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[C151]

>空だ全体を伸ばすように
「身体全体」ですか?
  • 2008-02-27
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[C160] 訂正ありがとうございますー!

 こちらもまた修正しましたー! サンクスです!
  • 2008-03-05
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法  6

 別に誰が頼んだ訳でもないのに日というのは昇るものである。もちろん日が沈まない国があるのだというのはアリサも知っているし、そしてそういう別の世界もあるのだと親友から聞いたことがある。ともかく、日は昇った。
 そして、アリサ・バニングスは見事な寝不足であった。
 別に疾しい事をしていた訳ではない。決してない。自信を持って言える、今日の寝不足は違うのだと。無論今日以外の理由は別の話である。アリサもお年頃なのである。
 閑話休題。
 念の為の言い訳ではあるが、アリサとて寝不足になりたくて寝不足になった訳ではない。とは言え、何故眠れなかったのかと聞かれれば首を捻り何ででしょうね? と答えるしかなかった。つまり、アリサにも分からなかった。
 しいて言うならば、ドキドキしていた、だろうか。何にドキドキしていたのかと聞かれても、同じように何ででしょうね? と首を捻る他ない。遠足の前日に興奮して眠れないような感じであった。
 ちなみにアリサは遠足の前日は眠れないタイプで、ついついバスの中で眠ってしまうという古典的なことをした事がある、しかも隣に座った人の肩を枕にして。隣なのがすずかだったから良かったものを、もしあの時はやてが復学していて、万が一はやてが隣で、最悪なことに同じく肩を枕にでもしたら、後で何を言われるか分かったものではない。
 ともかく、アリサ・バニングスは寝不足であった。
 制服に着替えながら盛大な欠伸をする。
 太陽がまぶしい。
 晴天の眺める窓を見ながら、涙目のままむにゃむにゃと意味のない空租借をして、自分のベットをちらりと一瞥した。

