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[C624] 仮に1on1だったら全員無理そうですが特に

あれ・・・・?ユーノ君の勝ちパターンが想像できないよ・・・・・

お仕事頑張ってください。
  • 2010-05-01
  • 投稿者 : なまにく
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[C625] 最初から無理に近い

○なまにくさん
 もしかしたら時間稼ぎの捨て駒かもしれません。うふふ。
 お仕事がんばるー。
  • 2010-05-01
  • 投稿者 : クロガネ
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[C626] ユーノがんばれ、超頑張れ

勝てないのは分かってる、淫獣だけにエロスを・・・
瞬殺じゃ、無理か・・・あれ?じゃあ何しにきたの?

とりあえず、不憫でならないすずかちゃんに救済を・・・
クロノならきっとなんとか・・・ハルヒだって何とかできたんだし。
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C627] なのは「絶望したの!出番なしに絶望したの!!」

>自首してください

そんで死刑になれと?
ユーノはこれだけの事した者がどうなるか想像もつかないのか?


フェイトどう考えても負けゲームくさい
トラウマは簡単には拭えないぜぇー




今回のアリサ
「アリサ・バニングスは10年待ったのよ!」
「再び縁と笑いあう日々のために!永遠の炎(エナーナルブレイズ)成就のために!海鳴よ!私は帰ってきた!!」

題して
魔法少女ブレイズアリサ
~エターナルブレイズメモリー~
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ルファイト
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[C628] コメントありがとうございまー

○ぎるばとさん
 ヒント。「戦術的勝利は譲ってやろう、戦略的勝利さえ勝ち取れば我等の勝ちだ!」 ……って事です。
 すずかはこの物語だと本当に踏んだり蹴ったりな子。もう一頑張りしていただきます。
 ちなみに、ここのクロノ君は基本的――嫌な奴ですよ、はい。

○ルファイトさん
>ユーノはこれだけの事した者がどうなるか想像もつかないのか?
 ヒント。そもそもユーノ君はその管理局自体潰れる事を知っている。そして自首するはずない事も知っている。問題なのは、それを “口に出して” 問う事に意味があり――
 ソロモンよ、私は帰ってきたぁぁぁぁぁぁぁっ!!
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : クロガネ
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[C629] 死にに来たかシャ……ユーノ!!

最終決戦開始、既に全員死亡フラグたってますな。特にユーノは攻撃魔法が使えないのに、何故に前線へ…最初から死ぬこと前提の足止めですよね、でも彼の場合、全エネルギーを防御に回せば、結構持つのかも。


この時点でクロノが地球、それもアリサの元に来る理由なんて…縁用の囮にする為とか普通にありそう。

  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C630] ガンジー君の見せ場到来!!…あれ?

よーし、ようやくスーパーガンザタイムだ!!・・・
あれ?囮組の未来がお先真っ暗な気が、いやそれでもジンザくんと有能ならなんとか、なんとか…なるのだろうか…が、頑張れ、とりあえず頑張って二人とも!!



ポメラさんはすごいですよね、自分も愛用してますポメラさん。
このご時世に充電式じゃなくて乾電池式なところとか大好きです。
  • 2010-05-03
  • 投稿者 : tfj
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[C631] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 みんなユーノ君好きだな。
 しかし、ユーノ君はバインド系統も結構優秀だそうなので、その気になれば決して戦えない訳ではないはず。
 クロノ君は、うん、嫌な奴ですから。

○TFJさん
 名前を間違えまくりの件。いや、スーパーガンザタイムだけ名前が合ってるものだから逆に違和感が。
 とにかく二人とも頑張って……死んでくれ?
 ポメラの割り切り方は以上。客層がはっきりしそうだ。
  • 2010-05-03
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 59

第10章――第3節
――対峙する者―――

「ちょっと、縁?」
 ふと、呼びかけられたその綺麗な声に、縁はふいに顔を上げた。
 見知った顔。見慣れた顔。
 縁の大好きな相手の顔。
 綺麗な髪に、それ以上に綺麗な目。整った顔立ちに真っ白な肌。正に美少女といって差し支えないその少女は、正直人間の醜美判断の基準がいまいち理解できていない縁でも、ああ、綺麗だ、と思えるくらいの少女であった。
 白を基調とした制服に身を包んだ少女は、しゃがみ込んで棚にあったその品をしげしげと見つめていた縁の顔を覗き込むように見下ろしている。
「ああ、アンス。見てくれ、これは何だろう?」
「何って……」
 すぐに縁はにこーっと笑顔を浮かべながらアンス、アリサ・バニングスへと持っていたその品を掲げるようにして見せた。
 見せられたアリサは一瞬きょとんとするも、すぐに口元に手を当てて小さく笑った。その笑みに縁は一瞬だけ見惚れてしまう。
 アリサの笑顔は素敵だ。
 笑えば可愛いと褒めてくれたが、笑って可愛いのはアリサの方だと思う。
 笑った顔だけじゃない。笑顔を作るのすら苦手な自分なんかとは違い、ころころと表情の変わるアリサの顔は、全く見飽きる気がしてこない。
 自分も、アリサのように笑える人になりたい。
 心の何処かでそう思ってしまう自分がいることに、縁は少し驚いてしまう。
 “人” になりたいとか、無理に決まっている。アリサ以外から可愛いなんて一言も言われた覚えのない自分が、アリサのような可愛い笑顔なんてできる訳がない。
 自分なんぞ、一皮剥がせば醜い化け物でしかないのだから。
「ネックレスよ、知らない?」
 少しだけ気が強そうな、ちょっとだけ高い声が耳元で転がり、そこで縁ははっと意識を戻した。
 気がつけば、アリサは縁の隣にしゃがみ込み、縁の差し出したそれを手に取っていた。幸いな事に、縁の方ではなく棚に陳列された他の品を見ていたようで、こちらの様子には気がついていないらしい。
 いけない、アリサとの時間なのに今、普通に気分が沈んでいた。
「ねっくれす? 首なし?」
 首を傾げて尋ねた質問に、アリサの方がかくんと落ちた。変な質問だっただろうか。
 苦笑するようにアリサが頬を掻く。ほら、またアリサの表情が変わった。
「Lessじゃなくて、Lace。首につける装飾品よ」
 そして諭すように優しく綺麗な声色で、目を瞑って人差し指を立てながら得意気に説明してくれた。ほらほら、またアリサの表情が変わった。
「そうか、首輪か」
「……いや、首輪って言われると普通、犬猫のかチョーカーの方を思い出すから」
「首……吊り?」
「随分不吉ね!?」
 ころころと、アリサの表情は変わる。呆れたようから、疲れたように、そして驚いたように、ころころ変わる。本当に、アリサを眺めていると楽しい。
 その変わる表情に見惚れていると、アリサは持っていたネックレスのチェーンを開き、自ら着けるようにそれを首に回した。
 銀のチェーン。
 赤い宝石、のつもりな硝子。
 シンプルなネックレスを首に下げ、どう? とアリサは自慢の髪を手で梳きながら胸を張る。随分と似合っていた。何をしても何を持ってきても、アリサは本当に何でも似合う。
 自分とは大違いだ。
「……何か言いなさいよ」
 と、見惚れていた縁へ、不満そうな顔でアリサが詰め寄る。
「うん、似合ってる。アンスは何でも似合うな」
「投げやりに聞こえるんだけど」
「そんな事はない。よく似合ってる」
「……あー、うん、ありがとう」
 照れた。可愛い。
 似合っているという以外に誉める言葉を持ち合わせていない縁の言葉は、ちゃんと理解してくれたらしい。ちゃんと言葉が伝わった事にほっとする。
 少し頬を赤くしながら、アリサがネックレスを外す。お試しは終わったようだ。似合っていただけに、外されるのは少し残念だ。
「縁も、着けてみる?」
 ネックレスを外しながら、そうアリサが問う。
 思わず自分が着けているところを想像してしまった。
「いや、私じゃ似合わない」
 失笑してしまう。アリサの着けた後に自分がネックレスを着けても、落差が激しいだけだ。まず似合わない。
 そんな事ないわよ、と言うアリサにも、縁は静かに首を振るだけにした。
 少し残念そうに、アリサはネックレスを棚に戻す。
「アンスの方が、ずっと似合っているからな」
 そう呟いた言葉が、アリサの耳に届いたかどうかは分からない。
 ただ、アリサの身体がぴくりと一瞬だけ固まったのは分かった。耳が赤い。暑いのだろうか。
「――――ばか」
 いきなり馬鹿にされた。












