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[C716] フォースの暗黒面に落ちなかったアリサ

あけましておでめとうございます。

シャマル無双、違和感を感じなくもないけど4人で常に戦闘してきたんだから、こういう状況も偶にはあったんでしょうね。

縁は地球への影響を気にしてフルパワーを出せない状態だった……逆にいえばやろうと思えばいつでも「お前がよけたら地球はコナゴナだあああ!!」が出来たわけですね。

アリサとアステマ再び、このままなら別に縁が暴れ続けなくても残った世界同士でが勝手に争って滅びそうな予感もしますけどね。そういえばこの作品のタイトルは「 魔法の使えない魔法使いの魔法 」、主役のアリサが魔法使えちゃ駄目だという原則だった・・・・忘れてましたね(笑)
  • 2011-01-01
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C717] マグマに焼かれても黒マスクで再登場ですね、わかりません

○ミヅキさん
 あけましておめでとうございます。ウサギ鍋の年ですよ(゚∀゚)o彡゜
 シャマルについては、無くはないと思うのです。前線組とは違って後方待機の多いシャマルは、よほど前線大好きな戦闘狂の主でない限り、普通に後方で守られている書の主と行動を共にする確率が高く、そうならばシャマル自身が書の主を守る最終防衛ラインになるはずですし。4人しかヴォルケンリッターがいない以上、虚をついて前線組とは違う方から書の主を狙った場合、交戦するのは普通に考えてシャマルの仕事。
 アリサは一般人! でも主人公!

「考えたなちくしょう!!」←何も考えてない。
  • 2011-01-03
  • 投稿者 : クロガネ
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[C718] 管理人のみ閲覧できます

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  • 2011-03-09
  • 投稿者 :
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[C719] 生存報告を…

前回更新から一年が経ちました。
前年は色々なことがありましたので、ぜひとも生存報告をと思います。
  • 2012-01-16
  • 投稿者 : オヤマ
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[C720]

更新がないのが寂しいなあ。もしかして被災してたり?
  • 2012-01-30
  • 投稿者 :
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[C721] はじめまして

昨日と今日とで一気読みしました。この物語は前半と後半で雰囲気が物凄く違いますね。
どちらも大変面白かったですけど、昨日はアリサと縁のキスシーンまでで読むのを止めていたので、今日続きを読んでその後の展開に驚きました。
これからは糖分過多のいちゃラブ時空が始まるのかと思ったら、いきなり世界をまたいだ末期戦が始まりましたなんて、予想外にも程があります。
でも、思い返すと伏線はけっこうあちこちにあるんですね。
自分にはこの物語の結末がどうにも予想できません。いったいこの後どういった展開になっていくのか、更新を楽しみに待っています。
  • 2012-03-17
  • 投稿者 : コノスル
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魔法の使えない魔法使いの魔法 70

第12章――第1節
――アリサから―――



 なのは達は魔法を使えて羨ましくはないかと、そう誰かから尋ねられたとしよう。
 羨ましくない、と答えたならばそれは嘘である。羨ましい。凄く羨ましい。念話とかいう秘密通信みたいな事もしてみたいし、空を自由に飛ぶことだってしたい。羨ましくない訳がない。
 すずかのようなズバ抜けた特技があり、夢中になれる趣味があり、明確な夢がお前にもあるのかと、そう誰かから尋ねられたとしよう。
 ないよ。
 少しもないよ。
 ある訳ないよ。
 バイオリンが弾けるとか、ピアノが弾けるとか、護身術の心得があるとか、自慢じゃないが特技は多い。だが、それは練習したなりの技能しかない。確かにどれも高レベルで修得している自信はあるが、すずかのようにプロの大人と比べても一歩も退かないような非凡な技能な訳ではない。
 勉強も、運動も、習い事も、どれも完璧にできる。どれも完璧にできるか、どうしても冷めている部分があった。苦労を乗り越えたりとか、四苦八苦悪戦苦闘を積み重ねて極めたりとか、そんな苦痛をあまり感じないが故に、苦労を乗り越えたときの喜びというのを知らない。だから夢中になれることがない。
 だから、夢がない。
 父の用意した道以外を進む、そんな夢がない。
 アリサ・バニングスは、自分をとても恵まれた存在だと思う反面、知り合いの中では最も下らない存在じゃないのかと、そんな心の闇がいつでも自分の後ろにいることを感じていた。
 だけど今。
 そう今。
 今この時は、心の闇を、どこにも感じられなかった。





 太陽照りつける荒野の中を、アリサは黙々と走っていた。
 選んでくれた服装は、まるでこうなることを予想していたかのように最適な物だった。何の事情も説明しなかったのに、よくもまたチョイスできたものだ。
 じわりと汗がにじみ出る。即乾のシャツでなければ、既に悲惨なことになっていただろう。
 もっと早く到着したい、もっと全力で走って行きたい。そんな気持ちを抑えながら、オーバーペースにならないように気をつけて一定の速度で走り続ける。急いた気持ちに押されて走れば、最後にはバテるのをアリサはよく知っている。そうなれば、結果的に遅くなる。
「はっ……はっ……」
 呼吸に気をつけて、走る。
 自転車があれば楽なのになと、頭の片隅で思ってしまえるのはまだ体力に余裕のある証拠なのか。
 粘つく唾を一度飲み込み、ただひたすらにアリサは走る。
 走るしかできないからだ。
 空を飛べるわけでもないアリサは、走るしかなかった。
 走って、走って、走って。
 前方にドールタイプが見えた。
 クロノから先に聞いている。魔法でできたロボットのようなものだと。
 その片手には斧。薪割り用の斧とは違い、分厚く、無骨で、いかにも重そうな作りをした斧であった。
 それを確認し、それでもアリサは走った。
 もとより荒野。見晴らしはとても、途轍もなく、素晴らしく、良い。身を隠す場所など最初からありはしない。
 ドールタイプはアリサの方へと身体を向け、ズシ、ズシ、と一歩ずつ歩いてくる。そしてアリサは止まることなく走り続ける。
 走る。
 走る。
 走って。

