Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

-件のコメント

[C660] クロノ

ざまぁwwwww
  • 2010-07-19
  • 投稿者 : なまにく
  • URL
  • 編集

[C661] まさに

○なまにくさん
 ざまぁ。
 まぁ、クロノ君の出番はまだ先だし。
  • 2010-07-19
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C662]

あら、アリサは縁が変化?するのを目の前で見ているのに「縁=化け物」じゃないんですか?
それは…現実をちゃんと見れてない、ってことでいいんでしょうか
それに自分としてはすずかはアリサの発言で完全に見捨てると思ったのになぁ…。人間じゃなくても関係ない、ということが前提で成り立った表面に出せる恋心だと思ったのに…
発想が並みじゃないなぁ、と思う反面、それに学んでいけたらなと
次も待ってますね!
  • 2010-07-20
  • 投稿者 : ひつまぶし
  • URL
  • 編集

[C666] その通り

○ひつまぶしさん
 暴行をされかける(上半身を晒しキスを許した)、恋心を自覚するも同性愛、縁が他の人とも仲良くしようとするので二人っきりになる時間が激減、淫夢を見る(暴行されかけたことにより性的な行為に拒絶反応あり)、同性愛の成立は社会的に難しいと考える、追い討ちのように同性であるすずかの告白、縁が嫌い発言を縁自身に聞かれる、自分の友達すら拒絶、縁を避ける、なのに欲情して性的行為を迫る、暴行未遂と淫夢のせいで性的な事に更に嫌悪感を抱いている時だったのでそこでクラッシュ、その嫌悪感の強い性的な事をわざと男にされようとする(後、自殺するつもりだった)、その男に暴力を振るわれ死にかける、縁が来たことにより安堵したらその縁が目の前で虐殺される、で、死んだはずの縁が生き返った直後再び目の前で頭を吹き飛ばされる、そして化け物に。
 まぁ、この現実を直視しろと言う方が……後書きにもちらりと書きましたが、縁が目の前で変化した場面では化け物の姿が縁である事を全否定してまして。
 ここでアリサを見捨てれば、すずかはもっと楽になったはずなのですが……
  • 2010-07-21
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C667] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2010-07-22
  • 投稿者 :
  • 編集

[C668]

今まで名無しですみませんでしあ!

やっぱり情報を制するものが戦を制するのですねえ
戦場を選べる、最適な戦力を投入できる、は何よりも利点かと

アリサはそういう逃避だったんですね
化け物=縁と気がついて「化け物」を克服したのは良いですが
「縁」が「化け物」に飲まれる可能性も有ったのかなと考えたりw
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : 庁
  • URL
  • 編集

[C670] コメントありがとうございまー

○ さん
 修正完了ですー。

○庁さん
 お名前インプット完了。
 戦いと言うのは始まる前に既に7割終わっているもの、という話があります。敵を知って己も知れば全戦全勝だという話もあります。情報収集と綿密な作戦というのは、戦争を仕掛けるときの絶対条件なのです。

 “縁” が “化け物” に飲み込まれてアリサに認識された場合――すずかに美味しく痛抱カレテBAD END。 
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C671]

アリサの発言を許容してしまえば、すずかもまた耐えられない?ここで更に最悪のパターンで、アリサがすずかを否定したいたら……と考えると怖いものがありますね。
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C672] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 アリサがすずかを化け物として拒絶したら。
 はい、BAD END。こんなところでしんでしまうとはなさけない。
 ……まぁ、うちのすずかなら、感情に任せてアリサの顔面を潰すかもしれませんが。
  • 2010-07-24
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

-件のトラックバック

トラックバックURL
http://kurogane951.blog78.fc2.com/tb.php/112-8c8afb28
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

魔法の使えない魔法使いの魔法 63

第11章――第1節
――あの化け物は―――


「なら、不意打ちをしてみるか」
 そう発言したのは、アースラの艦長であるクロノだった。
「真っ正面で堂々とチャージしていたら、まず確実に当てられないからな」
「……何が?」
「なのはの主砲が、だ」
 首を傾げて漏らしたなのはの言葉に、クロノはしれっと返した。
 主砲って、そんな戦艦みたいな。
 少し嫌そうな顔をしたなのはの周りは、クロノの言葉に特に違和感を覚えない。主砲で当ってるじゃないか。
「フェイトが牽制・兼・囮をするんだ、逆に本命であるなのはは海鳴 縁には見つからないようにするべきだろう」
「でも、隠れるのはちょっと無理じゃないかな?」
 今度は手を上げて再びなのはが言葉を漏らした。
 縁に見つからないように、あのスターライトブレイカーの準備をするのはまず無理だ。隠れてもチャージして生成するスフィアが目立ちまくりである。かと言って、縁が分からないくらい遠くで準備した場合、そんな超長距離を命中させるのは難しい。しかも、スターライトブレイカーは目標までの距離に比例して威力が減衰してしまう。
 無理だろう。
 それがなのはの考えだった。
 だが、クロノは小さく笑って返す。
「ところでなのは、君は何回か転送魔法を経験しているね?」
「え? あ、うん、何回も」
 突然話を変えられ、なのはがきょとんとした。会議室にいるほとんどの人が、似たようにきょとんとする。
「じゃあなのは、君はAという地点からBという地点に転送された時、Bの地点で魔力を持っているか?」
「へ?」
 唐突な質問である。
「う、うん、普通は持ってるよね」
「そうだな、Aの地点に魔力を置き去りにする事はまずないな。ならなのは、Aの地点でバリアジャケットを装着して転送された場合、Bの地点に転送されたときはバリアジャケットはちゃんと装着しているかな?」
「えと、してるよ」
「そうだな、じゃなきゃ、転送された瞬間は丸裸ということになる」
「……うん」
 クロノは何を言っているのだろう。仕事し過ぎで疲れているんじゃないだろうか。
 そんな視線を向けられるも、クロノは平然と、むしろ意味ありげににこりと笑い。

