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[C4] さて何と返していいものやら

 とにかく、制作がんばれ?
  • 2007-04-02
  • 投稿者 : クロガネ
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[C5] はじめまして

偶然ここにたどり着き、一気に読ませていただきました。
主人公の性格は個人的にかなりクリティカルです。
ここの魔法少女三人組はいろいろ悩む時期のようです。TV版ではなのはの意見が結果的には正しくなってしまうご都合主義(ハッピーENDがすきなので別に嫌ではないのですが…)ここではとった行動に対して不幸な人が出てくる。これは現実世界では当然ですよね。なのは達がどう乗り越えていくのかが楽しみです。
縁や教授、ドールに監視者どのように話に関係し展開していくのかも非情に興味があります。
執筆(?)頑張ってください。
  • 2007-04-03
  • 投稿者 : トライア
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[C6] コメントありがとうございます

 はじめまして、トライアさん。
 主人公の性格がクリティカル、作者としてはとても嬉しいです。実際のところ机上論でできた性格というのは賛否両論が多いので、ちと不安だったりしました。
 魔法少女3人娘は、まあ、悩み苦しんでいただきましょう。Sじゃないですよ?
 執筆、これからもがんばります。クロガネでした。
  • 2007-04-03
  • 投稿者 : クロガネ
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[C7] はじめまして・・・すげー!!

すげー!緑の理論はすごい。とにかくすごい!
これでスランプですか!?ですか!?
ちくしょううらやましいなー!もう!!
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : nanasi
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[C8] コメントありがとうございま……えぇぇ!?

 はじめましてnanasiさん。
 まあ、縁の理論は極論中の極論なんですが。理解いただけたのなら光栄です。
 UPしているのでこの量ですが、実際は3倍以上の量があった中から泣く泣く削り落としてUPしたので……個人的にはもっとコンパクトにならんかなというのが悩みの種、スランプの元なのですが―――
 
>ちくしょううらやましいなー!もう!!
 
 ご、ごめんなさいΣ(´Д` )
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : クロガネ
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[C9] はじめまして……(ポッ

小説、読みました。
アリサさんの想い、緑さんの性格、なのはさんの葛藤。読んでいて思わずクロガネさんの世界に入ってしまいそうな気分になりました。至福のひと時をどうもありがとうございます。
最後に一言。
緑さんいい子なのよ。緑さんは!

どうも、結城 彼方でした。
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : 結城 彼方
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[C10] コメントありがとうござい……Σ(゚Д゚;ぇ

 感想ありがとうございます。
 少しでもクロガネワールドを感じてくれたのならば、SS書きにとってこれ以上ないことです。
 いやはや、縁も気に入られて嬉しい限りです。これで後半が書き易くなって……げふんげふん。
  • 2007-04-06
  • 投稿者 : クロガネ
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[C153] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2008-02-27
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魔法の使えない魔法使いの魔法  9

 鋭い斬撃。砕くような金属音。時空管理局の一室、訓練室にて物々しい音が断続的に響いていた。
 ヴォルケンリッターが1人、シグナムの繰り出した一撃に、フェイトはいとも簡単にその体を弾き飛ばされ、冷たい床をごろごろと転がった。
「くっ……」
「速さに頼るな! 相手の動きを目だけで追えば裏をかかれるぞ!」
 まだ床を滑っている最中だったが、それを無理矢理減速させ、床を蹴ると同時に魔力にて一気に自分の体を加速。次の瞬間には床を這うような低空姿勢でフェイトは走り出していた。
 それに対峙するシグナムは油断なく半身ともいえる剣、レヴァンティをかまえる。
 ジェット燃料でも噴射するように魔力を足から叩き出し、フェイトが更に加速する。
 速い。
 実際、シグナムの動体視力で捕らえられる速度をとっくに超えている。
 しかし、いたって涼しい顔をしていた。
 くんっ、とレヴァンティの刃先を少し下にずらし――

 ぎんっ!!

 鋭い金属音と衝撃が、まるでシグナムの手から肩まで突き抜けるように走る。しかし、シグナムはレヴァンティを手放す事なく即座に刃先とは正反対の方向めがけて体を捻り何もない空間を狙い回し蹴りを叩きこむ。
「あっ!」
 声が聞こえた。

 どっ!

