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[C737] もうさ・・・飲めb(ry

うん、こんな状況だったら二択しかないですよね!


とりあえず深い傷をおったのは間違いないので
すずか嬢に責任を取ってもらうしかないと思います(`・ω・´)


とういか、はやての凄まじい推理力は尊敬します。
フェイトはもう・・・・・・・・最後しか出てないのに残念すぎます。
あと、こういう話・・・・・・大好きです(`・∀・´)
もっとかいてもいいのよ!
  • 2012-06-30
  • 投稿者 : りんご
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[C738]

もう、なんというか、

最低ですよ、すずかさん…

その、欲望やら発想やら…

自分、きれいごと言ってんのかな~…
  • 2012-07-01
  • 投稿者 : ノヴェール
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[C739] あははー

○りんごさん
 真面目に考えると二人ともトラウマもんでございます。いや、うん、酷すぎる。
 ちなみに、“エッチ” というのは “変態” の頭文字なので、別にフェイトも間違いではないんです。ただ、日本語のニュアンスというのがよく分かっていないというだけの話で。
 流石に今回のはぶっ飛び過ぎてたので、控えます。控えますったら控えます。

○ノヴェールさん
 いや、正しい。あなたが正しい。
 飲むとかね、うん、最低。同意です。
  • 2012-07-01
  • 投稿者 : クロガネ
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[C740] もうすずかは駄目かも分からんね

すずかの中の人的には「キマシタワー」というやつなのかもしれませんけどね。

実際このシュチュエーションに追い込まれたら、携帯トイレでも持ってないと詰む。




  • 2012-07-05
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C741] そうかもしれんね

○ミヅキさん
 すずかの中の人はストパニ以外でもそっち系の作品の常連さんですしね。
 クロガネが同じ状況に陥ったら、人生終了のお知らせか。
  • 2012-07-09
  • 投稿者 : クロガネ
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[C742]

死火山か…ナムナム(-人-)
  • 2013-01-06
  • 投稿者 : 腹
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[C744] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2013-05-17
  • 投稿者 :
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[T1] まとめ【密室に閉じ込められち】

 大変長らくお待たせしました、密室に閉じこめられちゃった系の短編でございます。 正直、これ掲載して
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密室に閉じ込められちゃった話

 大変長らくお待たせしました、密室に閉じこめられちゃった系の短編でございます。
 正直、これ掲載していいのかと悩みに悩みましたが、まあ、UPしちゃいましょう。ただいまお酒入ってることだしね! あはは!

 この物語は 『魔法の使えない魔法使いの魔法』 とは関係ありません。一切ありません。ありませんったらありません。
 キャラの年齢はお好きなようにお考え下さい。アリサの髪は長いけど。
 今回も例によってリハビリの小説でございます。作文能力は著しく低下しています。勘弁して下さい。

 あと、シモネタです。
 かなりのシモネタが含まれます。
 ご注意下さい。

 以上のことがよろしければ、下↓からどうぞ。










 さして広くもないこの密室に閉じ込められ、かれこれ一時間くらいが経過していた。
 非常電灯のみがその密室を照らすが、明るいとは決して言えない。薄暗く落とす影は、この場の雰囲気を表現しているかのようである。
 密室の中には少女が二人。
 一人目の少女は長く伸ばした金髪の少女。
 その密室の片隅に足を投げ出すように力なく座り込み、死んだ魚のような目をしていた。時折プルプルと身体が小刻みに震え、見れば額に脂汗が吹き出している。
 二人目の少女は深く青っぽい色をした髪の少女。
 一人目の少女とは反対側の隅っこで膝を抱え、体操座りのように座っていた。悶々と何かを考え込んでいるのだろう、一人で顔を赤くしたり青くしたりと忙しそうである。
 二人の間に会話らしい会話はなかった。最後に口を開いてから十分くらいは過ぎたかもしれない。
 この密室に閉じ込められたと悟った時点では会話もあったのだが、一人目の少女の容態が悪化の一途を辿ると自然と交わす言葉などなくなっていった。
 沈黙だ。
 薄暗く狭い密室に軟禁された二人の間には、重苦しい沈黙が降りていた。
 黙っていると、不安ばかりが募っていく。
 ここから出られるのだろうか、とか、もしかしたら一生出られないんじゃないだろうか、とか。
 いや、二人目の少女としては、一人目の少女の容態が心配でならない。心配したところで自分では彼女の苦痛をどうにか出来るわけでもないのだが、それでも心配であった。
 時計もない薄暗い密室で、二人の少女はひたすらじっとしている。
 それ以外、為す術もない。
「――――――くぁ、くぅっ!?」
 と、急に一人目の少女がぶるりと大きく身震いを起こし、その口か苦悶の混じった呻き声が漏れだした。
 明らかにせっぱ詰まったようなそれに、二人目の少女はがばりと顔を上げる。顔色は真っ青だった。
「ア、アリサちゃん!?」
「く…………ぅぅ、ぅ、だ、だいじょう……ぶ」
 二人目の少女が思わず駆け寄ろうと腰を浮かしかけたのだが、一人目の少女は小刻みに震えつつも制止の声を弱々しく上げる。どう贔屓目にしたって大丈夫には見えない。
 しかし、二人目の少女はしばし固まった後、再びすとんと腰を下ろした。
 密室には、二人の少女。
 また沈黙が舞い降りた。

 一人目の少女はアリサ・バニングスと言う。

 二人目の少女は月村すずかと言う。

 普段は仲の良い二人であるが、会話はない。出来る状態じゃない。
 アリサの調子は見るからに悪く、すずかは近寄りたくても近寄れない。
 すずかも本当ならば傍にいて労りたいのだが、そんなことをすれば明らかなトドメとなるのは目に見えていた。今のアリサの苦痛を少しでも減らしたいのならば、そっとしておく他に手はないのだ。
「はぁ……はぁ……は、ぁ……」
 アリサの口から荒い吐息が一定間隔で洩れだしている。呼吸を整えようとしているのだろう。
 妙に、艶っぽく、聞こえる。
 そんな馬鹿な考えが脳裏を全力疾走で通過して、すずかは思わず顔を真っ赤に染め直す。
 馬鹿だ。馬鹿だ馬鹿だ。
 目の前でアリサが苦しんでいるというのに、自分はなんて欲まみれなことを考えているのだ。馬鹿じゃないのか。穴があったら埋まりたい。
 膝を抱え、ついでに自己嫌悪も抱え、すずかは再び沈黙した。
 アリサの苦しそうな吐息が、いやに大きく聞こえる。
 何でこんな事になったのだろう。
 深い溜息を一つ吐き、すずかは非常灯しかついていない天井を見上げた。