「じゃあ、スターライトブレイカーのスフィアごと転送しよう」











 1000発目のカートリッジを飲み込んでなお、その巨大な魔力の塊は球体の姿を維持していた。
 収束率も上々、魔力の有効利用率など90%を超えている。まるで限界が訪れるような気がしない。倍のカードリッジを使用しても問題なく制御できそうだ。
 モノクロになってしまった世界で、なのははまっすぐその魔力の塊を見上げる。
 もはや空が見えない。見上げれば、なのはには “真っ白” に見えるその魔力の塊が広がるばかり。直径がどれだけあるかなど、今のなのはの位置からはとても計れはしない。
 魔力の塊、という表現ももはや適切ではないかもしれない。
 まるで、太陽だ。
 白い白い、太陽だ。
 なるほど、縁がスターライトではなくサンライトと名付けた理由がよく分かる。
 きゅっと、なのはは目を強く瞑る。
 荒れ狂う風の音が、半分しか聞こえない。
 実を言うと、身体の感覚も随分と鈍っている。荒れ狂う風の音を耳が捉えているはずなのに、身体はぼんやりとしか風を感じない。風が吹いていると言われれば、そう言えばそんな気がする、程度くらいだろうか。もしくは耳に聞こえる風の音が幻聴なのかもしれない。
 身体が壊れてきている。
 少し笑えてた。
 縁はいつもこんな魔法を使っているのか。こんなに反動の強い魔法を使って、使い続けて、それでも平気なのか。凄いな。素直に思う。縁は凄いな、と。
 その縁に、逢いに行かなきゃ。
 不意打ちだけど。
 卑怯だけど。
 そうしなければ、とてもではないが届かない相手だけど。
 それでも、行かなきゃ。
 その一心が、なのはの胸に宿っていた。
 カードリッジが強化外装に呑み込まれる。魔力が満ちる。
 魔力の制御に問題なし。好調だ、身体以外。
 こんな状況で、なのはは少しだけ笑ってしまう。
「……なのは」
 そこで、名前を呼ばれる。アルフだ。
 返事をしようと思ったが、それより早くアルフが言葉を続ける。
「やっぱり話、聞いてくれないって。ただ問答無用って訳じゃないみたいだけど」
「んじゃ、プラン8の6になるな」
 なのはが返そうとした言葉を、まるで代弁するかのようにヴィータが吐いた。溜息のおまけ付きである。
 今回の作戦は、いくつものパターンを用意している。作戦の状況、縁達の反応により、細かく作戦を決めているのだ。クロノを中心としたアースラスタッフにより徹底的に煮詰められているその作戦パターンは、なのはが最初に立案した作戦の原形をほとんど残していない。正直なところ、きめ細やかな作戦を立てるのが苦手ななのはは、作戦を次々に立案していくスタッフの中でぽつんとしていたくらいだ。
 縁がフェイトの言葉に応じて手を引いてくれるなら、それに越したことはなかったのだが、ここまで最悪な道を突き進んで今更フェイトの言葉だけで止めるとは思えない。
 だから。
「おいなのは、いけるか?」
 気遣うように、ヴィータが聞いてきた。
 愚問だ。
「……うん、大丈夫。手加減抜きでいくよ」
「いや、お前がこういう時に手加減するとはハナから思っちゃいねぇよ。その術式でいけるかって事だ」
 ああ、なるほど。
 呆れたようなヴィータのそれに、ようやく言いたいことを理解した。
 今、なのはが展開している魔法陣は、縁と同じ魔法陣である。
 意味不明、構築式不明、言語体系不明、数式体系不明、そんな縁の魔法である。その魔法の魔法陣をなのはが展開し、そして問題なく撃てるのかという事だ。
 正直、試してないから分からない。
 分からない、が。
「うん、大丈夫」
 きっと大丈夫だと、直感的にそう感じていた。理由はない。
 ヴィータを安心させるように軽く笑顔を向けてから、空を見上げるように魔力の塊へと顔を向ける。視線を外した際、目の動きで何か感づいたかのようにヴィータが首を傾げたのが視界の片隅に映ったが、見なかったことにする。身体のことは全部終わってから考えることにしよう。
 もうそろそろカードリッジを全て消費する。それでもまだ、余裕があった。
 すぅ、となのはは深呼吸をするように大きく息を吸う。
「なのは、フェイトが仕掛けるよ!」
 タイミングを見計らったかの如く、緊張したアルフの伝達がとぶ。
 ぐっと、なのはは奥歯を噛みしめ、そして目を閉じる。
 フェイトの言葉に応じてくれるなら、それに越したことはない。
 ここまで準備した砲撃だって、撃たないに越したことはない。
 越したことはないが、きっと応じないだろうし、撃たなきゃいけないだろうとは思っていた。
 目を開き、ゆっくりと息を吐く。
 撃つ。
 想いを乗せて、全力を尽くし、全てを掛けた一撃を。
 撃つ。
 もう止められないと泣くように叫んだ縁を、力ずくで止めるその為に。
 撃つ。
 友達へ。
 友達になりたい、縁に向けて。
 遠慮もなく、手加減もなく。
 正々堂々真後ろからの不意打ちだ、いや不意撃ちだ。
 卑怯者と罵るなら好きなだけ罵ればいい。正々堂々真っ正面からぶつかるのは、ただの自己満足じゃないかと冷徹仮面を付けたアースラの艦長の言葉に、言い返したい言葉は山程あったが、その理屈が分からないほどなのはとて子供ではない。子供ではないのだ、もう。
 全力を尽くしても届かない、無茶をしても届かない、そんな相手だ。後はプライドを守って届かせるのを諦めるか、プライドを悪魔に売り渡して足掻くかのどちらかしかない。そして足掻かず諦めるなら、この場にいない。
 もう一度、息を吸う。
 大きく、大きく、深呼吸。

