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[C16] 楽しみレス

看視者の正体きになりますね~~、縁もなにかかんけいあるのかな~、後教授のこともwいつ、そこらへんの関係の交差がでてくるのかもたのしみです。連載がんばってください。
  • 2007-04-26
  • 投稿者 : 小雪
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[C17] コメントありがとうございますー

 看視者は当たり前ながら話の中心点の1人ですから、同じく中心点にいる縁と関係は……教授の登場はちょっと待ってくださいねー。
  • 2007-04-26
  • 投稿者 : クロガネ
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[C18]

魔力で編まれているような感じのヴォルケンは、此処では死なない限り、死なないのですね(変な表現だな・・・)
さて蒼天の書、看視者はこれをシグナムに渡したかったんじゃないのかなー、などと思えたのですがどうでしょう?なのにシグナムが問答無用だった。看視者がしゃべれない以上しょうがないのですが。

  • 2007-04-27
  • 投稿者 : トライア
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[C19] コメントありがとうございますー

 はい、ここではヴォルケンズは生半可な死に方は出来ません。ちょっと残酷ですが。
 看視者の行動は……まあ、見る人が違えば感じ方も違うというトリックです。クロガネはどうも1人称よりの3人称ですので。
  • 2007-04-27
  • 投稿者 : クロガネ
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[C20] はじめまして

初書込になりますミヅキです。毎回楽しみに読ませて頂いています。

ヴィータがボロボロ、でもコアさえ無事なら再生可能ってエヴァ量産型みたいですね(たとえが酷すぎ) 唯でさえ消耗していた所に奇襲を食らっても、最後まで立っているなんて勇者王みたいだ。
「あたしの勇気は死なない!」って所でしょうか。

縁サイドも気になり、次回も楽しみにしてます。
  • 2007-04-29
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C21] コメントありがとうございますー

 はじめましてミヅキさん、クロガネです。
 量産型の場合は困ったことにコア潰したのまで復活しますけどね(笑)。
  • 2007-04-29
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 11

 朝起きたら既に愛する主は元気に登校した後であり、ザフィーラの生暖かい視線が逆に痛かった。用意されていた朝食をレンジで温めようとしたら足がもつれてすっ転び、メインディッシュを全て床にダイブさせるという大惨事に見舞われた。掃除しようとしても雑巾は見つからず、泣きそうになっていると我関せずとあくびしているザフィーラが見えた。おいてめぇ私に恨みでもあんのかよ。それでも半年後にはお姉さんになるのだからとぐっと我慢し、メインディッシュの存在しない素朴で味気ない食事を済ませた後に食器を洗うと、愛する主に買って貰った大切なお気に入りの茶碗を落として割ってしまった。この時ばかりは絹を裂いたような悲鳴を上げた。
 青い顔をして主への言い訳を考えながら出勤してみると、何故か苦手な書類整理を任されてしまった。終わったと思ったら今度は報告書作りが待ち構えていた。報告書を提出したら愛する主の用意してくれたありがたいお弁当があるのだと自分に言い聞かせながら頑張って報告書を作り、作り終えてからその弁当を忘れた事を思い出し半泣きになった。肩を落としてとぼとぼと食堂へ行くと、何故か気絶しているフェイトをお姫様だっこした通りすがりのクロノに遭遇した。おやどうした、はやての弁当を忘れたような顔をして、などとクリティカルな暴言を吐いたクロノに対してアイゼンを振り回してアースラまで追いかけ回した。そして財布を落とした。
 そのまま昼食を食べ損ね、実に簡素な朝食では既に限界ではあったが、空腹の体に鞭を振り、愛する主の顔に泥を塗る訳にはいくまいと気合を入れた。なのに出撃依頼が舞い込んだ。精神的にも肉体的にも満員御礼絶不調状態でなんだよと思ったら、ロストロギアの単独突入による回収などと、確かに素人やレベルの低い人向けではない内容であった。メインディッシュが床とダイレクトキッスした時から薄々気がついていたが、こうなれば認めるしかあるまい。
 厄日だ。






