの間にか下に埋もれています。
新規に閲覧する人のためにも、トップに来るように直したほうがいいと思います。
  • 2007-09-10
  • 投稿者 : おにがみ
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[C107] コメントありがとうございますー

○おにがみさん
 むしろショットガンだと分るクロノは一体どうだろう。
 話が進まないのは……ごめんなさい。銃の説明に関してはアレです、完全なクロガネの趣味(ぇ
 注意事項を最初には確かにしたいのですが、うーん。
  • 2007-09-11
  • 投稿者 : クロガネ
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[C108]

人がバタバタと死ぬような、心が荒むSSばっか読んでたので、癒しを求めて読み返していたら。
萌えた
縁とアリサとまほーしょーじょ3人に萌えて、恋慈と教授に萌えた。
ガンザ君にシャリー、ついでにクロ助・フェレット果てには学校のクラスメイトに萌えた。
気づいたら、自殺未遂者に萌えてる自分がいた。

背景が緑色なのが、さらに萌えを助長していると思われる。

感想
日本茶が飲みたくなるSSでした。
  • 2007-10-06
  • 投稿者 : TFJ
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[C110] コメントありがとうございますー

 復活のクロガネ。いやもとい、コメントありがとうございますTFJさん。
 マズ思うに、そのバタバタ人が死ぬような心が荒むSSをクロガネは読みたかったりして。あ、でも結末はハッピーエンドで。
 
 萌えましたか……

 そうです、縁はどうでも良いとしてアリサや魔法ょ、ごほん、少女に萌えれば問題ないのですよこのジャンルは。むしろアリサ万歳。
 しかし自殺未遂者とは末期……

 ようやく背景色につっこむ人が出てきた。
  • 2007-10-11
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 21

「やめるんだ」
 今度はゆっくり、まっすぐ教授を睨むようにしながら、もう一度クロノは言いきった。
 その声に答えるようにして、ようやく教授は割って入ったクロノへと視線を移す。背筋が凍るような、そんな無表情で。
 ああ、そうだ。いつぞフェイトと対峙した時に、縁もよく見せる無表情とはまるで違った、ぞっとするような無表情を見せていた。感じるオーラが違う、とでも言えば良いのか、同じ無表情なのにイメージががらりと変わる。
 縁と良く似ている……いや、この場合は縁が良く似ている、と言うべきか。
 間違いない。
 この女性が、縁の育て親。
 教授の向ける冷たい目線を真っ向から見返して、クロノは口を開く。
「これ以上の暴行は認められない。あなたと彼女がどんな関係かは分からないが、命に関わる暴行をする権利はない」
「認められずとも権利がなくとも結構だ」
 いつもアリサが聞くクロノの声色ではない。きっと仕事の時の声色なのだろう。その身長のせいか年上なのに同じ歳くらいにしか見えず、幼く見えるのに、その大人のような腹に響く声には思わずどきりとする。
 しかし、その言葉を教授は冷たい声で軽く流した。
「これ以上の暴行は彼女の命に関わる。そうなればあなたは殺人罪で捕まってしまう」
 同じく教授の声にひるむ事なく、両腕を横に広げて立ち塞がったままクロノは口を開く。
 対して、ふんと教授は一度鼻を鳴らしながら、足を止める事をなく縁に―――クロノに近付いてくる。
「それが何だと言うのだ」
 こつっ、とコンクリート剥き出しの床を靴裏で蹴り止め、教授はクロノの目の前に立った。
 人1人分の隙間もなく、本当に目の前。
 身長の各差のため、クロノは自然と教授を見上げる形になり、教授はクロノを見下ろす形となる。
「そいつはこの程度で死にはしない。死なせはしない。故に心配する必要などどこにもない」
 まっすぐクロノの目を見る。縁と同じである。
 死なせはしない、という意味は良く分からないが、少なくとも大事にしているから死なせはしないのだ、という意味ではない。
「―――あなたは、彼女の何だ?」
「お前に答える義理はない」
 淡々と教授は返した。
 確かに、義理はない。
 言葉を返し終えてから、教授はすっと縁へと視線を向ける。縁は横たわったままぴくりとも動かない。死んでいる、と言われればそれで納得できてしまうくらい、呼吸しているかも怪しい程に静かである。
 