 ドールタイプの横を、素通りした。

 素通りされたドールタイプはアリサの存在に気がつくことなく、ただ、何かを感知したのか、周りを見渡すように兜の部分をきょろきょろと左右へ動かしていた。
 これで64体目。
 別に何の意味もないのだが、アリサは心の中だけで静かにカウントを取る。素通りしたドールタイプの数である。
 それだけの数のドールタイプの側を、アリサは見つかることなく通り過ぎていた。
 アリサも理屈は分からない。分からないが、ドールタイプはアリサの姿を認識できないようであった。
 分かることはただ一つ、クロノの魔法だ。
 クロノと別れる前に、アリサはクロノに魔法をかけられた。魔法のことはよく分からないが、多分そのおかげなのだろう。そうアリサは思うことにしている。細かい理屈はすっ飛ばしだ。
 最初は本当に自分の姿が隠れているのか自信がなく、かなりびくびくしたのだが、3体目あたりから慣れてきた。
 とにかく、クロノの言葉は信じていいらしい。だったらあとは走るだけである。
「はっ……あー……はっ……」
 息が切れる。
 身体が重い。
 半月近くぐーたらしていたせいか、体力が落ちている。足が止まりそうだ。そんな弱音が一瞬浮かぶが、アリサは苦もなく弱音をスルーする。
 走りながらアリサはウェストポーチからペットボトルを取り出し、蓋を開けて一口だけ口に含む。ぬるい。薄めたスポーツ飲料のようだ。若干だが蜂蜜の味がした。
 口に含んだスポーツ飲料を、ぐちゅりと一度口の中で回し、即座にべっと吐き捨てる。それから改めて一口飲み、ペットボトルの蓋を閉めてウェストポーチにしまい込む。
 大丈夫だ。まだ走れる。
 65体目のドールタイプの横を素通りしながら、自分に言い聞かせるようにアリサは頭の中で数回その言葉を唱える。気持ちで負けては、走れない。
 66体目のカウントを頭の中でした。認識阻害がどうとか、ドールタイプの可視波数がなんとか、クロノがそんな説明をしていた気がするが、縁に早く会いたい一心でロクに聞いていなかった。今思えばクロノには悪いことをしたのかもしれない。
 67体目を視界にいれながら、アリサは遠くへ視線をとばす。

 空を、何かが飛んでいた。

 きっとそこだ。
 きっとあそこだ。
 数分前に数回、向こう側が光って見えた。今もなお、雷のような光が時々見える。
 あの位置だ。
 あそこに縁がいるのだる。
 すぐそこに。
 縁がいる。
 そう思った途端に、身体の重みが軽くなったような気がした。
 縁がいる。
 縁がそこにいる。
 ぐっ、と歯を食いしばる。
 あそこに行くんだ。行かなければ。
 行って。
 縁と逢って。
 話が、したい。
 気持ちが早く行け、速く走れと急かしてくる。
 もっと前へ。もっと速く。
 もっと早く、縁に。
 心の中で渦巻く感情は、何と表現すればいいのだろうか。焦りとか、後悔とか、期待とか、恋い焦がれるとか、名前を付けるならばきっと、この感情にはたくさんの名前が付けられるだろう。そして、その名前の全てがきっと当てはまり、きっと全てが的外れな名前なのだろう。
 だって、この想いは愛でも恋でもないのだろうから。
 もちろん、縁のことを愛しているし、恋い焦がれてもいる。だが、心の中をぐるぐるしている感情は、もっと別の何かだ。
 地面を蹴る。
 縁を初めて意識したのは、あの幽霊アパートで会った時だ。プリントを届けに行ったんだった。幽霊が出そうでビビっていたところに、普通の子が出てきて拍子抜けしたのをよく覚えている。
 地面を蹴る。
 縁に心を奪われたのは、初めてあの笑顔を見たときだ。花が咲いたような笑顔に、とても綺麗に笑うのだと魅せられた。
 地面を蹴る。
 縁を優しい子だと思ったのは、猫を助けたときだ。誰も気がつかず、誰も反応できなかったのに、縁は車が走り支配する車道へ何の躊躇いもなく飛び込んだ。そして見事に轢かれた。惹かれた。
 地面を蹴る。
 縁を凄い子なのだと思ったのは、なのはの相談を顔色一つ変えずに答えたときだ。考えがとても柔らかく、頭の回転がとても速いのだと感心してしまった。
 地面を蹴る。
 縁の側には自分がついてなくてはと思ったのは、縁がコンビニで途方に暮れていたときだ。コンビニ初体験と聞いたときは、この子にまともな常識を教え込もうと強く決心した。
 地面を蹴る。
 縁を不器用な奴だと思ったのは、フェイトに叩き伏せられて怪我をしたときだ。もっと分かり易く説明できただろうに、もっと安全にできただろうに、そもそも試合そのものを避けられたはずなのに、それでも縁は荒療治でも確実にフェイトに伝えられる方法を選択した。そして怪我をした。大怪我だ。
 地面を蹴る。
 縁を守らなくてはと思ったのは、自殺未遂事件があったときだ。縁はあんな奴に育てられていたのかと憤慨した。縁が殴られたときは血の気が引いた。それでも縁はアステマという女を盲信していることに、逆に悲しくなった。
 地面を蹴る。
 縁を好きだと自覚したのは、間違いない、誘拐されたときだ。一言で言い表せと言われたら、世界が一変したと返す他にない出来事だった。
 地面を蹴る。
 そして、自分が馬鹿な選択をしたのは、そこからだ。
 地面を蹴る。
 馬鹿なことをした。
 最低なことをした。
 優しい子を、凄い子を、側にいてやらなくてはとおもった子を、不器用な子を、守らなくてはとおもった子を、好きな子を、傷つけるだけ傷つけた。
 地面を蹴る。
 縁との想い出は、せいぜい一ヶ月とちょっとしかない。
 だけど、それでも色々なことがあった。自分が生きてきた中で、11年という短いながらもその中で、最も色濃い一ヶ月だ。
 地面を蹴る。
 出会って、意識して、近づいて、好きになって、拒絶して、傷つけた。
 地面を蹴る。
 逆に誰か教えてほしい。
 この一ヶ月ちょっと、目まぐるしく変わった縁に対する想いを全部ひっくるめて何と呼べばいいのか。
 走りながら縁のことを想う、この感情を何と呼べばいいのか。
 自分が、アリサ・バニングスが、縁に抱いているこれを何と呼べばいいのか。
 好きで、好きで好きで好きで好きで、どうしようもなく好きで、恋とか愛とかという言葉を何億費やそうとも言い表せないくらい好きなのに、それでも口に出して言い表すならば 『好き』 と言う他にない。それ以外にない。ないのだ。
 何と言えばいい。
 何と表現すればいい。
 この想いを、何と呼ぶのか。
 地面を、蹴る。
 ペース配分をしっかり意識しているはずなのに、アリサのペースは徐々に速くなっていく。急かす気持ちを、押さえられなくなっている。
 会いたい。
 逢いたい。
 あいたい。
 縁に、あいたい。
 蹴る。
 胸の奥の感情が重くなればなる程に、足が軽くなっていく。
 前を見る。
 あそこに縁が、きっといる。
 地面を蹴って、ひたすらに走る。



