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[C615] 守秘義務は大切。

小3当初の時ならともかく組織に所属したら組織のルールを守ることは当然です。でもまぁ・・管理局自体がもう無くなるなら遺言的な意味で心情的には許されるような。


なんという高速更新・・・アタック驚きの速さ。このままの更新速度ですと俺完結したらハロワ行くんだ・・って言ってしまうレベル。

さらっと自殺してくれるとか言わないでください!!そんなクロガネさんが大好きです。

プレッシャーをかけつつ図書館の可憐な妖精とか言っちゃうはやてのキャラが実に美味しいと思います。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : なまにく
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[C616] 人はそう簡単には変わらない

なんか三人娘がまんま戦争に行く若者ですね。やっぱ10代前半の子どもにこんなことさせる世の中は嫌なものです。

しかしどうにも三人娘の台詞が白々しい、フェイトやはやてはまだマシだけど、なのはは結局自分主観でしゃべってますからね。人はそう簡単には変わらないという見本ですな。

この分だと高町家の皆さんには伝えてなさそう。いくらアニメ版の高町家が歪んでると言っても、普通の親なら、行く必要の無い死亡率が9割以上あるような戦地に子どもを行かせるなんてしないでしょうね。恭也あたりなら手足をへし折ってでも止めそうな気がする。これで「行って来い」とか言うなら、人として狂っているさ。


三人娘の学業もそうだけど、作戦の合否に拘わらずアースラ組は路頭に迷ったらどうするつもりなんだろ?ミッドチルダは壊滅してるし、地球に移住したらまた身分偽造で、多分生活費も不正な手段で入手でしょう・・・ 何か真面目に頑張ってる学生や職がなくてハローワークに通ってる人たちが馬鹿みたいですよね。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C617] やっとわかった

原作の構造から仕方が無いけど、この物語には大人や頼れる年長者がいない。

なのはには家族がいるけど出てこない。これだから・・・といわざるをえない。
フェイトにはリンディがいるが出てこない。クロノでは不足。異次元人の価値観常識の相違?
はやてすずかには最初からいない。

けど特に酷いのはアリサと縁。
さまざまな出来事で壊れ入院ものなのに出てこないアリサの両親。だからこそ物語は迷走した。
教授は復讐者でありながら壊れているからか中途半端。
復讐の道具に徹せず、しかし都合よく利用している。自身の半端さからか縁をどうしたい、どうなってほしいのか示さないから年長者として見えてこない。縁を人間にするのならもっと積極的に干渉かつ自身と縁の憎悪に向き合うべきだったと思う。使い魔は所詮下の存在なので論外。

過ぎた力を持った子供が癇癪を起こして世界が滅びもはや救いが無い。子供に力が無ければ同じ癇癪を起こしても救いは十分あっただろうに・・・。
あるいは大人や年長者がいれば別の形となり世界は滅びず救いがあったはず。
もはやありえないのが残念無残。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : 築くのosoi
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[C618] コメントありがとうございまー

○なまにくさん
 いやいや、それでもなのは嬢は喋り過ぎな気が……
 実際のところ、鬱の治りかけが一番危険なのですよ。この世で自分が一番馬鹿な奴だと思っているところで中途半端に行動力が伴うと、途端に首を吊るとか飛び降りるとか……やめてぇ!
 この更新速度を維持できたら、俺、結婚するんだ(`・ω・´)キリッ

○ミヅキさん
>しかしどうにも三人娘の台詞が白々しい
 クロガネもそう思う。単純にクロガネの文章能力が低いのだと言われたら返せんのですが、くすん。
 それはともかく、クロガネ的には恭也ではなく桃子さんに出てきて欲しい。それも暴力ではなく、言葉でなのは嬢を止めて欲しい。つか、恭也も暴力ではなく言葉で止めて欲しい。パパンも美由希も。なのは嬢が暴力を振るう仕事に行きたいと言うのを、暴力で止めたらなのは嬢の言ったことが全部肯定されてしまう。なのは嬢をちゃんと止められたなら、過労+ガジェットによる撃墜事件も起きなかった筈だし、御神流とかご大層な事を言いながら娘の疲労に気がつかなかったのはどういう事だ。止めいや。
 いや、世界中の軍人さんのご家族に喧嘩売ってる訳じゃないんですが……

○築くのosoi さん
 そう、この物語に “大人” と呼んでいいのは、アステマと恋慈のみなのです。しかもアステマは脳タリン、恋慈は世界より妹という病気の人。駄目だこいつら。あとは殺されたし。
 異世界組みは完全に認識の相違。そもそも、向こうの人は日本人みたいに年齢のみで成人か未成年かを判断しているかどうかも怪しい。最悪、フェイトが成人と見なされているかも知れないと思うとぞっとしますな。逆に30歳でも頭が子供なら子供扱いなのかもしれませんが。
 ……この物語に、そういう “黒さ” も兼ね備えたリンディさんのような大人が介入してたら、多分縁はもっと早くブチ切れてるきが……と言うか、クロガネ的にはリンディさんと縁は相性が悪すぎる気がする。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : クロガネ
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[C619] 死亡フラグ過ぎて恐いんだが・・・

まさかの主役級降板予告ではあるまいな?(物理的な意味で
いや、ストライカーズは絶対はやて死ぬと思ってたけど何事も無くてびっくりしたんだけどね!
変身シーンも無かったしね!

なのはちゃんは暴露しちゃったけど、ま、力の無い法律なんて守っても意味無いしねー。
ここは良心に従うべきです。
頑張れなにょは、負けるななにょは。

基本私はストライカーズで消滅したアリサ分を二次作品で補っているので更新早いのはうれしい限り。
いいぞもっとやれ。
そしてなのは映画セカンドとなんか出るらしいガンダム映画で補給するまでぜひともこのペースで・・・

あと、ファリンがやたら可愛いと思うんだ・・・ぬこー
  • 2010-04-11
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C620] ファリンはドジっこ。これは譲れない。

○ぎるばとさん
 まぁ、主役だろうと何だろうと、生も死も平等に降りかかる世界ですので。うふ、うふふふふ。
 にゃのは嬢は……まあ、良いのかなぁ。
 しかし、この作品にアリサ分と呼ばれる成分は……
  • 2010-04-12
  • 投稿者 : クロガネ
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[C621]

程度は高くとも単なる喧嘩だと思っていた物が虐殺まで発展していたなんて知らされりゃ驚くわなあ
守秘義務は組織が健在でないと適応されないのでは?
今の管理局にそれを強制出来る力はないと思います
地球とかにも情報を土産に亡命魔導師が溢れていそうですよねー

そんな事よりアリサ復活ならず!
いくら他人に促されても決断するのは自分です
生半可じゃ縁を止められないのでドッカーンと復帰してほしいものです
しかしどう考えてもハッピーエンドが思いつかないw
  • 2010-04-12
  • 投稿者 :
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[C622] アリサ「待ったって言ってるでしょ!無視するんじゃないわよ!縁ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」(某超電磁砲なあの人風に)

三人娘のなかで一番励ましてる?のははやてか

縁を死なせたくない
ほっとくと縁が殺されちゃう
止めるにばお話゙という名の戦争
でも自分も死にたくないなのは
迷いだらけのなのはですが戦場に出せないだろこれ?

フェイトはまだマシだけど折れた心と恐怖は果たして……


しかし縁との戦いは死ぬかもしれないのに両親には何も言わないなのはってかなり歪んでるな
守秘義務っつったって作戦後無くなる組織の決まりなんざもう意味ないだろ



今回のアリサ

「もういいわ……あんたたちが魔法を絶対だと思ってるなら……まずはその幻想をぶっ壊すわ!!」
アリサの右手が幻想殺しに……


そういえば某バイオリンなんちゃらに妖刀緋焔ってあったな
あれさえあればアリサだって……
  • 2010-04-13
  • 投稿者 : ルファイト
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[C623] コメントありがとうございまー

○ さん
 ふむ、名前がないとやり辛いと感じてしまうクロガネは何様なのだろう、本当に。
 しかしリリなのにおける魔法というのは、現代技術にしてみたら全くの未知の兵器、対物破壊で子供が2人マジで戦って街ひとつ壊滅させるというのなら確実に戦略兵器並。その技量はなくとも技術を持ち合わせた魔導師が地球に亡命しまくったら……うん、地球は確実のに第惨事世界大戦のはず。誤字ではない。好戦的な国に渡ったらアメリカ軍に頼って自衛力を保っている日本は確実にアウトでしょう。魔導師来んなっ!!
 たぶん、なのは嬢、フェイト、はやての立ち直り方 (はやてのみは漫画版からの引用ですが) から推測されると、一発バレな訳ですが、ちゃんとアリサも(ry

 喧嘩はセーフで、虐殺まで発展したらアウト。それはおかしい。人の心を傷つけた時点でアウトと言えない、そんな世の中が悲しいと思うクロガネです。そういうクロガネもアウト側な訳ですが。

○ルファイトさん
 そげぶ! “そげぶ” がきちんと収まってる! しかし、リリなのの魔法は化学式な訳だから、イマジンブレイカーがどこまで通用するんだろうか。純魔力魔法は壊せても、属性持たせたらアウトか。あ、レールガン受け止めてる (一応コインは蒸発するとはいえ質量的には十分物理兵器に分類され、弾き出すのは能力でも彼に届いている力は物理的な力) からセーフなのか? しかしスターライトブレイカーは消去し切れるのか。し切れなくても、一方通行戦 (最近出た方) の如く掴んで投げられそうな予感。
 なのは嬢だって怖いものは怖いのだ。フェイトが泣いただけで。
 ちなみに、はやてが一番励ましているように見えるのは、はやて以外言葉のキャチボールが成立していないから。
  • 2010-04-14
  • 投稿者 : クロガネ
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魔法の使えない魔法使いの魔法 58

第10章――第2節
――グリーフウォーカー・ラフメイカ―――



 バニングスの家は、とんでもなく大きい。
 5人の中では唯一マンション暮らしであるフェイトからすると、さて、この豪邸の中に自分の家であるマンションの部屋が一体いくつ入るのだろうかと思わず考えてしまう。ちょっと虚しくなってきた。
 呼び鈴であるチャイムを押すと、それはそれは厳かな鐘の音が鳴り響く。マンションのチャイムなど、ぴんぽーん♪ と軽快な音なのに。
 フェイトです、アリサの見舞いに来ました。そう告げると、門が勝手に開く。自動だ。
 そして門から玄関までが長い。庭があるし、池があるし、何か見たことのない木が生えている。何の木かは分からない。別世界に足を踏み入れた気分だ。
 玄関に着くと出迎えられる。メイドだ。
 すずかの家に招かれた時も思うが、何かおかしい。メイドとか。
 それからアリサの寝室まで案内される。寝室だ。アリサの部屋の一つである。フェイトの知る限り、アリサは自分の部屋を3つ持っている。
「アリサは、どうですか?」
 案内してくれるメイドの人に、フェイトはぽつりと尋ねる。
 んー、とその人は軽く唸った。あまり良い反応ではない。
「部屋から出て来られませんね」
「戻った、んですよね?」
「おそらくですが」
 すずか様と出られてから、声を聞いてませんし。そう付け加えると、丁度アリサの部屋に着いた。
 ドアが大きい。
 まず、メイドの人がドアをノックする。
 ごん、ごん、と鈍い音。ドアの裏に何かある。バリケードを作っているのか。
 返事はない。
「お嬢様、フェイト様が参られました」
 その声にも、返事はなかった。
 ちらっと、メイドの人の視線がフェイトに向けられる。
 代わった。
 今度はフェイトがノックをする。
 ごん、ごん、と。
「――アリサ」
 呼びかける。
 10秒待った。
「アリサ、返事はしなくて良いよ。ただ、聞いて。私ね」
 今度は、5秒待った。