 
 ああ、もしかしたら、本当に死んでいるかも。
 
 
 反射的にアリサはコンクリートを蹴っていた。
 さっきまで怖くて動けなかったのが嘘のように動いた。
 しゃがんでいた状態より爪先から膝・太股・腰にかけて限界まで縮まっていたバネが弾けるように一気に動いた。我ながら素晴らしいスタートダッシュだ、などと馬鹿な考えなど全く浮かんでこなかった。それどころか、頭の中には考えなど何も浮かんでなどいなかった。
 アリサ・バニングスは天才であり、努力を怠らぬ秀才でもある。頭が 『良く』 なる手っ取り早く、そして確実な方法として、己に考えつづける事を課している。
 常に考え続ける。
 決して受身な考えを行わない。
 思考を止めない。
 思考し続ける事に慣れる。人間とは慣れの生き物だ。思考し続ける事によって、少なくとも頭の中身の性能は 『良く』 なる。
 故に、頭の中が真っ白になる状況など久しぶりであった。
 友人関係がかなり異常、もとい、普通とは離れている為に突飛な自体に見舞われる事は、いつぞのクリスマスから1年よりこっち、特に最近多くなったが、それでも頭の片隅では必ず何か思考していた。なのに、今回はそれすらない。
 教授もクロノも目に入らなかった。
 縁しか見えてなかった。
 更にコンクリートを蹴り、疾風の如く駆け抜けた。教授とクロノの横を通り過ぎ、縁の傍まで走り抜く。
 ――縁!
 彼女の名を呼ぼうとしたその声は、荒い息ばかりで言葉にすらなっていなかった。
 そんなに長い距離を走った訳ではない。だいたいオフィスビルの屋上の距離などたかが知れている。
 ああ、違う。
 息が荒いのはそんなせいではない。
 怖いのだ。
 先のとは似ているようで全く逆ベクトルのような、そんな怖さだ。
 今日は怖がってばかりだ。
 怖がってばかり、だが。
 だって仕方ないだろう。
 その少女は、まるで死んでいるようなのだ。
 その少女は、10分前は自分の隣でにこーっと笑っていたのだ。
 その少女は友達なのだ、先週できたばかりの。
 その少女が、まるで死んでいるようなのだ。
 そんなの、怖いに決まってるじゃないか。
 息が上がる。
 心臓がばくばくと唸ってる。
 冗談じゃないほどに汗が出る。
 何事? とでも言うように、アリサへと視線を向けてきた2人の事などまるで気にならなかった。
 ああ、まさか本当に死んでる訳じゃあるまいな。
「え――に、し?」
 どうにか声は出た。
 痙攣でも起こしたかのように震える腕で、ぽんぽん、と恐る恐る肩を叩く。
 返事、なし。
 気絶――そう、気絶しているのだ。どこか強くぶつけたのだろう、だから縁は気絶しているのだ。馬鹿野郎、脅かすな。
 ようやく復旧しはじめたアリサの頭に浮かんだ考えは、とても頼りないものだった。
 もう一度、ぽんぽん、と肩を叩く。
 返事、なし。
「ちょっと……縁?」
 気絶だ。
 気絶してるのだ。
 だから返事をしないのだ。
 なのに、ああ、何でこんなに声が震えているのだろう。
 肩を掴む。
 揺すった。
 がくがくと。
 遠慮なく。
 起きろ。
 返事しろ。
 心配かけさせるな。
 がくがく。
 がくがく。
 がくがくがくがく。
 がくがくがくがくがく。
「こら、起きなさい……起きなさいって……あんまり人に、心配かけさせるもんじゃ、な―――」
 ばたっと、コンクリートに何かが落ちた。
 トマトジュースだろうか。
 赤い水が、落ちた。
 揺する手が止まる。
 トマトジュースだ。
 トマトジュースだ。
 少し変な匂いがする、トマトジュースだ。
 最近は鉄分を取れとか言うから、きっと鉄分の1日必要摂取量を賄えるとか宣伝しているトマトジュースだろう。
 鉄っぽい匂いがするトマトジュースって何か嫌だ。
 まるで、血のようじゃないか。
 止まりそうになる思考を叱咤しながら、目の前の状況を分析する。
 トマトジュースだ。
 ケチャップかも知れない。
 意表を突いてトマトピューレなんて。
 とにかく、なんだ。
 血のはずが、ない。
 抱き抱えるように、掴んだ肩を手前に引き寄せる。
 ごろん、と、縁の頭が膝の上に転がり、仰向けになる。
 顔が見えた。
「…………はは、なに、ちょっと……止めなさいよ縁……こんな、手の込んだ冗談……」
 赤かった。
 文字通り、赤かった。
 まるでペンキでもこぼしたように、縁の額から赤い何かが流れていた。
 あ、ああ、そうか……さっきまで、縁、頭から出血、してたっけ。
 でも、出過ぎだ。
 先週の、フェイトとの試合とは、比にならない量。
 次から次へと、溢れてくる。
 こんなに血が、出てくる訳がない。ないに決まってる。
 だって、これ全部が血なら……生きてなんて……
 ……そうだ、縁は気絶してるのだ。死んでる訳がない。
 だから、これは、血じゃない。
 ああ、びっくりした。驚いた。心臓が止まるかと思った。生まれてこの方見てきたホラー映画なんかよりずっと衝撃的だった。
 本当に死んでるかと、思った。
「驚いた……驚いたわよ……だから、起きて―――」
 起きて。
 起きてよ。
 何時まで気絶してるのよ。
 さっさと起きなさい。
 それとももう起きてるの?
 驚いてるのを薄目を開けて見ていて、後で驚いたかって、そういう冗談。
 なら殴ろう。
 本当に心配したんだから。やって良い冗談と悪い冗談があると拳で教えよう。
 だから―――
「――――――――――」
 すっと、片手が縁の首に伸びる。
 こら。
 こらこら。
 何をしている私。
 首横で脈でも測るの?
 そんな、生死確認みたいな事を……
 こらこら私、いや私の手。止まれ、止まりなさい。縁は生きてるんだから、そんな事する必要なんてない。やるんだったら縁の横っ面を叩いて起こすんだ。おいこら、脈なんて測る必要ない。馬鹿、戻れ。
 
 ぴとっと、意思に従わない片手が、縁の首横に触れた。
 
「―――――――――――――――――――――――」
 思考が止まる。
 何も考えられなくなっていた。
 ゆっくり、本能のままに縁の膨らみもない胸に耳を当ててみた。
 心臓の上に、耳を。
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
  
 
 