 目覚めはクソのような気分だった。
 破壊された市街地、廃墟と化したそこで縁は目が覚めた。
 随分と久しぶりの仮眠だった。3日ぶりくらいだろうか。どれだけ寝ていただろう。
 瓦礫に凭れた身体を起こしながら、縁は空を見やる。分厚い雲がかかっており時間がよく分からない。街を丸ごと吹き飛ばした時の塵が雲になったのか。
 くしゃ、と縁は髪を掻きあげた。
 人としての姿である。
 久しぶりの睡眠で、久しぶりに見た夢は、懐かしい記憶だった。いや、懐かしいと言うほど昔ではないが、懐かしいと感じてしまう夢だった。
 アリサとデパートに行った時の思い出だ。その時はやてもいたのだが。
 アリサの着けたネックレスは、よく似合っていた。
 よく似合っていたから、アリサへ護身用に贈ったのはネックレスになった。単純過ぎる。
 懐かしい。そう思ってしまう。2ヶ月くらいしか、まだ経ってないはずなのに。
 思い出が濃いと言うべきか。ただ学校に行き、ただアステマの家に行き、ただ家に帰って寝るだけを繰り返していた時間と比べて、アリサと交流を深めてからの時間は目まぐるしく、世界が変わったかのような時間だった。とてもとても、楽しかった。
 だから逆に、今が悲しく思う。
 ふるふると縁は首を振ってから、自分の頬をぴしゃりと叩く。
 化け物風情が感傷に浸るなど、笑い話にもなりはしない。
 ゆっくりと、縁は立ち上がる。雨が降りそうだ。
 少し肌寒くなってきたなと、縁は自分の腕をさすった。今、縁は服を着ておらず、傷跡だらけであるその裸体を晒している。
 さく、と荒れ地となったその地面を素足で踏み、縁は歩き始める。
 廃墟の街はすぐに抜け、一気に視界が広がるような、そんな何もない広い場所に出た。
 全て消え去った、クレーターと呼べる場所。
 縁が作った。
 丸ごと消滅させた。
 確か、確か何だったか、魔導師の基地だったかがあったと思う。よく思い出せない。
 魔導師を殺せたというのに、不思議と喜びが湧いてこない。慣れてしまったのかもしれない。あまりにも魔導師が弱過ぎて、馬鹿らしくなってきたというのもある。
 こんなに弱い存在に、自分は苦しめられていたのか。
 縁の心の中に、そんな疑問が湧いてきた。
 こんなに弱い存在を、今まで憎んできたのか。こんなに弱い存在を殺すのを、躊躇っていたのは何故だろう。
 ぼんやりとクレーターを眺めながら、縁はゆっくりと細く長く息を吐き出す。ため息だったのかもしれない。

 と、足音がした。

 少年だった。
 10に満たない、そんな少年。
 ナイフを持っていた。いや、ナイフと呼ぶよりも、包丁と呼んだ方が良いのかもしれない。
 縁は振り返ることなく、ぼんやりとクレーターを眺めたままだった。
 少年は震えていた。手も、足も、身体全体が震えていた。
 そんに震えながらも、手にしたその包丁を構える。
 たっ、と地を蹴った。
 5歩。少年の足で、縁に届くまでの距離だ。
 ぼんやりとしていた縁は、分厚い雲が支配するその空を見上げる。
 走り、少年はきつく包丁を握り締める。
 刺す。
 これで刺せばいい。
 包丁を握り締め、少年は縁へ詰め寄り。
「ぅ、あああっ!!」

 どすっ、と、その刃を縁の背中に突き立てた。

 血飛沫が舞う。

 少年の背中から。

 こほ、と少年がむせた。ついでに吐血した。
 少年の胸が、弾け飛んでいた。
「あ……?」
 間の抜けた声と共に、少年は崩れる。呆気ないほどに簡単に死んだ。
 ぼり、と縁は頭を掻く。何の感情も浮いてこない。
 青い目をした縁は、深く深くため息を一つしてから、背中に刺さった包丁を無造作に引き抜いて地面に捨てる。傷は、抜いた瞬間に癒えていた。
 人としての姿でも、最近は殺すようになってきた。
 人と化け物の境界があやふやになってきたのかもしれない。
 こき、と首を捻って鳴らしてから、振り返る。
 少年を見下ろす。少年だった “モノ” を、と言うべきなのかもしれない。胸が爆発し、顔が半分炭になり、左腕はどこかに行ったみたいだ。
 静かに、縁の身体に青い光の線が走り抜ける。
 ぼ、と少年が突然爆発した、跡形もなく。
 それを静かに見下ろしながら、縁は軽く目を擦った。
「…………?」
 何故か、雫に触れた。