「明日、海鳴さんに逢うんだ」

 1枚挟んだ部屋の向こう、アリサの世界となった扉の向こう、息を飲むような気配がした。
 それが全てフェイトの気のせいだとしても、それが自己満足の免罪符にしたいだけだとしても、ただ聞いて欲しかった。
 アリサには、ただ聞いて欲しかった。
 縁を愛してしまったアリサには、聞いて欲しかった。
 それが例え、同性を愛してしまった自分と重ね合わせた思い違いだとしても。
 それが例え、怪物を愛してしまったアリサを慰める安い同情だとしても。
「海鳴さんに逢って、絶対、連れ戻すから」
 ごん、ごん、ともう2回だけノックをした。
「全部元通りなんて無理だけど――っ、無かったことになんか出来ないけど!」

「今度さ、ぱぁっと遊ぼ? 6人で」

 返事はない。
 期待などしていない。
 隣でメイドの人が首を傾げるが、それを見ている余裕はない。
「駅前のモールにできたカラオケ屋さん、結局行けなかったよね。海鳴さんはカラオケ全然知らなかったし――小学生だけじゃ入り辛いから、シグナム達も誘おうよ」
 記憶にある、結局行くことのなかったそんな計画。はやてが一生懸命に場を盛り上げようと早口でまくし立てていた、そんな何気ない話。
 ごん、ともう1度ノックをした。
 扉の向こうで、小さく、本当に小さく、何か聞こえた。

「――出来なかった事、6人でしよう。海鳴さんも入れて、6人で!」












「縁ちゃんが――人間じゃ、ない?」
 唖然としたように、すずかとしては珍しく口をぽかんと開けながら、ようやく口から絞り出せた言葉はそんな陳家な一言だった。動揺しているのか、持っているティーカップが傾き、紅茶が零れそうなのに気がついていない。
 次の言葉がまるで浮かばずにいると、ついに一滴だけ紅茶が零れた。
 膝の上に乗せた三毛猫の頭に、その滴がかかる。ぅにゃぁ、と欠伸のように鳴いたその三毛猫に、すずかはようやく自分が紅茶をこぼしそうになっているのを知る。
「あ、と……え? 本当?」
「本当だよ」
 慌てて三毛猫の頭を拭いてから、すずかが戸惑ったように訊ねたそれに、高町 なのはは簡潔に返した。
 簡潔にならざるを得ない。単純にただ、それが真実なだけに。
 すずかの部屋、なのはが前に訪れた時とはだいぶ変わったすずかの部屋、いつの間にか大規模な模様替えをされたその部屋で、なのはは全てを話した。ざっくばらんに、歯に衣着せず、容赦なく、事の次第を全て話した。
 アリサの事。
 縁の事。
 縁の家族の事。
 次元世界で起こっている事。
 管理局の事。
 全部、全部話した。なのはの知る限り、全部を。
 アリサが脱走犯であったフォンに襲われた事。それを縁が助けた事。縁が人間ではなかった事。アリサがそれを拒絶してしまった事。縁が魔導師を殺し回っている事。管理局が滅ぶという事。
 全部だ。
 全部話した。

 自分とフェイトが、縁に殺されかけた事。

 多分、このままだと自分も、フェイトも、はやても、縁に殺されるだろうという事も、全部。

「そんな――」
 言葉が出なかった。なのはから聞かされた事実が、あまりにも唐突過ぎて言葉が出なかった。
 いや、縁に何かあったのだろう、アリサが関係しているんだろう、それくらいは予想していた。だが、事態は予想を斜め上に飛び越していた。
 そんなすずかを見て、なのはは静かに出された紅茶をテーブルに置く。口の中が妙に乾いている感じがしてしまう。
「――ごめん」
 ぱくぱくと、何とか言葉を出そうとしながらも酸欠の金魚の如く口を開け閉めしかできなかったすずかに、なのはは急に頭を下げた。
「え?」
「ごめん、私、アリサちゃんを全然護れなかった。縁ちゃんも全然止められなかった」
 続けられたその言葉は、とても弱々しい言葉だった。
 ただ、声だけは、何故かしっかりとした声だった。
 あ、とすずかは一言だけ漏らしてから、一度大きく深呼吸をする。少し、落ち着いてきた。
「なのはちゃん」
「うん」
 頭を下げたまま、なのはは頷く。
「私、凄く、心配したんだよ」
「うん、ごめん」
「皆、学校来ないし、連絡つかないし」
「ごめん」
「アリサちゃん、大変だったんだよ?」
「ごめんなさい」
「寂しかったんだよ、凄く心細かったんだからね」
「すみません」
「ばか」
「はい」
「なのはちゃんの、ばか」
「こころえてます」
「なのはちゃんが休んでる間、学校でテストあったんだからね、国語も、社会も」
「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません、図々しいですけど勘弁してください」
 すずかの苦言と文句に、なのははひたすらペコペコと頭を下げる。もういっそ土下座した方が早い気がしてきた。
 ふふっ、とすずかは苦笑いのように軽く笑う。
 なのはが元気そうで、良かった。
 良くない事ばかりで、良くない事ばかり告げられて、それでもなのはが元気そうで、本当に良かった。
 本当に。
 一口だけ、すずかは紅茶を飲む。ひたすら苦い、嫌がらせのような紅茶の味。
 ことりとティーカップをソーサーの上に置き、すずかは一息置いてから、再びなのはを真正面に見据える。
 頭を下げたままの親友。
 きっと、睨んだ。
 睨んだ。
「本当にね」
「うん」
「あんな状態のアリサちゃんだけ取り残されて、私は全然訳が分からなくてね」
「……うん」
「私、泣いたよ?」
「――――――本当に、ごめんなさい」
「ごめんじゃない」
 だんだんと硬くなった言葉が、思いっきり尖った。
「なのはちゃんは、縁ちゃんの所に行くんだよね?」
「…………うん」
「私、また心配して待つんだよ? なのはちゃんが傷付くかもって、そうやって心配して待ってなきゃ駄目なんだよ? 泣いちゃうよ?」
 尖った言葉にも、なのはは頭を下げながら頷いた。
 すずかの口が、一瞬だけ盛大に歪んだ。への字に歪んだ。
 この。
 頭の中に、そんな2文字が浮かぶ。その続きの言葉は一切浮かんでこなかった。
 ゆっくりと自分を落ち着けるように、すずかは軽く深呼吸をする。面白いくらいに吐いた息が震えていた。
「なのはちゃんだけじゃないよ。フェイトちゃんも、はやてちゃんも――縁ちゃんも、傷付くんだよね?」
「もしかしたら、死んじゃうかも」
 にゃはは、と軽口のように小さく笑うなのはに、すずかは顔色一つ変えないでテーブルを叩いた。
 ほとんど反射的に叩いてしまった。
 バンッ! とかなり良い音がする。
 その音に、なのはは肩を竦めることも跳び上がる事もせず、ただテーブルを思いっきり叩いたその音を合図にするように顔を上げた。
 睨んでいる、すずか。
 顔を上げたなのはは、真顔だった。
 真剣な表情。そんな陳腐な言葉が似合うくらい、まっすぐな目をしていた。
「もしかしたら、死ぬかも」
「――っ!」
「私か、フェイトちゃんか、はやてちゃんか……シグナムさんもヴィータちゃんもシャマルさんもザフィーラさんも、クロノ君もエイミィさんもアルフさんも、ユーノ君だって、死ぬかも」
 今度はおどける事もなく、はっきりとなのはは口にする。
 死ぬかも、死ぬかもしれない。縁に殺されて死ぬかもしれない。
 そんな悲しい現実を、そんな怖い現実を、しっかりと受け止めてしまっているなのはに対し、すずかは言葉が上手く出なかった。思わず感情的に怒鳴りたい衝動が腹の底から沸いてくるのに、怒鳴るその言葉が頭から出てこなかった。
 ぎゅっと奥歯を噛んだすずかに、なのはは それでもまっすぐ向き合った。
「でも行くよ、縁ちゃんの所に行くよ。すずかちゃんにはその、泣いて、待って貰うしかないんだけど……」
 流石に、すずかが泣いて待っているというのは後ろめたいのか、なのはの言葉は後半になるにつれて濁ってしまうが、それでもまっすぐ向き合っていた。
 目を逸らさず、まっすぐに。
 なのはは、すずかの目を見ていた。
 何故だろう。すずかの脳裏に、真っ黒な瞳をした小さい少女の姿がちらつく。人間じゃないと教えられても、その人間じゃない姿を見た事がないからすずかは人間の姿しか知らない、その少女の姿が頭をちらつく。
「ううん、待ってて欲しいの! 絶対、絶対に帰ってくるから、待ってて欲しいの!」
「死んじゃうかもしれないんだよね? それなのに “絶対” 帰ってくる?」
「うん、頑張る!」
 頑張るって。
 すずかの目が細まった。かなりイラっとくる。
 頑張って、どうにかなるのか?
 縁がどうにかなるのか?
 だが、すずかが口を開くより早く、なのはは続けた。

「頑張るから、応援してください」

 急に、声が弱くなった。弱々しくなった。
 ひゅ、とすずかは息を呑んだ。何か言おうとした言葉を、思わず飲み込んでしまう。
「怖いよ、不安だよ。縁ちゃん、凄く怖かった……凄く怖かったの」
「……なのは、ちゃん?」
「死にたくないよ――逃げたいよ――っ、戦いたくないよ!」
 なのはの口から、弱音が漏れた。
 泣きそうな目。
 不安そうな目。
 怖がっている、目。
「友達だって思われてなかったけどっ、私、縁ちゃんのこと好きだった! 真っ直ぐで、純粋で、私の悩みなんかあっという間に吹き飛ばしてくれて! 私は友達だって思ってて! 思い込みだったけど、でも友達で!」
 まず、目が逸れた。
 次に俯いた。
 項垂れた。
 何故かなのはが、小さくなったように見えた。
「縁ちゃんと戦いたくないよ! でも、縁ちゃんが人を殺すのを黙って見るなんて嫌だ! 嫌だけど、死にたくないよ! 怖いよ!」
 弱音、弱音、弱音を、吐く。
 言葉を挟む隙もなく、そもそも挟む言葉が思い当たらず、俯いたなのはを戸惑ったように見ながら、すずかは黙ってその弱音を聞いた。聞くしかなかった。
 戦いたくない。
 痛いのは嫌だ。殺されるなんて御免だ。怖い。
 いいや、そもそも。

