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[C658] ありえないことはありえない(by強欲)

本編でも何か一つ違えば、このような未来になってたのか~

それにしてもこのアリサノリノリである。
  • 2010-07-07
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C659] しかしありえない

○ミヅキさん
 本作は本当に最悪なパターンを踏んでいるので、確かに何か一つ違えばこんな風になっていたでしょう。恋慈が誘拐犯殺さなかったとか、なのはがちゃんと謝っていたとか、そんだけの違いで。
 少し明るいアリサを書きたかったのさ……
  • 2010-07-08
  • 投稿者 : クロガネ
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[C669]

               ぅぉぇっぷ
           〃⌒ ヽフ
          /   rノ
         Ο Ο_)***  ※砂糖
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : 庁
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魔法の使えない魔法使いの魔法 短編その6 「アリサ、縁」

 久しぶりの短編です。
 相変わらずなのですが、『魔法の使えない魔法使いの魔法』 本編とはパラレルな世界と思ってください。今回はある意味、本編と同じ世界だとしたら、洒落にならない。
 
 ちゅういじこう。
1、アリサと縁しか出てきません。
2、アリサの理性がすこーしだけ、ほんのすこーしだけ、弱いです。
3、意味不明な話です。
4、健全です。
5、頬にキスはセーフ。

6、……本編中に、この短編の条件が揃う時間軸は、ありません。
7、ありえなかった世界の話、と思ってください。

 以上の注意事項に 「OK! Rock 'n' Roll!!」 という方のみ、↓ へお進み下さい。





 縁は幼い。
 同年代と比べると、学年を2つ3つ間違えているような感じがする、それくらい身体的に幼いような印象を受ける。それに話しかけてみると、知識があるところはあるが肝心な基礎知識がごっそり欠如している場合が見受けられる。
 見た目が幼い上に、話しかけると更に幼い。
 妹がいたら、こんな感じなのかも、と最初の頃はそう思っていた。
 後先考えず、猪突猛進で、世間知らずで、困っている何かを放っておけなくて、変なところは器用で。
 そして、姉に頼って、甘えて。縁のような妹がいたら、それはそれで毎日が充実しただろうなと、最初の頃はそう思えた。
 ただ、今ではその感情は別のものに姿を変えてしまっている。
 本当は最初から、縁に対するその感情は、その感情のまま存在していたのだが、己の色事に対して非常に残念無念なレベルに鈍感な自分が気がつかなかった。もしくは意図的に避けていたのかもしれない。
 それでもやはり、縁のような妹がいたらな、と思っていたのも事実である。
 事実である、が為に。