 続いて鈍い音。それからとんでもない衝撃と痛みがシグナムの足を襲ったが、気にする事なくシグナムは蹴った方向へと目を向ける。
 そこには、もんどりうって床を転がっていく黒い塊、もとい、フェイト。
 急所に入ったのか、それとも当たり所が悪かった、フェイトは床を転がり終わっても立ち上がる気配がなかった。もしかしたら立てないほどに疲れたのかも知れない。時計へと目を走らせると、20分程経っていた。20分も連続で高速戦闘を行えば疲れて当然である。
「素直な攻撃だ。だが何度も言うように読み易い攻撃でもある。それに速さとは1歩間違えれば自分の首を閉める危険なものだ、注意しろ」
 未だに立ち上がる気配のないフェイトへとつかつか歩み寄りながらシグナムは話しかける。もしかして打ち所が悪く気絶したのだろうかと内心冷や汗をかいていたのだが、端から見れば涼しい顔である。
 フェイトの傍に膝を突くように腰を下ろすと、ちょうどフェイトがもぞりと体をひねり、ごほごほと咽返る。
「今日は高速の撹乱戦に持ち込みたかったようだが、残念だったな。手を貸せ、起きられるか?」
「いえ、大丈夫です……」
 差し伸べた手を掴む事なく、フェイトはよろよろと力なく立ち上がろうとして、力が抜けたのか再び崩れ落ちるところをシグナムが慌てて支えた。
「無理をするな。今日は少し強く打ち込み過ぎ………テスタロッサ?」
 支えて無理矢理立ち上がらせようとしたが、ぐったりとして立ちあがろうとしないフェイトへと目を向けると、どうやらそのまま気を失った様子である。
 ……やり過ぎたか?
 再び内心で冷や汗を浮かべるシグナム。特に最後の蹴りはフェイトの速度と合わさって想像以上の一撃になっていた。ようするにやり過ぎである。
 いや、別にシグナム自身模擬戦というのはやり過ぎる位が丁度良いと思ってはいるのだが、どうにも彼女の周りにはそれに理解を示す人種は少ない。例えばやりすぎて相手に怪我をさせてしまい慌てて医療班の所まで運べば白い目をしたシャマルに出迎えられ、ヴィータからは力加減も出来ないのかと鼻で笑われ、そして主たるはやてからは怒られる。ザフィーラは分かってくれているのだが、仲裁に入ってくれることは今まで一度もない。
 溜息を1つ吐き、シグナムは気を取りなおしてフェイトを抱え上げる。横抱き、お姫様だっこである。
 今日はシャマルは医療班にいるはずである。行けばきっと冷たい目で見ながらまたかと呟くに違いない。とは言え、着実に力を付けていくフェイトに対しては正直手加減をする余裕がない。
 再び溜息をつきながら訓練室のドアを開く。かしゅっと機械的な音がしてドアが開いた先に、同じくドアを開けようとしていた人物に遭遇した。
「これは提督……お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだ。やはりフェイトの模擬戦相手は君だったか、シグナム」
 フェイトの義理の兄、クロノであった。
 提督に昇進して船を任されるようになってから、目上の存在であるためシグナムはきっちり敬語を使っている。任務中でもない限りそこまで気にする必要はないとクロノは笑いながら言うのだが、シグナムの態度は変わらなかった。逆にそれを聞いたヴィータは本当に気にもしてない。彼女の場合誰彼問わずそうなのだが。
 ぐったりとして気を失っているフェイトをちらりと見て、クロノは苦笑した。
「そうか、またか」
「申し訳ありません。彼女は強く手加減をしようにも――」
「ああ、いや、分かってる。フェイトには多少手厳しくした方が良いのは僕も認めている」
 慌てて申し開きを始めようとしたシグナムをクロノは右手を振って制した。
「ここのところ、フェイトも負け込んでいるようだな」
 フェイトへと視線を落として、苦笑いのままぽつりと呟いた。
 何度となく繰り返しているシグナムとの模擬戦の勝敗結果を毎回聞いている訳ではないのだが、フェイトは分かり易いと言えばいいのか、勝てたときは限りなく上機嫌であり理由を聞けばシグナムに勝てたと言ってくる。逆に負ければむすっと不機嫌になり、理由を聞いても何も答えない。
 そしてこの半年近く、シグナムに勝てたと言ったのを聞いていない。
「ええ……テスタ、いえ、彼女も実力をつけてはいるのですが」
「戦術的なスランプか、精神的なスランプだな。ああ、それからシグナム、呼び方は気にしなくてもいいぞ」
 そうですか、とシグナムは少しほっとしたように答えた。テスタロッサというファミリーネームに慣れてしまっていたので、ハラオウン姓に変わってもいまいちシグナムは馴染めないのが実情である。
「精神的なものでしょう。テスタロッサは少し、自分を見失っている節がある」
「見失っている?」
「ええ、そろそろ見えてきたのでしょう」
 何が、とは聞かなかった。
 何を、とは言わなかった。
 それでもクロノは分かったし、シグナムは分かっているだろうと判断できた。
 何が見え、何故自分を見失っているのか。
 それはクロノもシグナムも一度は経験した道である。
 そして、クロノもシグナムもそれをフェイトに言う気はなかった。言うものではないという理由もあったし、言っても仕方がないという理由もある。
 シグナムの言葉に、クロノは一度肯いて、そうかとだけ返すだけに止める事にした。







「………え?」
 あまりにもさらりと答えたので、なのはは一瞬縁が何を言ったのかが理解できなかった。
「うん、やはり嬉しい。そう言われるのは恥ずかしいが、やはり嬉しいと思うぞ」
「嬉しいって……あんなに危険な目に合って子猫助けたのに、偽善だって、そう言われるんだよ!?」
「うん? 偽善というのは悪いことなのか?」
 逆に聞き返された。
 虚をつく一言に思わずなのはは言葉を失う。
「偽善というのは善の内じゃないのか? 例え偽っていても、偽善と言われた行動は善とは違うものなのか?」
「だ……だって、偽善って、正しくないことでしょ?」
「偽善とは本心を偽った上辺の善行の事だろう? 本心はともかく起こした行動は善行だと認められているのではないのか? 私が何を考えていたのかは別として、猫を助けたその行動は賞賛に値する、そう言う意味で偽善と言われたらと想像したのだが違うのか?」
 全然違った。予想を斜め上に飛び越えている発想だ。日本語としては正しいが。
 どうやら内容が上手く伝わっていないようだとなのはは悟る。
「だ、だからそうじゃなくて……じゃあ、子猫を助けたのは間違いだって言われたら縁ちゃんはどうする?」
 その言葉に縁は、え? と驚いたように目を見開いた。
「間違いだったのか?」
「え!? ううん、子猫助けたのはとっても良い事だと思うよ!?」
 何故だろう、縁が一瞬道に迷った子犬の如く見えてしまった。
 慌てて否定するなのはの言葉に、縁はほっとしたのか溜息を1つ。
「そうか、なら良かった」
 心底安心したような声だった。
 なのはは悟った。
 相談相手を激しく間違えた。
 ちらりと縁の横に目をやると、うつむいて口元を抑えながら肩を微かに震わせているアリサ。笑っているのか怒っているのか非常に判断し辛いが、多分後者の気がしてならない。
「そ、そうだね、あは、あはははは」
 もう笑うしかなかった。そしてその笑い声も乾いたものになっていた。
 ここは適当にお茶を濁してから、また頃合を見てアリサかすずかに相談しよう。
 そう頭の片隅で作戦を立てていると、なのはの言葉に答えるように縁がうんと1つ肯き――

「で、高町さんは何か自分の行いを否定されて悩んでいたのか?」

 海鳴 縁。
 無垢と言うべきか、考えなしと言うべきか。本当に容赦のカケラもない奴であった。
「…………え、ナンノコトデショウ?」
「ん、違ったか? 今朝の話題に触れたのは私をここから立ち去らせないための話だと思ったが、訂正してでも答えを求めた事から高町さん自身に関係する事態があったと考えた。その事態は会話の流れからして、高町さんの悩んでいる何らかの事情を私が猫を助けた状況に置き換えて聞いてきたのだと踏んだのだが、的外れだっただろうか?」
 意外と鋭い。
 思わず片言の怪しい日本語で返したなのはに、縁は間違っていたら恥ずかしいなと付け加えながらバツが悪そうに頭をポリポリと掻く。
 間違ってはいない。
 むしろ直球ストレートである。
 推理とかそのようなレベルではない。ほとんど心の中を読んだかのように的確な指摘だ。
 縁の言葉に思わずぴしっと硬直したなのはを見て、何かを悟ったのか縁が困ったような顔をした。
「高町さん、無理をせずとも私が邪魔でアンス達に相談し辛いならば私は退く。悩みを1人で抱えるのは良くないと聞く。だからきちんとアンス達に相談して悩みを解消すべきだ」
 胸に片手をあてながら、なのはを諭すように縁は語りかけた。
 まるで、教科書に乗っているような台詞である。決して誠意が感じられないというわけではないのだが、何とも模範的な感じである。
 その言葉になのはは口を横一文字に閉じ、項垂れるように俯いた。
 先も考えた通り、確かに相談するには縁が邪魔である、間違いなく。
 縁が自分で引くと言っているのだ。その申し出は正直ありがたい。だからここは、別に引き止める理由など何もないじゃないか。
 頭の片隅で冷静な自分が囁いていた。
 そんななのはの様子に、はやてとすずかは困ったようにお互いの顔を見合わせてから、縁の方を向く。一方、縁は気にする事はないと言うようににこ―っと笑いながら、後はお願いすると無言で手を振る。
「ではアンス、私は先に教室に戻――」