「ヴィータちゃん! アルフさん! いくよっ!!」

 ガシュン、と最後のカードリッジの薬莢が強化外装から弾き出された。
 死力を尽くせとも、生きて帰ろうとも、そんなお飾りの言葉を言う必要はなかった。この作戦に参加して、この場にいる以上、そんな言葉を言おうものなら鼻で笑われてしまう。
「術式の構築、問題ねぇ! アルフ!」
「任せな!」
 二人が吠える。二匹が吠える。意外と息が合っている。
 その掛け声に答えるかのように、なのはの足下を中心として広がる巨大な魔法陣が力強く輝いた。きっと、赤く赤い、綺麗な深紅の輝きなのだろう。
 一瞬だけ、身体が浮くような感覚がした。
 転送するときの、独特なその感覚。
「頼むよ、二人とも!」
 そのアルフの言葉には、答えるまでもない。きっとアルフも、もはや答えを求めてもいないだろう。
 求めてるとしたら、それは結果か。
 息を飲む。
 準備はできた。
 覚悟もできた。
 さぁ、これから一世一代の大勝負だ。
 足下の巨大な魔法陣が、より一層輝きを増す。
 白く、白く、視界が染まる。赤という名の白に染まる。
 その光の向こうで、アルフの声が高らかに響いた。

「転……送っ!!」












 アルフは、強大な魔力の塊を、正確には強大な魔力の塊の源となる物を、ポーターと使うことなく転送した経験がある。
 防衛の要だと言われたり、暴走する危険な存在だと言われたり、挙句には闇の中の闇などと言われたりする、そんな強大な存在だ。
 それは3人掛かりのことだったが、それでもその経験は、今回の作戦で非常に重要な要素の一つとなっていた。
 そう言えば、あれは真冬の日だったなぁ、と他人事のようにアルフは思った。そして今は真夏だ。春とか秋とかもっと過ごし易い日に、もしくは常春とかの地で起きればいいのになと、少し脳天気なその思考に自分自身で失笑してしまう。
 ベルカの魔法陣に深紅の閃光。
 それに包まれ、そして消える二人を見送ってから……アルフはその場に崩れ落ちた。
 流石に、キツ……
 儀式魔法に匹敵するほどに大型の魔法、10m先の針の穴に糸でも通すかのような精密作業。それをやりきった達成感よりも、消耗した魔力と疲労の方が上回っている。

 何せ、今回の転送で使用する魔力の9割は、アルフが負担した。

 魔力のタンクが空々とである。正直、もう人型になるほどの魔力もありはしない。
 急激な魔力の減少に、主であるフェイトから無意識にライン伝いに魔力を引っ張ろうとしてしまったが、それをギリギリで抑え込む。今の状況でフェイトに負担を掛ける訳にはいかない。その一心である。
 自身でも魔力は生成できる。このまま動かずじっとしていれば、大丈夫だ。そもそも動きたくても、疲労で身体が限界である。指一本動かせやしない。
 ぐったりと横たわり、荒い呼吸を繰り返す。
 これは死にそうだ。今度同じ事をやれと言われても、絶対にしてやるものか。
 酸欠のようにぼぅっとする頭で、それだけ決心した。
 さて、フェイトは大丈夫だろうか。
 転送したなのはとヴィータも気にはなるが、優先順位としてフェイトが一番心配である。今回の作戦、肩を並べて参加できないのは悔しい限りだ。
 まぁ、もはやなのはとヴィータに任せるしかないのだが。
 そう思いつつ、アルフは呼吸を整えるようにゆっくりと息を吐き出して。

 ガシャ、と、鎧の足音。

 1つじゃない。
 ガシャ、ガシャ、ガシャン。
 足音、足音、沢山の足音。死を運ぶ足音か。
 顔を上げて周りを確認したいところだが、身体がまるで動いてくれない。指一本動かせないと言ったのに、顔を上げられる訳がない。
 だが、状況は分かる。
 見なくても分かる。
 ガシャン、ガシャン、とアルフを取り囲むように、その足音が近づいてきた。
 分かっているさ、足音の正体くらい。

 ドールタイプだ。大量の。

 どうやら結界が切れたようだ。ジャミングも切れたか。足音から察するに、最低20体はいるだろう。
 今いるこの惑星は、敵の本拠地だ。そして侵入者を発見するために、この惑星には大量のドールタイプを配置している。自分達を隠すものがなくなれば、見つかるのは当然のことだ。
 足音が増える。まだ増える。
 まったく。
 小さく、震える息をゆっくりと吐き出した。
「……んじゃぁ」
 そして小さな声で呟いた。
 ゆっくりと目を開くと、予想通りの状況が広がっている。
 そう、予想通りの状況が。
 大量の足。
 重装甲のフルプレートの、足。
 それより上には視線を上げられないし、周りを見渡すことも出来ないが、囲まれている。
 ぶら下げた大剣や、斧や、槍や、何かドリルのような物々しい武器がちらりちらりと見える。魔力砲を装備したのもいるだろうか、見えないが。
 どうやら大歓迎の様子である。
 そして、視界を埋め尽くすかのような大量のドールタイプの足に、4本だけ、別の足が見えた。
 これはもう、完全に自分はリタイアである。抵抗したり足掻いたりする以前の問題で、身体が動かない。
 笑ってやるかとも思ったが、どうやら笑う体力もないようだ。
 再びアルフは眠るように目を閉じて。
「あと、たのんだよ……」












