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-件のコメント

[C87]

これは孔明の罠だ!!
騙されました。見事に騙されました。
縁の***がクロノに見られてないか心配です。
じゃ風林火山見てきます
  • 2007-07-15
  • 投稿者 : 梨紅
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[C88] コメントありがとうございますー

 騙されてくれてありがとうございました、女でした。
 うちのクロノはエロノじゃないのでご安心を。まあ、見たら鉄拳制裁が待っているでしょう、アリサの。
  • 2007-07-15
  • 投稿者 : クロガネ
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[C89]

教授にすべて持っていかれてしまった。
女性というのはともかく、いきなりの風林火山に度肝を抜かれてしまった。ただ、世代の所為か風林火山と聴くと某皇帝を思い浮かべてしまう。
次回も教授に期待してます。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : オサフネ
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[C90] コメントありがとうございますー

 風林火山の語呂はやはり有名なのだなと。ただし風林火山自体は孫子のパクりなのに。
 ちなみにどちらかと言えばクロガネも皇帝を思い出しますが。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : クロガネ
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[C91] 教授キター!

まず最初に誤字発見、侵掠じゃなくて侵略

遂に教授登場。女性だったんですね…三期のスカリエッティとか、灼眼のシャナのダンダリオンみたいなのを想像してましたが、キャラ的に空の境界の橙子さんみたいな、ワイルド系なのかな?
「手を離すな! この大馬鹿者!!」の後に「お前の手は人を守る手だ!」とアギト的セリフを思い出してしまいました。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C92] コメントありがとうございますー

 はい、女性でしたー。というか、やはり “教授” なんて名前だと思い浮かべるのがそっち系ですよね……
 
 ちなみに、実は 「侵掠」 で合っています。
 風林火山の原文で、“火” の部分は “侵掠如火” であり、現代日本語訳では “侵掠すること火の如く” になります。
 実際はどちらでも良いのですが、クロガネは孫子の原文版に方が好きなのでそちらを採用しています。
 ですが指摘ありがとうございます、間違いあったらどすどす書き込んでください。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : クロガネ
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[C93]

>可憐な少女が耐え切れる重さではない。華麗という一言に今疑問を抱いた奴は表へ出ろ。

誤字だと思いますが華麗の単語にあまり違和感がありません。
いや、むしろ可憐が誤字?
  • 2007-07-18
  • 投稿者 : 七誌
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[C94]

 ぎゃーっす、可憐が正解で華麗が誤字ですー。
 指摘ありがとうございます。
  • 2007-07-19
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 19

 さて、そうなるだろうとは予想していた事ではあったし、もしも逆の立場で落ち度もなく同じ目に遭ったとするならば、同じような結果になるだろうというのは重々承知していた。本当である。しかし、予想していようと承知していようと、人間というのは実際にその場面に直面すれば、やはり凹むものである。
 フェイト・T・ハラオウンは、海鳴 縁に避けられていた。
 仕方があるまい。
 心の片隅で冷静な自分がそう呟くが、それでもフェイトは帰りのホームルームを知らせるチャイムを聞きながら机に突っ伏して盛大に凹んでいた。
 結局、謝ることが出来なかった。
 いや、それは誤解を生みそうだ。正確には謝罪をきちんと受け入れてくれなかったのだ。
 休み時間毎、なのはとお喋りをする貴重な時間を潰して、惜し気もなく縁のところに謝りに行くのだが、決まって縁は気にしなくて良いと笑って言う。あれは私も悪かったのだと、あのにこーっとした仮面のような作り笑いで。明らかにフェイトの謝罪を話半分でしか受け止めていない様子である。
 事実、なのはの時とは確実に対応が違っていた。
 別に土下座して欲しい訳ではない。むしろ土下座するのは自分の方で、こうなったら本当に土下座するしかないと思っているところをなのはに止められた。
 昼食の時もそうだ。縁の両サイドはアリサとなのはで固定されているらしいが、フェイトはなのはの隣に座ると、縁はさり気なくアリサ側へと距離を詰める。これだけなら被害妄想だと、気のせいだと一蹴できるが、合同である体育の時間や休みの時間などでじっくり観察してみると、明らかに縁はフェイトを中心として6歩分の距離より内側に自ら入ろうとしなかった。むしろフェイトがその領域に入ると、一瞬だが縁の作り笑いが一瞬だけ剥げて無表情になるのが確認できた。
 人間の心理というのはどうしようもないもので、自分が嫌いな人間に近寄るのには抵抗を覚え、嫌いな人間の姿を確認したときにはどうしても表情に出てしまうものである。
 つまりそれは――
「――きらわれた……」
 という事に他ならない。
 まるで魂が抜け出るかのような溜息が出てきてしまった。
「フェイトちゃん、重症だね……」
「普通はそうだよね……」
 少し離れた位置の、なのはとすずかの心配そうな声も届くことはなかった。







