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[C698] ヒーロー・ガンザ

ガンザ君。戦う度にかっこよくなりますね。
なのはを凌ぐヒーローへと駆け上れ!
…そのためにはバリアに皴いれたくらいじゃ駄目だぞ~。充分すごいけど…

ところで、誤字でしょうか?
>>「手土産を置いてやるから、とっとと帰りな!」
 そう言うと同時に、ガンザの足元に魔法陣が展開される。

自身にかける転送魔法ならばガンザの足元ではなく恋慈の足元に出現しそうなものですが。

それでは、失礼いたします。
  • 2010-10-31
  • 投稿者 : ノヴェール
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[C699] 大切なことなので2回ry

ですねわかります。

 >まっすぐ過ぎるのだ、根本的に。
 スターライトブレイカーもどきにしろ、ファランクスシフトもどきにしろ、そしてこの弾丸にしろ、魔法そのものの軌道は直線に過ぎない。確かに意味不明なレベルで射線が太いだの弾数が多いだの速いだのと厄介な性質はあるが、それに対処さえ誤ることがなければ決して回避不能な訳ではない。
 もちろん、長期戦になればいずれ撃墜されるだろうし、対処を誤り防御に回ればその時点でアウトなのは百も承知である。
 だが、絶望的な戦況に身を置くのは、ヴィータにとって初めてな事ではない。
 むしろ、リインフォースが闇の書と呼ばれていた頃は、その性質からいつもいつもいつもいつも絶望的な戦力差を相手にしていた。
 まっすぐ過ぎるのだ、根本的に。
 スターライトブレイカーもどきにしろ、ファランクスシフトもどきにしろ、そしてこの弾丸にしろ、魔法そのものの軌道は直線に過ぎない。確かに意味不明なレベルで射線が太いだの弾数が多いだの速いだのと厄介な性質はあるが、それに対処さえ誤ることがなければ決して回避不能な訳ではない。

ハンマーで銃に勝てるとかチートにも程があると考える近年です。ギガントとか質量どうなってry?
いやシグナムがファルケン射た後剣に戻したらパーツ足りなかったりしないんだろうかとか無駄な心配ばかりが・・・

とりあえず取り寄せ的な何かが働いた追加パーツ論を主張してみます。

それはハンマーというにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった。(ベルセルクより)
  • 2010-11-01
  • 投稿者 : なまざかな
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[C700] 相変わらず誤字酷いクロガネです

 ここまでくるといっそネタ。

○ノヴェールさん
 実戦に勝る訓練なし。
 実を言うと、ガンザ君はそこまで活躍する役ではなかったはずなのですが、気がついたら他のキャラから役を奪いに奪ってのし上がっているという不思議なことに。どうしてこうなった。
 誤字です。完璧な誤字です。ありがとうございましたー。

○なまざかなさん
 大事なことなので2回言いま(ry うん、誤字です。凄まじい誤字です。首吊りたい。どうしてこうなった。指摘ありがとうございますー。
 質量、どうなってんでしょう。むしろギガントが標準質量で、ラケーテンやハンマー、そして待機形態まで全部その質量だったりして。ギガントフォルムと同質量のペンダントをぶら下げる幼女……
 クロガネ的にはあれです、スクライドのアルターみたいなのを主張(ry
  • 2010-11-01
  • 投稿者 : クロガネ
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[C701] アリサ「分の悪い賭けは嫌いじゃないわ」

縁暴走中……?
ガンザは順調に死亡フラグが……
しかし綺麗に立ててくなぁ
最期はなんか吸収されそうだ





今回のブラストアリサ

管理局が崩壊し新たな組織が発足され十年

かつての少女達は大人となりそれぞれの道を歩いていた

しかし確認されたかつての悪夢――ドールタイプ

それは再びミッドチルダを混沌へと導く序曲だった


「私はもう後悔だけはしたくないから……」

傷つき贖罪を選びし雷光
フェイト・T・ハラオウン


「私はあんたが憎い。ヴィータを再起不能にしたあんたが憎いんや」

夜天より堕ちし王
八神はやて


「ヴィータの無念……晴らさせてもらう」

残されし最後の群雲の騎士
シグナム


「アリサちゃん……なのはちゃん……もう止まれないんだね」

宵闇にて見守る者
月村すずか


「にゃはは……もう私も縁ちゃんと同じ。十年前にアレを使った時から蝕まれて今じゃすっかり縁ちゃんと同じになっちゃった」

唯一の同族へとなり果てたエース
高町なのは


「あんたの意志は聞いちゃいないのよ。あたしがあんたを連れて行く。それは世界が決めた絶対意志なんだから」

持たざる者を極めた者
アリサ・バニングス


そして十年前の管理局崩壊を担った者と出会うとき全てが加速する




魔法少女ブラストアリサ
20006年始まりませぬ


――――また会えたねアンス



爆炎が導く未来を刮目せよ
  • 2010-11-04
  • 投稿者 : ルファイト
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[C702] 撃ち貫くのみ

○ルファイトさん
 あと18000年後か、長いなぁ。そしてヴィータがほぼ死んだことになっている件。
 ……オリキャラって、後腐れなく退場できますよね(ボソ
  • 2010-11-04
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 67

第11章――第5節
――降り立った地―――

 ガンザを鍛えた悪魔の教官殿の得意魔法。
 それを見よう見真似で模倣し、そして自分の適性に無理矢理押し固めたのがディバインバスター、そのヴァリエーションNO.08。ちなみに01~07は全て失敗作である。
 ガンザの力量では教官殿のように膨大な魔力を高出力で叩き付けるという荒業はまず不可能なので、破壊力やら射程やら射撃効果範囲やら有効範囲やらいろいろな物を犠牲にして速度と貫通力に特化させた、はっきり言ってディバインバスターの名前だけ借りた全く別の魔法になっている。
 射撃効果範囲を極限にまで絞り込んだせいで、撃ち出される砲撃は糸のように細い物だが、貫通力は教官殿お墨付きである。なにせその教官殿のバリアに小さいとは言え皹を1本いれさせるだけの貫通性能を誇っている。この例えではショボい気もするが、鉄壁の要塞の異名を持つ教官殿のバリアに皹をいれると言うのは訓練生としては偉業とも言える。





 まるでそこは、竜巻か何かの災害にでも巻き込まれたんじゃないかと思わせる、そんな酷い光景であった。グロ的な意味ではなく、自然破壊的な意味で酷い光景だ。
 樹齢二桁では足りないような樹々が折り重なるように倒れている。暴風などで折られてしまった訳ではなく、倒れた樹の根本の方は滑らかな切断面を覗かせている。明らかに人工的に伐採した跡であった。
 更に言えば、広大な樹林の地、円を描くようにそこだけが惨状を繰り広げている。
 酷い光景と同時に、それは妙な光景でもあった。
 樹々は倒れたばかりなのだろう、宙を舞う木の葉と、樹から剥がれた粉が辺りを舞っている。また、巨大な樹ばかりが覆い茂り、本来ならば日の光が射し込まぬ地に樹々が倒れたせいで光が射し込んでおり、余所と比べて明るい。
 静寂であれば、それはある程度様になったかもしれない。