「だめよっ!!」

 先に教室に戻る、そう言いかけ立ち上がろうとしていた縁の言葉を打ち消すように大声を張り上げたのは、アリサだった。
 思わずなのはやすずか、はやての肩がびくりと跳ねあがる。なのは達の近くのベンチで昼食をとっていた別の生徒も何事だと奇妙な視線を投げかけたが、相手がなのは達……嫌な言い方をすれば腫れ物のメンバーだと気がついて即座に目線を逸らした。
 周りの生徒が不自然に視線を逸らした事が気になったのか、縁はちらりとその生徒の方を見てから再びシートの上にペたんと腰を下ろす。それから大声を上げたアリサの方を向くと、顔を上げてむすっとした表情のアリサが縁の方を睨んでいた。
「……どうしたんだアンス?」
「どうしたんだ? じゃないの! 縁は邪魔じゃないからここにいなさい!」
 呆気にとられながら聞いてきた縁に、びしりと指をさしながらアリサが言い放つ。
 いきなり何をと思わずなのはは顔を上げると、それを予測してたのかアリサはきっとなのはの方を睨み、今度はなのはを指さした。
「なのはもっ、ここまで縁に心配されながらだんまり? 縁が邪魔? 話したくない理由があるからって事情を知らない縁はさよなら?」
 そこで一旦言葉を切った。
 確かに、話したくない事情がある。魔法使いという事情だ。
 それはアリサも知っている。そしてその事情を公に開かしてはいけないという理由も理解してくれている。
 してはいるが、どうしてもなのはの態度はアリサにとって我慢が出来なかった。
 いや、正確には、いい加減耐えられなくなった。
 すぅ、とアリサが息を吸う。
 大声で怒鳴られる。そう思ってなのはは反射的に目を閉じて肩をすくめた。
 なんで?
 どうして?
 魔法絡みの事を相談するには、縁が邪魔だというのはアリサも分かっているはず。
 それなのにどうして縁を引き止める?
 ぐるぐると疑問が頭の中を駆け廻りながら、なのははアリサの声を待ったが、一向にアリサの声は聞こえない。
「………?」
 あれ? となのはが目を開くと、そこには身を乗り出して真剣な目でなのはを覗き込むように見てくるアリサが目の前にいた。

「――なのは、そんなんじゃ、友達なくすわよ」

 綺麗な呟きだった。
 え? となのはが洩らす。
「なのはが私達を特別視してくれる事情は十分知ってるし、事情を知らない人に相談し辛いなっていうのは分かってる。それに私もなのはが頼ってくれるのは凄く嬉しい」
 ぱしっと、なのはの両頬を挟むように、アリサは両手でなのはの顔を挟みこむ。無理矢理こっち向けというような、縁もやられた体勢だ。
「でもねなのは、なのはは事情があって忙しいだろうけど、そんなのただの言い訳よ!」
 次第にヒートアップしてきたアリサの声がだんだんと大きくなっていく。
 思わずなのはも身を引こうとしたが、がっちりとアリサが顔をホールドしていて動けない。それどころか逆にアリサの顔がぐいっと近付く。