「あ、子猫」
 アリサがそう声を上げたのは、長くのびた己の影を追うようにして帰宅する、そんな帰り道の途中の事だった。
 隣にぴったりと、寄り添うと言うのが最も適切なくらいにぴったりとアリサの隣を歩いていた縁は、そのアリサの声にまずアリサの顔を見上げ、次にアリサの見ているであろう視線の先へと顔を向ける。
 公園の片隅に、白くて小さな猫が座っていた。
 遠目でも毛並みが良いのが分かる。飼い猫だろうか。
 ぴたりと、縁の足が止まった。
 アリサは子猫の方へ向かおうと一瞬だけ足を向けるが、隣で足を止めた縁をちらりと横目で見てから、難しい顔で忙しなく子猫と交互に視線を動かす。
 縁は、子猫のもとへと向かう気は全くない。行っても逃げられるのは分かりきっているからだ。
「……ああ、私はここで待ってる」
 子猫を触りたいのだろうアリサに、縁はにこーっと作り笑顔を向ける。
 たぶん、自分が近寄れば子猫は逃げる。それを縁は分かっていた。動物は鋭いもので、化け物の部分を見抜いているのかもしれない。
 触りたくない訳ではない。
 近づいて怯えさせるのは、可哀想だ。
 む、とアリサが口をへの字に曲げる。
「縁は猫、嫌いなの?」
「好き、だと思うが」
「煮えきらないわね」
「あまり触らせてもらえなくて」
 触った事はあるが、大抵暴れて逃げ出す。撫でた事にいたっては全くない。それで好きか嫌いかと尋ねられても、判断に迷うところである。
 ふーん、とアリサは鼻を鳴らし、もう一度子猫へと視線を向ける。
 にぁ、と子猫が欠伸をした。
 アリサは頭をポリポリ掻いてから、しょうがない、というように軽くため息をついてから、縁の頭をくしゃりと撫でた。
 いきなり撫でられたことに、縁はきょとんとした表情を向ける。
「……その内、縁に懐いてくれる、そんな変わりものの猫が来るかもしれないわよ」
 髪を撫でながら、苦笑しながら、それでもアリサは優しい声色だった。
 軽く縁も笑ってしまう。 
「望み薄かもしれないな」












 化け物だと言われ続けた。
 作られた時から、ずっとそう言われ続けてきた。
 ひたすら強く。その為に身体を切られ、弄くられ、外見など一切考慮されずに改造された。
 強く、醜い。
 正に化け物のような奴だと、捨てられるその日まで、ずっとそう言われ笑われ蔑まれ、生きていたくもないのに生きてきた。痛くて、熱くて、苦しくて、それでも生かされていた。
 強く。
 強く。
 また、強く。
 “ヒト” という枠を飛び越して、ただ強くある。
 魔導師を圧倒し、悪を討ち、平和を守り護る存在になれと。
 その為に生まれた。
 その為に生かされた。
 それなのに化け物と軽蔑された。
 化け物だと。
 だから、“化け物” になるのだと決めた。
 人じゃなく、化け物になるのだと、そう決めた。
 悪を討てと言うのなら、いくらでも討ってやる。魔導師という悪を討ってやる。
 自分を苦しめた奴等を、失敗作だと自分を捨てた奴等を、殺してやる。憎き魔導師を皆殺しにしてやる。
 それが縁を突き動かす動機のはずだった。