 止まってた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
「―――――ぁ」
 悲鳴を上げるとか、そんなリアクションなどできる訳がない。
 ぶつっ、と、まるで電源を引き抜かれて強制終了されたテレビのように、状況を理解するよりも早くアリサの意識が閉じてしまった。
「アリサ!」
 縁の胸に耳を押し当てている体勢から、突如としてぐてんと力が抜けて糸の切れた操り人形のように潰れたアリサへと慌ててクロノが駆け寄る。
 すぐに抱き寄せ、慣れた手つきでアリサを診る。
 気絶しているだけだ。
 ほっとクロノは一息吐いて、それから続いて縁の手首を握って脈を診て――
「――――」
 縁の体は、暖かかった。
 まだ、暖かかった。
 しかし、これがこのまま暫くすれば冷たくなるのだという事を、クロノは知っていた。
 心臓停止。
 頭部からの多量出血。
 殴られた衝撃そのものか、それとも着地の打ち所が悪かったのか、それは分からない。もしかしたらショックによる心停止かもしれない。
 即座にクロノはアリサを横に寝かせる。急いでいても丁寧に、特に女性の扱いは事更丁寧に、そっと頭を打たないように仰向けに寝かせる。若干アリサの顔色が悪い。
 この場で教授を問い詰める事も出来るが、そんなのは後回しである。
 顎と後頭部に手を当て、仰向けの状態のまま上を向かせるように縁の顔を上げる。気道の確保、人工呼吸の準備である。それから深呼吸のようにクロノは大きく息を吸い
「―――ふっ!」
 ためらい等微塵もなく人工呼吸を行った。
 キスがどうだの唇の感触がどうだの、そんなのは仕事人間であるクロノにとって人名救助という大義名分により意識の彼方へ弾き出されている。
 始めに強く息を吹き入れ、それからゆっくり長く吹き入れる。
 唇を離すと、重力に従って自動的に縁の口から空気が漏れ出るように吐き出される。
 それからもう一度人工呼吸。今度は先程よりも長めに行う。
 再び唇を離してから、今度は縁の胸――心臓の上を掌で押さえて心臓マッサージを始める。
 1つ、2つ、3つ。
 心臓マッサージを行いながら、クロノはちらりと教授へと視線を走らせる。
 これだけあからさまな行動である、縁の状態がどうなっているかなど一目瞭然なのだが……教授はまるで縁の事など気にしている素振りすらなかった。両手をジーンズのポケットに突っ込み、その視線は縁ではなく、別の方向に向けられている。
 青年だ。
 自殺を謀ろうとした青年だ。
 打ち所の問題だろうか、青年はぐったりと横たわってる。気絶しているのだろうか、肩が僅かに動いているところから死んではいないと思われるが。
 その青年を、教授は変わらず冷たい表情で――しかし、目だけはギラギラとしていて明らかに怒りの色が滲んだ目で、見下ろすように視線を向けていた。
 何故そんな怒りの色を浮かべているのかはクロノには点で分からない。
 分からない、が、直感的にマズい状況であるというのはすぐに分かった。
 二の舞が出る。
 教授が何ものなのかクロノは知らないが、それでもその桁外れた腕力と鋭すぎるパンチは凶器のレベルというのは分かる。体重の軽い子供とは言え、拳1つで人間の体が宙を舞うのは並大抵の威力ではない。
 もしも、教授が縁にしたような暴力を青年に行った場合、大の大人とはいえ無事では済まない。
 止めるべきか。
 再び縁へと視線を戻す。
 止めれば……この子への応急処置は誰が行う? 警察へは後回しにしても、救急車は?
「くそ―――っ」
 心臓マッサージを止め、再びクロノはヤケクソ気味に人工呼吸に移った。
 もしも教授が暴行に走るならば止めるべきである。
 止めるべきであるが、それと目の前で消えかかっている命とを天秤にかけ、どちらが傾くかなど決まっていた。1人で行える事の限界である。
 そんなクロノの様子を見たのか見ていないのか、教授はクロノと縁を無視して青年の方に向き直ってごつりと足を進めた。まるで安全靴で床を叩くかのような音である。
 青年の、僅か1歩分前。教授はそこでぴたりと足を止めた。
 止めたその足を、今度は軽く後に引いて
 
 どっ!!
 
 鈍い音。
 教授の爪先が、それこそ青年の体を突き破るのではないかという位に鋭く、そして後に助走距離として軽く引いただけとは思えない程に速く、教授の蹴りがめり込んだ。
 蛙が潰れたような悲鳴が上がる。
 まるで車に轢かれた人形のように、青年の体がごろごろと勢い良く転がっていく。
 横目でそれを見ていたクロノは、目を硬く瞑って縁から唇を離す。心臓の鼓動は未だに蘇らない。人工呼吸と心臓マッサージだけでは駄目なのかもしれない。いや、治癒魔法の専門家ではないから詳しくは分からないが、魔法を使っても手遅れの可能性もある。
 だが、それでも、彼女の心肺蘇生を、優先せねばならない。
 故に、教授の行動を止める余裕が、ない。
「―――かほっ、ごほっ」
「おい貴様」
 唇を噛み切りそうな位にまで強く噛みながら、クロノが心臓マッサージへと移行するのと同じくらいに、床に這いつくばって咳込む青年をいつの間に近付いたのか教授が片足で転がして仰向けにさせ、底冷えするような声を投げかけた。
「自殺など2度とするな、その行為は迷惑極まりない」
 目線のみで見下ろしながら、淡々と、しかし軽蔑しきったという色が見える声を投げかけた。
 苛立ちを押し殺している、そんな印象を受ける。
「アスファルトの上に貴様の汚らしい血と肉と内臓と糞尿で前衛芸術でもデッサンしたかったのか? 他の所でやるんだなこの短小。迷惑なんだよ糞虫。貴様のその汚物よりも醜い顔や、日陰モヤシのような軟弱貧粗な体から公共の場にぶちまけられた血肉内臓を清掃し運送し死因を調べるのは税金だと言うのだ。お前の頭ではそれを分る脳みそもないのか? 理解できんか? 小指の先程にも脳はないのか?」
「なっ……ごほっ、お前に何がふっ!」
「林の如く黙れ。貴様のような臭い息で吐かれる豚の悲鳴など、聞きたくもない」
 蹴られて目が覚めたのか、教授の言葉に思わず怒鳴り返そうとした青年の口を、今度は容赦なく教授は踏みつけた。丁度青年の開いた口に、靴の踵が突っ込まれる……と言うよりも捻り込まれたという形になった。容赦のカケラも見えはしない。
「お前に何が分かるのだ……と聞きたかったのならば答えてやろう。貴様が如何に下らん存在か、ならば嫌という程に知ったさ。それに貴様のような蛆野郎の事情なんぞ知りたくない、理解したくない、分りたくない。むしろ、その言葉は人に理解してもらう努力をしてから言うのだな―――ああ、これ以上喋るならば貴様の歯を今すぐこの足でへし折る」
 青年の顔を踏みながら言葉を続け、口に足を捻り込まれてなお何か言い返そうとしたのを察したのだろう、青年が言葉にもならないうめき声を上げるよりも先に冷たく釘を刺した。
 刺したその釘に躊躇いはなく、もしも青年が何か言おうものならば冗談ではなく本気で歯をそのまま踵で折る気であるのがありありと分かる。その為か、青年も言い返そうとした言葉をそのまま飲みこんでしまった。
 ようやく青年が沈黙を選択したのが分かり、教授は一度ふんと鼻を鳴らす。クロノには分からなかったが、その仕草は稀に縁がするそれと似ている。
 その一連の行いに行っていた人工呼吸を中断して反射的にクロノは顔を上げた。
『フェイト! なのは! はやて!』
『おっそいわクロノ君! 連絡ははよ入れてよ! 救急車とか警察いるんか!? や、もう呼んでまったからキャンセル効かへんと思うけどな! てか説明し辛かったんやからね!』
 咄嗟に出した広域の念話に即座に返してきたのは、つっこみを入れるような返答のはやてであった。
 グッジョブ、流石対応が早い。その分一言多いが。
『クロノ! 飛び降りようとしてた人は!? 無事!?』
『あ、アリサちゃんと縁ちゃんは!?』
 続いてフェイトとなのはの慌てた念話。
 縁とはこの死にかけている少女の名前だろうか。聞き覚えのある名前である。
 どちらにせよ、なのはとフェイトが心配している人物は私刑中・気絶中・心停止中と全員揃って大丈夫だとはとても言い辛い状態であるのは確かだ。
『無事じゃない。応援に来てくれ!』
『今――』
『今なのはちゃんと達が行っとる! 救急車はあと4……3分ぐらいや! すずかちゃんが簡単な救急セット持っとるけど足りそうか!? それともシャマル呼ぶか!?』
 短的に伝えられた状況に急事を悟ったのか、フェイトの声に被ってはやてが真面目な声で返してきた。流石指揮官向き。
『――シャマルは呼ぶな』
 一瞬だけ判断に迷いながら、クロノは返す。
 確かに、治癒をする、という目的だけを達するならば、シャマルを呼んだ方が良いのは分かっている。転移魔法を使えば1分以内、少なくとも救急車よりも早く到着するだろう。
 しかし、この世界では緊急時を除いて魔法の使用は原則禁止である。
 今が緊急時ではないとは言わないが、それでもシャマルに治癒魔法を使用させるのは気が引ける。
 これがシャマルでなくユーノならば20秒以内に転移して来やがれ、と営業スマイルで頼めるのだが――闇の書事件の根は深いのだ。ミスにもならない出来事で難癖を付ける連中は沢山いる。加えて八神一家は未だに観察を受けている身、軽率な行動は出来ない。
 その考えが伝わったのか、それともクロノの反応を最初から予想していたのか、はやてはむと黙る。
『呼ぶならシグナムかザフィーラをお願いしたい状況だ』
『は?』
『腕っぷしが必要って事だ』
 心臓マッサージを行いつつ、ちらりと教授の方に視線を向けながら念話を飛ばす。
 未だに鼓動の戻らぬ縁への対応も勿論必要だが、青年をいたぶる教授の行動も見過ごして良い訳はない。シャマルに縁の治療をさせれば、そこには勿論魔法が関わってくるだろうが、シグナムかザフィーラが教授を止めるのならば魔法を使う必要はないだろう。どんなに怪力の持ち主であろうと、一般人相手である。
 それ故の言葉に、はやても何かあったのだと悟ったのだろう、返事を返そうと念話を開き――
 