 ――縁の奴、もう起きてるのかな……

 何故かふと、昨日できた猫目の友人のことをふと考えた。






 
「ふあ……あぁぁ………」
 通学路を歩きながら、アリサは再び欠伸をした。盛大な、ではない。一応人前なので、手で口を覆いながら隠す。
 それを一緒に歩いていた3人がまじまじと見る。
「眠そうだね、アリサちゃん」
 そう言うのはすずか。
 眠そうではなく、本当に眠いのだ。ならばきちんと寝れば良かったじゃないかと言われれば、ごめんなさいとしか言いようがないのだが。
「そうなのよ、何か眠れなくてね」
「なんや、疾しい事でもしとったんか?」
「……してないわよ」
 何故か笑顔で聞いてくるはやてへの切り返しも、思いの他力が入らなかった。
 重症やな、と呟くはやての声は良く聞こえたが、それに対しては何も言うことはない。
「それじゃあ今日も居眠りしちゃうよ? 大丈夫?」
「大丈夫よ、すずか。学校の授業なんて1ヶ月2ヶ月くらい聞いてなくても大した事ないし」
「アリサちゃん、それ普通におかしいで……」
 再びはやてが呟いた。
 確かにアリサは冗談抜きで2・3年くらい学校の授業を聞いていなくても全く問題はない。事実、アリサ自身は独学ではあるが既に中学の学習範囲まで手を伸ばしているのだがら、正直なところ小学生の勉強など退屈で仕方がない。
 実は1年半ほど前まではそこまで無理して自分の学年以上の勉強をする気など全くなかったのだが、親友が魔法使いだという絵本の中に登場しそうな人物であることをカミングアウトされてから、周りに隠れて少しづつ勉強を重ねていたのだ。時空管理局の職員になる、そういう夢を持ち、その夢を叶えるために努力をしている親友に感化されたためである。アリサ自身、将来は両親の会社を継がねばならないという漠然とした設計図しかなかったが、それでもその将来のために勉強を積み重ねて損はないと思ったが故である。
 一方、呟いたはやての方はお世辞にも成績優秀とは言えない。いや、別に成績が一時期のフェイトの国語のように目も当てられないほど劣悪だとまでは言わないが。
 はやては読書家であり、文字と触れ合う機会も多い。故に語学力は悪い訳ではない。それにはやては独自の料理の調理法を細かく書き記した独自のレシピ本を作っており、それに伴う数量計算や創造力は豊かであると言える。
 ただし、決定的に下地が足りてなかっただけである。
 理科の実験? 歴史? 地理? そんなアメリカに住んでいる人種のパーセンテージを円グラフにして何の意味がある。アンモニア水に色をつけた水など実生活のどこに役に立つ。紫キャベツ? 食べたことないわ阿呆。得意だと思っていた国語の現代文でもそうである。作者の気持ち? 分かるわけがないやんか。穴埋め問題? 暗記せな無理やないか。
 復学当初はまさしくカルチャーショックを起こした異国民のような気分であった。毎日頭から煙が出るほど勉強して、それと並行して家事全般を含め裁判だの管理局の仕事だの診察だのとハードな日々であった。そしてそれは現在進行形である。今ではどうにか成績表を見た瞬間に衝動的に真っ二つに裂くような目を覆いたくなる成績ではないものの、正直なところクラス全体からして中の下に足が届いてるレベルである。しかも学年が上がって更に問題が難しくなっている。
 そんなはやてから見て、アリサという人物はまさしく雲の上の人を見ているようなものである。アリサ様凄い。勉強教えて下さいませ。
「それに授業云々言うならフェイトがまずいんじゃない? 今日は休みだし……あんたら3人の中でダントツに欠席の日数が多いじゃない」
 涙目のままなのはとはやての顔を見比べてから、アリサは口にする。
 そう、フェイトは今日は休みなのである。
 管理局が忙しいらしい。
「そら、フェイトちゃんもろ前線機動部隊やしな。なのはちゃんは武装局員のコーチすんのが仕事やし、私はリインの完成がまだ先やからデスクワークばっかりの役立たずなんが実情やしな」
「はやてちゃん……」
「ああ、ええんよすずかちゃん。そん代わりこの子が生まれたら、私もばりばり前線やからな。言うならば、今はその準備期間やね」
 やや自嘲気味に聞こえたのか、心配そうな顔をしたすずかに、はやては笑いながら首から下げている十字架のネックレスを手に取った。
 リインフォース。
 いや、その意思を受け継いだ、まだ見ぬ新しい家族である。
 すずかやアリサは聞いた事しかないが、それでもはやての口調から、表情から、その目から、リインフォースという人は大切な存在だったのだろうというのはよく分かった。そして、その意思を継ぐと言われる子も、同じく大切な存在だというのは言われなくても理解できた。
「……て言うかさ、そろそろ本題に移って良い?」
 そんなはやてを実に眠そうな目で見てから、アリサは挨拶してからこれまで一向に会話に加わろうとしない親友へと視線を移した。
 沈黙を続ける親友、高町なのは。
 アリサの視線に従うようにすずかとはやても同じくなのはの方へと向いたが、なのはは見られている事に気がつかないまま、まるで歩道のタイルの数を数えているかのように顔も視線も下に落としながら黙々と歩きつづけている。
 悩みがあります。そんな張り紙が背中に張っているかのような様子であった。
「ちょっとなのは!」
「うにゃ!」
 俯いているなのはの後頭を軽くぺしりと叩く。