「友達だって思ってた子と、命のやり取りなんて、私もしたくないよっ!!」

 友達だと信じていた縁と、戦いたくなんか、ない。
 周りの人はなのはの事を、無神経に悪魔だの手加減なしだの言いたい放題だが、人に力を向けるのが堪えない訳はない。好き好んで誰が戦いなんかするものか。
 ああそうだ。ああ、そうだ。
 高町 なのはは、そういう子だ。
 堪えるものを堪え、苦しくても我慢して、辛くても辛くないと言い張って。
 そういう子だ。
 苦しいのだ。辛いのだ。それを表に現さないだけの話で。
 きゅ、とすずかは口を横一文字に結んでから、ゆっくり、ゆっくりと細く長く息を吐き出す。
「なのはちゃん」
「……うん」
「絶対、帰ってくるんだよね?」
「………うん」
「私、泣きっぱなしは嫌だよ?」
「…………うん」
「それじゃあ」
 俯き、頷くなのはに、すずかは笑顔を向けた。
 出来るだけ、出来るだけの笑顔で。

「頑張れ、なのはちゃん!」

 ぱっと、なのはの顔が上がった。少し目が潤んでいる。
 そのなのはの顔を見てから、すずかはポケットからハンカチを取り出そうとするが、それより先になのははごしごしと目を擦る。今度は目が赤くなった。
 ぷっ、と軽く吹いてしまう。
 良かった、自然に笑えた。
「私ね、縁ちゃんに会いたいよ。会って言いたい事があるの」
 自然に笑顔を向けながら、すずかは続ける。
 そうだ、縁に会いたい。
 会って言いたい事がある。
 アリサの事だ。
 そして、自分の事だ。
 アリサをほったらかしにしやがって、というのも言いたいが、それ以上言いたい事がある。
 アリサが愛した縁に、言いたい事があるのだ。
 白黒はっきりしたいのだ。
 なのはとは違い、とても自分勝手自分本位の事ではあるが、それでも縁に会いたいという気持ちについては嘘はない。
「私は何も出来ないけど、待ってるしか出来ないけど」
「うん」
 頷かれる。
「向こうじゃきっと なのはちゃんが言えない弱音くらいしか、聞いてあげられないかもしれないけど」
「うんっ」
 少し、声が弾んだ。
「辛い事も、怖い事も、危ない事も、全部なのはちゃんに押し付けちゃうしか出来ないけど」
「うん――っ!」

「頑張って、なのはちゃん」

「うん、頑張る!」












 帰ってくる。
 そう恋慈が感じたのとほぼ同時、辺りの樹林を切り開いて作った小さなキャンプ場の隅に、血まみれになった縁が突然現れた。
 突然現れたよりも、その血まみれの格好に恋慈は思わず手にしていたワルサーを地面に落としてしまう。
 看視者と呼ばれている化け物の姿ではなく、小さな女の子の、人としての姿だっただけに、余計に驚いてしまった。
「え、縁!? 血が――っ!?」
「うるさい」
 慌てて縁へ駆け寄る恋慈の言葉を、縁ははっきりと拒絶の色で返しながら、駆け寄った恋慈を無視してその横を素通りする。靴も履かぬその素足で、黒塗りのワルサーが踏まれた。
 返り血のようだった。
 所々、血ではなく肉のようなぶよぶよした何かが見えたような気がする。
 看視者の姿ならばまだしも、人としての姿でその様子は嫌なものがあった。
 縁は水の汲まれたバケツを血だらけの手でむんずと掴み上げる。あ、と恋慈が声を上げる暇もない。そのまま頭の上でバケツをひっくり返し、縁は頭から一気にその水を被った。
「飲み水ー!」
 半ば悲鳴だった。
 飲み水はとても大事な物なのだ。川が遠い訳ではないけれど、汲んで来るのは地味に重労働なのだ。
 そんな恋慈の悲鳴など耳に入っていないかのように、水をかぶった縁は無造作にバケツを放り投げる。バケツが地面を一度跳ねた。
「――行ってくる」
 恋慈の叫びなどまるで気にとめることもなく、ぼそりと縁は呟いた。その異様なまでに通りの良い声は、例え呟き声であっても恋慈のその耳にしっかりと届いている。
 何処へ? など無粋な疑問は浮かばない。今の縁が行くと言うならば、魔導師を殺しに行くに決まっていた。
 ここには体を洗いに来ただけというのか。水をかぶったくらいで、血は全然洗い流せていない。むしろ汚れは酷くなっていると言って良かった。
「待て待て待て、ちょっと待て縁」
 頭をボリボリと掻きながら、恋慈はため息混じりに縁へと近寄る。途中で縁に踏みつけられたワルサーを拾い上げるが、重いっきり血塗れだった。泣きたい。
 歩み寄ってくる恋慈に、縁は何の用だと言わんばかりの表情で振り向いた。元より三白眼のその目だと、なかなかに物騒な目つきに見えてしまう。
「少しは休め。飯くらい食った方が――」
「必要ない」
 取り付く島がない。
 事実、縁は作られた食事など別に必要としていなかった。
 肉があれば十分なように、そう作られたからだ。栄養ならばその辺の動物を狩って食えば事足りる。そして、縁はその栄養価の高い生き物を、片っ端から殺して回っている。それを食えば、十分だった。
 くっ、と縁は思い出したように喉の奥で笑った。
 魔導師など食料だ。自分を作った奴らなど、自分を弄んだ奴らなど、所詮それだけの存在に過ぎないのだ。そう考えると、少しだけ愉快である。本当に少しだけ。
 そんな縁の暗い笑いに、恋慈は眉を顰める。
「何か作ってやろうか?」
 じろり、と返事の代わりに睨みが来た。
 これだけ荒もうと、相手の目を見る癖は直っていない。
「いらない」
「まあ、そう言うなって。おにぎりが良いか? サンドイッチは、あー、パンがないか」
 そこで、縁の顔色がさっと変わった。

「いらないっ!!」

 怒鳴り声、と言うよりも、ほとんど叫び声に近かった。
 ぼそりとした喋り方から一転して突然の大声に、恋慈は思わず目を見開いて縁を凝視してしまう。
 顔を赤くし、まるで威嚇するかのような表情。
 何の失言もしてないはずだよな、と恋慈は自分の言った言葉の内容を思い出してみるが、縁を怒らせる内容はなかったはずである。それか、しつこくてウザがられたのか。だとしたら、それはかなりヘコむ。
「飯なんかいらないっ! 魔導師の肉で十分だっ!」
 頭を振り、盛大な拒絶。
 恋慈としては、魔導師とは言えど縁が人間を食っている姿は見たくない。
 別に人間らしくしてほしい、とは言わないが、そこまで化け物らしく “振る舞って” いるのは見ていられない。
「――行ってくるっ!!」
 言うが早いか、縁はその体中に青白い線を走らせ、同時に魔法陣を展開。そして複雑怪奇な魔法陣が展開されて瞬きも許さぬそのすぐ後に、縁の姿が忽然と消失した。
 転送だ。
 止める間などない、それ程の高速展開の転送魔法。
 普通の転送魔法というのは発動までにかなり時間のかかる魔法らしい。縁の魔法しか使えない恋慈からすれば、あまりそんな気はしない。確かに計算は無茶苦茶に面倒だが。
 怒って行ってしまった縁を止める事が出来ず、恋慈は思わず片手を伸ばすも、行き場のないその手はしばらくフラフラとさまよってから、頭と一緒にかくりと落ちる。
「フラれたか」
 と、突然後ろから声をかけられて恋慈は跳び上がった。
 慌てて振り向くと、いやもう聞き覚えがあり過ぎるその綺麗な声で分かってはいたが、いつの間にかアステマの姿があった。
 その青い装束は、縁に負けず劣らず血塗れであった。
「いつから居たよ!?」
「さっきだ」
「心臓に悪いわ!」
 むしろ血塗れの格好がホラー過ぎる。
 恋慈の様子など気にすることなく、アステマは髪を掻きあげながらため息を1つ。
「恋慈、気がついているか?」
 ため息混じりの問いだった。
 主語を言ってほしい。何の問いだか分からない。
 とりあえず、今まで縁が居たのだから縁関連の事かなと思いつつ、恋慈はあー、と軽く唸る。
「あー? 縁のストレスの溜まり具合がやばいって事か?」
「それに気がついてなかったら、お前は死んだ方が良い」
「――教授、お前って俺の事かなり嫌いだよな」
「愛しているさ、蟻ほどには」
「愛されてなくね!?」
 やはりアステマとは馬が合わない。少なくともそう実感してしまう。
 冗談だ、と軽く付け加えるアステマのその台詞が信用ならない。蟻と同等だとか、結構傷つく。

「この次元の周りから、人が逃げ出している事だ」

 半分泣きそうな恋慈を気にする事なく、アステマは話を切り出した。
 何を今更、という顔を思わずしてしまった。
「そりゃ、普通逃げるだろ」
 何せ、ここが魔導師を殺して回る縁の本拠地だ。
 自分の住んでいる世界の近くで、そんな怖いのの根城があれば、普通は逃げる。猛獣の隣で昼寝はしたくないのと一緒だ。
 それを今更言うアステマに怪訝な顔を向けると、何故か鼻で笑われた。
「めでたい頭だ」
「喧嘩売ってんのか」
「言い間違えた。馬鹿の頭だな」
「よーし、その喧嘩棚の端から端まで買い占めだテメェ」
 酷い言われように恋慈はアステマの胸ぐらを掴み、次の瞬間には空を不自由に飛んでいた。殴り跳ばされたとも言う。
「とにかく気をつけろ、おそらく沈めに来るぞ」
「何をだよ」
 地面に叩きつけられる恋慈を気にすることなく続けたアステマの言葉に、恋慈は痛む腹を押さえながら聞き返した。
 当たり前のことを聞いたはずなのに、何故か再び鼻で笑われた。
「この星を、次元ごとだ」