「ったく……よぉ……」
 よたり、よたり、と10人中10人が大丈夫かと心配しそうな歩き方で、ヴォルケンリッターの1人、八神ヴィータは狭苦しく薄暗い廊下を出口目指して歩いていた。
 全身傷だらけ、赤い綺麗な髪は既にボサボサ。騎士甲冑にいたっては、少なくとも乙女としての恥じらいがあるのならば公衆の面前に出れないほどにボロボロになり、既に服を着ていると言うよりも赤いボロ布を綺麗に巻いているというレベルである。お気に入りだった帽子も、もうない。
 ヴィータは一度左手に持った青い本を見る。
 名前はよく覚えていないが、これが今回回収指定のロストロギアだ。正確には再回収なのだが。
 どことなくリインフォースを思い出させるようなハードブックであったが、今日は思い出を懐かしむ気力もなかった。
「なにが……簡単、だ、っ、よ!」
 愚痴を口から垂れ流しながら、1歩1歩と進んでいく。
 今回の任務は災害が発生した施設に取り残された研究中のロストロギアの回収である。災害と言ってもロストロギアのせいではない。災害後なので施設内部の天井や壁が脆くなっている危険性があるために、集団で突入よりも単独突入が最善だろうと判断されたらしい。
 ロストロギアとは言え今は完全に休眠状態にあり、危険性はほとんどないはずだと事前に説明され、少し安心したのも束の間、施設に足を踏み入れた瞬間に防衛用の警備装置、トラップ、ロボットが大歓迎してくれた。
 暴走した、などというレベルではない。
 魔力砲弾、実弾、火薬トラップ、大歓迎で迎えてくれたそれら全てが既に防衛用だの警備用だの威嚇用だのというレベルではなく、当たり所が悪ければ三途の川までの急行便になりそうな威力があった。確かに一発一発は大した事はない。高町なのはという恐怖の指導員との模擬戦で20に及ぶディバインシューターが一斉に自分へと牙を剥き襲いかかってくる恐怖体験を思い出せば蚊に刺されたようなものである。
 しかし、量に違いがありすぎた。
 ただでさえ空間戦闘を行い回避するには狭すぎる廊下ではあったが、その廊下全てが砲撃弾やトラップで埋め尽くされ、視界度数0という物理的に回避不可能な攻撃の雨あられである。
 魔力砲弾に混じって当たり前のようにグレネードや拡散砲弾など、直撃したら生きてる方が不思議な実弾兵器が大量に飛んでくるので魔力防御だけでなく実弾式防御も全方向に展開せねばならず、少しでも展開量を減らそうと床に着地しようとしたら地雷が気持ち悪くなるくらいびっしりと設置されていた。え、これ質量兵器だよね、などと考える暇もなく炸裂した地雷の直撃で騎士甲冑に大ダメージである。
 更には防御壁で弾いた魔力砲の光やグレネードのフラッシュ、爆炎、その他もろもろで前も後も分からず、何故かジャミングで通信もとれなければ砲撃パレードの衝撃に絶えられずヴィータのいる一角が自重崩壊する始末。来た道を塞がれて進むしかなく、事前に渡されたマップのみを頼りに全速力で目的地に向かった。
 そこで待ち構えていたのも暴走したロストロギア。どうやらトラップやロボットを暴走させ魔力強化してたのも、そして通信ジャミングなど姑息な手段を用いてたのも、このロストロギアらしかった。
 休眠状態?
 めっちゃ起きているように見える。
 騙されたと思った。
 しかも事前説明の資料より巨大化している。しかも趣味の悪い触手も生えている。
 そして、無駄に強かった。
 本当に厄日だ。
 むしろこの任務、自分を亡き者にしようと誰かが企んだと言われれば納得できる。
「こりゃ本当……帰った、ら、シャマルの……城に……連行、だ、な」
 ヴィータと同じくボロボロになったアイゼンを杖にしてもたれかかり、少し休憩。
 自分じゃなければ、施設に足を踏み入れた瞬間に地雷で焼き鳥のようにミディアムになるか、蜂の巣のボロ雑巾になるか、防御に自信があって全て防ぎきったところでロストロギアに軽く捻られて終了だ。よしんばロストロギアを封印しても、そこで力尽きマイダス王のようにロストロギアを抱えてゲームセットだ。
 本当に厄日である。
 しかもわりと命の危険を感じる位、最悪の一日だ。
 決めた。
 戻ったら報告書など誰かに任せて早く帰ろう。
 いや、あと1時間か2時間くらいしたら主が出勤してくるからビッタリ張りついてやろう。周りの視線など気にするものか。
 自分が主に甘えている場面を想像して、ちょっと和んだ。そうだ、ヴィータの心の栄養、はやて分を摂取すればジオンはあと10年戦える。
 妄想だけで癒されるとは、相当精神的にも限界な様子だ。
 魔力も体力も気力もカートリッジも底を尽き、歩くのも限界で、これはもう先程念話にて通信を入れた救助隊に全てを任せるしかないなと床に崩れ落ちようとした瞬間、ヴィータの視界に不審な影が見えた。
「――――っ!!」
 疲労と怪我にて悲鳴のオーケストラを叫んでる体でも、跳ね上がるようにしてヴィータは即座にアイゼンを振り上げ構える。外見が幾ら幼かろうと、ヴォルケンリッターに名を連ねているに恥じないまでの反射的動作であった。
 即座にヴィータは視線を走らせ、その影の姿を捕らえる。
「うげ……」
 素直な感想が口から漏れた。
 人型であった。
 4本の腕で器用に腕組みをしていた。
 エイリアンのような顔をして、ゴキブリとバッタの生理的に受け付けなさそうな部分を足して割ることなくストレートに擬人化したような体である。
 おまけに体全体にぬめりとした粘着性のありそうなジェルみたいな保護膜で被われていた。

 看視者と、呼ばれている奴であった。

「ち、くしょ……こんな時に―――っ!」
 多少体がふらつきながらも、ヴィータは迎撃体勢をとった。
 万全の状態ならこんな奴返り打ちにしてやると思っていたが、なにもこれだけボロボロな時に襲撃しなくても良いじゃないか。
 がしゃん、と後から音がする。
 がしゃん、がしゃん。
 がしゃん、がしゃん、がしゃん。
 1回だけではない、計6回音がした。
 もう大方予想も覚悟も出来ていたヴィータは、看視者の方も視界の隅に止めながら、油断なく後を確認する。
 ドールタイプ。
 しかも6体。
 別に面白くないのに、ヴィータの顔に引きつった笑みが浮かんだ。自暴自棄な笑みである。
「は、はは……マジ厄日だ」