「すまないが、今日は早退させてもらう」
 そうクロノが昼食をとり終えてから堂々とブリッジで宣言した時、エイミィを除いたクルーからあがったのはブーイングではなく戸惑いの声であった。
 うそ、あの艦長が早退!?
 なんだ? ついに恋人でも出来たのか!?
 だってクロノさんって仕事が恋人なんでしょ!?
 確か徹夜4日目だろ? 無理が祟って壊れたんじゃ……
 それだ! おい誰か衛生兵!!
 などなど。
 本当に医務室へ連れて行かれるところであった。なんという認識のされようだ。否定できる箇所がないというのは泣けてくるが。
 しかし、例え情報収集待機だとしても今は立派な作戦行動中であり、そんな中でクロノが個人的な都合により早退する等というのは初めての出来事である。自分ではあまり認めたくないのだが、誰の目から見てもワーカーホリックとしか言いようがないクロノとしたら驚くべき事態だ。だからと言って医務室行きは流石に失礼じゃないのかとクロノは思いつつ、残りの作業をクルーに任せて早々と半日で仕事を切り上げて退散した。
 結局、誰一人として作戦行動中に艦長が艦を離れることを責めなかった。
 人望の成せる業である。
 そして、クロノが早退してから1時間と少し、未だに少し緊張した面持ちで入ってくる少年が1人。
「ガンザ・アーカー3等空位、入ります!」
 入ってから言うなよ。心の中で一言つっこみを入れてから、エイミィは笑顔で返事を返す。
 艦長であるクロノがいない今は、命令指揮系統は基本的にエイミィが預かっている。本来ならば副艦長が繰上げで命令指揮系統を預かるはずなのだが、アースラには事情があり副艦長という役職者が欠番なのだ。単にクロノとエイミィのコンビが一番息が合っていて、エイミィも伊達に長年リンディやクロノを見てきた訳ではないので緊急時の命令式ならばそこらの艦長よりも上手く捌けてしまうのが副艦長のいない原因なのだが。いっその事エイミィがオペレーターから副艦長になれば良いのだが、分不相応だと己の実力を下に見積もっているエイミィは笑って済ませてしまうのだ。
 ブリッジに入ってから、ガンザはきょろきょろと周りを見渡すようにして視線を動かす。
「どうしたの? 道に迷った?」
「いえ、流石にそれはないっスけ……ないですけど」
「――無理して敬語にしなくて良いからね、ここでは」
 明らかに敬語に慣れていないその言葉遣いに、エイミィは苦笑するしかなかった。
「で、どうしたの?」
「いえ、今の内に看視者の資料とか調べておこうかと思って」
 何でもお姉さんに聞いてみなさい、とでも言うようなエイミィの質問に、ガンザはバツが悪そうに頭をポリポリトかきながら答える。
 はて、看視者の情報とかって結構公開されていたような気がするし、そもそも正体不明が売りのような看視者に対して資料といっても目撃情報くらいしか存在はしない。いくら看視者捕獲の任務を持っていたとしても、追加で公表される機密資料はないのだ。
 ガンザの言葉に不思議そうな顔をしたエイミィのその考えが分ったのか、ガンザは慌てて訂正をかける。
「この間まで高町教官……高町教導官の補佐してたんスけど、資料処理とかデスク物全部高町教官一人でやられるもんっスから、全然情報とか入らなくて。出来れば目撃記録と戦闘記録を見たいんっスけど」
 駄目ですかね、と聞いてくるガンザに対して、エイミィは即座に思考を走らせる。
 情報収集待機である現在、実働要因である彼ははっきり言って仕事がない。看視者の記録を見せておいて損はあるはずないし、あの気持ち悪い姿にも今の内に見慣れておいてもらった方が良い。
 まあ、問題はない。
「じゃあ、適当なとこに座ってて。今引っ張り出してくるから」