『軟弱ながら、腕っ節なら貸せるぞ』
 
 聞き覚えのない、男の声が、割りこんできた。
 念話で。
「なに?」
 思わず驚きの声が口から出るとほぼ同時、屋上のドアが蹴り破られるように勢い良く開け放たれる。
 バンッ、と盛大な音が鳴り響く。
 
「いやっ、何じゃなくてな!」
 
 虚空に対してつっこみを入れ……いやクロノの言葉につっこみを入れたのだろうが、なかなかにテンションの高い一声を重ねながら、ドアから転がり込むようにクロノの知らない男が雪崩込む。
 背の高い、筋肉質。日焼けした黒い肌と若干の垂れ目が特徴的である。
「って、見事に嫌な状況だなおい! ああアリサちゃん!? 何で寝てるの!? って縁が押し倒されてるし!!」
 押し倒してない押し倒してない。
 心の中だけでつっこみを入れておく。
 その男の登場にワンテンポ遅れ、けだるそうに教授が振り向いた。
「……恋慈か。荷物はどうした?」
「親切な女の子に預けてきた。事情は良く知らんけど、その足を退けろ。そんな事されて悦ぶのは特殊な趣味の人だけだぞ」
 その台詞に教授はふんと鼻を鳴らしてから青年のへと視線を落とした。
 落としてから、男――恋慈の言葉を無視するように、青年の口にねじ込んだ靴をごりっと捻るようにして上から圧力をかけて踏みつける。確かに、こんな事をされて喜ぶ人は少ない。
 ちっと、恋慈は舌を鳴らす。
『まずは確認したいんだけど、マジで縁を押し倒して何かいないよな』
 と、クロノへ念話が飛んできた。恋慈の声である。
 ――この男、魔法が使えるのか!?
『違う、救命だ』
『救命――? 心臓か?』
『ああ、脈がない。心臓も止まってる』
 試しにクロノも恋慈へと念話を飛ばすと、当然のように返ってきた。視線を教授に向けたまま、恋慈の声で。
 