 それなのに、気分が少しも晴れやしない。

 ちゃんと魔導師を殺している。容赦なく殺している。そのはずなのに、胸に溜まる陰鬱とした気持ちは一向に晴れることがない。
 と、と縁は素足のまま地面に降り立つ。
 足から伝わるその感触に、縁はふと我に返った。
「……あれ」
 若干間の抜けた声を漏らしてしまう。
 廃墟の街じゃない。
 視界一面、岩肌と砂ばかりの荒野の世界だった。
 木の一本、草の一本生えている気配のない、そんな終末の世界を連想するような荒野。
 ここはどこだろう。
 今更ながらに疑問が浮かぶ。
 先程までいた世界とは違う。照らす光の強さが違う。
 転送していたのだろうか。完全に無意識だった。
 きょろきょろと縁は周りを見渡し、遠くに見覚えのある鎧姿のそれを見つけた。
 兵士だ。
 管理局の者ならば、ドールタイプと言っただろうか。もう少し違う名前だったかもしれない。
 こんな辺鄙な場所にいるという事は、あれは見張り用の兵士だろう。
 という事は、ここは自分が根城としている星のどこかだろうか。キャンプ場としている所とは随分離れた場所に転送してきてしまったようだ。
 軽く嘆息を漏らしてしまう。何をやっているのだろう、自分は、本当に。
「――縁か」
 突然、名前を呼ばれた。
 驚くほどに透き通る、そんな聞き慣れたその声で。
 振り返るまでもなく、それが誰だか分かってしまう。
「……教授」
 振り向くと、予想通りの人がいた。
 青い巫女装束のようなのに身を包み、右手には最早御幣と呼んで良いのかどうかも怪しいそれを持った、恐ろしいまでに顔の整った美人である。
 アステマは振り向いた縁の顔を見て、ふむ、と軽く鼻を鳴らしながら持っていた御幣をごそごそと袂の中にしまい込む。
「侵入者かと思ったが、勘違いだったか」
 大して乱れてもいないその装束を直しつつ、アステマは少し残念そうに呟いた。何が残念なのだろうか。アステマは時空管理局が嫌いなので、管理局の魔導師ではなくて残念なのだろうか。
 どうやらドールタイプによるセンサーに縁自身が引っかかり、その駆除にアステマが勇んで来たようである。
 そこで縁は軽く首を捻った。
 この惑星の防衛を主に担当するのは、惑星各所に敷き詰めた20億の兵士と、そして恋慈だ。
 各地に配置している兵士と、元よりこの惑星の至る所に設置されていたセンサー機器による敵影の捕捉。そして捕捉した場所に恋慈が向かい撃退する。そのパターンである。そして恋慈が動けなければアステマが。アステマも動けなければ兵士の物量戦により撃退する事になっている。
 つまり、ここにアステマが来たという事は。
「恋慈は……対処中なのか?」
「ああ、10分程前なんだがな、まだ帰ってきていない。何を油売っているんだかな」
 涼しい顔のままアステマは返したそれは、恋慈が敗北を喫するとは欠片ほどにも考えていない信頼の現れでもあった。
 現実問題、恋慈は信頼に足りるほどに強い。生半可な相手では敗北などあり得ない程度には強い。質量兵器は平気で持ち出し、その改造されている兵器特性に合った戦い方をきちんと知っている。
 アステマはその綺麗な髪のことなど気にすることなく、がしがしと頭を掻きながら辺りを見渡した。それに釣られて縁も見渡す。
 何もない、広大な荒野。
「……何もない」
 そう、縁は漏らす。
「もしも、魔導師を全て殺し尽くしたら、縁はどうする」
 返ってきたのは、縁の漏らした言葉に対する何かの質問だったのか、それとも縁の発言自体をスルーしての問いだったのか。
 殺し尽くしたら。
 ぽつりと縁は呟いた。
 魔導師を殺し尽くしたら。
 それは、縁の復讐の目標点である。
 魔導師という魔導師を、殺して、殺して、殺し尽くして。自分を作り出し、苦しめ、痛めつけ、勝手に捨てた魔導師を全て駆逐して。
 縁は俯いてしまった。
 魔導師と言うならば、なのはやフェイト、そしてはやてにその家族も魔導師だ。殺し尽くすと言うならば、彼女達も殺さなくてはいけない。魔法から手を引いてくれればそれに越したことはないが、手を引いてくれそうにもない。
 そして、彼女達すら殺し、魔導師全てを殺し尽くしたとしたら、今の自分に何が残るというのだろうか。
 人としてを捨ててしまい、化け物として猛威を振るう相手を失えば、それで何が残るというのだろうか。
「教授は……」
「ん?」
「教授は、どうする?」
 顔を上げ、アステマをまっすぐ見上げながら問うそれに、アステマは唇の端を少しだけ持ち上げた。
「変わらんさ」
 実に端的なものだった。
 ここまで魔導師を殺して、ここまで非道を尽くしておきながら、変わらないはずがないだろうに。嫌いな時空管理局を蹂躙しておいて、何も変わらないはずがないだろうに。
 飄々としたアステマに、縁は軽く眉を顰める。
 その顔を見てアステマは小さく笑った。しょうがないな、というような、アステマにしては珍しい笑い方だった。
「日本に戻り、悠々自堕落の毎日だ。あの国はあの国でなかなか気に入っていてな、少なくても良いから適度に稼ぎ、死ぬまでのんびりとさせてもらうとする」
 言葉にしたそれは逆にアステマらしい内容だった。
 ただ、死ぬまで、と口にしたところで少しだけトーンが落ちる。
「まあ、死ぬのは随分先の話になるだろうがな……早く死にたいものだ、全く」
 ふん、と鼻を鳴らした。
 どこか疲れたような、呆れたような、諦めたような、そんな色が込められた言葉だった。
 少しだけ、縁の心に不安が湧いてくる。
 それを察したかのように、アステマは縁の頭に手を置きくしゃりと髪を撫でてきた。
 急に。
 唐突なまでに急に。
 アリサの顔が浮かんできた。
「安心しろ、どう足掻いてもお前達より先には死ねん。長く生きて生き飽きてはいるが、死にたがる程こんな身体を受け入れていない訳ではない。この身体とも折り合いはとうにつけてあるさ」
 くしゃくしゃと、そんな乱暴な撫で方で縁の頭を撫でながら、アステマは苦笑したように笑った。
 アステマは、そう簡単に死ねない。
 死ぬ事だけならば簡単に死ねるのだが、内包している大量の命のせいで強制的に蘇生してしまう。
 別に好き好んでアステマはそんな身体になった訳ではない。その身体のせいで、辛いことだって沢山経験しただろう。長く生かされてきて、辛い別れもしただろうし、迫害されたこともあるかもしれない。それをアステマ自身は決して口にしようとはしないが、長く生きて楽ばかりでは決してないはずである。
 そんな身体を、アステマは受け入れていた。
 自分とは、大きな違いであった。
 化け物にされた身体に、どこかコンプレックスを抱いているような自分とは、違う。受け入れられないのだ、自分が。
 きゅ、と縁は口を横一文字に閉じた。
 と。
 すっと、縁の瞳が青く染まる。
『おい教授、お客さんだ!』
 念話が届く。恋慈だ。
 無粋な奴だ、とアステマは口の中だけで呟きながら、空を見上げるようにして顔を上げる。気持ちが悪いくらいに快晴で、逆に不吉な予感しかしないほどに雲がない。
 少しの間だけ目を閉じて、アステマは深呼吸をしてから。
『受信した。2箇所同時の侵入者か……最初の頃のようだな、最近では珍しい』
『俺の所からだと7492A3874FC1970地点が近いから、そっち行かせて貰うぞ』
『さっきまでの相手はちゃんと片付けたか?』
『8方向からBRGの餌食ですが何か?』
『良い肥料になりそうで何よりだ』
 そこでアステマは視線を下ろし、縁を見やる。
 どこか不安げな縁の表情に、アステマの涼しい顔は崩れない。
「どうやら別々の地点に侵入者だそうだ。適当に帰ってもらうとしよう」
 ちょっと行ってくるというくらい気軽に言いながら、アステマはゆっくりと縁の頭から手を離す。急に寒く感じてしまう。
 こき、とアステマは肩を鳴らし、その一瞬でアステマの周りを覆い囲むように魔法陣が展開される。幾何学模様で構成されたそれは、平面ではなく球体の形を保つという、そんな普通ではない魔法陣である。
「あ、私も――」
「危なくなったら呼ぶ」
 私も行く、と言いかけた縁の言葉を、アステマはさらりと遮った。
 遮って、一瞬だけアステマは眉を顰める。
「このタイミングで同時侵入……囮か?」
 顎に指を当てながら呟くように口の中だけで漏らし、考え込むように数秒だけ目を閉じて小さく唸る。
 それをきょとんと縁は見上げると、アステマはその目を開いてからごそごそと仕舞ったばかりの御幣を取り出した。
 再びこきりと首を鳴らす。
「まあ、いい。縁は先に戻って何か食べていると良い。いってくる」
 縁の発言を待つ事なく、アステマはそれだけ言い残し。
 ふ、と一瞬で姿が消えた。
 転送である。
 あ、と縁は今更に何かを言いかけて口を開くが、それは当然間に合わない。アステマがいなくなった後をしばらく見やってから、縁はゆっくりとため息を吐く。
 何をやっているのだろう。
 それは心の中だけで呟いた。
 くしゃりと、アステマが撫でてくれた髪を片手で乱暴に掻きあげ――縁は自分の3本の腕を静かに見下ろした。
 傷だらけだが普通の人間の、普通の腕。
 そして、自分の脇から生え出た、枯れ木のように長く、肘と呼べる関節が1つ多い、ぬめりぬめった異形の腕が、2本。化け物の腕だ。
 アステマは自分の身体を受け入れていると言った。
 自分は、受け入れていない。
 化け物と批難され、哂われ、怖がられ、怯えられ、畏怖され、泣かれ。