「心得た。ゆくぞシャマル」
「前線は得意じゃないんだけど……シグナム、一応私も守ってね?」











 いっそ冗談のような魔力濃度。
 転送して出てきた先は、噎せかえり酔いそうな位に魔力が濃い場所だった。
 超巨大と言えるほどに大きくなった魔力の塊は、さらに大気中のその魔力をかき集め始める。元が大きいから、魔力の回収率もとんでもなく高い。星の大きさと重力の関係のようなものである。
「げほっ、ごほっ――ンだこれっ!?」
 空間に残留するあまりの魔力濃度に、なのはの後ろに控えるように一緒に転送されてきたヴィータが思いっきり咽ていた。ヴォルケンリッターである彼女は魔力に対して根本的に人間とは違う感覚を持っている、その為だろう。
 チャージしまくった魔力の塊が、その空間に残留する魔力をガンガンと吸い上げる。魔力素の流れそのものは物理的干渉を及ぼさないはずなのに、なのはもヴィータもまるで魔力素と一緒に塊へと吸い上げられるような感覚に襲われる。
 ぎっ、となのはは奥歯を噛み締める。
 カードリッジ1200発より、魔力の収束がきつい。全力を持って放出したフェイトの魔力と、それに対峙した縁の魔法で放出された魔力、その量が一気に集まってくる。縁の使用する魔法術式を使用してようやく耐え切れるくらいの集まり方だ。
 胸の奥が、ギシリと痛む。
 心臓の奥が、ギシリと痛む。
 何か、何かに、皹が入った。そんな気がした。
 気のせいだ。気のせいじゃないにしろ、それは後で考える。
 奥歯を噛み締めながら、なのはは即座にヴィータに号令を投げ掛ける。
「ヴィータちゃん、リンク開始っ!」
「ごほっ……よっし、やるぞアイゼン!」
(( Ja.))
 その号令に、ヴィータとアイゼンが応えた。
 なのはの足元に展開する、その奇妙な縁と同じ魔法陣の上に重なるように、真紅の輝きを放つベルカ式の魔法陣が展開される。
「私の目を、甘く見るなよっ!」
(( Die Augen des Falken!))
 己に言い聞かせるかのような咆哮と共に、ヴィータの眼前、両目のすぐ前に小型の魔法陣が展開される。ベルカ式の魔法陣が目を覆うように展開される様子は、まるで趣味の悪いサングラスのようである。
 そして、その状態のままヴィータは桜色をしたその魔力の塊を睨み上げる。
 眼前に展開された魔法陣が、強く輝く。
 同時に、にぃっ、とヴィータの唇が三日月形に吊りあがる。
「なのはっ! “見える” か!?」
「良い感じ! レイジングハート、ターゲットロック!」
(( Target lock.))
 返すレイジングハートに、なのはとヴィータは同時に頷いた。
 見える。
 そう、よく見える。
 巨大な巨大な魔力の塊の、光り輝き太陽のような魔力の塊の、その向こう側が。
 よく見える。
 全てを見通す、その鷹の目の名を与えられた魔法によって。
 しっかり見える。

 塊の向こうにいる、縁の姿が、見えるのだ。

 ヴィータの視力はそもそも人間よりも高い。
 勘違いされがちだが、ヴィータは接近戦オンリーのヴォルケンリッターではない。遠近両用で戦えるポテンシャルを与えられているのだ。だからヴォルケンリッターの中では最も目が良い。
 例えば、なのはの超長距離の砲撃射程でどうにか届くその位置から、しかもなのはからはレイジングハートの精密照準という補助をしてもらってどうにか狙いを定められるその位置から、なんの補助も強化魔法も使用せずともなのはが持っているレイジングハートのモードチェンジを確認できるくらいには視力が良い。
 それをグラーフアイゼンの精密標準の補助を受け、視力の強化魔法の一種である魔力壁の透過魔法によって、なのはのその魔力の塊の向こう側を透視し縁を探し出した。
 そして、それをデータとしてなのはに渡して。
「対衝撃体勢!」
「もうしてるっ! 遠慮しないでぶっ飛ばせ!!」
 なのはへと縁の位置を伝えたら、ヴィータは即座にその場からフェアーテにて後ろへと跳ぶ。30mは距離をとり、着地と同時にその場に這うようにしゃがみ込み、同時にパンツァーヒンダネスを全包囲に展開。更にはパンツァーガイストにてもう一重守りをつける。
 それを確認することなく、なのは股を開き踏ん張るようにして腰を落とす。
 ヴィータからのリンクは途切れ、魔力塊の向こうにいる縁の姿は “真っ白” な光のそれに阻まれて今はもう見えない。ただ、視界に重なるようにしてターゲットサイトだけは見える。そのサイトの先に、縁はいる。
 くっ、とヒクつかせるようになのはの喉が鳴った。
 まるで笑うかのように。
 自分はいったいどこで間違えたのだろうとか、縁に攻撃したくないだとか、ここで失敗したら間違いなく皆殺しにされるという結末が待っているだろうとか、そういう悩みは全部置いてきた。
 今は悩む時じゃない。
 やる時だ。
 ただただ思うのは、縁のことで。
 縁を、止めたいと。
 その一心で。
 今、縁が暴れているのは、結局自分が謝らなかったから。縁のことを分かろうとしなかったから。自分達が魔導師だから。だから止めたいとか、責任があるから止めたいとか、そんなごちゃごちゃした理由は特にない。
 ただ、止めたい。
 壊して、殺して、泣くことも喚くことも出来ないその身体で暴れる縁を、止めたい。
 たった、それだけ。
 その為に、全力を向けて。
 そう、全力全開だ。
 グリップを強く握る。
「全力、全開」
 ぼそっと、無意識にその一言を呟く。
 全力全開。
 全ての力を、全て注ぎ込む。
 全力全開。
 もしこれで自分の身体が壊れても、惜しくはない。
 全力全開。
 小出しはない。乾坤一擲。
 全力全開。
 全ての魔力に、命を上乗せしても構わない。
 この一撃で、縁が止められるのだとしたら。
 魔力も全部持っていけ。身体も全部持っていけ。命も全部持っていけ。想いも全部持っていけ。
 高町なのはの、全部を使う。
 正真正銘の、全力全開。
 正真正銘の。