 縁に、お姉ちゃんと、呼ばれてみたいなぁ……







「ねぇ、縁」
「うん?」
 呼びかけに応えるように、顔を向け、まっすぐにアリサへと目を向ける縁は小首を傾げる。
 その仕草がいちいち可愛らしく感じる。世界中に声を大にして宣言したい気持ち半分、他の誰にも見せたくないような欲が半分、複雑なところだ。
 そんなアリサの個人的な意見は横に置いておく。
 バニングス邸、アリサの部屋、の一つ。主にくつろぐため、遊びのために使っている部屋だ。
 大画面のテレビを目の前にするよう、デカいソファーが陣取っていて、そこにアリサと縁は座っている。ソファーは広いのに、どちらともなく肩を寄せ逢っているものだから、かなりソファーが余っていた。
 そこでアリサと縁は他愛ない雑談を繰り返す。
 テレビはついていない。縁と喋るのに雑音はいらない。むしろほしくない。
 好きな人と二人きりの空間。
 片想いだろうと、その気持ちを一生告げることはないだろう相手でも、それで十分過ぎた。
 だからちょっと、緩んでいたのかもしれない。
 主に頭のネジが。
「ちょっと試しに……あー……」
 試しに、お姉ちゃんと、呼んでみて。
 うん、なるほど、変態だ。10秒前の自分は死ねばいい。
 口から出かけた言葉が、どうにか寸でで止まる。
「試しに?」
 言葉を濁したアリサに対し、容赦のない問いかけという追撃が入った。
 女の子としてはちょっと低い、それでいて遠くまで届くような通りの良い声である。アリサの好きな声だ。
 さて、その声でお姉ちゃんと呼ばれたら。
 ちょっと待って、と縁にタイムをもらい、目を瞑って軽く想像という名の妄想をしてみる。
 1秒、2秒。
 鼻血が吹き出るところだった。
「あ、アンス? どうした? 大丈夫か?」
「ちょっと待って、もうちょっと待って、まさかこんなにダメージがくるとは思わなくって……」
 突然顔を真っ赤に染め、次の瞬間には鼻を両手で押さえて顔を背けたアリサを心配するように、縁が背中をさすってくれた。その行為はアリサへ精神的に追加ダメージを与えている、主に理性という名の部分に。
 なるほど、なるほど、フェイトの気持ちがよく理解できる。
 縁と出会うまで、何だろうこの変態は、とたまに思っていたのは謝る。土下座したって良い。
 大きく深呼吸をしてアリサは冷静になろうと努める。心臓が未だに踊り狂っていた。
 何と言うか、想像しただけで凄く良い、とかそんな次元ではなかった。致死量だ。どうやらアリサにとってハードルの高過ぎる行為らしい。
 静まれ、静まれ、と己に何度も呪文の如く唱えながら改めて縁に向き直った。
「……大丈夫か?」
 向き直ったアリサの顔を見て、縁が再び首を傾げる。
 せっかく戻りかけていたのに、アリサの顔が再び染まり始めていた。
 もう駄目だ、自分の頭はだいぶ犯されている。縁に。
「たまに思うのよね、縁がわざとやってるんじゃないかって」
「?」
 ぽそっと漏らしたアリサの言葉が聞こえなかったのか、それとも意味が分からなかったのか、縁は頭が反対側に倒れるように首を傾げた。
 可愛い。頭の奥で、ぷつっと何か穴が開くような音が聞こえた気がする。
 ゆっくりとアリサは縁へと両手を伸ばした。
 その頬を、手の平と違いぷにりと柔らかい頬を、包むように手を添える。
「ん?」
 アリサに急に頬を挟まれ、不思議そうな縁の顔を少し上げる。
 身長差、座高差からして、この角度。
 少し見下ろす。
 顔が真っ正面。
 綺麗な目をしている。話をするときはいつもその綺麗な目をまっすぐ向けてくる、アリサの好きな目だ。
 きょとんとした表情。
 顔を少し、近づけて。

 ちゅっと、頬にキスを一つ。

 柔らかい感触。ほんのりと、煎茶の香り。
 唇にしなかったのは、理性が残っていたからだ、少しだけ。
「わ……アンス?」
「ん、もうちょっと」
 少し驚いたような声を上げる縁を制して、アリサは縁の頬に何度もキスを降らせた。
 ちゅ、ちゅ、と。
 右も、左も。
 唇の近くにも、軽くキスをする。
 甘く感じる。頭がくらくらした。
「アンス、ん、ちょっとくすぐった、ぅんっ」
 熱に浮かれた頭で、くすぐったそうに笑い、少し身をよじる縁を眺める。
 可愛い。綺麗だ。そう思ってしまうのは、縁を好きだと自覚しているからだろう。
 黒い髪、黒い瞳、綺麗な少し低い声。好き過ぎて堪らない。縁の傍にいるだけで、うっとりしてしまう。
 何度も縁の肌を味わうようにキスをしてから、アリサは少し顔を離す。
 とびきり可愛い訳じゃないだろうが、それでもアリサにとって縁が世界で一番可愛い。乱雑に切られた髪やがさがさの手など、化粧どころか女の子として必要最小限の身だしなみも整えてないのに、そう思う。思ってしまう。
「ん、ふぅ。一体どうしたんだ?」
「ううん、何となく急にしたくなったの。スキンシップよ、スキンシップ」
 ようやくキスの雨が止んで、尋ねた縁に涼しい顔でアリサは切り返した。バニングスのご令嬢は表情を作るのが十八番である。
 スキンシップ、と確認するように縁が口の中だけで呟く。
 そう、スキンシップだ、少しだけ過激な。唇にしなかったからセーフである。
 そういうものなのか、と納得したような縁の頬から、ゆっくりと手を離す。縁の頬が少しだけ赤かった。
 と、急に縁の両手が、アリサの頬を捕らえる。
 堅く、がさがさした縁の手で、アリサの好きな縁のその手で、アリサの両頬を優しく包むように捕らえる。
 驚く暇もない。
 ぐっとアリサは引っ張られる。
 同時に縁は少し腰を浮かせて。