「げほっ! ごふほっ! ごほっ、ごほっ、んにゃろ! 邪魔だゴラァァァァァッ!!」

 響き渡るは男の声と、耳を貫くような轟音の銃声。
 ぼこっ、ぼこっ、とその銃声に連動し、倒れた樹の一部が脈を打つかのように震えていた。
 更に銃声が鳴り響く。
 震えていた樹が跳ね始め、そしてついに樹が盛大な銃声と共に空へと吹き飛びあがった。
 空に舞い上がった巨大な樹。大の大人何十人分もの質量を持ったそれが吹き飛ぶというのも、これもまた妙な光景であった。
 直後、樹の真下からロケット弾が撃ち上げられた。
 倒れた樹々の間からとび出したロケット弾は、そのまま空を舞い上がっていた樹を直撃、爆破。
 木っ端微塵に粉砕された樹の破片が、一気に辺りに散らばる。
 大きめの破片が落下し、樹を叩いてこつんこつんとノックの音が響き渡る。
 数秒待つと、そのノックの音も止んでくる。落ちる破片はだいたい落ちたのだ。あとは落ちずに空中を浮遊する細かな粉末ばかりである。
 それを待っていたかのように、吹き飛んだ樹の跡、必死で開けた脱出口からひょっこりと日焼けした一人の男が顔を出す。肩に物騒な代物を担いで。
 RPGと言えば、普通ならば何を思いつくだろうか。
 竜のクエストやらファイナルな幻想やら、そんな冒険と探検の世界を歩くロールプレイングゲームの方を思いつくのではなかろうか。
 RPGと言えば、異常ならば何を思いつくだろうか。
 非常に残念なことに、本当に色々と残念な男ならば間違いなくこう答えるだろう。
 それは携帯対戦車グレネードランチャーだ、と。
 ロールプレイングゲームの頭文字と同じ名前をしたロケットランチャーを担いだ男、恋慈は顔だけ出したままぐるりと辺りを一度見渡した。
 周りに何もないことを確認してから、恋慈はRPG-29をカードに戻してごそごそとその場から這い上がる。
 切り倒された樹々。ガンザの変化球第何号だった、そんなふざけた名前の魔法でまるっと切り倒された。名前こそ不真面目な感じで、見た目の華やかさや射撃線の大きさこそないが、その威力そのものは確かであった。
 倒れた樹の上に立ち、ごほごほと数回ムセ込みながらも恋慈はポケットよりカードを引き抜く。
「なるほどな、地形を上手く利用したって事か」
 少しだけいがらっぽい喉をならすように咳払いをしつつ、小さく呟いた。
 カードを展開。
 出現したのはスウェーデン産まれの84mm無反動砲、カールグスタフ。
 ガンザとの戦闘中、榴弾などのミサイルやロケット弾丸をまるで選択しなかった。無意識であった。
 覆い茂る樹々とその枝、それらが支配する空間で接触式のグレネードランチャー等、爆発系統のは自爆のリスクが高いのだ。ガンザはそれを逆手に取ったのか、忌々しい。
 空間内に大量にある足場は、同時に恋慈に爆発系統の武器を牽制する役割もあった。猿の如く跳び回れるガンザとの相性が非常によいフィールドだ。
 広範囲に爆発を起こせるミサイルならば、いくら危険察知が出来ようと問答無用で吹き飛ばさせたのに。
 軽く舌を打ちつつ、恋慈は周りを見渡してガンザの姿を探す。
 見当たらない。樹が薙ぎ倒された範囲には居ないようだ。ガンザはその範囲のど真ん中にいたのだが。
「……おーい、ガンザ君やーい」
 返事などあるはずないだろうとは分かっているが、それでも恋慈は名前を呼びながら周囲を警戒する。
 カールグスタフは右肩に構え、左手で別のカードを引き抜いて即座に展開、細長い筒で構成されたような半分おもちゃにも見える、一昔前ならば持っているだけでナチス・ドイツの証、MP40である。
 ガンザがすでに転送でもして逃げているならそれで構わないのだが、樹が薙ぎ倒された範囲の外、まだ無事な樹の所で狙撃の準備をしていたら厄介だ。こちらからガンザは見つけ難いが、向こうからは恋慈の姿など丸見えだ。
 こちらも樹林の中に突入するか。
 だとしたら、カールグスタフは使えなくなる。いや、使用不能になる訳ではないのだが、自爆の可能性を考えるとやはり使わない方がいい。
 だとしたら手榴弾でもバラ撒くか。
 爆風、爆炎、爆音、そんなものが周囲を占領して視界と音を悪くしていたら、それこそ狙撃などの察知が遅れてしまう。最悪の場合、気がつく事なく殺傷設定のヘッドショットを頂くかもしれない。
 いっそのこと、周囲を焼き払うか。
 こっちも蒸し焼きにされるか酸欠で倒れるか、二者択一の未来しか想像できない。
 この周囲のドールタイプは……先程呼び寄せ、そして樹と一緒に皆落ちて、そして埋まっている。
 ああ、そうか、ガンザはそれすら狙っていたのかもしれない。ドールタイプで取り囲んだ途端に、詰みだと宣言していたし。ドールタイプで取り囲んで一斉射撃で弾幕を張るのは、そう言えばガンザに一度行った手でもあった。相手の手の内を忘れるなと忠告したのは、ちょっと塩を贈りすぎた行為だっただろうか。
 うーん、と恋慈は一度唸る。
 安全を考えたら、樹林の方へと駆け込むのが良いだろう。
 だが、それからガンザを殺す手段は限られる。ドールタイプを呼び寄せても同じ目にあって終了だ。地面の方に配備しても、それを越えられたら意味がない。
 後はもう、グスタフ列車砲で圧殺するしか。
 ほとんど、それで決まりの意見である。
 あれは疲れるから嫌なんだけどなぁ、と呟きながら、恋慈は出したばかりのMP40をカードに戻そうとし。

 ぴた、と、止まる。

「ん、クロノ・ハラオウン? 真打ちって事か?」
 MP40をカードに戻すことなく、恋慈は上を向きつつぽつりと呟く。
 警戒網に見覚えのある少年が引っ掛かったのだ。
 ここからは遠い。
 そして、縁にかなり近い。
 時間稼ぎに付き合い過ぎたか。心の中で溜息を一つ、MP40を持ったまま頭をぼりぼりと掻きむしる。
 まぁ、クロノ一人なら別に驚異は感じないのだが。
「アリサちゃんか……」
 少しに苦い表情で、その名を口にした。
 恋慈の中で、アリサの評価というのはとても奇妙なものである。
 縁の最初の友達という点では、それはとても感謝している。アリサと仲良くなってから縁は凄く明るくなったし、魔導師魔導師と言うことも少なくなった。とても人間らしくなったのだ。
 だが、縁を深く傷つけたのは、間違いなくアリサのせいである。
 そして、今でもなお、縁の心に住んでいる、そんな少女。
 縁の所へ行かせるのは、危険か。
 小さく、とても小さく恋慈は鼻を鳴らした。
『教授。おい教授』
 もう一人の共犯者、アステマに念話を飛ばすのだが、いくら待っても返事がない。ジャミングをかけられているような気配はなく、意図的に無視されているような感じだ。
 もしくは死んだか。アステマに限ってそれは逆に至難の業過ぎるだろう。
 どうするか、など考えるまでもない。
 すぅ、と恋慈は大きく息を吸う。

「悪いがガンザ君! ちと付き合えない用事が出来た!!」

 宣言するようにそう大きな声を張り上げる。返事は期待のきの字もしちゃいない。
 そして、その宣言と同時に展開したばかりであったカールグスタフとMP40をカードに戻し、即座に別のカードをポケットから引き抜いて――地面の上に “投げ捨てる”。
「手土産を置いてやるから、とっとと帰りな!」
 そう言うと同時に、恋慈の足元に魔法陣が展開される。
 三角、四角、五角、六角、円にミミズが痙攣でも起こしたかのような象形文字。縁と同じ魔法陣である。
 すぅ、と恋慈は目を閉じる。
 完全に無防備な姿であった。
 しかし、ガンザからの攻撃が襲い掛かってくる気配はない。攻撃を加えるならば今が一番絶好のチャンスであるのは誰の目にも明らかであるのにだ。
 縁の魔法を構築するのに苦労しながらも、恋慈はその魔法を20秒ほど掛かってようやく完成させる。
「逃げたのかね……ま、それならそれに超した事ねぇんだけど」
 呟きつつ、恋慈はぱちんと指を鳴らす。
 すると、地面に投げ捨てたカードが光り、展開する。
「悪ぃな教授、やっぱ使うぜ――おいガンザ君! いるなら聞いとけ、10秒だっ!!」
 言葉後半は先と同じく高らかに宣言して

 恋慈の姿は、魔法陣と共に忽然として姿を消した。

 転送の魔法である。
 恋慈がこの場からいなくなり、樹林に静寂が舞い降りる。
 彼の残した兵器を一つ、置き去りにして。
 それは鉄で出来た巨大な樽のような形をしていた。
 もちろん樽ではない。
 はっきり言って、爆弾である。
 それも、4500kgを超える大型の。

 ブルー・ダニューブ、美しく青きドナウと名のつけられた、核爆弾である。

 最悪の置き土産。
 イギリス製のそれは、通常でも12ktの核出力があり、この樹林を全て吹き飛ばしてお釣りの方が多いくらいだ。
 10秒。
 恋慈の言ったカウントダウン。
 それはすなわち。












 核兵器は、悲惨だからな。
 その言葉通りの惨状が、起きた。












 圧倒的な力による殺戮に対して、僅かな力で必死に凌いでまわるそれは、もはや蹂躙と呼ぶのが最もふさわしい光景であった。
 腕を四本とも失っても、縁の反則級の火力は微塵にも揺らぎない。
 対し、なのはは身体の損傷を抱えて魔力が半ば枯渇、フェイトは半壊した相棒に極度の疲労。
 勝負など、ハナから成立しない状況だった。 
 二人は。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!」