「シグナムさん!!」
 と、己の愛剣たる相棒・レヴァンティを整備していたシグナムに、突然緊急コールが入った。
 顔を上げれば見慣れた顔。レティ提督の部下である顔見知りのオペレーターであった。随分と慌てた様子である。
「どうした、事件か?」
 口では平静に言いつつ、手は既にレヴァンティンを戻しながら整備道具を片付けはじめていた。
 正直なところ、シグナム自身はつい先程まで繰り広げていたフェイトとの模擬戦のダメージが抜けきったとは言えないのだが、少なくとも相棒の調子は上々の調子だ。
「事件ですよ! 大事件です!! 第1次緊急応援要請です!!」
 冷静なシグナムとは全く逆の勢いで喋るオペレーターに、シグナムは少し眉をしかめた。
 もしやかなりの大事だろうか。顔には出ないが、一末の不安がすり寄って来る気配がする。
 第1次緊急応援要請。それ自体でも十分に大事である。
 応援要請というのは、人手が足りないところに人手を分けてほしい、という事である。当然ながら応援に来る人は、応援を受け入れる側の状況をまるで知らず仕事内容や任務状況などの説明を受ける必要がある。説明を受けねば何をして良いのかが、当たり前の事であるが全く分からないからだ。
 しかし、そうも悠長な事を言っていられない場合もある。
 例えば、人の命が関わっている場面などだ。
 特に、管理局員の命だ。嫌な言い方ではあるが。
 もしも戦闘が発生し、それにより局員に重症及び死亡の可能性があり、更にその作戦行動を行っているグループにて武装した要因がいなかったり、もしくは転送魔法を使用できる者がおらず、その局員を救出に向かえない場合にのみ要請を出すことができるのが第1次緊急応援要請となる。
 第1次緊急応援要請にて向かう場合、通常の応援要請と違う点がいくつかある。
 1つが、作戦の説明を事前に聞けない事だ。正確には聞いている暇がないのだ。
 もう1つは指定された転送ポイントが戦闘地域ド真中と言うことである。本来ならば大変危険極まりない行為であり、下手をしたら転送終了後に集中砲火を浴びる危険性さえある。普通ならば自殺行為に値する。
 この2つは本当に急いでいる以上、こうならざるをえない。
 そして、第1次緊急応援要請にて最も重要なのは重症又は死亡の危険のある局員の救助、もしくは重症及び死亡の危険性をもたらす原因の排除である。要するに怪我をした局員を抱えて逃げるか、怪我をさせた敵を排除するかのどちらかが任務となる。
「怒鳴らずとも聞こえている。場所と発信者は?」
「0028-6197-GGTRD5161742、ヴィータさんです!」
 反射的に顔を上げた。
 ヴィータが? あの例え四肢が折れようと助けてくださいご主人様など口が裂けても言わないであろうヴィータがか? ご主人様は余計だが。
 悪い物でも食べたのだろうかという考えが頭を過ったが、すぐにその考えは却下する。あの親愛たる主はやての料理が悪いはずがない。昨日から管理局に泊まり込みなのでヴィータの家の様子は知らないが、はやてに骨の髄まで餌付けされているヴィータがはやての料理を断って外食をするという光景が思いつかない。それどころか実際のところ食事をまともに食べていなかったなどという事は予想の外であった。
「分かった、すぐに向かう。いけるか、レヴァンティン?」
(( ja ))
「よし」
 シグナムはレヴァンティンをしかと握り、足元に魔法陣を展開した。部屋に置かれているソファーなどに這うように描かれる魔法陣は、ある意味幻想的に見えた。







 転送ポイントはジャストであった。
 さすがレティ提督が自慢していたオペレーター、口頭で慌てて伝えたというのに転送ポイントの座標に誤差が少ない。
 だからと言って転送した目の前に物置のようなフルプレートの全身鎧が立っているのは大変心臓に悪い。思わず反射的に愛剣を振るい、目の前の全身鎧を右腹から左肩を切断面にして一刀両断で叩き斬ってから、それが現在管理局を騒がせているドールタイプと呼ばれる存在だと分かった。
 良かった、敵だ。斬ったのが味方だったらどうしようかと思ってしまったが顔には出さない。
 そこから一足跳びで後に下がり、周りの状況を目だけで確認する。
 場所はどこかの施設と思われる室内。ただし何か過激な戦闘行為があったのか、もはや瓦礫の洞窟と説明した方が早そうな状態である。これが今切り捨てたドールタイプとの戦闘で壊されたのか、それともそれ以外で壊されたのかシグナムは知らないが、とにかく尋常ではない破壊跡だ。
 足元にはドールタイプの残骸。今切り捨てた物である。徐々に消えていくそれを物的証拠にも何にもならないので無視をする。

 そして、目の前に看視者。

 噂には聞いていたが、あまり友好関係を結びたいと思えない姿をしている。何かの虫を無理矢理リアルな擬人化したような外見だが、これのモデルがバッタとか言おうものならヴィータが借りていた仮面ライダーのDVDは今日返ったら即座に返却してやろうと思う。第一、シグナムはあまり虫が好きではない。
 看視者は突然現れたシグナムに眉1つ動かさず……いや、眉などないか、目を細める事も……いや、まさしく仮面ライダーの如き顔の半分近くを覆う巨大な複眼が細めたり広げたりできるのは想像すら出来ないが、とにかく驚いた様子も反射的に構えたりする様子もなく、平然と4本の腕を上下で腕組しながら立っていた。
 逃げきれる自信があるのか、それともシグナムの存在は取るに足らないと踏んでいるのか、どちらにせつこうも平然とされるのは良い気分ではない。
 更に視線を巡らせる。
 ドールタイプの姿は確認できない。どうやら今倒したのだけだったようである。
 ……肝心のヴィータの姿が見当たらない。
 後だろうか。まさか目の前に看視者がいながら後を振り向く事など出来るはずがなく、シグナムは看視者の動きに注意しながら更に一足横に跳ぶ。
 それから視界の隅に看視者を収めつつ視線を動かし――
「―――なっ!?」
 看視者を視界の隅に、など考えの外、思わず振り向いた。