 アリサにも、拒絶された。

 自分の身体など、そんな身体なのだ。受け入れられるはずがない。好きになれるはずがない。
「……」
 何となく、気がついた。
 縁は、魔導師が嫌いだ。
 自分を作り、苦しめ、捨てた魔導師が大嫌いだ。
 それ以上に。
「……なるほど」
 一言だけ呟いた。

 それ以上に、縁は、自分が嫌いだった。












 その扉の前で、ノックをした体勢のまますずかは固まってしまった。
「帰ってよ! もう来ないで!」
 扉の向こうから聞こえるその叫び声は、聞き間違えるはずがない愛しの人の声。部屋に閉じ籠もってからまるで聞くことが出来なかった、アリサの声だ。
 今日もまた見舞いに来てノックをして、そしてそのまま返事もなく学校であったことを扉に向かって一人喋るのだろうと、心のどこかでそう思っていたのかもしれない。半分諦めていたのかもしれない。アリサの叫び声を聞いた途端、そんな悲観的な自分がいたことに思わず嫌悪感を抱いてしまう。
 喉が引っ付くような、そんな感覚。
 泣き叫ぶようなアリサの声に、すぐに言葉が出てこなかった。
「私なんかほっといてよ! 独りにして! 構わないで!」
 帰れ、来るな、独りにして。
 扉の向こうから聞こえるその叫びは、拒絶の色しか感じられない悲痛な叫びで。
 きゅ、と、すずかは綺麗なその唇を強く結んで喉を鳴らす。
「アリ、サちゃん」
「やめて、止めて! 呼ばないで!!」
 上手く呼ぶことが出来なかったその名前にも、アリサは拒絶で返してきた。
 怯えてる。
 理屈も何もなく、すずかはただの直感でそう感じた。本当にそうなのかと聞かれても返す言葉はないが、アリサが何かに怯えているのだと、そう感じた。何に怯えているのかと聞かれても困るが。
 まるで自分のようだ。
 理由はない。ただ本当に、直感でそう思ってしまう。
 すずかが自身に抱くコンプレックスという怯えが、アリサの叫び声に刺激された感じがする。自分の中の怯えが、仲間を見つけたぞと、いやらしく笑うのだ。
「す、すずかだよ……? 今日はその、お見舞いに――」
「やめて!」
 きぃん、と、頭の後ろで耳鳴りが響く。
 思わずすずかは俯いてしまう。真っ白な制服を着た自分の身体が、がくがくと震えていた。
 心構えもなくアリサから拒絶の言葉を叩きつけられるのは、かなり堪える。笑えるくらいに自分が打たれ弱いということか。油断すれば今にもこの場にヘたり込みそうなくらいだ。
「帰って! 二度と来ないで!」
 ぎゅっ、と制服の胸を握り締める。
 苦しい。心臓が痛い。二度と来るなとか、アリサの口から言われたくない言葉のトップクラスだった。
 かける言葉が出てこない。
 何か言葉をかけても、拒絶の言葉が飛んでくるかもしれないと思うと、頭が言葉を考えるのを拒否してしまう。
 いや、何の言葉をかけなくても、拒絶の言葉が飛んでくる。自分に向けて、アリサが拒絶の言葉を叩きつけてくる。
 身体の震えが、より一層酷くなった。
「か、かえ……」
 言葉が、出ない。
 喉が渇く。口の中がからからとして仕方がない。
 ぐ、とすずかは無理矢理唾を飲み込む。
「ぅ……うん、今日は…………かえる、ね……」
 口かようやく絞り出せたのは、情けない声色をした、惨めな敗北宣言だった。
 だって、アリサが、帰れと、言うのだから。
 考えることを投げ出しているすずかの頭が、そんな言い訳の札を立ててくる。
 帰ろう。
 今日は、アリサの機嫌が、悪かっただけで。
 今日は、止めておこう。
 今日は。
「……」
 今日は、友達が。
 いや、親友が。
 アリサのために。
 すずかは強く歯を噛みしめる。
「……っ」
 そのまま扉をノックしようと腕を振りあげてーー固まる。
 扉を叩こうとする腕が、動かなかった。
 拒絶されたら。
 アリサから拒絶の言葉を叩きつけられたら。
 身体が、固まる。
 情けない。
 情けなさ過ぎる。
 今ノックを躊躇ったのは、アリサの為じゃない、全部自分の保身のために躊躇った。アリサに拒絶されて自分が傷つきたくないから、だから躊躇った、だから固まった。だから、動けない。

『明日はちょーっと色々あるから、アリサちゃんのことは任せたでー』

 親友の声が、頭を横切る。
 昨日のことだ。
 電話でのことだ。
 頭に親友達の顔が浮かんだ。
 頑張っているのに、命をチップにするくらいなのに、自分は、アリサになにも出来ないのか。
 ノックしようとする腕が振るえる。動かない。固まって動かない。
 ぐっと拳を握り締める。動かない。震えているだけで。
 俯いて、床を見る。
 情けない。
 涙が出そうだ。
 すぅ、と息を吸う。深呼吸。
 ゆっくりと気合いを入れ

「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます」

 突如、聞き覚えのある声がした。
 少年と青年の間の声が。
 反射的に顔を上げ、その声の方へと向ける。
 メイドの人に挨拶をしているその人も、たった今すずかに気がついたかのように顔を向けてきた。
「やぁ、すずか、こんにちは。アリサに用事かい?」
 フェイトの義兄、クロノ・ハラオウンだった。