 ちゅ、とアリサの頬にキスをした。

 アリサの時間が静止した。
 キスは一回だけで、縁はすぐに両手をアリサの頬から離して再びソファーへ腰を下ろす。
 目を閉じて真面目な表情で、まるで今のキスを吟味するかのように唇に手を添えて少しだけ縁は考え込み。
「うん、これは良い」
 そんな、花が咲いたような綺麗な笑顔を向けてきた。
 ぶちっと、アリサの中で何かが切れる。

 それと同時に、縁の両肩を掴んで有無を言わせることなくソファーへと縁を押し倒していた。

「わっ」
 突然のアリサの奇襲に、縁は抵抗もなくされるがままに押し倒される。
 小さい身体。
 年齢よりもなお幼い。
 煎茶の香り。
 縁の香り。
 その体温。
 脳が焼き切れそうだ。自分の中で膨れ上がり、荒れ狂う激しい感情に、アリサはまるで逆らえない。
 脳も、身体も、感情も、魂も、もう駄目だ、縁に犯されきっている。もはや麻薬だ。縁という名の麻薬だ。我慢とか、無理。
 ちゅぅ、とアリサは縁の首もとに吸いついた。
 縁の味。
 縁の香り。
 縁の肌。
 縁の汗。
 うっとりと、アリサの目が細まる。
 堪らない。その全てが、アリサを破壊する。
 凶悪な麻薬だ。
 キスのように吸いつき、下を這わせる。
 縁の身体がぴくんと跳ねた。
「ひゃ、あ、ふふ……だ、駄目だアンス、これ、ははっ、あ、はははははっ」
 くすぐったいのか、身を捻りアリサから逃げようとする縁。
 させない。逃がさない。
 剥き出しの欲望と、ギラつく感情に従うように、アリサは縁の手首を掴み、そのままソファーへ押しつける。
 まるで、今から縁を犯すかのような体勢。
 興奮する。
 理性が吹き飛び、血が色んな所から吹き出しそうなほどに興奮する。
 舌を這わせる。
 笑い転げる縁のその喉を舐める。
 美味しい。美味しい。最高だ。世界のどんな調味料よりも、美味しい。
「アンス、はっ、ぅんっ……くすぐ、ふふっ」
 身体を丸め、伸ばし、身をよじり、逃げようとするもアリサに押さえつけられて逃げられない。
 はぁ、はぁ、とアリサの息が荒くなる。
 呼吸を整えるように唾を飲むと、意外なほどに大きな音がした。
「は、ん……ちゅ、ふ……おいし……ちゅ、ちゅ、ん……えにし、あん」
「ふぁっ、まっ」
 待って、とでも言おうとしたのか、それに構うことなくアリサは縁の喉元を甘噛みし、舐め尽くす勢いで舐め回す。
 ぴくっ、ぴくっ、と縁の身体が震える。
 足先をぴんっ、と伸ばし、痙攣しているかのように震える。
 愛おしい。
 美味しい。
 口を離し、再び縁の頬へと顔を近づける。
 喉を攻められるのを解放され、縁がほうぅ、っと軽く息を吐く。その息がアリサの耳をくすぐった。
 再び頬へとキスを降らせた。
 ちゅ、ちゅ、と軽く、でも何度も。
「んぁ、む……あー」
 やはりくすぐったそうな声を上げる縁が、一度深呼吸をするように大きく口を開け。