 さよーなら、と号令と共に先生へと頭を下げ、ふと教室の入り口へと視線を向けると、アリサ達が待っているように待ち構えていた。アリサ、はやて、そして縁。
 心構えをする暇なくいきなり来たか、とフェイトは気を引き締める。
「今日は遅かったのね、いつも早いのに」
「連絡多くてね。6限目も長引いちゃって」
 先生が出て行き、各々に帰りの支度をする中を我が物顔で教室に入って一番近い席にいるなのはへと、挨拶のように片手を挙げながらアリサが話し掛けてきた。後ろには金魚の糞のように付き回る小さい姿。よくよく縁に懐かれているなぁ、と苦笑を浮かべる。
 ちなみになのはのクラスの担任は、HRにかける時間が異様に短いと有名である。
「で、今日からなのは達って休みでしょ?」
「あ、うん。フェイトちゃんも休みだって」
「はやては休みだ休みだって五月蝿いくらいよ」
 鞄に教科書をしまいながら答えるなのはに、アリサは疲れたように溜息を一つ。
 前々から言っていた週末から頭までにかけての奪い取った管理局の連休に、いつもに増してはやてのテンションが高いのだ。付き合わされる身にもなって欲しい。事情を知らない縁にも話を振りそうになるのだから心臓に悪い。
 まあ、管理局の仕事は忙しいらしいし、はやての家族も全員管理局の仕事をしており、全員が纏まった休みを取るのも久しぶりなので嬉しいというのは分らないでもない。分らないでもないから対応に困るのだが。
「おや、自警団の仕事は休みなのか?」
「うん、ちょっと連休もらったの」
「そうか。うん、休める時には休んだ方が良い」
 まるでクロノ君だ、と縁の台詞に思わず笑ってしまった。何故笑われたのかが分らない縁は、不思議そうに首を傾げる。
 ちなみに未だに縁には管理局のことを自警団だと嘘を通していた。良心は痛むが、秘密である以上は仕方のないことであった。
 人の波を掻き分けながら、送れてはやても入ってくる。ある程度人数が引くのを待たねば、車椅子では邪魔になるからだ。
「なぁなぁ、今日は皆でどっか遊びに行かへん? シグナム達も呼び出して、ぱぁっと」
「お、良いわね、最近会ってないのよね」
 もう嬉しいのが隠せない、といった風に話を切り出してきたはやてに、真っ先に乗ったのが何だかんだ言いながらもアリサであった。管理局に勤めている以上、一緒に出かけたり遊んだりする時間が少ないので、やはり遊べるときに遊びたいのだ。
 まあ、シグナム達を呼ぶのには、シグナムかシャマルがいればカラオケなどへ比較的楽に入れるという算高がない訳ではない。
 じゃあ、どこに行く? と聞くのはなのは。既に行く気満々である。
 ぴったりとアリサに張り付いている縁は、シグナム誰だよ、という表情。
 その光景を離れて見てから、フェイトは鞄を持って席から立ち上がる。
「アリサ、はやて」
 近付きながら声をかける。その声に各々振り向き、縁だけが一瞬だけ表情が変わる。
 一瞬だけ、無表情に。
 注意して見なくては気がつかないくらいにい一瞬。
 それでも本当に一瞬で、次の瞬間には何事もなかったかのように笑顔へと表情がころりと変わる。
「……海鳴さん、一緒に帰ろう」
「おつかれさんフェイトちゃん、丁度その話をしとったんや」
「遊びにでも行かないかー、ってね」
「ほら、シグナムさん達も休みだって。誘ってみよっか?」
 怯みそうになる心を叱咤しながらも言葉を続けたそれに、はやてもアリサもなのはも笑顔で返事を返す。結局は小学生、土日の休みも含めて放課後が嬉しいのだろう。
 その中で、縁だけは返さなかった。
 にこーっと笑顔を向けるだけで、沈黙を守られた。
「そ、そっか。うん、私も行く……海鳴さんは?」
「……ああ、良ければ私も行きたいのだが、遠慮した方が良いだろうか?」
 間があった。
 そして、わざわざ振り向いて確認をアリサにした。
 割と露骨なその反応に、思わずアリサやなのは、そしてはやてまでもが一度口を横一文字にしてしまう。目線を逸らされた事は流石にショックで、フェイトの表情から覇気が抜け、しょぼんと肩が落ちた。
 やはり、嫌われた。
 後悔の念のような感情が、胸をじわじわ侵食してくる。
 それが理不尽な嫌われ方ではない以上、フェイトは、そしてそれを見るアリサ達も、何も言えはしなかった。
 腕を折られ、頭を割られかけ、殺されかけた相手と仲良くしようとは、常人ならば思わない。むしろ、最初は縁に対して敵意に近い感情を持っていたのは否めない。例えそれが嫉妬という感情であろうと、向けられた方からすれば理不尽な敵意に他ならない。
 嫌われて、当然である。
 仲良くして欲しいなんて、虫の良い話である。
 全ての人が、なのはのように、受け入れてくれる訳ではない。
 嫌な考えばかりが頭の中をぐるぐる回る。
 元々ネガティブな思考回路の持ち主であり、今回ばかりはその考えが嫌に納得できてしまうので、内罰的な考えが次から次に止まらなくなってくる。
 そろそろ、泣きたくなってきた。
 痛いことも辛いことも慣れているが、嫌われる事は、とても、怖い。
 泣きそうな子供のような表情に変わりかけるフェイトを見て、これはマズいと思ったアリサは慌てて口を開いた。
「もももちろん良いわよ! 決まってるじゃない!」
「駅前のモールにできたカラオケ、おねーちゃんが色々遊べるって!」
「それえーね! カラオケ! 私行ったことあらへんくってなー! 歌歌うんやろ? 行ってみたかったんやわー! 縁ちゃんも行った事あらへんやろ? 初心者独りは心細いから強制的に拉致ってでも行くでー!」
 落ち込みそうになる場を無理矢理引き立てるように、無駄にテンションをあげて笑いながら縁に答えると、同じくフェイトの表情に気がついたなのはとはやても援護に回った。特に元々テンション高めのはやては、こういった場を盛り上げるのには長けている。
「か、からおけ? からおけ、とは何だ? 歌を?」
「歌を歌うところや! 人間は大声を出したりするとストレス発散できるからね! あ、フェイトちゃんめっちゃ歌上手いんやで! 音楽の授業もソロパート独占やし、聖祥聖歌隊からも連日お呼びの声がかかるくらいなんやで!」
 想像通りといえば想像通り、カラオケの存在を良く知らない縁に早口ではやてが説明をする。そしてかなり不自然に話をフェイトの方へと振っていく。
 グッジョブはやて!
 サムズアップをしてアリサははやてを褒める。やはりこういう時には役に立つ。
「――――」
 しかし、フェイトの名前が出たことによって逆に縁の動きが一瞬止まる。
 マズっ。
 ちょっと話の切り出しが早かったか!?
 泣くのを我慢している表情から泣く寸前の表情に変わるフェイトをちらりと見て、逆に現状が悪化したことを悟ったはやては縁の返事を待つ事無く畳み掛けるようにして話を続ける。
「あ、でもあれやな、小学生だけやと入り辛いかもしれへんな。ここはやっぱシグナム達も呼ばなな。あ、私の家族の事やで。そーそー、シグナムがな、私のクラスメートで凄い強い子がおるゆー噂を聞いたらしくって凄い興味持っててな、多分縁ちゃんの事やと思うから是非紹介せなあかんかったわ。シグナム剣道の先生やっとったんやけど、フェイトちゃんとの試合みたいにバシーっとやったらきっとシグナムも驚いてってうわぁぁぁぁ会話の選択もろミスってしもうたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 誰も口を挟む余地もなく、そしてはやてはノリつっこみで自爆した。傷を抉るような禁句発言である。その時の事を思い出したのだろう、縁が盛大に顔を顰める。
 じわぁっと、フェイトの両目から涙が滲んできた。
 明らかにはやてのせいである。
 一応弁解するならば、決してはやてに悪気はなかった。ただ、少し暴走気味だっただけである。
 やっぱり嫌われた。
 完全に嫌われた。
 完璧に嫌われた。
 嫌われた。
 どう考えてもその試合のせいである。
 そもそも試合を申し込んだのは自分だ。
 挑戦状を叩きつけ、竹刀も持たない相手をボコボコにする。いじめじゃないか、悪逆無道の限りだ。
 内罰的な思考が大事な中間部分をスルーしている。
 やっぱり駄目だ。
 駄目なんだ。
 とても友達にはなれない。
 なれる余地が、ない。
 いや、ない、なんてものではない。
 その余地を潰したのは、他でもない、自分自身。
 禍つ行い人に施し己に帰る、即ち、自業自得。
 つくづく馬鹿な事をした。もしもタイムマシンがあるならば、過去の自分の首を絞めてやりたい。
 じわじわと涙の堤防崩壊が近付くフェイトの様子に慌ててアリサ達も声をかけようとして