「うる、せぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 空に響く低く重い不気味な絶叫に、鋭い罵声が即座に返される。
 四本の腕を消失してもなお不気味なその姿の縁の眼前に、巨大な魔法陣が展開される。だがその複雑怪奇の魔法陣が展開されたのはたったの一瞬、瞬き一つも許さぬ短い時間、その直後には魔法陣のあった箇所より魔力砲が撃ち出されていた。
 巨大な、いっそ冗談のように巨大な砲撃。並のビルなど3つ縦に積んでも丸ごと飲み込む直径でありながら、その魔力の密度は魔導師が十年掛けて溜め込んだような高出力。そんな死しか連想できないような砲撃が、超高速で空を薙ぎ払い雲を全て吹き飛ばす。

 その砲撃とすれ違うように、真っ赤な弾丸が縁目掛けて一気に突っ込んで行く。

「ぶっ叩くぞ、アイゼンッ!!」
(( Tödlichschlag!))
 砲撃により無防備になった縁へと超高速で肉薄し、その速度のまま手にしたハンマーを振り抜く少女の姿。
 ヴォルケンリッター、八神はやての騎士ヴィータである。
 縁の顔面を容赦なく狙いすました痛烈な一撃は、一瞬で展開されたシールドに阻まれる。だが、しかし。
「芸がねぇんだよっ!」
 シールドごと、縁を弾きとばす。
 バリアブレイクの理論を応用した技術である。防御壁を破らず、その上から殴りとばす、たったそれだけの一撃だ。
 シンプルな技は、シールドを破ったりと小器用な操作が必要な技よりも効果がはっきりと現れる。
 軽く見積もっても7~8mはシールドごと縁の身体がふっとばされる。されるが、縁も即座に体制を立て直し。
 ヴィータを取り囲むようにして、その周囲に大量の雷をまとったスフィアが出現した。
「アアアアアアアアアアアアッ!!」
 空に轟く叫びとともに、そのスフィアからヴィータめがけて一斉に雷撃の槍が発射される。
 全方位からの飽和射撃。普通ならば避けるも防ぐも出来る訳がない。
 もちろん、普通の者がヴォルケンリッターを名乗れるはずもないのだが。
 プラズマランサーが襲いかかる寸前、ヴィータの身体が蜃気楼の如くぶれる。
 直後、殺到したプラズマランサーにより強烈な爆発。帯電した煙と焦げ付く臭いの炎が吹き荒れ。
「おらよっ!!」
 真下から真紅の来襲。
 プラズマランサーの群のど真ん中にいたはずのヴィータが、当然の如くグラーフアイゼンを振るってきた。怪我どころかその騎士甲冑に少しの汚れも見当たらない。
 痛烈な一撃を叩き込もうとしたそれは、シールドに阻まれ防がれる。完全な不意打ちでさえも、気づかれ、そして防がれる。ヴィータの口元が好戦的な笑みになって止まらない。
 シグナムではないが、出会いさえ違って、その黒い感情さえなければ、好手敵に間違いはない相手だ。技術云々では比べるまでもなく格下で、スペックそのものは圧倒的に上の存在なのだ。戦う技術さえ磨けば、ヴォルケンリッター全員で挑んでも倒すは不可能な領域の相手。血が騒いで仕方がない。
 笑みを浮かべながらも、ヴィータはシールドごと縁を弾こうとグラーフアイゼンに力を込める。
 と。
「ガ、アアッ!」
 突如としてシールドが消失。
「んあっ!?」
 いきなり無くなったシールドのせいで、思いっきりグラーフアイゼンが空振った。微妙に足の位置をずらしたせいで縁に掠りもせず、見事な大振りである。
 空振りして体勢を崩したヴィータを踏みつけるかのように、縁のその図太い脚が振り下ろされる。
 だが、それはヴィータにとって予想の範疇である。
 空振りしたグラーフアイゼンを中途半端に止めることなく、むしろそのまま勢いをつけて回転。反転した速度のまま踏みつけんと下ろされる縁の脚の丁度膝の裏へと踵蹴りを打ち込んだ。
 ぬちゃりとした粘液の感触と、鋼のように堅い感触。その両方を踵に感じつつ、打ち込んだそこを支点にして一気に自身の身体を反らす。
 膝の裏を蹴られたせいで、脚を振り下ろすタイミングがずれた。
 縁の脚はヴィータの左肩を僅かに掠めた程度。
 程度だが、たったそれだけでヴィータの騎士甲冑の一部が弾ける。
 それを気に止めることなく、ヴィータは回転した勢いを止めずに二撃目を容赦なく縁の頭へと叩き込み。

 鋼と鋼を打ち合わせたかの如く甲高く鋭い音。

 グラーフアイゼンが、その長い縁の側頭部を捉えていた。
「うらああああああっ!!」
 まさに名前の通り、痛烈な一撃。
 不自然に縁の首が一瞬曲がったかと思うと、次の瞬間にはその不気味な身体がきり揉み回転をしつつ弾き飛んでいく。
 一撃は間違いなく入った。だが致命傷ではない。
 即座にヴィータは弾き飛んだ縁へ追撃をかける。
「やっぱり、極端なクロスレンジにゃシールドは張れねぇかっ!」
 口元の笑みをそのまま、真紅の弾丸となって縁に迫る。
 縁の身体が空中でぴたりと止まる。不自然なまでの急停止だった。
 トンボの複眼に似た縁のその目が、いいや、その視線が、ヴィータの方へと向く。眼球という概念とはまるで違うレンズの目ではあるが、少なくともヴィータにはそう感じた。
 そう感じたとともに、右肩を軸にして左肩を上昇。ロールを行う動作に入り。
 次の瞬間、左手があった場所で唐突に爆発が起きる。
 爆発の直撃こそしてないが、その爆風に煽られてヴィータの身体がその場から飛ばされた。と、更に爆発が起こる。爆風に煽られる直前までヴィータの顔があったその位置に。
 その爆発を、口元こそ笑っているものの冷静な目で見やる。少したりともヴィータの顔に焦りの色は浮かんでいない。
 赤く彩られたヴィータのブーツを、魔力で出来た渦巻きが包み込む。それと同時に爆風に煽られて飛ばされていたヴィータの身体に急ブレーキがかけられる。
 瞬き一つ分遅れ、吹き飛ばされていたその遠方上が突如として爆発する。停止してなければ直撃を喰らっていたはずであった。
「……っと」
 軽い呟きとともに、魔力の渦巻きに包まれた脚をクロールの要領で蹴る。すると、強力な推進力を得たヴィータの身体が一気に縁へと向かい。
 その後ろで更に爆発。
 真後ろで起きた爆風をも利用してヴィータの身体が加速する。
 へっ、とヴィータが小さく鼻で笑った。
 これは随分と、避け易い。
 殺気の向かう位置が爆発の位置ならば、ヴィータからすればこれ程に避けやすい攻撃はなかった。
 ベルカ式の真骨頂は近接戦闘である。だから、相手の懐に潜り込むまでの技術はミッドチルダ式なんぞ目ではない。接近戦を得意とするミッドチルダ式魔導師のマニューバは、ヴィータからすれば子供のマニューバにしか見えなかった。
 それに伊達に永く戦場に身を置いていた訳ではないのだ。超長距離からの砲撃、オールレンジからの集中砲火、50m範囲の飽和射撃、一対圧倒的多数の包囲戦、どれもヴィータは幾度と経験し、そして大半を生き残っている。成功も失敗も全てが糧としてヴィータの中に根付いている。
 場数が違う。
 経験が違う。
 そして縁は素人だ。その圧倒的なスペックで相手を一方的に虐殺するしか知らないド素人だ。
 どんなに無茶苦茶な相手でも、そんな縁は一人であることに変わりがない。
 ベルカ式の真骨頂は近接戦闘である。
 だから言う。あえて言う。
 ベルカの騎士は。

「1対1で、負けはねぇ!!」













「レイジングハート!」
 ぱちんっと指を鳴らすと、その呼び声と音に導かれるように赤の玉が飛んできた。
 それを右手で受け止め、そのまま流れるように空へと翳す。
「セットアップ!」
(( All right. stand by ready. set up))
 聞き慣れたいつもの声とともに、レイジングハートは即座に待機形態である宝石から姿を変える。高町なのはの愛杖、その姿へと。
 展開したレイジングハートを右手で掴むと、しっかりとしたいつもの頼れる感覚。少しだけその感覚にほっとしつつ、見える片目をレイジングハートへと向ける。
「レイジングハート、大丈夫?」
(( No problem))
 はっきりと答えるレイジングハートは、見たところ傷がない。強化外装は空気の膨張と圧縮を肌で体感できる程盛大に爆発したのに、傷一つ見あたらないとかどういう事だろう。レイジングハートをセットした部分はボックス化されていて、かなり頑丈に出来ていたという事か。
 レイジングハートの返答に苦笑を返すなのはもまた、その盛大な爆発をほぼゼロ距離で喰らっているので同類である。
 類は友を呼ぶのか。そんなさらりと酷い感想を胸に抱きつつ、隣に立つフェイトも同じく己の相棒であるバルディッシュへと視線を落とす。
 ひび割れた外装、漏電する魔力。ほぼ半壊である。
「……バルディッシュ」
 小さく呼びかけると、コアとなっている宝石が数回光る。それが返答なのか。
 もしかして結構ダメージが中枢まで届いているのだろうかと、そんな不安がふつふつと沸いてくる。
 嫌な汗をじわりとかきながらバルディッシュを強く握りしめると、バチッ、とヒビから電気に変換された魔力が漏れた。おいおい。
 と、ヒビから魔力光が一気に漏れだした。
「ちょっ!?」
 突然の発光に思いっきりフェイトの腰が引け。