 出迎えてくれたメイドの人は、何故か目を丸くした。
「フェイト様が先ほどいらっしゃったので」
 との事だ。見事な入れ違いになってしまったようだ。なのはは思わず苦笑を浮かべてしまう。
 アリサの部屋へと到着する。
 寝室用として割り振られているその部屋は、なのはが泊まりに来た時に何度かお邪魔させてもらっている。見覚えのあるその扉が、何故か妙に分厚く、拒絶の色のように感じてしまう。
 その扉を、メイドの人がゴンゴンとノックする。ノックの音が嫌に篭もって聞こえた。
 なのはが来たことを告げるも、返事がない。
「あの、扉越しで良いから喋って良いですか?」
 どこか困ったようなメイドの人になのはが声をかけると、何故か再び目を丸くされた。何故に?
「いえ、フェイト様も同じような事をされたので」
 との事だ。なるほど、流石親友。
 どうぞ、と場所を譲ってくれたメイドの人に代わって扉の前に立つ。存在感のある扉と言うべきか、威圧感のある扉と言うべきか。
 すぅ、と、なのははしっかりと深呼吸を一つ。心が落ち着く、とは言わないが、覚悟は決まった。
 ノックをする。
 ごん、ごん。
 返事はない。屍ではないだろう、扉の向こうには確かにアリサが居るのが分かる。
「アリサちゃん、なのはだよ。久しぶり――だね」
 久しぶり過ぎだ。半月はゆうに経っている。
 夏休みはまだ始まってないが、それでもそれはもう目と鼻の先で、そんな時期なのだ。
「何だかね、長い間、アリサちゃんの声聞いてないなって、思って…………あのね!」
 声を上げる。返事はない。
 気がつけばメイドの人は姿を消していた。気をつかったのだろう。
「あの、前は、ごめんなさい。叩いちゃって、凄い今更なんだけど、ごめんなさい」
 目の前にアリサは居ないのに、なのはは頭を下げた。ごん、とその頭が扉にぶつかる。
 数秒待つと、扉の向こうで小さく音がした。
 小さく、本当に小さく。
 耳を済ませていても、微かにしか聞こえないほどに小さな音だった。
 足音だ。
 とん、とん、と、小さな足音。軽い足音。
 その音が、ゆっくりと近付いてくるのが分かった。
 頭を上げる。このまま扉を開けてくれるかも、という楽観的な淡い期待は、流石にないとは言い切れない。
 足音が、扉に近付く。
 止まる。
 止まっ、た。
 なのはの肩が、僅かに落ちる。
「あれから、全然謝ってなかったよね。お話も全然しなくなって」
 それでもなのはは続けた。
 返事はない。
 足音も、ない。
 だが、アリサは扉を挟んですぐ向こうにいる。そう分かっただけで、言葉を続けられた。
「……実を言うとね、私、何でアリサちゃんがあんな酷いこと言ったのか、まだ分からないんだ」
 分からない。
 そう、分からない。
 アリサの頬を思いっきり叩き、そして喧嘩別れしたままとなってしまった、その原因たるアリサの暴言。

 ――……私、縁とは友達なんかじゃないわ。

 その暴言を吐く少し前から、アリサは髪を短くしたり急に機嫌が悪くなったりと不穏な状態が続いていたが、本格的におかしくなったのはあの日だ、あの暴言だ。
 そしてなのはは、何でアリサが急にあんな事を言ったのか、未だによく分かっていない。
「アリサちゃんは、やっぱり縁ちゃんの一番の友達だよ! 私から見ても、私から見てもねっ、アリサちゃんは縁ちゃんのことが凄く好きなんだなって――そう見えたよ!」
 どん、となのはは扉に両手を叩きつける。扉は押してもびくともしない。鍵を閉めているのか。
 高町 なのはは、鈍い。
 恋愛感での話だ。
 それはもう、凶悪なまでに鈍い。鈍器と言って差し支えないほどの鈍さである。
 恋に恋する事もなく、人生における大目標を既に定めてしまったなのはは、恋愛などには一切目を向ける事などなかった。ユーノが一生懸命にデートに誘おうと、フェイトが必死に気を引こうと、一切目を向けなかった。ある意味猛者だ。そんな少女である。
 そもそも同性愛があるというのを、なのははまるで知らない。男同士、女同士で芽生える好意は、絶対に友情なのだと信じて疑いもしない。だからフェイトの過剰なスキンシップも、なのはは友情なのだと信じきっている。
 だから、なのはは根本的な事に気がつかない。
 アリサの抱えた、抱え込んでしまった、そのアリサを容赦なく押し潰した根本的な問題を理解できない。
 それでも。
「それに縁ちゃんだって、アリサちゃんのこと、誰よりも好きだったよ!」
 いいや、それだからこそ。
 なのはは、色眼鏡なしで人の好意を見ていた。好意の種類は見分けられなくても、好意が向かう先ははっきりと分かっていた。
 扉の向こう、返事は、ない。
 一息。
 なのはは両手を扉に押し付けた格好のまま、その扉を見上げる。高い。
「明日ね、縁ちゃんに逢いに行くよ」
 静かに声を落ち着けて、扉に向かって話しかけた。
 返事はない。
「縁ちゃんがね、凄い悲しんでて、暴れてるんだ。それを止めに行くの」
 こつ、と、扉がなった。なのはがノックした訳ではない。
 この扉の向こうに、アリサが居る。
 こん、と、なのはも返すようにノックをした。
 この1枚向こうに、いる。
「アリサちゃん、聞いて」
 返事はない。
 期待はしてない、というのは流石に嘘だが、返してくれなくてもいい。
「縁ちゃん、殺されちゃうかもしれない」
 返事は、やはりない。
 ただ、扉の向こうで、誰かの息を感じた。呑むような音を感じた。それは、もしかしたらなのはの気のせいだったのかもしれないが、そう感じた。
「それをさせない為に、行くよ」
 そうだ、その為に行く。
 縁が、殺されるかもしれない。いや殺されるだろう作戦が控えている。
 確かに、縁の行いは到底許されるものじゃない。殺されて当然の行いをしているのかもしれない。それだけの事をしてきたのだ、この短期間に。
 だけど、それをさせない為に行く。
 こつん、と、なのはは頭を項垂れるようにしてつけた。
「アリサちゃんは、縁ちゃんの姿、見ちゃったんだよね――ごめん、縁ちゃんのこと、気がつけなくて」
 不思議と、自然に声のトーンが下がった。落ち着いた声、というのか。
「『こっち』 の事情に、アリサちゃんを巻き込んで、ごめん。謝るのが遅くなって、ごめん」
 今更だなと、頭の片隅で冷静な自分が呟いていた。
 縁の件は、完全に魔導師サイドの事情だった。誰も縁の事を看視者だと気がつけなかったとは言え、アリサが自ら縁と仲良くなったとは言え、アリサは魔導師の世界とは無縁の人だったはずなのだ。魔導師の友人こそ居るが、アリサは管理外世界のただの住人でしかなかったはずなのだ。
 気がつけばよかったのだ、縁の事を。
 もしかしたら恋慈が看視者なのかもしれない、看視者の件にアステマが深く関わっていると、そう考えていたはずなのに、縁が看視者であるということなど考えもしなかった。予想も出来なかった。
 だからこれは、魔導師側の失態なのだ。
 きちんとやれていれば、アリサは傷付かずに済んだ筈なのだ。いや、アリサだけじゃない、縁だって今みたいにならずに済んだ筈なのだ。そして縁に殺された人達だって、殺されなくて済んだ筈なのだ。
 全部、アリサと関係のない魔導師側の失態のせいで。
 それは終わってしまった結果論でしかない。気がつけというのも難しい話なのかもしれない。それでも、それを行うべきが管理局の仕事のはずだったのに。
 失態のせいで、アリサが泣いている。
 魔導師の失態のせいで。
 そして、なのはは魔導師で。縁の大嫌いな、魔導師で。
「――ごめんなさい」
 陳腐な謝罪の言葉しか、浮かんでこなかった。
 浮かんでこなかったが、謝るしかなかった。
「アリサちゃんが苦しんでるの、気がつけなくて、気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
 謝る。
 拙い言葉で、陳腐な言葉で。
 それでも謝る。
 謝らなかったから、どんなに拙くても陳腐でも謝るべきところで謝らなかったから、縁と友達になるということが出来なかった。
 言葉にしなければ伝わらない想いもあるならば、謝るという行為は、どんなに親しかろうと言葉にして伝えねばならないことだから。
 ごめんなさい。
 縁の友達作りを真っ先に妨害したのが自分で。
 ごめんなさい。
 感情のままに叩いて。
 ごめんなさい。
 苦しんでいるのに気がつけなくて。
 ごめんなさい。
 縁が看視者だと気がつけなくて。
 ごめんなさい。
「友達なのに、アリサちゃんが何で傷付いてるのか理解できなくて、ごめんなさい――っ」
 と。
 こん、とノックの音がした。
 扉の向こうから。
 ひゅ、となのはは思わず息を呑む。
『あ、ああ――』
 こん、と、もう一度音がする。
『ああ――ぅ――ぁ』
 そして、ごん、と何かが落ちたような音がした。
 いいや、何かが、崩れるような音がした。
 きっと、アリサが。
『あああああ、ああああああああああ、ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!』
 泣き崩れる、音が。
 ぎゅっと、なのはは強く目を瞑る。
 涙が一筋、流れた。
 ぎっと、奥歯を噛んだ。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 どれだけ謝っても足りない。万の謝罪を口にしても足りないくらいなのに、ごめんなさいとしか、言えない。
 ごめんなさい。
 気がつけなくて、ごめんなさい。
 何に悩んでいるか分からなくて、ごめんなさい。
 縁の正体に気がつけなくて、ごめんなさい。
 泣いているアリサを助けられなくて、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
『あああああああああああああああああああああああああっ!!! ああああああああああああああああああああああああああっ! ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!』
 目を開く。
 涙で滲んで何も見えない。
 息を吸う。
 震えていた。
「ごめんなさい――」
 口にするのは謝罪の言葉。
 そして。
「――縁ちゃんを止めに、行ってくるね」