「最大……出力っ!」

 真っ白な光が、一気に輝く。
 本当に、太陽のようだった。
 なのははもう、その光の色が分からない。分からなくなってしまった。
 もしかしたら圧縮し過ぎて血のように赤くなっているのかもしれない。もしくは縁の魔法術式を通したことで青い光になっているのかもしれない。それはもう分からない。
 分からないが、なのはは自分の魔力の色が、桜色以外の色をしているのが想像できない。自分が魔法を使えば、いつだってその色だったのだ。
 太陽のように輝くそれを見上げながら、その輝きに飲み込まれずにしっかりと縁を捉えているだろうターゲットサイトへとなのはは意識を集中させる。
 太陽のように。
 闇を照らし、夜を祓う太陽のように。
 そんな馬鹿な。縁の友人関係に真っ先にヒビを入れたような自分が、何を言っている。
 自分は夜を祓う力はないし、闇を照らせるほどに出来た人間ではない。昔からそうだ。アリサと友達になる前に大喧嘩して、フェイトやジュエルシードの事に神経を傾け過ぎてアリサを怒らせ、結局フェイトの事情を悟ることもフェイトの母を救うことも出来ず、ヴィータに話を聞かせてもらおうとした時には既に手遅れで。高町なのはは、いつだって馬鹿な失敗と己の無力さのみを思い知る、その程度の器しかない。
 だけど、いや、だからこそ。
 闇を照らせずとも、夜を祓えずとも、せめて、せめて足元を照らせるくらいの光には、なりたい。
 せめて、せめて。
 闇夜の空に輝く、その光くらいには。

「スターライト――ッ!」

 そう、せめて、星の光くらいには。
 縁の中にある闇に、たったの少しでも差し込むくらいの光くらいには。
 こんな馬鹿な自分でも、誰かの足元を照らせる光くらいには。
 なりたいと、思うから。
 なのはの身体に強力な重圧がかかる。
 グリップを握り締め、その重圧に耐えながらも、なのはは最後のトリガーキーワードとなる言葉を叫ぶ。
 砕け。
 壊せ。
 悲しみも、心の闇も、全てを破壊しろ。
 高町なのはの全てを持って。

「――ブレイ、カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」












 赤い目。
 左側だけ異様に延びた犬歯。
 一瞬だけだが、月村すずかを中心として気温が2・3度下がったような気がした。もちろんそれは錯覚なのだろうが、クロノの腕に僅かに立った鳥肌は未だに引く気配がない。
 ノックする要領でブチ破った扉に出来たその穴の先に、アリサがいた。
 頭を抱え、真っ青な顔で震えているアリサが、真っ暗な部屋の中にいた。
 何が起きたのか、そんな風に怯えたような目を向けているのがここからでも分かる。そして、何が起きたのかはクロノにも分からない。
 すずかが豹変した。
 そうとしかクロノには表現できなかった。
 扉を貫いた腕を引き抜き、すずかはゆっくりとその腕を再び振り上げる。
 扉の向こうで、アリサの震えが酷くなり。

 強烈な破砕音と共に、扉が開いた。

 鍵を壊し、扉を強引に開けた。たったそれだけの行為である。
 ドアノブは変形し、蝶番が一部外れ、扉に罅が走ったが。
「ひ……っ!?」
 扉が簡単に壊されたことに怯えたのか、それとも簡単に扉を壊したすずかに怯えたのか、アリサは咄嗟にうずくまる。
 対してすずかは、能面のように無表情で、鍵を壊した扉をゆっくりと開く。
 暗い部屋の中に、光が射した。
 クロノが前にアリサと会ったのは、屋上からの飛び降り自殺未遂の騒ぎがあった時だ。結局アリサは気を失ってまともに言葉を交わしてなかったが、その時と比べると、アリサもまた豹変していた。
 痩せた。
 それがクロノの第一感想だった。
 別に前のアリサが太っていた訳ではないのだが、見るからにアリサは痩せていた。窶れていたと言っても良い。
 そして綺麗だった髪が、今はくすんで見える。活発だった雰囲気は既になく、周りに怯え周囲を拒絶する、PTSD患者のような雰囲気しかない。
 変えることなく冷たい無表情で、ゆっくりとすずかは部屋の中へと足を踏み入れた。
「おい、すず――」
「黙って」
 思わず止めようとしたクロノを、すずかはきっぱりとした一言で遮った。声が随分と冷たく感じられる。
 人間じゃないな。
 すずかの一言に口を閉じたクロノは、頭の中でぽつりと呟く。
 別に、クロノにとって亜人は珍しい存在ではない。どこにでも見かけるポピュラーな存在という訳ではないが、仕事上、そういう種族と会うことは人よりも多い。ヴォルケンリッターを家族にしている捜査官の少女には及ばないが。
 すずかが部屋へと足を踏み入れると、アリサの身体の震えが一層酷くなる。
 雰囲気が、ドアを破った方法が、アリサももう悟っているのだろう、すずかが人間とはかけ離れているのだと。
 何事だとメイドが数人、ようやく駆けつけてきた。
 今の現状を説明するのが面倒以前に、今のすずかを他の人に見せるのは得策ではないだろう。大丈夫です、少し任せてくださいと、その場から駆けつけてきたその数人に対して声を張る。困惑、と言うより胡散臭そうな視線が痛い。
 き、とすずかの足音。
 うずくまって震えているアリサの目の前に立ち、見下ろしていた。
「や……やだ、やだっ!」
 悲鳴のようなその拒絶の言葉とともに、手近にあったクッションをすずかに向かってアリサが思いっきり投げつけた。
 ぼすっと、すずかの胸にクッションが当たる。避けも払いもなく、そのクッションをすずかは黙って受けた。当たったクッションは重力に引かれ、丁度アリサとすずかの間に落ちる。
 それをすずかは黙って見下ろす。
 更にアリサがクッションを掴み、思いっきりすずかに投げつける。
 黙って受け止めた。
 ヒクつくように小さな悲鳴を上げてから、アリサが後ずさる。そして後ずさった分、すずかがゆっくりと詰める。
 黙って。
 クロノの位置からは、その表情は見えない。
 ただ、アリサのその怯えきった表情が、よく見える。
 詰め寄ってくるすずかから逃げるように、真っ青な顔をしたアリサはまた後ずさる。そして、すずかはその分ゆっくりと詰め寄る。
 クッションを投げつけられ、携帯電話の充電器スタンドを投げつけられ、本を投げつけられ、それでもすずかは黙って後ずさるアリサに詰め寄る。ゆっくりと、ゆっくりと足を進める。
 ゆっくりと、黙って。
 がんっ、と頭にゲームソフトのパッケージが直撃した。それでもすずかは一切動じない。
 そうして追いつめるように詰め寄ると、アリサはいつの間にか壁際まで追いやられて。
「ぅ――っ」
 どん、とその壁に背中を打ちつけた。
 それを目の前で無言のまま見下ろし、そしてすずかは片膝を立てるようにしてゆっくりと腰を下ろす。
 反射的だろうか、まるで身を守るようにアリサは頭を抱えようとしたのだが、その手をすずかががちりと掴み、のぞき込むように顔を近づけ、掴んだアリサの腕を壁に押しつけた。
 アリサの目が、大きく見開かれた。
 恐怖や怯えというよりも、驚いたように、見開かれた。