「じゃあ、その前にデパート拠っても良いかな?」

 ほわっとした一言が、隣からかけられた。
 え、と視線を向けると、いつの間に近付いたのか笑顔のすずかが立っていた。フェイトの表情は視界内にあるだろうに、変わらぬ表情である。
「あ、何か買い物でもあるの?」
「うん、ちょっとね」
 救世主が光臨した、とでも言わんばかりの表情でアリサは話を振る。すずかならば空気も読んでくれる発言をしてくれるだろう。
「なにかの新刊なんか?」
「ううん……あの、ちょっとランジェのコーナー……」
 自爆したはやても即座に戦線復帰する。
 話が逸れはじめて、フェイトの堤防結界の警報もゆっくり収まってきている。
 しかし、はやての予想したすずかの反応とは裏腹に、少し恥ずかしそうに答えは返ってきた。
 はて、下着?
 その疑問が顔にでも出てて伝わったのか、恥ずかしそうなまますずかは続けた。
「ほら、私と縁ちゃん、朝海に入っちゃったし……制服は洗えても、ね?」
 ああ、となのはが納得したように手を鳴らす。まだ少し涙目のままのフェイトも、すずかの発言に状況が分る。よし、注意が逸れてきた。
 朝から予想もしていなかった着衣水泳を決行したすずかと縁は、結局海水でべたべたに濡れた制服を家庭科室の洗濯機で洗濯した後アイロンをかけたのだが、流石にそれ以上のことは出来なかった。
 洗っている最中制服は体操服で代用できても、下着はそうはいかないのだ。
 しかも替えを持ってきていない。
「縁ちゃんも下着買おう? べたべたのままなのも嫌でしょ? それに今日は体育もあったし」
「ん、そうだな……確かに」
 そのまま流れるように縁を誘う。どうやら話は最初の方から聞いているらしかった。
 同じく海水に濡れたもの同士、縁も同じ状況になっているだろうと予測しての発言である。すずかの誘いに、それは一理あるなと言わんばかりに縁は頷き

「穿いていないと、正直変な感じだ」

「――――」
 斜め上を行く発言に、全員フリーズした。







「さ、下着買うわよ、さっさと、今すぐに」
 頭の中でとても公表できないピンクな映像が絶賛妄想中で、このまま鼻血噴いて倒れるんじゃないかというくらい顔を赤くしたアリサの強制的な提案に、誰も異議を唱えなかった。引きづられて強引に教室から退場していく縁だけが、状況をいまいち理解していなさそうな表情であった。
 妙にはやてが引き連れられて行く縁のスカート部へ視線を向けているのは誰もつっこまない。
「どうしたんだアンス、何を慌てているんだ?」
「慌ててるっつーか、なんで縁はそんな平然としてるのよ!?」
「何がだ?」
 穿いてない事だっつーの、と下駄箱の扉を叩くように閉めならがアリサは意味が判らないとでも言うように首を傾げる縁へと心の中でつっこみを入れる。
「縁ちゃん、その……脱いだのってどうしたの?」
「ん?」
「あのほら……その……下着」
 顔を赤らめながら、すずかが聞いてきた。興味はあるようである。
 その質問に対して、ああ、と答えながら徐に縁はスカートのポケットへと手を伸ばし――即座にアリサにその腕を捕まえられた。わかった、なんとなくオチはわかったから、頼むから公共の場で取り出さないでくれ。
 何で押し留められるのだろうと不思議そうにアリサへと縁は視線を向けるが、アリサは黙って首を振り、すずかに視線を戻せばすずかも赤い顔のまま首を横に振る。
「……ポケットに」
「そ、そっか」
 首を傾げながら答える縁へ、苦笑いを浮かべながら返すしかなかった。
 靴を履き替えて昇降口を出、アリサ達は早足のまま学校の正門をくぐる。その間にひたすら沈黙を守りながら縁のスカートを注視している少女の頭をアリサは一発叩いておいた。
 しかし、どうして縁はこうも突拍子もない行動をとるのだろうか……今更なのだというのは良く分ってはいるのだが。体育の授業での着替えでも、別の所で着替えているので全く気がつかなかった。いや、そのまま堂々と着替えて欲しいわけではないのだが。
 変な事を考えそうになる頭を数回叩き、アリサは早足のまま静かに深呼吸をしながら心を落ち着けるように努力をする。
 何をしているのだ?
 にゃはは……な、なんだろうね?
 後ろから聞こえてくる縁となのはの声は聞こえないフリをする。
 学校近くの横断歩道―――先週子猫を助けようと縁が轢かれた所だが―――はタイミング悪く丁度赤であり、全員立ち止まる。横断歩道の向こうには7階建ての真新しいオフィスビル。2年前、なのは達が魔導師であると暴露する少し前に建てられたばかりである。
 前にすずかが、随分変わったよね、と呟いていた。
 海鳴は田舎、という訳ではないが、かといって大都会と言うほどではない。少しずつ栄えている街なので、その姿は少しずつ少しずつ変わっていく。
 アリサがなのはとすずかと仲良くなった頃には、ここの横断歩道で赤信号の足止めを喰らったときには、海が見えていたのだが……確かに、変わったと思う。
 代わりに、アリサはフェイトとはやて、そして現在進行形で縁と仲良くなっている。縁の場合は世話をしている感じもあるが、変わっていくものだなと、つくづく思う。
「あれ?」
 ふいに、フェイトが声をあげた。
 なに? と聞くように振り向くと、横断歩道の先をフェイトが指差していた。
 その指差す先を確かめるように、もう一度横断歩道の先を見る。
 信号待ちで何人かの人が立ち止まっていて……知った顔がその中に混じっていた。
「クロノ君?」
 驚いたように声をあげたのは、なのは。
 そう、向こう側で信号待ちをしている中に、今頃アースラで仕事に忙殺されているはずのクロノが、あまり着る機会のない私服を着て立っていた。こちらの様子気にがついたんだろう、苦笑いをしながら軽くてを振ってくる。苦笑いをしているのは、恐らく何でここにいるんだという疑問を皆が抱いている事が分かっているからだろう。
 やっほー、と気楽に手を振り返すのは、すずかとはやて。
 義妹であるフェイトは指を差したまま固まっている。
 今日は普通に勤務があると言っていて、休むというのは聞いていなかった。むしろ、仕事を喜んでやっているような人間である。自分から休みを取るという姿は想像できない。
「……何でクロノさんいるの?」
「わ、わかんない」
 クロノの仕事振りというのを見た事なくても、常に仕事をしているというイメージを持っているアリサもフェイトへと聞いてみるが、もちろんフェイトが知るはずない。知っていたら混乱するものか。むしろアリサ達にもワーカーホリックだと思われるのは如何なものだろうか。
 そこで、リアクションを返さなかった縁にアリサが気がつく。
 そうだ、縁はクロノの事を知らないのだった。
 一体誰だ? という顔をしているであろう縁へとアリサは振り向く。
「あ、えに――」
 と、呼びかけた言葉はそこで止まる。