 それが終わったら、アリサちゃんのところに来るよ。




 お話したいから、終わったら来るよ。




 謝ったり、きちんと説明したり、そういうのを全部ひっくるめてお話しするから、全部終わったら、絶対来るよ。












 門が開いてファリンに出迎えられるよりも先に、どこか見覚えのある猫が真っ先に出迎えてくれたことに、相も変わらずの猫屋敷なんだなぁとフェイトは頬を緩ませる。フェイトは犬も好きだが、猫も好きなのだ。あまり構いすぎるとアルフが拗ねてしまうのだが。
 よしよしー、と毛並みの良いその猫を撫でる。気持ちよさそうなその猫の顔以上に、フェイトの頬は緩んでいた。だらしない。
「い、いらっしゃいませー」
 遅れてファリンがやって来た。頭に子猫が鎮座している。何が起こったのだろうか、髪が乱れて服も乱れていた。
 何かつっこみを入れた方が良いのだろうか。数瞬迷った後、何も見なかったことにして、いつも通りに頭を下げて挨拶をする。慌ててファリンも挨拶をするが、頭を下げようとすると子猫が鋭く泣いてファリンを威嚇する。そしてファリンが半泣きになる。子猫に負けていた。
 アリサの家のメイドと違い、こっちのメイドは大変なんだなぁ、と何か間違った感想を抱きつつ、フェイトは撫でていた猫を抱えて立ち上がる。猫の抵抗はない。
 するとファリンの頭に鎮座していた子猫が、ばっ、とフェイトの肩へとダイブした。
 見事な着地。思わず10点と呟いてしまう。
 よく見れば、肩へと跳び移った子猫はフェイトの抱えた猫によく似ていた。子供なのかもしれない。
 抱えた猫がうにゃー、と欠伸のような間延びした声で鳴き、子猫がフェイトの頬をぺろりとなめる。くすぐったい。どうやら懐いてくれているみたいで、少し嬉しくなった。
「――くすん」
 と、何故かファリンが煤けている。何で私には、と小さな呟きが聞こえた気がしたが、あまり気にしない方が良いだろう。
 そんな半泣きのファリンへ、すずかに会いに来ました、と告げると、お待ちしておりました、と若干恨めしそうな目線のままに返される。どうしよう、ファリンの気に障るようなことをした覚えが少しもないのだが。
 そして通されたのは中庭だった。部屋ではないのか。
 中庭の小洒落たテーブルに、すずかはファリンの言っていた通り、フェイトの紅茶も用意して待っていた。訪ねる約束も何もしていないのに。
「こんにちは」
「え、あ、こんにちは。久しぶりっ」
「うん、久しぶり」
 そして、当たり前のようにフェイトににこりと挨拶をしたすずかに、フェイトは慌てて返す。自然体過ぎて驚いた。
 座って、とにこやかに促され、フェイトは少し居心地悪そうにすずかの向かいの席に腰を下ろした。肩に乗っていた子猫が、ぴょんと芝生へと跳び降りる。
 抱えていた猫を隣の席に降ろし、テーブルに置かれた紅茶へと目を向ける。湯気が出ている。煎れたてなのか。
「えと、私、今日来るって言ってなかった、よね?」
「うん。もうそろそろ来るかなって」
 親友はいつの間にか予知能力者になっていた。
 自分はそんなに分かりやすい行動パターンだったかなぁ? と疑問に思いながら、紅茶を一口。品名は分からないが、苦みが少なくて飲みやすい。
「まぁ、午前中になのはちゃんが来たからなんだけどね」
 すずかも紅茶を一口飲んでから、にこりと笑ってタネをバラした。
 何だ、来てたのか。入れ違いになってしまったようだ。惜しいことをしてしまった、と心の片隅で後悔をする。
 それにしても、なのはだってフェイトが今日ここに来ることを知らないはずだから、どちらにせよすずかはフェイトがここに来るのだと予測したのは事実だった。
「ごめんね、全然連絡できなくて。学校の授業は随分進んじゃったかな」
 特にそれは気にする事なく、フェイトは話を切り出した。
 ノートはちゃんと取ってあるよ、と小さく笑いながら当たり前のようにすずかは言ってくれる。毎度毎度大変お世話になっている。すずかが居なければ、今頃とんでもない劣等生に自分はなっていただろうとフェイトはしみじみ感じてしまう。
「アリサちゃんの所には前にも顔出したって聞いたけど?」
「あはは、流石にね。今日も先にアリサの所に行ったけど、戻ったらしいね、会えなかったけど」
 ちょっと意地悪そうな表情で切り替えしてきたすずかに、フェイトは苦笑いを浮かべる他なかった。
「ふーん、前にアリサちゃんのお見舞いに来た時は、私の所に顔出してくれなくて、今日はアリサちゃんの後回しかぁ」
「あ、あはは、いや、えっとね? 前にアリサのお見舞いした時は、その、管理局の方で立て込んでて、それで……」
 更に追撃。
 意地悪そうな表情で、そして目と口元が笑ってるから本気ではないのだと分かってはいるが、フェイトは言い訳に苦心する。どうやら今日のすずかはちょっとサド目だ。
 前にも、フェイトはアリサのお見舞いをしていた。
 しかしそれは、管理局の人間として、事情聴取としてと完全に割り切ったものだった。とは言え、その時はアリサは幼児退行の真っ最中で事情聴取も何も出来なかったというのが実情である。縁の正体が割れてから、一週間後の事だった。
 あの時はまだ管理局その物は、ズタズタにされてこそいたが健在だったので忙しかったのは本当だ。そして何より、フェイト自身が縁に撃墜されたショックから抜け出せなかった時でもある。とてもすずかに顔を見せていられる状況ではなかったし、暇もなかった。
「冗談だよ」
 小さく笑いながら、すずかは紅茶にミルクを入れる。
 紅茶にはレモンかミルクか。アリサがレモン派だと豪語している横で、すずかはいつだって静かにミルクを入れていた。
「フェイトちゃんも、もう少しお仕事かかりそうなの?」
「うん、まぁ、ちょっと今大きな仕事しててね……明日には全部終わるから、明々後日……えと、4日くらいしたら、また学校行けるよ」
「そうなんだ」
「でも、そうしたらしばらくは仕事ないから、夏休みの間はずっと遊べるかも」
「その前に、フェイトちゃんは勉強の遅れと夏休みの宿題をみっちりやってもらいます」
「う」
 くるくると紅茶をかき混ぜながらの一言に、フェイトは思わず言葉に詰まった。どうしよう、今日のすずかはちょっとサドい。
 明日。
 明日が終われば、仕事はない。
 何せ管理局がなくなるのだ。職場がなくなれば仕事はなくなってしまう。
 正確には救援活動があるが、それをフェイトはあまり考えていない。考える必要がない。明日の事を考えれば、それは当然のことだった。
 明日。とにかく明日。
 明日の作戦が成功すれば、そもそも強力な次元震を発生させるという特攻作戦は行われない。そして明日の作戦が失敗すれば、自分は死ぬ。
 きゅ、と無意識にフェイトは自分の両手を握り締めていた。
 すずかの目が細まる。
「大変な仕事なの?」
 その問いに、フェイトは一瞬だけ固まった。
 固まって、何事もなかったかのようにすずかを見習って紅茶にミルクを少し入れてみた。手が微かに震える。
「そうでもないよ。本当に大変なら、すずかの所来られてないし」
「フェイトちゃんにとって、私はその程度なんだね……くすん」
「あはは、冗談だよ。ちゃんと寝るくらいの余裕もあるし、ご飯も抜くくらい忙しい訳じゃないし、私だって元気でしょ?」
 大丈夫。誤魔化せている。
 そう自分に言い聞かせながら、フェイトはティースプーンを取り、紅茶をかき混ぜる。くるくると、紅茶にミルクが混じり合い。
 すずかの溜息が、嫌に大きく聞こえた。

「元気なフェイトちゃんは、いつもレモン派だけどね」

 もう一度、フェイトは固まる。
「……ほら、ミルクも美味しそうだから」
「ロイヤルミルクティーっていうくらいだからね。紅茶の本場のイギリスは、断然ミルクティーだもん」
 それでも何事もなかったかのように、フェイトは紅茶をかき混ぜてからティースプーンを引き上げる。頭の片隅で、そう言えばミルクティーは全然飲んだことがないなと考えながら。
 レモンティーは何でもかんでも自分流にアレンジするアメリカ人の出した偽物云々、ボストン・ティーパーティー事件後で安い紅茶ばっかりだった云々、オレンジ浮かべてれば良いじゃない云々。静かにミルクティー派の意見を述べるすずかに、フェイトは静かに一息はいた。どうやら声を大にして豪語しないだけで、アリサとは正反対にすずかは根強いミルク派だったようだ。
 このまま話を流そう。
 頭の中で計算高い自分が囁く。
 下手に同意するよりも、すずかの話題を着火した方が話題が逸れるだろう。そんな強かな計算。
 私は美味しければどっちでも良いかなぁ。
 そう言ったら、すずかはきっと むっとした表情でミルク派の意見を述べるだろう。
 やや困ったような表情で、フェイトは口を開いて
「わた――」

「縁ちゃんの所に行くんだっけ?」

 手にしたティースプーンが、落ちた。
 し、という言葉が口から出なかった。
「明日、縁ちゃんの所に行くんだよね?」
 改めてすずかが尋ねる。
 いや、尋ねるのは言葉だけで、それはもはや確認に近かった。
 あれ、バレてる?
 フェイトの頬に冷や汗が流れた。
「え、と……なんの話――」
「縁ちゃんが人じゃなかったっていう話」
「………」
 その断言に、フェイトは口を真横一文字に結ぶしかない。
 何ですずかが知っているのだろう。
 すずかは、この件に関しては無縁のはずである。縁が急にいなくなったり、幼児退行を起こしてしまったアリサをなのは達がいない状況で投げ渡されたりと迷惑を一番被っているのは確かだが、魔法の世界の件にはすずかは無関係のはずである。
 数瞬考えて、頭の中にぱっと顔が浮かんだ。
「……な、なのはから聞い、た?」
 すずかは綺麗な笑顔で返してくれた。
「うん」
「なのはぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 思わず頭を抱えてしまう。
 地球は管理外世界だ。
 いくらすずかは管理局のことや魔法のことを知っているとは言え、管理外世界の一般市民に過ぎない。
 それなのにベラベラと魔法のことを喋って、あまつさえ事件の内容まで喋ったというのか。普通に厳罰物である。
「やっぱり、喋っちゃいけないことだったのかな、なのはちゃんの教えてくれたこと」
「あー……分かる?」
「何でも喋って良いなら、なのはちゃんが魔法使いになったこと、もっと早くなのはちゃんから教えてくれてたよ」
 紅茶を一口飲みながら、すずかの表情はいたって穏やかなものだった。
 なのはが魔導師だとすずかが知ったのは、なのはが自ら口を開いてくれたからではなく、なのはが魔導師であるところを偶然にも見てしまったからだ。
 後から聞いた話だが、なのはが魔導師となってから最初の頃にあったごたごたは、比較的早く終わり、それからしばらくはひたすら魔法の訓練をしていたらしい。最初の頃になのはが魔導師であるという事を喋らなかったのは、それは危険に巻き込みたくないという想いだろうが、それ以降であればなのははきっと自分の口で魔導師であるという事を教えてくれていただろう。魔法の事を管理外世界の住人に教えてはいけない、という規則さえなければ。
 すずかはそう思っている。なのはから直接聞いた訳ではないが、それくらいなのはを信用している。
「――管理外……魔法のない世界にね、魔法の事を喋ったらいけないって決まりがあるんだ」
「やっぱり」
「地球の科学技術からしたら、魔法科学はとんでもないテクノロジーだから。新しい力、対策の浸透してない力っていうのは、やっぱり争いの火種になり易いんだ。混乱しないようにって配慮、かな」
 なるべく言葉を噛み砕きながら説明するフェイトのそれに、すずかは半分興味のないように、ふーん、と小さく呟くだけだった。
「……それでも、教えてほしかったかな」
「ごめん」
 小さく苦笑するすずかに、やはりフェイトも苦笑するしかなかった。
 本当に、なのはは自由だ。すずかとフェイトの共通認識だった。
 確かに管理局はなくなってしまうのだから、規則だの何だのという細かい事はいいのかもしれないが、何で管理外世界に魔法の事を喋ってはいけないという規則があるのか、それをなのはは深く考えてなかったようだ。地球に新たな戦争を起こしたい訳でもないだろうに。
「……どこまで知ってるの?」
「もしかしたら、これがフェイトちゃんに会える最後かもってくらい、かな」
 答えるすずかのそれは、随分とあっさりしたものだった。
 それじゃあ、だいたい知ってるんだね、とフェイトも静かな声でつぶやいた。
 もしかしたら、これが最後のお茶会。
 もしかしたら、これが最期のお茶会。
 よくよく考えてみれば、それこそ今更な話なのかもしれない。相手が縁だから、無茶苦茶という言葉がぴったりなくらいに強い縁だから、対峙すれば死ぬかもしれないという確率が高いだけの話だ。
 今までにだって何度も実戦に出ていた。
 何らかのアクシデントで死んだかもしれないのは、今までだって同じ事。そういう世界にフェイトはいるのだ。
 非殺傷とか、そういうのに慣れていた。戦うという行為になれてしまっていた。自分がそういう世界にいるというのに、慣れなければならなかった。
 もしかしたら、自分が死ぬかもしれないという事。例え殺意がなくても、自分が相手を殺してしまうかもしれないという事。
 ふっ、と、フェイトは自嘲するように小さく笑った。
「なんだかね、今頃になって、海鳴さんに教えられた事が分かってきたんだ」
 ティーカップの中を覗きながら、フェイトは小さく呟いた。
「武器を持って戦うっていう事。私が死ぬかもしれないし、相手を殺しちゃうかもしれない事。海鳴さんが大怪我してまで教えてくれた事、本当に今頃分かってきたんだ」
「……どういう事?」
「覚悟で決めろって事」
 返す言葉は静かなもので、すずかも小さく、そう、と答えるだけだった。
 縁は言った。
 戦うのは良くないことだが、覚悟が出来たら。
 誰かの為だとか、平和の為だとか、そんな人のせいにしない。自分が戦い、死ぬかもしれないし相手に大怪我を負わせるかもしれない、もしかしたら殺すかもしれない。戦うのはどんな大儀を振りかざそうと褒められた事じゃない。