 ヴィータがいた。

 生きているのか死んでいるのか分からない状態で。

「ヴィータ!!」
 看視者の事など完全に無視して駆け出した。看視者は今まで魔導師に対して攻撃を行わなかった、というのが頭にあったというのもあるが、それでも本来ならば敵に背中を見せるという愚行である。
 しかしヴィータは、シグナムですらその愚行を咄嗟に行ってしまうほどの状態であった。

 まず、左腕が肩から先、丸ごと消滅していた。

 その外にも体に大小の傷が大量につけられていて、逆に傷ついていない皮膚を探すのが難しい程に、血まみれであった。生身の人間であれば出血多量で2回は軽く死んでいる。
 そして、その肌の傷が分かるほど、騎士甲冑はボロボロ……いや、既に全裸に血液で赤い布が張り付いているようにしか見えない。お気に入りであった帽子もなければ、おさげにしていた髪の1房が焼き取られているかのようにバッサリと持って行かれている。
 右手に握られていたグラーフアイゼンは、半ばで折れており、もう半分が見当たらない。
 しかし、その状態でもヴィータは立っていた。
 立ってはいたが、既に目の焦点が合っておらず、ぴくりとも動かない。
 弁慶の如く立ちながら死んでいる、などと言われたら納得しそうな雰囲気だ。
「ヴィータ! しっかりしろ!」
 その生きているのか死んでいるのか分からない状態のヴィータに、シグナムは迷う事なく頬に張り手を一閃した。良い音がする。
 確かに、生きているか死んでいるか分からない状態ではあるが、そもそもヴィータが本当に “死” という状況を迎えたならば、その時点でヴィータの体は霧散しているはずである。よって気絶しているだけだと判断したのだが、1歩間違えれば烈火の将自ら引導を渡していた可能性もある。
 しかし、その張り手をもらい、ヴィータが僅かに反応を返した。
「―――ぅ―――シグ―――ぁ―――」
 目に焦点が少し戻った。
 酷い声である。
「よし、死んではいないな」
「ぅ――――せ―――――」
 酷い状態ではあったが、とりあえず悪態はつけるらしい。
「――ぁ―――と、一――――体―――」
「大丈夫だ、後は私に任せておけ」
 グラーフアイゼンを握る手を、そっと抑えながらシグナムは言った。静かな、声であった。
 ゆっくり、ヴィータは顔を上げた。
 微笑みもしていない、戦場に身を置くものの顔をした、シグナム。
「ぁ―――」
 がくんと、ヴィータの膝が折れる。
 倒れるところをシグナムが静かに抱き抱え、そしてゆっくりと床に寝かせる。
 安心したのだろう、再び気を失っている。昔から、ずっとずっと昔から、八神はやてという少女と出合う前の気の遠くなる昔から、共に戦い、戦場を駆けた者の顔に、安心したのだろう、後を任せられると。
 レヴァンティンを握る。
 唇を軽く噛む。
 軽く深呼吸をした。
 それから立ち上がり振り返ると、看視者は同じ姿勢のままシグナムを見ている。待っていたのだろうか。
「看視者、お前には時空管理局より捕獲の命令が出ている」
 静かに告げるその声は、感情が読み取れない平坦な声であった。
「現在多発している事件について事情聴取を行いたいとの事だ。無論、貴様の扱う術式などに興味を抱いているという理由もある」
 レヴァンティンを軽く構えた。
 言っている言葉を理解しているのかいないのか、看視者は黙ったまま動かない。
「貴様が己の意思で着いて来るならば、手荒な事はしないと約束する。身柄の安全はレティ・ロウラン管理の下私が保証する。だが、来ないのならば多少手荒に扱っても連れていく。身柄の安全など約束はせん。返答は如何に」
 淡々と、感情を抑えた声で告げる。
 しかし、看視者は黙ったままである。腕を組み、石像のように立ち尽くしている。
 シグナムもまた、構えたまま動かなかった。
「もう一度聞く、返答は如何に」
 しばらく時間を置いてから告げるその声に、今度は看視者も反応した。
 とん、と軽い音を立て、後に跳躍。
 瞬間、ドン、っと床を破壊するような音を響かせ、シグナムは床を蹴っていた。
 その顔は既にポーカーフェイスではない。
「それが貴様の返答ならば遠慮はしない!」
 互いに一足の跳躍を行い、シグナムは一気に看視者へと肉薄していた。
 炸裂音と同時にレヴァンティンから薬莢が弾き出される。ベルカ式アームドデバイス特有とも言える、カードリッジシステムである。
「―――ァ」
「紫雷」
 看視者が最初に着地した。
 コンマ秒遅れでシグナムが看視者より2歩分手前に左足で着地する。
 再び後に跳ぼうとしたのか、膝を曲げ身を屈めようとする看視者よりも早く、シグナムは更に右足で床を破壊せんばかりに踏み込んだ。
 その勢いと全く同時に、炎をまとった愛剣を、宣言通り遠慮する事なく振り下ろす。
「一閃っ!!」
 雷の如きその一撃が、避ける暇も与えさせる事なく看視者の頭から唐竹に吸いこまれ――