「―――――」

 皆々が視線を向ける青年の存在などまるで気にしていないかのように、縁はまっすぐオフィスビルを見上げていた。
 何時か見たような、無表情で。
「縁?」
 そうアリサは呼びかけるが、縁は反応しない。いつもならば子犬がなついている主人を見つけたかのように反応するのに。
 まっすぐ、オフィスビルを見上げているその目は、感情が読めない色をしている。
 横断歩道の信号が、青へと変わる。
 縁の様子に気がつかない面々はそのまま進もうと足を踏み出し――

 突然、縁が駆け出した。

 禄でもない事が起こる。
 1週間のつき合いで十分に縁の行動パターンが分かっているアリサが、縁の行動に対して反射的に悟った。
 え? と皆が縁を見送る中、アリサは即座に縁の見ていた先を確認する。
 縁はオフィスビルを見上げていた。縁の事だ、そのビルの上の方に何かがあったのだろうと考えながらアリサもビルを見上げ――

 同じく、アリサも縁を追うようにスタートダッシュをかける。

「あ、アリサちゃん!?」
 縁に続きアリサまで追いかけるように走り出したことに、すずかが戸惑ったような驚きの声を上げるが、それに返事をすることはアリサには出来なかった。
 そうきたか。
 そうきたか!!
 むしろ自分が走り出した事に驚いているのはアリサも同様だった。
 決して世間を斜めから見ている訳ではないが、良くも悪くも現代っ子であることは自覚しているアリサは、まさか自分がこういう行動に出るとは自分自身思いもしていなかった。縁の性格が伝染してきたのかもしれない。できれば勘弁してほしいところだ。
 縁が突然走り出す時は、いつも何かの理由があり、その理由の大半は何かを助ける為であった。それが轢かれそうな猫や溺れている犬や、はたまたサッカーボールが直撃するところだった女の子や巣から落ちた鳥の雛だったりと幅は広いが。
 そしてその後始末をするのはいつも自分達である。
 サッカーボールが直撃するところだった女の子を助けたは良いが、泣かれてしまい狼狽していたところで女の子を宥めたのは自分で、鳥の雛を巣に戻したところ親鳥に突付かれ高い木の上から落ちて悶絶している縁を介抱したのも自分だ。溺れかけているのを助けたのはすずかだが、家庭科室の洗濯機を借りて洗濯し、干し方の分らない縁に服の干し方を教えたのは自分だ。改めて考えるとつくづく貧乏くじしか引いていない。
 しかし、今回はどう考えても後始末が出来るようなレベルではないのは一目で分った。
 だからと言って縁を追ってどうするとも思うが、走り出したのは反射的だ。
 縁の足は速い。アリサが駆け出す頃には既にクロノの横を通り過ぎていた。
 突然凄まじい勢いで走り出し、自分の横を通り過ぎて行き、その勢いでオフィスビルの正面玄関でもあるガラスのドアを割るかの勢いで開いて転がるように駆けて入る少女を、クロノは変な人もいるんだなという目線で見送り、その目線を戻すと今度は鬼気迫る勢いで自分めがけ走ってくるアリサに驚いた顔をする。
「な、どうし――」
「ごめん! 上!」
 問う言葉も耳に入れず、先の少女を追うようにアリサもクロノの横を通り過ぎて猛ダッシュでオフィスビルへと転がり込むように駆け入る。
 いったい何だ? 上?
 先の少女といいアリサといい、何が起きたんだというようにクロノはアリサがすれ違いざまに言っていた上を見上げ、ぐるりと上を見上げたままオフィスビルの屋上へと視線を移した。
「――――」
 流石に、黙った。
 わーお、とクロノらしくない淡泊な呟きを心の中だけで漏らした後、即座にクロノもアスファルトを強く蹴り飛ばしてアリサの後を追うようにオフィスビルへと駆け入る。
 さて、続けて3名の奇行に置いていかれて困ったのはなのは達。
 縁だけならばまた何か起こったのかと思うところではあるが、アリサとクロノも同じ行動を起こした事によりただ事ではないというのは想像に易い。易いのだが、そのただ事ではない事態というのがさっぱり分からない。むしろクロノ、お前が置いて行ってどうする。
 やや駆け足で横断歩道を渡り、クロノのいた位置まで辿り着くが、その位置に立っても何が起きているのかが分からない。
「なんやろ、ここに用事やったんやろか」
 縁達が駆け込んで行ったオフィスビルを軽く見上げ、はやてが不思議そうに呟いた。
 いやいや、流石にそれはない。
 隣でフェイトがつっこむ。
 そもそもアリサと縁がオフィスビルに用事があるとは思えないし、あるなら先に言っているだろう。クロノに至ってはとてもじゃないが用事があったとは思えない。それにあの慌てよう、オフィスビルに何かの危険を見つけたとしか思えない。
 オフィスビルの……いや待て、クロノはもっと上を見上げていたなと思い、ふいとフェイトはオフィスビルの屋上へと視線を這わせ――

 フェンスの外側に、スーツ姿の青年。

 義理とは言え兄妹は似るものなのか、それを見て同じくフェイトも黙った、流石に。
 外側だ。
 内側じゃない。
 遠目では良く分からないが、少し線の細い疲れた企業戦士風の青年である。歳はそういっていないだろう、まだ若そうに見える。
 ビルの屋上。
 フェンスの外側。
 下はアスファルト。
 これが何の事か分からないと、フェイトは言う気はない。きっとフェンスの内側には揃えた靴と封筒が置かれているだろう、“遺書” とか書かれて。