 かぷ、と、アリサの左の耳たぶを甘噛みしてきた。

「ふわっ!?」
 突然の反撃に変な声が上がってしまった。
 変な声、と言うか、なんだか少しやらしい声だった。
 驚いたせいか、少しだけ理性が戻り、ソファーへと押さえつけるように掴んで拘束していた縁の手首が、するりと逃げ。
 電光石火の早業とはこの事か。
 手首が自由になったと同時に、縁は左右の手を捻り、肘を回すようにしてアリサの手を振り払い、振り払った時の縁の手の位置が丁度アリサの腋の下。
 がちりと脇を掴まれるとの、アリサの腰を拘束するように右足をアリサの背中へと回したのは全くの同時。
 更にアリサの左の甘噛みしていた体勢のまま、密着させた頬を押すようにしてアリサの頭が右に押される。
 流れるようにして掴んだ腋も捻り、トドメに腰に回した右足でアリサの体勢をぐるんっと引っくり返し。
 びっくりだ。
 瞬き一つの間に、大勢が逆転している。
 と言うか、縁に押し倒されている。
 おかしい、さっきまで自分が縁を押し倒していたはずなのに、綺麗に返された。
 アリサのお腹の上に馬乗りになり、しかも右足を腰に回していた関係上まるで逃がさないかのように足でがっちりとホールドされている。あまり体重を掛けないようにしてくれているらしく、重くない。
 見下ろすように、そして勝ち誇ったかのように、縁が小さく笑った。
「はぁ、はぁ……さてアンス、はぁ、覚悟は?」
「ちょ、ちょっと待って」
「残念だアンス、はぁ、私のターンだ」
 縁にしては珍しく悪戯っぽい笑みを浮かべ、わきわきと僅かに両手を握り開きしてから、脇腹へと手を添える。
 ああ、なるほど。
 理性が吹き飛んでいた自分の行いを、縁はくすぐりまくるという行為だと思っていたようだ。
 何と言うか、恥ずかしい事をしたと言うべきか、はしたない事をしたと言うべきか。むしろ、一歩間違えればただの破廉恥な行いだった。
 馬鹿な事を。
 実に馬鹿な事をした。
 もう少しで縁を汚してしまうところだったと、自己嫌悪が今更ながらに湧き上がる。
 しょうがない。ここは大人しくくすぐられて、有耶無耶にするしか。
 そう思って。

 縁がくすぐり始めた直後、そんな考えは吹き飛んだ。

「ひゃっ、わ、ちょっ!? あはははははははははははははっ! ま、はははははっ!! やめぇえあああははははははははははっ!!!」
 生まれて初めて知った事がある。
 どうやら自分の弱点は脇腹のようだ。
 予想以上の反応に驚いたのか一瞬だけ縁の動きが止まるも、どうやらここがアリサの弱点なのだと感づいた縁の手の動きが一層ねちっこくくすぐりを再開し始める。
「わはっ! ははははははっ! や、やめ!? ひゃうっ!? はははは、あはははははははははっ!!!」
「スキンシップ、スキンシップ」
「ち、ちがっ!? だから駄目、はははははははははははっ!!」
 じたばたと暴れるアリサを難なく縁はホールドし、執拗につつくすぐり続ける。そう言えば護身術とか何とかやっているという事をすっかり忘れていた。
 心なしか楽しそうな縁を涙目で睨み上げるも、そんなのは一秒と我慢できない。
 くすぐったい。
 何だこれ。
 止めてと言おうにも言う暇もない。ひたすらにくすぐられている。
 やばい、これはやばい。笑い死ぬ、窒息しそうだ。
「な、はははっ! ははっ! ふっ!? ははははははははっ!!」
 狂ったように笑い続けるアリサは、苦し紛れに手を伸ばした。
 その手は、するっと縁の腋の下に潜り込み。

「☆△♯▼дбЯっ!?」

 びくっ、と縁の身体が硬直した。
「―――」
「………」
 何が起こったのか理解できていない縁とは対照的に、息を切らせながらもアリサはすぐにそれを悟る。
 なるほど、弱点見っけ。
 笑っていたせいか血行の良くなっているアリサの顔に、なんともサドい表情が浮かんだ。
 そして、未だ目を白黒させている縁の腋の下を掴みながら、アリサはゆっくりと上体を起こし。

 ぼすっと、そのまま縁を押し倒す。

「え? あ、アンス?」
「甘いわね縁、体格差を馬鹿にしちゃいけないわ」
 困惑している縁に対し、うふ、とアリサは小さく笑って返す。その笑みは未だにサドい。
 アリサの笑みに気がついたのか、縁の頬が一瞬だけ引き攣る。
 体勢は再び逆転された。しかも腋の下はしっかりと持たれたままだ。
「アンス、その、待ってくれ」
「残念ね縁、私のターンよ」