「今のなのははっ、自分から他人を拒絶してんのよ!? 自分から友達捨ててんのよ!? いい加減気付きなさいよ!!」

 言葉を、失った。
「アリサちゃん……」
 心配そうなすずかの声が、いやにはっきりと聞こえた。今のなのはの体勢からでは見えないが、はやてが困ったようになのはを見ていた。
 ――私が他の人を拒絶している?
 そんなはずはない。
 ――私が友達を捨てている?
 そんなはずはない。
 そんなはずはない、のに、何故か否定の言葉が出てこなかった。
 アリサの迫力に負けたから? 違う、純粋に頭の中が真っ白になったからだ。
 ただ呆然としているなのはからアリサは手を離し、ずりずりと座りながら器用に後退して元いたえにしのとなりまで戻った後に腰を落ちつける。それから深呼吸を1つしてからにこりと笑顔になり、何故かぱしんと縁の背中を思いっきり叩いた。縁からすれば理不尽な暴力だ。
「む………痛いじゃないかアンス」
「良かったわね神経通ってて。っていうか自分の事を邪魔とか言うんじゃないの縁は」
「しかし実際私は――」
「うるさいうるさいうるさい、今度言ったら膝関節だけじゃ済まないわよ?」
「分かった、2度と言わないと誓う」
「よし、なら縁、言い出したからには責任持って相談受けなさい」
 未だに呆然としているなのはをぴしっと指さして、アリサは縁の背中を急かすようにぽんぽんと軽く叩いた。
 強引や。
 はやての呟きは幻聴だと片付けた。
 指をさされたのに気が付いたのか、それともただの偶然か、意識を取り戻したかのようにはっとなのはは気が付いてアリサの方を慌てて向いた。
「あ、アリサちゃん! 今の意味って――っ!?」
「はいはい、まず先に縁先生に相談しましょーね、なのはちゃん」
 なのはの声をおどけた調子でご魔化しながら、アリサはぐいっと縁の背中をなのはの方へと押す。アリサが人を 「ちゃん」 付けで呼ぶのは大方ふざけている時である。
 しかし、言われた内容が内容だけに問い詰めようと再び口を開きかけ、アリサに背中を押されて体勢を崩した縁が、反射的にに両手をシートの上につけ、狙っていたのか正座をしているものだから正に今から土下座致いたしますという体勢になりながらもなのはを上目使いで見上げているのが視界に入った。
 開きかけた口が、無意識に一瞬だけ緩んでしまった。
 言い方が悪いが、発育が極端に悪く同い歳に見えない小柄な少女が、微妙に困った顔のまま上目使いで見上げてくる。
 ………あ、可愛いい。
 そんな趣味はないはずなのに、駄目な人の考えに共感を覚えてしまうような素直な感想が頭をよぎる。
 いや、むしろお願いだから捨てられて路頭に迷っている子犬のような目を止めて欲しい。ほら見ろ親友のはやても何故か鼻を抑えて不自然なほどに横を向いている。もしかしてツボだったのだろうか。ごめんなさい自分もちょっとツボでした。
 そんななのはの気持ちなど知る事もなく、困った表情のまま縁は首を傾げる。
「どうだろう、ここは1つ相談してくれないだろうか。このままでは歩く事に支障をきたしてしまう事になる」
「……縁ちゃんはいったいアリサちゃんに何されたのかな?」
 会心の一撃とも言える体重の乗った強烈な、ただのローキックである。
 本当に痛かったのだろう。心なしか声が真剣である。
「え、えっと、でも、うんっと……あのー ――」
 困ったようになのははちらっとアリサの方を見た。
 ぴくっと、アリサの右眉が跳ねた。
 怒ってる。何故か良く分からないがとにかくアリサは静かに怒っている。
 長年の付き合いからか、表面上はにこやかな笑顔を浮かべてはいるが、内心は怒っているのだけはなのはにも理解できた。
 ――何でアリサちゃん怒ってるのーっ!? 相談できるならしたいけど、でもでも 『あっち側』 の事なのにーっ。
 なのはパニック。
 確かに縁に相談できるならしたい。
 多分、今一番求めてる答えを持っているのは縁だと、根拠など何もないがなのははそう感じていた。
 しかし、その相談事というのは魔法関連の話である。魔法の普及していない世界では無闇に話してはいけない決まりになっている。いや、確かにバレればオコジョにされるとかいうタブーは一切ないが、それでも決まり事は決まり事、守らなくてはならない。
「でもあの、ほら、悩みって言っても大した事じゃないし」
「……大した事じゃないんやったら、なのはちゃんとっくに片付けとる気がするんやけど」
「なのはちゃんあんなに悩んでてて、大した事ないわけないよ」
「うっ……」
 事情を知っているはずであるはやてとすずかにも何故か駄目出しされ、なのはは孤立無縁なのを悟った。
 すずかも、アリサが何を言いたいのか分かっている。そして先ほど言ったアリサの言葉の意味も分かれば、アリサが何故怒っているのかも何となく理解できる。
 それにしても、もう少しオブラートに包んだ言い方をするべかもしれないが、すずかにしてみればアリサの成長が見れて嬉しいところである。2年前のように一方的に怒鳴って喧嘩別れするのを直情的なアリサが抑えてるだけでも賞賛である。この状況を喜ぶのもどうかと思うが。
 むしろはやて、鼻を抑えてるその手を早くどけた方がいい。縁もいい加減体勢を崩すべきである、鼻血を見る前に。
「え、えっとー……」
 無言で見上げてくる縁と、同じく無言で圧力をかけてくるアリサ。そして心配そうに見つめてくるすずか。はやては、まあ、状態はあれだが心配しているのは分かる。
 なのはが折れるのは時間の問題であった。







「つまり、高町さんはとある自警団にボランティアで参加してるのか?」
 驚いたような、感心しているような、そんな感じの縁がへぇと声を上げながらなのはに聞き返した。きっと後者だろう。なんとなくアリサは思った。
 縁に相談するにしても、やはり魔法の事を公にするのは大変よろしくない。しかし、相談するにはなのはの現在の立場を理解してもらわなくてはならない。よって、そこは嘘で誤魔化す事にした。
 いや嘘ではない。本当の事をちょっと誤魔化しただけの真実である。
 嘘をつく事に良心の呵責を覚えてしまうなのはは、心の中で必死に言い訳をしていた。
 とは言え、なのはが自警団に所属していると嘘を言い出したのはなのは自身ではない。アリサである。
 説明に困っていると、合いの手のようにアリサが 「なのはは自警団に参加しててね」 などと言い出したものだから、後は自然に話しが出来あがってしまった。
 自警団に参加するまでの経緯、そしてその自警団はどんな事をしているのか、それから自警団におけるなのはの地位。魔法の事は上手くご魔化しながら、それでも不思議な事に自然と管理局の事を自警団に置き換えて縁に説明する事が出来た。
 自警団に参加するのは偶然、ユーノ・スクライアという少年に出会ったから。
 どこの国の人なのだ?
 え、えっと、聞いた事ないけど、悪い人じゃないですよ!?
 ほぉ、高町さんは知り合いが広いな。
 自警団は危険物の確保、それから悪い事した人の逮捕。
 それは警察の仕事ではないのか? むしろ高町さんはまだ労働できる年齢では……
 はにゃ!? えええええっと、自警の範囲だよ、うん、自警の範囲。それに仕事じゃなくてボランティアですから!
 それは凄いな高町さん。そうか自警のボランティアか、凄いな、尊敬する。
 それから私はそこの人達に悪い人を捕まえる方法とか危険物を確保する方法とか教えたり……
 ん? 高町さんは運動が苦手だったと記憶しているが?
 そそそそそそそそそれはっ、そのっ、ほらっ、一応私道場の娘なわけでありまして!
 そうか、高町さんはその年で既に武道を人に教えているのか。すまない、私は正直甘く見ていた。
 ………何故だろう、話しが進めば進むほど、縁が自分を見る目が尊敬の光で満ち溢れて見えるのは。何故だろう、自分がとんでもない嘘つきさんになっている気がしてくるのは。何故だろう、心がずきりずきりと痛むのは。頼むからそんな無垢な瞳で汚れた自分を見ないでくれ、良心の呵責のせいか冷や汗がなのはの背中にびっしりである。
「なるほど、高町さんの事情は理解した。しかし意外だ、高町さんがそんな荒事をしているとは。危険ではないのか?」
「あは、あはははは……それはその、そんな誤解されるほどの荒事じゃないのでー」
「そうか、それは安心だ」
 言葉使いが微妙に丁寧語になるのは、なのはが苦しい言い訳をしている時の癖なのだが、そんな癖など知らない縁はあっさりと騙されていた。
 頭は十分にきれるし記憶力もとんでもないレベルで抜群であるのに、どうして疑ったり警戒したりしないのだろうか。何故かアリサは縁の将来を心配してしまった。
「うん、じゃあ高町さんはその自警団でなにか悩む事があったんだな?」
「え、えっと……はい、そうです」
 正座を崩していない縁に、何故か同じく正座をしているなのは。
 いまいち縁のペースでは、重大な相談事とかを話し難い。 
「えっと、それで、昨日ね、管、じゃなくってその自警団のお仕事があって……悪い事した人を捕まえる方の仕事」
 それでも、なのははぽつぽつと話し始めた。
 縁はそれに対して変に話しの腰を折る事なく、うん、うん、と一言づつに肯いていた。
「悪い事したその人は、すっごく珍しいお薬盗んだ人でね」
 珍しい薬。
 多分、そんなレベルでは済まない薬か……それとも “薬” と言わしめる効果を持つロストロギアか。なのはの言葉の裏に隠れていた意味を、はやては正確に読み取っていた。アリサもすずかも、ロストロギアというのを知らなくても、とても貴重な物であるというのは理解しているだろう。
「もう、その薬じゃないと助けられない妹さんが、いたんだって」
 ぴくりと、縁の眉が跳ねた。
 盗みは悪い事である。
 当然、それは縁も知っていることだろう。いや、あまり世間慣れしていない縁だからこそ、そのように教科書に乗っている善悪判断は人一倍分かっているだろう。
「その人は、薬も買うお金がない人で……それに、えっと、その珍しいお薬は凄く危険な副作用があるから売ってる物じゃなくって……だけど、妹さんが大事だから、助けないといけないから、その人は悪い事だって分かってても盗んで妹さんにあげようとしたんだって」
 ロストロギアか。
 はやては心の中でぽつっと呟いた。
 失われた高度文明の遺産。不可思議の集大成。扱い方を1歩誤れば大惨事確定な危険な代物にまで手を伸ばしたという事に、どれだけその妹が大事で、どれだけ覚悟が必要だったか、それが伝わってきた気がした。
「……そこで、高町さんが捕まえた、と」
「……………………………うん」
 確認の意味を含めた縁のその一言に、なのはは間を置いてからこくりと肯いた。