「私がね、もし、おばけだったら」

 思わず、クロノも目を見開いてしまう。
 その声は、すずかの声は、震えていた。
 それは、涙声だった。
「おばけ、だったら」
 震える声で、絞り出すようにすずかがもう一度繰り返す。
 顔を近づけて、覗き込むように。
「アリ……アリサちゃんなら、どうする?」
 小さく、アリサが息を飲んだよな音が聞こえた。
 その言葉に何の意味があるのか、クロノは知らない。知らないが、その言葉にアリサが反応したのは確かだった。
 すずかに壁へと押さえつけられながら、すずかに顔を覗き込まれて、その赤い目を間近で見ながら、アリサは目を見開いていた。
「あの時ね、あの時、私――救われ、たんだよ? 凄く、凄くね、救われたんだよ?」
「す、ず……か?」
 まっすぐに、涙目になっている親友の目をまっすぐ見ながら、アリサはその名を小さく呟いた。
 あれはかつて、すずかの口から問われた言葉。
 縁がなのは達と積極的に関わろうとし始めた日のことだ。自分以外に関心を向ける縁に対して臍を曲げて拗ねて、保健室で昼食を食べようとした日のことだ。保健医に相談事をしていたすずかから、出た言葉で。
 人間に凄くそっくりなだけで、実は人間じゃなかったとしたら、アリサはどうするのかと、そんな質問だった。
 そう、目が血のように赤く染まり、左の犬歯だけが牙の如く伸びた、この親友が、問うたのだ。
 人間じゃ、なかったら。
「こんな馬鹿みたいな質問に、真面目に答えてくれたよね。本当にね、凄く嬉しかったの」
 腕を握ってくるその手に、力が込められた。
 痛い。
 痛いが、振り払う気が、まるで起きなかった。
 ああそうだ。
 ああそうだ。
 ああ、そうだ。
 自分はかつて、すずかに対して、答えた。
 何て?
 何て答えた?
 茶化しているつもりだろうが余裕がまるでなく、意を決して口にしたようなすずかのその問いに、はたして自分はなんと答えたか。
「アリサちゃんに何があったかは、なのはちゃん達から聞いたことしか分からないし、アリサちゃんが塞ぎ込む理由は想像することしか出来ないけど」
 震える声を整えるように小さく深呼吸をしながら、呟くように、搾り出すように、すずかは言葉を漏らす。
「縁ちゃんに酷い事言って、会えないって言うなら分かるよ。酷いことして、顔が合わせられないって言うなら分かるよ。縁ちゃんが人を殺したのを目の前で見たのが怖いって、そういうなら分かるよ……けど」
 それは全部あたりだ。
 縁に酷い事をしたし言ったし、それで合わせる顔がない。
 縁が人を殺したことが怖くて会いたくない。
 そして縁が。
「縁ちゃんが人間じゃないって理由で、怯えないでよ、嫌わないで」
 縁が、化け物だから。
 怖いから。
 だから、会いたくなくて。
 怖くて。怖くて。あの異形の姿が、あのエイリアンのような、悪魔のような、醜い昆虫のような、そんな姿が怖くて。
 怯えるなと、嫌うなと、簡単に言ってくれる。
 すずかは、その縁と会った事がないから言えるのだ。
 そう言い返してやろうと反射的に口を開きかけるが、すずかの目を見て、その赤い目を見て、何も言えなかった。
「嘘にしないで……アリサちゃん、お願いだから……嘘に……」
「あ……ぅ」
 涙が、流れていた。
 一筋、二筋、涙が流れる。
 赤い赤いその目を、潤ませて、涙を流す。
 それでもすずかはアリサの顔を覗き込んでいた。アリサの目を見ていた。
 嘘に、嘘にしないで。
 何を?
 ああ、自分はあの時、あの質問に、何て答えた。
 すずかが救われたと、嬉しかったと、そう言ってくれるような答えって、何だ? 自分はなんて言った?
 言葉に詰まるアリサに、すずかは涙を拭く事なく口を開く。

「ねぇ、アリサちゃん、私、人間じゃないの」

 だ、ろうな。
 人間じゃ、ないだろうな。
 それは、扉が破壊された瞬間に悟った。
 縁と同じ感じがすると、そう悟った。
 だが、それをはっきりと口にされると、ショックがある。
 あ、と口が開く。
 壁へと押さえつけられた腕から力が抜けた。
 すずかが人間じゃないと、そうはっきり言われると、身体が震えてしまう。
 赤い目、その牙、その雰囲気、纏う空気さえも違う。人間と同じ姿だというのに、違う存在だというのがひしひしと感じてしまう。
 人間と違う、と言うよりも、縁と同じ言い方をするならば。
「“化け物” なの」
 ぶるっと、身体が一層酷く震えた。
 縁と同じ。
 縁と同じ、“化け物”。
 違うと言いたい、否定できる要素を上げたい。だが、悟っている。すずかが人間じゃないなと、既に悟っている。目が、牙が、その肌を刺すような空気が、人ではないと主張している。
 だが、悲鳴は口から出なかった。
 取り乱すことも、なかった。
 目の前にそのすずかの顔を見ていても、あの “姿” の縁を見た時のような感覚には、ならなかった。
 だって、だってそうだ。