 この密室に閉じ込められたのは、一時間前の話である。










 ショッピングセンターに行こうと言い出したのはアリサの方だった。暇だったからである。
 魔法使いの三連星はお仕事で朝から不在であった。そんなに仕事が楽しいのか、親友の将来がお仕事ホリックさんになりそうで心配だ。
 そんな親友は横に置いておき、特に買いたい物もなかったのだが、暇だったので学校帰りにショッピングセンターへ寄ろうと話になった。
 すずかとしては断る理由はない。アリサと長く一緒にいられるならば、何処でも良かった。
 さあ冷やかしに行くわよ! と意気込むアリサに、少しくらいは何か買おうね、とすずかが宥める。最近はアリサと二人でいることが多いので、息はぴったりと合っていた。
「すずかはさ、もう少し肌出してみたら?」
 授業も終わりショッピングセンターへまっすぐ突入を仕掛け、まずアリサの第一声がこれだった。
 さて、アリサは一体何を言っているのだろうか。
「肌って?」
「私服よ私服。いっつも完全防備でガードが堅いんだから、たまには露出しましょうよ、ってね」
 うっ、とすずかは言葉に詰まる。
 けろりとアリサは言ってくれるが、それはちょっと遠慮したい意見である。あまり肌を晒すのは好みじゃないのだ。恥ずかしいし。
 至極消極的な言い方で反対意見を述べてみたのだが、エレベーターで階を上り、あっと言う間に目的の店舗へと到着した。ダメだ、聞きゃしない。
 そしてその店舗に足を踏み入れると、すずかは凄まじい場違いな気分になってきた。
 派手目な服が多いのだ。
 体格的にまだ子供服という範疇から外れていないはずなのに、目の前に飾られていたマネキンの衣装は、おへそも見えれば鎖骨どころか胸の上三割は露出するという布面積の少なさ。見た瞬間、くらっときた。
「これイってみる?」
「無理無理無理無理!」
 思わずマネキンを注視してしまったすずかに気がつき、アリサは冗談半分で勧めてみたが全力拒否を食らった。
 無理だ。こんな服を着て出歩くとか、恥ずかしすぎて死んでしまう。
 自分がこんな服を着てみたら、と想像してみたが、あまりにもあられもない己の格好に悶絶する羽目となってしまう。
 そんなすずかを見て、ふむ、とアリサは一度鼻を鳴らした。
「そうね、背中とか開いたの着てみましょうよ。こう、がばーって思いっきり開いたの」
「や、やだっ! 無理! 私ちょっと、そういうの無理だから!」
「まぁまぁ、何もブラ見せの選ぶわけじゃないんだから」
 嫌がるのすずかの手を取り、意気揚々とアリサは店舗の奥へと足を勧めた。
 ズルい。ズルっ子だ。
 すずかの身体能力ならばアリサの手を振り解いて逃げ出すくらいわけないのだが、そんなこと出来るはずがなかった。
 こんなに暖かな手を、振り解けるわけが、ない。
 アリサはそれを知っていて手を握ってきたのだろうか。自分がこの手から逃れるはずもないことを知っていて、手を握ってくれたのだろうか。
 だとしたら、ズルい。ズル過ぎる。
 ありもしない期待を、たったの一瞬とは言えど抱いてしまうじゃないか。
 抵抗らしい抵抗も出来ず、引っ張られるようにしてすずかは趣味とはかけ離れたジャンルの衣装が陳列された棚へと辿り着いた。
「ほら、こんな」
 顔を赤くして黙ったすずかのことを恥ずかしがっている程度にしか理解してないまま、アリサは早速適当な服をすずかに差し出した。
 反射的にすずかはそれを受け取り、まじまじと眺め、そして愕然とした表情をアリサへと向ける。
 背中丸出し、おへそ丸出し、五分袖なのに肩丸出し。更に真っ赤っ赤。
 すずかの顔が、一瞬で朱に染まった。
「あとはそうね、これと……これ。ボトムはねぇ――」
「ちょ、ちょっと待ってアリサちゃん」
 ぽんぽんと服をチョイスして渡してくるアリサに、遅れながらすずかがストップをかけた。
 ダメだ。
 ムリだ。
 これは、なんだ、その、えーっと、あれだ、風邪をひいてしまう。
 夏とは言えどもこの服を着たら風邪をひく。きっとだ。絶対にだ。この服は明らかに不健康なファッションなのだ。
 そうすずかは高らかに拒絶文句を謳い上げた。