 だけどそれでも戦うならば、それ全部を背負う覚悟をしろと、縁は言いたかったのだろう。教えたかったのだろう。

「じゃあ、フェイトちゃんは覚悟したの?」
「ん?」
「縁ちゃんを殺しちゃうかもしれない、って」
 一拍だけ間を置いた。
 ミルクティーを一口。飲んでから顔を少ししかめた。やはりレモンの方が自分には合っているらしい。
 かちゃ、とティーカップを置いてから、顔を上げる。
 まっすぐ、すずかがこちらに目を向けていた。
「したよ」
 すずかは顔色を全く変えない。
「じゃあ、フェイトちゃんが死んじゃう事は?」
「覚悟したよ」
 それでも、すずかは顔色を一切変えなかった。
 無言の間が挟まれた。
 にぁ、と子猫の欠伸がはっきりと聞こえる。
「じゃあ、それで私が泣いちゃう事は?」
「……それは」
「私だけじゃないよ。アリサちゃんもそう」
 まっすぐフェイトを見るすずかの目は、底が知れないくらいに綺麗な色で。
 小さく、フェイトは笑う。
「ごめんね、甲斐のない友達で」
 苦笑の他なかった。
 本当だよ、とすずかも小さく笑った。
「ごめん。でも、約束はできないけど、帰ってくるよ」
 それは間違いなく本心だった。
 そう、とだけすずかは小さく呟いて。
「じゃあ、待ってるよ」
 とても自然にのたまった。
「フェイトちゃんも、なのはちゃんも、無事で帰って来るの、待ってるよ」
「……ありがと」













 鳴り響くメロディは、とある落語番組のテーマだった。
 扉に背をもたれ、ぼんやりと天井を見上げながら、アリサはそのメロディを聞いていた。はらはらと、未だに流れ続ける涙が止まらない。
 両手には携帯電話。
 メロディは、左手の中で鳴り続けていた。
 何で持ってきたのだろう。そんな疑問を浮かべることすら、今のアリサには億劫で仕方がなった。
 縁の携帯だけで良いのに。それ以外は全部いらないのに。縁の事を思い出し、日記を読む以外はもう全部が何でもいいと思えるのに。
 それなのに、自分の携帯を握っていた。
 縁の名前を聞いて、衝動的に泣き叫んだせいなのか、頭がぼぅっとする。
 かちっと、携帯を開く。
 ボタンを、押す。

『お、繋がった繋がった。もしもし、私はやてちゃん、今あなたの後ろにおるの』

 後ろは扉である。
 携帯から暢気な声が聞こえたことにより、遅れてアリサは押すボタンが逆だった事を悟った。どうでもよかった。
 このまま電源ボタンを押して通話を切るという手もあったが、億劫過ぎた。携帯を開いたままの姿勢で、アリサは自分の携帯を覗き込む。
 この声が誰か。そんなのは確かめるまでもない。
 はやてだ。
 暢気な声。明るい声。しばらくぶりの親友の声。
 フェイト、なのはに続いての、声だった。
 流れ続ける涙の量が、不意に増えたような気がする。
『あれ? おう、とか、ちゅちゅーん、とか言ってくれへんの?』
 暢気な、実に暢気な言葉である。訪れた二人とは随分な違いだが、とてもはやてらしいと感じてしまう。
 そう言えば、はやての陽気で暢気な声色は、かなり久しぶりだ。落ち込んでいたのはいつの間にか解消されたというのか。自分とは凄い違いである。
 返事をする気力もなく、それでもアリサは携帯を耳まで持っていく。
『ここは可愛らしく、ぁうー、とか言うてくれると嬉しいんやけどなー。というか独り語りも結構寂しいでー。もしもーし』
 いつも通りだ。
 いつも通りのはやてだ。
 それが悲しく感じてしまうのは、置いて行かれたような気分になったからなのかもしれない。わがままだ。
 吐いた息が、僅かに震える。
『あ、その息はやっぱりアリサちゃんやね。いやー、これがアリサちゃん家の家族の誰かやったらどうしようかと』
 親友は息づかいで人を識別できるらしい。
 いつもだったら、ここで自分は笑うかつっこむかしていたような気がする。
『……ん? 泣いとるん?』
 泣いてる。
 泣いているしか、今の自分はできない。正直、泣くのすら、もうどうでも良くなっているところもある。
 何だか、もう。
 どうでも良くなってきた。
『あー、んー……アリサちゃんや、泣いとると美人台無しやよー』
 はやてなりのその言葉すら、何だか空虚な言葉に感じてしまう。
『本当なら、今行って抱きつきたいんやけどなー。今ちょいと仕事忙しくて行けへんでな、勘弁なー』
 びくっ、とアリサの肩が跳ねた。
 仕事。
 はやての仕事。
 フェイトと、なのはと、はやては同じ仕事だ。部署は違うようだが、たぶん、はやての言っている仕事というのは。
『仕事終わたら、翠屋さんの新作ケーキ奢ったるでなー。あー、代わりに哀れなはやてちゃんに勉強教えてくれるとありがたいんやど』
 フェイト曰く、なのは曰く、控えている仕事は、危ないらしい。
 何がどう危ないのか、それはよく分からないが……暴れている縁、というのがどういう存在なのか、アリサは既に知っていた。それを目の前で見てしまった。
 あの、化け物のような姿になって、縁が暴れているというのだろうか。
 身震いがした。
 怖い、怖い。
 縁が、人を殺しているのだろうか。
 目の前で見た、あの虐殺劇。あれを繰り広げているのだろうか。
 怖い。
 あの縁が、人を殺しているのかと思うと、怖い。
『夏休みの宿題もまた、鬼のようにぎょーさん出るんやろな。困たなー、手伝って下さいませんかアリサ様ー』
 半分泣きそうな声のはやて。泣いているのはこっちだ。
 この暢気な声をしているはやてもまた、縁に会う気だろうか。
 あの化け物のような姿の縁に、会う気だろうか。殺されるかもしれないのに。
『まあ、仕事終わたら、まとめて勉強見たって下さい。お願いしま』

「縁に、会うの?」

 気づいたら、声に出ていた。
 掠れたような、変な声だった。
 およ? と、はやての言葉が止まる。
『なんや、戻ってたんか。おはよーさん』
「縁に、会うの?」
 どうやら戻っていたことを知らなかったはやての言葉を、同じ質問で返す。今のアリサにとって、それが一番重要なことだったからだ。
『会うよ?』
 それを至って平然と返しやがった。しかも、疑問系である。
 会うのか、縁に。
 身体がかくかくと小さく震える。寒気がした。

『ん、何や? アリサちゃんも会いに行きたいんか?』

「そ――っ」
 絶句した。
 同じの食べたいの? くらいの気軽さで、とても自然に当たり前かのように、はやての質問は飛んできた。
 会う?
 縁に?
 胸の奥が、ぞわりとした。鳥肌が一気に起立する。
 縁に? 会える?
 私が?
 身体の震えが、酷くなった。がくがくと震えてくる。
『会いたいんやったら、そら会わせるよー。私とアリサちゃんの仲やしなー』
 その気楽な声色に、余計に身体が震える。
 縁に、会う?
 あの縁に?
 あの、フォンを軽く捻り殺した、あの縁に、会う。
 ぞわりと胸の奥が騒ぎだす。
 縁の顔が、ぽっと頭の中に浮かんだ。化け物の姿じゃない、人としての、アリサ・バニングスが接してきた海鳴 縁の顔が浮かんできた。
 無造作に切られた真っ黒の髪に、猫目で三白眼をした、花の咲いたようなきれいな笑顔を浮かべる、アリサが好きになった、好きになってしまった、女の子。
 胸が鳴る。
 自分が好きになった子。
 会いたいかと尋ねられたら、会いたいに決まっている。今すぐにだって会いたい。その気持ちは確かにあるのだ。
「わ――私は――」
 あるのだ、が。
 そうだが。
 会うのが、怖い。
 いや、怖いのだ。
 縁が、怖い。
 容赦なく人を殺した縁が、怖くて堪らない。縁はそんな事をしないと分かっているのに、近寄れば問答無用に殺されてしまうような、そんな本能へ訴えかける恐怖が湧いてきてしまう。
 喉がひくつく。声が上手く出ない。
「わた、し――」
 会いたい?
 会いたいよ。
 会いたくないよ。
 縁が好きだ。会いたい。
 縁が怖い。会いたくない。
 ああ、そして何よりも。

「私、縁に――酷いこと、言って――っ!」

 助けに来てくれた縁に、酷い言葉をぶつけたのに、どの面を下げて会えばいいのかが分からない。
 縁だって晒したくなかっただろう姿を見て、化け物だと叫んでしまった。来るなと言った。あの異形を、縁だと認めたくない一心だった。
 助けに来てくれたのに。
 縁は、約束を守ってくれたのに。
 アリサが必要とする限り、アリサを苦しめたり泣かせたりする連中から必ず守ると、その約束を確かに守ってくれた。馬鹿なことばかりして、縁に嫌われたって文句がないくらい酷いことをした屑の自分を、縁は確かに助けてくれた。それなのに。
 酷いことを言った。
 縁が人を殺したことを認めたくなかった。
 怖かった。
 怖かったのだ、言い訳にもならないだろうが。
 自分勝手で縁をひたすら傷つけた、そんな自分が一体どの面を下げて縁に会えと言うのだ。
 あー、と、電話向こうで間の抜けた唸り声がした。
『いや、アリサちゃんが縁ちゃんに酷いこと言うてるのは十分知っとるから。友達やないとか、無茶苦茶言うとったやん』
 びくっと、アリサの肩が跳ねた。肩と言わず身体全体が文字通り跳ねたかもしれない。
 ああ、そうだ。
 化け物だとか、そういう罵声以前に、自分はもっと酷いことを言っていた。
 あの時は縁が聞いていたとは思ってなかったが、いずれは縁に面と向かって言っていただろう、そんな最悪の台詞を、縁に聞かせてしまっていた。
 友達じゃないと。
 そんな事を、縁に、言ってしまっていて。
 嫌われたい一心で。
 涙が出る。
 更に出る。
 そうだった。
 本当に自分は、最低だ。
 縁を傷つけてばっかりじゃないか。
 漏れる嗚咽に、はやてがため息をついた。
 はぁ、と、見事なため息で。