 突如、看視者が身を捻り、左足を軸にして90度体を回転させた。

 膝を曲げる事なく前動作なしで床を蹴り、勢いよく体を捻る。
 ブオンッ、と風を切り裂く音を響かせ、レヴァンティンは看視者の目の前を高速で振り抜かれる。
「なっ!?」
 ――避けられたっ!?
 タイミングとしては完璧だった一撃を、看視者は簡単な動作のみで回避した。自慢ではないが、紫雷一閃の剣速は咄嗟の行動のみで避けられるほど遅くはない。事実、今の看視者の動き程度であれば予め避けるタイミングを計らねば避けられるはずのないものである。
 つまりそれは、最初から避けようとしていたという事。
 更に言えば、最初から見きられていたという事。
「くっ!」
 シグナムは即座に左手に握られていた鞘を看視者へ振るう。
 攻撃のためではない、防御のためである。
 全力の一撃が空を斬ったために無防備となっている状態は、相手からすればまさしく格好の獲物に過ぎない。いくら騎士甲冑があろうとも、目の前の相手を侮る訳にはいかなかった。
 振るった鞘も看視者が身を捻り再び空を斬る。しかし、その間にシグナムは即座に体勢を立て直し―――

 目の前に、青い本。

「!?」
 目の前どころではない。一冊のハードカバーの書物に、完全にシグナムの視界は防がれていた。
 ――私の動きが完全に読まれているだと!?
 戦慄が走った。
 顔をあげたところへ即座に本で視界を防がれたのではない、顔を上げた目の前に既に本で視界を防がれていたのだ。つまり、シグナムが体勢を立て直すどころか、どのように体勢を立て直し、どのような姿勢になるかも分かっていた、という事である。ならば丁度よく視界など覆えるはずがない。
 本能のままの獣などではありえない。
 看視者は、武を積んだ戦士であった。
 即座にシグナムは後に跳び、跳びながらその本を切り捨てるかのようにレヴァンティンを走らせる。が、それすら予測していたかのように看視者は本を持っていた腕をひょいと上げて軽く避ける。
 見事なほどに当たらない。
 着地して、体勢を低く構えながらシグナムは目を細めた。

 看視者の首に、うっすらと傷が見える。

 ふっと、シグナムが唇の端を軽く上げた。
「すまないな、少し侮っていた」
 言いながらも構えを解かない。
 じっと巨大な赤い複眼でシグナムを見ていた看視者が、右足を半歩引き4本ある腕の内2本で空手のような構えをとった。左手に青い本を抱え、右手で手刀をつくり、残りの1対の腕は変わらず腕組をしていたが先程よりも浅い組み方になっており、いつでも迎撃が出きる体勢である。
 更にシグナムの唇の端があがった。
「しかし、テスタロッサが掠めた相手に、私が掠めもできないとは言えないからな」
 再びレヴァンティンから薬莢が弾き出され、その刀身が唸るような炎に包まれた。
「仲間を――いや、家族を傷つけた代償も含めて、一太刀は覚悟しろ……いくぞレヴァンティンッ!!」
(( ja ))
 無機質な機械音声が流れ、それと同時にシグナムは唐突にレヴァンティンを振るった。
 その刀身が届くはずもない遠距離にいる相手へ。
「轟火風壁っ!!」
 と、その掛け声と共に、振るったその愛剣から巨大な炎が壁の如く吹き出した。
「―――――っ!」
 突如現れた炎の壁に驚いたのか、看視者が一瞬ひるんだ。
 その隙を見逃すほど、シグナムは甘くはない。
(( SchlangeForm ))
 更に同じ立ち位置で愛剣を振るうと、レヴァンティンは蛇腹剣へと一気に変化を遂げ、瞬時に廊下全体を埋め尽くすかのように伸び、まるで生きているかのように走り出す。
 炎の壁が看視者に接触した。
 と、接触したその瞬間に炎が一瞬でかき消された。
 ――マジックキャンセルか。噂は本当だったか。
 少なくとも回避不可能な攻撃範囲を魔法防御を展開する事なく消滅させたそれには驚いたが――

「チェックだ、看視者」

 蛇腹は既に四方八方から看視者を囲み、そして逃げ口を埋め尽くしていた。
 その状況に気がついたのか、看視者は慌てて周りを見渡す。右を見ても左を見ても、生きているかのように蠢く蛇腹剣。この状況からの脱出は既に転送魔法で逃げるしかないが、如何に看視者の転送魔法の展開が尋常ではないほどに早くても、宣言通り一太刀は浴びせられる自信があった。捕まえる事は出来なくても、少しずつ手傷を負わせる。相手を燻り出す常套手段といえる。
 看視者がゆっくりとシグナムの方へと顔を向けた。
「言っておくが、剣のコントロールだけで手一杯だと思うな」
 ゆっくりと、シグナムは鞘を見せるように持ち上げた。
 その刃の檻から抜け出し、一撃を迫ろうと鞘だけでも迎撃を行う。言外にその台詞が含まれていた。
 複眼のその目に視線など分かるはずがないのに、看視者と目線が絡み合ったとシグナムは感覚的に悟る。