 そして試着室に放り込まれた。









 恥ずかしい。
 死んじゃう。
 更衣室の中ですずかは顔と言わず耳と言わず首と言わず、もう身体全部を暑く火照らせながら座り込んでいた。
 一回だけ一回だけ、とアリサに更衣室へと押し込まれ、こうなれば自棄だとすずかは制服からアリサセレクションの卑猥、もとい露出ファッションに袖を通してみた。
 みたのだが、うん、人間、自棄を起こすと大抵ロクな事になはならない。
 ま、人間じゃないんだけどねー、とすずかは遠い目をしながら鏡を見る。見た直後に目を逸らす。見るに耐えないとはこのことだ。
「すずかー、まだー?」
 外で元凶が呼んでいる。
「う……ぅぅ……」
 返事をしたいが声が上手く出てこない。
 仕方がなく立ち上がってみたが、自分のあられもない格好を見下ろし、即座に再び座り込んでしまう。
 駄目だ、動けない。
「すずか? 開けるわよ」
「ぅぅ……ちょっと待って……」
 遅すぎるすずかに痺れを切らしたアリサが、制止の声など聞くことなく更衣室のカーテンを開いた。
 かしゃぁ、とカーテンレールの音と共に視界が開ける。
 目の前には、呆気にとられたような表情のアリサ。
 似合わないと言いたいのだろう。放っておいてくれ。そんなの自分が一番分かっている。
「わ、すずか大人ー」
「子供でいいよ~」
 褒め言葉にしては微妙すぎるアリサの言葉に、すずかは泣き言を上げた。
 実際には似合っていないわけじゃない。すずかの容姿は本人が自覚している以上に整っているため、だいたいの服は着こなせる。事実、大人向けのファッションによるアンバランスさが実に際立ってる。その点に置いてはアリサのセンスは冴えていた。
 だが、そのアリサの視点からすれば、今のすずかの格好は新鮮すぎてリアクションが返し辛い。
 と言うか、小さく丸まって座り込み、顔を真っ赤にして涙目の上目遣いをされると、こう、キュンとくるものがある。アリサにそっちのケはないはずなのだが、思わずときめいてしまった。
「も、もう制服に着替えちゃうよー?」
「ちょい待ちすずか」
 もはや羞恥心に耐えきれなくなっているすずかを制止して、アリサは一度更衣室のカーテンを閉める。
 十秒くらいか、もう着替えちゃおうかなとすずかが考え始めると、再びアリサが何の声かけもなくカーテンを開く。突然開けられてすずかが文字通り跳び上がった。
「ここ、こ、声かけて!」
「あ、ごめん」
 心臓が握り潰されるような思いだったが、アリサの謝罪はとても軽かった。そして全開で開けないでくれ。早く閉めてほしい。向こうの棚にいる同い年くらいの子達がじろじろ見ているじゃないか。
 見られているのはすずかが恥ずかしがって座り込んでしまっているからなのだが、自分の責任など棚上げである。
「んじゃあ、すずかちょっと立って」
「無理無理無理ぃ~」
「……よいしょ」
「ひゃああっ!?」
 無理だと言っているのに、アリサはすずかの脇の下に遠慮なく両手を突っ込み、ひょいっといとも簡単に無理矢理立たせてきやがった。
 こんな軽く人を立たせるとか、いったいどんな力をしているのか。
 力学を上手く利用しているだけなのだが、それでもすずかはアリサに対してとんでもなく失礼な誤解を抱く。
 そして、はたと気がつく。
 自分の格好を。
 目の前には、当たり前だがアリサがいて。
 しかも思いっきりまじまじと見られていて。
 かぁぁ、とただでさえ赤かったすずかの顔に、更に血が集まる。そろそろ頭の血管が破裂しそうな勢いであった。
 アリサに見られている。
 アリサにじっくり見られている。
 こんな破廉恥な格好を、他の誰でもなく、アリサに見られている。
 あまりの恥ずかしさに、一瞬意識が遠のいた。
 くらっとすずかの頭が力なく揺れ。

 そのすずかの肩に、ふわりとストールが掛けられた。

「……ぁ」
「ん、これなら似合うわ」
 遠のきかけた意識が引き戻される。
 我ながら良いコーディネイトだ、と言わんばかりに得意げな顔をしているアリサが、すずかに羽織らせたストールの位置を調整していた。片方だけ肩に掛けるか、それともマフラーみたいにして両肩に掛けるか、それで悩んでいるらしい。
 ストールに目を落とす。
 この派手目な衣装の多い店としては珍しく、深く青い落ち着いた色。
 背中と肩を隠し、全部は隠せないがお腹もどうにか隠して。
「よし……よぉし。これでよし!」
 満足がいったのか、アリサは確かめるように一歩後ろに下がり、うんうんと何度も頷いた。
「えと……?」
「ん、似合ってるわ!」
 にこっとアリサは笑顔を向けてくる。
 ふっとアリサは右へと顔を向け、そこにいた誰かを手招きした。
「これ、このまま下さい。着ていきます」
 そしてそんなことを宣いやがった。
 はい、と知らない人の声。店員だった。
「こちら一式ですね」
「はい、これタグです。あと支払いはこれで」
「……はい、少々お待ち下さい」
 店員が顔を覗かせた瞬間にすずかは反射的にストールで身体を隠したが、そんなことを気にせず、いつの間にか外していたタグをアリサは店員に渡し、ついでにキャッシュカードも手渡していた。
 え、あれ、着替えるだけじゃないの? 買うの?
 予想していなかった話の流れにすずかはぽかんとしていると、その間にもアリサは容赦なく話を進めていく。
 タグとカードを受け取った店員がさっさと引っ込む。
 えーっと。
「……アリサちゃん、今日、そんな手持ちないんだけど」
「プレゼントよ、プレゼント。ちょっと早い誕生日プレゼントだと思ってくれれば」
 思わず財布の心配をしてしまったすずかに対し、アリサはしれっと言い返す。
 プレゼント。
 すずかは自分が試着した服を改めて見下ろした。
 どう贔屓目に見たとしても、安物には見えない。むしろな、かなか凝ったデザインだ、相応にお値段が張ると思っていいだろう。
 それを、ぽんとプレゼント。
 さぁっと、すずかの顔色が青くなった。
「え、ちょっと、そんな、貰えないよ!」
「いーのいーの、高いわけでもないんだし」
 いや、安くはないだろう。
 絶対高いって。
 慌てて止めにかかったすずかに対しても、アリサは変わらずしれっとしたものだ。
 もしかして金銭感覚が違うのだろうか。すずかもそれなりのお嬢様だが、アリサのお嬢様っぷりは格が違うのだ。そもそも家の財力規模が文字通り桁違いなのだし。
 それでも何とか遠慮しようと言葉を並べたすずかに、一度アリサは首を捻り、ああ、と何か思い出したのか納得したように手を鳴らす。
「大丈夫、ここウチの系列なの」
「……え?」
「正確にはパパが100%ホールディングしてるグループの系列なの、ここ。だから株主優待受けられるのよ」
 本当にしれっと、あくまで素で、得意げになることも自慢することもなく、ただ単に事実を口にしたというだけの風にアリサは説明してくれた。
 ほら見ろ、財力規模が桁外れ。
 筆頭株主どころか100%保持とか言っている段階で、その株主優待とやらは事実上バニングス家専用の割引になっているのは目に見えている。それでどれだけ値引きされるのかが気になる反面、聞いてしまったら二度とこの店で買い物する気が起きなくなるような気もするので聞くに聞けない。いや、この店の方向性とすずかの趣味は逆ベクトルだから、別にこの店で買い物できなくなっても困らないのだけれど。
 ともかく、まともな金銭感覚でも高くないというのは事実なのだろう。
 だが、買ってもらうのは気が引ける。
 しかしプレゼントだと言われると、ときめくものは確かにあった。
 確かにすずかの好みからはすっぽ抜けの大暴投甚だしいアウトっぷりだが、アリサが選んだ、そしてアリサに似合っていると言われた服となると、自分の好みなど些細な問題のように感じてしまう。
 いやいや、だけど買ってもらうのは申し訳ない。それにこの服、正直なところ着る機会などそうはないだろう、罰ゲームでもない限り。
 だが。
 いやしかし。
 すずかはしばらく悩みに悩み、アリサからのプレゼント、というフレーズに心を惹かれに惹かれたものの、やはり買ってもらうのは悪いなという結論にたどり着いた。
「ア、アリサちゃん!」
「ん? なに?」
 意を決してアリサを呼ぶと、彼女は小さな書類にさらさらとサインを記し、いつの間にやら戻ってきていた店員さんにその書類を渡しているところであった。
 次の言葉が出てこなかった。
 すずかが言葉に詰まっている間にも、アリサは店員さんからキャッシュカードを受け取り、いつもありがとうございます、と子供相手にも関わらず馬鹿丁寧にお辞儀をされている。見るからに購入手続きが終わりましたというムードであった。
 受け取ったカードを財布にしまい、改めてアリサがすずかに向き直る。
「どうしたの?」
「えっと、あの……」
 断ろうとしてました、とはちょっと言い辛かった。ここで断るということは、返品処理をお願いするという意味なのだから。
 すずかは数秒ほど言葉を濁した後、諦めたように肩を落とした。
「アリサちゃん、強引だね」
「なによ今更」
 苦笑したすずかに、アリサはきょとんとした表情だ。
 それから改めてすずかはストールをきゅっと握る。
 それじゃあ、貰おう。
 アリサからのプレゼントとして、大事に貰おう。
 意識せずして、苦笑は柔らなかな微笑みへとその色を変えた。
「ありがとう、アリサちゃん。大切にするね」
 それに対し今度はアリサが苦笑した。
「大切にするよか、外でちゃんと着てほしいけどね」
 無茶な相談である。