 自殺寸前、だ。

 さぁ、と自分の血の気が音を立てて引いていく。同時に縁等が慌ててオフィスビルへ駆け込んだ理由も理解できた。
 なるほど、助けに行ったのか。
 ……などと感心している場合じゃない。
「だ、だめ!!!」
 意識することなく思わず声が出た。自分でも驚くくらいの大声の叫びである。
 突然の叫びに他の面々はびくりと肩を振るわせてから慌ててフェイトの方を見るが、フェイトにしたらそれ所ではない。その声に釣られてフェイトを奇妙な目で見てくる通行人達の視線も全て無視だ。
 もともとフェイトの声は良く通る声でもあり、その叫びに屋上にいた青年も気がついたのか、すっとフェイト達の方へと見下ろすように視線を向けた。
 よし、気付いた。
「そこは危ない!! 早く戻って!!」
 両手をメガホンのようにして、フェイトは再び青年へと叫ぶ。
 その様子になのはとすずか、そしてはやても屋上にいる青年に気がついた。3人とも一瞬で顔が青くなる。
「っ!!」
「わ、わわわ……」
「ちょ、危ないで阿呆!!」
 声にならない悲鳴をすずかが、言葉にならない唸りをなのはが、そしてフェイトと同じく反射的な叫びをはやてがあげる。
 それに釣られるようにして、周りの通行人達も屋上にいる青年に気がつく。
 ちょっと、なにあれ?
 パフォーマンス?
 え、マジなの?
 口々に囁かれる言葉は、不審そうな色と事実を探ろうとする色ばかりが目立った。中には芸の一種だと笑う者もいた。
 囁かれるその声が屋上まで届くはずがないのに、青年はそれらに反応するようにふっと笑った、様な気がした。遠目で表情までは分らないのだが、何故かそんな気がした。
「そこから落ちたら、あなたは死――っ!!」
 そこから先の言葉は、息を呑むような悲鳴と混同してしまった。
 ひゅう、と、風が吹いた。
 それだけだった。

 それだけで、青年はバランスを崩した。

 アスファルトへと、落ちるように。

 堕ちるように。

「――っ」
 管理外世界においての魔法使用による罰則事項など、一瞬で意識の外に放り出されていた。今回の謹慎処分に引き続き、もしも次に何かの罪状があれば、執務官への道は絶望的だとねちねち管理局のやたら役職名の長いおじさんに説教された文句なんて無視である。
 フェイトは即座に、その右手へ相棒たる待機状態のバルディッシュを取り出していた。
 その横で、ほぼ同時になのはも首元にあるネックレスを、なのはの相棒であるレイジングハートを取り出していた。
 2人とも、やろうとしているのはただ1つ。
 助ける。
 御法度がどうした、今必要なのはルールじゃない。決断だ。
 その2人にワンテンポ遅れ、はやてもデバイスを取り出そうとするが、実戦経験の違いか前衛後衛の差か、指がチェーンを引っ掛けるだけで上手く取り出せない。
 唇を噛む。確実に、経験の差だ。
 なのはもフェイトもそれぞれの相棒を杖にする必要はないと判断。むしろ、そんな時間はない。待機状態のまま魔法構築処理に全ソースを振り分け、少しでも構築から発動までの時間を短くするのが先決。
 落下の衝撃を和らげるフローターフィールドをなのはが、落下速度を緩めるリバームーブをフェイトが最速で構築する。打ち合わせなど何もしていない、お互いに直感であった。
 青年の体が前のめりにゆっくりと倒れる。
 間に合え――っ!

 足が離れた。

 宙へと身を躍らせる。

 バンジージャンプではない。紐などない。

 間に合え――!!

 構築はもう一息で終わ



 白い小さな腕が1本、フェンスを突き破るようにして伸ばされた。







 新たにオフィスビルへ栗色の髪を靡かせ入る、1人の姿など誰も気がつかなかった。







「縁!!」
 開け放たれている屋上への扉をアリサは階段を駆け上がる速度そのままくぐり、叫ぶように呼んだその名の少女はすぐに見つかった。
 フェンスへとヘッドスライディングを決めるようにつっこみ、うつ伏せの状態でコンクリートの上に倒れ込みながらもフェンスの網目の隙間からその細い右腕を突っ込んで差し出している。
 その姿を確認するとほぼ同時、走る勢いを落とさずに自分も縁の隣まで駆け寄って、網目の隙間から縁と同じように左腕を伸ばす。縁が掴んでいた青年の二の腕の部分をアリサも掴む。かなり重い。
「す……すまないアン……ス!」
 ヘッドスライディングの状態から顔を上げて漸くアリサの存在に気がついたように礼を言う縁は、本当に見事なヘッドスライディングを披露したのか、額からだくだくと血が出ていた。毎日のように流血惨事が絶えない奴だ、送った時に毎回悲鳴をあげている恋慈の顔が目に浮かぶ。恋慈というアリサにとってやや鬼門の男の顔を思い出し、少し顔を顰めるが、そんなのは目の前の状況に一瞬で流される。
 青年が重いためか、ヘッドスライディングの傷が痛いのか、もしくはその両方か、苦しげに言う縁の言葉に今回ばかりはアリサは笑顔を返している暇などなかった。
「さ、流石に今回は……気にしない方が正解、よ!!」
 体勢上引っ張り上げることが出来ない縁に代わって、アリサが全力で青年を引き釣りあげようとするが、所詮は小学5年生、腕力が足りない。
 しかも厄介なことに……