「………ハイクラム、ダ」

 看視者が喋った。
 意味は分からない。
 確かフェイトも昨日看視者と遭遇して、言葉を確認したといっていたが、もしかして自分で2人目なのだろうか。何とも世間が狭いものだと思う。
 看視者は独特の言語を洩らした後、左手で抱えていた本を持ち上げる。
 その行動にシグナムは即座に攻撃に移れるように構えるが、何故か看視者は持ち上げた本を下ろし、そして少し時間を置いてから再び持ち上げる。まるで何かに迷ったような、挙動不審な行動である。
 続いて看視者は腕組をしていない方の手刀をつくっていた右手で示すようにその本を人差し指でさし示した。その本が何だと言うのだ。意味が分からない。
 再びその本を下ろし、看視者は周りに走る蛇腹剣を見るようにきょろきょろと首を動かしてから、またシグナムの方を見て再び本を見せびらかすように上にあげる。
 本当に挙動不審な行動である。
 外見とあいまって、実に気持ち悪い。
 その一連の行動にはシグナムは一切気を止める事なく、攻撃をしかける機会を淡々と狙っていた。
「…………」
「――――」
 沈黙が降りた。
 レヴァンティンが動き回る金属音だけが響く。
 と、溜息でも吐くように看視者の肩が下がった。
 同時に、灰色をした四角形と六角形を混ぜたような不思議な幾何学模様の魔法陣が展開される。
 転送する気だ。
 ――逃がさん!
 その一心で、看視者の周りを巡らせていた蛇腹剣を一気に絞り――



 手応えならば、一応あった。



 看視者が転送魔法により消えたのを確認してから、シグナムは無言でレヴァンティンをシュベルトフォルムへと戻した。
 レヴァンティンの刀身に、緑色の液体が付着していた。
 血である。
 宣言通り、一太刀だけは浴びせた証拠だ。
 その血を一度だけシグナムは見て、気にする事なく鞘に愛剣を戻す。
 そのままシグナムはぐったりとした赤毛の末っ子をゆっくりと、まるでガラス細工を扱うように丁寧に抱き上げる。
「少しは仇をいれたぞ、ヴィータ」
 どことなく、優しい声だった。







「ヴィータ!!!」
 悲鳴に近いその声で時空管理局内の病院へと転がり込むように入ってきたのは、真っ青な顔をした八神はやてであった。少し遅れて上官でもあるレティ・ロウランも肩で息を切らしながら駆け込んで来た。はやての車椅子のスピードが圧倒的だったのか、レティの足が遅かったのか、そこはあえて言わない。
 はやてが消沈気味のなのはを引き連れて管理局に来ると、何故か青い顔をしたレティに捕まった。さて怒られるような悪い事など何もしていないのだがと小市民な考えが頭を過るが、次にレティの口から出た言葉にそんな考えも吹き飛んだ。
 ヴィータが重症を負った。
 即座にレティに連行されるように捕まえられていた腕を振り払い、はやては連れて行かれるよりも早く管理局の病院へと直行し、上の台詞である。
 それに対して転がり込まれた側の部屋では、シャマルがヴィータに対して治癒魔法をかけ続けており、その横では表情が読めぬような無表情でシグナムが立っている。そして肝心のヴィータは白い病室のベットに――