 これで終われば日常のエピソードの一つとして良かったのに、ここからまさかの急展開を迎える羽目となる。









 羞恥心で人が死ねるのならば、すずかは既に死んでいるだろう。羞恥死。新しすぎて嫌すぎる。
 モール内ですれ違う人すれ違う人、その大半がちらちらと目を向けてくるのがはっきりと感じられた。ちらちら、ならまだ良い。人によっては無遠慮にじろじろと、頭の天辺から爪先まで舐めるように視線を這わせているのが肌で感じられる。
 何か自分がおかしいのだろうか、それともやはり絶望的に似合ってないのだろうか。すずかは店を出て以降思いっきり視線に晒され、僅か二分で立ち竦んでしまった。
 人、人、視線、視線、視線。
 今の自分の格好が格好なだけに、恥ずかしさは高倍率だ。
 何でこんなに見られているんだろう。そんな疑問ばかりが頭の中をぐるぐると回る。
 もっとも、すずかが妙に注目されているのは、ほぼすずかの責任であった。
 容姿の整った少女が恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め、その身体をストールで隠すようにしながら縮こまり、前を歩く友人へと潤んだ目を向けながらとことことついていく。挙動不審かつ妙に色気のある今のすずかは、注目して下さいと選挙カーで宣伝しながら歩いてるも同じである。
「せ、制服に着替えたいよぉ~」
「このアイス美味しそうね、食べる?」
「お願い聞いてぇ」
 潤んだ目と言うよりも半泣き状態ですずかは訴えるが、素知らぬ素振りでアリサは他の店舗に突っ込もうとしていた。勘弁してくれ。
 鼻歌混じりで絶好調なアリサの右手には、先程の店舗のロゴが入ったビニール袋。脱いだすずかの制服が収まっている。
 着替えたいのに、その着替えはアリサの手の中。ちくしょう。
「帰ろうよー」
「えー、まだ来たばっかりじゃない」
「帰ろうよぉー」
 くいくいとアリサのスカートを引っ張り、涙目ですずかは訴えかける。
 赤い頬、困り顔、涙目。振り返ってそれを見たアリサの胸中で、イケナイ何かが目覚めかけてしまうような光景だった。
 んー、とアリサは少しだけ考える。
 正直、今のすずかを連れ回して周りに見せびらかしたい。よく似合っているのだ。すずか自身の趣味に合っておらず、なおかつ似合っていないと自分で思いこんでいる節があるだけで。
 しかし、この羞恥プレイを続けたらすずかが泣き出してしまうのは目に見えている。
 アリサは小さく笑った。
「じゃ、帰るまではその格好で」
 着替えさせてはくれないのか。すずかは情けない顔をする。
 エレベーターはこっちね、とアリサは案内図を見ることもなく通路を曲がる。他の店で晒し物にならないだけマシか、とすずかは気を取り直した。
 どちらかと言えばすずか好みの洋服店を通り過ぎ、エレベーターが見えてきた。
「あ」
 と、急にアリサが立ち止まる。
 何だ、どうした。まさか前言を撤回して他の店に入るとか言い出すんじゃあるまいな。
 アリサは下腹部に軽く手を当て、天井からぶら下がっている案内プレートを見上げていた。すずかもつられて見上げるが、ATMはあっちだトイレはこっちだ、そしてエレベーターはすぐそこだ、という情報しか書いていない。
「アリサちゃん、早く、帰ろ?」
「え、あ……うん」
 何故か歯切れが悪かった。
 アリサは一度もぞりと内股を擦り合わせるように身じろぎした後。
「まー、一階にもあるか」
 と小さく呟く。
 エレベーターの周りには人はおらず、丁度すずか達のいる階にエレベーターが待機している。
 早く早く、とすずかが急かすと、アリサは苦笑いを浮かべながら、はいはい、と軽い返事。









 そして、二人だけの空間となったエレベーターが、止まった。
「………………」
「………………」
 いつもとは違う強い減速に、急ブレーキをかけたかのような甲高い金属の悲鳴、そして非常灯に切り替わる照明。
 何の前触れもなく、エレベーターはその動きを止めやがった。
 思わず沈黙が舞い降りる。
 しかし、二人の表情は随分と違っていた。
 あれ、故障かな? とすずかは軽く考え、隣にいたアリサは茫然自失といった顔である。
「うそぉ……」
 笑うかのようにアリサが漏らした呟きは、何故か震えた声色だった。
 どうしたのだろうかとすずかはアリサの顔を伺うが、アリサは未だに呆然と点灯していない階数表示を見上げている。
 はて、こういう状況ならば一番冷静であろうアリサにしては珍しい。
 すずかが首を傾げるのと、はっとアリサが正気を取り戻すのはほとんど同時であった。
「え、ちょ、止まっちゃったのっ!?」
「……みたいだよ?」
「嘘!? ちょっと、おいコラッ!」
 何か焦っているのだろうか、怒りをぶつけるかのようにアリサは非常コールのボタンを連打し始めた。
 随分と取り乱していらっしゃる。長押ししなければ繋がらないことくらい、アリサならば知っているはずなのだが。
 焦っている人を隣にすると逆に自分は落ち着くものなのか、すずかはとても冷静そのものであった。
「んーと」
 すずかは非常通話ボタンのすぐ上に書かれていたエレベーターナンバーを確認してから、未だにボタンを連打するアリサの手を押し退け、ボタンを強く長押しする。
 一秒、二秒。
 少しだけ間を置いてから、ブツ、と通話が繋がった音がする。
 どうされましたか? とスピーカーから若い男の人の声。丁寧な言葉遣いというよりは、気だるそうな声である。管理者だろうか。
 何か文句を言おうとしたアリサの口を反射的に左手で押さえ、すずかはエレベーターが急に止まってしまったこと、照明が非常灯に切り替わったこと、そしてエレベーターナンバーを管理者へと告げる。
 分かりました、少々お待ちください、と決まり文句のようなそれが返された。
 そして、ぶつりと通話が切れる。
 沈黙。
「少々って、どれくらいよ……」
 ぼそり、とアリサが呟いた。
 すずかが左手で口を押さえているままだったので、呟いたときの唇の動きがはっきりと感じられた。かなりリアルに、生々しく。
 ひくっとすずかの肩が思いっきり跳ねた。
 慌ててアリサから左手を離し、その手を胸の前で抱く。
 アリサの唇の感触が、残っていた。
「ま、まあ、もう少し、待とうよ」
 思わず頬を赤くしながらも、すずかは誤魔化すように明るく口にして振り返り。