 走るアリサを次元震が襲ったのは、丁度そのタイミングだった。












 ヴィータとシャマルが2人で前線に出た場合、前衛を務めるのは当然のことであるがシャマルだ。そして後衛と言っても、ヴィータはシャマルのすぐ後ろについている。
 逆ではない。シャマルが前衛だ。
 そもそも遠距離に対する攻撃手段が1つ2つ程度しかないシャマルが後ろだった場合、戦うのは実質ヴィータ一人になってしまう。だったらいっそ、シャマルが前に出た方が良い。
 それにシャマルは戦略を立てるのが得意であり、ヴィータは逆に戦術を組むのが得意である。前線で細かく動きの指示を出すなら、シャマルがヴィータに出すよりもヴィータがシャマルに指示を出した方が的確だ。それにシャマルが前にいた場合、相手の戦略が変更された場合にいち早く気づける。
 そしてシャマルには範囲攻撃の手段がないために、ヴィータが真後ろに着いていても一切の遠慮なくシャマルは動ける。すぐ後ろに着ければ、ヴィータとしても援護し易く、守りにも入り易く、さらには回復のためにシャマルを後ろに下げるのも容易である。
 もっとも、これは相手方が揃ってシャマル以下の戦闘しか行えない場合のみのフォーメーションだが、そもそもシャマルは自分が出ても問題ないと判断しない限り前線に出てこない。別に抜け目ないだの腹黒いだの、そういう訳ではなく、後衛に控えてこそ真価を発揮する者がほいほい前線に顔を出すのは流石に問題があるとシャマル自身が理解しているためだ。
「あわわっ、ちょ、ゃんっ! ま、待ってっ、それ危ないか、らっ!!」
 襲いかかる大剣を避け、そこに繰り出された槍を受け流したついでに奪い取り、槍を持っていたドールタイプの頭を蹴り砕き、追撃で振るわれようとしていた大剣を持ったドールタイプに槍を突き刺し、さらにその大剣を略奪する。
 やってることは無駄のない動きで流れるようにしているのだが、代わりに慣れぬ前線に慌てているのか焦っているのか、口から出てくる言葉は情けないものばかりで、そして随分とやかましい。
「ドリルとかっ、頭おかしいんじゃないのっ、わわっ、ああっ、かすった、今スカートかすったっ! 危ないじゃないっ! あわっ、嘘ですごめんなさいっ、ええいっ!」
 うるせぇ。
 シャマルへ向かってきた砲撃をバリアで遮りながらも、声にすることなくヴィータは心の中で呟いた。
 ヴィータ自身もそんなに静かに戦うタイプではないが、少なくともシャマルほどは賑やかではない。と言うか、戦いながら喋れるだけの思考能力がよく残っているなと、逆に感心してしまう。一瞬の油断や気の緩みが命取りになると心得ているヴィータは、戦うときは戦うことに全神経を傾けるというスタンスである。
「ガトリングって、あわぁっ!? ええっ!? それって打撃の武器じゃな、ひゃんっ、と、はい貰いますっ、重っ!? わわわわわっ、来ないで来ないで! えいっ! えいっ! それでこれを撃ってええええええええっ!? わ、狙いが、わわわっ、振り回されるぅぅぅぅっ!?」
「いやそれは使うなよ!」
 奪い取ったガトリングを撃ちはじめたは良いものの、その反動に耐えきれずにシャマルが振り回され、そしてあらぬ方向へと銃口が向いていた。魔力で強化しても持っているのが精一杯の火気を何故に使用するのか。
 そのガトリングをシャマルは即座に手放し、真上へ放り投げられたそれへヴィータは金属球を投げつける。投げつけた金属球の爆発と、ガトリング内に残っていた弾薬の爆発が合わさり、黒煙をまき散らす。とは言え、視界を全て覆うような量ではない。
 と、続いてランスを構え一直線に突っ込んでくるドールタイプを数体発見。シャマルは即座に迎撃の体勢に入り……ふと黒煙が広がる上方へと顔を向ける。
「シャマル、ちょっと下がれ。大丈夫だと思うけど」
「あ、うん」
 冷静なヴィータの指示に、シャマルもそうくると思っていたのか疑問も挟むことなく一歩分程度後ろに下がり