 何故かピンピンした姿で座って剥かれたリンゴを欠食児童の如く実に美味しそに食らいついていた。

「…………………………あれ?」
 間の抜けた声は、やはりはやての声だった。
 言葉には出さなかったが、レティも唖然とした表情であった。
「あ、はやへひゃ」
「こらヴィータちゃん、サークルの中から出ないの」
「その前に口に物を入れたまま喋るな馬鹿者」
 はやての存在に気がついたヴィータが目を輝かせながら、駆け寄ろうとしたのだろう、ベットを飛び降りようとしたところを治癒魔法の展開に集中しているために目を閉じて周りが見えないはずのシャマルが的確につっこみを入れ、そして傍らにいたシグナムが蝿でも叩き落とすかのようにスナップの利いた一撃でヴィータをベットへ叩き落とす。仮にも怪我人に対してする行為ではない。
 更に追い討ちをかけるようにシャマルが食べかけのリンゴを無理矢理ヴィータの口に突っ込んだ。実は目開いてるのではないだろうか。
「むがー! むごー!」
 食べかけのリンゴに口内を蹂躙されて悶えるヴィータを無視して、シグナムは爽やかな笑顔を振りまきながらはやてへと振り向いた。
「出勤お疲れ様です、主はやて。さあこちらへどうぞ。レティ提督もこちらに掛けて下さい」
 近くにあった椅子をレティにすすめながら、シグナムははやてへと歩み寄り車椅子を引いてヴィータの近くへと移動させる。
 何この状況?
 2人の心境である。
 はやてがちらりとレティの方を向く。
 気が抜けたように椅子に座りながら、その視線に対してふるふるとレティは首を横に振る。
 だって、レティ自身もヴィータが瀕死の重症を負ったのだとしか連絡を受けてなかったからだ。まさか瀕死とまで言われた本人がピンピンした姿でいるとは想像もしていなかった。
「ああ、シャマルは今治癒魔法を行ってますので返事が出来ません。御無礼を」
 嘘やん、さっきヴィータに声かけてリンゴに突っ込んだやん。
 心の中で反射的につっこみを入れた。
「えっと、重症って聞いたんだけど……元気そうね」
「はい、人間ならば重症でした」
 言葉に迷いながら聞いたレティの言葉にシグナムはしれっと言い返す。
 その言葉を頭の中で咀嚼するようにレティはこつこつと額を人差し指でノックして、何かに気がついたのかぽんと手をならした。
「あ、そういえばそうだったわね」
「いや私1人理解でけへんのですけど!?」
 突然掌を返すようなレティに慌てたようにはやてが説明を求める。そんな1人で納得されても困るのですがね。
「リンカーコアが無事だったからですよ、主はやて。リンカーコアさえ無事ならば、私達の治癒力は人げ……常人の比ではありません。それにシャマルもいれば、簡単には死にません」
 リインフォースがいない今では無茶はできませんが、と付け加えながらシグナムははやてへと説明を行った。
 はやてはシグナム達が自分が人間ではないというような発言をすると静かに怒るので、慎重に言葉を選びながら発言をしてみたが、途中でモロ人間の比ではないと本音が出るところであった。そんな事を言おうものなら、夕飯はシャマルの手料理フルコースになりかねない。
 既にアウトの発言を先にしているのだが。
「今、凄く失礼な事言われた気が……」
「気のせいだ」
「そうね、気のせいね。はい、じゃあヴィータちゃん、これで治癒終了だけど本調子じゃないんだから無茶は駄目よ?」
 シャマルの魔法特有の緑色をした柔らかな光を徐々に消しながら、ヴィータに対してにこりと微笑む。ここしばらくの間にすっかり看護師気質がついているようだ。その隣で勘が良い奴だと少し戦慄を覚えたリーダーの様子には全く気がついていないが。
「もぐもぐもぐもぐ………ん、あんがとな、シャマル」
 口に無理矢理押し込まれたリンゴを飲みこんでから、左腕をぐるぐると回して調子を確かめながらヴィータは礼を言う。昔ならば礼の1つも言わなかっただろうに、はやてのしつけが行き届いているのが窺える。
 違和感は全く感じないのか、左手を握ったり開いたりを繰り返し、そして軽くストレッチをしてからシャマルに対してグッジョブと言いながら親指を立てる。どこでそんなネタを仕入れたのだ。そしてそれに対してシャマルも当然の用にいえぇーい、とブイサインで返す。ああ、仕込んだのはこの人だ。
「ああ、えっと、とにかくや、ヴィータは大丈夫なんか?」
「おうっ、今から出動かかっても十分いけるぜ!」
 心配そうに言うはやてに、ヴィータは元気よくガッツポーズで答えた。私の話聞いてたかしら、と、シャマルがさめざめと泣いている。
 ほぅ、っと、はやてがようやく安心したように長い息をゆっくりとはく。
「よかったぁ……もう、話聞いた時、心臓止まる思うたよ」
 苦言の割に、はやては柔らかい笑みを浮かべていた。目尻にうっすらと涙が見えるのは、多分気のせいではない。
 そんなはやてにヴィータはバツが悪そうに、ごめん、と呟く。
「でも、そうなると次の問題が出るわね」
 これから感動シーンに突入するべき場面を、溜息混じりのレティの台詞が砕いた。顔にはホームドラマはお願いだから家でやってね、と書かれている気がする。ドールタイプの事件などで最近仕事詰めになってしまい1ヶ月近く息子の顔を見ていないらしい。
 次の問題? と、はやてが頭の上にクエッションマークを浮かべ、シャマルが首を捻った。
 何故か急にシグナムは渋い顔をし、ヴィータがそっぽを向く。
 はやてはヴィータの方を振り返り、そしてシグナムを見上げ、何か嫌な予感がしたのか少々引きつった顔でレティの方を再び向いた。
「あの……悪い問題ですやろか?」
 綺麗な笑顔を浮かべ、あははははと笑いながらレティは返してくれた。
「笑って済ませられない問題ね」
 ひぃ、と思わず悲鳴が出た。どうやら仕事疲れでストレスが溜まっているらしい。
 少し怯えたはやてを庇うようにシグナムが前に出る。
「すいません、私の不注意でした」
 え、シグナムなんかしたんか? とはやては見上げる。
 神妙な顔をしているシグナムに、レティもどうこう言うつもりはないのか、うっ、と言葉を詰まらせてから長い溜息をはき出した。
「―――いや、いいのよ。第1次の緊急応援なら任務を知らなくて当然だから……事務処理と後処理するの私だし……」
 溜息と共に愚痴が出てきた。
 レティ・ロウラン、苦労人。
 2人は何やら話が通じ合っているようだが、話の内容がまるで分かっていないはやてとシャマルは、シグナムとレティの顔を交互に見る。その視線に気がつき、レティは軽く咳払いをしてから気をとり直す。
「今回、彼女には研究中に暴走したロストロギアの再回収の任務が回ってね」
 回したのは私だけど、と付け加えながら、ヴィータを示しながらレティは説明を始める。
「回収が終了して、そこから戻ろうとした時にドールタイプの襲撃。そして……」
「看視者にロストロギアを奪われました」
 はやての顔が再び引きつる。シャマルはシグナムに白い目を向けた。
 白い目は別にフェイトを医務室に運ぶ際に慣れているが、はやての顔が引きつった事にシグナムはむぅっと渋い顔をする。レティは幸せの絞りカスしか出てこないような溜息をはき、ヴィータは相変わらずそっぽを向いている。
 しかし、仕方がないと言えば仕方がない。
 あの青い本がロストロギアだと、シグナムは知らなかったからだ。
 とは言え、知らなかったからといって、ごめんなさい、なんて上目遣いに瞳を潤ませ可愛らしく謝ろうと解決されるような問題ではないのは分かる。現在この病室にいるメンバーは、全員がロストロギアがどれほど危険なものをいうのかを知っているからだ。
「あ、あの……そのロストロギアのランクって高いんですか……?」
 恐る恐るシャマルは手を上げる。
「まあ、そこそこね。その気になれば世界1つ虚数空間に沈められるくらいかしら?」
「……………………」
 全員の顔が青くなった。
 おいヴィータ、そんなに危険なものだったのか?
 し、知らねーよ。私はそんな危険なロストロギアじゃねぇって聞いてたんだよ。
 思わず念話にてシグナムがヴィータに問いかけ、同じくヴィータも念話で焦りながら返した。
 しれっとレティは言っているが、これは何かの懲罰を覚悟した方が良いのだろうか。なのはの訓練強制参加とか。首を括った方が楽な気がしてきた。
「ち、ちなみに、そのロストロギアって……」
「どんなん、ですか?」
 はやてと同じような未来を想像したのだろうか、倒れそうな顔色をしたままシャマルが質問し、その後を継ぐようにはやてが聞いた。
 さてどんなのだったかしら、とレティは少し考え込む。
「確か魔術におけるデータバンク的な役割を持ったロストロギアよ。ただし、そのロストロギア自体にもリンカーコアに類似した大気中のマナから魔力への循環式変換装置が備わっていて、自立行動が可能であり小規模ながら使用者なしのロストロギア単体でのデータバンク内の魔術行使が可能、ってとこかしら。まあ、本質的にはあなた達の……何て言ったっけ?」
「リインフォースですか?」
「そう、それに近いロストロギアだと思ってくれて良いわ」
 データを見る事もなくレティは暗記だけですらすらと答える。一応部隊管理などの人事と並行しているはずなのに、何でこうも綺麗に答えられるのだろうか。どんな頭の構造をしているのか大変気になるが、そこはつっこまない。
「確か名前は……えーっと、いやねぇ、最近忘れっぽくなってるのかしら……」
 年のせいじゃねぇのか?
 そう言おうとしたヴィータの口をはやては最速の動きで塞ぐ。シャマルは厳しい視線で睨みつけ、シグナムは馬鹿かと念話にて一言いれた。見事なチームワークといえる。命は大事だ、死にたくはない。
 その一連の動きに気がつく事なく腕時計型の簡易デバイスを捜査し、レティは目の前にいくつかのディスプレイを表示させて検索をかけた。裏から逆さまになって見えるだけでも、膨大な量のデータが見える。
 少ししてから見つけたのか、レティはあったあったと言いながら視線を戻し、ヴィータの状態に首を傾げた。気にせんといて下さい、とはやてが苦笑い。