 間違いない、魔道師だ。
 
 地球ではフェイト達のような地球人以外か、なのは達のように魔道師から習わない限り、独自で念話を使える人間はいない。そもそも地球では魔法という概念は絵本の中の話であると思われている。
 何者だ、という疑問を胸に抱きながらクロノは縁の状態を簡単に伝える。あえて、死んでいる、という言い方はしなかった。
 その内容に恋慈は顔色を少しも変えず視線も動かさず静かに目を細め、ゆっくりとズボンのポケットに右手を入れる。
「教授、2度も言わせるな。その足を退けろ」
 少し声のトーンを落としドスを利かせるようにして、恋慈は教授へと言い放つ。尊敬も何もない、まるで敵を目の前にしているかのような声だった。
「もう一度繰り返す。足を退けろ。わりと本気だぞ糞尼」
 抜く時は一瞬。
 ポケットに入れた右手を言い終わると同時に一息で引き抜き、握った 『それ』 を教授に向けるように構える。それを横目で見ていたのだろうか、顔を上げて再び教授の視線が恋慈に戻った。
 大きな恋慈の掌では余計に小ささが目立つ、銀色の鉄の塊。
「―――」
 すぅっと、無言のまま教授の目が細まった。
 同じく恋慈へと視線を向けていたクロノの目も細まる。もしもアリサが起きていれば、何かコメントが頂けたかもしれない。
 デリンジャー。
 握られていた鉄の塊は、そう呼ばれる物だった。
 携帯性を重視して、削れるものを削りサイズを小さく小さくしていった、拳銃である。
 有名所ではアメリカの第16代大統領、エイブラハム・リンカーンの暗殺に使われた拳銃だ。
 弾数は1発か2発と拳銃としては恐ろしいまでに装填数が少なく、その弾丸もリロードが素早く行える訳ではない。更には射程距離も極めて短く、殺傷能力も小さい。なにせリンカーンの暗殺時に1mちょっとという銃を使うにしては明らかに近い至近距離から頭部を撃って、弾丸は頭部を貫通しなかった上に即死にも至らなかった。拳銃としての総合スペックは最悪の場合火縄銃にも劣る可能性がある。しかし、そのポケットにも入るコンパクトボディから携帯性は抜群に高く、笑えるくらいに単純な構造により故障もほとんどなく、護身用としては申し分ない。
『少年、縁の鞄の中に銀色のペンケースがある。スチール製の安っぽいやつだ』
『――今更かもしれないが、君はこの子の味方か?』
 本当に今更の質問である。
 しかし、デリンジャーをまっすぐ教授へ向けたまま、クロノの方へ視線を向ける事もなく念話を飛ばしてくるこの男が、今目の前で倒れている少女の味方とは限らない。だいたい、クロノは恋慈の事も縁の事も知らないのだ。
『なるほど、簡単に人を信用せずか。用心深いな全く』
『地球で念話を使える人は限られているからね――僕はクロノ・ハラオウン、あなたの名前と、できればこの子の名前と関係を教えてほしい』
『海鳴 恋慈。死にかけてるその馬鹿は海鳴 縁。苗字で大体関係は分かるだろ?』
『兄妹か?』
『一応な。とりあえずあの女と違って、縁の味方だ』
 渋る事もなくクロノの質問に即座に答える恋慈の言葉は、信用できそうだった。
 あの女、と比喩された教授の存在は気になるのだが、その教授を知っているだろう恋慈に問うてる時間はなさそうである。恋慈の言葉が信用できると判断すると、即座にクロノはリュックのように背負っていた縁の鞄を奪い取るように剥がす。少し強かったのか、鞄の止め具が壊れて一気に取れた。
 人の鞄の中を覗くのはあまり良い気分ではないが、緊急事態である。
 鞄を開けて中を見ると、教科書やノートが綺麗に整理された理想的な状態であった。几帳面なのが表に現れているようだ。その中から言われたペンケースを探すと、それはすぐに見つかった。
 ヤケに頑丈そうなペンケースである。シルバーのケースには商品名のシールが未だに貼られていたが、それはかなりボロボロである。商品名のシールにはうたい文句が読める。像が踏んでも壊れ難い。微妙すぎる。
「この距離からでもあんたを撃ち抜ける。俺の腕前は、よく知ってるだろ?」
 もう片手をポケットに突っ込みながら、恋慈はデリンジャーの銃口を教授に定めたまま少しも動かさずに言葉を続ける。
 教授の位置から恋慈の位置まで、およそ5m。普通の拳銃ならばピンポイントに撃ち抜くのは別としても外すような位置ではないが、デリンジャーの射程距離はとっくに外れている。デリンジャーは相手に銃口を押しつけるくらいの至近距離で使用するような代物だ。短過ぎる銃身では弾の加速も安定も不充分で、5m先への狙撃すらも困難といえる。
 射撃の腕は人に自慢出来るくらいにはある、ということだろうか。
 いやそれ以前に実弾なのか、実銃なのか。銃刀法は何処にいった。
「……撃ち抜いて、それでどうなる?」
 向けられる銃口をまっすぐ睨み返しながら、それでも臆する事はカケラ程にもなく教授は逆に恋慈に質問を返してきた。
「どうなるかなんて知らんけど、とりあえず教授、あんたは血まみれで倒れる事になる」
「そして、この私の足を舐り回してはぁはぁ言って興奮してる変態を助けるのか」
「明らかに興奮してねぇよ、はぁはぁ言ってねぇよ、舐り回してねぇよ、都合の良いように特殊な趣味の人にしてんじゃねぇよ」
「お前は、この状況を把握しているのか? この男を知っているのか? 何故この男がこの状況になっているのか、それを分からずにこの男を助ける理由は何だ?」
「いや人の話聞けよ」
 む、と恋慈の眉間に皺が寄る。見事に恋慈のつっこみはスルーされていた。
 この教授という女性、マイペースに人の話を聞かないようだ。
 会話の内容を耳に入れながら、クロノは取り出したペンケースをかぱりと開ける。
 無針注射器のような物と、いっそ気味が悪いくらいに綺麗な青い液体の入った小さなアンプルが2本、そして空になったアンプルが1本入っていた。
『ペンケースを見つけた、注射器が入ってる物で間違いないな?』
『ビンゴ、それだ』
 念話を飛ばすと、教授に向ける刺のある声色とは違って平常の、若干陽気な声が返ってきた。陽気な声なのは恐らく素なのだろう。教授へ向ける言葉も何となく漫才のつっこみ役のような台詞が目立つ。
 とりあえず、教授への対応とクロノへの対応で2つの事を同時に考えている事から、マルチタクスは出来るようだ。感情まで切り離して同時思考を行える事から、かなりハイレベルなマルチタクスだと考えて良い。クロノは冷静に恋慈の能力を測っていく。
『その中に緑色……じゃねぇ、青色の薬の入ったアンプルが3本あるだろ』
『ああ、1本は使われてるみたいだ。未使用のが2本ある』
『………あの馬鹿、一度ADL落としたな………まあいい、そのアンプルを注射器の側面の差込口に刺してくれ』
 一度小声で独り言のように呟いてから、それでも気を取りなおしてクロノに指示を与える。
 ADL。
 Activities of Daily Living。
 日本語にして日常生活動作。移動・物の持ち上げ・食事など日常生活を送る上に必要不可欠な能力の事である。
 クロノの記憶間違いや聞き間違いではなければ、それの事だろう。
 ADLを落とす、というのは、ADLの低カ、つまり日常生活に必要な動作能力を損なうという意味にとれる。例えば立ち上がる力の低カ、腕を上げる筋力の低カ、等だ。
 薬が1本使われていたと聞いて、一度ADLを落としたと判断するという事は、この薬はADLを底上げする何らかの薬であると思われる。そんな薬があるかどうかは地球の医療に詳しくないクロノは分からないが、歩行器やペースメーカーなどの物理的な方法ではなく薬でADLを底上げするのは違和感を感じる。即効性の筋力強化剤とでも言うのだろうか。