 アリサの顔が、真っ青だった。

「……アリサちゃん?」
「…………」
 呼びかけにも、アリサは黙って返しもしない。
 顔色が悪く見えたのは薄暗いこの非常灯のせいかとも思ったが、どうやら違う。表情を作るのが上手なアリサにしては、その表情もかなり強ばっていた。
 どうしたのだろうか、焦ったり顔色を悪くしたりと、様子がおかしい。
「どうしたの? 大丈夫だよ、エレベーターもすぐ直るから」
 閉じこめられたのが怖いのかな? と思いつつすずかはアリサの背を撫でる。
 アリサがすずかの目を見る。
 絶望というか、恐怖というか、何とも言えぬ感情が込められた色をしている。負の感情なのは確定しているみたいだが。
「どうしよう、すずか」
 声も固い。
 そして、掠れそうなほどに、細い声だった。
 強ばっていた表情も、一瞬だけだが泣きそうに変わったのがはっきり見えた。



「――――トイレ、行きたい……」











 ようやく冒頭に戻る。
 エレベーターが止まってすでに一時間、さして広くもないエレベーターに少女が二人。
 アリサはエレベーターの片隅に足を投げ出すように座り込み、死んだ魚のような目をしていた。
 十分ほど前まではひたすら狭い密室をぐるぐると歩き回ったり、ずっともじもじとしたりしていたが、もう限界なのだろう。座り込んでからは真っ青な顔をして、時折ぷるぷると震えるだけで一言も喋らなくなった。
 エレベーターに乗る前アリサが足を止めたのは、詰まるところ、そういう事だ。
 天井にぶら下がっていた案内プレートには、しっかりとトイレの事が書かれていた。その時点でアリサは既にトイレに行きたかったのだろう。
 それを急かしたのは、すずかだ。
 エレベーターは丁度待機中だったし、お誂え向きに他に人もいなかった。早く周りの目線から逃げたくてアリサを急かした。
 結果がこれである。
 アリサとは反対側の隅っこに膝を抱えて座り、すずかは軽く落ち込んでいた。
 その点についてアリサは責めてなどいない。別に急かすすずかを引き留め、トイレに行かせてくれと言わなかったのはアリサであるし、一階についてから行こうと思ったのもアリサである。それに、エレベーターからトイレまではちょっと歩かねばならなかったので、すずかに気を使ってのことでもある。
 それを察しているだけに、申し訳なさが先に立つ。尿意と戦っているアリサを後目に、すずかは罪悪感とのバトル中だ。
 はぁ、とアリサには聞こえないようにすずかは小さく溜息。
 先程見たばかりなのだが、再び腕時計西線を落とす。一時間だ。
 管理者に再び連絡したが、まだかかると言っていた。それが十分前。アリサが座り込んで死んだ魚のような目をし始めてからである。
 これ、間に合わなかったらどうなるんだろう。
 思わずすずかはそんなことを考えた。
 考えてしまった。
「…………」
 思いっきり、赤面。
 間に合わないとは、つまり、その、何だ、アリサが、あの、えっと。
 ちらり、とすずかはアリサを盗み見る。
 必死に我慢しているせいか、上気した頬にうっすらと光る汗、そして荒い吐息。妖しい魅力が満点であった。
 色っぽい。艶っぽい。
 一瞬、見惚れてしまった。

 そのアリサが――――漏らすのか。

 おしっこ。

「いっ!!」
 口から悲鳴なのか歓声なのか、妙な声が漏れ、咄嗟にそれを手で押さえて押し止める。
 ……マズい。
 マズい、マズいマズい、非常に、マズい。
 と言うか、やばい。
 今、想像してしまった。いや、妄想してしまった。
 しかも随分と逞しい想像力のせいか、やけにリアルな妄想だった。
 アリサが半泣きで、恥辱と解放感に震え、軽い喘ぎ声を上げて、そして。
 頬と言わず耳と言わず顔と言わず首と言わず、血液が沸騰したかのように赤くなる。
 ば、ば、ばかだ。
 バカだ。
 馬鹿だ。
 こんな状況下、何考えているのだ。発情期の猫じゃあるまいし。
 はっきりと感じられる興奮に、凄まじい自己嫌悪を覚える。盛り上がっているのか凹んでいるのか自分でも分からなくなるような複雑な心境である。
 膝ではなく頭を抱えて悶えていると、そんな挙動不審のすずかを正に不審に思ったのか、アリサがちらりと目を向けてくる。
 俯き気味な顔を上げず、垂れる前髪の隙間から見上げるような上目遣い。
 これで魚屋にパック詰めで並べられた秋刀魚のような目をしてなければ、ヒビだらけの理性から本能が漏れ出していたかもしれない。
「どー……したの……?」
 力のない声。
 それでも、心配そうな声。
 自己嫌悪が倍増した。
 アリサ自身もかなりギリギリな状態だというのに、それでも人の心配をする。そういう人なのだ、アリサは。
 それなのに、それなのに自分ときたら、かなりアブノーマルなポイントにドキドキしていたという。なんてこった。
「な、なんでもないよっ」
「……そう」
「あー、えっと、えーっと、ア、アリサちゃんは、大丈夫?」
 頭を振ってかなり変態な妄想を祓い、すずかは話題をすり替えた。
 大丈夫じゃないだろ。
 口にした次の瞬間、かなりテンポよく自分自身でつっこみを入れる。
 すっと、アリサの目線が下がった。
 顔が、暗い。
「……ごめんなさい」
「謝罪!?」
 表情よりも暗い声だった。
「はは……あはは……私、明日からおもらしアリサよ、はは、あはは、は……」
 真っ暗な声で、ビックリするほど弱気な発言である。
 限界間近だ。
 そして心が折れかかっている。
 え、え、え? とすずかが慌てるも、それで何かが出来るわけもなく。
「あ……はは、ごめんねすずか、アンモニアくさいかも」
「え、え、え、あ、えっと、だ、大丈夫だよ!」
「もー……だめかも」
「あ、アリサちゃんの匂いだったら、何でも大丈夫だからっ!」
 達観しはじめたと言うよりも既に諦めムードが漂うアリサの発言で、逆にすずかがパニックに陥ってきた。
 何やら危ない事を口走ってしまったような気がするも、すずかもアリサも気にしている余裕はどこにもないのが救いかもしれない。
 と、アリサの身体がぶるりと大きく震えた。
「ひ――――っ」
 悲鳴を無理矢理飲み込んだかのようなそれに、反射的にすずかが腰を浮かす。
 決壊したか。
 ダムが決壊したのか!?
 ぷる、ぷる、とアリサは余韻のように小さく震え。
「う……ぅ……」