 突如、黒煙を突き破り、雷の一閃がドールタイプの一体を貫いた。

 ゴッ、という鈍い音が響いたが、それはドールタイプがその閃光に砕け散った音なのか、それとも超高速で通り抜けた閃光に空気が震えた音だったのか。
「ひょえっ!?」
 思わずシャマルが身を竦めたが、随分と遅い反応であった。
 砕け散ったドールタイプの破片から、残り香のように放電しているのが見える。十中八九フェイトの魔法なのだろうが、随分と大きい光だった。プラズマランサーとは違うものみたいである。
 残りのドールタイプは奇襲で墜された仲間のことなどさらりと無視し、構わずに突っ込んでくる。
 可哀想に。
 それが突っ込んでくるドールタイプに対し、シャマルの素直な感想であった。
 目を向けるまでもなく、剣を構えて戦闘狂が自由落下で落ちてくるのを知っているからだ。

 ズブッ、とかなり軽い音とともに片刃の剣がドールタイプの頭に突き刺さる。

 続いて、猫を思わせるしなやかな動作で頭を串刺しにされたドールタイプの肩に長い髪の女性が着地し、その反動で素早く突き刺した剣を引き抜き、長い髪が重力に従って落ちるよりも早く、着地したばかりのドールタイプを蹴りとばすようにしてすぐ隣にいるドールタイプに飛びかかっていた。
 ドールタイプは反応しきれず、構えることすら出来ないまま右半身を斬り裂かれ、同時にその左肩に女性は手を置き、跳び箱の要領で斬り捨てられたドールタイプを飛び越える。その先には次の目標。剣は既に降り上げられている。
 次のドールタイプはランスを僅かながらに女性に向けることが出来た。それが精一杯ではあったが。
「しっ!」
 一息。
 その瞬間に、ドールタイプは右肩から左腰まで一刀で斬り捨てられていた。
 瞬きが2回くらい出来たかもしれない。それくらい僅かばかりの時間の出来事。
 突っ込んできたドールタイプをすべて斬り捨て終わり、女性、シグナムはワンテンポ遅れて飛行魔法を展開して体勢を立て直す。
 下へと無惨な姿で落ちていくドールタイプを、シャマルは惨殺死体でも見るかのように若干引いた目で眺める。
 さらにその下で、きらりと黄色の光。

 今度は下から雷の一閃が登り、落ちるドールタイプをまとめて貫いた。

 シャマルの目には、黄色の光が輝いた瞬間にドールタイプが一瞬で粉砕されたように見えた。というか、そうとしか見えなかった。
 ひゅぅ、と後ろのヴィータから軽い口笛。
 どうしよう、速過ぎて目がまるで追いつかなかった。シャマルが無言で口をへの字に曲げる。
「お待たせしました。大丈夫ですか?」
 と、その声は真上から降ってきた。聞き慣れた少女の声、フェイトの声である。
 上を見上げれば、相も変わらず大胆なバリアジャケットを身に纏い、魔力刃の大剣を手にしているフェイトが若干息を切らせながらそこにいた。
 もしかして、今の閃光はフェイト自身が突撃してきた残像か何かだったのだろうか。いやいや、いくら何でもそれはないだろう。だとしたら人外の速度が必要だろに。自己解決しつつシャマルは数回頷いた。実際にフェイトが突っ込んだ残像なのだが。
「シャマル、遅いぞ。鈍ったのではないか?」
 ひゅっと己の相棒であるレヴァンティンを確かめるように一度振ってから、振り向くことなくシグナムが言葉を投げかけてきた。
 それは嫌味なのだろうか、それとも彼女なりの冗談なのだろうか、シグナムが言うといまいち判別し辛い一言に、シャマルは乾いた笑いで返すしかなかった。だから私は前線に出るタイプじゃないのに、という言葉が喉元まで出掛かるが、それは飲み込んでおく。
 そこでふと、ヴィータが下を見下ろした。
 飛んでいく影が見えたのだ。
 大きな青い狼と、針金頭の少年である。ザフィーラとガンザだ。
 飛んでいく先は見るまでもない、目的地は一緒なのだ。ただ、こちらより低空を飛び、そしてこの面子をスルーして一直線に飛んでいるせいで大分距離が開いてしまっている。
「あ、ずりぃっ!」
 言うが早いか、ヴィータがザフィーラを追いかけるように飛び出した。
 別に競争をしている訳ではないが、こちらを無視していくとは良い度胸である。そしてはやての下に真っ先に駆けつけて好印象を与えるのも癪だ。
 そのヴィータの行動に、シグナムもザフィーラの姿に気がつき、そして唇の端だけを軽く吊り上げる。
「ザフィーラめ、相変わらず美味しいところを持っていく……陣形を変えるぞ! 私とヴィータが前に出る! テスタロッサはシャマルを守れ!」
 そしてまた、言うが早いかシグナムも飛び出す。
 対してフェイトの返事は素早いもので。
「はいっ! いくよバルディッシュ、もう一頑張りだ!」
(( Yes sir))
「あー……この戦闘脳的テンション、ちょっとついて行けないわ……」
 最後にシャマルが一言ボヤキつつ、フェイトとシャマルも後を追うようにして同時に飛び出した。