 というより、そんな薬を持ち歩いているという事は、この少女は何かしらの身体的欠陥を抱えているのだろうか。それ以前にADL底上げの薬が心臓停止に効くのだろうか。血管に注射しても心臓が止まっている以上、血液は流れないのだが。
 考えてみると少し不安になった。本当に恋慈の指示を信用していいのだろうか。いや、でも今は恋慈の指示以上にこの子を救う手段はなさそうである。第一、恋慈がこの子を陥れるとしても、こんな回りくどい真似はしないだろう。
 クロノは自分に言い聞かせながら、指示通りに注射器にアンプルを取りつける。
「例えば、この男が何かの犯罪者ならどうする? 私を撃ち抜いた途端、お前に牙を剥くかも知れん。例えば、この男の奥歯にでも爆弾の起爆スイッチがあったらどうする? 私の足が抜けた途端、押すかも知れん」
「壮大な例え過ぎるぞ。つか、奥歯にスイッチは加速装置以外俺は認めん」
 その間にも並行して教授とのやり取りは続いていた。
 青年の口に靴を突っ込んだまま、デリンジャーを向けたまま、両者とも少しも動かずに言葉だけが交わされる。
 ちなみに加速装置は某サイボーグの2番目と9番目のあれである。
「例えば、だ。武力を行使してまで、人を殺す気になってまで助けるのは良いが、本当にそれが正しいのか、それを理解しての行為かどうかを聞きたいのだ」
「はいはい、理解なんぞしてませんよ。俺はお前が好かないから銃を向けてるって部分もあるんだぞ。それに――」
 軽い調子かつ刺がある声色で返しながら、恋慈はポケットに突っ込んだ方の手をゆっくりと引き抜く。
 その手にも、同型のデリンジャーが1丁。
 銃刀法違反で通報した方が良いだろうか。
 そのデリンジャーも同じく教授へ向けながら、恋慈は言葉を続けた。
「とりあえず教授、あんたがしてるのは悪い事だ。悪人に対して悪事をして良いなんて法律はない。悪い人に悪い事するのは、結局悪い事なんだよ」
「ならば、銃を向けるのは良い事なのか?」
「悪い事だよ。だけど残念ながら、俺は善い人に憧れてる訳でもなりたい訳でもないしな」
「悪いが私も善人になる気はないぞ」
「だから、こうして銃を向けてるんだよ。あんたに善人になってほしい……いや、少なくとも悪人の道に片足突っ込んで欲しくないって思ってるのが2人はいるからな」
 言いながら、一度だけ恋慈は青年をちらりと見た。
「どちらかと言えば、あんたが悪人になってほしくないから、結果としてその人を助けようとしている。よって、ぶっちゃけ俺は踏まれてるその人の事は結構どうでもいい。故にこの状況を理解する気もなければ、その人を知る気にもならない。理解OK?」
 もう一度視線を教授に戻しながら、恋慈は言葉を切った。
 教授の質問に対する説明、らしい。
 無茶苦茶な理論である。
 ふん、と一度教授が鼻を鳴らすのとほぼ同時、クロノが注射器にアンプルをセットし終えた。
『刺した、次はどうする?』
『待ってました。じゃあそれを縁の心臓―――』
 指示を求めたクロノの念話に、返す恋慈の念話がぷつっと途絶えた。
 その途絶えるのは少しで、クロノが不審に思って眉間に皺を寄せるより早く念話が続く。
『いいや、心臓に直接は駄目だ俺が許さん。どんな理由があろうと何処の馬の骨とも分からん奴に嫁入り前の縁の胸は見せん』
 シスコンか。
 自分もユーノに何と評価されているかを棚に上げ、クロノの中で恋慈という男のデータの備考欄に片仮名4文字が記載された。
 まあ確かに、心臓に直接打ち込む為には、色々脱がせねばならない。恋慈にはそれが耐えられないのだろう。かなり切羽詰まった緊急事態のはずなのだが。というか、針のない注射器で心臓に直接刺せるのか?
『―――左膝だ。縁の左膝に大きい刺し傷がある。そこにブチ込め』
 クロノが疑問に思うと同時、恋慈が静かな調子で指示を出した。
『再度確認するが、この子は今心臓が止まってる。なのに膝なのか?』
『膝だ。正確にはそこの骨だ。説明しても理解は得られないだろうけが、そこで良い』
 先程までとは違って淡々とした口調。
 それを疑問に思いながら、クロノは縁の左膝へと視線を移す。
 もしかしたら、この薬は魔法薬の一種かもしれない。少なくとも、地球の医学では考えられない指示である。というか、心臓停止に対して注射という時点で考えられない指示だ。
 ここは恋慈の言葉を信用するしかない。溜息を1つ入れてから、クロノは念話を飛ばした。
『刺し位置は傷だな』
『ああ、ニーソックス捲れば分かる。縁は自分で打つ時は必ずそこだから、跡がある。いいか、膝だぞ、左膝だ』
 何故か念を押された。
『つーか膝までだぞ、それ以上捲るな。そしてクロノ君よ……君が見て良いのは膝だけだ。それ以外を見るな。特に上を見るな。相手はスカートだというのを忘れるな。この意味分かるな? 心臓マッサージと称して君が遠慮なく触っていた揉んで堪能したのは不問としてやるから、見るんじゃないぞ』
 更に念を押された。
 いや、確かに心臓マッサージで胸を触ったのは認める。しかし揉んでも堪能してもいない。むしろそれが出来るほど縁は豊かな体じゃない。むしろ、称して、とは人聞きの悪い。
 ……人工呼吸したのは黙っていよう。クロノは心の片隅で決めておいた。
『いいか! 見るなよ! 絶対見るな! 見たらトレンチウィンチェスターとジャックハンマーとTPSとM3A2のスーパー90を至近距離で全弾叩き込んで貴様をバーナード・ワイズマンの末路より悲惨な肉骨粉にしてやる!』
 勘弁してくれ。全部ショットガンじゃないか。
 てか誰だよその人。
 段々とテンションが上がっていく恋慈の念話に、クロノは思わず半眼になってしまう。そうか、淡々とした口調になったのは感情を押し殺そうとしてたのか、長続きしなかったが。
「理解できたらその足を退けろ。撃たれて痛い思いするのは嫌だろ」
 それでもちゃんと教授への対応を続けるのは尊敬する。
 向けられる2丁のデリンジャーの銃口を真っ直ぐ細めた目で睨み返しながら、それでも教授は怯む気配を欠片ほどに見せる事無く平静なままだった。ここまで来ると聞いているかどうかも怪しい。
 沈黙の睨み合いに突入したのを横目でしっかり確認しながら、クロノは黙って縁の左膝の裏に手を当てて引っ張り上げ、丁度縁が左膝をクロノへ突き出すような形へと強制する。勢いよく引っ張った反動か、縁のスカートがするすると落ちる。
「…………」
 治療、これは治療。救命活動。疚しい気持ちは欠片にもない。
 呪文のように自分へ言い聞かせながら、クロノは太腿の方へと視線を落とす。
 黒淡色の靴下は膝上を通り越して太腿の中程にまでは確実に届いている。スカートに隠れて全部は見えないのだが、これはニーソックスと言うか、サイハイソックスでる。
『……見たら肉骨粉にして300kgの爆薬と共に魚雷発射――』
『見ないから、だから安心してくれ』
 鋭いと言うべきか、視線をこっちに向けていないはずの恋慈から念話がくる。ええ見ませんとも、例え見ても何も感じないとも、神と女王陛下に誓ってもいい。
 律儀に見ないようにしながら、クロノはソックスを脱がせていく。つっこみたい所は山々あるが、今はそんな場合ではない。
 そのクロノへ教授が一瞬だけ視線を向る。
 思わずぴたりと手を止めてしまった。別に止める必要はないのに。
「……成る程、ならば足を退けるとしよう」
 向けたのは本当に一瞬だけで、すぐにデリンジャーの銃口へと視線を戻してから、無抵抗を示すかのように教授は軽く両手を両手を上げながら、あっさりと青年の口から突っ込んできた靴の踵を引き抜く。
 今の恋慈の言葉で納得したのか?
 疑問が頭を掠めたが、現に教授は素直に足を引いていた。
 素直に足を抜いたのが驚いたのか、恋慈の眼が少し剥くように開き