(( Recovery complete))

 渋いそんな一言とともに、新品の如くなったバルディッシュが現れた。
 ぽかん、とフェイトは数瞬呆けてしまう。
「……あ、自己修復可能だったんだ」
(( Yes sir))
 ぽつりと漏らしたフェイトのそれに、しれっとバルディッシュは渋い声で返してくる。
 漏電とかは内部の自己修復中だったのか。
 本当に心配したよ、と小さくフェイトは呟くと、バルディッシュは再び数回コアを光らせて答えるだけに止めた。
「フェイトちゃん」
 その呼びかけに、フェイトは振り向く。
 隻眼のなのは。
 分かってはいるのだが、ひゅっと息を呑んでしまう。顔に血糊がついているというのは、こうまでインパクトがあるものなのか。
 そんなフェイトの胸の内を知ってか知らずか、なのはは少しだけ間を置いてから口を開く。
「いける?」
 愚問だった。
「いくよ」












 グラーフアイゼンで強靱な縁のシールドを強かに殴りつけると、シールドを破りこそ出来ないものの、そのシールドごと縁が弾き飛ばされる。やはり障害物のない空ではただのピンボールにしかならないなと、そう眉を寄せながらもヴィータは即座に縁を追撃。距離を離す気は一切無い。。
 弾き飛ばされた縁は、体勢を立て直すよりも先に周囲に大量の魔力弾を生成。ぱっと見て数えると30くらいか。膨大な魔力量を無理矢理圧縮したような魔力弾は、一つだけでもヴィータの魔力総量並にあるだろう。
 直後、その生成されたばかりの魔力弾が一斉にヴィータへと牙を剥いた。
 初速3m地点で亜音速。5mで既に超音速。そんな弾丸が30発、ヴィータめがけて殺到する、が。
「へっ」
 鼻で一笑。
 そんな攻撃が来ることくらい予測していたかのように、高速移動でのバレルロールを行う。
 全弾が全弾、ヴィータを掠めるだけで当たりもしない。
 まっすぐ過ぎるのだ、根本的に。
 スターライトブレイカーもどきにしろ、ファランクスシフトもどきにしろ、そしてこの弾丸にしろ、魔法そのものの軌道は直線に過ぎない。確かに意味不明なレベルで射線が太いだの弾数が多いだの速いだのと厄介な性質はあるが、それに対処さえ誤ることがなければ決して回避不能な訳ではない。
 もちろん、長期戦になればいずれ撃墜されるだろうし、対処を誤り防御に回ればその時点でアウトなのは百も承知である。
 だが、絶望的な戦況に身を置くのは、ヴィータにとって初めてな事ではない。むしろ、リインフォースが闇の書と呼ばれていた頃は、その性質からいつもいつもいつもいつも絶望的な戦力差を相手にしていた。
 ヴォルケンリッターは、たったの四人で幾度も書を完成させた。言い表せば一言で済むが、その経験は一言で語れはしない。
 経験が違う。
 スペック差が何だというのか。力の差でこの世の全てが決まるなら、病原菌で死ぬ奴は誰一人としていなくなってるはずだ。
 不幸自慢で駄々をこねるクソガキとは、場数が違うのだ。
 縁が吼えた。
 腹の底に響くようなその声で。
 苦しいと、寂しいと、痛いと、悲しいと。
 知ったことではない。
「うっせーんだよ!」
 展開されたシールドを、思いっきりブン殴る。
 ヴォルケンリッターはそもそもあまり器用な存在ではない。戦うことが存在意義であるに等しいし、その為に生まれたと言っても過言ではない。ヴォルケンリッターの中で一番器用なのがシャマルである。不器用さについては察してほしい。
 不器用だから、戦う相手に同情はしない。
 不器用だから、戦う相手に手心を加えない。
 するんなら最初から戦わない。そんな馬鹿の四人組である。いや五人か。
 確かに縁は不幸な奴である。知ったことではない。生い立ちが自分達と被っているところも多々ある。知ったことではない。全世界の魔導師に復讐したい気持ちも分からんでもない。知ったことではない。
 こちらが戦うと決め、相手が戦うと構えた時点で、相手の事情など知ったことではないのだ。
 相手がどんな事情を背負おうが、八神はやての騎士であると誓った信念は揺るぎもしない。
 弾き飛ばされた縁が、その大きな口をがばりと開く。覗く牙が生々しくて嫌すぎる。
「アアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 響き渡るそれとともに、縁の周りに大量のスフィアが出現。コンマ数秒という一瞬後、空間を埋め尽くさんばかりにプラズマランサーがヴィータめがけて撃ち出された。
 予測済みである。
 その時点で既にヴィータはその場にいない。高速移動の魔法をフル活用し、プラズマランサーが撃ち出された頃には既に縁の遙か上空。伊達にフェイトを見ていない。
 巨大な複眼は上の視界までしっかり確保されているらしく、すぐに縁の顔が向けられる。こっち見んな。
「ガアアアアアアアッ!!」
「これでも喰ってろっ!」
(( Schwalbefliegen!))
 縁が吼えるとほぼ同時、ヴィータはいつの間にか手のひらに出現させていた金属球を縁めがけてグラーフアイゼンで打ち出す。その軌道は一直線。
 即座に縁はシールドを展開。赤い光に包まれた金属球は高速で突っ込んでくるが、縁がシールドを展開する方が圧倒的に速い。
 シールドを強かに弾が打ちつける。
 直後、爆発。縁の周囲を真っ黒な煙幕が包み込んだ。
 相手の “目” を潰すのは、格上相手の戦いでは基本である。
 続いて高速移動の魔法を己に掛け直す。足に巻き付く魔力の渦が一回り大きくなったのを確認すると、迷う事なく縁へと弧を描くようにしてヴィータは突っ込んだ。
 煙幕から超高速の魔力弾が無茶苦茶に撃ち出される。その全てが見当違いの方向だ。
 目は良いが、視界を奪われると極端に弱い。
 魔力で察知するという技術が縁にできるかどうかは知らないが、冷静さを欠いている現状でできると思えない。出来るなら誘導弾を使うとか戦術を工夫するとかをとっくにしているはずであろうに。
 そして、ヴィータからすれば縁の位置など目を瞑っていても分かってしまう。冗談のようなその魔力量が仇である。
 煙幕の中に突っ込むと同時、視界ゼロにも関わらずヴィータはグラーフアイゼンを振るった。
 手応えあり。
「ギッ」
 しかも縁本体に。
 シールドを殴るつもりで振るったので、幸運だと言うべきか。
 縁を真下にたたき落とし、ヴィータは即座に左回りに大きく弧を描くよう追撃をかける。
 予想通りと言うべきか、ヴィータの居たその位置を狙ってスターライトブレイカーもどきの砲撃が撃ち込まれたが、遅い遅い。煙幕全てを飲み込むほどの極太砲撃も、来ると分かっていれば避けるのは簡単だ。
 洒落にならない魔力の奔流を横目に、ヴィータは怯まずに突っ込む。
 近づいてブン殴る。そのスタンスがベルカである。
 シールドではなく縁自体をグラーフアイゼンで殴ったはずだが、腕を消失した以外に縁にダメージは特に見受けられない。あの皮膚は何だ、金属製だとでも言うのだろうか。だが内部にダメージが貫通しているのは間違いないだろう。
 手っとり早くあの複眼か関節を狙うべきか。それとも生物である以上内蔵にダメージを蓄積させるべきか。
 選択肢は頭の中で二つ上がったが、悩むこともなく後者を選択。シールドに阻まれないのが希である以上、狙い所を絞って手数を減らすのは愚の骨頂だ。とにかく殴る。シンプルで良いじゃないか。