 すずかだ。

 目が赤くても、牙が伸びていても、目の前の少女はすずかだ。
 これは違う、目の前の少女は人間じゃないと本能が訴えても、やはりすずかにしか見えない。
 縁と違って、体格が変わる訳でもない。
 縁と違って、腕が更に生えている訳でもない。
 縁と違って、顔が別物にすり替わる訳でもない。
 縁と違って、見るからに化け物、という訳では、ない。
 縁と違って。
 人間じゃないと言われると、納得できてしまう自分もいる。だが、“化け物” だと言われると、それは違う、ような。
「たまたま人間とそっくりなだけの、たまたま人間と似通っただけの、縁ちゃんと同じ “化け物” なの」
 そんなアリサの考えを知ってか知らずか、もうキスが出来そうなくらいに顔を近づけてきたすずかがはっきりと否定してきた。
 たまたま人間とそっくりなだけの。どこかで聞いたようなフレーズだった。
 ああ、いや、どこかでじゃない、保健室だ。
 あの時、そうだ、あの時すずかがした質問に、似たようなフレーズがあって。
 たまたま、人間とそっくりなだけで。
 でも、本当は全然違う存在で。
 ……本質的には、縁と同じ人外で。
 縁と同じ。
 いや、すずかは、縁と違って。
 だけど、縁と同じで。
 あ、れ?
 違って、同じで。
 今、盛大な矛盾を感じた。
 ぱっと、すずかが手を離す。押さえつけていた腕を解放してくれた。
 重力に引かれるように、腕がすとんと落ちる。それでもアリサはすずかの目をまっすぐ見る。
「ねぇ、ねぇ、アリサちゃん」
 語りかけるように、問いかけるように。
 片膝立ちだった姿勢から、すずかはアリサの前に座り直す。膝が当たっている。正真正銘、膝をつき合わせている格好である。
 押さえつけていた腕を解放されたにも関わらず、アリサは逃げようという考えが湧いてこなかった。
 ただ、熱が出そうなほど、頭が回る。思考が回る。
「私ね、“化け物” だっていう縁ちゃんの姿、見たことない。見たことないから、余計に思うよ」
 そう、すずかは、見たことがない。
 縁のあの姿を、見たことがないはずである。
 あの、“化け物” の姿となった縁を。
 “化け物” の、姿。
 姿。
 そう、姿。
 すずかとは違い、人とかけ離れた姿。
 すずかと同じく、人ではない存在。
 違って、同じで。
 姿は、違って。
 中身は、同じで。
「皆が言う、アリサちゃんの言う、“化け物” って、結局縁ちゃんだ、って」
「――――」
 そう、縁だ。
 あれは、そう、縁だ。
 縁だ。
 姿は、縁と違って。
 中身は、縁と同じで。
 だってあれは、縁で。
 あ、あ、あれ?
 あれ?
 え?
 ぱくぱくと、アリサは酸欠の金魚のように口を開いたり閉じたりする。だが、言葉が出てこない。
 違って、同じで。
 全然違って。
 結局は同じで。
 あの化け物は、あの異形は、あの怪異は、縁で。
 縁で。
 コンビニの自動ドアに顔面から突っ込んで、買い物の仕方が分からなくて、猫を助けて車に轢かれ、子供を助けて泣かれてしまい、犬を助けて溺れかけ、タマゴサンドが大好きで、煎茶が大好きで、サプリメント中毒で、部屋のリフォームがプロ並みで、テストはいつも満点で、だけど常識がなくて、友達とのつき合い方が絶望的なまでに下手くそで、肌を晒すのを極端に嫌がって、年がら年中長袖で、女の子らしい喋り方が出来なくて、百貨店の自動ドアには挟まれて、料理が何一つ出来なくて、頭は凄く良いのに無駄遣いしていて、マラソンでも汗一つかかない体力の塊で、冗談のように強くて、とてもとても優しくて、凄い純粋で、笑うととても可愛らしくて。
 ああ、縁だ。
 あれは、縁だ。
「――えに、し」
 自然と、言葉が口を突いて出た。
 縁。
 縁だ。
 確かに化け物だけど、あれは、縁だ。縁じゃないか。
 自分は、縁の外見で惚れたか?
 黒い髪も、黒い目も、小さな体も、猫目なところも、確かに好きだ。大好きだ。
 だけど、その外見に惚れ込んだか?
 ああ、ああ、ああ、ああ、違う。
 それは違う。
 違う。
 違うじゃないか。
 自分が、アリサ・バニングスが、縁を好きになったのは、そういう事じゃなくて。女の子なのに好きになってしまったのは、縁の外見に惚れたんじゃなくて。

 縁だからで。

「アリサちゃん、お願い、お願いだよ……嘘にしないでよ」
「――ぁ」
 ぼろぼろと涙を流し、膝を突き合わせて座るすずかが言う。嘘にしないでと。
「私を救ってくれた言葉――嘘にしないでっ!」
 あの時、あの保健室で、自分が幽霊だったらどうするかと尋ねた時に、アリサが返した言葉を嘘にしないでと。
 ああ、そうだ。
 そうだった。
 思い出してきた。
「ぁぅ……ぅ……嘘に、しないで……お願い――」
 泣くすずかを真っ正面にしながら、アリサはゆっくりとその頭へと手を伸ばす。
「お願い、だから――」
 ぽん、と頭へ置いた。
 すずかの肩が、跳ねる。
 そうだ。
 そうだよ。
 あの時の答えは。

「――どーも、しな、い」

 と、答えたじゃないか。
 涙で濡れるその目を、赤い赤いその目を、大きく見開いた。
「例え、すずかが……人を呪わなきゃ、生きていけない幽霊だと、しても……どーも、しない」
 言葉が出る。
 勝手に、突いて出る。
「朝はおはよう、夜はおやすみ、学校も、塾も、バイオリンも、ピアノも、茶道も、踊りの教室も、全部、今まで通り」
「……アリサ、ちゃん」
 そう、だ。
 例え、例えすずかが、何であっても。
 人間じゃなくても。
 化け物、でも。
 だから何だと、自分は言った。それでも変わらないと、今までの関係は変わらないと、そう言った。
 安心させる為に出た、口先だけの言葉じゃない。
 真面目に考えて、本心からそう言った。口にした。
「そっか……そうだ」
 誰に言うでもなく、アリサはぽつりと漏らした。
 人間だとか、人間じゃないとか、そんな難しい話は全部なしだ。