 叩かれた事によって気が付いたかのように、なのはは奇妙な声と共に即座に顔を上げきょろきょろと辺りを見渡す。突如の衝撃に驚いた様子である。
「あ、あれ?」
「あれ、じゃないでしょ。ボーっとして、そんなんじゃ車に轢ねられるわよ」
 耳を引っ張り、くいっとアリサはなのはを無理矢理自分の方に向かせた。痛い痛いと聞こえるのはきっと寝不足による幻聴だろうと綺麗に無視する。
「え、あ、ご、ごめんねアリサちゃん」
「ごめんじゃない。何言っても上の――」
 無理な笑顔のため苦笑になってしまいながら謝るなのはに、アリサは反射的に反論しかけて、すぐに口をむっとへの字に曲げて言葉を切った。
 いつぞやの嫌なパターンを思い出させる会話だった。
 確かあれは、2年近く前の7月くらいの話だったか。その時の事情は後々で聞いたが、なのはがそのままふらりと消えてしまいそうな程、儚く不安定に見えたのは今でも思い出せる。
「――って、よく考えれば予感的中じゃない……」
「え?」
「こっちの話よ。それよりどうしたのよ、凄く疲れた感じだけど」
 一瞬頭に浮かんだ考えを消しながら、アリサは質問を変えてみた。
「あ、うん……昨日ちょっと、急に出動かかっちゃって……」
 だから少し疲れてるかも、そうなのはは笑った。
 もっとも、疲れただけでこんな落ち込んでいると言っても良い様子になるものかと、全員が思っていた。
「ああ、ちらっと聞いたで。白い要塞が今度は作戦開始16秒で犯人を撃墜したって」
「うん、話し合おうとしたらいきなり攻撃されちゃって、つい手が――――――え、要塞?」
 ぽんと手を鳴らし話しを合わせたはやての言葉の中に、物凄く聞きなれない単語が出てきた事になのはは頬を引きつらせた。
 話に食いついて来たなのはの様子にアリサは毎度の事ながら感心する。流石関西人、話の流し方が上手い。アリサの偏見でしかないのだが。
「なのはちゃんのニックネームやん、結構呼ばれとるで、鉄壁の悪魔とか恐怖の指導員とか。知らへんかった?」
 知らなかった。
 そして出来る事なら知りたくなかった。
 そう呼び始めた大半がなのはの指導を受けた事のある武装局員だという事実を知ったら、きっと数日で武装局員は全員病院のベットで日の出を見る事になるだろう。
 知らなかったのが意外なのだろうか、きょとんとした顔のはやてにやや頬の引きつったなのはが問いかけた。
「ところではやてちゃん、悪魔って言い出した人、誰か分かる?」
「え、あ、ええと……さあ、わ、私も出所はよう分からへんし」
 決して現在末っ子の赤毛の家族とは言えない。言おうものなら以前見学してしまったなのは式訓練をヴィ、もとい、言い出した誰かは本人望む望まぬ関わらず強制参加をさせられる事になるだろう。
 しかし、無意識的に視線を反らしたはやてに何かを悟ったのか、なのはは背筋が凍るように良い笑顔を浮かべながら、うんうん今度膝をつき合わせてしっかり話し合いしようかな、などと物騒な事を言い出している。いつもはあんなに天然なのに、こういう事には鋭い。
「しっかし、聞けば聞くほどハードよね、その 『お仕事』 」
 少しは元気が出ただろうかとはなのはとはやての会話を聞きながら、アリサはなのはの顔色を見ながら話を合わせた。追求はまだしない方が良いだろうと判断したためである。
 疲れているというのは別に嘘ではないのだろう、見るからにして疲労の色がある。下手をすれば授業中に寝不足のアリサより先に夢の世界へのパスポート片手に旅に出そうなほどである。もしかしたらアリサと同じくあまり寝ていないのかもしれない。
「うん。でも、自分で決めた事だし、覚悟してたから」
 そう笑うなのはに、アリサは反射的に口をへの字に曲げてしまった。そんなアリサになのはが気がつく前に、すずかがアリサの袖口をちょいちょいと引っ張り、注意を促す。相変わらず気の利く親友である。
 確かに管理局の仕事はハードである。慢性的な人手不足、減らない事件、学校との2重生活、学校側に対しては秘密であるということ、減る一方の自由時間と睡眠時間、解決の糸口も見えないドールタイプによる嫌がらせのような新たな事件。楽な要因は何もない。
 そして、事情を知らないクラスメイトが、早退や欠席も多くなり雰囲気の変わったなのはと距離を置きはじめたのがなのは自身も分かってしまう。なにせ娯楽のテレビもあまり見れないので、芸能人とか人気番組の話には全く付いて行けない。そして授業中に寝てしまう事も多くなり、成績は緩やかに低化していく一方である。そのため教員側にもマークされ始めているのをなのはは分かっていた。
 もっとも、管理局に入ってから体育の成績は抜群に良くなったし、理数系の成績は低化しない。国語、社会は別として。
 ただ、一番辛いのが事情を知らないクラスメイトが自分から遠ざかる事であった。
 覚悟はしていた。
 嘘じゃない。
 人とは違った、そんな道を歩こうとするのだ。早退も欠席も多くなり、テレビも見れないから会話も噛み合わなくなる。それくらい、考えれば分かっていた。
 それを覚悟した上で、なのはは管理局に入っている。
 少しづつ、少しづつ、皆が離れていくのは感じていた。だけど後悔はない。自分で決めた事である。
 それに事情を知っているアリサやすずかは離れる事なく付いてくれて、そして応援だってしてくれている。
 とても嬉しい。
 本当である。
 嘘ではない。
 神に誓っても良い。
 なのはの中で、2人は本当に心の支えになっていた。
 