「泥棒はね、すっごく悪い事。でもね、泥棒して盗まなかったら、妹さんの命がないんだって。だから、捕まえようとした私は邪魔なんだって、法律を盾にして妹を見殺しにしろって言うのか……この偽善者、って」

 俯いてから零したなのはの言葉に、アリサもすずかも、そしてはやても、ほとんど同時に眉をしかめた。
 予想していたとはいえ、そういう事だったのか。
 凄まじくヘビィな相談であった。
 確かに、それは悩むだろう。
 管理局に入って、沢山の人を救いたいと願っていても、それは確実に立ち塞がる現実の壁、というものだろう。
 人には人それぞれ、十人十色の事情を抱えている。人の数だけの考え方があり、人の数だけの立場がある。臭い言い方をするならば、人の数だけの正義が、この世にはある。
 そして、その正義とやらは、全て違っている。
 だから噛みあわないのも当然。ぶつかり合うのも必須。
 妹を助けたい。
 泥棒はいけない。
 でも、盗みをしなければ、妹は助からない。
 しかし、いかなる理由があろうとも法は遵守してこその法。
 仕方がないと言えば、仕方がない。
 だが、それで納得できるかは、別である。
 なのはのその話を聞き、本当に理解したのかしていないのか、腕を組みながら縁はふむと年に似合わぬ唸りをした。
「ちなみに聞いておきたいのだが、いいだろうか」
 しばらく間を置いて、こくりと肯いた。
「妹さんは死んだのか?」
「―――え?」
 聞いてきた縁の言葉に、間の抜けた声をあげたのはなのはではなく、すずかであった。
 すずかの声に何だろうと縁は振り向くが、すずかはやや頬を赤くしながら何でもないよと言いつつ手を振ってご魔化した。
 ――妹さんが、いたんだって。
 “だって”。
 過去形だった。
 当たり前な事なのに、気がつかなかった。
「……まだ、よく分かんない」
「ああ、まだ生きているんだな」
「だけど、お兄さんが掴まったって聞いたら、死ぬときは誰にも看取られたくないって、閉じ篭ったらしくて」
「その妹の家族や親類は分かるか?」
「誰もいないって聞いた。家族はお兄さん……その泥棒した人たった1人なんだって」
 その一言に、縁はふーんと気のなさそうにすら聞こえる中途半端な肯きを返した。
 不治の病の妹に、それを何としても救いたい兄。ありがちと言えばありがち。3流ドラマにでも出てきそうな臭い話だ、と思いこそしたがアリサは流石にそれを口にはしない。
 風習の違い、というものである。
 フェイトがたまに語る。家族の絆というのは何ものにも替え難く重いものであると。血の繋がりなど関係なく、そういうものなのだと。それが当然であり、それを真っ向から裏切ろうとするのは地球に、日本に来るまで想像すらしていなかった、そう語る。何かのニュースを見たのだろう。カルチャーショックを受けたような顔であった。
 日本は諸外国に比べ親殺し子殺しの発生が異様に多い。フェイトからしてみれば、理解すら出来ない、奇人狂人の行いとしか思えなかったのだろう。犬や鳩を一般的に食べている中国に行けば気持ちは分かるだろうか。
 絆を大切にする。それが血の繋がった妹ならばなおの事。
 きっとその犯人は、犯罪であるということを承知した上でもなおそれでも盗みを働いたのだろう。
 人の命がかかっている。
 だから、それが悪いのだと、なのはは言い切る事が出来なかった。
 なのはが黙ってから、縁も親指で喉元を数回撫でながら何かを考えるように沈黙し、しばらくしてから首を傾げた。
 やはり縁の脳味噌では難題だっただろうかと失礼な事をアリサは内心で考えていると、ようやく縁は口を開いた。
「それで結局、これは何の相談になるのだ?」
 やはり無理だったか。
 縁の言葉にアリサは軽く肩を落としかける。
「え? 何って……?」
「昨日とある男がとある場所より薬を盗んだ。男には難病の妹がおり、その薬ではくては治せないのだが、その薬は貴重なものの為に売り物ではなかったので妹を助けるためには盗む事にした。しかし高町さんが男を捕まえたところ、男は高町さんに向かって偽善者――ああ、これは高町さん風に言うところの間違っているという意味合いで罵られた。男が捕まった事を妹が知るや否や引き篭り、誰にも看取られたくないと宣言した。これで当ってるか?」
「あ、う、うん。正解」
 実に簡単にまとめられてしまった。
 どうやら理解はしていたみたいだと、ほっと胸を撫で下ろす。どうやら縁の中で “偽善者” という言葉は罵る言葉には分類されていないらしい。
「うん、ならば状況は理解した。それで高町さんは何が聞きたいのだ?」
「へ?」
「……ん? ああ、理解してもらえなかったか。えっと、そうだな、高町さんが疑問を抱き悩む要素が私には分からなかった、と言えば理解してもらえるか?」
 なのはは縁の言葉を頭の中で一度咀嚼する。
 要するに何を悩んでいるのかが分からない、と。
 再び相談相手を間違ったのではないだろうかという疑念が頭を過る。
「だ、だからね、私のした事って、本当に正しかったのかなって――」