 と、遠目に金の輝き。

 縁のプラズマランサーより、強い輝きは。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 フェイトだ。
 気合い十分でも魔力が十分じゃないはずなのに。
 フェイトよりも先にヴィータが縁を殴る。当然の如くシールドに阻まれた、が。
 シールドにダメージは一切ないものの、空中の姿勢を崩して叩き落とす。下へ。フェイトに向けて。
(( Barrier Break))
 まっすぐに落ちてくる縁に向かい、重力に真っ向から逆らいながらも一切速度を緩めることなくフェイトが突っ込む。
 バルディッシュの刃先を真上に向けて。
 視野の広そうな複眼レンズで既にフェイトのことは見えていたのだろう。反射条件のようにシールドが展開された。
 そのシールドを、光の刃が捕らえ。
「インパルスッ!!」
 輝きとともに、突き抜けた。
 もうそれは、絶対無敵の守りじゃないのだ。
 砕けたようにシールドが破れ、続けて縁の身体を突き刺さんとバルディッシュの刃が襲いかかる。

 だが、半身分、縁が身体を横に捻った。

 たったそれだけの動作で、突きの線上から縁が外れた。
「あわっ」
 ひらり、という擬音がもっとも適切であろう回避に、突き刺さんとしていたバルディッシュの刃は避けられ、何とも間の抜けた声がフェイトの口から漏れ出てしまった。
 ぐるっと縁がその場で回転。チャージ失敗に体勢を崩しながらも持ち前の速度でそのまま縁の横を通り過ぎようとしていたフェイトめがけ、回転の勢いそのままに足をのばして。
「か……っ」
 フェイトの背中に、縁の足がめり込んだ。
 少なくとも蹴りをモロに喰らったフェイトは、そう感じた。
 身体が二つに裂けなかったのが不思議なほどの衝撃が、蹴られた背中から内蔵を通過して腹まで抜ける。
 痛いとか熱いとかそんなのを理解する余裕などあるはずもなく、訳も分からぬままに真下へとフェイトの身体が蹴り落とされる。
「フェイト!」
 上空からヴィータの悲鳴にもにた叫び声に、姿勢を立て直さねば、と真っ先にフェイトの身体にその指示が走り抜ける。
 続いて、激痛が返事のように頭へと突き抜けた。裂けた、折れた、自分の身体が未だ一つに繋がっているのだという真実すら疑ってしまうような痛みである。痛い痛い痛い。進行方向であった背中を蹴られてこれだ、腹を蹴られていたらフェイト自身の速度を上乗せされた威力で確実に二つになっていただろう。というか、何故進行方向へ蹴られたのに下へ落ちているのだろうか。喉元が焼けるような感覚は、胃液が逆流したときの感覚だ。自分が吐いたのか吐きかかったのかすら分からない。
 体勢を立て直そうと身体が反射的に動いたのの、痛みのあまり逆に身体が動かなくなる。
 その間にもフェイトの身体はぐるぐる回って落下していく。

 落ちていく先には、白い影。

「付属・煙幕! モード三点!」
(( Bullet shot))
 愛杖をまっすぐ落ちてくるフェイトへと構え、白い影、高町なのはは迷うことなく魔力弾を三発撃ち出した。
 淡い桜色をした弾丸は、一直線にフェイトへ。
 だがそれはフレンドリーショットなどではない。
 三発の弾丸は、ぐるぐる回るフェイトの身体をそれぞれ掠める程度で通過した。そうなるように計算しただけである。撃たれた方は生きた心地がしないが。
 フェイトの向こうは縁。
 加速距離は十分であり、フェイトの影になって縁からすれば突然弾丸が撃ち出されたように見えるだろう。
 ドドドッ、と連続で着弾、爆発。煙幕弾だったそれは爆発とともに大量の煙を巻き散らかした。
 それとほぼ同時、落下してきたフェイトを、なのはは身体全身を使い抱きしめるようにして受け止める。平和なときにもう一度抱きしめてほしい。
「フェイトちゃん、大丈夫?」
「ごほっ……心臓、げほっ、とま、止まるかと……ごほっ」
「む、無理しないで」
 当たらないと分かっていても信じていても、なのはから撃たれるのは色々と心臓に悪い。それを皮肉ろうかと口を開くも、ダメージが抜けきっていない身体ではムセ込むばかりである。
 と、上から鈍い打撃音。
 反射的に空を見上げると、張られた煙幕から落ちてくる縁の姿。続いて瞬き一つ分遅れ、赤い光を纏った8つの金属球が煙幕を突き破ってバラバラの方向へと出ていく。
 ヴィータの追撃だ。
 早い。煙幕が発生してから殴り込むのも、殴り飛ばしてから誘導弾を打ち出すのも。とにかく追撃が早い。
 しかし、それに対応する縁も負けず劣らずに反応が早い。
 煙幕から飛び出てきた誘導弾8つ、それぞれに向けて縁も魔力弾を撃ち出した。誘導弾でこそないものの、瞬く間に音速の壁を越える弾丸である。
 それと全くの同時、今度は煙幕からヴィータ自身が飛び出してきた。
 手にはグラーフアイゼン。ただし先程までとは形が違い、ロケットブースターとスパイクが取り付けられたような形をしており。
「ラケーテン!」
(( hammer!))
 そのロケットブースターは既に点火された状態で、一気にヴィータの身体が縁へ向かって加速する。
 誘導弾は囮か。
 ヴィータが煙幕を飛び出した次の瞬間には、8つ中6つの誘導弾が縁の弾丸により成す術なく蒸発していたが、本命はヴィータ自身だ。
 しかし、縁が魔力弾を撃ち出した直後とはいえ距離がある。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!!!」
 空が揺れんばかりの雄叫びとともに、何十もの魔力弾がアサルトライフルのトリガー引きっぱなしの如く次々に撃ち出される。
 ただし、一直線に。
 速かろうと多かろうと、ヴィータにとっては何ら問題ない攻撃である。
 手にしたグラーフアイゼンのヘッドの向きを調整。するとロケットブースターの推進力によりヴィータの進行方向が急に曲がる。それを追うようにして縁の魔力弾が迫るものの、グラーフアイゼンの推進力によって空中を縦横無尽に、されど縁に迫りつつその全てを避けていく。
 当たればまず即死確定の弾丸でも、当たらなければ意味がない。そして縁は未だに範囲魔法を使わない。次元震を恐れているからか、それとも範囲魔法を “見たことがない” からなのか、ヴィータにとってはどちらでもいいことだ。
 ヌルい。
 ヌルいヌルい。
 攻撃の手が、全部ヌルい。
 古代から生きる生粋のベルカの騎士を相手にするには、ヌルいのだ。
 縁の目の前でくるりと回り、後ろを取った。
 近づけば近づくだけ攻撃は当たり易くなるが、代わりに後ろへ回り込み易くもなる。まして、高速移動用の補助魔法とグラーフアイゼンからのロケット噴射の反動を使えば、後ろに回り込むことなど易いこと。
 回った反動をそのまま、グラーフアイゼンを一気に振り抜く。
 目の前にはシールド。いつの間か展開された、鉄壁の名を墜とされたシールド。
 ヴィータにはそれを破る手段はないが、構うことはない。
 思いっきり、ぶっ叩く。
「ぅらよっ!」
 シールドにスパイクが打ちつけられ、盛大な火花が散った。
 叩いて弾き飛ばすのとは違い、今度はシールドにスパイクが喰い込む。破れる訳はないのだが、これで十分だ。
「ガ、アッ!!」
 こちらが止まった瞬間に頭でも爆破されるのかと思ったが、縁は振り向くとともに喰らいついたグラーフアイゼンを弾きとばす。なかなかの力。ヴィータの小さい身体は成す術なく吹き飛ぶ。
 いや、ヴィータ自ら吹き飛んだ。
 入れ違い、縁の真っ正面から、超高速で迫る影。
 白と黒の、影。
 フェイトに抱えられ、超高速で突っ込んでくる、高町なのは。

(( Flash))
「イン、パクト!!」

 依然展開されているシールドを、フェイトに抱えられたままなのはがレイジングハートにて殴りつける。
 その瞬間、殴った箇所から一気に桜色の光が広がる。
 目くらましの光が発生した瞬間に、なのはからフェイトは手を離し。
「バリアブレイクッ!」
(( Impulse))
 手にしていたバルディッシュにて一閃。
 狙いを定める必要はない。目の前に展開されているであろうシールドに対し、真上からその雷撃の刃で斬り裂くのみ。
 手応え。
 堅い堅い、その手応え。
 その瞬間に破砕のプログラムが流され、僅かばかりの抵抗の後に砕け散る。
 シールドを破壊し、振り抜いたバルディッシュの重さにフェイトの身体がぐらりと揺れる。そういえば、突き以外を今はじめて行ったなと、頭の何処かで冷静な自分の声がする。
 と、ぐいっとフェイトの手が引かれた。
「フェイトちゃん!」
(( Flash Move))
 フェイトの大好きなその手の感触と、その声が聞こえた次の瞬間には、桜色のみに染まった空間から脱出していた。
 フラッシュムーブによる脱出である。急加速と魔力消耗、そして疲れによっていい加減フェイトは頭がくらくらして堪らない。
 が、ぐっと堪える。
 顔を上げるとなのはの姿。
 そしてその奥に、巨大な鉄槌が。