 しばらくの間、少女二人の笑い声が部屋の中を支配した。







「はぁ……はぁ……」
「は……は……」
 そしてその二人の少女は、お互いにソファーの上でぐったりとノびていた。
 息は荒く、全身汗まみれ。アリサの方にいたっては時々思い出したかのように身体がぴくぴくと痙攣している。
 結局お互いにくすぐり合いになってしまった。そしてお互いがお互いに互いの弱点を知ってしまったものだから、とても地獄のような惨状になってしまったのだ。
「は……は……すまない、は、アンス……」
「はぁ……はぁ……何が、はぁ、よ?」
「は……やり過ぎた」
「はぁ……奇遇ね、はぁ……私も同じこと謝ろうと……はぁ、してたわ」
 互いに調子に乗ってこの現状である。
 しかも、やり始めたのはアリサなのだから、どちらかといえば悪いのはアリサだ。それに最初は邪な気持ち満載で卑猥な行為に走ろうとしていたのだから、完璧にアリサが悪いと言っていいかもしれない。
 馬鹿だ、自分は。
 切れ切れの息を整えようと深呼吸しつつ、自己嫌悪が蝕んでくる。
「ただ、なんだか」
 ぽつっと、縁が漏らす。
 ん? とアリサは身体を少しだけ起こし、顔を向ける。
 上を仰ぎ見るようにしてアリサを見ていた縁と、目が合った。
 綺麗な、綺麗な、花の咲いたように綺麗な笑顔が、向けられた。
「楽しいな、こういうの」
 どきっとする。
 たまに思うのだ、縁はわざとやっているんじゃないのかと。
「そ、そう?」
「うん、こんなこと、したことなかったからな」
 少しだけ汗を浮かべながら綺麗な笑顔で告げる縁に、自然とアリサも笑顔が浮かぶ。
 作った笑顔じゃない。
 誰かに向けるような仮面の笑顔じゃない、アリサがお得意の作り笑いじゃない。
 自然と、笑えた。
「私も、楽しい」
「うん」
 自然と口をついて出た言葉に、縁は笑顔のままに頷く。
 そう言えば、こんな馬鹿なことするの、随分と久しぶりのような気がする。
 表情を作るのが得意で、いつでも自分を魅力的に魅せるために、自分を人に売り込むために、自在に表情を作ってきた。父の知り合いに、どこぞの社長に、父の会社の幹部にも、粗相のないようにそう育てられ、そう仕込まれてきた。
 だから、無邪気に笑うのが、逆に苦手で。
 いいや、だから、損得抜きで付き合える、縁といる空間が、幸せで。
「は……でも、ちょっと疲れたわ」
「確かに」
 そう返す縁は、すっかり呼吸が整っている。
 おかしい。マウントを取っていたのは自分のはずなのに。むしろ、腕のリーチ差でこっちが好き放題に縁をくすぐり倒していたはずなのに。
 流石にすずかとタメを張るだけの超人だ。回復力が半端じゃない。
 よいしょ、と身体を起こし、アリサは改めてソファーにどかりと遠慮なく座りなおす。
 それを見て、縁ものそのそと身体を起こした。
「ん」
 と、縁に対してアリサは自分の膝を叩いて示した。
 アリサにしては珍しく、足を閉じずに少しだけ足を開いた座り方。
「?」
 きょとんとした表情の縁の手を掴み、アリサは自分の方へと縁を引き寄せる。
 再びアリサは自分の膝を叩き、ふと気がついたように、そして訂正するように、少しだけ開いた足の間のところをぽんぽんと叩いて示す。
「ちょっと、ここに座ってみて」
「うん?」
 何だろうと不思議そうにしながらも、縁は素直にアリサの傍により――その足の間へと腰を下ろした。
 丁度、アリサが後ろから座って縁を抱き締めるような姿勢である。
 そしてそのまま、アリサは縁のお腹へ手を回すようにして後ろから軽く抱く。
「わ」
 驚いたように小さな声。
 縁の体温と、匂いと、存在を、間近で感じられる。
 頭の奥がくらりとする。
 目の前には縁の後ろ頭。
 乱雑に切られているその黒髪に、縁は軽く顔を埋める。
 縁の匂い。
 縁の香り。
 くらくらする。
 そのまま横を向くようにして、縁の後ろ頭に頬を置いた。
「アンス?」
「んー?」
 少しだらけた返答である。
 心地よい。ぬるま湯に浸るような心地よさに、アリサの表情もややだらしなくなっていた。
 心臓がどくん、どくん、と強く、早く、強烈な運動をしているというのに、何だかとても落ち着けていた。
「暑くないか?」
「あったかいわ」
「……あー、汗の臭いが」
「縁の匂いがする」
 夢心地のまま、少しぼんやりと応え返す。
 縁は小さい。
 学年を2つ3つ間違えているくらいに、縁の身体は小さい。
 なんとも収まりがいい。
「これ、いいかも……」
 ぽそっとアリサは声を漏らす。ほとんど無意識である。
 もぞ、もぞ、と時々縁は動くが、嫌そうではない。この位置からだと表情が見えないのが唯一残念なところか。ソファーの目の前にあるテレビをどかし、大きな姿見の鏡でも置いておきたい気分だ。
 少しの間だけ、無言の時間が流れる。
 嫌な雰囲気ではない。
 このまま昼寝をしても良い感じだ。
 縁を抱き枕にして昼寝が出来たら、さぞ素敵だろう。そんな馬鹿な事をふやけた頭で思う。
「……ん」
 すりすりと、アリサは感触を確かめるように縁の後ろ頭に頬擦りし、今度は反対側の頬を置く。
 縁の髪は、綺麗な髪だ。
 ただ、手入れが非常に残念である。
 綺麗な黒髪をしているのに、もったいない。
 乱雑に切ったこの髪形もそうである。整えたら、きっと今よりも可愛くなるというのに。
 すりすりと頬擦りしながら、ぽつっとアリサは口を開く。
「縁はさ」
「ん?」
「もう少し、お洒落してみたら?」
 率直な意見である。
 絶対可愛くなるのに。そう思う。
 それに対し、縁は首を傾げる。傾げた後ろ頭に、アリサがくっついて動く。
「私がか?」
「そ。髪とかちゃんと揃えて……ちょっと伸ばしてみるのも良いかもしれないわね」
「はは」
 素直に口にした要望に、何故か縁は小さく笑う。
 なによ? と口にする前に、縁が続けた。
 諦めたような声色ではない。悲観的な声色でもない。
 ただ、事実を告げるように、いつもと変わらぬ声色で。