「離せ! 離してくれぇっ!!」

 暴れる青年が一番ウゼェ。
「はいそうですかって、離す訳ないでしょうが馬鹿! とにかく暴れんなー!」
「離せ! 死なせろ! 俺は死ぬんだよぉ!!」
「今日の晩ご飯はせっかくのハンバーグなんだから、生のメンチ肉なんか見たくないっつーの!!」
 暴れる青年に我慢ならずに怒鳴るアリサ。会話が見事なまでに噛み合っていない。
 幾らスポーツ万能だと自負していても、すずかや縁のような規格外人間でなければ、なのは達のように魔法が使えない身である以上、とてもではないが成人している男性を持ち上げる力などありはしない。それどころか、その規格外である縁がいなければ、自分独りでは青年を支えるだけの握力もない。よく考えてみれば、自分の周りは規格内の人間がいやしない。
 引っ張りあげようにも腕をフェンスの外へと伸ばしている体勢上、フェンスが邪魔で肩が外れそうなくらいに痛い。かと言ってフェンスがなければ青年の重さを支えきれず、青年と縁とまとめて紐なしバンジージャンプを決行せねばならなくなる。
 がしゃん、とアリサは右手をフェンスに押し付けるように網目を掴み、体全身の力を使って青年を引き上げようとするが、青年の体はびくともしない。それどころか青年のスーツが少し脱げ、逆に状況が悪化している。
 下から良く通るフェイトの声が微かに聞こえるが、まず先に警察か救急車……人命救助ということで消防のはしご車でも良いからを呼んで欲しいところだ。
「縁……引き上、げられ、そう?」
 暴れ叫ぶ青年の声を全て右から左にスルーすることにして、アリサは縁に問いかけ―――そこで、ようやく縁がだらだらと脂汗をかいていることに気がついた。
 心なしか顔色が青い。出血が多くて青い、という色ではない。
「無理、だな」
 答えるその声に、いつもの覇気はない。
「せめて左腕だったなら……違ったんだが……っ」
 力を入れ過ぎているせいか、ぷるぷる震えるその腕を見て、そこで悟る。
 先週骨折した腕であり、治ったばかりである。
 更に言えば、今朝犬に思いっきり噛まれたばかりの腕。
 痛くないはずが、ない。
 肩までフェンスの網目に突っ込んでいるため、その体勢ではとてもじゃないが左腕に交代することは出来ないだろう。咄嗟ならば仕方ないと言うべきだろうか。
 早く助けが来てほしいところだ。できれば1分以内。それ以上はとてもじゃないが自分の腕ももたなければ、縁の右腕そのものがもたない。
 と、そこで縁とは反対側のフェンスががしゃんと揺れる。
「え……クロノさん!?」
「すまない、遅れた」
 振り向くと、仕立てすれ違ったクロノ。天使に見えた。
 クロノは腕の太さからアリサ達のようにフェンスの網目から腕を通すのは難しいと判断したのか、アリサとは違いフェンスをよじ登り始める。
「僕が持ち上げる、それまで持ち堪えてくれ」
 そう言いながら、なかなかに慣れた動きでクロノはフェンスの上まで辿り着く。
 向こう側から直接引き上げる気か。
「ちょ、ちょっと、危ないわよ!?」
「大丈夫だ、トレーニングは欠かしていない」
「そうじゃなくって、危険じゃない!?」
「リスクも払わず、人を助けられるものか」
 心配するアリサの言葉にも、クロノは不敵な笑みを浮かべるだけであった。
 なんと言うか、返答の仕方が縁に良く似ている。
 フェンスの上でクロノは反転して、今度は降りる体勢に入る。まあ、管理局ではクロノは優秀な人物だそうなので、足を滑らせて転落するような心配はする必要ないのかもしれない。
 あと少しの辛抱だとアリサは歯を食い縛る。暴れる青年は正直ウザいし重いが、それでも耐える。
「死なせてくれえ!! もう死なせてくれぇ!! 手ぇ離せええええ!!!」
 青年が暴れる。聞いてるこっちが鬱になるような台詞だ。
 無茶苦茶に振り回すその腕が、ごっ、と縁の腕に当たった。
 さっきから何発も当たっているし殴られている。アリサの左腕も結構やられている。それ自体は大して痛くなかったのだが――

「ぐ――っ!」

 短い悲鳴。
 縁だった。
 治ったばかりの骨か、今朝か犬に噛まれた手か、それは分らない。
 分らないが、何かしらの縁の急所に青年の腕が当たった。

 ずるっと、青年の二の腕が縁の手から逃げる。

「しまった!!」
 縁が叫び、咄嗟にその短い腕を伸ばすが、スーツを掠めるだけで届かない。
 2人で支えていた片方がなくなり、あとは自然に振り子のようにアリサの左腕のみを支えにして青年の体が揺れる。
「いぃぃぃぃぃぃ!?」
 肩が外れるかと思った。
 青年を引き上げようとフェンスから一生懸命持ち上げていた体が、一瞬でフェンスへと叩きつけられるかのように引っ張られた。筋肉が断裂するとはこのことか、そんな感覚が左腕全体に襲ってくる。
 これは少なくとも可憐な少女が耐え切れる重さではない。可憐という一言に今疑問を抱いた奴は表へ出ろ。
 むしろ、自分が手伝うまで縁はこの重みに耐えていたのかと思うと、つくづく尋常じゃない。
「アリサ!」
 クロノが叫ぶ。
 その声はかなり上。
 少なくともフェンスを半分降りたくらい。
 絶望的とはまさにこの事。
 それでもクロノが降りてくるか、もう一度縁が腕を届かせるまでは耐えるのだと決意して、左手に渾身の力を込め――

 ずるりと、手が滑った。

「ぁ―――」
 呆気ないようなその一言は、アリサか、縁か、クロノか、はたまた青年自身の声なのか、誰も分らなかった。









「侵掠すること火の如く!」









 金属を裂く筆舌しがたい甲高い悲鳴のような音が、アリサのすぐ隣、縁との間くらいのすぐ近くに響く。
 え、と思う暇もない。
 それが何の音であるかを確かめるよりも早く、アリサの上から腕が伸ばされた。

 引き裂かれた、フェンスの破れ目から。

 その細い腕は素早く、落下し始めた男の頭を髪ごと乱暴に鷲掴みにした。
 そこから一息で持ち上げるように青年を軽く上に放り、そして即座に青年のネクタイでも締め上げるかのように首襟元を掴んで片手で男を引き上げる。
「え?」
 突然の出来事に、反応が遅れてアリサは振り向く。