「うん、正しい」

 惚れ惚れする程の即答であった。むしろまだ言い終わってない。
「――――え?」
 思わず間の抜けた変な声をなのははあげる。
 なのはだけではない、アリサ達も虚を突かれた風に縁を見ていた。
「窃盗は犯罪だ。間違っている。それに対し高町さんのとった行動は結果としては非常に正しく理に適っている」
「で、でも、その人だって妹さんを助けたくって――っ」
「だが、それを大義名分にすれば何もかもが許される訳ではない。そもそも窃盗を働こうと考えた自体が間違いだ。額から血が出るくらい土下座でもして譲ってくれと頼めばよかったのだ」
「でも、そんな簡単に譲れるようなものじゃなくて――っ」
「腕の1本、足の1本、自分の命1つ、全財産でも新薬のモルモットにでもなると、それくらいの代償の払う覚悟を見せるべきだったのだ。窃盗という手段は捕まらなければ大丈夫、要するに “代償を払う覚悟” がない奴のする事だと私は教わった事がある。ああ、もしくは妹に対してそこまでの価値を見出していなかったのか」
 自分の言葉にふむと顎に指をあてて少し考えるようなポーズをとる。
 教わった、というのは 『教授』 からだろうか。なんという教育をしているのだとアリサの顔が引きつる。そんな事教える暇があるなら一般常識を教えろよ、だからお茶も煎れられないのだ。
「まあいいか。とにかく、普通の薬を買うのですら金という代償が必要なのだ。それすら怠ろうとするのは間違いだ」
「で、でも、お薬がなかったら妹さんは助からないんだよ!?」
「そうだな、死んでしまうな」
 答えになっていない。
 なのはの言葉に特に言い返す訳でもなく、縁は即座に肯定をする。
「………えっと――」
 暖簾に腕押し糠に釘。言い合いになる前に身を引くような発言をする縁に、正直やり難いという感想を抱きながらなのはは言葉に詰まった。
 そんななのはを不思議そうにな顔をして首を傾げてから、何か思いついたのか縁はぽんと手をならし、ああなる程そういう事かと呟きながら1人納得をする。何やら脳内で勝手に話が進んでいるらしい。
「高町さん、これは私の考えで、 “もしも” という話になるのだが、良いだろうか」
「え、あ、うん」
「うん。やはり私は妹の生死を含めても、その男のした事は間違いでしかないと思う」
 それはさっき聞いた。
 心の中でつっこんだ声は誰の声だったか。
「理由としては妹の心情、薬自体の問題、そして男の行動に対して、この3つだ」
「はあ……」
「まず妹の心理状態だが……高町さん、ご家族は健在か?」
「う、うん」
「なら話は早い。妹を高町さん自身、男を高町さんの家族の誰かで当てはめてみるといい。不治の病にかかっている高町さんを助けるため、高町さんの家族が特効薬を盗み出した、という感じだな―――さて、高町さんは薬を盗んできた事に素直に喜べるか? その薬を飲めるか? 飲んで生き長らえるか?」
 黙った。
 こいつはいきなり変な事を言い出すなと僅かながらに思ってしまったアリサも、そしてはやてもすずかも、思わず息を飲んだ。
 質問の内容もさる事ながら、例え方も実にストレート。縁は知らないだろうが、なのはには本当に兄がおり、なのは自身真実妹なのである。
 なのはの返答は大体想像がつく。答えはNOだ。素直にそんな薬が飲めるような性格を、なのははしていない。
 返答に詰まったなのはの様子を見てから、おおよその答えに見当をつけたのだろう、縁は再び口を開く。
「ちなみに、妹自身も答えはNOなのだと推測される」
「―――え?」
「男が捕まったと聞いた後に死に際を誰にも看取られたくないというのは、逆を言えばその男がいれば、いや絞ればその男に看取られたかったという意味にとれる。それにその言葉自体、妹に若干死ぬ覚悟が出来ていた節が見える」
 善い方向に考えるのならばな、と台詞を台無しにしかねない言葉を付け加える。
「しかし、その男は妹の心情を無視し、確認をとる事なく、自分勝手の1人よがりの行為だったというのが結果だ。死ぬ権利を理解しろと言うのは酷かもしれないが、少なくとも間違った行動で永らえた命を望んでいたかどうかくらいは確認するべきだったのだ」
 一瞬だけ、はやてが顔をしかめた。
 ああ、今の言葉は、かつてのはやて自身にも、そして大事な家族にも、当てはまる言葉だった。
「次に薬自体の問題ならば、これはもっと簡単な説明ができる。例えば――」
 そこでちらりとはやての方を見る。
 その視線にはやては気がついてはいたが、縁はすぐに視線をなのはの方に戻した。
「例えば、誰かの下半身をそっくりそのまま八神さんの下半身と取り替えることができたとした場合、高町さんは誰かの下半身を強引に引き千切り奪ってこようとするか?」
「な―――っ!」
「―――へ?」
 絶句するなのは、そして突如として引き合いに出されたことにより縁の言った言葉の意味が一瞬理解できなかったはやて。
「そんな……そんなこと絶対するわけないよ!!」
「うん、その男は平然と同じ事をしようとしたがな」
 呆然としたはやてが現実復帰するよりも早く、なのはは言葉に詰まりながらも強い口調で言い返したが、縁はまたしても気にすることなく続けた。
 ――き、気遣いの欠片もないわね、こいつは……。
 同じく縁の発言に表情を引きつらせたアリサは後で矯正しようと心に決める。
「売り物ではなく貴重な物というのはえてして掛け替えのない物だ。特効薬だと言われながら病人に対して売られていない薬、代えのきかない薬と言う事、そして珍しく貴重な薬、となると間違えてできた偶然の薬か、もしくは誰かが勝手に作った資料もない薬の遺産か、だな」
「い、遺産?」
「ああ、極秘で作り資料が揃ってない、そして破棄もされてないのでは生前に完成できなかったというパターンだろうか。そして成分表すらないのだから何に効果があるか分からないが、何らかの事情によりその妹と同じ症状の人が飲んだところ病気が完治された、という結果が出た。さて結果は出たは良いが、何せ薬が未知の物である以上何が作用して完治したかが分からないので、今度はその薬自体を研究しなくてはいけなくなった……要するに作り方が分からない以上数に限りがあり、研究用にストックしておきたいために代替もきかない貴重な物、そしてなにより資料がない以上安全も保障できない危険な代物だった、という説だ」
 クリティカルな説であった。
 思わず失礼なことを言い出した縁に対しての怒りが萎んでしまう。
 あえて “貴重な薬” という言葉で暈していたのだが、縁の頭の中では正確にその薬がどんな物かが想像できていたらしい。ロストロギアという物を知らないのでそこまで考えることはないだろうが、縁の説明はロストロギアの説明にも通じるものがあった。
「どちらにせよ、男はそんな掛け替えのない物を奪おうとした」
「で、でも、そんな足とかと比べたら……」
「うん、人間一人の足と比べたら男の犯そうとした罪の方が何倍も重いのは明白だ。自分でももう少し上手い例えようがなかったのかと後悔している」
「へ?」
「これから先その薬によって病気の治るメカニズムが解明できたとしたら、高価な物になるかもしれないが、その妹と同じ病気で苦しんでいる……いや、これから先同じ病気で苦しむ人をも治す特効薬ができる。しかも保障つきのだ。しかし、研究材料となるその薬が奪われ解明できなくなれば、確かに妹は助かるだろうが、これから先の人々を見捨てると同意義だ。同時に、その人々に長く苦しく、そして治るかどうかも分からない闘病生活を押し付けていることになる。まさに外道だ」
 縁は腕を組み、許せんな、と言わんばかりにふんと鼻を鳴らした。
 黙った。
 そして悟った。
 いや、思い知らされた。
 縁と言う人物を。
 何も考えていないような発言では、決してない。縁なりに、きちんと考え、真剣に話してくれている。我ながら嘘臭いとしか言いようのない状況説明にも関わらず、縁は縁なりの考えをぶつけていた。
 ……相談相手を間違えたと、2回も思った自分が恥ずかしくなってきた。偽善者と言う言葉自体、縁の中では貶める言葉ではなくほめ言葉と認識しているので、言われたら喜ぶ。たったあれだけの説明でここまで一気に考えており、そして結論が出ているからこそ縁にはなのはが何故悩んでいるのかが理解できなかった。どちらも真面目に考えた結果の答えだ。少なくとも適当に聞き返した言葉などではなかった。
 それなのに、それを聞いた瞬間になのはは縁では駄目だと即座に思ってしまっていた。
 恥ずかしかった。
「そして、男の行動については一言しか言いようがない」
 なのはの内心に気がつくことなく………いや、もしかしたら気がついているのかもしれない。縁がとぼけた顔の裏でどれだけ思考や理論を高速展開させているのかは縁以外に知る由などないが、縁のは常人のそれを大きく遺脱した性能であることだけは確かである。どちらにせよ、縁はなのはの様子に対してリアクションを返すことなく、腕を組んだまま続けていた。