「あ、あの、ザフィーラさん?」
「何だ?」
「ヴィータさん達、思いっきりスルーしたっすよね?」
「……そうか、気がつかなかったな」
「嘘っすよね!? 明らかにそれ嘘っすよね!?」











 天地がひっくり返るような、という表現が最も適切なのかもしれない。
「うぁっ!?」
 余震なんてものはなかった。突然だ。
 縦揺れだか横揺れだか分からない、いきなりの強い揺れにアリサの身体が浮き上がる。というか転びかける。
 反射的に踏ん張ろうとするのだが、空気ごと揺れるかのような歪な地震は爆発的に強くなり、踏ん張りかけた足すらすくう。
 魔導師でもないアリサにとって、地面の揺れと空間の揺れの区別などつかないし、次元震の対処など知ろう筈もない。
 これは転ぶと、咄嗟に目を閉じる。こんな揺れの中で受け身をとれるかどうかは怪しいものだ。
 ぶつかるだろう地面の固さを覚悟して、アリサは身を堅くし

 思ったよりも、いや思った以上に柔らかい感触が、アリサの身体を優しく抱きしめた。

「……っ!?」
 と、その感触に顔を上げたいところなのだが、激しい揺れに悲鳴をかみ殺すのが精一杯である。
 とにかく身体にぶつかった、その柔らかい何かにアリサは必死にしがみつく。
 はたして自分の身体が倒れているのか立っているのかすら分からない中、早く終わってくれと心の中で願い続ける。正直に言って地震は嫌いだ。
 揺れる。頭の中まで揺さぶるような強い揺れ。
 地震大国に住んでいる以上、地震の経験はあるのだが、何とも言えない変な揺れである。気持ち悪くなってくる。
 それを察したかのように、アリサの身体を抱きしめた何かがそっと肩を抱いてきた。
 誰だこいつ。少なくともアリサより背があるのは確かだ。
 疑問はあるが確かめる暇はない。
 早く終われ。地震終われ。
 そう祈りながらしばらく経つと、ようやく地震が止まった。
 ぴたりとだ。徐々に揺れが収まるような止まり方ではなかった。流石異世界。
 心臓がばくばくと激しく踊っているのは、直前まで走っていたせいだけではない。
 未だくらくらする頭を軽く振り、アリサはゆっくりと目を開ける。そこでようやく、アリサは自分が誰かの胸にしがみついていることに気がついた。
 少しがさりとする堅めの服は、和服のようだった。見事に真っ青な色をしている。
 背が高い。しがみついた身体はほっそりとしていて、女性の骨格だ。
 やや残念な胸からアリサはゆっくりと顔を離し、そして見上げる……さぁ、と顔から血の気が引いた。