 綺麗な、とても綺麗な、細身の女性が、いた。

 右手には引き千切ったかのように、刳り貫かれたフェンスの残骸。
 左手には青年。
 目は細く、縁のように吊り目ではあるが、三白眼ではなく艶のある瞳が見える。身長は170近くあるだろうか、恋慈のように大柄という訳ではないのだが、日本の女性としては背が高い。
 何より眼を引くのが、その美貌。
 顔立ちがいっそ人形ではないのかと思うくらいに整っていて、その細い切れ目から冷たい印象を受けるものの、美人、としか言いようがない女性であった。
 いや、女性というより、少女といってもいいかもしれない。
 年齢は16か17くらいだろう。制服でも着せれば女子高生にしか見えない。
 だが、感じるそのオーラが大人びていて、その美貌もまた見た目大人に見えるような容姿もしているので、もしかしたらもっと若いかもしれない。少なくとも20代、という感じには見えない。
 何か矛盾している印象だ。
 若く見える、のに、大人に見える。
 言葉に出来るのはそれくらいにしかならない、不思議な印象である。
 細いその体は、ジーンズとTシャツという己の美を格下げするような一目で安物と分るラフな格好に包んでいる。
 そして髪。
 腰まで伸びる、長い髪。
 黒じゃない、淡い栗色というのだろうか、綺麗な色をした髪。
 一目で魂を奪われそうな、雪女のような冷たい美貌に、アリサは状況も忘れて一瞬見入ってしまった。
 ぽい、と女性が右手にあったフェンスの残骸を投げ捨てる。
 そして、形の良いその唇が、開かれた。

「助けるならばちゃんと助けろ! 手を離すな馬鹿者がっ!!」

 女性としては低い声で、遠くまで聞こえそうな位の大音量による怒りの言葉であった。
 向けられた先は、青年じゃない。
 真っ直ぐ細い目から注がれる目線の先は―――縁。
 その怒声を聞かされたからか、それとも女性の顔を見たからか、ぽかんと縁は唖然とした表情を女性に向けていた。
 縁は唖然とした表情のまま、女性に言葉を投げかける。

「教授、なぜここに?」

 教授、と。







――――――――――――――――――――
 風林火山!!
 もうサブタイトルからもわかる様に、教授が登場です。え、期待なんかしてなかった? すみません。
 だれも男なんて言っちゃいないんですけどねー。
 人間というのは、全ての人と仲良くするのってクロガネの意見としては無理なんじゃないかと思うのです。だって人はそれぞれ性格があって、個性があって、そして譲れないものがあって……だから人は栄えた訳ですし手を取り合えた訳でして。もちろん、人類全体が仲良く出来ればそれに越したことはないと思いますし、そうしたいと思います。
 ですが、性格や個性があるからこそ、仲良くなれない人がいると言うことは、人類全てが仲良くなるというのは、性格も個性もある一定の範囲のみしか認めぬように調教された、没個性集団じゃないかって思います。恐ろしい。
 だから、縁とフェイトは簡単に仲良くさせる気は全くないのです。はは、縁が嫌なキャラだ。
 だってほら、その方が面白い。
 というかあれですね、クロノ別にいなくても良いんじゃない?
 本来ならば、ここにヴォルケンズもいたんですけどナイス空気だったのでカット。ザフィーラの初台詞は更に延期。ザフィィィィィィィィラァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!(血涙)
  
 自殺しようなんて考えている人、迷惑だから止めてくれ。クロガネでした。
 
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8件のコメント

[C87]

これは孔明の罠だ!!
騙されました。見事に騙されました。
縁の***がクロノに見られてないか心配です。
じゃ風林火山見てきます
  • 2007-07-15
  • 投稿者 : 梨紅
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[C88] コメントありがとうございますー

 騙されてくれてありがとうございました、女でした。
 うちのクロノはエロノじゃないのでご安心を。まあ、見たら鉄拳制裁が待っているでしょう、アリサの。
  • 2007-07-15
  • 投稿者 : クロガネ
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[C89]

教授にすべて持っていかれてしまった。
女性というのはともかく、いきなりの風林火山に度肝を抜かれてしまった。ただ、世代の所為か風林火山と聴くと某皇帝を思い浮かべてしまう。
次回も教授に期待してます。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : オサフネ
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[C90] コメントありがとうございますー

 風林火山の語呂はやはり有名なのだなと。ただし風林火山自体は孫子のパクりなのに。
 ちなみにどちらかと言えばクロガネも皇帝を思い出しますが。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : クロガネ
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[C91] 教授キター!

まず最初に誤字発見、侵掠じゃなくて侵略

遂に教授登場。女性だったんですね…三期のスカリエッティとか、灼眼のシャナのダンダリオンみたいなのを想像してましたが、キャラ的に空の境界の橙子さんみたいな、ワイルド系なのかな?
「手を離すな! この大馬鹿者!!」の後に「お前の手は人を守る手だ!」とアギト的セリフを思い出してしまいました。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C92] コメントありがとうございますー

 はい、女性でしたー。というか、やはり “教授” なんて名前だと思い浮かべるのがそっち系ですよね……
 
 ちなみに、実は 「侵掠」 で合っています。
 風林火山の原文で、“火” の部分は “侵掠如火” であり、現代日本語訳では “侵掠すること火の如く” になります。
 実際はどちらでも良いのですが、クロガネは孫子の原文版に方が好きなのでそちらを採用しています。
 ですが指摘ありがとうございます、間違いあったらどすどす書き込んでください。
  • 2007-07-16
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C93]

>可憐な少女が耐え切れる重さではない。華麗という一言に今疑問を抱いた奴は表へ出ろ。

誤字だと思いますが華麗の単語にあまり違和感がありません。
いや、むしろ可憐が誤字?
  • 2007-07-18
  • 投稿者 : 七誌
  • URL
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[C94]

 ぎゃーっす、可憐が正解で華麗が誤字ですー。
 指摘ありがとうございます。
  • 2007-07-19
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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