 樹林を歩く少年を遠めに見、恋慈は思わず目を細めてしまった。
 その少年は、恋慈にとって見覚えがあった少年だった。
 別に知り合いという訳ではない。言葉を交わしたのだって2度しかなく、買い物に行ったり呑みに行ったりする仲では決してなく、もっと殺伐とした空気において見覚えのある少年だった。
 これも因果かね、と心の中で小さく零しながら、恋慈は胸元よりカードを一枚取り出す。
 魔導師のデバイス。その待機状態と通常状態の可変機能のみを追及した、とてもデバイスと呼ぶことは出来ない純粋な質量兵器、銃だ。
 銃は持ち運びが大変である。威力が高く、弾数があり、耐久性に優れれば大きく重くなり、持ち運びも一苦労になる。そして雑に扱えば、照準に僅かだがずれが生じ、その僅かが10m先の目標から手の平一つ分ずれるという軽視できない誤差を生む。
 それをデバイスの可変機能を応用して銃を模した。もちろんそれは時空管理局では認められない発想だった訳だが。
 カードを手の平の上でくるりと一度回し、恋慈は小さく笑う。
 前世と言うべきか、自分を救ってくれた天使の使い魔となる前の頃の話と言うべきか。生まれ変わろうと使い魔になろうと、技術士としての腕は切れないらしい。
 人差し指と中指の間にカードを挟み、樹々の乱立する樹海を歩く少年の “真上” に恋慈は降り立った。
「おい、少年。迷子か?」
 言葉を投げ掛けると同時に、そのカードを機動・展開する。
 少年が振り向いて、即座に上を仰いだ。鋭い。
 樹の枝の上に立つのは、恋慈。
 目が合った。
 手には世界で最も人を殺したと有名なアサルトライフル、AK47カラシニコフ。
 銃口はまっすぐ向けられていた。
 鋭い炸裂音。
 その直前に少年は右に跳び、ギリギリで銃弾を回避。一番近くにあった樹を盾にするように裏に回り込む。素早く的確な判断だった。
「いきなり良い挨拶っすね!」
「迷子なら手早く送り返すのが信条なんでな、地獄にさ」
 即座にフルオートに変更。左手で腰のベルトにぶら下げていたアップル・グレネード、M67破片手榴弾を迷う事なく引き抜く。
 樹の裏に隠れて恋慈の様子を盗み見た少年の顔が盛大に引き攣る。
 親指で器用に安全ピンを弾き飛ばし、安全レバーを握り込んでピンを外す。その時点で恋慈は既に投擲の構えに入っていた。
「おらよっ!」
 投擲。
 アップル・グレネードは少年が隠れた樹の横に、ぼてん、と落ちる。
 それと同時に、少年はアップル・グレネードが落ちたのとは逆方向へ即座に走った。距離を取らねばヤバい。15m範囲で殺傷力を伴う破片が飛び散って、5m範囲にいれば問答無用で身体が破損する、そんなアップル・グレネードに対する基本知識を知らずとも、とにかく距離を取らねばヤバいというのは分かった。
 しかし、アップル・グレネードから距離を取るということは、隠れていた樹の裏から飛び出すということで。
 失策だ。
 走り出してから少年は自分の行動に気がついた。
 左手に持った真紅のデバイスを構え、恋慈に向けてシールドを展開――した瞬間にシールドが凄い勢いで削られる。
 AK47の銃口から連続で降り注ぐ銃弾という名のプレゼントである。
「ぐ――っ、02!」
(( Photon Bullet!))
 少年は左手に持った別のデバイス、しかし同じく真紅のデバイスに魔力を流し込んで術式を叩き起こす。
 射撃魔法の初級にして、簡素な術式に起動の早さ、射撃間隔の調節から流し込む魔力量による威力変化の柔軟性に十分な弾速を兼ね備えた一級射撃魔法、フォトンバレット。その真紅の弾丸が一瞬にて形成、即座に発砲した。
 真下に向け。
 殺傷設定という別称を持った対物破壊設定。着弾で反応して爆発する事を優先した弾丸は、草生える土に直撃すると同時に爆発。土煙を一気に巻き上げた。
「む?」
 その瞬間に恋慈はAK47の発砲を中止する。丁度少年の姿が土煙で隠れた形となったからだ。
 引き金から指を離すと同時に、恋慈は足場にしていた枝を蹴り、別の樹へと即座に跳び移る。
(( Photon Bullet!))
 ほぼ間一髪、恋慈の脇腹を真紅の弾丸が紙一重で通過する。
 はっ、と恋慈は思わず笑ってしまった。
「フェイントって気付けたか! 偉いね少年!」
「少年じゃなくって、ちゃんと名前があるんっすけどね!」
 別の樹の枝に跳び移り、そしてその枝を撓らせ跳び上がり、上にあった枝を掴んで鉄棒で大車輪をかますかの勢いで回転して更に別の樹へと跳び移る。
 土煙を割って少年が飛び出してきた。
 アップル・グレネードは無視である。
 当然だ。少年は既に、そのアップル・グレネードが爆発しないと判断していたからである。
 あれは単に樹の裏から誘き出すためのフェイントだ。咄嗟に距離を取ろうと逃げたが、良く考えてみれば恋慈の改良した高威力の手榴弾ならば、あの距離にいる恋慈自身が有効範囲内に納まっていたはずだ。本当に爆発させる気ならば、もっと遠くに投げ飛ばすかグレネードランチャーを使用しているだろう。恋慈が投げてから退避行動を取らなかったのを見れば、やはりフェイントで間違いない。
 ひゅー、と恋慈は感心したように口笛を吹きながら、それでも容赦なくAK47の銃口を少年に向ける。
 ドドド、と3連射。少年の足元への牽制。
 そして更に別の樹へと恋慈は跳び移りながら、頭の片隅で、はて、何て名前だったかと場違いな事を考える。
「あ、あー……確か、銀座!」
「ノー!」
 違ったようだ。
 確か以前対峙した時、赤い服の女の子がそんな名前を言っていた気がしたのだが……そう言えばその時も少年は名前が違うと講義していたのを思い出す。
「銀次!」
「誰っすか!?」
 樹の枝に跳び移ってから、恋慈はAK47をカードの戻し、反対の手で別のカードを引き抜く。
 即起動。
 展開されたのはコンパクトなフォルムをしたPDW。ヘッケラー&コッホはMP7。
 樹々が覆い茂っているせいで、視界が良好とは言い辛いこの樹林。CQB、閉所接近戦闘に向いている取り回しの良い銃器が良いと判断した。
 すぐに恋慈はMP7を少年に向けようとするが、少年が放つフォトンバレットがなかなかどうして良いコース。高速で迫り来る真紅の弾丸も慌てる事なく恋慈はひらりと交わし、枝を蹴って更に別の樹に跳び移る。
 少年も離されまいと、樹々が邪魔で飛び難いのも構う事なく、地面を蹴り飛行魔法を展開。一気に加速する。
 よく訓練されている上に、自分で場の状況に柔軟に対応できるタイプの魔導師だ。楽には撃たせてくれないらしい。
「正座! 銀一! 草鞋! 万事! 銀閣! えー……」
「全部大外れっすよ!」
 飛行しながらも、樹林の世界をあちらこちらと伸びる樹の枝や蔦を回避しつつ恋慈に迫るも、枝や蔦を回避している以上なかなか恋慈と距離を詰められない。
 後ろから足止めの為にランダムの間隔で撃たれるフォトンバレットを、恋慈は振り向いて確認する事もなく当たり前のように避けながら別の樹に跳び移る。一体どんな回避スキルだよ、と少年は小さく舌を打つ。
 と、恋慈がいきなりMP7の銃口を少年に向けた。
 振り返らず、後ろへ。
 だが、銃口は恐ろしいことに少年をしっかりと捉えていて。
「面倒だ、ガンザって名前にしようぜ!」
「それだーっ!」
 ようやく名前を言い当てた、と言うか適当に言ったら当たっている名前だったそれを口にすると同時に銃口が火を噴いた。
 突然の反撃ではあったが、銃弾の弾道は限られている事を最初に頭に叩き込んでいれば回避は易い、はずだ。
 少年、ガンザは銃弾を即座に回避。
 目の前に枝。
「んなっ!?」
 顔面から突っ込んだ。