「さて、そろそろ離してくれ。少し痛い」

 淡い栗色の髪。
 驚異的なまでに整った顔。
 青く染められた神主装束のような和服に身を包んだ、アリサにとって見覚えがあり、そしてとても会いたくなかった人物が目の前に立っていた。
 縁の育て親、アステマ・コロンゾン・リ・ヴァルヴェールローランド、その人である。
 感情の読めない冷たい瞳が、まっすぐアリサに向けられていた。背筋が凍りそうになる。
 以前アステマに言われた言葉が脳裏をよぎる。フォンが縁に殺され、シグナムがアステマに殺された後、冷たい目と、平坦な口調でも、込められた怒りの色がはっきりと分かる言葉だ。
 身体が震えた。
 逃げないと、と思う反面、この視界の広い広野じゃ逃げ場がないじゃないかと冷静な思考が走る。
 かたかたと震える手が、アステマから離れない。
「なんだ、次元震は怖かったか?」
 冗談めかしたようなことを言いながら、アステマはそっとアリサの手を掴む。子供のように、いいや、子供であるアリサよりも暖かい。
 くっと、アリサの喉が跳ねる。
 その目が、怖い。
 掴んだアリサの手を、アステマがすっと押し退ける。ようやく外れたアリサの手は、未だ小刻みに震えていた。
「あ……」
「さて、アリサ・バニングス」
 押し退けてもアリサの手を離すことなく、アステマがゆっくりとした、そして平坦な口調で名前を呼んだ。心臓が止まりそうだ。
「何をしに来た?」
「……え、縁に会いに」
 喉の渇きを感じながら、どうにか言葉を返すことが出来た。
 まっすぐ向けられるアステマの目を、負けじとアリサは見返す。人の目をまっすぐ見るその癖は、縁と同じものだった。
 ほう、とアステマが小さく漏らした。
 表情は動かない。何を考えているのかが分からない。それはアステマと親しくなかったからという理由を差し引いても、アステマは内心が読み難いタイプであるのは間違いない。
「会って、それからどうする?」
 投げかけられた質問に、アリサは思わず目を細めた。ひょぅ、と細長いため息のような風が首を撫でる。
 なんだか、変だ。
 次元震、だったか、あの地震で転びそうになったのを抱き止めて助けてくれた時点で既に変だったが、そのまま対話を望む姿勢になっている。問答無用で握られた手を握り潰されるくらいされると思っていた。
 少なくとも敵対の意志は向けられていない、そのように感じられた。もちろん、それは今のところはと頭に付ける必要があるだろう。
 一度つばを飲み込み喉を鳴らす。
「謝るの」
 嘘を言う必要も、誤魔化す必要も、そして言葉を飾る必要もなく、単純に本心を口にした。
 謝る。
 会って謝る。
 ただ、それだけだった。
「化け物だと、そう言ったのをか?」
「……うん」
「縁を拒絶しておいて、いまさらか?」
「…………」
 冷たい目で、抉る言葉は随分と的確であった。
 いや、悪いのはもとよりアリサの方である。今更謝るとか、虫の良い話だというのは重々に承知してもいる。
「それとも、友達ではないと言って縁を泣かせたことを謝るのか?」
「それ、は……」
「謝って、それで済むのか?」
 きゅっと下唇を噛む。
 知っている。分かっている。自分が取り返しのつかない馬鹿なことを何度も行い、それで縁を深く傷つけていることくらい。
 自分勝手な理由で縁を拒絶して、自分勝手な理由で傷つけて、そして今もまた自分勝手な理由で会いに行こうとしている。最低なのは、知っている。分かっている。
 だが、それでも。
「だからって、それが謝らなくてもいい理由になんか、ならないわよ」
 それでも、アステマをまっすぐ見返し、はっきりと返した。
「悪いことしたら謝るべきだって、縁に教えたのはあなたでしょ?」
 アステマの目が、少しだけ大きく見開かれた。驚いた、のだろうか。
 以前、縁が言っていたことだ。
 教授が言っていたと、そう口にして。
 悔しいことに、アステマが縁に教えたことの中では一番良い言葉だった。
「それ、凄く良いことだと思うの。そして凄く難しいことだって思う。悪いことしたら、やっぱり怖いもの、会うの」
 酷いことを沢山した。酷いことを沢山言った。自分を守る、ただその為だけに。そしてその分だけ縁を傷つけた。その事実は変わらない。謝って、それで全てが終わるなんて話ではない。
 それでも、謝る。謝りたい。
 それがアリサの本心であった。
 会うのは怖い。そんな部分は、確かにある。
 それでも今は、縁に会いたいという気持ちの方が上回っている。
 ふっと、アステマの口元が僅かながらにつり上がった。笑っているつもりなのかもしれない。
「そうか、縁はそんなことまで覚えていたのか」
 呟くように、アステマの口からそんな一言が漏れる。苦笑いだったのかもしれない。
 だが、その表情は一瞬のことであり、アステマはすぐに無表情に近いそれに戻ってしまう。
「なら、その後はどうする?」
 続けられた質問に、アリサは言葉が詰まってしまう。
 正直に言って、何も考えていない。いや、考えても仕方のないことだと、あえて何も考えないようにしていたことだった。
 今更自分一人がのこのこ出てきて、それで何もかも解決するなんて自惚れているわけでもないし、魔法が飛び交うこの中で、何の力も持たない自分がいたところで事態を動かせるとは思ってもいない。アリサは、自分勝手で飛び込んだ、一般人に過ぎないのだ。
 それに縁に謝って、それを受け入れてくれるとは思えない。どのように反応を示すか想像もできない。
 縁が今、どんな感じなのか、想像することしかできないからだ。
 言葉に詰まったアリサを見下ろしながら、アステマは小さくため息のように一息吐く。
「縁は今、引くことも止まることも許されないところまで来てしまっている。魔導師にとっては既に災害なような存在だ。このまま魔導師を殺し続けるか、殺すのを止めて縁自身が殺されるか、共存の道は既にない」
 淡々とした声色に、アリサの肩が思わず跳ねる。
 なのは達がオブラートに包んで扉越しに説明していたことを包み隠さずはっきりと繰り返しているだけなのに、心臓が止まりそうな感覚に襲われた。
 殺すか、殺されるか。
 縁と魔導師との関係は、既にそこまで悪化しているのだ。
 それは殺し続けた縁のせいか。いや、今まで止められなかったアリサのせいだ。
 奥歯を噛みしめる。遅すぎたのか。
 アリサの手を掴んだまま、アステマは続けて口を開いた。
「バニングス、お前は縁にどちらの道を選んでほしい?」
 過酷な質問であった。
 縁を庇うか。
 魔導師を庇うか。
 答えられなかった。
「ただ、どちらにせよ先は長くない」
 答えられないアリサに、矢継ぎ早にアステマが言葉を投げかけた。先程の質問は最初から答えられないと踏んでいたかのように。
 アリサが目を見開く。
 それとは逆に、アステマの目がすっと細くなる。
「魔導師殺しを止めれば、すぐに魔導師に殺される。このまま魔導師を殺し続けても、魔導師を殺し尽くす前に縁は殺される。縁が生きる期間が延びて……半年がいい線だろう」
「半……年?」
 すぐ死ぬか。
 半年だけ生き延びるか。
 改めて突きつけてきた選択肢に、アリサはかすれた声でオウム返しに呟くしかなかった。
 縁だって生物である以上、不老不死という訳ではない。もし仮に何者にも傷つけられない絶対無比の力があったとしたら、魔導師を滅ぼすのに半月もかかる訳がない。
「ただし、その間に縁は魔導師を殺し続けるぞ。人を殺し続ける。殺せる奴らがいなくなるまで、もはや殺し続けるしかない」
「…………」
 言葉が出なかった。
 魔導師とは、人だ。
 アリサにとって、それはなのはのことであり、フェイトのことであり、はやてのことである。
 魔導師としての姿をそこまで知っている訳ではないが、彼女たちの人となりは良く知っている。良い所ばかりの完璧な人格者ではなく、むしろ頑固だ漢字に弱いだの欠点やら悪い所を並べ挙げればそちらの方が多いんじゃないかなという、しかしそれぞれの優しさや温もりがある、生々しいまでのただの友人だ。人なのだ。
 良い人も悪い人もいる、十人十色で皆違う、人である。
 魔導師殺しとは、ただの人殺しに他ならない。
 縁は魔導師を殺している。あのフォンを、瞬く間にミンチに換えたあの行為を、縁は延々と続けているのだ。
 縁が、人を殺す。
 それは駄目だ。させたら駄目だ。もう手遅れだが、もう何もかも遅いのかもしれないが、それでもこれ以上縁に人を殺させては駄目だ。
 だが縁が人を殺すのを止めれば、縁は人に殺される。
 それも、駄目だ。
 それは、嫌だ。
 縁がいなくなるのは、嫌だ。
 答えの返せないアリサを見下ろしながら、アステマのゆっくりとアリサの手を離した。するりとアステマの手からアリサの手が落ちる。
 アリサはただ、アステマを見返している他に出来ない。
 そもそも自分に出来ることは。
 ――ない?
 ないのか?
 アステマが次に口を開くのと、アリサの中で浮かんだ自問は、アリサの自問の方が若干だけ早かった。アステマが次の言葉を口にしたのは、その次の瞬間だった。