「いくぜアイゼン!」
(( Gigant))
「シュラァァァァァァァク!!」
 気合いを乗せた鋭い声を合図に、巨大な鉄槌が振り下ろされた。
 その巨大さ、フラッシュインパクトにより生まれた光を丸ごと叩き潰す大きさ。目眩ましとなる光の中の何処にいたとしても、逃げ場なく叩き潰せる巨大さである。
 容赦なく振り下ろされた一撃が、光を払い消す。そして鉄槌がなのは達をぎりぎりで掠めた際、魔力が底をつきかけているのとは一切関係なく、なのはは貧血に似た立ち眩みを覚えた。
 それは別にギガントシュラークに巻き込まれかけたからではなく。
 縁が。
 打ち落とされて、ない。
 ちっ、と舌打ち。ヴィータである。
 手応えがなかった。
 避けられのだ。目眩まし、シールドの破壊、そして広範囲の打撃を普通ならばまず回避不能であるタイミングで打ち込んだのに。
 ヴィータは即座にグラーフアイゼンを変形させる。いつまでも巨大な鉄槌では都合が悪い。
 なのはとフェイトもぐるりと周りを見渡した。
 空。
 空。
 雲。
 青。
 荒野。
 空。
 かなりの高度を維持していたなのは達にとって、周りは空ばかりであり地面はかなり遠い。
 その遠い地面、一番最初にフェイトが目を留めた。
『なのはっ、ヴィータっ、下に!』
 跳んできた念話に、なのはとヴィータが反射的に地を見下ろす。視線を這わせて探そうとするよりも前に、豆粒のように小さく見えるその姿を見つけた。
 思わずヴィータは視神経を魔力にて強化、なのはは長距離狙撃用のロックサイトを開いて確認してしまう。

 当然のように、縁がそこに立っていた。

 どれくらい遠くが見えるのか、その複眼レンズのついた顔をまっすぐこちらに向けている。
 転送でもしたと言うのか、あのタイミングで。
 確かに縁の転送魔法は魔導師の常識を覆すくらいに構築が速いのは知っていた。だが、術式を構築して物理空間に干渉させるという行程は魔導師と同じであり、どれだけ速くても0秒になるはずはない。多少ながらも時間がかかるはずである。
 なのはがフラッシュインパクトを叩き込んでから、ヴィータがギガントを打ち込むまで、その間にあったのはフェイトのシールド破壊と、その直後になのはがフェイトを引っ張ってギガントシュラークの範囲から離脱するくらいだ。そして、フェイトがシールドを破壊したという事は、その時はその場に縁がいたはずである。
 タイムにすればどれくらいの猶予があったというのか。考えたくもない。
 もしくは、予め準備でもしてたのだろうか。あの理性の大半がブチ切れている状態で。
 いいや。
 いいや、そんなことよりも。
「やばいっ、散れっ!!」
 ヴィータの声に、なのはとフェイトがはっとする。
 遠い遠い縁との距離は、なのは達にとって一つも利益をもたらさない。
 万全の状態ならばぎりぎりなのはの射程距離であり、ヴィータとフェイトにとっては戦闘射程外。
 そして縁にとっては、当然の如く射程内のはずだ。
 慌ててなのははフェイトの手を離し、フェイトは即座に左へと飛び、なのはも右へと飛んで

 一瞬、なのはの視界が真っ黒に染まる。

「あ……」
 くらりと、きた。
 貧血のような立ち眩み。今度こそ、魔力と体力が底をつきかけている警告。
 飛行魔法すら一瞬だがおぼつかなくなり、足首あたりからのびる光の羽が大きく歪む。
 なのはの身体が、ぐらっと揺れた。
「なのはっ!?」
 向こうからフェイトの声。おかしい。その声が随分と遠くに聞こえる。
 視界が戻る。相変わらず半分の視界だが。
 見えたのは地面。いつの間にか身体が傾いていた。
 視線の向こうには縁が見える。遠くに見える。ガバリと口を開け、鋭い牙を見せている。
 その縁の目の前には、握り拳くらいの光の弾。
 あ、まずい。
 そう思ったのと縁の雄叫びは全くの同時。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 もはや本能のレベルにて、バリアを展開していた。それが無意味であると知っているのに。

 バリアが展開するかしないかのタイミングで、超音速の弾丸が、なのはの脇腹を直撃していた。

「が」
 展開しかけのバリアが砕け散る。
 バリアジャケットが、問答無用で吹き飛ばされた。
 インナーすら砕かれる。
 一瞬だけ遅れて、なのはの口から鮮血の泡が漏れた。
 きらきらと光を反射しているバリアの破片は、見慣れたミッドチルダの術式ではく、縁と同じ複雑な紋様。
 脇腹によく熱せられた鉄の棒を押しつけられる、そんな感覚が襲う。
 ごぼっ、とさらに遅れて血の塊がなのはの口から逃げていく。
「なのはっ!!」
 悲鳴のような声。それはフェイトの声であり、ヴィータの声であり。
 残ったバリアジャケットが、全て魔力光に還元される。フライヤーフィンすら、消える。
 口から血を逆流させながら、なのはの身体がゆっくり落下し始める。
 フェイトの顔から血の気が引いた。
 ほぼ裸、飛行魔法なし。
 この高さから、落下。
「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 フェイトが助けに入るより先に、縁の叫び声が轟いた。
 追撃するつもりか。
 しかし、縁を見るよりもフェイトは飛び出していた。
「ば、馬鹿野郎! 戻れっ!」
 ヴィータの怒鳴り声すら耳に入らない。
 ソニックセイルをのばし、残像を残す勢いでなのはまで飛ぶ。飛ぶ。速く。
 高速で突っ込み、なのはの身体を抱き抱える。
 生の感触。裸の感触。
 なんら性的な興奮を覚える余裕はない。
 真っ先に確認したのは、直撃したと思われる脇腹。
 そこは。
 吹き飛ばされて。
 は。
 いな、い。
 いない。
 吹き飛ばされてはいない。
 内蔵が見えたり、原形を留めてなかったりは、しない。
 は、ぁ、と震える息を吐き出す。
 鉄球でも叩きつけられたかの如く、赤くなり、皮膚が抉れ、潰れかけ、血が流れているが。
 良かったとは言えないが、最悪な事態には、なってない。
 ごほっ、と腕の中でなのはが強く噎せ、フェイトの顔に血飛沫がぴしゃりと張り付いた。血には慣れているはずなのに、心臓が止まりそうになる。
 今の今まで忘れていた呼吸の分を取り戻そうとしているかのように、ごひゅ、ごひゅ、と不自然な呼吸でなのはの胸が上下した。
 視線の定まっていなかったなのはの左目が、ゆっくりとフェイトを捉える。
「な、なのはっ! 大丈――」
 大丈夫かと、その言葉を最後まで言わせてもらえなかった。

 どんっ、と指が足りないその左手で、フェイトの身体が突き飛ばされた。

 誰に。
 なのはにだ。
 フェイトがその腕に抱きかかえていた、なのはに突き飛ばされた。
 突然の行動に思わず怯んでしまい、そしてその怯んだ隙すら利用したかのようになのはが身体をぐいっと捻る。
 手が滑った。
 なのはの身体が、フェイトの腕から離れてしまった。
「っ!?」
 突然の行動に訳が分からないが、フェイトは反射的に落ちかけるなのはに手を伸ばし。

 右手に握られ離さなかった、レイジングハートで胸を思いっきり突き飛ばされる。

「ごほっ」
 思わず咽てしまうくらいの力いっぱい。
 フェイトの身体は突き飛ばされて下がり、なのはの身体は逆に勢いをつけたかのようにフェイトから離れてしまう。
 待った。
 待ってくれ。
 何をしているのだ、なのはは。
 既に届く距離でもないと分かっているのに、伸ばしかけた手でフェイトはなのはを求める。

 その指の先を、何かが触れた。

 いや、それは掠めたと言うべきだったか。
 ただ、フェイトの視界からすれば、動きを捉えられないほどに高速の何かが指先を掠めた程度にしか認識できなかった。
 それはたぶん、魔力弾が撃ち込まれたんだろう。頭の片隅でそれだけ分かった。
 きっとあのままなのはを抱きかかえていたら、その凶悪な魔力弾がフェイトを直撃していただろう。これもまた頭の片隅で分かった。
 だから、なのはがフェイトを突き飛ばして助けたのだ。それも分かっているのだ、頭の片隅では。
 だけど、今、そのなのはが、落ちて。
「な、なのはっ!」
 慌ててフェイトがソニックセイルを羽ばたかせて追いかけようとする。
 するが、頭を屈めたその真上を、魔力弾が通り過ぎる。避けようと思って避けた訳ではなく、完全な偶然だ。
 反射的に目線がなのはから逸れ、魔力弾の発射された場所へと移ってしまう。その間にもなのはが落ちているというのに。
 下には縁。
 何処を見ているか分からない複眼レンズを上に向けた縁。