「自分が世界で一番不幸だと思うのは勝手だが、それを理由にして人に迷惑をかけるな、八つ当たりをするな、だ。これは既に弁解の余地もなければ説明する価値もない」

 同じポーズのまま、縁はなのはの目をまっすぐ見ながら言い切った。
 そうだ、縁はずっと、なのはが俯いたとき以外はずっと、相手の目を見ながら話をしていた。
 それに比べで自分はどうだ? 何回縁から視線を逸らした? 何回自分の方から縁の目を見た?
 昔は当たり前のようにできていたそれは、いつしかできないものになっていた。
「もし高町さんが間違っていると罵られて落ち込んでいるのならば気にすることは何もない、それは八つ当たり以外の何ものでもない」
 にこーっと、縁は笑った。きっとこれは、縁なりに励ましの言葉なのだろう。
 ああ、ああ、嗚呼、この子はきっと、間違いない。疑う余地など何処にもないくらい、良い子だ。とてもとても、良い人なんだ。
 それなのに、自分は。
「でも……」
 なのはの口から出てきたのは、本日何度目になるのかも分からない、否定の言葉であった。
 ああ、違う。そうじゃない。
「うん?」
 縁は首を傾げてきた。
 俯いて、視線を外してからしまったと後悔する。
 しまった?
 視線を逸らした事が?
 いや、違う。

「でも私は、その人も、妹さんも、助けたかった……みんな、助けたかった!」

 後悔したのはそう、ぼろぼろと涙が、溢れてきた事だった。
 一度涙が溢れてくると、もうどうしようもなかった。ぼろぼろと、ぼろぼろと、次から次に涙が流れ落ちてきた。
 止まらない――っ!
 泣くつもりなど全くなかった。それなのに自然と涙が出てきた。
 なのはは反射的に両手で顔を覆い、すぐに涙も表情も隠したが、縁含めて全員、なのはの涙を見てしまった。
「―――――へ?」
「ちょっ、なのは!?」
「なのはちゃん!?」
 突然のその涙に、間抜けた声を上げたのは縁。慌ててなのはに近寄ったのはアリサとすずか。縁もすぐに中腰になりなのはに近寄ろうとしたが、戸惑ったのか中途半端な姿勢のままで固まる。
 はやては1人だけ、リアクションを返さなかった。いや、返せなかったと言う方が正しいのかもしれない。
 すずかがなのはを抱きしめ、子供をあやすようにして優しく背中を撫でる。手馴れているような、落ちついた自然な動きであるが、すずかはかける言葉も見当たらず困惑した表情のままであった。アリサもまた、なのはに近寄ったは良いが、何をするべきか分からずに困惑の表情である。
 なのはが泣くのを、初めて見た訳ではない。
 だが、なのはは人に心配をさせる涙を、決して流さなかった。
 人に心配をかけさせないよう、無意識に良い子であろうと己に強制をしているなのはは、辛かったり苦しかったりすればする程に泣かない。良くも悪くも頑固者であるから、余計に泣こうとしない。泣くのは嬉しい時か感動した時か、もしくは他人のために涙を流す。自分の苦しい事で、滅多に泣かない。
 だが、泣いている。
 今、泣いている。
 悩んで、答えが出なくて、後悔して、苦しくて、泣いている。
 その現状に戸惑った。
 それだけ悩んだのか、それだけ苦しんだのか、想像もつかなかった。
「わた、わたしは……っ」
 すずかに抱かれながら、流れる涙を止める術も知らず、それでも何かを言おうとした。
 何を?
 そんな疑問など、なのはは頭の片隅にもなかった。
 言葉など、最初から用意されていたかのように、決まっていた。
「助けたかった……でも、何も、出来なくてっ……皆に笑っていて、ほしいの、に」
 途切れ途切れの、言葉。
 両手で顔を隠しているので、その表情は窺えない。
「縁ちゃんみたいに……ぅ……わたしじゃ、割り切れないよ……っ」
 そして、嗚咽が漏れはじめた。
 なのはのその言葉に、先程までの堂々とした発言もなく、縁はただ泣いているなのはに対してオロオロとするだけで、泣いているなのはに対してどう対応していいのかが分からないといった様子であった。
 何かを言おうと口を開きかけ、そして思い止まったのかすぐに口を閉じる。何度もそんな行為を繰り返してから、やはりかける言葉が見当たらなかったのか、縁は戸惑ったように黙ってしまった。
 予鈴の鐘が、嫌に遠くに聞こえた。