 ぽろぽろと、泣き出した。

「あ、アリサちゃんっ!?」
 急に涙を流し始めたアリサに、すずかは四つん這いに近い姿勢で慌てて駆け寄る。
 アンモニア臭はしない。
 まだセーフだ。
 だが、アリサが泣き出した。
「ぅ、ぅ、ぅぅ……ごめんなさい、ごめんなさい…………」
 先程のごめんなさいより、より逼迫した謝罪であった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……パパ、ごめんなさい」
 泣きながら、謝る。
 謝る相手は、この場にいない父親だった。
 ああ、本当に限界なのだ。
 側に近寄ったはいいが、触れられず声もかけられずオロオロするしかなかったすずかは、何となく察してしまう。
 アリサのプライドは、基本的に “バニングス” のプライドである。
 個人としてのプライドは極端に薄く、あくまで家名のプライドだ。
 そして、そのプライドはバニングスの娘として相応しいか否かだ。言い換えれば、父であるデビット・バニングスの長女として相応しいかどうかである。
 バニングスの娘は優秀であるべきだ。勉学もスポーツも優秀で、リーダーシップもあり、人から注目される人物でなくてはならない。そして、恥ずべき行為は、してはならない。
 バニングスに、いや父の顔に、泥を塗ってしまう行為は、絶対にしてはならない。
 ある意味のファザコンだ。
 そんなアリサにとって泣いて父に謝罪するというのは、バニングス家の長女として相応しくない最低最悪の恥ずべき結果を残してしまう場合だ。
 それをすずかは、察している。
 だから、アリサが本当に限界なのが、分かった。
「――アリサちゃん!」
 強く、すずかは呼びかける。
 だが、ごめんなさい、ごめんなさい、とアリサは繰り返すばかりで見向きもしない。
 肩は叩けない。触れない。たぶんだが、その時点でアウトになるだろう。
 どうしよう。
 どうしよう。
 すずかの方がパニックである。
 エレベーターはまだ動かない。例え動いたとしても、現状のアリサは歩いてトイレまで行けるとも思えない。排尿処理のセットなど都合よく持っているはず――
「……そうだ!」
 閃いた。
 排尿処理なんて物ではないが、それに限りなく近い物だったらすずかは常備している。
 生理用品だ。
 下世話な話ではあるが、この非常時に四の五の言っていられないだろう。
 そう思ってすずかは自分の鞄を開け、目当てのそれを探す。
 探す。
 探して、がくりと、うなだれた。
 そうだ、そうだった。先週生理が急に来て、その時に使ってしまったのだった。
 バカ、わー、もうバカ、使ったなら補充しとこーよー、と脳内ですずかは何度も己を罵倒する。肝心なところで役に立たない。
「アリサちゃん、確かタンポ――」
「…………」
 死んだ魚の目と言うよりか、むしろニボシか干物かのような目を向けられていた。
 急に行動し始めたすずかに気がついたのだろう。しかし、この薄暗い中、涙を流しながら虚ろな目を向けられるのは正直心臓によろしくない。
「あ、あー、えっと……アリサちゃん、その、生理用品、持ってる?」
 ときめき以外の意味でドキドキする胸を押さえながら、他の誰も聞いちゃいないと分かってはいるものの小声でアリサに尋ねてみた。
 アリサなら、きっとアリサなら持っている。そんな期待の上での問いだった。
 だが、糸の切れた人形の如く、かくん、とアリサの顔が落ちる。
「……昨日、終わったところなの」
 すずかの小声より最寄り一層小さな、それこそ蚊が鳴くような声でアリサが呟いた。
 何が終わったのか、何て聞く必要もないだろう。
 そして、それは言外に予備を持ってきていないということだろう。
 気まずい沈黙が舞い降りる。
 なるほど、手詰まりだ。
 どうしようもない。
 じぃ、っとアリサの顔を眺める。
 ぽた、ぽた、と雫が落ちる。
 泣いている。
 ここで我慢の限界を迎えてしまえば、アリサへの心理的ダメージは計り知れない。
 自殺するかも、と一瞬だけ考えて、すずかの顔から血の気が全軍撤退。思いっきり頭を振って、嫌な未来予想を振り払う。
「アリサちゃん」
 青い顔のまま呼びかけると、今度は顔を上げてくれた。
 目が合う。
 何かもう、色々と諦めがついたかのような、そんな目。
 続ける言葉が何も出てこなかった。目を見たら、何も出てきはしなかった。
 解決方は特になく、慰めなど逆効果だろう。
 沈黙。
 何か言わなきゃ。言わなきゃ。かける言葉の内容など何もないのに、すずかは焦って