 そしてその周りには、大地を埋め尽くさんばかりに大量の魔法陣が展開されていた。

 何だあれ。
 思わず目を見開いてしまう。
 遠距離用の視力補助の魔法越しに、縁の周りに大量展開されているそれぞれの魔法陣から、見覚えのある兜が次々にせり上がってくるのが見えた。
 見覚えのある、ドールタイプの頭。
 魔法陣の数は推定で120~140。魔法陣一つあたりドールタイプ1体の召喚ならば、単純計算それだけのドールタイプが出てくるということだ。最悪だ。
 一瞬だけだが、その光景に召喚されるドールタイプの数を換算してしまった。
 一瞬だけだが、フェイトの動きが止まった。
 なのはは、落ちている。
「っ、しま――っ!」
 しまった。
 視界の片隅に、落ちるなのはの姿が見える。
 何をのんびりしてるんだ、自分は。
 既に距離はだいぶ開いている。なのは自身も、随分な落下速度を持っている。フェイトの速さをもってして、いや、ギリギリで手が届くはずだ。
 即座にフェイトはなのはに向かって進路をとり――視界の片隅で、縁が魔力弾を撃ち出そうとしている姿が見えた。なのはにではない。フェイトにだ。
 それは本能的だったのかもしれない。
 発射された次の瞬間にはフェイトの眼前に迫る魔力弾を、フェイトは咄嗟に身を引いて避けた。
 身を引いて、しまった。
 しまった。
 2度目の後悔は、前の 「しまった」 よりも激しい。
 身を引いた。出遅れた。
 なのはとの距離が、離れた。
「あ、や」
 やだ。
 いやだ。
 まだ間に合う。今から飛び出して、全力で突っ込めばまだ間に合う。
 そう思う、次の瞬間にフェイトは更に後ろへ高速で引いていた。
 ごっ、と、風を切る音としては盛大に間違っている轟音が真横を通り過ぎる。
 いやだ。
 まってくれ。
 そう思うのに、なのはへ飛び出す事なくフェイトは左へ跳ぶように飛ぶ。右肩ぎりぎりに、凶悪な一撃が最早不可視に近い速さで通過する。
 縁の魔力弾が、狙いをフェイトに定めたかのように次々に撃ち込まれていく。
 いやだ。
 やだ。
 なのはが、遠い。
 遠くなる。
 間に合わなくなってしまう。それ以上遠くに行かれたら、間に合わなくなってしまう。
 ぢっ、と左腕を魔力弾が掠めた。触れるか触れないかの掠め方ではなく、直撃はしなかったという程度の掠め方だった。
「ぎっ! くあっ」
 ごきりっ、という嫌な骨の音が聞こえるよりも前に、左腕が肩から先全て千切れたかのような激痛と共にフェイトの身体が吹き飛ばされてしまう。飛行魔法はしっかり構築していたはずなのに、掠めただけで弾かれたのだ。
 吹き飛ばされ、ぐるりと宙を舞い、フェイトの視界からなのはが消える。
 いやだ。
 いやだ、いやだ。
 なのはが。
 見えない。
 それが、とても恐ろしかった。
 自分の身体の心配よりも、今の状態が縁の魔力弾の格好の的になっているという事実よりも、なのはの事ばかりが頭を過ぎる。
「なのは――」
 痛みによる悲鳴よりも、自然とその名前が口に出た。


「避けろ阿呆っ!!」


 怒声は、すぐ近くから響いた。
 そして同時に、フェイトの首にラリアットがめり込んだ。
 ぐえ、とカエルの瞑れたような声と共に、フェイトの身体が反対側へと弾かれる。ボールをバットで打ち返す要領である。やられた方は全く持って堪ったものではない。
 ぐるんとフェイトの身体が逆方向に回る。
 回って、視界には赤い服の少女の姿があった。
 はやてのデザインした騎士甲冑。魔力光が赤いからそのゴシックファッションは赤を基調にしたらしい。
 視界には赤い服の少女の姿があった。
 ラリアットをフェイトに決め、その直後のポーズそのままで。
 赤い少女の姿があった。

 右の膝に魔力弾を貰って。

 右足を丸ごと吹き飛ばされ。

 鮮血を撒き散らす。

 ヴィータの姿。












 落ちる。
 落ちている。
 風を切る音を耳に、片側の視界に映る風景はぐるぐる回り、なのはは自分が真っ逆様に落ちているのを何処か他人事のように感じていた。
 この高さと速度だ。このまま落ちたら確実にこの世からさようならだ。
 何とかしなくちゃと思う反面、これは無理だなと諦めている部分があった。諦めと言うよりも、受け入れていると言うべきなのか。
 バリアジャケットの構築ができない。飛行魔法の構築ができない。
 魔法が、使えない。
 魔力がすっかり枯渇していた。全くないのだ。
 縁の魔力弾が半分物理ダメージ、半分魔力ダメージの設定状態だったせいだろうか。いくらできかけのバリアとバリアジャケットに阻まれたとは言え、完全な物理ダメージの状態ならば、超音速弾を喰らった瞬間に自分の身体は爆発しているはずである。
 飛べないというのは、こんな気持ちなのか。
 魔力弾を脇腹に喰らい、それでも離さなかったレイジングハートを見ながら、ふとそんな事を思ってしまう。
 高町なのはは、かなり早い段階で空を飛べた。ユーノの言葉を借りるならば、天性の才能だそうだ。何の才能かと尋ねたところ、くうせ、とそこで誤魔化すように咳払いしてから空を飛ぶ才能だよと取って付けたように言われた。今なら分かる、あの時ユーノが言いたかったのは空戦という二文字だったのだろう。
 その才能だって、魔力がなければ意味がない。飛行魔法だって立派な魔法だ。
 落ちて、墜ちて、これで死ぬのかなと思ってしまう。
 死ぬ前は、きっとみっともないくらいに自分は取り乱すのだろうなと思っていたが、意外と落ち着いていることになのはは逆に驚いてしまう。
 死にたくないとは、確かに思っている。
 生きて帰るという約束をしたのに、これだ。悔いがないとはとても言えない。むしろ悔いばかりである。
 縁を連れて帰って、たった一度でいい、ほんの少しでも構わないから、アリサに会わせたかった。話をしてもらいたかった。
 その前に縁を止めるのだってまだできていない。
 そうだ、今度こそちゃんと友達になろうと、ちゃんと謝ろうと、それすらまだだ。
 何一つ、まだだ。
 まだなのだ。
 落ちながら、なのはは苦笑してしまう。
 こういう時は普通、走馬燈を見るものではないのだろうか。こう、昔のことを次々に思い出すとか。それなのになのはは後悔と未来のことしか頭に浮かばない。
 まだ、死ねない。
 死ねないな。
 顔を上げ、下を向く。
 ぐるぐる周りながら、地面に大量のドールタイプが出現しているのが見えた。
 今度は物量戦なのか。なおさら単騎戦向きのフェイトとヴィータだけでは荷が重いだろうに。
 まだ自分は、死んだらいけないんじゃないだろうか。
 何一つ、終わってないのに、死んでいいはずがないじゃないか。
 この量のドールタイプ、健在の縁、何一つとして解決などしていないのに。
 ぐるりぐるりと世界が回る。
 落ちる、墜ちる。
 空も飛べず、防御機構も発動できず。
 もう地面に叩きつけられ死ぬしかない状況なのに。
 死ねないと、思った。
 思った、だからだろうか。
 ドールタイプが群がる地面に接近し、あと叩きつけられるまで3・4秒かというくらい。