 サバンナのように見渡す限りの草原というのは、逆に言ってしまえば高い木が疎らにしかない分、人間サイズの生物は遠目でも丸分かりになってしまう。まして伏せたりして少しでも相手に向ける面積を小さく取ろうともせず、仁王立ちしていれば見つけて下さいと言わんばかりのものである。
 その栗毛の少年、アステマは労せずしてあっさりと見つけてしまった。と言うか、隠れる気はないようだ。
 兵士をけしかけた方が早かったかもしれないなと思いつつ、アステマはゆっくりと栗毛の少年へと足を進める。
「あなたが、アステマですね?」
「はじめましてだ、ユーノ・スクライア。君のような時空管理局切っての偉人に出会えるとは光栄だ。私はアステマ・コロンゾン・リ・ヴァルヴェールローランド、君の探し人だよ」
 最初からあなたが目的ですと言わんばかりの栗毛の少年、ユーノの発言に、アステマは顎に手を当てながら、やはり囮だったかと小さく嘆息する。このタイミングならば囮でほぼ間違いないだろう。
 少し考え込むアステマに、ユーノは軽く眉を顰めた。
 自信が色々な意味で有名になっていることは知っているが、見ず知らずの相手に名前を知られているというのは変な気分である。
 と言うより、アステマの名前、どこか引っ掛かる。どこか聞いた名前のような気がすると言うべきか。いや、アステマの名前自体既に悪名という方向で有名だから嫌でも聞いているのだが、それとは違う場面で聞いたことがある気がする。
 ふるふると、そこでユーノは軽く頭を振る。
 余計なことは考えなくて良い。
「自首して下さい」
「突然だな。まるで恋のようだ」
「では世間話でもしましょうか?」
「止めておこう。世間には疎くてな」
 小さく笑いながらアステマは肩を竦める。日頃から恋慈に嫌味の如く言われるまでもなく、自分が世間に疎いのは知っている。
「それにしても、自首をするは何処にすればいいんだ? 日本の警察か? 門前払いを受けるだけだが」
 御幣を右手の中でくるりくるりと回しつつ、アステマは問う。
 再びユーノは眉を顰める。
「時空管理局です」
 表情を作りつつ、当然のように口にしたにも関わらず、アステマは小さく笑う。
 失笑と言うべきか。

「風の噂では潰れるそうだが――この星を沈めた後にな」

「――――っ!」
 気付かれている。
 どのルートで情報が伝わったのかは分からないが、アステマは管理局の作戦を把握している。
 ユーノの背中に鳥肌が立つ。ぞっとする。
 ざ、とアステマは御幣を振り、そして構える。
「さて……では、君を殺して縁の所に戻らねばな。囮にはあまり構ってられなくてな」












 空に現われた彼女を見つけたのは、恐らく偶然ではなかった。
 隠れる気が微塵にも感じられない。気配も魔力も、駄々漏れである。見つけられないはずがなかった。
 金の髪。
 黒の装束。
 白い肌。
 手には歪な剣を持って。
「テスタロッサさん……」
 遠目にも彼女がフェイトであると、縁には分かった。
 どうして来た。
 何故来た。
 死にに来たとでも言うのか。
 ぎ、と縁は歯を食いしばると、同時に縁の背中が縦に裂けた。
 フェイトは縁の上空に転送してきたまま降りて来ない。空に佇んだまま、静かに縁を見下ろしていた。
 ここから撃ち落としてやろうか。不思議とそんな考えは浮かんでこなかった。
 足の皮が裂け、一気に筋肉が膨張するように足が肥大化する。口が割れ、歯が伸びる。伸びた歯先が尖ってゆく。そして目の周りを覆い被さるようにカバーが構築され、そのカバーに無数の亀裂が入るようにして複眼となる。ごき、と背中が鳴り、裂けたところから羽根が生え、それを覆う甲殻がめり出てくる。
 縁の身体が、一息で異形と成った。
 ぬちゃん、と、縁は軽く荒れ果てた地面を蹴った。
 その偉業の身体がふわりと浮かぶ。
 まっすぐ上空のフェイトへと顔を向けながら、ゆっくりと、ゆっくりと縁は身体を上昇させる。体感気温が緩やかに下がり、気圧が穏やかに緩くなる。気にする程ではなかった。
 気にするのはただ。
「――――」
 ぎゅっ、と緊張したようにフェイトが歪な剣を握り締めたのが見えた。見えてしまった。目の良さが嫌になる。
 僅かにだがフェイトの身体が震えている。寒さのせいじゃない。ここはそもそも少し暖かいくらいなので、上空の方が過ごし易いはずである、人の身体ならば。
 怯えている。
 短絡的かもしれないが、縁はそう思った。
 怯えているのに、来たのか。それとも来させられたのか。後者だとしても、魔導師として来た以上、ちゃんと殺して。