「私じゃ、きっと似合わない」

 いつもと変わらぬその声色で、悲しい事を、ほざくのだ。
 眉を、顰めた。
「お洒落は可愛かったり綺麗だったりする人がすることだからな。私はとても」
 それどころか、縁は小さく笑いながらほざきやがった。
 ぷらぷらと足を揺らしながら、お腹に回されたアリサの手を取って縁は身体を摺り寄せる。顔は見えないが、嬉しそうだ。
 反対に、アリサの口はへの字に曲がっている。
 縁は、基本的にはいつもこうだ。
 自分に自信がないと言うのか。
「……縁は、可愛いわよ」
 縁の頭に頬を置きながら、ぽつっとアリサは漏らした。まるでブー垂れたような呟き方である。
 ぴくっと、縁の身体が跳ねた。
「そう言ってくれるのは、アンスだけだ」
「恋慈さんとか、あー、アステマさんとかは?」
「言われたことは、うん、ないな」
 やはり、少し笑うようにして縁は答える。
 胸の奥の方に、嫌な気持ちが溜まってくる。
 何してるんだ、あの兄と保護者は。可愛いと、そう一言言ってあげるだけで、縁は救われたのに。
 口を横一文字に結び、アリサは心の中だけで不満を漏らす。恋慈とアステマにマイナスポイントだ。恋慈と違いもとよりアステマへの評価はマイナスだが。
 すりすりと、縁の頭に頬をすり、アリサは小さく嘆息する。
「もうちょっと、自信持ちなさいよ」
 囁く声は、少し悲しそうな色になってしまった。
 しまった、声色を作り忘れていた。
 アリサの声のトーンが少し下がった事を不思議に思ったのか、縁が顔を上げた。上げたが、顔は見えない。
「縁は可愛いんだから、自信持ちなさい。お洒落だって、絶対似合うわ」
 縁の頭に頬を置くのを止め、今度は縁の頬に自分の頬をつけるかのように、縁の左肩へと顎を置いた。意外とこの体勢、抱き締めるのにしっくりとくる。
「……そうは言われてもな」
「何でそんなに自信ないのよ」
「本当に、可愛いなんて言われたことがないんだ」
 すり、と縁から頬をつけてきた。
 そう言えば、この頬にさっきまでキスしてたんだなー、と頭の片隅で考える。
 縁は可愛いと思う。
 惚れてしまったから随分と美化されているのだろうが、縁は普通に可愛いと思う。顔の形だって整っている。三白眼のせいで若干目つきが悪いが、猫目なのもキュートだ。小さいその身体も均等が取れている。
 それなのに縁は自分を可愛いと思っていない。女ならば誰しも、少なからず自分は可愛いと思っているのに。
 ぷらぷらと足を揺らしながら、縁は小さく溜息を一つ。
 笑うような口調で、小さく囁いた。