『そうやなくって、アリサちゃんは縁ちゃんに会いたいんかーって、聞いとんのやけどな』

 本当に、暢気な声で。
 容赦なく、残酷なことを。
「会って……どうしろってのよ!?」
『謝るとか』
 のほほんと返された。
 悪い事したら謝れよ。たったそれだけの理論である。
 謝る。
 縁に会って。
 頭の中で、フォンが引き裂かれて惨殺された、その光景がよぎった。
 殺される。
 無条件に本能が告げる。
「ころさ、殺されるわよっ。だって今の縁、化け物じゃ――」
『じゃ、会わんとき』
 のほほんと。
 暢気に。
 陽気に。
 さらりと、言ってくれた。
 く、と喉をひくつかせるように息を呑んだ。
『私らが縁ちゃんを説得してみるよ。行きたないんやったら、ま、アリサちゃんは居残りさんやね。白馬の王子様やなくって囚われのお姫様役で』
 冗談めかすその口調は、学校でいつも聞いていたその口調のままで。
 言外に、役立たずだと言われているような気分になる。実際に、今の縁に対しては何の役にも立たないだろう、アリサという人間一人では。
 白馬の王子様なんて無理だ。縁を救う資格など、今のアリサには持ち合わせていない。
 縁を、救う。
 救ってほしいのだろうか、縁は。
 なのはが言っていた通り、救ってほしいのだろうか、今の縁は。
 どちらにせよ、それは自分の役目ではない。
「私――」
『大丈夫やて、誰も責めへんよ。怖いのがいっぱいあるとか、人と会うのが怖いとか、勇気や根性があらへんとか、別に生きるだけならなーんも困らんしな。無理にがんばる必要はあらへんて』
 のほほんと言ってくれるはやての言葉を、優しいと取るべきか、見捨てられていると取るべきか。
 ぎゅっと、携帯を握り締める。
 自分の携帯と、縁の携帯の、両方を。
『頑張れ言うたって、頑張れへんよね。ガソリンが全部抜かれとるエンジンみたいなもんやし……独りぼっちだった頃の私も、そんな感じやったしなー。頑張らんでええ、頑張らんでええ、アリサちゃんは気の済むまで、ゆっくりしとり。今まで他の誰より頑張っとったんやから、休憩しとっても大丈夫や』
 笑うように、当たり前のように。
 はやての投げかけてくる言葉は、フェイトやなのはとは違い、何をしていいのかも分からない今のアリサに対してはっきりとしたものだった。容赦がないとも言える。最初の頃の縁が、丁度そんな感じだ。
 閉じ籠もったり、周りを拒絶したり、そんなアリサを容認している節もある。はやてもそれを違う形で経験していたからだろう。
『代わりに、私が頑張る』
 だから、その独りぼっちの世界から救い上げてくれる大切さを、はやては良く知っている。
『縁ちゃんを白馬に乗せて、王子様に仕立てあげて、そんでお姫様の所に向かわせたる』
 何もしなくて良い。頑張る必要なんかない。
 救い上げるから、待っていてほしい。
 フェイトやなのはと、根本は同じだ。
 救いたい。ただそれだけ。
 それだけの為に、縁に会うのか。
「殺されるわよ……」
 気がつけば、そう呟いていた。
「あんた……殺されるわよっ」
『誰に?』
「縁によ! 縁は、簡単に人を殺すのよ!?」
『せやかて指くわえとったら、縁ちゃんが殺されてまうし』
 当たり前のように言ってくれる、本当に。
 軽く返してくるはやてに、アリサは言葉が詰まった。
 殺される。
 はやてが。
 縁に。
 そんな光景が、頭の中をぐるぐる回る。それはただの妄想なのに、嫌に現実味のあるものだった。
 いや、はやてだけじゃない。なのはだろうと、フェイトだろうと、きっと縁は殺す。あの化け物は、そういう存在なんだ。
 縁が、殺すのだ、人を。
 身体の震えがまるで抜けない。
『ま、生きるか死ぬかは乞うご期待! 次元挟んで電話するとバッテリーめちゃ食うから、そろそろ切るなー』
「え」
 と、唐突にはやての明るい声。通話終了を告げる声。
 何故か戸惑うような息がアリサの口をついて出た。
 はやては、フェイトやなのはのように、決死の覚悟のような感じが微塵にも感じられない。本当に明るく、いつも通りで。
『はは、色々中継かんどるから、これ国際電話相当なんよ』
 告げる別れの言葉のそれに、アリサの背筋が冷たくなった。
「ちょっと、はやて!? 死ぬ気!?」
『ほなアリサちゃんは生き残ってなー。ほななー』
 明るく、最後まで明るく暢気に、また明日、とでもいうくらいに軽く、はやてからの電話が、切れた。
 つー、つー、という電子音。
「は……はやて! はやて!?」
 返事はない、あるはずがない。
 かけ直すという考えが、まるで浮かんでこなかった。
 つー、つー、と無機質な音を聞きながら、何故だろう、これがはやてとの最後の会話なのだろうと、そんな事を冷酷な誰かが囁いていた。
 自分は、何をしているのだろう。












「ほなアリサちゃんは生き残ってなー。ほななー」
 そんな明るい声とは裏腹に、はやては額を押さえ、どんよりと暗い表情のまま通話ボタンを押して電話を切った。そして更に電源まで落とす。
 アリサとの電話の最中、はやての表情はどんどんと沈んだものになっていた。そして電話が終わった今は、頭を抱えて泣きそうな顔になっていた。
 声だけを明るくするのは、昔から得意だった。
 アリサのように表情や声色を自由自在に操れはしないものの、明るい声だけは得意なのだ。独りぼっちの時から、電話の応対だけはしてたのだから。
 だが、アリサとあれ以上話していたら、その声も作れなくなっていたかもしれない。
 はやての後ろで控えていたシャマルが、その様子にオロオロとしながら躊躇いつつ声を掛けた。
「……はやてちゃん」
「はは……私って、ほんま、最悪やね」
 先の声とは打って変わって、どこか自嘲するような声ではやてが呟いた。
 最悪や、ともう一言だけ口の中で呟きながら、目の前にある1冊の本へと目をやった。本なのに、何故か機械と接続する為のコードが行く本も繋がっている、そんな不気味な本。
「寝てる子を叩き起こすわ、アリサちゃんに無茶苦茶言うわ――」
 頭を抱えるのをやめ、背伸びをするようにぐっと両腕を天井へ向けていっぱいに伸ばす。
 そして力を抜いて腕を下ろし。
「こら死んだら地獄やな。死にたないなー」
「はやてちゃんは、やるべき事をしっかりやっているだけだと思いますよ」
「やるべき事て、嫌われ役やろか……」
 溜息交じりに返しつつ、はやてはこきりこきりと首を鳴らした。そして思い出したかのように再び携帯の電源を入れる。
 そんな事はないと思いますけど、と呟いているシャマルを軽くスルーして、アドレス帳のあ行を開く。電話やメールをする時、すぐに呼び出せるよう、頻繁に連絡する相手をアドレス帳のあ行に入れるのがはやての癖になっていた。
 愛しのアリサちゃん。
 愛しの義妹(予定)。
 愛しのすずかちゃん。
 愛しのアクマイザー3様。
 頭に “愛しの” を付けるとあら不思議、あ行に固まって登録される。
 ただのネタじゃない、と、そのアドレス帳を見て呆れたようにつっこみを入れたのは、間違いない、アリサだ。個人的には素晴らしい知恵だと思っていただけに、その冷めたつっこみは良く覚えている。そして、なのはがとても嫌そうな顔をしていたのも良く覚えている。
 その愛しのグループから選択し、はやては一瞬だけ躊躇するように固まってから、ゆっくりと通話ボタンを押す。
 すぅ、と小さく深呼吸。
「誰にですか?」
 小さく首を傾げながら問うシャマルに、はやては静にと言うかのように唇に人差し指を当てて返す。
 表情は暗い。
 電話を耳に当てる。呼び出し音が鳴っている。
 プッ、と小さな音と共に、電話が繋がる。
「あ、もしもしすずかちゃん? 図書館の可憐な妖精、はやてちゃんやよー」
 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 紅茶のような渋いだけの煮汁の何が美味しいんだろう。こんにちはこんばんは、読んでいる人によってはおはようございます、微糖ミルクなしコーヒー派、クロガネです。ま、コーヒーも粉砕された炒った豆の煮汁な訳ですが。
 ちなみにコーヒー好きが祟って購入したコーヒーサイフォンは、僅か1ヶ月で割られました。ぐすん。
 良いブルーマウンテンはやっぱり高いが美味しいですね。だけどモカも美味しいよ。

 さて、4月に入り何処も彼処も新入生・新入社員・新入橋の下生活と溢れる時期となりました。それに漏れる事なくクロガネの職場にも新人さんが参りました。
 若い。
 ……クロガネも若いんだけどね。

 何をしていいのかが分からない、から、何もしたくない、へと地味にアリサの思考が移行されています。このまま放っておいて、鬱状態が回復しかけたらきっとアリサは自殺してくれるでしょう。欝は治りかけが一番怖いのさ、何をしでかすか分からない的な意味で。
 今回は決戦前日談。魔法組ではないすずかへの訪問話。無駄に長くなってしまいました。
 普通に考えると、なのは嬢は喋り過ぎ。守秘義務というのをご存知ではない様子。でも唯一取り残されている者としては、教えてほしいところですよねぇ。皆さんはどうでしょう。
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9件のコメント

[C615] 守秘義務は大切。

小3当初の時ならともかく組織に所属したら組織のルールを守ることは当然です。でもまぁ・・管理局自体がもう無くなるなら遺言的な意味で心情的には許されるような。


なんという高速更新・・・アタック驚きの速さ。このままの更新速度ですと俺完結したらハロワ行くんだ・・って言ってしまうレベル。

さらっと自殺してくれるとか言わないでください!!そんなクロガネさんが大好きです。

プレッシャーをかけつつ図書館の可憐な妖精とか言っちゃうはやてのキャラが実に美味しいと思います。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : なまにく
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[C616] 人はそう簡単には変わらない