 
 

―――――――――――――――――
 うーん、いまいち。これがスランプか!
 それはともかく新年度おめでとう、死者1000人おめでたくないよ、クロガネです。
 だらだらと変に長い会話ばかりの話になってしまいました。でも重要だから省くわけにもいかないし……何度も書き直して気に入らなければ最初からやり直して、気がつけば7回書き直してるし!? 馬鹿だろ自分。
 というより、ストライカーズのキャラクター欄にユーノ君はともかくアリサとかいないのが個人的にはショッキング。紹介欄でクロノ君の魔力ランクが省略されてたのには正直笑いましたが……Sランクとか言ってなのは嬢達に負けていることを希望。まあ、A´s時点ではやてには負けておりましたが。魔力量の差が戦力の決定的な違いでないことを教えてやれパパさん!




 関係ないですが、 “偽善” という言葉が相手をなじる言葉だというのをクロガネが知ったのは中学卒業間近な頃でした。作中のオリキャラじゃないですが、それまでずっと “偽善”という言葉は、内心はともかくお前は良い事したんだぞという褒め言葉なのだとずっと思っていましたというか教え込まれておりました。そのせいか、たまに小説などを読んでいて偽善や偽善者という言葉が出てくると凄まじい違和感を感じてしまいます。
 偽善というのは行いそのものは善行である、というのが頭の中に大前提としてあるので、悪人が主人公に向けて 「偽善者め!!」 みたいな事を言っているシーンとかでは、「あなたは良い事をしたけど、男なんて所詮下半身で物事考えてる野蛮人にきまってるのよ近寄らないでこの獣!」 と言われているに等しい気がしてくるんですよ。おいおい悪人が主人公の行動認めたらストーリー終了じゃないか。
 更には、内心を偽った善行である以上、他人に 「偽善者め!!」 と非難するのは行動ではなく偽った心に対して非難する訳になります。だって行動を非難したら、何で良い事しちゃうんだよ! という発言になり 「あらボウヤ悪役になりたいのねこの反抗期のやんちゃさん♪」 という屈辱的なキャラクターに陥るからです。だけど他人の心など見える人間がいる訳ないので、本人が認めなければ内心を偽っているというのも個人の勝手な推測でしかなく、結局は 「男なんて所詮下半(略)」 という被害妄想丸出しの電波系に見えてきます。
 無論、偽善者だと自分自身を自己判断するのであれば問題ないです。それはそれで悲劇のヒロインモードで面白そうですし。
 こういう違和感を感じるのは自分だけでしょうかね、と思う今日この頃です。クロガネでした。
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8件のコメント

[C4] さて何と返していいものやら

 とにかく、制作がんばれ?
  • 2007-04-02
  • 投稿者 : クロガネ
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[C5] はじめまして

偶然ここにたどり着き、一気に読ませていただきました。
主人公の性格は個人的にかなりクリティカルです。
ここの魔法少女三人組はいろいろ悩む時期のようです。TV版ではなのはの意見が結果的には正しくなってしまうご都合主義(ハッピーENDがすきなので別に嫌ではないのですが…)ここではとった行動に対して不幸な人が出てくる。これは現実世界では当然ですよね。なのは達がどう乗り越えていくのかが楽しみです。
縁や教授、ドールに監視者どのように話に関係し展開していくのかも非情に興味があります。
執筆(?)頑張ってください。
  • 2007-04-03
  • 投稿者 : トライア
  • URL
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[C6] コメントありがとうございます

 はじめまして、トライアさん。
 主人公の性格がクリティカル、作者としてはとても嬉しいです。実際のところ机上論でできた性格というのは賛否両論が多いので、ちと不安だったりしました。
 魔法少女3人娘は、まあ、悩み苦しんでいただきましょう。Sじゃないですよ?
 執筆、これからもがんばります。クロガネでした。
  • 2007-04-03
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C7] はじめまして・・・すげー!!

すげー!緑の理論はすごい。とにかくすごい!
これでスランプですか!?ですか!?
ちくしょううらやましいなー!もう!!
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : nanasi
  • URL
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[C8] コメントありがとうございま……えぇぇ!?

 はじめましてnanasiさん。
 まあ、縁の理論は極論中の極論なんですが。理解いただけたのなら光栄です。
 UPしているのでこの量ですが、実際は3倍以上の量があった中から泣く泣く削り落としてUPしたので……個人的にはもっとコンパクトにならんかなというのが悩みの種、スランプの元なのですが―――
 
>ちくしょううらやましいなー!もう!!
 
 ご、ごめんなさいΣ(´Д` )
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C9] はじめまして……(ポッ

小説、読みました。
アリサさんの想い、緑さんの性格、なのはさんの葛藤。読んでいて思わずクロガネさんの世界に入ってしまいそうな気分になりました。至福のひと時をどうもありがとうございます。
最後に一言。
緑さんいい子なのよ。緑さんは!

どうも、結城 彼方でした。
  • 2007-04-05
  • 投稿者 : 結城 彼方
  • URL
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[C10] コメントありがとうござい……Σ(゚Д゚;ぇ

 感想ありがとうございます。
 少しでもクロガネワールドを感じてくれたのならば、SS書きにとってこれ以上ないことです。
 いやはや、縁も気に入られて嬉しい限りです。これで後半が書き易くなって……げふんげふん。
  • 2007-04-06
  • 投稿者 : クロガネ
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[C153] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2008-02-27
  • 投稿者 :
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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