 アリサの顔が、脳裏をちらついた。

 フェイトは、アリサの友達である。
 自分のように友達のフリじゃない。本当の友達。
 羨ましい。妬ましい。殺してやりたい。そんな汚い感情がじわりと沸いてくる。
 そして、それ以上に躊躇いを縁は覚える。
 フェイトを殺したら、アリサが悲しむ。フェイトを殺したら、アリサが泣く。
 何を今更。怖がらせて怯えさせて泣かせてしまった自分が、何を今更。そうは思えど躊躇いは縁の心にのし掛かっていた。
 悲しませればいいじゃないか。泣かせればいいじゃないか。どうせ人間じゃない、どうせただの化け物なのだから、人間の事なんてどうだって良いじゃないか。そう割り切れれば、どれだけ楽か。
 思わず笑ってしまう。
 人の身体だったら、表情に出ていたことだろう。
 己の優柔不断さを笑ったわけではない。
 割り切れば楽なのに、割り切れない。
 かつて、高町なのはが落ち込んでいた最大の理由と全く同じだった。
 あの時はアリサに言われて相談に乗り、なのはの気持ちなどまるで理解できなかったのだが、皮肉なものだ、化け物として人の道を踏み外し、初めて人であるなのはの気持ちが理解できた。もしくはなのはが化け物側だったとでも言うのか。
 そんな皮肉に笑ってしまうのを顔には出さず、出せるはずもなく、縁はゆっくりと上昇する。
 フェイトの顔がはっきりと見える。
 きりっとした表情。この異形の姿へとまっすぐ向けられるしっかりした目。
 若干顔色が悪い。少しだけ震えている。
 左右1本づつに纏めた髪が、風にたなびいていた。
 裏地の赤いマントを羽織った姿ではなく、身体をぴっちリと包む軽装備のバリアジャケット。金属でできたような鋭利なシューズと鉄鋼が嫌に物々しい。
 歪な剣は本当に剣なのかは怪しいくらい刃先が短く細い。2度に渡る交戦からの予測だが、魔力刃を形成して初めて形となるのだろう。完全に武器だ。
 久しぶりに顔を見る。
 研究所や施設を破壊した時に巻き込まれて死んでいるか、魔法を捨てて地球に逃げ帰るかしてくれていれば良かったのに。
 ゆっくりと、ゆっくりと上昇する。
 フェイトと同じ高さまで、来た。
 距離にして間7m。高度差は若干縁の方が高いくらい。
 すぅ、はぁ、すぅ、とフェイトが軽く深呼吸をする。
「……久しぶりだね、海鳴さん」
 当たり障りがなさ過ぎて、逆に頭にくる。
 フェイトは決して武器を構えることなく、縁の返事を待つ。
 ちゅぷ、と縁は4つの手全てを握り締めた。
『死にに来たか、魔導師』
「ううん、海鳴さんを止めに来た。殴ってでも、止めるために来たよ」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 心臓鷲掴みってエグイよね、と思っていた時期が私にもありました。こんにちはこんばんは、読んでいる人によってはおはようございます、ハートキャッチされているクロガネです。馬越嘉彦さんは偉大だ。

 世間様はゴールデンウィークだそうですが、クロガネはそんなの関係なく仕事が待っているでございます。畜生。出張とかねぇよ。
 代休消化したい……

 最近持ち運び用の文章デバイスをシグマリオンⅢから乗り換えました。さらばシグマリオン、勇者っぽい名前で好きだった。
 で、今使っているのが
「ポメラ」
 ポメラニアンじゃないよ。ありとあらゆる無駄な機能をごっそりと削られ、バックライトやスピーカーすら排除された渋い奴。これが又持ち運びに便利で重宝しています。


 シスコン VS ガンザ
 暴力巫女 VS ユーノ君
 縁 VS フェイト
 の状態となりました。クロノ君は散歩中。なのは嬢は、さて。
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8件のコメント

[C624] 仮に1on1だったら全員無理そうですが特に

あれ・・・・?ユーノ君の勝ちパターンが想像できないよ・・・・・

お仕事頑張ってください。
  • 2010-05-01
  • 投稿者 : なまにく
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[C625] 最初から無理に近い

○なまにくさん
 もしかしたら時間稼ぎの捨て駒かもしれません。うふふ。
 お仕事がんばるー。
  • 2010-05-01
  • 投稿者 : クロガネ
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[C626] ユーノがんばれ、超頑張れ

勝てないのは分かってる、淫獣だけにエロスを・・・
瞬殺じゃ、無理か・・・あれ?じゃあ何しにきたの?

とりあえず、不憫でならないすずかちゃんに救済を・・・
クロノならきっとなんとか・・・ハルヒだって何とかできたんだし。
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C627] なのは「絶望したの!出番なしに絶望したの!!」

>自首してください

そんで死刑になれと?
ユーノはこれだけの事した者がどうなるか想像もつかないのか?


フェイトどう考えても負けゲームくさい
トラウマは簡単には拭えないぜぇー




今回のアリサ
「アリサ・バニングスは10年待ったのよ!」
「再び縁と笑いあう日々のために!永遠の炎(エナーナルブレイズ)成就のために!海鳴よ!私は帰ってきた!!」

題して
魔法少女ブレイズアリサ
~エターナルブレイズメモリー~
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ルファイト
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[C628] コメントありがとうございまー

○ぎるばとさん
 ヒント。「戦術的勝利は譲ってやろう、戦略的勝利さえ勝ち取れば我等の勝ちだ!」 ……って事です。
 すずかはこの物語だと本当に踏んだり蹴ったりな子。もう一頑張りしていただきます。
 ちなみに、ここのクロノ君は基本的――嫌な奴ですよ、はい。

○ルファイトさん
>ユーノはこれだけの事した者がどうなるか想像もつかないのか?
 ヒント。そもそもユーノ君はその管理局自体潰れる事を知っている。そして自首するはずない事も知っている。問題なのは、それを “口に出して” 問う事に意味があり――
 ソロモンよ、私は帰ってきたぁぁぁぁぁぁぁっ!!
  • 2010-05-02
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
  • 編集

[C629] 死にに来たかシャ……ユーノ!!

最終決戦開始、既に全員死亡フラグたってますな。特にユーノは攻撃魔法が使えないのに、何故に前線へ…最初から死ぬこと前提の足止めですよね、でも彼の場合、全エネルギーを防御に回せば、結構持つのかも。


この時点でクロノが地球、それもアリサの元に来る理由なんて…縁用の囮にする為とか普通にありそう。

  • 2010-05-02
  • 投稿者 : ミヅキ
  • URL
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[C630] ガンジー君の見せ場到来!!…あれ?

よーし、ようやくスーパーガンザタイムだ!!・・・
あれ?囮組の未来がお先真っ暗な気が、いやそれでもジンザくんと有能ならなんとか、なんとか…なるのだろうか…が、頑張れ、とりあえず頑張って二人とも!!



ポメラさんはすごいですよね、自分も愛用してますポメラさん。
このご時世に充電式じゃなくて乾電池式なところとか大好きです。
  • 2010-05-03
  • 投稿者 : tfj
  • URL
  • 編集

[C631] コメントありがとうございまー

○ミヅキさん
 みんなユーノ君好きだな。
 しかし、ユーノ君はバインド系統も結構優秀だそうなので、その気になれば決して戦えない訳ではないはず。
 クロノ君は、うん、嫌な奴ですから。

○TFJさん
 名前を間違えまくりの件。いや、スーパーガンザタイムだけ名前が合ってるものだから逆に違和感が。
 とにかく二人とも頑張って……死んでくれ?
 ポメラの割り切り方は以上。客層がはっきりしそうだ。
  • 2010-05-03
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
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