「アリサちゃん! 縁ちゃん!!」
「アリサ! クロノ!」

 開きっぱなしのドアから、乱入者が来た。
 すずかと、フェイト、そしてなのはだ。
 2人について来るには体力的に辛かったのか、叫び声のように名前を呼びながら来たすずかとフェイトとは違い、ぜい、はぁ、と肩で息をしている状態だった。
 そして、すずかとフェイトのその場で固まった。
「…………」
「…………」
 屋上にいた人物は5人。
 アリサと縁、クロノ、恋慈と教授、そしてスーツ姿の自殺しかけていた青年。後ろ半分は知らない人物である。恋慈は下で少し見たが、名前は知らない。
 問題なのは、現状況。
 
 ぐったりと倒れて気を失っているアリサ。
 
 血を流して同じく倒れている縁。
 
 そしてその縁のスカートの中に手を突っ込んでいるクロノ。
 
 仰向けに倒れている青年。
 
 その青年のすぐ傍で両手を上げて降参のポーズをしている教授。
 
 更にその教授に向けておもちゃにしてはリアル過ぎる小さな拳銃を構えている恋慈。
 
 一瞬、フェイトが道端に落ちている犬の糞を見るかのような視線を向けられたのを、クロノははっきりと感じた。激しく傷ついた、年上として兄として上官として色々なものが。
『――聞いてくれフェイト』
『……なに?』
『君は誤解している。救命活動なんだ』
『スカートめくって? 手を入れて?』
 ぐぅの音も出ない。
 念話で伝わる無機質的かつ平坦な声色の義妹が、何故か恐ろしい。確かにスカートの中に手を突っ込んで救命活動しているなんて言い訳、信じろという方が無理がある。いや、言い訳じゃなく事実のはずなのだが。
 釈明が返せないクロノからすいっとフェイトは視線を外して、それから即座に恋慈を睨む。
「―――あー、その、何だ」
 その睨みの視線を受け、ワンテンポ遅れてから恋慈は頬が引きつったのを自覚する。
 にぃ、っと一瞬だけ教授の口端が吊り上がったのが見えたからである。
 諮られた。
 素直に足を引いたのは、そういう理由か。
「聞いてくれ君達」
 若干冷や汗を浮かべながら、それでも教授から視線も銃口も逸らす事なく恋慈は斜め後ろにいるフェイト達に話しかけた。その言葉で漸くなのはは顔をあげるが、未だに息が切れている。
 更にワンテンポ置いてから、声を絞り出すようにして恋慈は言葉を続ける。
「誤解な――」
「あー、殺されるところだった」
 見事に感情の篭らぬ棒読みである教授の言葉に、恋慈の言葉は相殺されてしまった。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 なんというカオス。
 読み返してみると、熱かったり冷たかったり教授が随分忙しい性格をしている気がしてならない。むしろ恋慈の性格上、どうしてもシリアスにならない。
 縁というキャラを書きはじめた最初の頃も感じてましたが、クロガネの出すオリキャラは書き難い上にヤなキャラばかりだな。
 