 あれは縁だ。

 そして、人を虐殺できる “化け物” だ。
 人ですらない。
 でも、縁だ。
 縁だ。
 幽霊が出てきそうなアパートに住んでいた縁だ。
 お茶の煎れ方を知らなかった縁だ。
 常識をよく知らない縁だ。
 毎食毎食カップラーメンか栄養剤だった縁だ。
 身体の小さな縁だ。
 病院が嫌いな縁だ。
 長袖愛好家の縁だ。
 髪が適当に切られている縁だ。
 持久走で記録を作れそうな縁だ。
 笑顔が可愛い縁だ。
 あの日から、休んだ時のプリントを届けたあの日から、友達として一緒にいた、縁だ。
 女の子なのに、アリサ・バニングスが恋をした、縁だ。
 人間だとか、化け物だとか、そういう小難しい事柄は全部横に置いて、あれは結局、縁だ。
「そうじゃない」
 そうじゃないか。
 自分が縁を好きになったのは “縁” だからだ。
 人間だから好きになったんじゃない、女の子だから恋をしたんじゃない、“縁” だから愛したのだ。
 だから、縁がどんな存在であっても、結局のところ縁なんだから。
 同じクラスで一緒に過ごした縁なんだから。
 アリサ・バニングスが恋をした縁なんだから。

「何も変わって、ないじゃない」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ロロナかわ(ry
 こんにちはこんばんは、読んでいる時間によってはおはようございます、アトリエが絶好調、クロガネです。

 アルフは残念ながら退場。拍手で見送ってください。
 そして不器用さんとケミカルクッキングにバトンタッチ。じわじわと八神一家のターンが近付いてまいります。

 これが縁であるはずがない。
 この化け物は、縁じゃ、ない。
 アリサが最初に看視者としての縁を見た時の1フレーズ。結局の所、その化け物=縁、という考えがされてなかった訳です。途中から “縁” “化け物” というのは別々の存在のように捉えられていましたので。


 しかしクロノ君、空気。ざまぁ。
スポンサーサイト

9件のコメント

[C660] クロノ

ざまぁwwwww
  • 2010-07-19
  • 投稿者 : なまにく
  • URL
  • 編集

[C661] まさに

○なまにくさん
 ざまぁ。
 まぁ、クロノ君の出番はまだ先だし。
  • 2010-07-19
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C662]

あら、アリサは縁が変化?するのを目の前で見ているのに「縁=化け物」じゃないんですか?
それは…現実をちゃんと見れてない、ってことでいいんでしょうか
それに自分としてはすずかはアリサの発言で完全に見捨てると思ったのになぁ…。人間じゃなくても関係ない、ということが前提で成り立った表面に出せる恋心だと思ったのに…
発想が並みじゃないなぁ、と思う反面、それに学んでいけたらなと
次も待ってますね!
  • 2010-07-20
  • 投稿者 : ひつまぶし
  • URL
  • 編集

[C666] その通り

○ひつまぶしさん
 暴行をされかける(上半身を晒しキスを許した)、恋心を自覚するも同性愛、縁が他の人とも仲良くしようとするので二人っきりになる時間が激減、淫夢を見る(暴行されかけたことにより性的な行為に拒絶反応あり)、同性愛の成立は社会的に難しいと考える、追い討ちのように同性であるすずかの告白、縁が嫌い発言を縁自身に聞かれる、自分の友達すら拒絶、縁を避ける、なのに欲情して性的行為を迫る、暴行未遂と淫夢のせいで性的な事に更に嫌悪感を抱いている時だったのでそこでクラッシュ、その嫌悪感の強い性的な事をわざと男にされようとする(後、自殺するつもりだった)、その男に暴力を振るわれ死にかける、縁が来たことにより安堵したらその縁が目の前で虐殺される、で、死んだはずの縁が生き返った直後再び目の前で頭を吹き飛ばされる、そして化け物に。
 まぁ、この現実を直視しろと言う方が……後書きにもちらりと書きましたが、縁が目の前で変化した場面では化け物の姿が縁である事を全否定してまして。
 ここでアリサを見捨てれば、すずかはもっと楽になったはずなのですが……
  • 2010-07-21
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C667] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • 2010-07-22
  • 投稿者 :
  • 編集

[C668]

今まで名無しですみませんでしあ!

やっぱり情報を制するものが戦を制するのですねえ
戦場を選べる、最適な戦力を投入できる、は何よりも利点かと

アリサはそういう逃避だったんですね
化け物=縁と気がついて「化け物」を克服したのは良いですが
「縁」が「化け物」に飲まれる可能性も有ったのかなと考えたりw
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : 庁
  • URL
  • 編集

[C670] コメントありがとうございまー

○ さん
 修正完了ですー。

○庁さん
 お名前インプット完了。
 戦いと言うのは始まる前に既に7割終わっているもの、という話があります。敵を知って己も知れば全戦全勝だという話もあります。情報収集と綿密な作戦というのは、戦争を仕掛けるときの絶対条件なのです。

 “縁” が “化け物” に飲み込まれてアリサに認識された場合――すずかに美味しく痛抱カレテBAD END。 
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C671]

アリサの発言を許容してしまえば、すずかもまた耐えられない?ここで更に最悪のパターンで、アリサがすずかを否定したいたら……と考えると怖いものがありますね。
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C672] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 アリサがすずかを化け物として拒絶したら。
 はい、BAD END。こんなところでしんでしまうとはなさけない。
 ……まぁ、うちのすずかなら、感情に任せてアリサの顔面を潰すかもしれませんが。
  • 2010-07-24
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

0件のトラックバック

トラックバックURL
http://kurogane951.blog78.fc2.com/tb.php/112-8c8afb28
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Appendix

うぇぶ拍手

拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

最近の記事

プロフィール

クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

名言集



presented by 地球の名言

羊が一匹羊が二匹

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。