「の……飲もうか?」

 とんでもないことを口走ってしまった。
 それでも、アリサの表情は動かない。
「……飲むって?」
「その、ほら、漏らすよりは、ねぇ?」
 ぼそぼそとアリサが問うたそれに、慌ててすずかは付け加える。
 付け加えて、なるほど我ながら良い案だと感心してしまった。
 最前とは言えないが、漏らしてしまうよりは良いだろう。巧く飲めるかどうかは分からないが、床を対処不能なほどに汚すこともないはずだ。他に選択肢もないのだから、これで良いはずなのだ。うん、そうだ、そうに決まっている。別にイヤラシイ気持ちなんて欠片ほどにも抱いちゃいない。これ幸いに普段はスカートと布一枚に阻まれて間近ではまず拝めないのが拝めるとか、嗅げるとか、触れるとか、舐めれるとか、そんなことは少しも考えていない。考えているわけがないじゃないか。これはあくまで非常事態の対処である。深い意味はない。他意もない。飲めるというのにちょっと興奮しているなんて事はこれっぽっちもありはしない。
 すずかも大分パニックに陥っていた。冷静そうに見えるだけ、余計にたちの悪い混乱の仕方である。
「汚いわよ」
「あ、アリサちゃんのなら大丈夫! 飲めます!」
 自信たっぷりに胸を張って切り返す。ただしすずかの顔には冷や汗が流れている。
 もはやすずか自身、自分が何を口走っているのかも分かっていない。
 本来ならば最初の段階でつっこみを入れるはずのアリサも、我慢の限界のためだろうか、すずか以上に思考が回っていない。
 アリサの口元に、うっすらと投げやりな笑みが浮かんだ。
「ふふ……もう、それしかないか……」
 本当に投げやりだった。
 現在アリサに突きつけられている選択肢はたったの二つ。漏らすか飲ますかである。三つ目の選択肢を考えられる状態ではないし、そんな気力もない。
 飲ますか。
 すずかに。
 ははっ、とアリサは小さく笑い、笑ったのが下腹部に響いてどっと脂汗が額から噴出する。
「ぅぐ……」
「あわ、わわわっ、アリサちゃん!?」
「も……だめ……」
 言われなくても、もう駄目そうなのは見て分かる。
 しかし、そのギブアップ宣言にすずかは更に慌てた。
 マズい。これはマズい。
 目をぐるぐる回して混乱しながらも、すずかは自分がせねばならないことを考え。
「パ、パンツ下ろすから、お尻あげて!!」
 とか曰いながら、アリサのスカートの中へと両手を突っ込んだ。









 三十分後、アリサとすずかは無事に救出された。









「ちゃんと、責任とります。ごめんなさい」
 真っ青な顔でアリサが話を切り出したのは、二人仲良く公園のベンチでうなだれ、葬儀場のような沈黙をたっぷり堪能してからだった。
 アリサとは正反対に真っ赤な顔をしたすずかは、特に何も返事をしなかった。出来る状態じゃなかった。
 いや、もう、何だ、飲むとか、アホじゃないのか。バカじゃないのか。
 恥ずかしさ五割、自己嫌悪に四割、自分の隠れた性癖を発見しかけた戸惑い三割、そんな心境である。つまり許容量オーバーだ。頭の中の処理がまるで追いついていない。
 と言うか、エレベーターの中で、自分はキワドイ発言をしなかっただろうか。正直パニックになっていてよく覚えていない。
 うわぁ、と、すずかは頭を抱えて呻き出す。
「弁償します。ごめんなさい」
 真横にいるはずなのに、苦悶の悲鳴を上げるすずかに気がつくことなく、アリサは生気のない声でぼそぼそと謝罪を繰り返した。
 すずかは許容量越えの羞恥心だが、アリサの場合は素直に死にたかった。
 何と言うか、うん、死にたい。
 酷い醜態を見せてしまったし、挙げ句の果てにはシモの世話である。
 穴を掘って埋まりたい。穴は墓穴で、埋まり方は限りなく埋葬に近い埋まり方をしてしまいたい。
 はは、とアリサは虚ろな目のまま不気味に笑う。
「なんて、いいますか」
 と、ようやくすずかが声を絞り出してきた。頭を抱えたまま。
「わたしも、ごめんなさい」
「……私の方こそ、本当にごめんなさい」
「ううん、なんか、わたし、変なこと、いっちゃって」
 ちらりとアリサがすずかへと目を向ける。
 頭を抱えているすずかの耳は、完全に茹だっていた。
「あー…………」
 幾分窶れたような顔を上げ、アリサは空を仰ぎみる。
 変なこと、言ってたっけ?
 すずかはパニックではあったが、アリサの場合本当にそれどころじゃなかったので、すずかが何を言っていたのかまるで覚えていないのだ。
 人間、限界まで尿意を堪えるとあんな事になるのか。高過ぎる授業料の割に一生体験したくなかった経験をしてしまった。
「それより、これ」
 元気のない声のまま、そして暗くなり始めた空を見上げたまま、アリサはがさりとビニール袋を持ち上げる。
 妙に重みのある音をたてたそれは、すずかの服を買った店のロゴが入っている袋で、その口はがっちりと縛られていた。
 そこには、すずかの制服が仕舞われている。

 かなり濡れた、と頭に付けるべきか。

 今更だが弁解しておこう。
 すずかは飲んでない。
 あわや寸前といったところまでやってしまったが、無造作に置かれていたそのビニール袋が目に付いたのだ。
 中にはすずかの制服。
 布の固まりである。
 それから、まあ、その、何だ。アリサにはそこでしていただいた。
 制服をパット代わりとして。
 もちろん、すずかは反対側の壁にぴったりと張り付き、固く目を瞑り、耳を塞いで、息まで止めて、そのシーンは見なかった。聞かなかった。嗅がなかった。逆にそこまでやられると余計に意識してしまい、アリサとしては罪悪感と羞恥心割り増しであった。
 そして全て終わり、アリサががさがさとビニール袋の口を縛る。無言のまま更に縛る。無表情で更に縛る。鞄から見るからに高級品の小瓶に入ったフレグランスを取り出し、ビニール袋に向かって全部ぶちまけた。
 臭かった。
 アンモニア臭ではない。香水の臭いが既に公害レベルであった。後から聞いたが、あのフレグランスは薄めること前提のタイプだったらしい。
 それから助け出されるまで、二人は無言だった。
 きっと薄めれば何らかの花の香りなのだろうフレグランスの強烈な原液臭に、二人揃って気持ち悪くなってしまったせいもある。
 だがそれ以上に、その悪臭によって二人とも冷静になってしまったという理由が大きい。アリサとしては出すものを出したせいという理由もある。
 冷静になって思い返してみる。
 二人とも思いっきり落ち込んだ。心理的ダメージが甚大である。
 そしてしばらくしてから助け出されたのだが、片や真っ青、片や真っ赤な顔のまま、謝罪も説明も禄に受けることなく一目散にショッピングセンターから逃げ出した。アリサは持っているビニール袋が凄まじい香りを醸し出していることなど気にもせず、すずかは着ている服が露出の多い恥ずかしい物だというのを気にもせず、脱兎の如く逃げたのだ。
 そして今に至る。
「ちゃんと、弁償、します」
 ビニール袋を持ち上げたまま、未だに血の気の戻らぬ青い顔でアリサは言葉を途切れ途切れにさせながらも口を開く。
 それに対してすずかは若干顔を背けてしまう。
 臭い。
 まずは袋を下ろしてほしい。
 フレグランスをぶちまけた奇行は気が動転していたからなのだろうか、未だに香りが抜けてない。
「すずか、制服の替え、ある?」
「……うん、一応」
 すずかが顔を上げ、何故か遠い目をする。
 実のところ、ビニール袋に封印されたあの制服は、まだ一週間くらいしか袖を通していないのだ。色々キツくなってきたから新しく新調したのだが、まさか買って早々こんな結末になろうとは考えてもいなかった。
「あー、なら、後で3サイズ教えて下さい。新調します」
「……洗うだけでいいよ?」
「フルオーダーで新調させて下さい。ごめんなさい。捨てさせて下さい。お願いします」
 声は平坦であったがアリサは即座に泣きに入った。
 こんな恥の証明品、一刻も早く消却してしまいたい。許されるのならば、この公園のごみ箱にダンクシュートを決めてやりたいくらいだ。
 がさりとアリサはそのビニール袋を地面に下ろす。
 そして、二人揃って疲れた顔で盛大に溜息を吐き出した、両手で顔を覆った。