「だが一つ、縁が生き延びられる道も、なくはない」

「……え?」
 ただ、アステマの口から出た言葉は、アリサの欲している答えの一つであった。
 先程半年だと言った言葉を、自ら翻すのか。いいや、“このまま” と頭につけていたはずだ。
「難しくはない。簡単と言えば簡単なことだ」
 間の抜けた声を漏らしたアリサの肩に、アステマが軽く手を置いた。
 その感情の読めない目でまっすぐアリサを見下ろして。

「私達の仲間になれ、バニングス」

 思考が、一瞬停止しかけた。
 仲間?
 私達?
 それはつまり、縁の仲間になれということだろうか。魔法も使えない一般人が仲間になって、それで一体どうやって縁が生き延びられるというのか。
「仲間、って」
「縁にとって、心残りはお前だ。お前がいるから縁は全力を出せないでいる」
 喉をつかえさせながらも返そうとするアリアの言葉を遮り、アステマが続ける。
 何だそれ、何だそれは。アリサは軽く頭が混乱する。
「……それは、なんで?」
「縁が全力を出してしまえば、お前の住む世界にも影響が出る。今の地震を強くしたような被害も含めてだ。それを縁は危惧している」
 あの変な地震のことか。先程の激しい揺れを思い出す。
 魔法によって世界の世界の間をワープして越えてこなければならないくらい、文字通り次元が違うほどに遠い世界にまで影響を与えられるというのか、縁は。
 軽く口にされた縁の実力に、アリサは呆然とする。
 それと同時に、アリサの心臓が一度だけ、強く鼓動した。
 その次元を越える地震とやらを縁が危惧しているというのは、縁がアリサの身を心配しているということに他ならない。つまり、縁はアリサを忘れていないということ。
 心臓が高鳴る。
 それは、安堵と、喜びと、そして恐怖によってだった。
 心配してくれるということは、縁にはまだ理性があるという安堵と。
 縁が自分のことを覚え、そして心配してくれたという喜びと。
 そして、純粋な恐怖だ。拒絶されるのではないか、嫌われるのではないかという、そんな恐怖とよく似ていた。
 だが待て、待ってくれ。
 それはおかしい。
 縁が全力を出せるということは、イコールして次元を越える地震を生み出せるほどのパワーまき散らせるということだ。そしてアリサが仲間になると言うならば、その次元を越える地震に巻き込まれる危険性は逆に跳ね上がるはずである。
「だが、お前が仲間となって私達の近くにいるならば、遠慮する必要もなくなる」
 いや、だから、近くにいる方が逆に危険だ。それで遠慮する必要がなくなるという答えが出るのはおかしい。
 もしくは危険に晒すのが目的か。
 アステマの言い分では、縁が全力を出せない最大の要因はアリサの存在であるならば、そのアリサという要因を排除してしまえばいいという考えで……いや、これもおかしい。アリサは即座に自分の考えを否定する。そんな手間の掛かる排除の仕方をする必要性はないからだ。排除するならばこの場で有無を言わさず殺すはずである。
 アステマの言っていることが、いまいち理解できない。
「仲間になっても、その危惧している状態が改善するとは思えないんだけど……」
「私達の誰かが側にいれば、対処は易い。もし一人であっても、対処の術を教える」
 対処の術?
 疑問符が頭に浮かぶ。
 魔法も使えない自分に、そんな魔法的要因であろう地震の対処など出来るはずないじゃないか。
 そう思い。

「魔法だ。バニングス、お前にはその素質が十分にある」

 ひゅっ、と息をのむ。
 前提条件を、覆しやがった。
「魔法の力と、縁が生き延びる道、その両方をくれてやる。だから」
 それは、かつて喉から手が出るほどに欲していたものと、今、喉から手が出るほどに欲しているもの、その両方だった。
 そうだ、クロノも言っていた。
 もしも自分が魔導師ならば、かなり凄い事になっていると。
 そしてクロノは魔導師になれないとは言わなかった。魔導師になる条件を満たしている可能性もあるのかな、くらいには思っていた。
 しかし、そんな急に、ひょいと魔法をくれてやろうと言われても。
 そして、縁が生き延びる道までくれてやろうと言われても。
 アステマの目から、アリサの目線がはずれた。
 アリサの視線が、落ちる。
 かた、かた、と身体が震える。
 いきなり、言われても。
 頭の中に浮かぶ言葉は、そんな陳腐な一言で。
 魔法が使えれば、あの地震を凌げる。
 あの地震を凌ぐ術があれば、縁と共にいられる。
 縁の側にいられる。
 縁の役に立てる。
 縁が生き延びることが出来る。
 それは、素敵なことじゃないか?
 そんな想いが、ふつふつと湧いてきた。
 軽く震えるアリサの肩に手を置いたまま、アステマが膝を折り、すっと膝立ちで腰を下ろした。そしてアリサの顔をのぞき込み、目を合わせてくる。
 目を合わせて会話をする縁の癖は、アステマ譲りなのだろう。そんな場違いなことをふと思う。
 合わされたアステマの目を、アリサは呆然としたまま見返す。いや、反らせない。
 アステマの目が、まるで縋るかのように、見えた。
 初めてアステマの感情が、見えた。
 アステマも、自分に来てほしいというのか。縁を傷つけた張本人であるのと理解してなお、来てほしいというのか。
 縁を、死なせたく、ないのか。
「私達と一緒に、来ないか?」
 ゆっくりと、だがはっきりと、アステマが声をかけてきた。
 何故か、息があがってくる。
 魔法。
 魔法の力。
 地球で普通に暮らしているだけでは、絶対に手に入らない力。
 非凡な力だ。
 そして、それを修得できれば、縁の側にいられる。縁が死なないで済む。
「そう、ね……」
 気がつけば、言葉が漏れていた。
 言葉を一度口から出すと、不思議と心の中の迷いというのが消える。
 非凡な力を貰い、それで縁の役に立てるなら。
 なのはや、フェイトや、はやてのような力を貰い、それで縁が生き延びられるなら。
 そう考えると、最初から悩む必要はなかった。
 この条件なら、アリサの出せる答えなど一つしかない。
 いつの間にか震えは止まり、アリサは一度だけ深呼吸をしてから、はっきりとした口調でアステマに返答を口にする。