 計ったかのように、なのはの身体が急に抱きかかえられる。

「ぎゅっ」
 変な声が出てしまった。
 誰だか分からないが、向こうもある程度下がりつつ衝撃を緩和してくれているものの、落下からの急ブレーキは生身では随分と堪える。それに胸の下がかなり痛い。やっぱり折れているのは間違いなさそうだった。
 だが、これは誰だ。
 抱きかかえられた瞬間フェイトが助けにきたのかと思ったが、急ブレーキがかかった際に強く抱きしめられた感触から即座に違うなと否定された。
 フェイトにしては、ゴツい。
 逞しいのだ。
 女性特有の曲線的な柔らかさではなく、男性的な筋肉の感触である。これによりヴィータであるという可能性もなくなった。
 男性となると、なのはの頭に真っ先に思い浮かぶ男性はユーノである。他意はない。父親よりも先に頭に浮かんだが他意はない。
 だが、ユーノはあまり筋肉質な体型ではない。ヴィータのようにモヤシだと言う気はさらさらないが、教導官で働いているなのはの方がユーノよりも握力があるのは確実である。決してユーノを貶すつもりはなく、半年前だが実際に測定した際になのはの方が上だったのだ、握力が。その時は両者共に友人が心配するほどに落ち込んだのでよく覚えている。
 抱き止められ、ゆっくりと空中で静止した。
 誰だろう。もぞりと顔を上げ、なのはは助けてくれた人の顔を確認する。
 あー、なるほど。
 妙に納得してしまった。

「っと、大丈夫っすか教官……って、うわぁっ! 全然大丈夫じゃないっ!?」

 人の顔を見た途端に悲鳴を上げるのは少々失礼じゃなかろうか。
 彼のトレードマークでもある針金のようなツンツン頭を見ながら、なのはは苦笑する他になかった。
 どうしたものか、男性というジャンルでクロノやザフィーラは思い浮かんだのに彼のことはすっかり失念していた。
 そうだった、彼も男性である。
「その目どうしたんっすか!? あああ、もしかして助けにくるの遅かったっすかね!? あわわ、治癒系の魔法は苦手なんっすけど、ああいや、と、とにかく大丈夫なんっすか高町教官!? いやもう大丈夫じゃないのは見りゃ分かるんっすけどねっ!?」
 見事に狼狽えているこの少年は、高町なのはの生徒であり、一番最初の卒業生であり、一時期は部下であった。

 ガンザ・アーカーという、今や立派に一人前の、魔導師だ。

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 お仕事ただいま大フィーバー(人員的な意味で)
 こんにちはこんばんは、読んでいる時間帯によってはおはようございます、コーヒー中毒のクロガネです。
 アル中やニコ中やニコ厨やネトゲ廃人よりゃマシだよね、うん。

 まず最初に謝罪を。
 とにかく謝罪を。
 モニターに石を投げる前に謝罪をさせてください。
 クロガネは決してヴィータが嫌いな訳じゃないんです、むしろ好きなキャラですよ、はい。
 この物語じゃ初登場で寝坊・メインディッシュを床に・皿割り・書類責め・昼飯抜き・素敵難易度の作戦・そしてズタボロの瀕死状態と酷い扱いで、しばらく登場しないで空気扱いにされた上、久しぶりに出てきたら頭を串刺し、なのは嬢が起きた時点ではアースラに居候、作戦参加で格好良く縁を追い詰めたと思ったら足を吹き飛ばされ……
 決して、決してヴィータが嫌いな訳じゃないんです、信じてください、クロガネはロリコンじゃありません。ん、違う、ヴィータが嫌いだから酷い扱いをしている訳じゃないんです。
 そう、愛故に。

 ……そういや、ヴィータの次に撃墜されてるのが多いのはなのは嬢なんだよね。

 ちなみに、何度かこの作中で表現されてますが、ヴォリケンリッターも十分に化け物。外見が人間なだけであって、十分に化け物です。
 むしろ、遠距離戦主体のミッドチルダ式に対して接近戦主体のベルカ式で強いと言われる時点で十分に化け物。
 その化け物と競り合えるなのは嬢が異常なだけですよ。うん、なのは嬢は異常。


 ガンザ君、順調にフラグ建築中。
 恋愛フラグ? いいえ、死亡フラグ。
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5件のコメント

[C698] ヒーロー・ガンザ

ガンザ君。戦う度にかっこよくなりますね。
なのはを凌ぐヒーローへと駆け上れ!
…そのためにはバリアに皴いれたくらいじゃ駄目だぞ~。充分すごいけど…

ところで、誤字でしょうか?
>>「手土産を置いてやるから、とっとと帰りな!」
 そう言うと同時に、ガンザの足元に魔法陣が展開される。

自身にかける転送魔法ならばガンザの足元ではなく恋慈の足元に出現しそうなものですが。

それでは、失礼いたします。
  • 2010-10-31
  • 投稿者 : ノヴェール
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[C699] 大切なことなので2回ry

ですねわかります。

 >まっすぐ過ぎるのだ、根本的に。
 スターライトブレイカーもどきにしろ、ファランクスシフトもどきにしろ、そしてこの弾丸にしろ、魔法そのものの軌道は直線に過ぎない。確かに意味不明なレベルで射線が太いだの弾数が多いだの速いだのと厄介な性質はあるが、それに対処さえ誤ることがなければ決して回避不能な訳ではない。
 もちろん、長期戦になればいずれ撃墜されるだろうし、対処を誤り防御に回ればその時点でアウトなのは百も承知である。
 だが、絶望的な戦況に身を置くのは、ヴィータにとって初めてな事ではない。
 むしろ、リインフォースが闇の書と呼ばれていた頃は、その性質からいつもいつもいつもいつも絶望的な戦力差を相手にしていた。
 まっすぐ過ぎるのだ、根本的に。
 スターライトブレイカーもどきにしろ、ファランクスシフトもどきにしろ、そしてこの弾丸にしろ、魔法そのものの軌道は直線に過ぎない。確かに意味不明なレベルで射線が太いだの弾数が多いだの速いだのと厄介な性質はあるが、それに対処さえ誤ることがなければ決して回避不能な訳ではない。

ハンマーで銃に勝てるとかチートにも程があると考える近年です。ギガントとか質量どうなってry?
いやシグナムがファルケン射た後剣に戻したらパーツ足りなかったりしないんだろうかとか無駄な心配ばかりが・・・

とりあえず取り寄せ的な何かが働いた追加パーツ論を主張してみます。

それはハンマーというにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった。(ベルセルクより)
  • 2010-11-01
  • 投稿者 : なまざかな
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[C700] 相変わらず誤字酷いクロガネです

 ここまでくるといっそネタ。

○ノヴェールさん
 実戦に勝る訓練なし。
 実を言うと、ガンザ君はそこまで活躍する役ではなかったはずなのですが、気がついたら他のキャラから役を奪いに奪ってのし上がっているという不思議なことに。どうしてこうなった。
 誤字です。完璧な誤字です。ありがとうございましたー。

○なまざかなさん
 大事なことなので2回言いま(ry うん、誤字です。凄まじい誤字です。首吊りたい。どうしてこうなった。指摘ありがとうございますー。
 質量、どうなってんでしょう。むしろギガントが標準質量で、ラケーテンやハンマー、そして待機形態まで全部その質量だったりして。ギガントフォルムと同質量のペンダントをぶら下げる幼女……
 クロガネ的にはあれです、スクライドのアルターみたいなのを主張(ry
  • 2010-11-01
  • 投稿者 : クロガネ
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  • 編集

[C701] アリサ「分の悪い賭けは嫌いじゃないわ」

縁暴走中……?
ガンザは順調に死亡フラグが……
しかし綺麗に立ててくなぁ
最期はなんか吸収されそうだ





今回のブラストアリサ

管理局が崩壊し新たな組織が発足され十年

かつての少女達は大人となりそれぞれの道を歩いていた

しかし確認されたかつての悪夢――ドールタイプ

それは再びミッドチルダを混沌へと導く序曲だった


「私はもう後悔だけはしたくないから……」

傷つき贖罪を選びし雷光
フェイト・T・ハラオウン


「私はあんたが憎い。ヴィータを再起不能にしたあんたが憎いんや」

夜天より堕ちし王
八神はやて


「ヴィータの無念……晴らさせてもらう」

残されし最後の群雲の騎士
シグナム


「アリサちゃん……なのはちゃん……もう止まれないんだね」

宵闇にて見守る者
月村すずか


「にゃはは……もう私も縁ちゃんと同じ。十年前にアレを使った時から蝕まれて今じゃすっかり縁ちゃんと同じになっちゃった」

唯一の同族へとなり果てたエース
高町なのは


「あんたの意志は聞いちゃいないのよ。あたしがあんたを連れて行く。それは世界が決めた絶対意志なんだから」

持たざる者を極めた者
アリサ・バニングス


そして十年前の管理局崩壊を担った者と出会うとき全てが加速する




魔法少女ブラストアリサ
20006年始まりませぬ


――――また会えたねアンス



爆炎が導く未来を刮目せよ
  • 2010-11-04
  • 投稿者 : ルファイト
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[C702] 撃ち貫くのみ

○ルファイトさん
 あと18000年後か、長いなぁ。そしてヴィータがほぼ死んだことになっている件。
 ……オリキャラって、後腐れなく退場できますよね(ボソ
  • 2010-11-04
  • 投稿者 : クロガネ
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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

最近の記事

プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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