「「――二度とエレベーター乗りたくない…………」」







 蛇足。

 後日、約束通り、アリサが新しい制服を持って謝りに来た。
 買ったばかりの制服も貰った瞬間、やっぱり洗って返してくれるだけでも良かったのに、むしろ洗わなくても、とか思ってしまった。
 思ってしまって、はたと己の変態性を自覚してしまい、すずかはその日、丸一日寝込んでしまった。









 さらに蛇足。

 露出の多い私服も案外耐性がついたんじゃないかと思い、すずかは試しにアリサからプレゼントされた服へと袖を通してみた。
 しかし、あの時は感覚が麻痺してしまっただけなのだろう、鏡に映った自分の姿を見た途端、顔を真っ赤にして座り込んでしまう。
 これは無理だ。やっぱり恥ずかしい。









 最後にもう一つ。

 その露出の多い私服に気の迷いで袖を通してしまった場面をメイドのファリンがばっちり目撃していた。
 それからすずかの姉、忍へと “露出が多い服” をすずかが持っているという報告が上がった。
 そして忍の恋人、高町 恭也へと世間話の一環として “かなり露出があるセクシーな服” を妹が持っている話が流れた。
 さらには当然のようにして恭也の妹、高町なのはへと “過激な服”をすずかが持っているという情報がリークされた。
 続いてなのはが職場で偶然にも会った親友にて同僚、フェイト・T・ハラオウンへと “なんだかえっちな服” をすずかが持っているという会話を交わした。
 不幸にも国語の成績が劣悪なフェイトは、帰り際に会ったライバル、シグナムに “とても変態な服” をすずかが持っているというネタを披露してしまった。
 最終的に家に帰ったシグナムは敬愛する主、八神はやてに至極真面目な顔で “月村すずかが露出狂として目覚めたらしい” という知りたくもなかった衝撃の事実を知らせることとなった。
 その伝言ゲームの最後ランナーとなってしまったはやては、しばらく考えてからすずかへと電話をかける。

「なんやすずかちゃん、実は大人な服を隠し持っとるって話があるんやけどなー。それってもしかして、アリサちゃんからのプレゼントかなんかか?」

 凄まじい推理力であった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ちなみに、これの配役をなのはとフェイトに変えた場合、フェイトは飲みます、なのはのを。
 こんにちは、こんばんは、読んでいる時間帯によってはおはようございます。シモネタってさじ加減がとんでもなく難しいですね、クロガネです。

 難産でした。凄く難産でした、この作品。
 正確には、気楽に書き上げた明らかに一般作品に掲載されることはないR-18な代物を手直しするのが、非常に難産でした、ええ。
 本当ならば、もうちょっと微笑ましい話になるはずだったんですよ。それが、こんなことに。どうしてこうなった。
 ……これ、セーフですよね?

 リハビリはあと一回だけおつき合いの程をお願いします。
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7件のコメント

[C737] もうさ・・・飲めb(ry

うん、こんな状況だったら二択しかないですよね!


とりあえず深い傷をおったのは間違いないので
すずか嬢に責任を取ってもらうしかないと思います(`・ω・´)


とういか、はやての凄まじい推理力は尊敬します。
フェイトはもう・・・・・・・・最後しか出てないのに残念すぎます。
あと、こういう話・・・・・・大好きです(`・∀・´)
もっとかいてもいいのよ!
  • 2012-06-30
  • 投稿者 : りんご
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[C738]

もう、なんというか、

最低ですよ、すずかさん…

その、欲望やら発想やら…

自分、きれいごと言ってんのかな~…
  • 2012-07-01
  • 投稿者 : ノヴェール
  • URL
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[C739] あははー

○りんごさん
 真面目に考えると二人ともトラウマもんでございます。いや、うん、酷すぎる。
 ちなみに、“エッチ” というのは “変態” の頭文字なので、別にフェイトも間違いではないんです。ただ、日本語のニュアンスというのがよく分かっていないというだけの話で。
 流石に今回のはぶっ飛び過ぎてたので、控えます。控えますったら控えます。

○ノヴェールさん
 いや、正しい。あなたが正しい。
 飲むとかね、うん、最低。同意です。
  • 2012-07-01
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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[C740] もうすずかは駄目かも分からんね

すずかの中の人的には「キマシタワー」というやつなのかもしれませんけどね。

実際このシュチュエーションに追い込まれたら、携帯トイレでも持ってないと詰む。




  • 2012-07-05
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C741] そうかもしれんね

○ミヅキさん
 すずかの中の人はストパニ以外でもそっち系の作品の常連さんですしね。
 クロガネが同じ状況に陥ったら、人生終了のお知らせか。
  • 2012-07-09
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C742]

死火山か…ナムナム(-人-)
  • 2013-01-06
  • 投稿者 : 腹
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[C744] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2013-05-17
  • 投稿者 :
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[T1] まとめ【密室に閉じ込められち】

 大変長らくお待たせしました、密室に閉じこめられちゃった系の短編でございます。 正直、これ掲載して
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
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