「そのロストロギアの正式名称、『蒼天の書』 と言うらしいわ」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 うわー……ヴィータファンを敵に回したような話だ……
 とりあえずこれにてヴォルケンリッターは全員出てきました。ごめんよザフィーラ、君の台詞はまだないけど。
 本来蒼天の書というのははやてが作ったらしいですけど (正確には作ってもらった、だと思う) 少々目をつぶってください。きちんと設定していますので。
 ちなみにシグナムは看視者に剣を振るうのは本来犯罪です。看視者は例の如く今回も手を出していないので。
 次回からは第3章。ようやく彼女が登校してきます。そしていきなりその彼女の話です。
 クロガネでした。
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6件のコメント

[C16] 楽しみレス

看視者の正体きになりますね~~、縁もなにかかんけいあるのかな~、後教授のこともwいつ、そこらへんの関係の交差がでてくるのかもたのしみです。連載がんばってください。
  • 2007-04-26
  • 投稿者 : 小雪
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[C17] コメントありがとうございますー

 看視者は当たり前ながら話の中心点の1人ですから、同じく中心点にいる縁と関係は……教授の登場はちょっと待ってくださいねー。
  • 2007-04-26
  • 投稿者 : クロガネ
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[C18]

魔力で編まれているような感じのヴォルケンは、此処では死なない限り、死なないのですね(変な表現だな・・・)
さて蒼天の書、看視者はこれをシグナムに渡したかったんじゃないのかなー、などと思えたのですがどうでしょう?なのにシグナムが問答無用だった。看視者がしゃべれない以上しょうがないのですが。

  • 2007-04-27
  • 投稿者 : トライア
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[C19] コメントありがとうございますー

 はい、ここではヴォルケンズは生半可な死に方は出来ません。ちょっと残酷ですが。
 看視者の行動は……まあ、見る人が違えば感じ方も違うというトリックです。クロガネはどうも1人称よりの3人称ですので。
  • 2007-04-27
  • 投稿者 : クロガネ
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[C20] はじめまして

初書込になりますミヅキです。毎回楽しみに読ませて頂いています。

ヴィータがボロボロ、でもコアさえ無事なら再生可能ってエヴァ量産型みたいですね(たとえが酷すぎ) 唯でさえ消耗していた所に奇襲を食らっても、最後まで立っているなんて勇者王みたいだ。
「あたしの勇気は死なない!」って所でしょうか。

縁サイドも気になり、次回も楽しみにしてます。
  • 2007-04-29
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C21] コメントありがとうございますー

 はじめましてミヅキさん、クロガネです。
 量産型の場合は困ったことにコア潰したのまで復活しますけどね(笑)。
  • 2007-04-29
  • 投稿者 : クロガネ
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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