 無駄な紹介。
○デリンジャー
 拳銃の一種。小さくて単純構造から整備性の高さが売り。更に銃身の関係上弾を加速させる余地がないので反動がとても小さい。小さいから当然軽い。
 ハイスタンダード・デリンジャーだと大きさの問題から中指で引き金を引くので、構える姿は非常にかっこいい。でも安全装置がないので危険。そして引き金圧がM500並に重い。
 ただし、威力と精度は……
 
○ウィンチェスター
 正確には銃の名前ではなく会社の名前。トレンチウィンチェスターはM1897を指す。
 M1897の愛称がトレンチガン。でも、トレンチガン=M1897じゃないので注意。でもトレンチガンと呼ばれる中で最も有名なのがM1897。
 有名なショットガン。戦争時にあまりに成果を挙げ過ぎた為、ついにはハーグ陸戦条約にて散弾銃が使用禁止項目として盛り込まれた位に有名。

○ジャックハンマー
 フルオートで12ゲージの散弾を発射する恐怖のミンチ肉製造兵器。恐らくこれだけで十分バーニィーより凄惨な末路を味わえる。
 感覚的にはポンプ式を廃止したオートマチック式ショットガン。しかもゴツくて大きいので打撃武器としても使える、重いが。作ったのは当然ショットガン大好き帝国アメリカ。
 恐らく現代兵器で最もThe地球防衛軍の巨大生物に相手に優位に立ち向かえる最強のショットガン。ここまで無制限に強いと逆にショットガンとすら思えない。

○TPS
 トヨタ生産方式ではなくファブリックナショナル社のショットガン。
 3kg以下という軽量なのにロータリーボルトとポンプアクションを採用している上にチョークチューブを完備している優れもの。SWATでも採用されてる。正しくスペシャルウェポン。
 
○M3A2のスーパー90
 当然ながら平仮名の 『の』 はいらない。ポンプアクションとセミオートを切り替えて使用できるのが特徴。
 ショットガンでありながら、何故かSWATの狙撃チームに重宝される困り者。
 
 
 ちなみにクロノ君が手を突っ込んでいる所はあらゆる意味でかなり危険ゾーン。
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8件のコメント

[C100] クロノ君大ピンチ

まさに混沌ネロ・カオス。最後の状況ぱっと見て理解できるやつはいないでしょう。恋慈はシスコンだったんですね、クロノや恭也や真雪といい関係を築けそうだ(笑)

クロノの運命や如何に。予想①恋慈にバーニィ(ミンチ)される。 予想②フェイト・はやて・なのはに、炭にされる。 予想③教授にオラオラされる。 予想④炎髪灼眼に目覚めたアリサに討滅される。

さあどれだ!?
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C101] クロノ死亡フラグ?

最新話読ませていただきましたが、前半の重要そうな伏線とシリアスさを、後半ですべてぶち壊してくれました。(笑)

次回はクロノの言い訳に期待ですね
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : オサフネ
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  • 編集

[C104] コメントありがとうございますー

○ミヅキさん
 みんな死んでるやん!?
 そしてクロガネが書く姉・兄キャラは大抵シスコンorブラコンとなっています(既にクロノが)。
 
○オサフネさん
 だからと言って、その伏線を軽く見ると痛い目を見るのがミステリ小説の基本ですが。ミステリじゃないけどさ!
 さて、言い訳は……悪足掻きは品格を下げるぞクロノ。
  • 2007-09-09
  • 投稿者 : クロガネ
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[C105]

いや笑った 笑った。
この混沌ぶりは最高だ そしてショットガンだらけとはよくわかっていらっしゃる。 そして何よりも奥歯のスイッチで加速装置 ON しか認めないとは・・・ ブラボー オー ブラボー 。


だが、しかし一言物申す。 混沌ぷりが激しすぎてお話がほとんど進んでないのはいかがなものか?
あとがきで銃の性能紹介するならば、本文中でのデリンジャーの説明部分をもう少し短くできたのではなかろうか。恋慈の能力を説明するのに必要だったのはたしかですが。

今回の感想はこんなところで、次の更新を涎たらしながら待ちます。
  • 2007-09-10
  • 投稿者 : おにがみ
  • URL
  • 編集

[C106]

気づいたことがありますので、また書き込みますが 

注意事項は本来ブログのトップになければいけないはずですが、いつの間にか下に埋もれています。
新規に閲覧する人のためにも、トップに来るように直したほうがいいと思います。
  • 2007-09-10
  • 投稿者 : おにがみ
  • URL
  • 編集

[C107] コメントありがとうございますー

○おにがみさん
 むしろショットガンだと分るクロノは一体どうだろう。
 話が進まないのは……ごめんなさい。銃の説明に関してはアレです、完全なクロガネの趣味(ぇ
 注意事項を最初には確かにしたいのですが、うーん。
  • 2007-09-11
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C108]

人がバタバタと死ぬような、心が荒むSSばっか読んでたので、癒しを求めて読み返していたら。
萌えた
縁とアリサとまほーしょーじょ3人に萌えて、恋慈と教授に萌えた。
ガンザ君にシャリー、ついでにクロ助・フェレット果てには学校のクラスメイトに萌えた。
気づいたら、自殺未遂者に萌えてる自分がいた。

背景が緑色なのが、さらに萌えを助長していると思われる。

感想
日本茶が飲みたくなるSSでした。
  • 2007-10-06
  • 投稿者 : TFJ
  • URL
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[C110] コメントありがとうございますー

 復活のクロガネ。いやもとい、コメントありがとうございますTFJさん。
 マズ思うに、そのバタバタ人が死ぬような心が荒むSSをクロガネは読みたかったりして。あ、でも結末はハッピーエンドで。
 
 萌えましたか……

 そうです、縁はどうでも良いとしてアリサや魔法ょ、ごほん、少女に萌えれば問題ないのですよこのジャンルは。むしろアリサ万歳。
 しかし自殺未遂者とは末期……

 ようやく背景色につっこむ人が出てきた。
  • 2007-10-11
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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Appendix

うぇぶ拍手

拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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