なんか三人娘がまんま戦争に行く若者ですね。やっぱ10代前半の子どもにこんなことさせる世の中は嫌なものです。

しかしどうにも三人娘の台詞が白々しい、フェイトやはやてはまだマシだけど、なのはは結局自分主観でしゃべってますからね。人はそう簡単には変わらないという見本ですな。

この分だと高町家の皆さんには伝えてなさそう。いくらアニメ版の高町家が歪んでると言っても、普通の親なら、行く必要の無い死亡率が9割以上あるような戦地に子どもを行かせるなんてしないでしょうね。恭也あたりなら手足をへし折ってでも止めそうな気がする。これで「行って来い」とか言うなら、人として狂っているさ。


三人娘の学業もそうだけど、作戦の合否に拘わらずアースラ組は路頭に迷ったらどうするつもりなんだろ?ミッドチルダは壊滅してるし、地球に移住したらまた身分偽造で、多分生活費も不正な手段で入手でしょう・・・ 何か真面目に頑張ってる学生や職がなくてハローワークに通ってる人たちが馬鹿みたいですよね。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : ミヅキ
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[C617] やっとわかった

原作の構造から仕方が無いけど、この物語には大人や頼れる年長者がいない。

なのはには家族がいるけど出てこない。これだから・・・といわざるをえない。
フェイトにはリンディがいるが出てこない。クロノでは不足。異次元人の価値観常識の相違?
はやてすずかには最初からいない。

けど特に酷いのはアリサと縁。
さまざまな出来事で壊れ入院ものなのに出てこないアリサの両親。だからこそ物語は迷走した。
教授は復讐者でありながら壊れているからか中途半端。
復讐の道具に徹せず、しかし都合よく利用している。自身の半端さからか縁をどうしたい、どうなってほしいのか示さないから年長者として見えてこない。縁を人間にするのならもっと積極的に干渉かつ自身と縁の憎悪に向き合うべきだったと思う。使い魔は所詮下の存在なので論外。

過ぎた力を持った子供が癇癪を起こして世界が滅びもはや救いが無い。子供に力が無ければ同じ癇癪を起こしても救いは十分あっただろうに・・・。
あるいは大人や年長者がいれば別の形となり世界は滅びず救いがあったはず。
もはやありえないのが残念無残。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : 築くのosoi
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[C618] コメントありがとうございまー

○なまにくさん
 いやいや、それでもなのは嬢は喋り過ぎな気が……
 実際のところ、鬱の治りかけが一番危険なのですよ。この世で自分が一番馬鹿な奴だと思っているところで中途半端に行動力が伴うと、途端に首を吊るとか飛び降りるとか……やめてぇ!
 この更新速度を維持できたら、俺、結婚するんだ(`・ω・´)キリッ

○ミヅキさん
>しかしどうにも三人娘の台詞が白々しい
 クロガネもそう思う。単純にクロガネの文章能力が低いのだと言われたら返せんのですが、くすん。
 それはともかく、クロガネ的には恭也ではなく桃子さんに出てきて欲しい。それも暴力ではなく、言葉でなのは嬢を止めて欲しい。つか、恭也も暴力ではなく言葉で止めて欲しい。パパンも美由希も。なのは嬢が暴力を振るう仕事に行きたいと言うのを、暴力で止めたらなのは嬢の言ったことが全部肯定されてしまう。なのは嬢をちゃんと止められたなら、過労+ガジェットによる撃墜事件も起きなかった筈だし、御神流とかご大層な事を言いながら娘の疲労に気がつかなかったのはどういう事だ。止めいや。
 いや、世界中の軍人さんのご家族に喧嘩売ってる訳じゃないんですが……

○築くのosoi さん
 そう、この物語に “大人” と呼んでいいのは、アステマと恋慈のみなのです。しかもアステマは脳タリン、恋慈は世界より妹という病気の人。駄目だこいつら。あとは殺されたし。
 異世界組みは完全に認識の相違。そもそも、向こうの人は日本人みたいに年齢のみで成人か未成年かを判断しているかどうかも怪しい。最悪、フェイトが成人と見なされているかも知れないと思うとぞっとしますな。逆に30歳でも頭が子供なら子供扱いなのかもしれませんが。
 ……この物語に、そういう “黒さ” も兼ね備えたリンディさんのような大人が介入してたら、多分縁はもっと早くブチ切れてるきが……と言うか、クロガネ的にはリンディさんと縁は相性が悪すぎる気がする。
  • 2010-04-09
  • 投稿者 : クロガネ
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[C619] 死亡フラグ過ぎて恐いんだが・・・

まさかの主役級降板予告ではあるまいな?(物理的な意味で
いや、ストライカーズは絶対はやて死ぬと思ってたけど何事も無くてびっくりしたんだけどね!
変身シーンも無かったしね!

なのはちゃんは暴露しちゃったけど、ま、力の無い法律なんて守っても意味無いしねー。
ここは良心に従うべきです。
頑張れなにょは、負けるななにょは。

基本私はストライカーズで消滅したアリサ分を二次作品で補っているので更新早いのはうれしい限り。
いいぞもっとやれ。
そしてなのは映画セカンドとなんか出るらしいガンダム映画で補給するまでぜひともこのペースで・・・

あと、ファリンがやたら可愛いと思うんだ・・・ぬこー
  • 2010-04-11
  • 投稿者 : ぎるばと
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[C620] ファリンはドジっこ。これは譲れない。

○ぎるばとさん
 まぁ、主役だろうと何だろうと、生も死も平等に降りかかる世界ですので。うふ、うふふふふ。
 にゃのは嬢は……まあ、良いのかなぁ。
 しかし、この作品にアリサ分と呼ばれる成分は……
  • 2010-04-12
  • 投稿者 : クロガネ
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[C621]

程度は高くとも単なる喧嘩だと思っていた物が虐殺まで発展していたなんて知らされりゃ驚くわなあ
守秘義務は組織が健在でないと適応されないのでは?
今の管理局にそれを強制出来る力はないと思います
地球とかにも情報を土産に亡命魔導師が溢れていそうですよねー

そんな事よりアリサ復活ならず!
いくら他人に促されても決断するのは自分です
生半可じゃ縁を止められないのでドッカーンと復帰してほしいものです
しかしどう考えてもハッピーエンドが思いつかないw
  • 2010-04-12
  • 投稿者 :
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[C622] アリサ「待ったって言ってるでしょ!無視するんじゃないわよ!縁ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」(某超電磁砲なあの人風に)

三人娘のなかで一番励ましてる?のははやてか

縁を死なせたくない
ほっとくと縁が殺されちゃう
止めるにばお話゙という名の戦争
でも自分も死にたくないなのは
迷いだらけのなのはですが戦場に出せないだろこれ?

フェイトはまだマシだけど折れた心と恐怖は果たして……


しかし縁との戦いは死ぬかもしれないのに両親には何も言わないなのはってかなり歪んでるな
守秘義務っつったって作戦後無くなる組織の決まりなんざもう意味ないだろ



今回のアリサ

「もういいわ……あんたたちが魔法を絶対だと思ってるなら……まずはその幻想をぶっ壊すわ!!」
アリサの右手が幻想殺しに……


そういえば某バイオリンなんちゃらに妖刀緋焔ってあったな
あれさえあればアリサだって……
  • 2010-04-13
  • 投稿者 : ルファイト
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[C623] コメントありがとうございまー

○ さん
 ふむ、名前がないとやり辛いと感じてしまうクロガネは何様なのだろう、本当に。
 しかしリリなのにおける魔法というのは、現代技術にしてみたら全くの未知の兵器、対物破壊で子供が2人マジで戦って街ひとつ壊滅させるというのなら確実に戦略兵器並。その技量はなくとも技術を持ち合わせた魔導師が地球に亡命しまくったら……うん、地球は確実のに第惨事世界大戦のはず。誤字ではない。好戦的な国に渡ったらアメリカ軍に頼って自衛力を保っている日本は確実にアウトでしょう。魔導師来んなっ!!
 たぶん、なのは嬢、フェイト、はやての立ち直り方 (はやてのみは漫画版からの引用ですが) から推測されると、一発バレな訳ですが、ちゃんとアリサも(ry

 喧嘩はセーフで、虐殺まで発展したらアウト。それはおかしい。人の心を傷つけた時点でアウトと言えない、そんな世の中が悲しいと思うクロガネです。そういうクロガネもアウト側な訳ですが。

○ルファイトさん
 そげぶ! “そげぶ” がきちんと収まってる! しかし、リリなのの魔法は化学式な訳だから、イマジンブレイカーがどこまで通用するんだろうか。純魔力魔法は壊せても、属性持たせたらアウトか。あ、レールガン受け止めてる (一応コインは蒸発するとはいえ質量的には十分物理兵器に分類され、弾き出すのは能力でも彼に届いている力は物理的な力) からセーフなのか? しかしスターライトブレイカーは消去し切れるのか。し切れなくても、一方通行戦 (最近出た方) の如く掴んで投げられそうな予感。
 なのは嬢だって怖いものは怖いのだ。フェイトが泣いただけで。
 ちなみに、はやてが一番励ましているように見えるのは、はやて以外言葉のキャチボールが成立していないから。
  • 2010-04-14
  • 投稿者 : クロガネ
  • URL
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Appendix

うぇぶ拍手

拍手になります。コメントもどうぞ。

4/6更新 リリカルなのは、短編と呼ぶべきかネタと呼ぶべきか考えた結果これはクロガネ式妄想劇と呼ぶべきなんじゃないのかなぁという曖昧な結論に落ち着きました、みたいなお礼ありです。

魔法の使えない魔法使いの魔法

注意事項!

プロローグ

第1章 『海鳴 縁という少女』
       
基礎情報 第1章終了時点
第2章 『悩み』
         
基礎情報 第2章終了時点
第3章 『誰が為の剣』
           
基礎情報 第3章終了時点
第4章 『教授』
           
基礎情報 第4章終了時点
第5章 『恋ですか?』
           
基礎情報 第5章終了時点
第6章 『切実な事情、迂闊な発言』
           
基礎情報 第6章終了時点
第7章 『縁と看視者』
           
基礎情報 第7章終了時点
第8章 『その言葉、届かない』
           
基礎情報 第8章終了時点
第9章 『失意』
               
基礎情報 第9章終了時点
第10章 『挫けぬ雷刃』
           
基礎情報 第10章終了時点
第11章 『届け、星の光!』
             
基礎情報 第11章終了時点
第12章 『祝福される騎士と風』
 
第13章 『アリサ・バニングスという少女』
第14章 『そして、日常』


本筋関係ないパラレル短編
           

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クロガネ

Author:クロガネ
 鉄と書いてクロガネ。文系の皮を被った理数系。人種差別主義。有神無宗派論者。白衣の天使。瞑想で一日潰したことがある。萌えにも燃えにも反応する。二次元より三次元の方が楽しいと思う。宇宙人未来人超能力者魔法使い等特殊な人間じゃなくて本当に良かったと思っている。変な人といわれる。仲間と言うのはチャレンジャーな人、友人と言うのは変わった人、知人と言うのは普通な人。
 これがクロガネ。
 とりあえずメールはこちら↓
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