「教授に拾われる前は、気持ち悪いとか、醜いとか、そう言われてたからな」

 そう、囁いた。
 すりすりと、気にせずに縁は頬をすり寄せてくる。
 口を半開きにし、すり寄せられる縁の頬になすがままにされ、ぽかんとしてしまった。
 ああ、そうか。
 その一言だけで、十分に悟った。
 きゅぅ、と縁を強く抱き締める。
「ん……アンス?」
 小さい声で、縁しか呼ぶことのないそのニックネームで呼ばれた。
 答えるように、アリサは一度だけ縁に頬をすり寄せる。
「どれくらい、言われた?」
「うん?」
 呟くように尋ねたそれに、縁は小さく首を傾げる。頬が強く当たる。
「気持ち悪いとか、醜いとか」
 小さく、小さく、呟く。
 頬を寄せ合うほどに近い距離、大きな声など必要ない。
 囁くだけで、呟くだけで、密やかな声で十分だった。
 だから、困ったように縁が間を置いた息遣いが、はっきりとアリサの耳には届いていた。
「たくさん」
「……たくさん?」
「うん、たくさん、言われた。数は、覚えてないな」
「酷いところだったのね」
 それに対しては、縁は無言で返してきた。
 沈黙という名の肯定だ。
 縁が気持ち悪いとか、醜いとか、一体何処に目をつけた奴等だったんだろう。最低だ。
 胸がムカムカしてきた。それを堪えるようにして縁を又強く抱き締めると、苦しいのかもぞりと縁が身をよじる。
 そうだった。
 縁は、捨て子だったんだ。
 すっかり忘れていた。馬鹿だ、自分は。
 本当の親に、生みの親に、気持ち悪いとか、醜いとか、そう言われて育ったんだろう。虐待されて、捨てられて。
 それで自分に自信を持てとか、難しい話だ。
「縁は、可愛いわよ」
 声を作ろうと意識する事なく、優しい声色になった。
 少しだけ間を空けて、うん、と縁が頷く。
 髪がくすぐったい。
「縁の昔の境遇はよく知らないけどさ……でも、今の縁は、可愛いわ」
「そうだろうか?」
「そうよ」
 小さな声で、縁の耳元に囁く。
 縁の昔の境遇は、正直なところ全く知らない。興味は凄くあるが、それはきっと気軽に聞いていい話題ではないことくらい分かっている。
 それでも。
 昔が、どんなのでも。
 縁の生みの親が、実の親が、どんな奴だとしても。
 ボロボロの幽霊アパートで出会ってからの縁は、嘘じゃない。
 今の縁は、昔の縁じゃない。今の縁は結局、“今の” 縁なのだ。
「可愛いわ、可愛い。髪も綺麗よ、素敵な黒髪じゃない。染めないでね、もったいないわ」
「毛染めはちょっとな」
「それに、笑顔も綺麗よ」
 すりすりと再び縁の頬にすり寄せ、続ける。