「……お断りだわっ!」




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 あけましておめでとうございます。1日間に合わなかった。
 こんにちはこんばんは、読んでいる人によってはおはようございます、兎鍋が食べたいな!(最低) クロガネです。
 あ、あと、魔法×3の本編の後書きで 「あけおめ」 とか書くの、最後です。謹賀新年のあいさつを何回か書いている=何年かかってんだよ、という話ですが。


 「魔法の使えない魔法使いの魔法」 という物語において、絶対書きたかった、というかプロットの基礎となっている一つとして、アリサを魔法使いにしない、というのがあります。
 二転三転して初期プロットの面影すらない話ですが、その初期プロットからずっと生き続けている設定でもあります。
 魔法の使えない魔法使い=アリサ、という物語な訳でして、アリサが主人公だと言い張る理由の一つでもあります。
 最初はアンチ・バーニングアリサ的な、何とも根性曲がったところからスタートしたんですよ、この鬱暗い話。
 ミッドチルダ式な意味での魔法が使えなければ、本当にアリサは魔法世界で活躍できないのだろうか。魔法の杖がなければ、魔法の飛び交う物語の主人公は果たせないのか。それだけ書くと本当にクロガネはひねくれ者だなって感じです。
 まあ、結局のところなのは嬢達魔法組が活躍しているので、アリサは出番を喰われてますし、物語の前半は縁が主人公と言われるくらい主人公の立場を喰われていたわけですが。
 しかも魔法使いにならないと言いながら、念話は聞けるという矛盾も発生。念話聞こえなきゃ縁の言葉が分からないという事に、物語途中で気がついたという凡ミスで。
 意味ねぇ……

 この物語で書きたかったことは、ここで4割くらい終了。ここからが地獄だ、クロガネが。


 シャマル無双。
 活躍の場をあげたかったんです。うん。
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6件のコメント

[C716] フォースの暗黒面に落ちなかったアリサ

あけましておでめとうございます。

シャマル無双、違和感を感じなくもないけど4人で常に戦闘してきたんだから、こういう状況も偶にはあったんでしょうね。

縁は地球への影響を気にしてフルパワーを出せない状態だった……逆にいえばやろうと思えばいつでも「お前がよけたら地球はコナゴナだあああ!!」が出来たわけですね。

アリサとアステマ再び、このままなら別に縁が暴れ続けなくても残った世界同士でが勝手に争って滅びそうな予感もしますけどね。そういえばこの作品のタイトルは「 魔法の使えない魔法使いの魔法 」、主役のアリサが魔法使えちゃ駄目だという原則だった・・・・忘れてましたね(笑)
  • 2011-01-01
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C717] マグマに焼かれても黒マスクで再登場ですね、わかりません

○ミヅキさん
 あけましておめでとうございます。ウサギ鍋の年ですよ(゚∀゚)o彡゜
 シャマルについては、無くはないと思うのです。前線組とは違って後方待機の多いシャマルは、よほど前線大好きな戦闘狂の主でない限り、普通に後方で守られている書の主と行動を共にする確率が高く、そうならばシャマル自身が書の主を守る最終防衛ラインになるはずですし。4人しかヴォルケンリッターがいない以上、虚をついて前線組とは違う方から書の主を狙った場合、交戦するのは普通に考えてシャマルの仕事。
 アリサは一般人! でも主人公!

「考えたなちくしょう!!」←何も考えてない。
  • 2011-01-03
  • 投稿者 : クロガネ
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  • 2011-03-09
  • 投稿者 :
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[C719] 生存報告を…

前回更新から一年が経ちました。
前年は色々なことがありましたので、ぜひとも生存報告をと思います。
  • 2012-01-16
  • 投稿者 : オヤマ
  • URL
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[C720]

更新がないのが寂しいなあ。もしかして被災してたり?
  • 2012-01-30
  • 投稿者 :
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[C721] はじめまして

昨日と今日とで一気読みしました。この物語は前半と後半で雰囲気が物凄く違いますね。
どちらも大変面白かったですけど、昨日はアリサと縁のキスシーンまでで読むのを止めていたので、今日続きを読んでその後の展開に驚きました。
これからは糖分過多のいちゃラブ時空が始まるのかと思ったら、いきなり世界をまたいだ末期戦が始まりましたなんて、予想外にも程があります。
でも、思い返すと伏線はけっこうあちこちにあるんですね。
自分にはこの物語の結末がどうにも予想できません。いったいこの後どういった展開になっていくのか、更新を楽しみに待っています。
  • 2012-03-17
  • 投稿者 : コノスル
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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