 だからこそ、巻き込むようにして2人をクラスから孤立させているような真似をしている自分が、とても不甲斐なく思えるのも事実。
 
 アリサも、すずかも、決してなのはには言わない。フェイトにも言わない。はやてにも言わない。
 だが、なのは達と特に親しくしているというだけで、2人に話しかけてくるクラスメイトは着実に減っている。
 それに、クラスメイトと一悶着もあった。それ以降、アリサとすずかの孤立は顕著である。
 現実だった。
 2人は何も言わない。
 話しかける人が減っているのも、クラスメイトが離れていくのも、そして何が原因かも、全部分かっているはずなのに、何も言わなかった。だからなのは達も何も言えなかった。甘えているだけだと言われれば否定は出来ない。
 現実だった。
 その現実に、なのはは本当に自分の選んだ道が正しいのかと、疑心がよぎる。
 もしかしたら、自分はとり返しの付かない間違いを犯してはいないかと、そんな不安が沸いてくる。
 学校のテストのように誰かが自分の出した答えにマルやペケをつける訳ではないのだ。合っているとも、間違っているとも、正しいとも、正しくないとも、誰も何も言わないのだ。自分で判断するしかないのだ。まだ小学生でしかない子供には、酷な話である。
 再び表情に影の落ちてしまったなのはを見て、アリサは失言だったかと発言を悔やんだ。
 管理局で何かあったのだろう。今のなのはは、かなりネガティブ思考に陥っているようである。
 学校の目の前にある交差点の前に立ち止まる。
 赤信号だった。
 当たり前ながら渡らない。当然である。
「……あ、そういえばね――」
 会話がぷっつりと切れてしまった事に少し焦ったのか、いつもは話を切り出すタイプではないすずかが口を開き


 突如、猛ダッシュで交差点に跳び出した人影があった。


 歩行者信号は赤であった。
 目の前を車やらトラックやらがびゅんびゅん走っている。
 跳び出したら轢かれるというのは、誰の目にも明らかである。

 なのに、それを無視した馬鹿がいる。

「え?」
 誰の声だったのか、それは分からない。ただ、誰かの声はした。
 丁度一番端にいたすずかの横を後から遠い抜かすように通り過ぎ、車道へと踊り出たその人影は、随分と背が低いように見えた。
 見覚えのある白い服。
 考えるまでもなく、アリサ達が袖を通しているのと同じ、女子の制服であった。
 その女子は屈んだ状態で歩道に跳び出して、地面に落ちていた黒っぽい塊を拾い上げ、身体全体を伸ばすように即座に空へぽいと放り投げる。
 勢いよく、その女子が上に投げ飛ばした黒っぽい塊がくるくると空を舞う。
 猫だ。
 黒い毛並み、と言うよりも薄汚れた毛並みの猫であった。
 ただ、それが猫だと分かったのは流石猫屋敷の娘というのか、すずかだけであった。
 他の皆は放り投げられた猫よりも、車道に跳び出した少女の方に気をとられていて――

 凄まじいブレーキ音。

 当たり前と言えば当たり前、車は急に止まれない。

 鈍い、あまり聞きたくないような音が響き、黒い車に少女が轢かれた。

 誰も何も反応できなかった。
 黒い車は鼻とも言えるボンネット部分が長いタイプの車で、少女の足を掬うようにして突っ込み、少女の体はその衝撃に弾き飛ばされる事はなく上手く衝撃を逃がしたのかボンネットの上をごろんと側転するようにして1回転。フロントガラスとボンネットの中間部分の窪みに頭が激突する瞬間、少女は咄嗟に丸まるように腕で頭を守る体勢を作り
 がしゃん!!
 盛大に嫌な音がする。
 腕で頭を守る動作が本当にぎりぎりであり、少女のその動きは車のフロントガラスへとパンチを入れるようになってしまった。フロントガラスが砕けるとまではいかないが、かなり酷いヒビが走る。
 それでも車は止まらない。
 いや、止まろうとしているのは未だに響くブレーキ音からしてもよく分かる。
 更に勢いを付けてフロントガラスの上に再び体を叩きつけられ、それと同時に少女は頭をかばう事を止め即座に左肘で屋根を叩くかのようにして勢いをつけて体を捻りながら浮かせる。少女の体は車の屋根を遥かに超えてくるくると空を舞う。
 宙を舞い、まるでタイミングを合わせるように落ちてきた猫を少女は迷う事なく左手でキャッチする。
 黒い車がブレーキをかけながら少女の下を通り過ぎ、続いて後続車であった軽自動車の屋根に少女の体が落ちる。しかし、少女はまるでそれを分かっていたかのように体が叩きつけられ体がバウンドした瞬間に両足で屋根を蹴り飛ばした。べこん、だか、ばこん、だか嫌な音がする。
 再び少女の体がくるくると宙を舞う。
 しかし、今度は蹴り飛ばした勢いがあり、アリサ達が立っている歩道へと落ちていく。