「これから先、縁に可愛いって、いっぱい言う」

 宣言のように、約束のように、続ける。
 驚いたように、縁の息が漏れた。
「気持ち悪いとか、醜いとか、そうやって言われた分だけ、いっぱい言うわ」
「アンス……」
 それで、過去のことが帳消しになる訳じゃないのだけれど。
 それでもせめて、過去のことを引き摺らず、縁が今の自分に少しでも目を向ける助けになれれば。
「だからね……ちょっとは自信、持ってよ」
「……うん」
 頷きながら、縁がお腹へと手を回していたアリサの手に自分の指を絡めてきた。
 ザラザラとして、女の子とは思えないほどに硬い、そんな縁の手。縁の指。
 少しだけ、泣きそうになってしまった。
 こんなことしか言えない自分が、歯痒い。
「ありがとう、アンス」
「……ごめんね、上手いこと、言えなくて」
「ううん、凄く嬉しいよ、アンス。とても嬉しい……ありがとう」
 少しだけ沈黙が降りた。
 アリサが後ろから縁を抱き締め、縁はお腹に回されたアリサの手に指を絡めて握り、どちらともなく頬をすり寄せる。
 嫌な沈黙ではない。間がもたない訳でもない。
 とても落ち着ける、静けさで。
「アンスはあれだな、姉みたいだ」
 そしてふと、縁がその沈黙に小さな声で穴をあけた。
 姉。
 お姉ちゃんである。
「お姉さん?」
「うん。年上っぽい」
 同い年なんですが。
 そういうつっこみを入れるのは、ヤボか。
 姉みたい。
 頭の中で縁のその一言をリピートする。
 縁は幼い。
 同年代と比べると、学年を2つ3つ間違えているような感じがする、それくらい身体的に幼いような印象を受ける。それに話しかけてみると、知識があるところはあるが肝心な基礎知識がごっそり欠如している場合が見受けられる。
 見た目が幼い上に、話しかけると更に幼い。
 妹がいたら、こんな感じなのかも、と最初の頃はそう思っていた。
 思っていた。
 最初の頃は。
 その感情は、今や別の感情に化けたのだが。
「……ふふっ」
「ん?」
「ううん。私もね、縁って妹みたいだなって思ってたんだけどね」
 思い出したように小さく笑いながら、アリサは続けた。
 お姉ちゃん、か。
 一度で良いから縁にそう呼んでもらいたいなと、そんな変態な事を考えてはいたが。

「やっぱり、姉妹より友達の方が、しっくりくるわ」

 そう、しっくりこない。
 姉妹も良いけど、お姉ちゃんも良いけど、しっくりこない。いざ縁に姉みたいだと言われると、しっくりこないのだ。
 何でだろうと、考えるまでもない。

 アンスという呼び名以上に、縁に呼ばれて心を動かされる呼び名が、どこにあるというのか。

 何のことだと縁が首を傾げるよりも先に、アリサは縁を後ろから抱き締めたまま、ごろんとソファーに横になる。もちろん、縁も道連れだ。
 わ、と声を上げる縁に、アリサは小さく囁いた。

「ね、マイ・フレンド?」

「……うん、友達だ」







 家族より、姉妹より。

 世界で一番、愛してる。

 私の、友達。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 なんじゃこりゃ。
 こんにちはこんばんは、読んでいる人によってはおはようございアンス、全日本健全代表のクロガネです。キスは挨拶だよ、挨拶。

 思いつきで書いた短編ですが、なんともまとまりがない。
 本編が非常に糖度がないもんだから、クロガネが自分用にプロット組んだけど、書けと約2名に脅されて……嘘うさ。

 しかもこれ、書くならば縁が看視者だとバレる前に書くべきだったかと。バレる前だと伏線扱い、バレた後だと縁の言葉の裏が分かるという感じで。



 ……幸せそうな話を書いていたのに、何故かクロガネは胸がジクジクするのです。
 ………病気かな?
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3件のコメント

[C658] ありえないことはありえない(by強欲)

本編でも何か一つ違えば、このような未来になってたのか~

それにしてもこのアリサノリノリである。
  • 2010-07-07
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
  • 編集

[C659] しかしありえない

○ミヅキさん
 本作は本当に最悪なパターンを踏んでいるので、確かに何か一つ違えばこんな風になっていたでしょう。恋慈が誘拐犯殺さなかったとか、なのはがちゃんと謝っていたとか、そんだけの違いで。
 少し明るいアリサを書きたかったのさ……
  • 2010-07-08
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C669]

               ぅぉぇっぷ
           〃⌒ ヽフ
          /   rノ
         Ο Ο_)***  ※砂糖
  • 2010-07-23
  • 投稿者 : 庁
  • URL
  • 編集

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4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
kurogane951@yahoo.co.jp

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