 どしゃ、っと少女の体がコンクリートブロックの歩道へと背中から落ちた。

 幸いにも少女はカバンを背負っており、クッション代わりになっていた。アリサ達から大分離れた場所に落ち、黒い車も軽自動車もガードレールにぶつかったり後続車に追突される事なく停止する。2次災害はゼロ、不幸中の幸いとでも言えば良いのか。
 しーんと、静寂が降りた。
 ぽかんと、馬鹿みたいにアリサ達は口を開いたまま、顔だけを少女の方に向ける。アリサ達だけじゃない、信号待ちしていた全員が顔を向けていた。
 ―――何が起きた?
 全員の心の声だった。
「な、あ、え?」
 辛うじて変な声を上げたのは、はやてだった。
 事故である。
 交通事故だ。
 まさか朝っぱらからダイナミックに轢かれ少女が木の葉の如く舞うような現場を見るとは思ってもいなかった。
 誰かがその現場に悲鳴を上げるよりも早く、にゃー、と雰囲気の読めるはずのない猫の鳴き声がした。

「いた、いたたた、こら噛むな」

 更に雰囲気の読めていない少女の声がする。
 轢かれてゴミのように舞い地面に落下した、その少女だった。どうやら抱えた猫に噛みつかれているらしい。
「あ、おい、どこに……」
 にゃー、と、猫は鳴きながら少女の腕をするりと抜けて走り去る。走り去った猫が恋しいのか、少女は咄嗟に腕を伸ばすが、その腕は猫に届く事なく宙を掴む。
 ―――あ、生きてた。
 全員の心の声だった。なのは達の心の声でもある。
 アリサを除き。
 猫を捕まえる感触がなかったと悟り、少女は先程まで車のボンネットやら屋根やらを豪快に転がっていた事などまるでなかったかのように当たり前の如くむくリと身を起こした。乱雑に切られた黒髪がさらさらと風に流れる。
「ちょっ! 君、大丈――」
 慌てて車から降りてきたサラリーマン風の男性の方など全く気にする事なく、少女は何時の間にか青色に変わった歩行者信号を一瞥すると、まるで自身が助けた猫の如き柔軟さを持ち体をコロンと反転させ、腰を一瞬浮かせたかと思えば次の瞬間には下半身が波打つようにして浮き上がりその足は地面を蹴る。
 低姿勢からスタートを切り、無駄のない動きでガードレールをすれすれに飛び越え、周りの事など全く気にする事もなく―――

 本当に何事もなかったかのように、校舎へと走り去っていった。

 再び沈黙が降りた。いや、車のエンジン音は確かに聞こえるが、誰も喋らずそのまま少女の後姿を見送っていた。
 なのはも、すずかも、はやても、目が点になっていた。
 いきなり後から車道に跳び出した人は轢かれ、そして歩道に落ちたけど凄く平気そうにそのまま声をかける隙も与えず登校していった。
 一言でまとめれば、そんな感じであった。
 ただ1人、全く違う理由で目が点になっている人物もいた。

「え……縁?」

 間違いなく今の少女が昨日友達になった少女に見えたアリサ・バニングス。その人だった。






――――――――――――――――――――
 自分は何故なのは嬢達を小学3年生や4年生とか中学3年生ではなく、中途半端に5年生などという時間軸を採用したのかと聞かれれば、正しくこの設定にしたかっただけなのだと言いたい。
 たぶん中学3年生の頃にはなのは嬢達はそれなりの地位や地盤ができていると思われるのですよ。逆に小学4年は入りたてなのである意味現実よりも自分の目指した夢を見ていることでしょう。
 だからあえて更に1年後にした訳です。冷静に自分の立ち位置や、学校生活における自分と時空管理局における自分の現実を、頭を冷やしてみることのできる期間ですね。
 理想とは違った現実。行動に対して望まぬ結果。
 そこにある不安やら苛立ちやら、そいうのが書ければ良いなぁ、とか思っていたりなかったり。クロガネでした。
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2件のコメント

[C151]

>空だ全体を伸ばすように
「身体全体」ですか?
  • 2008-02-27
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[C160] 訂正ありがとうございますー!

 こちらもまた修正しましたー! サンクスです!
  • 2008-03-05
  • 投稿者 : クロガネ
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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